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韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!プロデューサー/SPY/夜警日誌/トライアングル/主君の太陽など

SPY(スパイ:JYJジェジュン主演)9話あらすじ&日本語訳vol.1

   

キム・ジェジュン、ペ・ジョンオク出演。SPY9話前半。
あらすじの中で情景や表情も捉えつつ、台詞を丁寧に拾って翻訳していきます。

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『1988年 中国 瀋陽』

ヘリムは瀋陽人民病院にいた。

「おめでとうございます。ご懐妊です」エコー検査の画面を見て、女医が言う。

女医「13週くらいになっているようですね」

言葉もなく、ヘリムはじっと画面を見つめた。

女医「心音を聴いてみますか?」

女医が差し出した聴診器を、ヘリムは恐る恐る耳に当てる。
小さいながらも逞しい心臓の音に、ヘリムの目に涙が滲んだ。

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「もしもし」受話器の向こうから、ウソクの柔らかな声が聴こえてくる。
診察室の前の公衆電話で、ヘリムは受話器を握っていた。

ヘリム「…。」
ウソク(電話)「ヘリムさん?ヘリムさんでしょう?」
ヘリム「…。」
ウソク「どうしてずっと連絡がつかなかったんです?僕がどんなに心配したか…」
ヘリム「仕事が… あったんです」
ウソク「声が変だな。一体何があったんです?!」
ヘリム「あなたに告白することがあるんです。生きて帰ったら… 全部説明します」

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彼女が向かったのはアジトだ。
「どこ行ってた?」飯をかきこみながら、キチョルがチラリと彼女を見た。

ヘリム「…。」
キチョル「どこ行ってたんだって訊いてんだ」

彼女は何も言わず、テーブルの上に一枚の写真を置く。
お腹の赤ん坊の超音波写真だ。
キチョルは酒をくいっと飲み干し、写真を拾い上げて、目を細める。

キチョル「男だろ。ほら、これこれ、ちん◯◯じゃないか?」

「お前のか?」キチョルがヘリムを見上げた。

ヘリム「…。」
キチョル「うちのヘリムはやり手だな。祖国の為に情報探ってこいって送り出したら、子どもまで持ち帰るとは」

「始末しろ」キチョルは超音波写真をテーブルに放り出す。

ヘリム「産むわ」
キチョル「母親になるって?自分に相応しいと思ってるのか?」
ヘリム「あの人の子よ。堕ろすなんて出来ないわ」
キチョル「敢えて言うけどな、俺の子だって確率のほうが高いだろ」

ヘリムの手が思い切り彼の頬を打った。
向こうでじっとしていた若い衆たちが、一斉に立ち上がる。
キチョルは表情一つ変えず、手で彼らを制した。

ヘリム「まるで犬みたいにあんたの言うことに従ってきたわ。でも、それももう終わりよ。今からでも人間らしく生きるわ!」

キチョルはヘリムの手から超音波写真を引ったくり、立ち上がった。

キチョル「南の科学者と、南で幸せに暮すって?考えてみりゃ好都合だ」
ヘリム「?」
キチョル「上から指令が来た。その科学者を北へ連れて来いってな」
ヘリム「!」
キチョル「(エコー写真を掲げ)これなら確実な餌になるんじゃないか?」
ヘリム「!!!」

写真を奪おうと伸ばしたヘリムの腕が空を切る。
次の瞬間、ヘリムは首根っこを掴まれ、テーブルの上に組み伏せられた。「!」

キチョル「しっかりしろ、キム・ソンエ。腹ん中の子ども以前に、お前が生きなきゃ駄目だろ」

「うっ!!!」強く押さえつけられ、彼女は吐き気を催して外へ飛び出した。

キチョル「妊娠したからって、女の真似ごとか」

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アジトを出たヘリムは、どんどん足を早めた。
ポケットからリモートコントローラーを取り出し、スイッチを入れる。

「…。」超音波写真をじっと見つめていたキチョルは、指でそれをぎゅっと捻り潰した。
テーブルの上には彼女が置いたままにしたバッグがある。
彼がバッグのジッパーを開けた瞬間、中で小さな機器のランプが赤く点滅した。ピピピ…

キチョル「!!!」

ヘリムの背後で大きな爆音が響く。
彼女は振り返ることなく、まっすぐに進んだ。

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「先輩、僕、今…」ソヌは電話でそう言ったっきり、一点を見つめたまま、凍りついた。
公園の中で話している二つの人影。
それは紛れもなく母ヘリムと… あの男ではないか。

ソヌ「??!!」

「おい、電話したんなら喋れよ!」電話の向こうのヒョンテの声が、どんどん遠くなる。「もしもし?ソヌ!どうしたんだ?」

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「俺に会えなくなるのは寂しくないか?」キチョルが呟くように言う。

ヘリム「ちっとも」
キチョル「…。」

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愕然とするソヌの目の前で、あの男が背を向ける。
ソヌをここへ導いた黒いバンが、男を乗せてエンジンを掛けた。
車が去っていくのを見送ると、母はくるりと踵を返し、反対側へ歩き出す。

ソヌは突然何かに突き動かされるように車を飛び出すと、全速力で公園を突っ切り、黒いバンを追いかけた。
加速をかけた車は、あっという間にソヌから遠ざかっていく。
車が見えなくなるのを、ソヌは悔しげに見送った。

#「車で追えって」と誰もが突っ込んだはずですが、車で追いかけようとすると、ぐる~っと外周を回らないと行けないとかで、思わず公園を走って突っ切ったんでしょうね。

ソヌ「…。」

そこへ電話が鳴る。
ヒョンテが掛け直して来たのだ。

ソヌ(電話)「もしもし」
ヒョンテ「もしもし?おい、お前ってヤツは…!電話掛けたんなら喋れよな。何かあったのかと思うだろうが!」
ソヌ「…。」
ヒョンテ「どうしたんだ?」
ソヌ「何でもありません。何でも…」

ソヌは車が走り去った後を呆然と眺める。

ソヌ「きっと見間違えたんです」

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ソヌはそのまま職場へ向かった。
暗い個人ブースの中で資料をひっくり返す。
88年瀋陽の爆発事故の資料を探しだすと、彼は夢中でページを捲った。

数枚重なった写真を退けて見ると、そこに現れたのは…
街中を歩くコート姿の女性が捉えた写真。

ソヌ「…。」

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まさか…。信じがたい疑惑が、徐々に輪郭を現していた。

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古い資料の写真をPCへ取り込むと、ソヌは顔判別プログラムに掛けた。
照合対象の写真が入れ替わっていくのを、ソヌはじっと見つめる。

ソヌは受話器を取り上げた。「俺だ。車両追跡を頼む」

ソヌ(電話)「個人的な調査だ。位置が把握できたら連絡してくれ」

「あぁ、ありがとう」ソヌは短い電話を切った。

画面の左側に瀋陽の女性が表示され、右半分で写真がどんどん切り替わっていく。
眺めていると、あの女性軍人の写真が現れた。
プログラムが左右の人物をマークし、線で結ぶ。

『 MATCH 53% 』

次に表示されたのは、地下鉄爆弾テロ班の防犯カメラ映像だ。

『 MATCH 63% 』

続けて画面が切り替わり、次はチョ・スヨン殺害事件の際、付近の防犯カメラに捉えられた人物の写真。
これは紛れもなく母の姿だ。

『 MATCH 58% 』

88年の資料の女性、女性軍人、地下鉄爆弾テロ班、チョ・スヨン殺害現場付近にいた女性。
最後に4つの写真が画面に並ぶ。
プログラムが改めて4枚の写真を解析し始めた。

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「…。」ソヌは祈るような気持ちで画面を見つめる。

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黒いバンが停まり、キチョルが降りてくる。

キチョル「準備は済んでるんだろうな」

彼の問いに、手下が頷いた。「はい」

手下「命令さえしてくだされば、すぐに動けます」
キチョル「絶対に外部に漏らすな。どんな失敗も許されない」

バッグを受け取り、古びたビルの階段をあがる。
車は彼一人を降ろしただけで、どこかへ走り去った。

そこへキチョルの電話が鳴る。「ファン・ギチョル同志」

男(電話)「今日の作戦、失敗したと聞きましたよ」

電話の向こうで、男がどこか愉しげに言った。

キチョル(電話)「あと一歩です。少しだけお待ちください。遅くとも3、4日すればブツが手に入るはずです」

階段を上がり、ある部屋の前に立ったキチョルは、そこで妙な気配を察知する。
鍵がかかっていない…?

キチョル「…。」

キチョルはそっと扉を開け、中へ入った。
ここは彼の棲家なのだ。

奥の部屋へ続くガラス扉を開くと、ギイと鈍い音が響く。
ベッドに腰掛けていた男が、電話を耳に当てたまま振り返った。

男はキチョルの姿を見ると、ニヤリと笑みを浮かべる。「お帰りですか?」

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電話の男だ。
キチョルの眉間に皺が刻まれる。

キチョル「いついらしたんですか?オ・テシク同志」

「ちょっと前にね」オ・テシクと呼ばれたその男は、えらく寛いだ様子でキチョルを見上げた。

テシク「ブツを受け取りにきたのに、準備が出来ていないとは」
キチョル「…。」

キチョルの神妙な顔を見て、テシクは笑い声をあげる。

#おもろいやん、この人!台詞もすごく聞き取りやすくて宜しい(笑

テシク「せっかく来たんだから、少しゆっくりさせてもらわなきゃね」
キチョル「…。」
テシク「あぁ、腹が減ったから出前を取ったんだけど、構わないでしょ?」

「ごゆっくり」キチョルはその場を離れようとした。

テシク「そこにいらっしゃいよ」
キチョル「…。」
テシク「本当に残念ですよ。先輩はミスさえしなきゃとことんデカくなったはずの人なのに」
キチョル「…。」
テシク「忠誠心は高いし、礼儀も知ってる。そんな人がどうしてキム・ソヌを抱き込まなかったんだろうな」
キチョル「…近づくのが容易じゃありませんでした。国家情報院の現職要員ですから」

#要するに、テシクは後輩なんだけど、キチョルより出世したんですね。

テシク「それで代わりに両親を?」
キチョル「無理やり押し切ろうとしても上手くいかなかったはずです。キム・ソンエを通してでも、十分に満足の行く結果を…」

「キム・ソンエは反動分子です」テシクの目から笑みが消える。

テシク「殺さなければ」
キチョル「!」

「財布を」テシクに言われるまま、キチョルはコートのポケットから財布を出した。
身分証、カード、現金… 中身は実に質素なものだ。1つずつテーブルの上に出しながら、テシクは思わず笑う。

テシク「先輩、ソウルに来たんだから恋人くらい作ったらどうですか?」

彼は最後に財布もテーブルの上にポイと放り出した。「上じゃ、えらく先輩のことを心配してますよ」

キチョル「私が何かミスでもしたんでしょうか」
テシク「分かりきったことでしょ。ブツの回収に時間が掛かりすぎなんじゃないか、裏切り者の監督官は探しているんだろうか、どれもどうってことはないんだけど… それでも、たった一つだけ、それだけは僕もちょっと気になってね」
キチョル「…。」
テシク「キム・ソンエ…。あの女が生きているのを報告もせず、今でもあの女の好きなようにやらせてる。なぜあの女にそこまで親切にしてやるんだろうか」
キチョル「…。」
テシク「ひょっとして情が残ってるんじゃなかろうか。それがずーっと引っ掛かりましてね」

「…。」テシクは黙って左手を差し出した。
手の甲は今でも焼けただれた痕が残っている。

キチョル「私をこんな目に遭わせた人間なんです」
テシク「…。」
キチョル「今回の作戦さえ終われば、私自身の手でキム・ソンエを裁き、我が真意を証明します」

思い詰めた様子で答えるキチョルに、テシクは豪快に笑い声をあげる。
「さてと!」彼は手を叩き、立ち上がった。

テシク「先輩、そりゃ僕は先輩を信じてますよ」
キチョル「…。」
テシク「上にも僕がよ~く言っておきますから」

立ち尽くすキチョルの横を通り過ぎ、テシクが部屋を出て行く。
キチョルが懐のピストルにそっと手を掛けると、向こうからテシクの部下が顔を見せた。

キチョル「…。」

静かに… キチョルが懐から手を出すと、テシクが不意に振り返った。「あぁ」

テシク「当分の間、対南工作は全て僕が指揮します。先輩が今まで何をしていたのか全部把握するまで、作戦は全面中止です。党の指示ですから、その通りに。僕の指示に従ってくださいね」

テシクは不敵に微笑んだ。

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4つの写真をプログラムが解析するのを茫然と眺め、ソヌは溜息をついた。
「昔、訓練を受けたときに聞いたことがことがあるんです」彼はチョ・スヨンの話を思い出す。
「中国で作戦に失敗して、長い間収容所にいたって」スヨンは”火傷痕の男”のことをそう話したのだ。

「ある女性が原因で失敗したって聞いたんだけど…」
「どんな女性です?」
「同僚だったけど… 女性は死んだそうです」

男は中国で彼自身の前にも現れた。「すぐにまた会うことになる」と…。

ソヌは混乱していた。
モニターの電源を落とし、彼はぎゅっと目を閉じる。

ソヌ「…。」

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ひとりになったキチョルは簡易ベッドに腰を下ろした。
懐に忍ばせたピストルを出し、テーブルの上に置く。
財布を手に取ると、テシクが調べなかった横ポケットに指を突っ込んだ。

キチョル「…。」

彼が取り出したのは、切手ほどの大きさの小さな写真だ。
ソンエ… いや、幸せに暮す『パク・ヘリム』を、家族写真からちぎり取ったものだった。

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#なんちゅー寂しそうな顔すんねや、あんた…

裏返すと、そこには数字が小さな字で書き入れてあり、1から順番に入れたバツ印が、9まで進んでいた。

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PCの前でじっと目を閉じているうちに、辺りはすっかり明るくなっていた。
ソヌは立ち上がり、デスクの上の資料を片付け始める。

瀋陽爆発事件の写真に、彼の手が再び止まった。
「…。」心の中に、それは得体のしれぬ鉛のように重くのしかかった。

そこへ電話が鳴り始める。
『母さん』発信者の名前を見つめ、彼はそのまま目を逸らした。

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ヘリムは夜通し主(あるじ)の戻らなかったソヌの部屋で、電話に耳を済ました。
「ただいま電話に出られません」息子の声の代わりに、音声メッセージが流れる。

ヘリム「…。」

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一体何があったんだろうか。
ヘリムの胸の中で急速に不安が膨れ上がった。

諦めて部屋を出ようとしたところで、メールが届く。「!」
思わず顔をほころばせ、彼女はそれをタップした。「?」

メールは『発信者番号表示制限』からだ。

『作戦は延期になったから、当分の間ゆっくりしてろ』

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「お母さん、どうしてあんなに若くて綺麗なのかな?」ウナが並んで出勤してきたヒョンテに漏らした。

ウナ「それに料理もお上手だし」
ヒョンテ「どこが?不味かったぞ」
ウナ「美味しかったじゃないですかー。すっごく仲睦まじく見えました。家族って、しょっちゅう顔を合わせるからって仲良いわけじゃないでしょ?うちの家族なんて、集まってもTV観てるだけ。会話もないし、何考えてるのか、容疑者の心理を読むより難しいんですから」
ヒョンテ「家の中のことは外から絶対分からん。俺だって嫁が離婚してくれって言い出すまで、ちっとも気づかなかったんだ」
ウナ「もう、酷い例!それにしても、昨日は来ないって言ってたのに、どうして来たんですか?」
ヒョンテ「お前に会いにな」
ウナ「嘘!」

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ヒョンテはブースにソヌがいるのを見ると、「俺たち朝はコーヒー飲まなきゃな」とコーヒーを頼み、ウナを押し戻す。
ウナを追い出しておき、ヒョンテはソヌに近づいた。「おい、昨日はホントに何でもなかったのか?」

ヒョンテ「何を見間違えたんだよ?」
ソヌ「あ… ファン・ギチョルが乗った車、あるでしょう?似た車を見たんです」
ヒョンテ「本当か?!」
ソヌ「車のナンバーを見ようとしたんですけど、行ってしまって。追いかけようとして電話を切ったんですけど、見失ってしまったんですよ」

ソヌのブースに入ってくると、ヒョンテはデスクの上の資料をめくる。
88年の瀋陽爆発事故の資料だ。
「…。」ソヌはさりげなくそれを見守った。
ひと通りめくり終えたのを見ると、ソヌはホッとしたように上着を手に取る。

ソヌ「念の為に防犯カメラを確認してきます」

ソヌがブースを出ると、ヒョンテが声を上げた。”今、我々に隠していることがありますか?”

ソヌ「?」
ヒョンテ「嘘発見器にかけられた時、それが最後の質問だったと思うが。覚えてないか?そのときは、何も隠し事はないと言ったんじゃなかったか?」

「そうですね」ソヌはいつもと変わらぬ柔らかい口調で答えた。

ヒョンテ「それが本当であってほしいよ。心からな」

「俺はこれ以上同僚を失いたくない」ヒョンテはソヌからわざと目を逸らしたまま、淡々と言う。「どんなケースであろうと」

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ソヌはそっと後戻りし、ブースの中へ顔を覗かせる。「そんなことにはなりませんから」
出掛けて行くソヌの背中を、ヒョンテは不安げな目で見送った。

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ここで一旦区切ります。

最後のヒョンテの目は、疑惑ではなく心配してる目ですよね。
ヒョンテの長年の勘がどう働くのか、そこにも期待したいです。

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