プロデューサー5話あらすじ&日本語訳 vo.2
キム・スヒョン、IU、コン・ヒョジン、チャ・テヒョン、出演、KBS韓国ドラマ「プロデューサー」5話、中盤です。
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「ずいぶんお酒をお召しでしたが」インタビュアーが言う。
イェジン(インタビュー)「お酒って実は精神力なんです。私は精神力が強いから、基本的にあまり酔わなくて。それにたとえちょっと酔ったとしても酒癖はすごくいい方だから、何ていうか… 自分を信じて飲んでるっていうか?」
廊下で、イェジンはスンチャンと出くわした。
イェジンは誰もいないかどうかさっと後ろを振り返る。「あんた、もう飲んじゃダメよ」
イェジン「ずっと見てたけど、あんたずっと飲んでるでしょ。そのうちやらかすわ」
スンチャン「はい。先輩もだいぶ飲んでいらっしゃるみたいだけど」
イェジン「あのね、私は強いんだから。人の心配しないで、自分をコントロールしなさいよね」
スンチャン「はい」
「いいわ。行って」イェジンの合図で彼は小さく頭を下げる。
少し進んだところで、彼は立ち止まり後ろを振り返った。
廊下の突き当り右手にトイレのドアがある。
そこを開けると、イェジンは靴を脱いで中に入り、きちんと靴を揃えた。
スンチャン「???」
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イェジン(インタビュー)「(裸足で)何です?信じられないんですか?私ホントに酔ってませんし。人が言う”酔っ払った”って感覚、私も一度感じてみたいんですよね。ところで、ここって女性トイレじゃないんですか?入っちゃダメじゃないですか。ほら、ちっとも酔ってないでしょ?物事の区別もきちんとしてて」
ジュンモ(インタビュー)「イェジンのヤツが言ったんでしょ、酔ってないって。あいつが酔ってないって言ったら、酔ってるってことなんだ」
インタビュアー「本人は酒癖がとてもいいとおっしゃってましたが」
ジュンモ(インタビュー)「あいつだけはそんなこと言っちゃダメですよ」
#密着記者さん、最近だんだん主旨が違ってきてないか?
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皆がぞろぞろ店を出て行く。
「あんた!私がジュンモの家に住んでるってバラした?バラしてない?」イェジンの大きな声に、スンチャンが慌てる。
イェジン「バラしたの?バラしてないの?ん?!」
スンチャン「先輩、バレますって、バレますから!」
「ジュンモ!」イェジンが今度はジュンモを捕まえる。「私たち家に帰ろ~!家に~!」
「”それぞれの家”に帰りましょう、先輩」スンチャンが必死で取り繕った。
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ジュンモ(インタビュー)「とにかくあいつ、酔ったら秘密ってもんがなくなる。黙っていたこと全部ぶちまけて、それだけならいいけど、愛嬌が出るんですよ。普段は可愛げなんて全くないのに、酔ったら今度は愛嬌がありすぎる。あいつ、中間ってもんがないんだ。極端すぎる」
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「イェジン、2次会に行きたいです~♪屋台に行きたいです~~!」帰り道、イェジンはジュンモとスンチャンを前にはしゃぎまくった。「早く早く!早く行こうよ~~!」
ジュンモ「(スンチャンに)あんま驚くなよ。ずっと見てるとムカついてくるから気をつけろ。あぁ、また来た」
イェジン「あんたたち~!イェジンは砂肝食べたいよ~!コプチャンとタコも食べたいよ~!ジュンモ、お願い!早く行こう~!」
「あんたたち!ねぇってば!」イェジンは二人の後ろにクルッと回り込むと、真ん中から二人の肩にぶら下がるように駆け出した。
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帰りの車の中で、シンディはぼんやり外を眺めていた。
「?」彼女はふと身を乗り出す。
スンチャンたち3人が楽しそうに肩を組んで走っているのが見えた。
シンディ「…。」
「ところであれはどうなった?」運転席でマネージャーが口を開く。
シンディ「…何よ」
マネ「言ってたろ?傘のPD、一泊のうちに落とすって」
シンディ「落とせるとは言ったけど、落とすとは言ってないわ」
マネ「同じことじゃないのか?」
シンディ「同じなわけないでしょ。出来るのとやるのは違うわよ、全然」
マネ「いつでも落とせるけど、お前にそのつもりがないから、まだ落ちてないってことか?」
「…うん」シンディはポツリと答える。「そうね」
マネ「傘PDはまだお前に落ちてないんだな」
シンディ「ちょっと静かにしない?」
マネ「音楽が大きいな。絞ろうか」
シンディ「違うってば。音楽だけ聴いていたいのよ」
マネージャーがステレオのボリュームを上げた。
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大きなテレビの画面に、ミュージックバンクでのシンディのパフォーマンスが映しだされている。
「世も末だ」そうぼやいているのは、スンチャンの父親だ。
彼は妻と末娘と三人でテレビの前に並んでいた。
母「あんなパンツ一枚でうろつく子たちがテレビに出てくるなんて」
「ねぇあなた」スンチャンの母が夫に向き直った。
父「ん?」
母「この世はソドムとゴモラのようだわ」
父「あぁ、そうだな」
※ソドムとゴモラ=旧約聖書に登場する都市。滅びの象徴。
妹「あれ、シンディよ。お兄ちゃんはシンディと撮影に行ったんだよ、お母さん」
父「ふぅん」
母「何ですって?!あなた、どうしましょう!あんなパンツ一枚で出歩くような子たちが、うちのスンチャンのこと好きになって、飛び掛ってきたら?!」
父「おい、そりゃ大変だ。私が汝矣島で公薦を受けられるかどうかの状況で、息子がくだらないスキャンダルに巻き込まれたら!いやぁ、こりゃ致命的だ」
妹「あり得ないって。何でシンディがお兄ちゃんのこと好きになるのよ」
母「もし私があんな小賢しい女芸能人だったとしても、うちのスンチャンにならきっと一目惚れしてたわ」
父「!」
母「だからって仕事に行かせないわけにはいかないし。顔を隠して行くわけにもいかないしねぇ」
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結局ジュンモたちは屋台でテーブルを囲んでいた。
料理を運んできた女主人に明るく礼を言い、一人元気なジュンモが箸を伸ばす。
イェジンが食べたがった活タコだ。「おっ!こいつ力強いぞ!」
イェジンは憮然とそれを眺めた。「あんたさ、そこまでして食べたいわけ?」
イェジン「この子たち、生き残ろうとあがいてるのが見えないわけ?」
ジュンモ「…。」
イェジン「こういうの見てると人間ってホント残酷」
ジュンモ「お前が頼んだんじゃないか!タコを!お前っていつもそうだよな。刺し身が大好きなくせに、金魚が死んだって大泣きして」
イェジン「やめようよ。あんたと話しても仕方ないもん。残酷なヤツ」
ジュンモ「俺のどこが残酷なんだよ」
イェジン「あんたは残酷だよ」
ジュンモ「何?」
「見合いするって?」イェジンが勢いに任せてぶちまける。「検事と?美人だって?!」
ジュンモ「あぁ!母さんが言ってたぞ、美人だってな」
イェジン「じゃあ何で私にチューなんかしたのよ!」
「!」半分眠っていたスンチャンが、ハッと目を見開いた。
イェジン「おとなしくしてる人間の心をかき乱しておいて、自分は好き放題ね。恋愛して見合いして合コンして!」
ジュンモ「…。」
イェジン「だからあんたは残酷だって言ってんのよ」
「一体何言ってんだ」ジュンモは顔を歪める。
イェジンがグラスを持ち上げた手を、スンチャンがさっと取る。「先輩もうそれくらいに…」
イェジン「…。」
じっと下を向いているジュンモを、イェジンは悲しげに見つめた。
イェジン「あのさ、私がホントに辛いのはね、誰かを好きになったらあんたには全部打ち明けてたでしょ。でも、ジュンモが好きだったら、打ち明ける相手がいないことよ」
「…。」イェジンの手を覆っていた両手の指を、スンチャンはそっと離す。
イェジン「それがホント… 私ホントに辛いよ」
イェジンはグラスの酒を流し込み、ギュッと口を結んだ。「…。」
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「はっ!」イェジンは眩しい朝の日差しで突然目を覚ました。
「変な夢みちゃった」彼女は大きく息をついて頭を押さえる。「ホントに変な夢だった」
ふと見ると、昨日の服装のままだ。「!」
彼女は恐る恐る部屋からでてみた。
と同時に、向こうの部屋からジュンモが出て来た。
ジュンモ「トイレ行くのか?」
「ううん」顔をまっすぐ見られず、彼女は目を逸らしたまま答えた。
ジュンモ「あぁ、昨日飲み過ぎた」
疲れに顔をしかめたまま、彼はトイレへと消えていった。
イェジン「はぁ、ホント助かるわ、ジュンモ。お酒さえ飲めば全部忘れちゃう、あのろくでなし!ホントありがとう、ジュンモ!」
と、ホッとしてクルリとリビングへ向かった彼女はぎょっとして立ち止まる。
ソファにうずくまって眠っていたのは、スンチャンだ。
イェジン「何なのよ!あんた何でここに寝てんの!」
足の先でスンチャンを小突くと、彼はすぐ目を開けた。「僕、昨日先輩たちをお送りして…」
イェジン「私たちを送ったら、あんたも自分ん家に帰って寝なさいよ。何でここで寝んのさ?」
スンチャン「…。」
イェジン「自分ん家みたいに出入りしちゃって」
トイレから出て来たジュンモも、ソファのスンチャンを見て飛び跳ねる。「な、何だお前!」
スンチャン「…。」
ジュンモ「お前なんでここにいるんだよ!」
スンチャン「昨日先輩たちをお送りして…」
ジュンモ「俺ん家はホテルか何かか?テレビ局の宿直室か?」
スンチャン「…。」
ジュンモ「俺が自由なシングルライフに興じたくて両親からやっと手に入れた家なのに、何でどんどん人が増えるんだよ?」
彼らの後ろで玄関を解錠する音が響き、扉が開いた。
欠伸をしながら入ってきたのは、イェジンの弟イェジュンだ。
ジュンモ「ほらな。また増えたろ」
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食事をしながら、弟イェジュンはスンチャンを気にして口を開いた。「実際…」
弟「僕が歓迎されてないように見えるだろうし、しょぼいヤツだと思われたでしょうけど、一応未来の医者でもあるんですよ」
「黙って食べな」イェジンが顔をしかめる。
弟「後輩さんが誤解なさるかと思ったからさ」
スンチャン「…。」
「ところで後輩さん」彼の興味はまだ続く。
弟「この家で泊まったのは初めてじゃないって…?」
ジュンモがガチャンと音を立てる。「すっかり下宿だ」
食器をシンクへ運び。彼はさっさと食卓を後にする。
弟「(スンチャンに)ここがテレビ局に近いからって、ひそかに居座る計画なのは…」
イェジン「やめなさいってば!この子すぐ向かいの棟なんだから」
弟「向かいってことは12棟?」
イェジュンが息を呑む。「あそこは超広いんだ!」
弟「持ち家?賃貸?」
スンチャン「両親の家です」
「あぁ、ご両親のね」彼はニヤリとして姉をみた。
弟「(スンチャンに)兄貴、うちの姉さん、どうです?」
スンチャン「?!」
弟「最近は年上が流行りだし」
イェジン「ぶっ飛ばすわよ!」
イェジンは自分の食器を手に立ち上がった。「(弟に)さっさとお皿洗って。(スンチャンに)あんたは着替えて会社行かなきゃ」
スンチャン「…はい」
姉がいなくなるのを待ち、イェジュンが続ける。「よく考えてみてくださいよ」
スンチャン「?」
弟「ああいう女性が意外と一途だったりするんですから」
スンチャン「…。弟さんはよく外泊なさるんですか?」
弟「僕ですか?まぁやっぱり未来の医者としては学ぶことも多いし」
スンチャン「それでも、なるべく夜は家で眠ったほうがいいかと」
弟はふっと笑う。「それって、家に帰らずに外泊してる兄貴のおっしゃることじゃないと思いますけど」
スンチャン「それはそうなんですけど。弟さんが外泊したら、お姉さんは男性と二人きりになるんだし」
弟「(ジロジロ)」
スンチャン「それはちょっとどうかなぁと。外泊はちょっと控えられたほうが」
弟「…。」
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考え事をしながら局へやって来たイェジンは、突然彼女にポンと手を伸ばしたホンスンに思わず声を上げた。「きゃっ!」
ホンスン「何ビックリしてんだよ?」
イェジン「ポンスン、私、もう死にたいよ~!」
ホンスン「また飲んで誰かと喧嘩したのか?」
イェジン「私ってそんなイメージ?」
ホンスン「まぁな」
イェジン「昨日って日を私の人生から消しちゃいたいよ」
ホンスン「そんなにやらかしたのか?和解金ださなきゃいけないとか?」
イェジン「そんなんじゃないってば」
ホンスン「ところでお前のところのチームって、事務局で用紙もらうのに何も言われないか?」
イェジン「用紙?知らない。何も言われてないと思うけど」
イェジンは小さく溜息をつく。「あんた、用紙で悩んでるの?」
ホンスン「今はな。うちのチームだけくれないみたいなんだ」
「羨ましいよ」イェジンはホンスンの肩をポンと手を置いた。「用紙が悩みで」
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事務局へ直談判に行ったホンスンは、やはり素直に紙を貰えない。
「裏をちゃんと活用なさい」と、ヤンミはいくらかA4の束を差し出した。
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エレベーターの前をスンチャンが通りかかる。
向こうからイェジンがやってくると、すれ違いざまに小さく口を開いた。「屋上に来て」
「!」スンチャンはクルリと身を翻し、彼女の後に続く。
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KBSの大きな社屋を眺めながら、イェジンは大きな溜息をついた。
イェジン「ゆうべ、何々聞いた?」
スンチャン「…何も」
イェジンはギュッと目を閉じた。「聞いたのね」
イェジン「何も、って言葉がでるほどの何かを聞いたのよ。うん」
スンチャン「…。」
イェジン「よく聞いて。昨日あんたが何を聞いたとしても、何を見たとしても、それは事実じゃない」
「はい」スンチャンは素直に頷く。
イェジン「一種の事故みたいなものよ」
スンチャン「はい、事故ですね」
イェジン「酔うと嘘つく癖があるのよ。別名酔いどれホラ吹きなんだから」
「ははは」彼女は一人で喋り、一人で笑う。
イェジン「だから昨日何を見たとしても、全部嘘だから」
スンチャン「はい」
何も話さない寡黙なスンチャンに、イェジンはかえって不安を募らせる。「それで、何か聞いたわけ?」
スンチャン「はい。昨日嘘をつかれたのを… ちょっと聞いたみたいです」
#この辺の↑遠慮した表現がたまらなくいい
イェジンは絶望的な溜息を押し殺す。「そう」
イェジン「私がどんな嘘をついたわけ?」
スンチャン「ジュンモ先輩に…残酷なヤツだって。何で見合いするんだ、検事で美人ならいいのか、それならどうしてチューし…」
イェジン「ストップ!」
スンチャン「…。」
イェジン「もういいわ。いちいち全部言わないでよ。どうせ全部嘘なのに」
スンチャン「…はい」
「それでさ」イェジンの不安はまだおさまらない。
イェジン「あんたが思うに、ジュンモも私の嘘を聞いたっぽい?」
スンチャン「さぁ… ちゃんと目覚めてはいらっしゃったんですけど、聞いたか聞いてなかったか、そこまではよく…」
イェジンは財布を開くと、札を数枚取り出した。「今日の返済分ってわけじゃないの」
イェジン「プレゼント」
「え?」札を手に取り、スンチャンが首を傾げた。
イェジン「あんたに特殊任務を与えるから」
スンチャン「どんな?」
イェジン「あんたが聞いたことをジュンモも聞いたのかどうか。それを突き止めるっていう、まぁ特殊な任務っていうかさ」
スンチャン「えぇ…。つまり、昨日先輩がお酒に酔ってちょっと嘘をついたんだけど、それをジュンモ先輩が覚えてるか覚えてないか調べなきゃいけないって、そういうことですね」
イェジン「まぁ、事故調査ってことよ」
スンチャン「僕が思うに、ジュンモ先輩も昨日かなり酔っていらっしゃいました」
イェジン「うん、分かってる。あいつ、酔ったらバッサリ記憶なくすのよ」
スンチャン「(うんうん)」
イェジン「そこが唯一の希望なんだけど」
スンチャン「つまり、ジュンモ先輩はいつもどおり記憶がなくしてるのが、先輩の望むハッピーエンドなんですよね?」
イェジン「確率で言えば80%以上は覚えてないわね。ただ問題なのは、昨日私たち、二次会を外でやったでしょ?」
スンチャン「はい、屋台で」
イェジン「屋台だとかえって酔いが覚めるのよね。風が冷たいからさ」
うんうんうん、スンチャンはひたすら実直に頷く。
イェジン「だからちょっとハッキリしないんだけど。どう?あんたが調べてくれるかな?」
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水に何やら粉末を溶かすと、スンチャンは通りかかったジュンモを追いかけ、さっと差し出した。「先輩」
ジュンモ「何だ?」
スンチャン「紅参の粉を溶かしたものなんです。昨日だいぶ酔っていらっしゃったみたいなので」
「そうなんだ」ジュンモがボトルを受け取る。「完全に酔っ払っちまって」
ジュンモ「俺、何かやらかしたか?」
スンチャン「特にありません」
ジュンモ「なら良かった」
スンチャン「ホントに覚えていらっしゃらないんですか?屋台で飲んだときのことも?」
ジュンモ「覚えてないって」
ジュンモが立ち止まる。「屋台で7万ウォンって、一体何食ったんだ?」
スンチャン「え?」
ジュンモ「カードの明細みたら7万ウォンだって」
スンチャンが記憶を手繰り寄せる。「昨日は焼酎と活タコと軟骨を」
ジュンモ「だろうな。タク・イェジンのヤツ、自分が食いたいものばかり注文しやがって」
「…。」スンチャンが目を大きく見開き、ジュンモの様子に神経を集中させる。
ジュンモ「あいつタコに目がないんだ」
スンチャン「(じーーーーーっ)」
ジュンモ「何見てんだ?」
「…いえ」スンチャンは静かに目を逸らした。
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探偵と依頼主は、日暮れの屋上で再び落ち合った。
スンチャン「僕が見るに、覚えていらっしゃらないみたいです」
イェジン「何を根拠にそう判断したの?」
スンチャン「顔が完全に疲れ切っていて、目も充血している状態なので、平常時より飲み過ぎたことは違いありません」
イェジン「(頷く)」
スンチャン「それに、今日ずっと見ていたんですが、トイレに何度も出入りなさっていて…」
イェジン「あんた、最近シャーロック見てるの?」
スンチャン「!…どうしてわかったんです?」
※シャーロック=英BBCの人気ドラマ。主人公シャーロックは、鋭い観察眼を持っていて、一目見ただけで詳しく分析してしまう天才。思考を巡らせる時、確かに顎の下に手を合わせてます。
イェジン「推理しないで、ただ見たこと聞いたことを言いなさい」
スンチャン「昨日屋台で精算した記憶がないそうです」
イェジン「そうなの?あそこはジュンモが払ったの?!」
「私、また自分がしたのかと思ってたわ」イェジンは妙なところに食いついた。
イェジン「私って酔ったら自分が払いたがる超カッコイイ酒癖があるからさ」
スンチャン「…。」
イェジン「ホントに自分で払えば目も覚めるんだろうけど」
スンチャン「…払っていらっしゃいました」
イェジン「?」
スンチャン「一次で」
イェジン「一次で…払った?私が?一泊二日チームが食べた分も全部?!えっ?えっ?」
スンチャン「はい。カード2枚に分けて、わざとネチネチ言いながら」
「私一生飲まないわ」イェジンは夕陽を見つめた。
スンチャン「とにかく、ジュンモ先輩は昨日のこと覚えていらっしゃらないみたいです。大事なのはそこですから」
イェジン「そうね…。ジュンモが家に帰るときどんなふうに歩いてた」
スンチャン「はい。まさに千鳥足でした」
イェジン「千鳥足で、どんなふうに?」
「こんなふうに」スンチャンはその場でフラフラとジグザグに歩いてみせる。
イェジン「それじゃそんなに酔っ払ってないよ。あいつがトコトン酔っ払ったら、(グングン横に歩いて行く)こんなふうに一直線にずっと行くんだから、こうやって、こんな感じ」
彼女はよろよろと、それでも一方向へ歩きながら、スンチャンのところまで辿り着く。「こうやって何かにぶつかるまでずっと進むのよ」
スンチャン「…。」
「それからこうやって行ったり来たり…」とステップを踏んだところで、ふと迷う。「あ、これは泥酔ってほどでもないかも」
イェジン「曖昧なのよ」
スンチャン「曖昧ですか」
イェジン「はぁ、あんた今日から編集室に入るんだよね?」
スンチャン「はい」
イェジン「ジュンモのそばにピッタリくっついて、よく見るのよ」
スンチャン「(うんうん)」
イェジン「何か手がかりが見えるはず」
「行って」彼女の一言で、スンチャンは黙って頭を下げ、背を向ける。
歩き出そうとしたところで、彼は後ろ髪を引かれるように、そっと彼女を振り返った。
スンチャン「…。」
しばらく彼女の細い背中を見つめていた彼は、静かに引き返す。「あの…先輩」
イェジン「ん?」
スンチャン「もし、何か話したいのに相手がいなくて辛かったら、僕にしてくださって構いません」
イェジン「何を?」
スンチャン「住所共有の件でお分かりだと思いますけど、僕は口が堅いですし、話を聞くのも好きなんです。だから…僕にしてくださって構いません」
「そう、ありがとう」イェジンは彼の善意を優しく受け止める。「そんな時があったらそうするよ」
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ここでまた区切りますね。
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