夜警日誌あらすじ&日本語訳3話vol.2
チョン・ユンホ(東方神起ユノ/ユンホ)、チョン・イル主演、「夜警日誌」3話の後半です。 あらすじと共に、なるべくたくさんの台詞を翻訳してご紹介しますね。さっそくどうぞ♪
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船着場に到着すると、ただちに荷降ろしが始まる。
サダムは船を下り、久々に目にするその地を眺めた。
女が一人、サダムを出迎えると、頭を下げる。
黒いベールの向こうに、ぼんやりと美しい顔が見て取れた。
サダム「12年ぶりです。朝鮮は何一つ変わっていません」
女「予想なさった通り、宮から知らせが参りました」
サダム「ほう」
「これからが始まりです」サダムの鋭い目が光った。
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祈祷所でトハは手を合わせていた。
無数の蝋燭の火が優しく揺れ、くゆらせた香から煙が立ち上る。
ふいに風が吹いて煙を散らすと、トハは目を開けた。
トハ「!」
彼女の目の前で、蝋燭の炎が次々と消える。
手に持ったヨナの鈴が、激しく音を立てた。
トハ「とうとう… 動いたわ!」
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翌朝。
トハは最小限の持ち物を詰めると、杖を片手に家を出た。
外へ出ると、タンゴルが彼女を呼び止める。
タンゴル「トハ」
トハ「12年ぶりなんです。確かに鳴ったんですから。お姉さんの腕輪がとうとう応えたんです」
タンゴル「トハ、ヨナはもう」
トハ「私が… 自分で確かめるまでは、まだ終わってないんです。お姉さんは間違いなく生きているわ」
トハは思いを込めてタンゴルの手を握った。
トハ「お姉さん、必ず連れて帰りますから」
タンゴル「…。」
「では、行ってきます!」トハは元気に頭を下げると、再び歩き出した。
タンゴル「トハ!」
振り返ったトハに、タンゴルがゆっくりと近づく。
タンゴル「もしも… 万が一、自分一人の力で乗り越えられないことが起きたら、彼らを尋ねなさい。夜警師を」
トハ「夜警… 師?」
タンゴル「彼らならお前を助けてくれるはずだ」
トハ「どこにいるんですか?どこに行けば会えるんですか?」
タンゴル「それはお前が探さねば。自分で見つけてこそ、成し遂げられることだ。分かるね?」
「はい、忘れません」トハは頷いた。
タンゴル… 彼女の母は、娘を優しく抱きしめる。
タンゴル「無事でいるのよ」
トハはもう一度、明るく微笑み、頷いてみせると、今度こそ歩き始めた。
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リンの屋敷に柔らかい朝陽が差していた。
門が開き、リンが出てくる。
リン「ふむ。今日はどこへ行って遊ぼうか?」
ふっと微笑み、歩き出そうとしたリンは、前を見てぎょっとする。
「!!!」向かい側の大木の枝に、幽霊3人衆が陣取り、こちらを眺めていたのだ。
リンは戸惑い、視線を泳がせる。
女の子(霊)「あれ?」
ソン内官(霊)「どうした?」
女の子「変だな」
左相(霊)「変か?何が?」
女の子「あの子、私たちが見えてるみたい」
リンはわざとらしく咳払いをし、歩き始めた。
ソン内官「ははは、そんなはずがない。どうやって私たちが見えるんだ?」
女の子「見えてる方に賭ける!」
3人衆は木の枝からスルッと下降すると、リンの前に降り立った。
リンは再びギクリとして足を止める。
「…。」3人衆は注意深くリンの様子を観察した。
リン「…。はぁ、眩しい」
リンはチラリと空をみやると、袖口から黒い眼鏡を取り出し、おもむろに身に付ける。
彼らの姿が視界から遮られると、リンは何事も無かったように歩き出す。
「ほらみろ!」ソン内官は怒ったように女の子を睨んだ。
ソン内官「見えてないんだってば。お前の言うことを信じた私が馬鹿だった」
女の子「あれ?確かに私と目が合ったと思ったんだけどな」
左相「私もそう思ったぞ」
「…。」女の子は諦められず、遠ざかっていくリンの後ろ姿を見つめた。
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男が一人、霧の立ち込める山奥を歩いていた。
真っ黒な頭巾を深く被り、袖から覗く腕はとても逞しい。
「おい、止まれ」後ろから誰かの声が飛んだ。
無視して歩く男の肩に、ひんやりとした刀の刃が触れる。
声「止まれって」
男「…。」
立ち止まった男を、山賊が3人で取り囲んだ。
山賊1「俺たちを誰だと思う?こう見えても太白山で9年、白頭山で4年、智異山で5年、山賊稼業は合わせて… 」
「合わせて…?」山賊は足し算が出来ず、空へ視線を泳がせる。
山賊1「おい、何年だ?」
山賊2「合わせて?ちょっと待って、何年かと言うと…つまり、えーと」
山賊3「18だ!」
山賊1「そうだ!」
山賊2「何だ?数も数えられないからって、俺を馬鹿にしてるのか?」
勝手に盛り上がる山賊たちのやり取りを静かに待っていた男は、彼らを置いて再び歩き出した。
「おいおいおい、待てって!」慌てて呼び止める山賊の声に、男は大人しく足を止める。
山賊1「(男の荷物を指し)それは俺たちが貰う」
男「…。」
「さっさと持って来い」ボスに言われ、手下の山賊が男の荷物を乱暴に払い落とす。
地面に落ちた袋を持ち上げようとするが… 意外なほどに重く、山賊の力では持ち上がらなかった。
山賊1「何やってんだ?さっさと持って来いよ」
山賊2「変だな。びくともしないぞ」
男が身をかがめ、荷物の袋を拾おうとすると、山賊の持った斧が喉元に当たった。
山賊2「じっとしてろ。俺を馬鹿にしてるのか?何で言うことを聞かない?俺が可笑しいか?」
男「…。」
山賊2「何で言うことを聞かないんだ!!!」
「そうカッカすんなよ」後ろで待っている山賊の頭が呆れて笑う。
「さっさと…」そう言った瞬間、後ろから飛んできた石が彼の後頭部を直撃した。
山賊1「あっ!!!」
「誰だ?」「何だ?」キョロキョロする山賊たちの前に現れたのは… トハだ!
トハ「あらま!大丈夫?」
山賊1「大丈夫じゃないぞ!」
山賊は武器を構え、トハめがけて走りだした。
トハは手に持った杖で山賊の足を軽々と捕らえ、彼は無様に卒倒する。
「お前、何者だ!!!」斧を振りかざしたもう一人の山賊を、じっと動かなかった男が素早く捕らえ、肩を掴むと、腹に膝蹴りを食らわせた。
男は一瞬のうちに地面に倒れ込む。
#ケ、ケンシロウじゃないか?!(嬉々)
残りの一人も景気良く武器を振り上げたものの、振り返った男に怯み、硬直した。
深々と被った頭巾の下から、男の目が光った。
…サンホンだ!!!
そろりそろりと後退りすると、彼らは一目散に逃げ出す。
サンホンは地面に落ちた荷物を拾い上げると、肩に担いだ。
トハ「カッコいいな」
サンホン「今後は他人事にむやみに首を突っ込むな」
トハ「もう!生きてれば助けたり助けられたりするもんでしょ?」
サンホン「…。」
トハ「私は自分に関係ないからって素通りできないんです」
サンホン「この辺りの人間じゃないようだが、どこから来た?」
トハ「さっきの山賊たちが4年住んでたところですよ。白頭山。私、白頭山のマゴ村から来たんです」
「!」サンホンが頭巾の下からジロリと彼女を見た。
サンホン「マゴ?」
トハ「あれ?マゴ族、ご存知なんですか?それならひょっとして…」
サンホン「知らぬ」
トハ「?」
サンホン「…聞いたこともない」
歩き出したサンホンの後を、トハは弾んだ足取りで追った。
「…。」しばらく歩いたところで、サンホンは立ち止まり、後ろを静かに振り返る。
トハ「…。」
サンホン「なぜついて来る?」
トハ「私も行きたい方向へ歩いてるだけですよ。向こうへ行けば漢陽じゃないですか?」
「あぁ」サンホンは短く呟き、また歩き出した。
サンホン「漢陽で泊まるあてはあるのか?」
トハ「人が住んでるところなんだし、まぁ、寝るところくらいあるでしょう。なければ夜空を布団代わりに寝ればいいんだし。私、そういうの平気なんです」
サンホン「…。」
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華やかで美しい妓生が馬に乗り、優雅に大通りを歩いてくると、男も女も手を止め、彼女に目を奪われた。
人混みの中にいたリンは、騒ぎのする方を振り返り、ニヤリと歯を見せる。
馬の上の妓生もまた、リンに気づき、傘を少し上げて顔を覗かせると、意味深な笑顔を送った。
見物人1「いやはや美しいことよ」
見物人2「この人は全く。命が10あっても足りんぞ」
見物人1「そりゃどういうことだ?」
男たちの話に、リンはそっと耳を傾けた。
見物人2「メヒャン(梅香)と寝ようした男は、皆、屍になって出てくると云うじゃないか」
「?!」リンの顔が険しくなる。
見物人2「とにかく、命が惜しけりゃメヒャンに近づくな」
見物人1「それであんな噂があるのか」
見物人2「何だ?」
見物人1「それは…」
続けようとした男は、そこで後ろにいるリンに気付き、驚いて口をつぐんだ。
リン「(微笑)どうぞ続けて」
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『春花楼のメヒャン…
屍と化して出て来ることになろうとも、男たちはまるで蟻のように群がる。
しかし、命が惜しいから、おいそれと近づくことも出来ない。
だからといって、ぐずぐずしていて他の男に取られるのは嫌だ。
メヒャンのチョゴリの紐を解いた者は、朝鮮最高の風流人と認められるとか…』
春花楼の一室。
そのメヒャンは、リンの前で淑やかに座っていた。
リンは突然彼女の細い手首を掴むと、力強く引き寄せる。
メヒャン「!」
驚いたメヒャンの表情を堪能すると、リンは彼女の頬を指でそっとなぞった。
頬から顎をつたったその指は、そのまま下へと降りる。
チョゴリの結び紐に触れると、メヒャンはリンの手を優しく掴んだ。
リン「…。」
メヒャン「大監、ご存知でいらっしゃいましょう」
リン「…。」
「私の噂を…」メヒャンは悲しげに目を伏せる。
リン「メヒャン、私がそれほどか弱い男に見えるか?」
メヒャン「大監が傷つくのは嫌です」
ニッコリと笑うと、リンの手が再び彼女の頬を撫でる。
リン「私を案ずるそなたの心。それさえあれば、私が傷つくことはなかろう」
メヒャン「大監!」
リンの指が彼女の顎をそっと持ち上げると、二人は目を閉じ、唇を寄せた。
その時…
「全くじれったいな」急に聞こえてきた男の声に、リンは目を開け、辺りを窺った。
リン「?」
気を取り直し、今度こそ口づけようとすると…
「そうだ。とにかく口づけろ。そうすればお前も歩いて出られはしない」
リンがゆっくり横へ視線を移すと、二人をじろじろと見ている男の霊が目に入った。
リン「…。」
リンはメヒャンの背中に手を回すと、くるりと身を翻し、彼女を押し倒した。
「はっ!」メヒャンの微かな悲鳴が漏れる。
霊「ほう、続けるおつもりか。それなら私も放ってはおけん」
リンはうっとりと目を閉じるメヒャンの上で、彼女のチョゴリの紐に手を掛けた。
…と、霊が彼の肩を掴み、思い切り彼を引き離す。
リン「あっ!」
不思議に思い、ようやく体を起こしたメヒャンの目に映ったのは、床で一人苦しそうにもがいているリンの姿だ。
メヒャン「大監!」
リン「ははは、だ、大丈夫」
「やっぱり…駄目だわ。何てことなの?」メヒャンはガッカリし、悪態をついた。
メヒャン「生涯、愛を受け入れることが出来ないなんて!一生このままなんて!!!」
霊「それじゃ私は?私が与えたものは何だったんだ?」
リン「(キョトーン)」
霊「生涯、勉学以外には目もくれず、お前に出会い、お前だけを愛したのだ」
リン「(苦笑い)」
霊「一度だって思いを告げられずに、死んでしまった私は?私はどうなるんだ!」
メヒャンと霊は揃って泣き声を上げた。
リン「間抜けだな」
メヒャン「?」
メヒャンは驚いてリンを振り返ると、また泣き始める。
霊「私に言ったのか?」
リン「…。」
「おっと!」リンはわざとらしく声を上げた。
リン「大事な約束があるのを思い出した。私は”間抜け”だなぁ」
「また今度会おう」リンは逃げるように部屋を飛び出した。
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部屋を出てくると、遠巻きに眺めていた一団がざわめいた。
向こう側の座敷の人々も、興味深げに彼を眺めている。
「チョゴリの紐だ!」リンの指に引っ掛かっていたチョゴリの紐に、歓声が上がった。
そう、メヒャンのチョゴリの紐を解いたものは、伝説になるのだ。
一気に湧く人々の後ろで、二人の紳士が門を入ってくると、騒ぎに立ち止まった。
「さすが月光大君だ。メヒャンのチョゴリの紐が月光大君の手に渡ったということは、朝鮮最高の風流人ということになる」一人が感嘆の声を上げる。
「わざわざ忙しい人間を呼んだのは、こんな退屈な場所に来るためか?」もう一人の男… ムソクはその目に軽蔑の色を浮かべた。
友人「もどかしい男だな。赴任地が発令されるまでは楽しもうって」
ムソク「…。」
そこへ、場違いな良家の令嬢が駆け込んでくると、ムソクを見つけるなり彼の腕を掴んだ。
令嬢「大君は?」
ムソク「…。」
人々の喝采を浴びているリンの姿が、令嬢の目に入る。
令嬢「!」
眉をひそめ、詰め寄ろうとする令嬢を、ムソクがさっと引き止める。
ムソク「ここは妓房だ。未婚のお前が来るところではない」
令嬢「…。」
それでも彼女はムソクの手をすり抜け、リンに近づいた。
リン「スリョン嬢!」
リンはふっと笑い、スリョンの耳に顔を近づける。「そなたもメヒャンに会いに来たのかな?」
スリョン「!」
スリョンは彼の手からチョゴリの紐を奪い取ると、ちょうどそばで燃えていた薪の火に投じた。
スリョン「大君!いつまで年月を浪費して生きるおつもりですか?」
リン「いや、年月だなんて…」
そこへ、また謎の声が聞こえてくる。「自分の女がいるのに、他人の女に手を出したのか?」
「!」リンは振り返り、厳しい目で周囲を見渡す。
屋根の上に、さきほどの霊の姿が浮かび上がった。
「全く…」霊は立ち上がると、屋根の上で思い切り足を踏み鳴らす。
瓦が一枚二枚、次々に浮かび上がると、一斉に庭めがけて飛んだ。
瓦はリンの周りにいた人々を直撃し、リンもまた危ういところでそれをかわした。
霊がさらに一枚、瓦をリンめがけて飛ばすと、リンは咄嗟にスリョンを庇い、背中で瓦を受けた。
瓦がリンの背中で砕けると、ムソクが駆け寄る。
畳み掛けるように飛んでくる瓦を、ムソクがリンたちの前に立ちふさがり、尽く叩き割った。
#かっこいい。しかし、なぜかちょっと笑ってしまう。
だって瓦割りなんだもん
霊は舌打ちをすると、どこかへ姿を消した。
「大丈夫か」ムソクは表情ひとつ変えず、スリョンを振り返る。
スリョン「(頷く)大丈夫です」
しかし、まだ霊は諦めていなかった。
体格のいい男に目をつけると、素早くその男に乗り移った。
男は雄叫びを上げ、リンに襲いかかろうとする。
ムソクは男に駆け寄ると、男の顎に鮮やかに蹴りを入れた。
倒れた男の胸をすかさず押さえつける。
ムソク「…。」
霊はすぐさま別の男へと乗り移った。
リンの背後にいた男は、一瞬のうちにリンに襲いかかる。
リンもまた鮮やかに男の攻撃をかわすと、軽く片手で男の腕を捻り上げ、突き飛ばした。
リン「もうやめにしようぜ。な?」
男はもう一度リンに飛びかかり、渾身の力で彼の首を締める。
リンは急いで懐から小さな袋を出すと、中身を手に掴み、そばの火に投じた。
唐辛子の種だ。
たちまち煙が上がり、咳き込んだ男は急に力を失い、その場に崩れ落ちた。
リン「大丈夫か?」
スリョンが頷いた。
「ようやく行ったか」リンがぼやくと、ムソクは驚いて彼を振り返った。
ムソク「行った?誰が行ったというのですか?」
リン「…。」
スリョン「?」
リン「いや、そうじゃなくて… 地震が通り過ぎて行った…」
ムソク「(ジロリ)」
リン「…ってことだ」
沈黙が広がる。
リン「地震じゃなきゃ何だっていうんだ?まさか、幽霊の悪戯だとでもいうのか!」
気まずさに、リンは思わず声を荒らげた。
ムソク「…。」
リン「ん?!」
リンは黙っているムソクにさらに詰め寄ろうとしたところで、自分を見ている無数の目に気づき、愛想笑いを浮かべた。
リン「今日、春花楼の酒代は全てこの…」
ムソク「(ジロリ)」
リン「いや、私が責任を持とう」
再び人々が湧くと、リンはさっさとその輪の中へ姿を消した。
+-+-+-+
帰り道、スリョンはどこかぼんやりとしていた。
ムソク「大君にあまり情を寄せるな。想いが大きくなるほど、お前一人辛くなる」
「…。」スリョンは前を見つめたまま、その場に立ち止まった。
スリョン「辛い?」
ムソク「?」
スリョン「なぜです?」
ムソク「…。」
スリョンは左手を目の前にかざした。
人差し指に輝いている綺麗な花の指輪を、彼女はうっとりと眺めた。
スリョン「これ、一年間ずっとつけていたんです。私によく似合うし、綺麗だし」
スリョン「だけど、もう飽きました。明日、宝石売りが来たら、新しい物に交換するわ」
「スリョン」歩き出したスリョンを、ムソクが思わず引き止める。
スリョン「そういうものなんです」
ムソク「…。」
スリョン「大君媽媽にとって都の女たちは、新しいものが出れば欲しがり、飽きたら捨てたくなる装飾品のようなもの。それが常なのです。理解しなければ」
ムソク「…。」
「それでは、先に帰ります」何も言えないムソクを前に、スリョンは歩き出した。
ムソク「…。」
+-+-+-+
今宵も眠れないキサン君は、寝床で酒を浴びていた。
「昭格署の官吏が来ております」内官が来客を告げると、御簾の向こうに姿を見せたのは… サダムだ。
サダムは王の前で丁重に頭を下げた。
サダム「サダムが殿下にお目にかかります」
キサン君「つまらぬ邪術で余を陵辱しようとするなら、お前の首を差し出してもらうぞ」
サダム「殿下、なぜ賤しい私の命のことなど口になさるべきではありません」
キサン君「…。」
サダム「殿下のお眠りを妨げるのではないかと恐れるばかりでございます」
「…。」キサン君は気のない様子で酒瓶を口へ運ぶ。
+-+-+-+
サダムは香を炊き、横になったキサン君の枕元へ差し出した。
そばで見守るサダムを見つめると、キサン君は瞬く間に眠りに落ちる。
サダムは香炉をじっと見据え、微かな声で呪文を唱え始めた。
立ち上った煙は、まっすぐキサン君の方へ向かう。
煙はいつしか鮮やかな緑色に変化し、キサン君は穏やかに眠り続けた。
+-+-+-+
漢陽へたどり着いたトハは、ある宿の入り口でキョロキョロしていた。
女将「あんた、何なの?」
トハ「?」
女将「何であの旦那と一緒に来たのさ?」
トハ「私ですか?白頭山から来たトハです」
女将「あんたの名前なんか聞いちゃいないわ!名前じゃなくて、あの旦那とどういう仲なのか聞いてんのよ!」
「こら!」そばにいた番頭が慌てて立ち上がると、女将に耳打ちした。
番頭「娘かもしれないだろ。憎まれ口叩いて減点されるなよ」
女将「!…娘?」
「おかしいなぁ」トハは呑気に旅館を見渡す。
トハ「あのおじさん、ここへくれば超美人で心の綺麗なお姉さんが優しくしてくれるって言ったのに」
女将「!」
トハ「そんなお姉さん… (女将と目が合う)」
女将「(ジーッ)」
トハ「いないわね。いないわ」
背を向けたトハを、女将は慌てて止める。「ちょっと待って!」
女将「本当にそう言ったの?あの旦那が、美人で心が綺麗だって?」
トハ「(うんうん)私の勘違いだったみたいです」
ペコリと頭を下げ、出ていこうとしたトハに、女将が食い下がる。
女将「待って!待ってよ!」
トハ「?」
女将「残った冷ご飯… ううん、温かいご飯をあげるから、食べてお行きよ」
トハ「ふふっ、ありがとうございます!」
女将はいそいそと厨房へ向かった。
+-+-+-+
個室へ通されたトハは、部屋を見渡し、満足気に微笑んだ。
壁には両開きの小粋な窓があり、手前は低い棚になっている。
彼女は棚の上に腰を下ろし、さっそく窓を開けてみた。
トハ「はぁ」
月明かりの下で、彼女はホッとして息をついた。
夜風が木々を揺らしている。気持ちのいい夜だ。
+-+-+-+
サンホンは窯の前へやって来ると、上半身の衣を脱ぎ捨てた。
担いできた袋から石を取り出し、燃えさかる窯の中へ放り込む。
窯の横の装置を勢い良く動かすと、空気が送り込まれ、火は一層燃え盛った。
刀を火で熱すると、真っ赤になった刃先を石で打つ。
それを水につけると、ジュッと音を立て、水蒸気が上がった。
旅館の女将がそっと扉を開けると、サンホンの姿に目を輝かせた。
力強く刀を打つたびに、あらわになった筋肉がしなり、汗が光る。
女将は魂を抜かれたように、ウットリとその姿を眺めた。
+-+-+-+
内官の案内で宮廷の中を歩いていたサダムは、急に何かの気配を感じ、立ち止まった。
サダム「!」
神経を集中させると、地下深くに眠っている何かの存在を感じ取る。
大蛇だ!!!
それは長い年月の間に埃にまみれ、神弓と共に虫の巣窟と化していた。
内官「儒学者たちが昭格署を廃止しようと、どれだけ殿下を攻撃したことか。もし昭格署の官吏が宮廷を出入りしてることが知れたら、殿下はお困りになるでしょう。だから…」
おしゃべりしながら歩いてきた内官は、そこでようやく振り返り、後ろにサダムがいないことに気づいた。
内官「?!」
+-+-+-+
大蛇の放つ気を頼りに、警備の目を避けて宮廷の中を進んできたサダムは、場所を特定できず、立ち止まった。
サダム「どこにおいでなのです?必ずや私が探し出しましょう」
+-+-+-+
後日。
「殿下、昭格署の官吏が参りました」そわそわと寝室を彷徨いていたキサン君は、内官の声に笑顔を見せた。
キサン君「そうか!早く参れ、早く!」
早へ入ってきたサダムを、キサン君は歓迎する。
キサン君「よく来たな」
+-+-+-+
キサン君の枕元で、今夜もサダムは香を炊いた。
キサン君「近う寄るのだ」
サダムは布団の上に足を踏み入れ、キサン君のそばへ腰を下ろした。
キサン君「今頃そなたと知り合うとは。惜しいことをした」
#綺麗なお顔だよねー
キサン君は穏やかにサダムを見上げる。
サダム「聖恩の限りに御座います」
キサン君「余のそばにいてくれ。末永く…」
「いつまでも、共に」キサン君は穏やかに目を閉じる。
サダム「殿下、そういたします。いつまでもずっと、殿下のおそばに」
キサン君「…有難い」
サダムは目を閉じたキサン君の顔の上に手をかざす。
サダム「殿下は多くを手中に収められることでしょう。それでこそ、私が多くを手に入れられるのですから」
「なぜだと思われます?」サダムはすっかり眠りに落ちたキサン君の耳元へ顔を寄せた。
サダム「もうお前は… 私のものになるのだから」
サダムの不敵な笑い声が静かな寝室に響き渡った。
+-+-+-+
ここでエンディングです。
これ、NHK地上波放送中の「太陽を抱く月」と同時に初見の人は大混乱だね^^
陽明君とリン、飄々とした中に悲しみを秘めてる感じ、見た目も含めて似てるわー。
チョン・イル君は悲しみを隠して明るく振る舞ってる感じが超似合うのよね♥
大妃と右相のシーンとか、他にもいろいろ太陽抱月と被ります。
そういうのを見つけるのも楽しい方の一つかも^^
リンもムソクも魅了的だし、女性陣も可愛い。
私はとりあえずサンホン萌えの道をひた走りますが♥ よりどりみどりで贅沢ですわー、このドラマ♪
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