韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

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プロデューサー5話あらすじ&日本語訳 vo.3

   

キム・スヒョン、IU、コン・ヒョジン、チャ・テヒョン、出演、KBS韓国ドラマ「プロデューサー」5話、終盤です。

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「ここがまさに編集室だ」ズラリと並んだガラス張りのブースの前で、ジュンモが言った。
一つ一つのブースで、スタッフがPCに向かっているのが見える。

ジュンモ「今後、お前はここで夜を明かすことが一番多くなるだろうな。何か思い浮かぶ場所はないか?」
スンチャン「考試院?」
ジュンモ「考試院もいいところじゃ窓があるだろ。ここにはない。独房みたいなもんだ。広さもこんなもんだし、一度収監されたらなかなか出られないのも似てる」

ジュンモがそのうちの一部屋を覗き、ドアを静かに開けた。
作業中のPCの画面に映っているのは、撮影したばかりの一泊二日のクイズゲーム映像だ。

眠いのか、作業中のスタッフが自分で頬を叩いている。
周囲にはチョコレートやガム、歯磨きセットなどが並んでいた。

スンチャンは壁に視線を移す。スローガンが記されていた。
【粗餅のように撮影しても、上餅のように編集すれば良し】

「イリョン」ジュンモの呼びかけで振り返ったのは、イリョンだ。

イリョン「何です?」
ジュンモ「その海の写真外せよ。行けもしないのにイライラするだけだろ」
イリョン「僕が貼ったんじゃないですけど。前はビキニの写真だったのに、誰が替えたんだ?」
ジュンモ「(スンチャンに)あれ、見えるだろ。”粗餅のように撮影しても、上餅のように編集すれば良し”。だがな、上餅は簡単に出来るもんじゃない。ここで汗と涙と血と寿命を注いでこそ出来るんだ」
スリョン「あぁ… はい。でも、そこまでして皆さん大丈夫なんでしょうか?」

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ジュンモ(インタビュー)「大丈夫じゃないですよ。うちのチームだけでも、チョングンは胃炎に不静脈、イリョンはヘルニアに喘息。ここの編集室は風が通らないから、空気がめちゃくちゃ汚れてるんです。一泊を長くやってたユ・ホジンPDは難聴に骨粗鬆症を。医者が言ってたらしいんですけど、炭鉱かどこかで働いてるのかって。長期間太陽の光を見られなかったら、そうなるらしいですよ。だからチームでビタミンDを共同購入し始めたんです。生きるためにね。死にたくないから!」

スンチャン(インタビュー)「入社して少し経ちましたけど、やっとPDらしい仕事をすることになりました。先輩たちがおっしゃってたんです。編集は”終わる”んじゃなくて”止める”んだって。それくらい正解もないし、終わりのない作業だってことです。グッと来ました、その言葉」

「では、始めてみましょうか」スンチャンはPCに向かい、キーを叩いた。「?」

インタビュアー「電源が入ってないんじゃ?」

「あ、そうですね」立ち上がり、スンチャンは不器用にマシンを探る。「電源ボタンは…?」

そこへヒョングンがぶらっと入って来た。「お前、何してんだ?」

スンチャン「何でもないです」

ヒョングンはヒョイと電源ボタンを押すと、さっきスンチャンが座っていた椅子にどっしりと腰を下ろした。

ヒョングン「今からな、蔵の鍵を譲り渡すくらいの気持ちで、お前に任務を引き継いでやるよ」
スンチャン「任務ですか?」
ヒョングン「編集をやるとき、一番下がやる仕事で大事なのはこれだ。先輩たちに差し入れを用意しておくこと」

※差し入れと訳した部分、原語では사식(私食)となっていて、刑務所や留置場での差し入れを指すようです。

「法人カード」ヒョングンはKBSと印字されたクレジットカードをスンチャンに渡す。

ヒョングン「一年半持ってたけど、ホントせいせいした。名残惜しい気もするがな。がんばれよ。俺が最後に注文とって来たから」

スンチャンがその辺の紙とペンを手に取った。

ヒョングン「ジュンモ先輩はサムソンジャージャー麺、イリョン先輩はマンドゥクク、ジヨンさんは卵キンパ」

「それじゃなきゃいけないのか?!」ヒョングンがボヤく。「一箇所にまとめろよな」

ヒョングン「俺はリゾット。きのこクリームリゾットだ」

スンチャン「はい。ジュンモ先輩はサムソンジャージャー麺、イリョン先輩はマンドゥクク、ジヨンさんは卵キンパ、ヒョングン先輩はきのこクリーム…」
ヒョングン「リゾットだ」
スンチャン「リゾット」

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ロビーには若いスタッフたちが並んで戦々恐々としている。
新入りマネージャー、新人ギャグマン、そして、一泊二日新人PD。
皆、携帯を見ながら入り口を見つめ、何かを待っている様子だ。

出前ボーイがやってくると、そのうちの誰かが進み出て、出前の品を受け取って去っていく。
なかなか食事が届かず、皆焦っていた。「生放送前だから、食べてスタジオ入りしなきゃならないのに」

「サムソンジャージャー麺ですよ!」やって来た出前ボーイに、スンチャンが嬉しそうに手を上げた。「はい、僕です」(←笑!

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マンドゥククを受け取ったイリョンは、袋を覗いて言った。「お前、トルボネで頼んだのか?」
「やれやれ」彼はガッカリと目を閉じる。

イリョン「あの店はもうとっくに廃れてんだ。(中身を出し)ほら見ろ、ぐちゃぐちゃだろ」
スンチャン「…。」
イリョン「お前さ、同期でハッピートゥゲザーに行ったヤツがいるだろ」
スンチャン「…。」
イリョン「そいつがめちゃくちゃデキるヤツだって、エラい評判だぞ。芸能局の人たちはみんな、あそこのチームを羨ましがってる。いい新人が入ったから、食事のたびに幸せだってさ」

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小道具置き場で、今日もまたスンチャンは真剣にメモを取っていた。
「人間に一番大事なのは衣食住でしょ?」FDが言う。

FD「けど、編集室に入ったら、事実上、衣と住は諦めなきゃいけない。たった一つ残るのは?」
スンチャン「食」
FD「その通り。けど、その食さえも失敗したら、人は極端に変わってしまう。そうなったら、その怒りはどこへ行く?注文した人、一番下の人間に行くんですよ」
スンチャン「あぁ… はい。そうみたいです。さっきすごく怒られました」
FD「とにかく、腹がへるまでに前もってチェックするんです。人はお腹がへってくると何が加わる?怒りが加わる。で、そこで重要なのは何か?自分が食べたいものを先に言わないこと。それだと聞いた側は、こいつ食べたくて会社に来てんのか?そういうことになる。注意すべき点は、面倒くさいからってメニューが100もある店、キムチポックムパプもあって、刺し身もあって、鶏ポックムタンもある、そんな店に注文したところで、旨くないんだ。100%!」
スンチャン「…。」
FD「じゃあどこで?専門店だ」
スンチャン「…専門店か」
FD「一番困るのは何でもいいって人なんだけど、そういうときに無難なのは、すぐ前に山菜弁当があってね、ウェルビーイングスタイルの。だけど、ときどき味覚が子どもっぽい人たちがいて、それを注文すると俺は僧侶か、味がないって、大変なんですよ」
スンチャン「味覚が子どもっぽいかどうか、どうやって区別すればいいんでしょう?」
FD「一番いいのはコーヒーを頼んだ時に見ることですね。名前の長いのを注文する人がいるから。いちごキャラメルフラペチーノ、なんとか緑茶、生クリームアイスブランデ、まぁそういうの。100%ですよ、100%。味覚が子ども」
スンチャン「さっきのラ・ジュンモPDみたいな場合、サムソンジャージャー麺を注文して…」

「!」ハッとしたように、スンチャンが黙り込んだ。「…。」

独断でシンディに出演交渉に行った日。
連れ戻しに来たジュンモは、帰りの車の中で「胃の調子が悪いから、小麦粉は食べない」そう言ったのだ。

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「前に聞いたんです。酒をたくさん飲んだ日は小麦粉は食べないって」スンチャンの報告に、イェジンは思考を巡らせる。

イェジン「それなのに、サムソンジャージャー麺を頼んだ…」
スンチャン「はい。だから、昨日は思ったよりたくさん飲まなかったんじゃないかと」
イェジン「そうね。もともと小麦粉が好きな子じゃないから。けど、お酒を飲んだ次の日にチャンポンばかり食べたがるときもあるのよ。ビザも食べて」
スンチャン「あぁ…。掴みどころがないと…?」
イェジン「あの子、自分だけの鉄則みたいなのがある子じゃないのよね」
スンチャン「それなら、決定的な手がかりにはなりませんね」
イェジン「そうね」

イェジンは屋上の手すりにもたれかかり、街明かりを眺める。「泊まり込みだろうね、編集するんなら」

スンチャン「はい。何日か泊まらなきゃいけないからって、家から下着とか全部用意して来ました」

「うん。お疲れ」イェジンが言い、通用口へと歩き出す。
しばらくその姿を見つめると、スンチャンが口を開いた。「だけど、先輩」

イェジン「ん?」
スンチャン「覚えていたら… ダメなんですか?」
イェジン「え?」
スンチャン「先輩のおっしゃったのが嘘なら、ジュンモ先輩が覚えていても構わないだろうし、もし… 万が一、本心だったとしたら、むしろジュンモ先輩は覚えているべきじゃないかと思って」
イェジン「あんたも編集してみれば分かるはずよ。誰かが何かを話したのに、相手は何のリアクションもないとするでしょ?」
スンチャン「…。」
イェジン「だったら、その話はカットしなきゃ」

イェジンは背を向け、大きく溜息をついた。「もちろん昨日私が言ったことは嘘よ」

スンチャン「…。」
イェジン「だけど、あんたの言ったように、万が一… 本当に万が一それが本心だったとしたら。それに、ジュンモもその話を聞いたとしてよ」
スンチャン「…。」
イェジン「それなのに、ジュンモは何の反応も見せないのよ。いつもどおり私に接するの」
スンチャン「…。」
イェジン「もし、覚えているのに何の反応も見せずにいるのなら、ジュンモはその”本心”をカットしちゃったってことじゃないかな。…だから」
スンチャン「だから… 覚えていなければいいと、そう願っているんですね。カットされたのが怖くて」
イェジン「…。」

1898

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シンディにマネージャーから電話が入っていた。

マネ(電話)「メイクが4時半で飛行機が7時だ。4時までに迎えに行くから、それまで寝とけよ」
シンディ(電話)「2時間でどうやって寝るのよ」
マネ「それでも寝ないと。体がもたない」
シンディ「寝ようと思って寝られるわけじゃないでしょ。私だって寝たいわよ」
マネ「不眠症も困ったものだな…。睡眠剤を処方してもらったのは、もうなくなったのか?」
シンディ「薬はダルくなるからダメ」

「もういいよ。自分で何とかするから」面倒になって、シンディは電話を切った。

一旦ベッドに横たわったものの、落ち着かずに彼女はすぐに起き上がる。
バッグを探ると、そこから一冊の本を取り出した。
野宿のとき、「よく眠れるから」とスンチャンが差し出した本だ。

ヘッドフォンの音楽に耳を傾け、彼女は本をペラペラとめくった。
ふと、挿絵のページに目がとまる。

森の中のような暗いところにいる、誰かの後ろ姿だ。

※韓国版ヘルマン・ヘッセのデミアンは、Google Bookでも読むことができます。

その中に、下線の引いてある部分があった。

그의 어머니를 빼고는 아무도 그를 사랑하지 않았다.아무도 그와 친하지 않았다.
그런데 어머니도 그를 아이가 아니라 어른처럼 대하는 듯 보였다.
선생님들은 그를 되도록 가만히 내버려 두었다.
그는 좋은 사람이었지만 누구의 마음에도 들려고 하지 않았다.

母親を除けば、他に誰も彼を愛していなかったし、誰も彼と親しくはなかった。
しかし、母親も彼を子どもとしてではなく、大人のように接しているように見えた。
先生たちは彼をなるべくそっとしておこうとした。
彼はいい人だったが、誰に気に入られようともしなかった。

1899

「…。」彼女はペンを手に取ると、下線の上をなぞるように、もう一本線を加える。
そうしているうち、いつしか彼女はぐっすりと眠っていた。

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同じ頃。
細かい編集作業を繰り返しながら、ジュンモがひどく疲れた様子でキーを叩く。
スンチャンがそれを横で見守っていた。
「おい」ジュンモが腕時計を覗いた。

ジュンモ「朝の4時か、夕方の4時か、どっちだ?」
スンチャン「朝です」
ジュンモ「あぁ… 何で時間が立つのがこんな早いんだ?画面が単調すぎてどうにかなりそうだ」

「なぁ、ペク・スンチャン」ジュンモが言う。「何か巧いアイディア出してみろよ」

今編集しているのは、一泊二日ロケの序盤。
シンディが誰にも選ばれずに苦笑いを浮かべているところだ。

1906

スンチャン「この単調な画面にテロップ一行つけることで、お茶の間が腹を抱えて笑うくらいのな」

スンチャンは画面の中のシンディをじっと見つめた。「シンディが脱落した」

ジュンモ「”追跡60分”かよ?」
スンチャン「シンディは果たしてどうなるのか?」
ジュンモ「”危機脱出No1”かって!どうなるもこうなるもねぇだろ」
スンチャン「シンディの戸惑いで一杯の顔…?」
ジュンモ「…お前には戸惑うよ、全く。それで腹がよじれるか?」
スンチャン「…。」
ジュンモ「お前、ランニングマンが送り込んだXマンみたいだな。俺たちを潰せって指令を受けて来たんだろ」

+-+-+-+

編集作業はまだまだ続いていた。
画面の中では、シンディの靴紐が解けたのを、スンチャンが結んでやっている。
ジュンモはしきりに止めたり進めたり、真剣に画面を見つめた。

スンチャン「先輩、どうしてここをそんなに…?」
ジュンモ「お前、テレビに顔が出てもいいよな?」
スンチャン「え?」
ジュンモ「ひょっとしてサラ金に金借りてるとか…」
スンチャン「ありません」
ジュンモ「前におかしなサイトで活動してたことがあるとか…」
スンチャン「ありません。ネットはあまり…」
ジュンモ「SNSは?」
スンチャン「やりません」

タタン!とジュンモがキーを叩く。「じゃ、問題ないな」

スンチャン「?」
ジュンモ「これを活かそう。シンディの表情も」
スンチャン「でも先輩、これはちょっと…」
ジュンモ「嫌か?番組を面白くしようってのに、嫌なのか?」
スンチャン「…。」
ジュンモ「お前、ホントにXマンじゃないのか?」

ジュンモは再び画面に向かう。「こりゃいいぞ」

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ジュンモ(インタビュー)「一泊二日のPDは全部諦めなきゃいけないんです。顔も洗えないのに顔が映るし。自分の顔が出るかどうかなんて重要じゃない。番組が生きるか死ぬかの瀬戸際なんだから」

彼は画面の中で靴紐を結ぶスンチャンを指す。

ジュンモ(インタビュー)「ペク・スンチャン、こいつは鈍くさいけど、清々しいところがあって好感が得られるかもしれません。もちろん野心があって番組に出たがる人もいますよ。だけど、視聴者はめざとく感じ取るんです。そうすりゃすぐに嫌われるんだ」

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今朝、ヤンミにお伺いを立てに来たのは、テホCPだ。

テホCP「僕ね、一泊二日に少し出演したんですよ。OPで責任プロデューサーとして挨拶をしてね」
ヤンミ「えぇ、そうですか」
テホCP「撮影は20分で、放送されるのは…10分くらいかな?」
ヤンミ「えぇ」
テホCP「それで…」
ヤンミ「?」
テホCP「ギャラはどうなるのかなぁと思って」
ヤンミ「友情出演じゃないんですか?それならギャラはありませんけど」
テホCP「そんな… 僕は一泊二日に友情なんてないぞ。ジュンモとは先輩後輩で、友情関係じゃない」
ヤンミ「それなら、職員出演料2万円です。アナウンサーと同じく」
テホCP「一般人なら?」
ヤンミ「6万ウォンです」

「!」テホCPは思わずショックで口元を押さえた。

テホCP「僕はアナウンサーじゃないぞ。敢えて言えば一般人の方が近い」
ヤンミ「ダメですよ。職員じゃないですか」
テホCP「…わかったよ。じゃあ給料の受け取り口座じゃなくて、他のところにちょっと…」
ヤンミ「通帳の写しと身分証をお持ちくださいな」
テホCP「税金取られるのか?」
ヤンミ「えぇ。3.3ですから、1万9400ウォンになりますね」

+-+–+

「それじゃ先輩もコ・ヤンミさんにやられたんだな」食堂でホンスンが言う。

テホCP「いや、やられたって言うより…」
ホンスン「やられたんじゃないか。みんなと話してて感じるんだけど、最近コ・ヤンミさんへの不満が限界に来てる。俺たち同志を集めて、あの気性を直してやらなきゃ」
テホCP「何をそこまで」

何やら携帯を触っていたホンスンは、LINEのグループを作成する。名前は「紙死守」
すぐにテホCPの携帯の着信音が鳴った。

テホCP「グループ招待したのか?」
ホンスン「あぁ。俺たちの意志を示してやるんだ」

彼はさっそくグループにメッセージを送る。忙しい同僚たちの携帯が次々に鳴った。
「キム・ホンスンです。事務局のコ・ヤンミ氏に対して団体行動を決意しました。何様のつもりで紙の裏まで使えと威張るのか。紙は自分の物なのか!コ・ヤンミ氏は事務備品を口実に。珈琲や菓子類をゆすり、しかもオーガニック製品だけを要求するという情報もあります」

ジュンモ「はぁ、こいつまた何言ってんだ?」
イェジン「ステファノは暇ね」

「なぜ賄賂を送らなければ事務部品を渡さないのか…」ホンスンがまだまだ熱心に入力しているところへ、ポンとメッセージが上がった。

「タク・イェジンさんがグループを退会しました」
「カン・ボンギュさんがグループを退会しました」
「ラ・ジュンモさんがグループを退会しました」

ホンスン「!」

ふと顔を上げると、目の前にいたテホCPはさっさと膳を下げようとしている。「先輩!」

「まだ一人残ってるぞ」ホンスンはめげずに入力を続けた。
「僕の意見に同意してくださる方が一人いらっしゃいますね。どなたです?」

そこへメンバーからメッセージが上がった。

ビューティ「事務局のコ・ヤンミです」

「!!!!!」ホンスンは何かに誘われるように「退出」を押した。

+-+-+-+

「昨日のアドバイス、ホントにありがとうございました」小道具置き場で、スンチャンがFDに言った。

スンチャン「お陰で今日、昼の弁当で褒められたんです」
FD「役に立てたなら良かった」

彼らは二人仲良くサプリの粉を口に放り込む。

スンチャン「だけど、今夜はどうやって乗り越えようか、次はそれが心配です。毎食ストレスですよ。一日一食ならいいのに」
FD「今日の夕食はなくてもいいですよ」
スンチャン「どうして?」

+-+-+-+

芸能局の真ん中をピョン代表が練り歩く。
「こんにちは~」その後ろを、ワゴンを押したスタッフが続いた。「シンディをよろしくお願いしま~す!」
ワゴンの上にはシンディの写真の印刷されたお弁当にピザにドリンク!

+-+-+-+

ジュンモが一泊二日のデスクスペースへやってくる。
テーブルにどっさり置かれた差し入れを、スタッフたちが囲んでいた。

ジュンモ「こりゃ何だ?」
ハンナ「シンディの事務所からなんです。芸能局全部に。凄いでしょ」
ヒョングン「さっきYGがアイスアメリカーノを10杯持ってきたんですけど、ビビってそのまま持って帰りましたよ」

#このドラマでのYGの扱いがビミョーな件

ミンジョン「PDさんもピザ召し上がってください」
ジュンモ「俺はいい」

+-+-+-+

局長とテホCPはおとなしく並んでシンディブランドの差し入れにありついていた。
彼らの前に何も言わずに座っているのはピョン代表だ。

テホCP「さすがピョン代表は気前がいい。ある事務所じゃね、ミュージックバンクで1位になっても餅一つだったのに。その餅だって、豆の一つも入ってないんだ」
局長「そんなものを配っても嫌がられるだけだ」
テホCP「そりゃそうですよ」
局長「だから、お二人ともうちのシンディに気を使ってくださらないと。あの子が初回から0票で脱落したものだから…。上手く編集すれば、失恋したヒロインだけど、下手をすればただのお粗末だわ」
テホCP「そこはうちのジュンモがちゃんとやりますよ」

「私はラPDとちょっとアレだから」ピョン代表は目を逸らして言う。

テホCP「そんなの全部昔の話でしょう。最近はやり合ったこともないんだから」
局長「それなら大丈夫だよ」
ピョン代表「やり合ったわよ。この間の撮影について行ってね」
二人「もう、やっちゃダメだってば」
ピョン代表「局長とCPさんが阻止してくださらないと!」
テホCP「編集権を握ってるヤツの勝ちなんですよ」
ピョン代表「…。」
テホCP「最近はヤツらに何か言えば、すぐ越権だとか目を血走らせるんだ」
局長「(うんうん)」
テホCP「PD協会に行くとか、労組に行くとか言って」
局長「あぁ、私らのときはそうじゃなかったが、最近のヤツらは恐ろしいよ」
テホCP「怖いですよ~!」
ピョン代表「…。」

#何さっきから要らないシーンばっか…。これ全部省けば83分なんて時間にはならないのに(ボソッ

+-+-+-+

ジュンモの編集作業は続く。
スンチャンがぴったり横についていた。

誰かがノックして、スンチャンが振り返る。
開いた扉からニッコリ顔を覗かせたのは、ピョン代表だった。「ラPDさん、編集中のようね」

ピョン代表「邪魔にならないかしら?」
ジュンモ「俺たち、一緒に酒でも飲みました?」
ピョン代表「いいえ、なぜ?」
ジュンモ「酒に酔って和解でもしたのかと思ってね」
ピョン代表「もう!プロ同士、和解も何も。幼稚だわ。私的な感情は置いといて、仕事は仕事なんだから」

「そうでしょう、我が新人PDさん♪」ピョン代表がスンチャンの顔を覗き込む。

スンチャン「…。」
ピョン代表「私、ジュンモPDとちょっと話があって。外してくださいます?」

スンチャンが立とうとしたところへ、ジュンモが言った。「座れ」
ピョン代表がジュンモをチラリと見る。

ジュンモ「言いたいことがあるならどうぞ。仕事してるヤツを何勝手に追い出してんだ」
ピョン代表「OK。ラPDは他のPDたちと違ってて、気に入ったわ。こういう一癖あるPDは仕事も出来るから」

彼女は封筒を取り出し、ジュンモの前に置いた。「これ、誰かに見られる前にしまってくださいな」

ジュンモ「トコトンまで落ちるつもりですか?」
ピョン代表「…。」
ジュンモ「警察呼ぼうか?」
ピョン代表「怒るのは開けてみてからになさいな」

「開けるも何も」ジュンモは封筒を開いた。
そこから出て来たのは…「?」

ロトくじだ。

ピョン代表「これから私たち、マメに連絡を取り合わないと。ラPDからの連絡が途切れたら、当選したってことね」
ジュンモ「!」
ピョン代表「噂にするわよ」
ジュンモ「…。」
ピョン代表「うちのシンディは13歳のときから私が育ててきたけど、初めて自分からやりたいって言い出したのよ、この番組」
ジュンモ「…。」
ピョン代表「だから… よろしくお願いしますね。外に美味しいものがたくさんあるから、どうぞお食事を」

ジュンモはPCの画面に視線を戻す。「申し訳ないが、僕は食べませんよ」

ジュンモ「ペク・スンチャン、後で屋台に行って、キンパ弁当とムール貝スープ買って来いよ」
スンチャン「…はい」

「…。」ピョン代表は黙って編集ブースを退いた。

ジュンモ「全く… あのヴァンパイアめ」

+-+-+-+

夜が更けていく。
いつものように新人たちが出前を受け取り、それぞれのチームは夜食にありついていた。
まだまだ夜は長い。

【05 編集の理解
一番必要なものだけ残すこと】

今日もジュンモは家に帰ってこない。
イェジンは一人、引き出しの箱から写真を取り出してみる。
大人になった二人、高校生の二人、子どもの頃の二人…。
いつも変わらない仲良しの二人がそこにいる。
イェジンの顔から思わず笑みがこぼれた。

1902

イェジン「…。」

+-+-+-+

「こんばんは」スンチャンがおつかいで屋台にやって来た。
「あら、また来たのね」女主人が顔を上げる。「あの日、ちゃんと帰れたの?」

スンチャン「あ、僕はそんなに酔ってなかったから」
女主人「あらまぁ、酔ってないなんて。お嬢さんとお客さん、ものすごく酔ってたわよ」
スンチャン「僕と…イェジン先輩ですか?一緒に来てた男の先輩は?」
女主人「あの人?あの人はマシだったわよ。二人はまともに立てなくて、連れて帰るのに脂汗かいてたんだから」
スンチャン「…。」

+-+-+-+

「!」突然ハッと気がつき、ジュンモは携帯を手に取った。
誰かに電話を掛けると、すぐ近くで電話が鳴り出す。
スンチャンの電話だ。
「!!!」ジュンモは慌てて駆け出した。

+-+-+-+

女主人「本当に覚えてないの?お客さん、あの男の先輩にずいぶん食って掛かってたじゃない」
スンチャン「…。」
女主人「何て言ってたかしら… 二人だけで行かせるもんかとか?」

スンチャンの頭の中に、あのときの記憶がわっと戻ってくる。

~~~~

「もう帰るぞ!」酔って眠っているイェジンにジュンモが手を伸ばすのを、スンチャンが黙って遮った。

ジュンモ「?」
スンチャン「二人で帰るって?…ダメです。行かせません」
ジュンモ「行かせないって何だよ」
スンチャン「イェジン先輩が好きだって言ってるじゃないですか!!!」
ジュンモ「…。」
スンチャン「イェジン先輩が…ジュンモ先輩のこと好きだって言うから… 行かせたくない」
ジュンモ「…。」

1903

「二人だけで帰らせたくない」スンチャンはそう呟き、テーブルの上に突っ伏した。「イェジン先輩が…ジュンモ先輩のこと好きなのは…嫌だ」

~~~~

夢中で走ってきたジュンモは、何もも持たずにぼんやり歩いてくるスンチャンの前で立ち止まった。「!」

スンチャン「…。」
ジュンモ「お前な、携帯置いていってどうすんだよ!」
スンチャン「…。」
ジュンモ「鰻も追加しようと思ったのに」

「カード使えませんでしたけど」スンチャンがポツリと言う。

ジュンモ「何?」
スンチャン「あの日、あそこで7万ウォン、カードで払ったっておっしゃいましたよね。だけどあの屋台、カード使えませんでした」
ジュンモ「…。」

ジュンモが困ったように顔を歪めるのを、スンチャンはじっと見つめた。

スンチャン「もう思い出しましたか?」
ジュンモ「?」
スンチャン「先輩がカットしてしまった、あの夜のイェジン先輩の話…」
ジュンモ「…。」
スンチャン「…思い出しましたか?」

1904

+-+-+-+

【エピローグ】

テホCP(インタビュー)「編集?時間だね。番組っていうのは視聴者との約束でしょう。一種のサービス業だ。それなのに、時間通りに出来なかったらオシマイじゃないか。でしょ?頼むから編集を急げってね」

編集スタッフ(インタビュー)「僕の場合は迷わず笑えるのを選ぶっていうか。ただの山でも、より笑える山を選ぼうと思ってますよ。雲にしても、どの雲が笑えるか…そう考えて」

ホンスン(インタビュー)「編集?矢だね。突き刺さらなきゃいけないんだ、人の心に。視聴者の心も勿論だけど、もっと大事なのは、僕にこの番組をやらせてくださった局長、本部長の心にまずは突き刺さらないとな。それでこそ、今後もっといい番組をやらせてもらえるだろ」

イェジン(インタビュー)「編集?化粧ね。化粧さえ上手くやれば、まぁまぁの人も結構キレイになるでしょ?けど、同時にこういうのって自信とか確信とか、そういうのがなきゃいけないの。自分はこの化粧でキレイになる!自分の編集なら皆、腹をよじらせて笑うだろう!そういう確信、自信!まぁ結局は全部精神的な戦いってことですね」

ジュンモ(インタビュー)「編集は……… 諦めだな。良いものと、より良いものがあるとしたら、より良いものを選んで、良いものを諦めること…。どっちも手に入れることは出来ないから。欲張ったら… 全部失うこともあるんです」

1905

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5話はここまで。

わぁあぁぁああ~♥♥♥♥♥♥
要らないシーンの連続でイライラしたのが嘘のよう♪
ジュンモがマジモードにスイッチすると、一気にしまりますねぇ。

 - プロデューサー

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