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主君の太陽13話あらすじ&日本語訳 vol.1

   

社長室に行くとクマおじさんたちのお歌が聞ける、温かいショッピングモール、キングダム。
そんなキングダムが舞台の「主君の太陽」13話前半です。

はぁ…。そろそろ冒頭に書くことが思いつかない。

1673

ではさっそく~

「テ・ゴンシル…。愛してる」

手術室に横たわるチュ君の心電図は「0」を示していた。
医師が心臓マッサージに取り掛かる。

+-+-+-+

手術室の前に駆け込んできたのは叔母と副社長だった。
テ嬢がいるのに気づくと、叔母は厳しい表情で彼女の前に進んだ。

叔母「あなたと一緒にいたんですって?」
テ嬢「…。」
叔母「何だか不吉な人だと思ったのよ。離れなさいって…離れなさいって言ったでしょう!!!」
副社長「君…」

声を荒げる妻を副社長が制した。
そこへ医師が現れる。

叔母「チュンウォンはどうなりました?」
医師「手術中、一時は心臓が停止しましたが、幸い今は正常に戻り、手術が進んでいるところです」
叔母「(安堵の溜息)」
テ嬢「死んでいないんですか?社長はまだ生きているんですか?」
医師「幸い心臓を貫通してはいませんでしたので。手術は無事終わるでしょう」
テ嬢「(ぶつぶつ)死んだんじゃなかったんだわ…。それじゃ、あのときのホテルのおばさんみたいにちょっと出て来ただけだったんだ…」
叔母「!」
テ嬢「私、行かなきゃ!彼は自分が死んだと思ってるんです。無事に帰って来たかどうか私が…」

そのとき、叔母の平手が飛び、テ嬢の頬を打った。

叔母「死んだですって?死んだなんて言葉がどこから出るのよ!!!」
テ嬢「…。」
叔母「二度と…二度とチュンウォンのそばをうろつかないで!」
テ嬢「…。」

じっと俯いたままテ嬢は涙を流した。

+-+-+-+

長い手術が続いていた。
廊下で待っているテ嬢の前に、キム室長が現れる。

キム室長「テ嬢」
テ嬢「社長は…?」
キム室長「手術は無事終わりました」
テ嬢「意識は戻ったんですか?」
キム室長「(首を横に振る)」
テ嬢「…。」
キム室長「叔母様は今そばにいらっしゃいません。少しの間だけでも入ってごらんなさい」
テ嬢「…ありがとうございます、室長」

+-+-+-+

手術を終えたチュ君は、病室へ移動していた。
それでも意識のないままベッドに横たわっている。
その痛々しい姿を目の当たりにし、彼女の涙が溢れだした。

「お前の見ている世界に深入りするのは危険すぎる」
「すでに俺は…行くところまで行ったな」
「そうやって夢中でお前だけを見ているうちに、完全に惑わされたようだな。俺は」

自分が彼を危険な世界に引きずり込んでしまったのは紛れもない事実だ。
もう取り返しはつかなかった。

+-+-+-+

カン・ウが駆けつけると、病室の外をキム室長が守っていた。

カン・ウ「社長は?」
キム室長「(首を横に振る)」
カン・ウ「テ・ゴンシルさんはまだここにいるんですか?」
キム室長「(首を縦に振る)」

カン・ウは病室の扉を見つめた。

+-+-+-+

テ嬢は彼の手にそっと指を伸ばした。
近くにあるようで遠い彼の手…。

♪ 近づけば遠ざかる
思うようにいかない わたしの愛

わたしの心などお構いなしに
ただ明るく わたしに笑いかける

一日に何十回 思い直そうとしても
愛は恐れもせずに 少しずつ… ♪

テ嬢は後ろで見つめているカン・ウに気づくと静かに口を開いた。

1672

テ嬢「社長を見たんです」
カン・ウ「…。」
テ嬢「自分が死んだと思って別れの挨拶をしたんです。戻って来なかったらどうしよう…」

言葉が見つからず、カン・ウは横たわっているチュ君に目をやった。

テ嬢「見ることはできるけど、霊を呼ぶことは出来ないの…」

そのとき、テ嬢は以前自分に忠告したコ女史を思い出す。

「闇は遂には光を飲み込み、死は遂には生を飲み込む」

テ嬢「私、あの人に会わなきゃ…」

テ嬢は駈け出した。

+-+-+-+

テ嬢はコ女史の前に座っていた。

コ女史「死の内で光る太陽に会ったため、その方の霊魂は自分が死んだと思っているのでしょう」
テ嬢「…。」
コ女史「まだ生きていると、戻らなければいけないと、自覚することはできないでしょうね」
テ嬢「私に会ったから戻らないと?」
コ女史「きっと…永遠に消える準備をしているのでしょう」
テ嬢「…。」

+-+-+-+

チュ君は暗闇の中で本をめくっていた。

「チュンウォン…」

そこへ声が聞こえてくる。

チュ君「?」

彼の前に姿を表したのは…ヒジュだ。

ヒジュ「もう本が読めるの?」
チュ君「俺は死んだから」
ヒジュ「やっと私が見えるようになったのね…。やっと一緒にいられるわ」

+-+-+-+

テ嬢がコ女史に続ける。

テ嬢「彼の霊魂を呼び出してください。生きているんだから戻らなきゃダメだって言ってあげなきゃ!」
コ女史「私はあなたのように霊魂を見ることが出来ないけれど、霊魂を操ることはできるわ」
テ嬢「早く呼んでください!手遅れになれば戻って来られなくなるかもしれません!」
コ女史「私があなたを助けたら、あなたは私に何をしてくださるの?」
テ嬢「…。」
コ女史「私はあなたの能力が必要なのだけれど…生贄を差し出してくださる?」
テ嬢「…生贄になれば、何がどうなるんですか?」
コ女史「あなたの思うように生きることはできなくなるでしょう」
テ嬢「…。」
コ女史「どうしました?計算が必要?」
テ嬢「…。」
コ女史「時間がないでしょうに」
テ嬢「…。生贄でも何でも差し上げます。彼を元通りに返してください」
コ女史「取引が成立しましたね」

「さぁ、あなたの殿方を呼んで差し上げましょう」そうコ女史が声を掛けると、テ嬢が緊張で姿勢を正す。

コ女史「彼を呼ぶには物が必要です。彼の気づくような物が」

テ嬢の手が胸元の太陽のネックレスに伸びた。

コ女史「あなたが彼の太陽であるという印(しるし)かしら?」
テ嬢「…。」
コ女史「それがいいでしょう」

テ嬢はネックレスを外し、差し出すと、コ女史は奪うようにそれを受け取った。

コ女史「話したとおり、あなたに会ったために彼は自分が死んだと信じているわ」
テ嬢「…。」
コ女史「とても気の毒だけれど、彼を呼び戻すためには、光り輝くあなたを見た全ての瞬間を消し去らなければなりません」
テ嬢「私に会いに来た瞬間を憶えてはいられないということですか?」
コ女史「…全ての瞬間だと言ったのですよ」
テ嬢「…。」
コ女史「太陽…。光り輝くあなたを見た全ての瞬間、このネックレスを持っている全ての意味…。それが消えるということです」
テ嬢「!!!…私を忘れてしまうんですか?!」
コ女史「彼を取り戻すための選択です。大丈夫ですか?」
テ嬢「…。」
コ女史「…。」
テ嬢「構いません。どうせ狂った太陽は彼の人生から消えることにしたんだから…」

「さぁ、チュ・ジュンウォンさん、あなたはどちらに?」

そう言って、コ女史は蝋燭を灯した皿の中央にネックレスを落とした。
呪文を記した札に火をつけると、ネックレスの上にかぶせる。
炎の中で、太陽は白く輝いた。

+-+-+-+

結末まで本をめくると、チュ君は本を閉じた。
「そして誰もいなくなった」赤い刺激的な表紙が現れる。

本を椅子の上に置き、彼は立ち上がる。

#背の高い彼が立ち上がると、ヒジュがほんの子どもに見えるね。

チュ君の後ろの扉が開き、光が差し込んだ。
先に扉の方へと階段を上がっていくヒジュに、黙ってついて行こうとするチュ君。
そのとき、強い風が吹き、彼の進路を遮った。
風を避けようとかざした手のひらの向こうで、ヒジュは煙のように消えていく。
その手には、いつの間にか太陽のネックレスが揺れていた。

コ女史(声)「あなたは死んだのではありません。戻らなねばなりませんよ」
チュ君「!!!」
コ女史(声)「消えるのはその光なのです」

彼の手のひらで、光っていた太陽が消えた。

+-+-+-+

テ嬢は彼の病室へと急いでいた。

コ女史(声)「忘れてはなりません、あなたと私の取引を。彼は無事戻ってきているでしょう」

テ嬢「社長!どうか…どうか無事目覚めてください!!!」

+-+-+-+

病室へやって来たハンナは、広げた手で掴むように彼の首に伸ばすと、思い直したように指で頬を撫で上げた。

ハンナ「チュ・ジュンウォン。目覚めて。時効になるまでの15年間、あなたに会う日を待っていたのよ」

チュ君がゆっくりと目を開けた。

「目が覚めました?」声のするほうに視線を動かすと、女性がそこにいるのがぼんやりと目に入った。

ハンナ「目が覚めたんですね、チュ・ジュンウォンさん」

彼女は自分を見つめ、そう言って微笑む。

チュ君「?」
ハンナ「外に叔母様がいらっしゃいます。お呼びしますね」
チュ君「…。」
ハンナ「すごくお喜びになるでしょうね」

ハンナが内線電話を取る。

ハンナ「患者の意識が戻りました」

+-+-+-+

テ嬢が病室の前へ辿り着いたとき、ちゅうどやって来た叔母と出くわした。

テ嬢「!」
叔母「チュンウォンは目覚めました」
テ嬢「はぁ…良かった…」
叔母「テ・ゴンシルさん。心からお願いするわ。これ以上は駄目よ」

テ嬢はぎゅっと口を閉じ、俯いた。

#叔母がテ嬢の名前を正しく呼んだ瞬間をここへ持って来るとは…。

叔母と医師たちが中へ入ると、キム室長はそこに残った。

テ嬢「良かったです…室長」
キム室長「待っててください。叔母さんがお帰りになれば、少し会うことも出来るでしょうから」

テ嬢は何度も首を横に振った。

テ嬢「いいんです。ここまでにします。これ以上は行きません」
キム室長「社長はテ嬢に真っ先に会いたがるはずなのに」
テ嬢「(首を横に振る)そうじゃないと思います。今度こそ本当に彼の人生から私は消えているはず」
キム室長「…。」

テ嬢は太陽のネックレスを握りしめた。

+-+-+-+

「死んだかと思ったわ!」
すっかり意識の戻った甥を確かめるように、叔母は彼の頬を両手で包んだ。

チュ君「僕、どうなったんです?」
叔母「どうなったも何も!あの子を遠ざけるように言ったでしょう!」
チュ君「…。」
叔母「チュンウォンあなた、あの子について行って本当に死ぬところだったのよ!」
チュ君「何について行ったんです?誰のことです?」
叔母「???」

チュ君が手を伸ばすと、キム室長が歩み出た。

チュ君「キム室長」
キム室長「主君、お目覚めですね。良かった…」
チュ君「僕はどうしたんです?本当に…雷に打たれたんですか?」
叔母「?????」
キム室長「………。」

考えこむ自分を、叔母とキム室長が不思議な表情で見つめている。

チュ君「…。」

+-+-+-+

病院の休憩室にいるテ嬢のそばにはカン・ウがついていた。

#こういうときほど2番手くんの存在が身にしみるときはないですよ、えぇ(涙

カン・ウ「あなたを覚えてはいられないって?」
テ嬢「そうだろうって言ってました」
カン・ウ「…。」
テ嬢「霊を見る女のそばで怪我して、霊になって現れた記憶は全部消えるって」
カン・ウ「…。」

#もちろんカン・ウは実感が湧かないでしょうけど、本当のことを話せる人がいるのが嬉しいね。

+-+-+-+

チュ君は懸命に記憶をたどっていた。

チュ君「うちのゴルフ場の土地で、立ち退きを拒否してる家に…キム室長と一緒に行ったところまでは覚えてるんです」

「雷に打たれましょう」あの日、激しい雨の中で、彼は傘から離れて両手を広げたのだ。

チュ君「雷に打たれてやると得意になって… 本当に打たれたんじゃないんですか?僕の記憶はそこまでなんだが…」
キム室長「雷の日は随分前のことです」
チュ君「…。」
叔母「チュンウォン、あなた本当に何も覚えていないの?」

チュ君は体を動かそうとして顔を歪ませる。

チュ君「体中が(?)みたいで、背中にドライバーが刺さった実感は湧きますね。けど!…僕はどうしてこうなったんですか?」

彼は苛立ちを募らせると、一同は途方に暮れた。
沈黙に耐え切れず、「君はテ・ゴンシ…」と口走った副社長の口を、叔母の手がピシャリとひっぱたいた。

チュ君「?」
叔母「とにかく安静にしてなさい」
チュ君「…。」
叔母「まずは体を回復させて、(甥の頭を撫で)ここは後で整理しましょう」
チュ君「ところで、あの人は誰です?」

後ろに黙って立っているハンナをチュ君が指さした。
一斉に皆が後ろを振り返る。

叔母「あぁ、あちらもそのうち紹介するわ」
チュ君「…。」
叔母「とにかく休みなさい」

ハンナを振り返ったキム室長は、すぐには向き直らず、何か頭に引っ掛かって考えを巡らせる。

叔母は主治医に甥のことを頼み、夫とキム室長に「出ましょう」と声を掛けた。
キム室長はもう一度ハンナを見つめ、叔母の後に続いた。

主治医「息をするときはいかがです?」
チュ君「痛いですね」
主治医「明日、詳しく検査することにしましょう」

ふと視線を上げると、そこにはハンナが一人残って自分を見つめている。
何も言わずに会釈すると、ハンナはゆっくりとした足取りで病室を出て行った。

チュ君「…。」
主治医「検査してみれば分かるでしょうが、一時的な記憶障害でしょう」

何もない自分の手のひらを広げ、チュ君はそれをじっと見つめた。

チュ君「何か…キラっと光って…消えたんだが…」

確かに何かがあったのにどうしても思い出せない…。
もどかしさに、チュ君は顔をしかめた。

+-+-+-+

自宅に戻ったテ嬢は太陽のネックレスを指先で遊ばせ、悶々としていた。

テ嬢「約束したでしょ…」

「それでも、本当に私が社長の人生から消えてほしいと思ったら、そのときは一度で聞き分けます」

どうしようもなく涙が溢れだした。

テ嬢「それが今なんだわ…」

+-+-+-+

叔母、副社長、キム室長の3名が鎮痛な面持ちで顔を合わせていた。

叔母「チュンウォンが覚えていないのは幸いだったわ。決して…誰もチュンウォンの前であの子の話を出さないでください」
副社長「…。はい、分かりました」
叔母「キム室長」
キム室長「…はい」
叔母「お願いしますね」
キム室長「分かりました」

もう一度妻に睨まれると、副社長は力なく目をそらした。

+-+-+-+

テ嬢姉と軽口君は、いつもの定位置だ。

ハンジュ「主君はテ・ゴンシルさんと一緒にいて死にかけたって、すごく噂ですよ」
姉「コンシルと社長で失踪した子どもを探しに行って、殺人犯に出会っちゃったんだって…。社長がコンシルを助けてくれたの」
ハンジュ「けど、テ・ゴンシルさん、そのカーセンターに死んだ子どもがいるってどうして分かったんです?」
姉「知ろうとしないことね」
ハンジュ「副社長の奥さん、主君の叔母さんがテ・ゴンシルについて緘口令を布いたから、大きな声じゃ話せないんですよ」
姉「緘口令ってのはね、小さい声で言ってもダメなのよ」
ハンジュ「…。(頷く)」

+-+-+-+

チュ君は早々に退院し、自宅に戻ってきた。
付き添った叔母はまだ不安を拭えない。

叔母「まだ病院にいなさいよ。もう退院するなんて、どうして言ったの?」
チュ君「息はできるし、家が楽なんです」
叔母「一人で大丈夫?」
チュ君「…。」
叔母「うちの家にいなさい。あなたの好きなものも準備させてあるのよ」
チュ君「持ってきてください。ものすごく腹が減ってるんです」
叔母「そうなの?ちょっと待ってなさい」

叔母は立ち上がると、急いで出て行った。
「それじゃ、休んでなよ」と副社長が出ていこうとすると、チュ君は「ここに残れ」と目で合図をする。

副社長「(俺?)」
チュ君「(うん)」
副社長「(ここに?)」

妻が出て行ったのを確認すると、副社長はチュ君の近くに腰を下ろした。

副社長「どうした?俺に話でも?」
チュ君「(自分の胸に手を当て)僕はどうなったんです?叔母は何か隠してるようだし、簡単に整理して報告してください」
副社長「えーと、俺は特に言うことはないがな」
チュ君「…。」
副社長「君の会社にもちゃんと行ってるし、キングダムの状況も上手く収束しているところだ。あのカーセンターへは偶然犯人を知った社員と一緒に行ったんだ」
チュ君「(首を横に振る)何かとても重要な核心、ポイント、根っこの部分が抜けているんです。それが何なのか、副社長は知っているでしょう?(横目)」
副社長「…。」
チュ君「それが何なのか言いたくて、口がそ~わそわ、そ~わそわしてるようだけど、叔母のいない間に吐き出してください」
副社長「何がそわそわだ…」

テーブルの上に足を投げ出したチュ君は、足の下に何かあるのに気づいた。
絵本だ。

チュ君「こりゃまた何です?」
副社長「知らん!何で俺に聞くんだ?」

チュ君は本を手にとった。

チュ君「童話の本ですね。こんなものがなぜ僕の家に?」
副社長「ははっ、そうだな。君は本も読めないのに」
チュ君「(ジロリ)」

本の表紙を乱暴にめくったチュ君は、目を見張った。
文字が… 揺れることもなく、ハッキリと見える。
彼はタイトルをゆっくりなぞってみた。

副社長「俺は本当に何も知らないし、話すこともない」
チュ君「(もう1ページめくる)僕はどうしたんです?」
副社長「(イラッ)俺に何が分かる?!俺の口からは何も出んぞ!」

ページをめくるチュ君の手がどんどん早くなる。

チュ君「どうして… 文字を読めるんです?」
副社長「?!」

彼はページに刻まれた文字をしっかりたどっていた。

副社長「チュ社長…本当に… 読めるのか?」
チュ君「本当に雷に打たれたのか?俺は一体どうなったんだ?!!!」

+-+-+-+

テ嬢は身支度を整え、太陽のネックレスをつけた。

テ嬢「もう見てもわからないから、つけててもいいよね」

鏡の前で、胸元のネックレスをしっかり撫でる。

テ嬢「お守り装着。そう、私はこれがあればいいの。これさえあれば大丈夫。テ・ゴンシル、防空壕を首に掛けてるのね」

彼女の声に涙が滲んだ。

+-+-+-+

キングダムのショッピングモールを歩いていると、テ嬢は向こうから歩いてくる誰かに気づき、足を止めた。
元気一杯で歩いてくるその人は…チュ君だ。

#ええええー

テ嬢は咄嗟にうつむき、胸元のネックレスを握りしめた。
店舗を見ながら上機嫌に歩くチュ君は、そのままテ嬢に気づくこともなく…通り過ぎた。

テ嬢「…。」

そのとき…

カランカランカラン!
誰もいないベンチの脇でゴミ箱の蓋が突然回る。
ゴミ箱おじさんがチュ君に一生懸命訴えているのだ。

チュ君「!…びっくりした」

振り返ったチュ君は、その向こうに背を向けている女性にふと視線を向けた。

チュ君「?」

何か不思議に感じたチュ君が、彼女の後ろ姿に目を細めた。

テ嬢「…。」
チュ君「…?」

1674

彼女の方へ歩き出そうとしたその瞬間、テ嬢は振り返ることもなく遠ざかっていった。
追おうとしたとき、向こう側の通路を歩いてきた叔母が声を掛ける。

叔母「どうして突然会社に出て来たのよ?まだ家で休んでなさい」
チュ君「叔母さん、僕の背中にこれくらいのドライバーが刺さったんですよね?それで魔法か何か掛かったみたいだ」
叔母「?」
チュ君「文字が読めるんです!スラスラと全部!」
叔母「!」

「キングダム!あなたの一番特別な夢を叶えます」チュ君はそばに見える文字を読んでみせた。

チュ君「毎日ここを通ってたのに、やっと読めました!」

驚いて何も言葉が出ない叔母。

チュ君「けど、誰があんなキャッチフレーズを考えたんです?ダサいな。替えないといけませんね。あれは副社長の趣味だ。」

+-+-+-+

顧客センターで、テ嬢はコンシル人形に微笑みかけた。

テ嬢「コンシル、彼、字を読めるようになったんだって。ゴミ箱おじさんがハッキリ聞いたって。良かったよね。良かった…。」

テ嬢はコンシル人形を撫でる。

テ嬢「あんたも行こうね」

そう言って彼女はコンシル人形を箱に詰めた。

+-+-+-+

社長室のデスクで、チュ君は書類を前に目を輝かせていた。

チュ君「キム室長、これからは自分で書類を読みます」
キム室長「(笑顔)」
チュ君「キム室長の業務が半分…いや、10分の1に減るでしょう」
キム室長「そうなると思っていました」
チュ君「?」
キム室長「変わろうと努力なさっていましたから」
チュ君「僕が?」
キム室長「えぇ」

そこへ、アン代理が花かごを持ってきて、デスクの上に置いた。
『早く回復なさいますように ジャイアントモール代表 イ・ジェソク』

チュ君「何です?」
アン代理「ジャイアントモールの社長から回復祝いのお花です」

アン代理が下がると、チュ君はまた行きどころのない考えを巡らせた。

チュ君「全くわからないな…。ジャイアントモールの社長と僕は、花をやり取りする仲になったんですか?」

#爆笑

キム室長「少し前に、お二人で一緒にゴルフもなさいましたよ」
チュ君「ゴルフ!…あり得ん」
キム室長「出て来られたついでに、これまで保留していた個人的な事案をどうなさるか決めてください」
チュ君「個人的なこととは?」
キム室長「警察から、勇敢市民賞を差し上げたいと連絡が来ています」
チュ君「僕に?何故です?」
キム室長「…。」
チュ君「あぁ。背中にドライバーが刺さりながら死んだ子を探したこと…そのことですか?」
キム室長「その…それだけでなく、以前、武装脱営兵に投降するよう自ら説得なさったこともありましたし。それで感謝したいそうです」
チュ君「武装脱営兵?!」
キム室長「えぇ、そうですよ」
チュ君「(当惑して手を振る)それは僕じゃないでしょう。何かの間違いだ。チュ・ジュンウォン(one)じゃなくて、チュ・ジュントゥ(two)、チュ・ジュンスリー(three)だったんですよ。(笑う)笑えなさすぎて笑えるな」
キム室長「…。」
チュ君「…。つまらない冗談でしょう?」
キム室長「チュ・ジュンウォン(one)に間違いありませんよ」
チュ君「…?」
キム室長「あぁそれと、出ていらしたついでに、支援するとおっしゃっていた虐待児保護センターの建設基金も決済してください」

混乱し、「ちょっと待った」と手で制すると、チュ君は頭を抱えた。

1675

#キター 懐かしのこのポーズ!(遠~~い目
次は両手バージョン希望♪

チュ君「僕が…児童保護センターを建てるって?」
キム室長「…。」
チュ君「キングダム別館でもなく、駐車場でもなく、児童保護センター?」
キム室長「えぇ。そうおっしゃいましたよ」

チュ君は立ち上がった。

チュ君「叔母が僕に何か変な薬を飲ませたに違いない!何を飲ませてるのか聞いてみなければ!…いや、違う。脳検査、もう一度受けないと」

チュ君は歩きかけてまた立ち止まる。

チュ君「けどキム室長、僕がこんな柄にも無いことをしていたのに、変だと思わなかったんですか?」
キム室長「…。(さぁ?とごまかすポーズ)」

1676

チュ君「僕が思い出せない期間…太陽が逆に昇ったか?」
キム室長「どうでしょう。主君のそばにだけ稀にみる太陽が昇っていたでしょうかね」
チュ君「?!」
キム室長「(笑)」

チュ君は膨れ上がる疑問に朦朧としながら部屋を出た。

+-+-+-+

ここで区切ります。

理屈っぽい誰かさんがしばらく寝ていてくれたおかげで、めちゃくちゃ楽に作業が進みましたわ。
もうちょっとゆっくり寝ててくれても(以下略

こういうのを不幸中の幸いと言います。

いや、そのくらい憎まれ口を叩いてもいいよね、っていうくらいあり得ない速攻回復と、テ嬢の泣きっぷりでしたわ。
ヒョジンさんの泣きの演技、ものすごくリアルでいいです。悲しみが溢れます。
顔も崩さずツツーっと綺麗に涙を流す女優さんもいらっしゃいますが…。

ではではノ

 - 主君の太陽 ,

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