夜警日誌あらすじ&日本語訳10話vol.1
チョン・イル、チョン・ユンホ(東方神起ユノ/ユンホ)出演、「夜警日誌」10話前半、ドラマのあらすじを掴みながら、台詞を丁寧に日本語に翻訳していきますね。
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夜の山中には濃い霧が立ち込めていた。
夜警師たちの霊が一斉に姿を消すと、足音がどこからかゆっくり近づいてくる。
サンホンは足音のする方へと目を凝らした。
サンホン「!」
彼の前に現れたのは… リンだ。
リンは真摯な目でサンホンをまっすぐ見つめた。「知らねばなりません」
リン「あの日、何があったのか、父上がなぜあのようになられたのか。全て知らなければならないのです」
サンホン「知りません。知っていることなど何一つ…。だから、これ以上私を追わないでください」
サンホンはその場を立ち去ろうとした。
リン「時折…」
サンホン「…。」
リン「… 考えていました。12年前、父上の剣を阻んでくださった方のことを」
リンの視線は静かにサンホンの横顔を捉えていた。
サンホン「…。」
リン「父上の忠実な臣下だったと記憶しています。どうか私の願いを…」
サンホン「国の禄を貰う者として当然の仕事をしたまでです。それ以上の価値を付け加えないでください」
リン「これまで父上を恨んで生きてきました」
サンホン「…。」
リン「ぐっすり眠れたことなど一度もないし、夢なんてものは最初から諦め、有閑な遊び人の振りをしていなければなりませんでした。それも全て、父上のせいだと恨み、憎んできたのです」
「それなのに!」リンは語気を強める。
リン「そうではなかったかもしれないなんて」
サンホン「…。」
リン「もし間違いであったのなら、父上の無念は如何ほどでしょう。その無念、晴らして差し上げたいのです」
サンホン「私は関係のない人間です」
最後まで感情を殺したままそう告げると、サンホンはリンを残し、足早に去った。
リン「!」
※このシーンから、リンもサンホンもお互いに対する言葉遣いがとても丁寧に変わっています。
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考え事に耽りながら、リンは屋敷の前まで帰って来た。
そこへ、ずっと彼を待っていた3人衆が大喜びで現れる。
ソン内官「大君様!濡れ衣は完全に晴れたんですか?そうなんですか?!」
左相(霊)「大君媽媽!おめでとうございます」
ランイ「(ニコニコ)」
しかし、リンはまるで3人衆が見えていないかのように何の反応も見せない。
「やはり家はいいな。家が…」ぼんやりと屋敷の門を見上げ、無表情で呟いた。
3人衆「…。」
リンはくるりと身を翻すと、3人を置いて階段を上がっていく。
ランイ「何よ!あの子、助かったからって無視?!」
ソン内官「本当に?もぅ」
階段を上がり、門の前で立ち止まると、リンは柱に括りつけてある霊除けのまじないに目をやった。
縄を解くと、まじないの木がバラバラと下へ落とす。
ランイ「何やってんの?」
ソン内官&左相「???」
霊除けがなくなると、リンは振り返り、階段の上から3人衆を見下ろした。
リン「お前たち、ずっとそこで野宿するつもりか?」
「!」左相がリンを見上げ、顔を輝かせる。
ソン内官「ふんっ、私たちがここで野宿しようと関係ないでしょう?」
左相「私たちに… 中に入れとおっしゃっているのですか?! 」
ソン内官「!」
ランイ「そうに決まってる!気が変わる前に早く入ろうよ!」
感激する3人衆を前に、リンはピクリと片眉を上げると、背を向けて門扉を大きく開く。
「みんなで仲睦まじく暮らすんですねぇ!」3人衆がいそいそと階段を上がってくると、リンの口角がひそかに上がった。
+-+-+-+
ランイは縁側にちょこんと腰掛け、一人で庭を眺めていた。
そこへリンがやって来て、隣に腰を下ろす。
リン「どうして一人なんだ?」
ランイ「家を見物するんだって大騒ぎなんだもん」
リンは微笑んだ。
ランイ「何で寝ないの?」
リン「久しぶりに家に帰って来たからか… 嬉しくて」
「お前はどうして行かないんだ?」リンがランイの顔を覗き込む。
ランイ「?」
リン「太っちょ左相やソン内官はわかるが、お前はなぜ私について来るんだ?私のこと嫌ってるのに」
ランイ「嫌いじゃないけど?」
リン「本当に?」
ランイ「うん。あんたのこと好きだよ」
「そうか」リンは嬉しそうに笑った。
リン「それじゃ、何で小言ばかり言うんだ?」
ランイ「それは全部あんたのためだよ」
リン「やれやれ、お前の小言で私が上手く行けばどんなにいいか」
まん丸い目でリンをキョトンと見つめるリンが可笑しくて、リンは思わずまた笑った。
本当に穏やかないい気分だ。リンはその場にゴロンと横になる。
ランイ「私、見た目はこんなだけど、あんたよりたくさん生きてるの。私の言うこと、ちゃんと聞きなさいよ。分かった?」
リン「生意気だな」
ランイは庭へ向き直り、不意に子守唄を口ずさんだ。「ねむれ ねむれ 可愛い子…」
リン「…。」
歌いながらランイが振り返り、リンを見る。
リン「思い出すなぁ…、母上を」
リンの目尻にキラリと涙が光った。
ランイ「…。」
リンはそっと目を閉じる。
ランイは歌いながらリンに近づくと、彼の頬を撫でた。
実体のない彼女の手は、ふわっとリンの顔を通りぬけ、空を切る。
「ねむれ ねむれ」それでも彼女は、何度も何度も彼の頬を撫でた。
+-+-+-+
サダムは祠堂の棚にズラリと並んだ瓢箪を眺めた。
怨霊がたっぷり詰まった瓢箪は、すでに棚いっぱいに集まっている。
「ついに明日の夜です」ホジョが言った。
サダム「陰の気の強い夜。怨霊たちが龍神を治癒するであろう」
+-+-+-+
「…。」キサン君は隣にいる幻を決して見るまいと、懸命に持ち堪えていた。
偽キサン君「見えないふりしたって仕方ないぞ。お前に何で俺が見えると思う?」
キサン君「(ジロリ)」
偽「気が弱いからだ。だから俺のことが見えるんだよ」
キサン君「…。」
幻はキサン君をからかうように笑い声を上げる。
偽「無視すればするほど俺の声は大きくなるぞ。お前がもっと気弱になった証拠だからな」
キサン君「…。」
偽「やれやれ、可哀想だよな…。周りに気を許せる人なんて誰もいない。ただただお前を攻撃しようとする奴らばかりだ」
キサン君「…。」
偽「月光大君の言うとおりだな。”水克火”」
「…黙れ」とうとうキサン君が口を開く。
偽「…。」
そこへ、サダムがやって来た。
キサン君は幻を目で制し、サダムに向き直った。
キサン君「どうなった?粛清門は閉めたのか?」
サダムは動揺した様子で答える。「…はい、殿下」
サダム「もうすぐ閉じる予定です」
そこへ内官が報告にやって来る。「守門将は粛清門を閉鎖せよとの命令を受けてはいないそうです」
サダム「…。」
キサン君「余は昭格署の尚道サダムに王命を伝えさせたはずだ!なぜ余の命令を伝えなかった?なぜ!!!」
サダム「…。殿下、都の火の気もおさまりつつありますので、ご安心ください。もう少しすればまた門を閉じられるはずです。ですから殿下、どうかお気を鎮めて…」
キサン君はカッとなって立ち上がると、サダムに詰め寄った。「誰だ?」
キサン君「誰に唆された?」
サダム「殿下、何を仰るのですか」
キサン君「都を水の気で満たし、余を攻撃しろと唆したのは誰だ!」
サダム「…。」
キサン君「正直に申せ。月光か?それとも領相パク・スジョンか?!」
サダム「なぜそのようなことを…」
キサン君は足元の卓上にあった書簡を拾い上げ、目の前に突き出した。
キサン君「水克火!月光の言ったとおりだ…」
キサン君が放り出した書簡を拾い上げ、目を通した途端、サダムの目が鋭くなる。「!」
サダム「殿下、落ち着いてくださいませ。彼らの言うことに翻弄されてはなりません」
キサン君「これまでお前の言いなりになってきた。なぜ余の周りは一人残らず敵ばかりなのだ!!!」
「誰かおらぬか!」キサン君は人を呼んだ。
キサン君「サダムを捕らえよ!今すぐだ!!!」
サダム「殿下!」
武官が二人入ってくると、ただちにサダムの両脇を抱え、外へ引きずり出す。
サダム「殿下!!!」
扉が閉まると、キサン君は怒りを新たにした。
キサン君「これ以上黙っているものか。余を攻撃しようとするものは皆追い出してやる!」
+-+-+-+
宮中をムソクと共に歩いていたリンは、ふと物々しい一団に目を留めた。
サダムを連行する武官たちだ。
腕を引かれるまま歩きながら、サダムもまたリンに気づき、振り返ってじっと彼を見た。
リン「…。」
リンは密かに口角を上げると、素知らぬ顔で歩き去る。
姿が見えなくなるまで、サダムはリンを執拗に目で追った。
+-+-+-+
ホジョは大急ぎで棚の瓢箪を全て箱に詰めた。
あと少しというところで、祠堂へ武官たちが踏み込んでくる。
彼は迷うことなく刀を抜くと、武官を斬り、外へ出た。
塀の陰に身を潜めると、向こうでサダムが連行されて行くのが見える。
ホジョ「…。」
ホジョは突破を諦め、反対側へ回った。
一団を待ち伏せする位置に身を潜めると、ホジョは慎重にタイミングをはかり、飛び出す。
ほんの数秒の間に、そこには武官たちの死体が並んだ。
+-+-+-+
宮中を脱出したサダムとホジョは、追手を逃れ、慌てることなく街の中を駆け抜けた。
彼らが向かったのは梅蘭房だ。
部屋に入ってきた二人の様子に、ヨンウォルは目を丸くした。「何事ですか?」
ホジョ「王がサダム様を見限ったのです」
「だからってここへ来てどうするのですか!!!」慌てたヨンウォルが思わず立ち上がった。
ホジョ「房主!!!」
ヨンウォルは落ち着かずにウロウロと歩きまわり、懸命に頭を働かせた。
ヨンウォル「ひとまずはここにいらしてください。人目につかないで、ここでじっと」
ヨンウォルが部屋を出て行くと、サダムは怒りで拳を叩きつけた。
サダム「月光め…!」
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入宮したリンが訪れたのは、大妃の元だった。
丁寧に頭を下げるリンの姿に、つい顔をほころばせた大妃は、リンが顔を上げるとさっと顔を繕い、視線を背ける。
大妃「もう帰りなさい」
リン「御祖母媽媽」
「…。」大妃は厳しい表情のまま、目を合わせるのを避けた。
リン「お訊きしたいことがあります」
大妃「?」
リン「あの日のことについて知りたいのです」
大妃「あの日のこととは?」
リン「12年前、父上が…」
大妃「そのことは決して口に出してはなりません!分かっているはずでしょう」
リン「はい。これまで口をつぐんで生きて来ました。ですが、知らねばならないのです」
大妃「…。」
リン「ずっとこうして生きていくのが正しいのかそうでないのか、確かめ、判断せねばなりません」
大妃「おやめなさい!」
リン「…。」
大妃「決して… あの日のことに触れてはなりません。いいですね?」
「…。」拒めば拒むほど、何かがひた隠しにされている確信は強くなる。
リンは静かに大妃を見つめた。
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チャン氏「何で上手くいかないんだ?一手だけ戻してくれよ」
サゴン「一手くらいならいいよ」
チャン氏とサゴンは囲碁勝負、オンメたちは野菜の下ごしらえ。
宿は今日も平和だ。
チョヒが大きなため息をついた。
チョヒ「トハは否定するんだけど、毎日窓の外ばかり眺めてるのよ」
オンメ「…。」
チョヒ「音がしたらパッと振り返ってさ」
オンメ「…そうね。何でこうぱったり連絡も寄越さないのかしら。ここでご飯だって食べたのに」
「全く男ってのは」オンメはサゴンたちに聞こえるように皮肉を言った。
サゴン「そんな男たちと私を比べちゃいけませんよ」
チャン氏「考えてもみなさいよ」
オンメ「?」
チャン氏「ここで何度か飯を食ったからって、あの両班たちと親しくなれるなんて勘違いしちゃ駄目だ。生まれが違うんですから!」
そこへやってきたトハは、「生まれが違う」という言葉に思わず足を止めた。「…。」
そのとき…
暖簾をひょいとくぐり、姿を現したのは人物に、全員が息を呑む。
チャン氏「大君!尊い御方が、なぜこのようなむさ苦しい場所へ?」
オンメ「ここだって人が住んでるんですから、来ても不思議じゃないでしょう?」
入ってきたリンは、彼を出迎える面々の前で、2階へと視線を移した。
「トハ!オンメがさっそく大声でトハを呼ぶ。
「トハ!下りて来てごらん」廊下の壁に身を隠したまま、トハはリンの前に出るのを躊躇っていた。
オンメ「月光大君がいらしてるわよ!トハ!!!」
トハは少しだけ顔を出し、下で待つリンの姿をそっと見つめた。
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鍛冶場から宿へ向かっていたサンホンは、トハを呼ぶオンメの声で立ち止まった。「月光大君がいらしてるわよ!」
サンホン「…。」
来た道を戻ろうとした彼に、不意に背後からリンの声が飛ぶ。
リン「なぜお逃げになるのですか」
サンホン「…。」
リン「一体何のために?」
サンホン「…。」
リン「私がやるのです、私が。ですから、教えてください」
外に出て来ようとしたトハは、リンの声に気づき、足を止める。「?」
リン「父をあのようにした女が誰なのか、何があったのか。それだけ教えてほしいのです」
ゆっくりリンに向き直ったサンホンは、向こうにトハがいるのに気付いた。「…。」
サンホン「何度申し上げれば聞き入れてくださるのですか」
リン「…。」
サンホン「知りません。知っていることは何もないのです」
サンホンはくるりと背を向け、足早に歩き出した。
リンも「明日も明後日も!… 訪ねて来ますから」
「…。」トハがそのまま立ち去ろうと背を向けたとき、リンはようやく彼女がいたことに気づく。
リン「おい!」
トハ「…。」
急いで呼び止めると、リンはホッと顔をほころばせた。
リン「数日ぶりに会ったのに、そのまま行くつもりだったのか?」
トハ「それじゃ、私たちどうするべきなの?」
リン「?」
「あっ」トハは小さく首を振った。
トハ「どう…するべきなんですか?」
リン「…。」
リンは戸惑いを隠すように笑う。「急にどうしたんだよ?」
リン「少し話したいんだ」
トハ「用事がたくさんあるんです!」
リン「…。」
トハ「姉を探さなきゃいけないし、あの男の計画も突き止めなきゃいけないし。それに…」
リン「だから、一緒にやることにしたんじゃないか」
トハ「あのときは、一緒にやってもいいんだと思っていました」
リン「!」
トハ「でも今は、無理なことだってわかったから。私のことは私が… 自分でやります」
トハはリンの言葉も待たず、彼の前を立ち去った。
リン「…。」
思いがけず背を向けられた寂しさは、これまで慣れていた感情とは違っていた。
遠ざかっていく後ろ姿を為す術もなく見送ると、彼はトハとは反対側に歩き出す。
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「領相の令嬢が薬の専売権を梅蘭房に?」領相にしてやられた右相は、願ってもない情報を手に入れた。
情報提供者「その通りです。そのため生薬鋪も空っぽの状態でして」
右相「なるほど、そういうことか」
+-+-+-+
右相はさっそくキサン君の元を訪れる。
右相「殿下、月光大君の身の上が回復いたしました」
キサン君「誰もが知っていることを今さらなぜ?」
右相「彼らが動く前に、今度は殿下が先手を打つのです」
キサン君「?」
右相「”夷を以て夷を制す”。 夷を利用し、夷を倒すよう仕向ければよろしい。月光大君を利用し、領相に打撃を与えるのです」
※夷を以て夷を制す=他国同士を戦わせ、自国が利益を得る。敵を利用し、敵を制すること。元々は非道な方法として批判的に使われた言葉です。
「方法があるのか?」キサン君が身を乗り出す。
右相「方法もなしに殿下にお勧めはいたしません」
「そりゃそうだな!」キサン君は思わず笑い声を上げる。
キサン君「そなたこそ忠臣だ!それで?話してみられよ。どうするのだ?領相さえ叩けるなら何でもやろう」
右相「領相の令嬢が薬の専売権を私的に利用したようです」
「…。」キサン君の目が輝いた。
+-+-+-+
朝議の席で、キサン君はまず生薬鋪での火事の件から話を切り出した。
キサン君「月光大君は危険を顧みず、生薬鋪から焔焇を持ち出し、火を防いだと聞いている。間違いないか?」
「…。」大臣たちに混じって並んでいたリンは視線を伏せた。
左相(現)「民がたいそう賞賛しております」
領相派の大臣「もし生薬鋪が爆発でもしようものなら、都は大変なことになっていたのです。賞賛されるのも当然でしょう」
領相も満足気にキサン君の表情を窺う。
キサン君「一刻も早く生薬鋪に薬を補充すべきだが、薬がまともに入らず管理に困っているらしい。どうなっているのか、月光が調査するように」
リン「!」
場が一気にざわめく。
リン「殿下、なぜ生薬鋪を…」
キサン君「王命だ」
領相「なぜ昭格署提調に生薬鋪の調査を命じられるのですか?」
#そうか、リンは昭格署のリーダーになったんだった。すっかり忘れて「何でここにいるんだろう?」なんて思ってたよ(笑)
キサン君「生薬鋪の英雄なのだ。この件まで解決できれば喜ばしいことではないか。月光にもう一つ翼をやろうと言っているのに、気に入らぬか?」
わざと明るくとぼけるキサン君の前で、リンは苦々しい表情のまま黙りこむ。
リン「…。」
+-+-+-+
宮中をリンはどこかへ急いでいた。
「今度はどちらへ?」静かに立っていたムソクに声を掛けられ、リンは驚いて足を止める。
ムソク「殿下の命令が下ったのに、どちらへ向かうおつもりですか?」
「…。」リンはムソクを睨んだまま、ゆっくり彼に詰め寄る。
ムソク「なぜじっとご覧になるのです?」
リン「…。」
リンは視線を緩め、誤魔化すようにムソクの肩の埃を払う。
リン「見逃してくれと頼んでも、駄目だろうな。君はきっと許してくれない」
「行こう」リンが歩き出すと、ムソクは黙って後に続いた。
+-+-+-+
二人は足早に街の中を歩く。
ムソク「まずは生薬鋪に向かわれるのが宜しいでしょう」
リン「分かってるって!!!今向かってるのが見えないのか?」
「切干大根はいかがですか~!切干大根ですよ~!」店先で客を呼び込む女性の声に、リンは思わず足を止めた。
リン「!」
「ちょっと!切干大根!!!」自分に食って掛かったトハの声が、降ってきたように重なる。
リンは切干大根を売る女性を静かに振り返った。
リン「…。」
ムソク「どうなさったのです?」
リン「…。何でもない」
彼女は自分をそう呼ぶことは、もう二度とないだろう。
リンは再び歩き出した。
+-+-+-+
リンはガランとした生薬鋪の中へ足を踏み入れた。
棚におさまっているべき薬は殆どなく、全く機能を果たしていない状態だ。
リン「どうなっているのだ?大国へ行った医員たちが薬を仕入れて来たのではないのか?補充せず空っぽになっている理由は何だ?」
職員「これまではそうして来たのです。もともと恵民署と生薬鋪は薬を一緒に購入していたのですが、恵民署は薬を梅蘭房を通して購入するから、生薬鋪でもそうするようにと」
リン「?!」
職員「それが、梅蘭房は薬の料金が途方もなく高くて、仕方なくこのような状態なのです」
リン「恵民署はなぜ高い梅蘭房の薬を仕入れているのだ?」
職員「私共は存じません」
リン「そうか」
「分かった」リンはムソクと目を合わせ、生薬鋪を出た。
ムソク「梅蘭房?」
+-+-+-+
湯薬を煎じる火を団扇で扇ぎながら、スリョンは上の空だった。
そこへ門を入ってくるリンとムソクの姿が見えると、スリョンはハッとして緊張を募らせる。
二人と目が合うと、彼女は思わず背を向け、奥へと駈け出した。
リン「!」
後を追おうとしたリンを、ムソクが制する。「任務でいらしたのです」
リン「分かっている。それでも挨拶はすべきだろう」
ムソク「おやめください」
リン「?」
ムソク「それがスリョンのためです」
リン「…。」
恵民署の建物から出てきた職員に続き、リンたちは中へ向かう。
物陰から恐る恐る顔を出したスリョンを、ムソクは見逃さなかった。
「…。」間違いなく様子が変だ。
+-+-+-+
リンは薬剤購入についての資料を確認していた。
リン「なぜ梅蘭房から仕入れているのだ?」
職員「そ、それは…」
リン「事実のまま話すのだ」
職員「上からの命令でそういたしました」
リン「?… 上というのは誰のことだ?」
職員はいよいよ言いづらそうに押し黙る。
リン「早く申せ」
職員「そ、それは…」
リン「早く!」
職員「…スリョンお嬢様です」
リン「!」
職員「梅蘭房を通じて薬を仕入れるようにと、スリョンお嬢様が」
リン「スリョン嬢が?!なぜだ?」
職員「それは私共には分かりません。言われたとおりにしているだけですので」
リンは俄に信じられなかった。「そんなはずはない。スリョン嬢が私的に…」
そこへムソクがやって来ると、リンは口をつぐむ。
リン「君は下がっていろ」
ムソク「今、スリョンの話をなさっていたではないですか」
リン「していない!なぜスリョン嬢の話が出るのだ。…下がっていてくれ」
ムソクが下がると、リンは懸命に考えを巡らせた。「スリョン嬢がなぜ?」
+-+-+-+
「どういうことですか?」帰り道、ムソクはまだ釈然とせずに尋ねる。
ムソク「スリョンと何か関係があるのですか?」
リン「違うと言っているだろう」
ムソク「教えてください」
リン「違うって」
#リンの後ろにピッタリくっついちゃって可愛い♪
ムソク「頼る処のなかった私にとって、スリョンは実の妹と変わらぬ存在なのです」
リン「…。」
ムソク「スリョンが大君のことで傷つくようなことがあれば、私も黙ってはおりません」
「私だってスリョン嬢は好きだ」リンは妙に真剣なムソクに思わず笑う。
リン「スリョン嬢が傷つくのは私も嫌だ」
ムソクはさらにリンに詰め寄る。
ムソク「そんな大君の態度がスリョンを苦しめていると、お分かりになりませんか?」
リン「何だって?」
ムソク「自分のことが好きだと… スリョンは大君がそう躊躇もなく言ってくれるのを望んでいるわけではありません」
リン「…。」
ムソク「そんなことで女心をすっかり分かっていると勘違いなさらないでください」
リンを残し、ムソクは苛々して先を歩き出す。
リン「何で君がそんなに怒るんだよ?おい!」
頑なな背中を眺め、リンは苦笑いして後に続いた。
+-+-+-+
ここで一旦区切ります。
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