韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

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プロデューサー4話あらすじ&日本語訳 vo.2

   

キム・スヒョン、IU、コン・ヒョジン、チャ・テヒョン、出演、KBS韓国ドラマ「プロデューサー」4話、中盤です。

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「お祝いいたしますわ」イェジンに封筒を差し出すと、事務局の女帝ヤンミは意味深にそう言った。

イェジン「何?」

中から出て来た一通の書面に、イェジンは顔を曇らせる。
それは、放送通信委員会への召喚状だ。

「これって、シンディがジャケットを脱いだから…?」近くのデスクでスタッフが言う。

イェジン「タジョン、シンディって今週何位?順位表見せて」

「はい」タジョンが立ち上がり、イェジンのそばまでやって来たところで、書類に視線を落とした。「…。」

イェジン「誰があんたに見ろって?ちょうだいよ」

書類を受け取り、一目見た瞬間、イェジンは嫌気が差したように目を逸らした。

イェジン「今週もシンディ出さなきゃ。キム室長に今すぐ来いって言って」

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イェジン「それで、ピョン代表は何て?」

すぐにやって来たキム室長はのらりくらりとイェジンの攻撃をかわした。「特に何もおっしゃっていませんが」

イェジン「ピョンエンターはよく状況が分かっていらっしゃらないみたいだけど、ピョン代表に伝えてくださいな。歌手がテレビをバカにして好き勝手にやるんなら、一体PDは何のためにいるのよ?!」
キム室長「(ヘラヘラ)そうおっしゃらずに~、PD」
イェジン「ピョン代表が私を避けるからでしょ!」
キム室長「…。」
イェジン「所属歌手がこんな大事故を起こちゃって、私とぶつかったところで酷い目に遭うだけだし、それで知らんぷり、何でもないふり?はぁ、全く!そんなに怖い?」
キム室長「(ヘラヘラ)「今回の件、うちの代表はよくご存じないんですが」

「???」イェジンが彼に向き直った。「何ですって?」

キム室長「もともとお忙しい方で、ミューバンは私に一任なさっている事案ですので」
イェジン「…。」
キム室長「今週は必ず上着を用意しますから」
イェジン「よく分かっていらっしゃらないのね。やっぱりダメ。シンディ、今週はお休みね」
キム室長「えっ?」
イェジン「残念だけど、ミューバンの出演者調整はKBSが私に一任してる事案だから、仕方ないでしょう?」
キム室長「あの、PDさん」
イェジン「戻ってお仕事を」

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キム室長が慌ててどこかへ電話する姿を、イェジンたちミューバン班は遠巻きに眺めた。

イェジン「ビックリしたでしょーよ」
タジョン「だけど、シンディ明日1位なのに」
イェジン「いいのよ」
タジョン「ただの1位じゃなくて、完全1位だけど。シンディが出ないと、うちが困るだけなんじゃ?SBSとMBCには出るだろうし」

「ちょっと、静かに喋りなよ!」イェジンはキム室長に聴かれるのを恐れ、大きな声でタジョンをたしなめた。

女性スタッフ「ただでさえシンディのファンはめちゃくちゃ攻撃的なのに、1位のシンディが出なかったら始末が…」
イェジン「見ててごらん。自分たちで対策立てるわよ」
男性スタッフ「あぁ、謝ってきたら、そのとき受け入れるんですね」
イェジン「私が単に謝って欲しくてやってると思う?」
男性スタッフ「違うんですか?」
イェジン「あのね、PDが最後の瞬間まで忘れちゃいけないのは何だと思う?」

「編集スキル?人脈?視聴率?」そう言って彼女は首を横に振る。「そんなもの一つもいらないわ」

イェジン「ケリのつけ方よ。大事なのは絶対借りを返してやるんだっていう心意気。後でちゃんと借りを返せてこそPDに力が生じるの。それでこそ人は私と仕事をしたいと思うわけよ。いいことであれ、悪いことであれ、借りを返せるPDと仕事をしたいから」

「ね?」わかったようなわかってないような… 熱心に聞いていたスタッフたちは頷きながらキム室長を眺めた。

女性スタッフ「あの様子、タダ事じゃないですね。めちゃくちゃ深刻そう」
イェジン「放っといて仕事しましょ。仕事してる振りするの。会議するわよ、自然にね」

皆が俄に顔を寄せる。
「電話切りましたよ」男性スタッフがチラリとキム室長を見た。

イェジン「あっち見ちゃダメよ」

「これちょっと変じゃない?」わざとらしく資料を覗くイェジンたちの前を、キム室長が横切って行く。

男性スタッフ「あ、どこ行くのかな?」
タジョン「帰っちゃうみたいですけど」

「えっ?!」イェジンは驚いて顔を上げた。「対策するために出て行ったんじゃない?」

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正面玄関前に一台の高級車が滑りこむ。
出迎えにやって来たキム室長が後部座席のドアを開けると、中でピョン代表が振り返った。

降り立った彼女は、手鏡を出し、真剣な顔でルージュを引くと、サングラスを掛け直した。

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「高貴な方がおいでだから、貴重なお茶をね」芸能局長はそう言いながら、ピョン代表に自らお茶を淹れた。
彼女はお茶に軽く口をつけ、さっそく本題に入る。

ピョン代表「私の気が変わる前に契約書をお送りになったほうがよろしくてよ」
テホCP「本当にシンディが一泊二日をやるって?」
ピョン代表「お嫌?帰ったほうがいいかしら?」

「あら、来たのは間違いだったわ」嬉しそうにピョン代表はバッグを掴む。
テホCPがさっと手を伸ばし、それを制した。

局長「(CPに)おい君、そのリアクションは何だ?ピョン代表をガッカリさせるなよ」
テホCP「いやいや、そうじゃなくてビックリしたんですよ」
ピョン代表「有難いんじゃなくて?」
テホCP「有難いに決まってるでしょう!僕も話を聞いてたから。うちの新入りがシンディに会いに行ったんでしょう?それで僕、あいつらをすごく叱ったんですよ。ピョン代表を何だと思ってるんだ、お前らふざけてるのかって」
局長「謝罪してないのか?しろと言ったんだが」

「結構よ」ピョン代表が話の舵を取り直す。「まずはこちらの条件から契約書に盛り込んでくださいな」

局長「条件を入れて持って来てくれればよかったのに。僕はノーチェックでハンコを押すよ」
ピョン代表「こちらの条件は…」
局長「(テホCPに)何やってる?さっさと書け」

テホCPにが慌ててノートを開く。

ピョン代表「水に濡れるのはNG」

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「濡れるのはNGだって?!」ジュンモが反応したのはまずそこだ。

テホCP「シンディが一泊に出るって馬鹿デカいニュースを持って来たのに、何でそこなんだ?」
ジュンモ「濡れずに何やるってんだ?一泊二日のシンボルみたいなものなのに、濡れるのは」
テホCP「こういうのやった経験がないから、よく分かってないんだよ」
ジュンモ「…。」
テホCP「そこは俺がもうちょっと交渉してみるよ」

「それから」テホCPがチラリとノートを覗く。

テホCP「汁物は飲まない。この点はお前に譲歩してもらわないと。女の人は顔がむくむからな」

「何だよ?見せて」ジュンモはじれったくてテホCPのノートを掴んだ。

ジュンモ「ゲームをする前に確認を取れって?撮影は夜12時までのみ?編集前に撮影原本を見せろ?!」
テホCP「…。」
ジュンモ「ふざけんな!」

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「帰るしかないわ」ジュンモの反応を聞き、ピョン代表は言った。

ピョン代表「話が通じないのね。他の人を探してくださいな」

テホCPが彼女を引き止める。「今、そんな話じゃないでしょう?」

局長「そうだよ」
ピョン代表「だったら何よ?なぜダメなの?!」
テホCP「ダメなんじゃなくてね、最近のPDには無駄に意地っ張りなのがいるんですよ。それも全部やる気の現れなんですけどね。どこで悪いことばかり覚えたんだか。そんなの本当の力じゃないのに」
局長「そうだよ、本当の力じゃない」
ピョン代表「それで?どうしようっていうんです?」

「まずは、濡れること」テホCPが言う。「これはやっていただかないと」

ピョン代表「…。」
テホCP「一泊二日を象徴するお決まりみたいなものだから」
ピョン代表「それから?」
テホCP「汁物。実際、野外に出ると汁物以外に食べるものがないんだから。グツグツ煮てフーフーしながら食べてくれれば、絵的にも雰囲気が出るし」
局長「そりゃそうだ。一理ある」
ピョン代表「それから?」
テホCP「撮影は… 夜中の2時まで…」
ピョン代表「!」
テホCP「…1時半?」
ピョン代表「…。」

「1時半で」テホCPがすがるような目で繰り返す。

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「ほら見ろ」テホCPは得意気にノートを開いてみせた。「俺が全部カタつけたぞ」

テホCP「ジュンモ、嬉しすぎて感謝の言葉もないだろ」
ジュンモ「水は?」
テホCP「OK、OKだってさ」

「足首まで」テホCPが小声で付け加える。

ジュンモ「ふざけてんのか!」
テホCP「あのな、ピョン代表が足首までだって言うのを、俺が”何言ってるんだ、ふざけるな!ふくらはぎまで濡れなきゃダメだ!”って」
ジュンモ「先輩!」
テホCP「何とか太ももまでプッシュしてみるから」
ジュンモ「…。」

「それから、食事は…」テホCPがノートを指す。

ジュンモ「煮物まで?」
テホCP「汁物はやっぱりちょっとってさ。煮物で合意しよう。汁物が煮詰まったら煮物だろーが」
ジュンモ「…。」
テホCP「撮影が目前なんだぞ。このまま行こう。煮物のせいでやらないのか?そんなわけにいかないだろ」

絶句しているジュンモを、テホCPが覗きこむ。「とにかくこれでロケに出よう、な?」

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「おい!」芸能局に戻ってきたスンチャンは、先輩イリョンに腕を引っ張られた。
「ここに座れよ」集まって談笑しているスタッフたちの輪に、イリョンは彼を招き入れる。

イリョン「お前、シンディのとこ行って、何て言ったんだ?」
スンチャン「え?」
ハンナ「今、シンディの会社の代表が、局長室に来てるんですって。シンディがうちの番組やるって!」
スンチャン「あ、本当ですか!」
ヒョングン「理解できんな。ピョン代表はどういうつもりでシンディを投入したんだ?俺がピョン代表ならやらせないぞ」
ジヨン「何言ってんだか。他人事?!」
ヒョングン「向こうの立場じゃそうだろ?」

何やら静かに微笑んでいるスンチャンを、皆が覗き込んだ。

ヒョングン「お前、どうやって説得したんだ?何かノウハウがあるのか?」
スンチャン「いえ、僕はただ… 一泊をなさるといいだろうなぁって、そうお話しただけで」
全員「…。」

「ルックスね♪」ハンナが笑う。
「♪」スンチャンが無垢な顔で彼女を見た。

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#何て口してんの。かわええー

ハンナ「(ジヨンに)だよね?」
ジヨン「顔にやられたんだわ」
ハンナ「そうよ♪」
ミンジョン「シンディって面食いだったんだぁ」
ハンナ「そりゃそうよ。(イリョンを指さす)こんなPDが来て、”なさるといいだろうなぁ”って」
ジヨン「効果ゼロね」
ミンジョン「あ、それって”ノッティングヒルの恋人”みたいなヤツじゃ?イケメン一般人と恋に落ちるトップスター?」

「あ、そんなイケメンなんて…」スンチャンは嬉しいやら照れくさいやら、思わず笑いながら手で顔を隠した。

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トイレで喜びを噛み締めているところへ、スンチャンの電話が鳴る。
発信者は「傘返却」

スンチャン「!」

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駐車場へ出てくると、スンチャンはキョロキョロと何かを探しながら歩いた。
しばらく進むと、彼は一台の黒いバンをノックする。シンディの車だ。

「?」反応がなく、彼はスモークの貼られた窓を覗きこむ。
その瞬間、不意に前の座席のドアが開いた。「!」
「私を探してるんですか?PDさん」シンディが微笑んだ。

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二人は近くのベンチに腰を下ろし、お互い膝を合わせるように向き合って座った。

シンディ「私、PDさんがいるからこの番組やるんですよ。お分かりでしょ?」
スンチャン「…え?」
シンディ「私に提案したでしょう?一泊二日をやろうって」
スンチャン「あぁ、はい、もちろんです。提案を受け入れてくださって、本当に感謝して…」

「だから」シンディが彼の言葉を遮る。「私によくしてくださいね」

スンチャン「…はい。分かりました」

「…。」スンチャンを見つめたまま、シンディはパチリとまばたきをする。「どうやって?」

スンチャン「えぇと、一生懸命…」
シンディ「それだけじゃダメだわ」
スンチャン「…。」
シンディ「私、この番組をPDさんに言われてやるんだから、PDさんは私のことだけ考えてください」

「どこまでも私の味方♪ いいですね?」そう言ってシンディはニッコリ微笑んだ。

1864

「あぁ…」スンチャンはなんとなく頷く。

シンディ「私、撮影現場でもPDさんだけ見てやりますから」

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同じベンチで、次にシンディと向き合っていたのはジュンモだ。

シンディ「この間のキンパとスープ、ご馳走様でした」
ジュンモ「あぁ、そんなの」
シンディ「私、PDさんがいるからこの番組やるんですよ。お分かりでしょ?」
ジュンモ「俺?」
シンディ「ご存知でしょうけど、私バラエティは初めてでよく分からないんです。どんなふうにやればいいのか。だから、PDさんがどこまでも私の味方になって…」
ジュンモ「何をどうすりゃいいのか分からなかったら、何もやらなきゃいいんですよ」

意外な言葉に、シンディの顔から笑顔が消える。「え?」

1866

ジュンモ「これはリアルバラエティなんです。難しく考えればトコトン難しいけど、簡単に考えりゃどうってことない。どうにかしようって思わずに、ありのままを見せてくれりゃいい」
シンディ「ありのままに?」
ジュンモ「シンディの本来の姿、そのままにね」

1865

「私の姿、そのまま…」彼女は静かに思い巡らせると、ニッコリ微笑んだ。「分かりました」

シンディ「とにかくPDさん。私、撮影現場でもPDさんだけ見てやりますから」

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すっかり日が暮れた。
続々と職員たちが帰っていく中、イェジンは難しい顔でじっとデスクに向かっていた。
どうでも良さそうなサイトを眺めては、電話をチラチラと見る。

「まだ連絡ないんですか?」女性スタッフが声を掛けた。

イェジン「何の連絡?」
男性スタッフ「シンディですよ、キム室長」
イェジン「分かってないの?あっちは今、超苦しい状況なのよ?ほっときなさいよ、トコトン苦しくなるまで」
タジョン「苦しいのは私たちじゃないんですか?」
イェジン「違うってば!」

「座ってな」男性スタッフが皆を席に戻す。イェジンの神経を逆撫でしても仕方ないのだ。
そこへ、デスクの電話が鳴り始めた。
「もしもし?」イェジンが秒速で電話を取る。

イェジン(電話)「…えぇ、今、家に誰もいないんです。警備室に預けてください」

彼女はガッカリして電話を切った。

イェジン「もう、最近の宅配って何でこんな早いわけ?昨日注文したのにもう届いたってさ」

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「あんたも私も悩みの種はシンディね」ジュンモと家へ向かいながら、イェジンが言った。

イェジン「あんたはやってくれて困って、私はやってくれなくて困る」
ジュンモ「シンディがミュージックバンクに出ないって?」
イェジン「ほら、この間ジャケットを脱いだ件で、私、放通委に行かなきゃならないのよ。それで腹が立って、出るなって言ったら、ホントに出ないつもりみたい。1位なのに」
ジュンモ「お前なぁ、芸能人相手に駆け引きするなんて、いつの時代だよ?そういうのは男とやれ」

「あ、そうだ!宅配!」エントランスに到着したところで、イェジンは地下の警備室へと駆け出した。「待ってて」
ジュンモが一人で待っていると、車が一台駐車場に停まり、そこからスンチャンが降りてくる。
スンチャンはすぐジュンモに気づき、駆けて来て頭を下げだ。

ジュンモ「いい車だな」
スンチャン「あ、父の車で」

そこへジュンモの携帯が鳴った。「あぁ、母さん」

ジュンモ(電話)「来なくていいって。キムチもあるんだから。俺が行くって」

イェジンがダンボールを抱え、地下から階段を上がってくる。

※さっきイェジンが会社で見てたサイトのロゴですね。

イェジン「あ、ペク・スンチャン♪ 早く帰って来たのね」

「エラいわ」彼女はそう言って頷いた。
早い帰宅で、彼女の秘密が漏れる危険が回避されたためだ。

イェジン「あ、それからあんたのところ、シンディがOKしたんだって?ホントにあんたが交渉したの?」
スンチャン「僕が交渉したというよりは…」

「見合い?!」ジュンモが母親との電話で声を上げたのを、イェジンは思わずチラリと見た。

ジュンモ(電話)「最近忙しいんだって」

スンチャン「何ていうか、真心が伝わったんでしょうか、その…」

イェジンはスンチャンの話を適当に聞きながら、ジュンモの電話に聞き耳を立てる。

ジュンモ(電話)「検事?まさか検事で美人なんているわけないだろ(笑)」
スンチャン(もはや独り言)「僕はただ、なさったらいいだろうなぁって。チョン・ドヨンやイ・ヒョリさんの例もあるし」
ジュンモ(電話)「撮影が終わったら、来週の火曜日くらいなら大丈…」

「分かったから静かにして!」思わずイェジンがスンチャンを黙らせた。

スンチャン「…。」
ジュンモ(電話)「火曜日の6時から9時の間は確実に空いてる。その後は編集しなきゃいけないから。ホントに美人なのか?母さんと俺じゃ趣味が違うからな」

イェジンがジュンモの電話を気にしている姿を、スンチャンはそっと見つめた。「…。」
「…。」イェジンが先に上がろうとクルリと背を向けると、スンチャンは急いで走って行って、彼女の持っているダンボールをさっと抱える。

イェジン「?」
スンチャン「手首、痛めてるじゃないですか」

+-+-+-+

スンチャン(インタビュー)「好きみたいです。イェジン先輩はジュンモ先輩のこと…。口では友だちだって言っても、表に現れるです。頑張ってそんな素振り見せないようになさってるけど、僕はその気持ちがどんなものか… 少し分かる気がします」

+-+-+-+

家の中まで荷物を運ぶと、スンチャンはダイニングテーブルの上にそれを置いた。

イェジン「ありがとう、ペク・スンチャン」

「おやすみなさい」スンチャンが小さく頭を下げると、イェジンはニヤリと彼の顔を覗き込んだ。

イェジン「あんた、ヘジュのこと好きなんでしょ」
スンチャン「(ドキリ)」(←最高
イェジン「ふふっ♪ さっきヘジュが会社休んでるって聞いて、天が崩れるような顔をしてたからさ」
スンチャン「…。」
イェジン「告白したの?」
スンチャン「…いえ」
イェジン「何で?結果はどうでも一度やってみればいいのに」

そこへ、ジュンモが入ってくる音が聴こえ、二人はそこで話をやめた。

ジュンモ「あれ?お前、何でまた来たんだ?」
スンチャン「(荷物を指し)これをお運びしようと思って」

「お前、何でもやらせんなよ」ジュンモが呆れてイェジンを咎める。「自分の手があるだろ」

スンチャン「イェジン先輩、手首を怪我してるんです」

「…。」イェジンが湿布を巻いた手首を押さえた。

ジュンモ「…そうか?お前、よく怪我するよな。しょっちゅう転んでひっくり返って。今度はどこで怪我したんだよ?ドンくさい」
イェジン「気にもしてないのに訊かないでよ」

「ありがとね、ペク・スンチャン」イェジンは荷物を持って部屋へ向かい、スンチャンは挨拶をして玄関へ向かう。
さっといなくなる二人を、ジュンモは順に見比べた。「…。」

+-+-+-+

イェジンの部屋にノックの音が響いた。

イェジン「何?」

「だいぶ痛いのか?」ジュンモの声が聴こえる。

イェジン「いいって。いつも心配なんかしてくれないでしょ」
ジュンモ「何言ってんだよ。心配はしてるさ、いつも。けどお前さ、ペク・スンチャンをむやみに家に入れんなよ」
イェジン「むやみに入れたりしてないでしょ。昨日は酔ってて仕方なかったし、今日は荷物を運んでくれたのに」
ジュンモ「だから…」

「ペク・スンチャンは男だろうが」思わずジュンモは本音を漏らす。

1867

ジュンモ「女が不用心に。一人のときに男を家に入れたりすんなよな」
イェジン「笑っちゃう。あんたは男じゃないの?」
ジュンモ「俺は男じゃないだろ、お前にとっては」
イェジン「…。分かったから、そこで喋ってないで寝なよ。明日撮影準備しないの?」
ジュンモ「やるさ。3,4時間だけ寝て、明け方出ないと」
イェジン「だから寝なってば」

「あぁ、お休み」ガラス戸の向こうでジュンモの影が遠ざかっていくのを、イェジンはチラリと目で追った。

イェジン「…チッ」

+-+-+-+

部屋から出て来たイェジンはテーブルの上の瓶に貼られた小さなメモを見つめた。

【朝、ちゃんと食べろよな オッチョコチョイ^^】

1868

ふと視線を移すと、牛乳の瓶の蓋が少し空いた状態で置いてある。
手首を気遣ってくれたことが嬉しくて、彼女は思わず微笑んだ。

+-+-+-+

さて、一泊二日チームは、撮影でおこなうゲームのシミュレーションに熱心だ。

インタビュアー「何をなさってるんですか?」
ジュンモ「あぁ、一泊二日の売りはゲームだから。シミュレーションしてるんですよ。これはいいとか、これはダメとか。狂いが出ると現場で困るから。シミュレーションで徹夜することもありますよ。それなりに科学的な判断力が要求される、かなり難度の高い作業というか。簡単すぎても、難しすぎてもダメだから、それを上手く調節するのがPDの能力ですよ」

1869

#後ろの”叩いて被ってじゃんけんぽん”の面々がめっちゃおもろい♪

「今のは叩かなきゃ」後ろを振り返り、ジュンモはシミュレーションに突っ込んだ。

次に彼らが始めたのは、お尻で箸割りゲームだ。
クリアできないスンチャンに、皆から失望の声が上がった。「10本失敗!」

ジュンモ「10は多いって。初心者には難しいんだ」

どうも賭けていたようで、ジュンモはスタッフたちから賭け金を回収する。

ジュンモ「ヒョングン、お前がやってみろ」
ヒョングン「やっと卒業したのに」
ジュンモ「やってみろって。(スンチャンを指し)こいつだって見て覚えないと。じゃないとノウハウが伝授されないだろ」

ヒョングンは仕方なくスンチャンから割り箸を受け取ると、実に慣れた様子でお尻に挟んだ。

ヒョングン「ほら、谷間にしっかり挟むんだ。行くぞ」

思い切り力を込めると、バキッと割り箸が折れ、歓声が上がる。

スンチャン「!…凄いです」
ヒョングン「お前も頑張ってトライしろよ。いつか出来るようになる」

+-+-+-+

小道具置き場で準備をしながら、スンチャンはFDと話していた。

FD「一泊二日の撮影は、それこそ戦場に行くくらいの気持ちで行かないとな」

話を聞きながら、スンチャンは大きなリュックにどんどん荷物を詰める。

FD「要らないものばっかみたいだけど」
スンチャン「全部要るかと思って」

FDは目の前の道具を手に取った。「まず歯磨きと歯ブラシは要らないよ」

FD「飯も食えないのに磨くものなんてないから。シャンプにリンス?歯も磨けないのに、髪を洗う時間があると思う?」
スンチャン「…。」
FDは「ノートPC? 向こうで宿題するのか?全部いらないよ」

「ヘッドフォン?」次に目についたのは、立派なヘッドフォンだ。

スンチャン「車で音楽聴くのが好きで」
FD「これもいらない。車では寝るに決まってる。他の時に寝られないからね」

「本?!」お次は本だ。

ヘルマン・ヘッセの「デミアン」ですね。商品写真を見たら、さっそくプロデューサの帯がついてる(笑

スンチャン「寝る前にいつも本を読む習慣が…」
FD「寝られないってば」

「足りないのも多いな」FDが言った。「メモして」

FD「チョコレート、羊羹、飴。夜中になると糖が足りなくなるんだ、100%。そのとき先輩たちが欲しがるから。それからカップ麺。誰も食べ物くれないから、自分で用意するんだ。それから、いつ必要になるか分からないから、ジェギとユッ(※遊び道具)、スケッチブックにマジック、糊、野球ボール、ラップ、ホイル、イカナゴ魚醤、これは必須」

スンチャンはひたすらメモを取る。

FD「それから野球帽。朝、寝ぐせがつくから」

「ミックスコーヒー」不意に声が聴こえ、彼らは驚いて振り返った。イェジンだ。

イェジン「ミックスコーヒーよ。ジュンモは絶対それが要るの。ないと夜中にボンヤリしてデタラメ言い出すから」

+-+-+-+

スンチャンはイェジンと一緒にコンビニへ来ていた。

イェジン「ビタミンも必須。自分では飲まないから、あんたがしてあげて」
スンチャン「…。」

「他に何があるかな?」買い物をリードするイェジンに、スンチャンは静かについて歩いた。
「薬は用意した?」棚から薬を取り、カゴに加える。

スンチャン「ジュンモ先輩、すごく嬉しいでしょうね」
イェジン「何で?」
スンチャン「先輩みたいな女友だちがいらっしゃるから」

「あ、女の友だち」スンチャンは微妙に言い直す。
イェジンは嬉しそうに笑った。「あんたずいぶん上手くなったわね」

スンチャン「え?」
イェジン「気分良くさせて、今日の分を返済させるつもりなんでしょ」

「今日は2万ウォンしかないんだよね」イェジンは財布を覗くと、お金を取り出した。

スンチャン「そのために言ったんじゃないんです。本当にいいなぁって、羨ましくて」

「分かったからレジに行ってらっしゃい」イェジンは笑ってお金を渡し、彼の前髪をクシャッと撫でると、背を向けた。

1870

スンチャン「…。」

+-+-+-+

「心配ありませんよ」シンディのマネージャーは電話の相手に笑って答えた。

マネ(電話)「こちらもやる以上は綺麗に映ったほうがいいですから」

「綺麗にじゃなくて、リアルに」電話の相手が訂正する。

マネ(電話)「あぁ… はい。分かりました。はい、シンディには絶対秘密に。もちろんです。ははっ、ご心配なく」

電話を切ると、彼はすぐそばでデザートを食べているシンディの元へ戻った。

シンディ「何時に来るって?」
マネ「けど、絶対秘密だって…。ドッキリカメラだって分かってたら、不自然で面白くないからって。リアルバラエティだから、リアルじゃないとダメだって」

シンディは途中でデザートの蓋を閉じる。「リアルなんて大したものじゃないよ」

シンディ「人はね、自分の見たいものだけ見て、それがリアルだと思うんだから」

手鏡を覗き、彼女は目力を込める。「ドラマを撮るみたいに、キャラを作ってやればいいのよ」

マネ「けど、上手くいくかな?」
シンディ「私がどうしてやると思う?」
マネ「…。」
シンディ「これまで、気難しくて冷たいだけだった私のイメージを、これで変えようと思って」
マネ「…。」
シンディ「どこか親しみが持てて、人間的な感じに。それをリアルに演じればいいのよ」

「キャラを作るために、設定会議しましょ」シンディがいつになく乗り気で体を起こした。

マネ「会議?!」
シンディ「前にどこかで見たんだけど、芸能人の名前の前に別名をくっつけててさ、可笑しかったんだよね」

「”バスケ選手”キム・ビョンマン。”おしゃまさん”カン・ホドン」シンディがふっと笑う。「笑えるでしょ」

マネ「あぁ…」
シンディ「”くびれ腰”イ・ククジュ」

彼女は思わず噴き出した。「笑える」

シンディ「だから、私もそうやって別名ができたらいいなぁと思って」
マネ「あぁ…四字熟語みたいに?”微笑天使”とか?」
シンディ「違うよ。それじゃ事実でしょ」
マネ「…。」
シンディ「もともと微笑天使なのに、そのまま言ってどこが面白いのよ?逆を行かなきゃ、逆を」

「あ!」マネージャーが顔を輝かせる。「天然菩薩シンディとか?」

シンディ「?…それ何?」
マネ「菩薩は怒らないだろ?」
シンディ「私がいつ怒ったのよ?!

+-+-+-+

ここで区切ります。今回、どう訳そうかウーンと唸ってしまう言葉がすごく多かったです…。

動きが多いのに、あまり綺麗に文字で追えてないかと。わかりづらかったらごめんなさい^^;

 - プロデューサー

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