韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

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主君の太陽12話あらすじ&日本語訳 vol.1

   

甘い言葉を吐いた後は、毎回盛大に理屈をこねくり回す社長がいることでお馴染みのキングダム。
そんなキングダムが舞台の「主君の太陽」12話前半です。

1640

では早速

+-+-+-+

そっと唇を離すと、テ嬢は彼の胸元で今の事態を考えた。
ゆっくり伸びてきた彼の手が、彼女の髪を撫で下ろす。

1628

チュ君「不良の幽霊が去って、テ・ゴンシルだけ残ったんなら…良く聞け」
テ嬢「…。」
チュ君「幽霊を口実にしているのは、まだ俺が本当に消えるのを望んでいるわけじゃない。そう信じる」
テ嬢「…。」
チュ君「持ち堪えられると言うから始めたんだろう?」(←どう考えても責任転嫁
テ嬢「…。」
チュ君「辛いからとお前が降参したら、そこで終わりだ」
テ嬢「…。」
チュ君「どうする?」
テ嬢「…。」

彼女が何も答えられずにいると、彼は抱きしめていた手を両肩に回し、彼女の体を起こすと、まっすぐに見つめた。

テ嬢「…。ちょっと何かが入って来て…出て行ったみたい。来てくださってありがとうございます」
チュ君「無事戻ってくれて…良かった」

そこで気まずくなり、彼の手がテ嬢の両肩から滑り落ちた。

テ嬢「ところで、何のご用ですか?」
チュ君「(元気)”私、決めました”の後は、家だと言っただろ?初デートの場所を家に決めたのか?」
テ嬢「…。」
チュ君「(ニヤリ)思ったより大胆だな」
テ嬢「!」

チュ君は戸惑うテ嬢をよそに、一人さっさと彼女の部屋へ向かった。

テ嬢「ちょっと!どこ入ってくんですか!!!」

彼女は慌てて彼の後を追った。

テ嬢「家へ帰るって言ったんです。社長を招待するって言ったんじゃないですから!」
チュ君「お前が俺の家に入り込んだ時も、俺が招待した記憶はないぞ」
テ嬢「…。」
チュ君「初訪問で一緒に寝た関係なのに、招待が何だ」

「どこに座ればいいんだ?」彼は真ん中で部屋を見回した。

テ嬢「座らないで帰ってくださいよぅ」
チュ君「座れと勧める場所もないくせに」
テ嬢「…。」
チュ君「それにしても…部屋はこれだけか?幽霊が潜む場所もなさそうだな」

部屋を見渡した彼の目が、ベッドに置いてあった彼女の下着の上で止まった。

テ嬢「!!!」

慌てて下着に飛びつくテ嬢。
抱え込んだ下着をチェストにしまう間に、チュ君はベッドに座り、ポンポンと叩いた。

チュ君「ここに座ればいいか?」
テ嬢「社長の話、全部聞きましたから。私だって安全だから、座ってないで帰ってください」
チュ君「危険な目に遭いに来たんじゃないんだが…。覚悟して入ってこなきゃいけなかったのか?俺はまだ心の準備ができてないな…」
テ嬢「さっきだって危険なことしたのは社長でしょう?…さっきだって!」
チュ君「さっきのは!…不良の幽霊を追い払ってやっただけだ」
テ嬢「そう?まぁ、幽霊を追い払うには、手に触ろうが足に触ろうが唇に触れようが全部一緒ですよ。私の頬をぶん殴ったってきっと一緒だったわ」
チュ君「…。」
テ嬢「拒むプライドもないし、傷つく心も持ってません。幽霊が怖くてたまらないのに、そんなものあるわけないわ」
チュ君「…俺だってそうだ」
テ嬢「…!」
チュ君「お前がしきりに気になるのに腹が立って、コントロールできずに…プライドが傷ついた」
テ嬢「…。」
チュ君「だから俺も…怖くてたまらない」
テ嬢「…。」
チュ君「怖くても来ただろ。だから追い払うな」
テ嬢「…。」
チュ君「入ってからこんなことを言うのは何だが…。俺を…招待してくれ」
テ嬢「…。」
チュ君「お前、オフィスに幽霊たちを集めてコーヒーでもてないしてるんだから… 俺にも一杯くれ」
テ嬢「…分かりました。社長のお好きな超苦いやつをお出しします。絶対に甘くならないように」
チュ君「ありがたいな。好みまで分かってくれて」

テ嬢がキッチンへ向かうと、彼は枕元に置いてあるぬいぐるみに目をやった。

チュ君「俺は招待受けたんだ。狭いから退け」

片手でひょいっとぬいぐるみを払いのけ、キッチンで動く彼女の後ろ姿を眺めた。

+-+-+-+

叔母はキム室長を呼んだ。

叔母「死ぬほど愛しているわけでもないのに、プライドもなく、なぜうちのチュンウォンのそばにくっついているんでしょう?」
キム室長「皆死んだチャ・ヒジュの話を呪いだといいます。テ嬢は”傷”だと言ったんです」
叔母「…。」
キム室長「テ嬢はそれを治療出来る人だと、私は見ています」
叔母「あの子がどうやってチュンウォンの傷を治療するんです?」
キム室長「傷を治療するには近づかなきゃならない。 主君は誰一人そばに近づけません」
叔母「…。」
キム室長「追い払えばまた来て、叩き出してもまたしがみついてくる。そんなことは誰にも出来ませんでした」
叔母「必死で追い回してチュンウォンの心を掴んだ。そういうことですか?傷?私の目にはチュンウォンの弱点を掴んだようにみえるわ」
キム室長「しっかり心を掴んだんでしょう」
叔母「…。」
キム室長「逃げるための出口を確保しようと、必死で計算しているとも言えます」
叔母「…。手を引くつもりがあるということですね?あの子」
キム室長「出口があると信じて、とにかく入って来たようですが、きっと少しずつ苦しくなっているのでしょう」
叔母「…。」

難しく考えこむ叔母の表情に、キム室長は笑った。

+-+-+-+

彼女がテーブルで果物の皮を向いている間、チュ君はまた部屋を見回していた。

チュ君「俺に会うまで、こんな手のひらほどの部屋に潜んで暮らしてたのか?」
テ嬢「えぇ。ここが一番気楽だったんです」

ふと冷蔵庫を開けると、そこに缶ビールが入っているのに気づく。

チュ君「ビールだな。お前、酒飲んじゃ駄目だろ」
テ嬢「それはカン・ウさんの。私のじゃありません」
チュ君「カンチーム長のビールが、なぜテ・ゴンシルの部屋の冷蔵庫から出て来るんだ?」
テ嬢「部屋の前に寝台があるから、ときどき一杯やるんです。そのときに取り出しやすいから、ここに置いてあるんです」
チュ君「部屋の前の寝台でカンチーム長がときどきビールを飲むと…。テ・ゴンシルはそのとき何をするんだろうな?」
テ嬢「お酒は飲めないからサイダーを飲むんです」
チュ君「小さい冷蔵庫が満杯なのに、カンチーム長のビールまで預かる余裕はないんじゃないか?」

イライラした彼は、その缶ビールを取り出し、冷蔵庫の上に置いた。

テ嬢「カン・ウさんのものを預かる余裕はいっぱいあるんですから!そのまま入れといてくださいよ」
チュ君「…。」

彼はテ嬢を睨みつけると、缶ビールを思い切り振り、冷蔵庫に戻した。

チュ君「俺が通帳いっぱいに金入れてやったろ。はち切れそうなコシテルじゃなくて、いいところへ引っ越せ」
テ嬢「言ったでしょう?ここが一番気楽だって」

チュ君が彼女のいるテーブルへ戻ってきて床に座る。

チュ君「カンチーム長は給料もいいのに、何でコシテルに住んでるんだ?」
テ嬢「心配しなくても、アパート手に入れるつもりなんですって」
チュ君「(笑顔)そうなのか?」

頷くと、テ嬢の携帯の着信音が鳴った。
気になり、その画面に引き寄せられるチュ君。

1629

テ嬢はメールを見るやいなや、携帯を放り出して立ち上がった。

テ嬢「食べててください!」
チュ君「どこ行くんだ?客をおいて」
テ嬢「コーヒーもフルーツもあるから、召し上がっててくださいね」

テ嬢が出て行くと、チュ君は一人残されて溜め息をついた。

チュ君「間違いなく(着信通知の)名前は2文字だったな。…カン・ウ?」

彼はテ嬢が放り出して行った携帯を横目で睨んだ。
ためらった末に、彼はその携帯を手に取る。
メールを表示したものの、やはり文字が何重にもぶれて見える。

チュ君「何でこんなに長いんだ?一体何やってるんだ?」

+-+-+-+

チュ君に呼ばれたのは、二人の子どもたちだ。
彼は二人にテ嬢の携帯を差し出す。

チュ君「一番最近来たメールだけ読んでみろ」
二人「…。」

チュ君は財布から名刺を出す。

チュ君「一つにつき、おもちゃ一つ。キングダムのキッズモールに言っておくから、これを持って行って好きな物を選べ」
スンモ「(名刺を受け取り)ありがとうございます。でも、おじさんは大人なのに、ハングルがわからないんですか?」
チュ君「俺は英語・日本語・中国語・スペイン語。5ヶ国語を話す人間だ。ハングルは…事情があって読まない。(携帯を指し)読むんだ」

スンモは素直に携帯を手に取り、カン・ウからのメールを読み始める。

カン・ウ(メール)「テ・ゴンシルさん、お願いがあるんです。今夜、雨が降るそうなんですけど、屋上に干してある布団を片付けてもらえますか?ゴミの分別、一人でやらないでください。愛してます」
チュ君「!!!何だって?」
スンモ「?(携帯を再確認)あ!”僕とやりましょう”」

#  誤)사랑해요(愛してます) 正)저랑해요(僕とやりましょう)

チュ君「ビックリしたろ!」
スンモ「…。」
チュ君「テ・ゴンシル、カンキャンディーがかぶって寝る布団まで片付けてやってるのか?あいつ、このコシテルごと買ったのか?」
スンモ「ところで、おじさんが社長さんなんですか?」
チュ君「(嬉)何だ?テ・ゴンシルが社長さんのこと何か言ってたか?」
スンモ「はい。コンシルお姉さん、この世で一番特別な人だって言ってました」
チュ君「(嬉々)あぁ…そうか?(納得)お前たちは幼いから純情で正直だろう。おもちゃ一つ手に入れるために俺を釣ろうとしてるなんて怒ったりはしない」

気を良くしたチュ君は、もう3枚名刺を取り出した。

チュ君「おもちゃに限らず、何でも欲しい物に使え」
二人「…。」

じっと見つめるスンモに、もう一枚、さらにもう一枚名刺を出すチュ君。

+-+-+-+

カン・ウはイリョンの元へ来ていた。

イリョン「検索1位になってるの見てないの?こんなふうに訪ねてきて、記者に見つかったら困るのよね」
カン・ウ「お前、わざとしでかしたのか?」
イリョン「前に言ったでしょう?地下鉄で撮られた写真が記事になるかもしれないって」
カン・ウ「…。」
イリョン「心配ないわ。明日は違う記事が出るはずだから」
カン・ウ「違う記事って何だ?」
イリョン「…。」
カン・ウ「検索1位じゃなくて、ワイドショーみたいな番組のことか?」
イリョン「私のスキャンダル相手になればそういうこともあるわ。けど、心配しないで。あんたが出るわけじゃないから」
カン・ウ「何だって?」
イリョン「明日、チュ・ジュンウォン社長とスキャンダル記事が出るわ」
カン・ウ「チュ・ジュンウォン社長?」
イリョン「あんたとのこと阻止するためにはどうしようもなかったのよ」
カン・ウ「…。」
イリョン「何よ!チュ・ジュンウォン社長をだしにするって聞いて、テ・ゴンシルが心配になったわけ?!」
カン・ウ「…。(哀れな目)お前はどうなんだ?」
イリョン「私?」
カン・ウ「あぁ。チュ・ジュンウォン社長とは何の関係もないのに、そんな記事が出ても大丈夫なのか?芸能人だろ?」
イリョン「あんた!!!」
カン・ウ「…。」
イリョン「あたしの心配してくれるのはやめて!私のこと突き放しておいて、今になってキープしようってわけ?」
カン・ウ「…。」
イリョン「もぅ、そんな目で見ないでよ。いっそのことその目で睨みつけて怒って」
カン・ウ「俺はどうしてやればいい?お前に被害がいくようにはしたくないんだ」
イリョン「結構よ」
カン・ウ「…。」
イリョン「スキャンダルは1度や2度じゃないし、自分で収拾つけるわ。…慣れてるし」
カン・ウ「…。」
イリョン「帰ってよ!」
カン・ウ「(気のない頷き)必要があれば電話しろよな」

カン・ウはまだ口にもしていないコーヒーを手に、立ち上がった。

イリョン「…。」

+-+-+-+

テ嬢が戻ってくると、彼はベランダの寝台の上に静かに座っていた。
声を掛けることができず、彼の背中をじっと見つめると、彼女は端に腰を下ろす。

テ嬢「まだいらっしゃったんですね」
チュ君「正式に招待を受けたんだから、主人の見送りを受けて帰るべきだろう?」
テ嬢「…お気をつけて」
チュ君「布団はちゃんと片付けて、一緒に分別するゴミはそのままにしたのか?」
テ嬢「?…読んだんですか?」
チュ君「あぁ。読んだ」
テ嬢「読めないでしょう?」
チュ君「読まないんだ!」
テ嬢「…。」
チュ君「自分の目で読まなくても、読もうとする気持ちさえあれば方法はたくさんある」
テ嬢「そうですね。あなたは何だって自分の決めたとおりになるわ」
チュ君「…。」
テ嬢「知りたければ知るし、知りたくなければ無視すればいい。羨ましい」
チュ君「そんなことも全部耐えることにしたんだろ」
テ嬢「…。社長、社長が安心できる方法を考えてみたんですけど」
チュ君「?」
テ嬢「オオカミとヤギの話、あったでしょう?ヤギは自分を取って食べかもしれないオオカミがそばにいても、どうして安心していられたと思います?」
チュ君「…。」
テ嬢「オオカミが自分をどんなに好きか、知っていたからです」
チュ君「…。」
テ嬢「オオカミがヤギをものすごく好きで、絶対に捕まえて食べたりしないと信じていたから、安心できたんです」
チュ君「…。」
テ嬢「社長も安心してください。私もオオカミのように社長を守ります」
チュ君「…。」
テ嬢「信じてください」

チュ君が見つめると、彼女はニッコリ微笑んだ。

1630

テ嬢「もう帰ったほうがいいです。夜から雨が降るって。本降りになるまえに帰ってください」

テ嬢は立ち上がると、家の中へ入っていった。
彼の前でカチャリとドアの閉まる音がする。

+-+-+-+

テ嬢はカーテンを開けて空を見上げると、表情を曇らせた。

テ嬢「雨の日はホントに嫌!怖いのが出て来たらどうしよう!」

震える彼女の後ろで、いつの間にか入って来たチュ君が一緒に外を覗く。

テ嬢「キャッ!!!どうしてまた来たんですか?」
チュ君「水霊が一番怖いんだろう?雨の日に出る幽霊なら水霊だ」
テ嬢「…。」
チュ君「こんな日は俺が必要なんじゃないか?」
テ嬢「雨の日がもっと怖いのは確かです。(一人でぶつぶつ)あんなにかっこ良く話して送り出したつもりだったのに、何でまた来たのよ。頭おかしくなりそう」
チュ君「守るから信じろと言うから、信じてもう少しだけここにいる」

彼女をくるりと振り向かせると、彼は背中を押してベッドへと歩かせた。
彼女をベッドに座らせると、自分はその脇の床に座る。

チュ君「寝ろ」
テ嬢「…。」
チュ君「手だけ握って寝るんだぞ。よからぬこと考えたら…」
テ嬢「!」
チュ君「ダメだ」
テ嬢「…。」
チュ君「俺はお前を信じる」
テ嬢「…。」

「暑いな」とこのタイミングで上着を脱ぐチュ君に、テ嬢の緊張が募った。

チュ君「何してる?」

彼は床に投げ出している彼女の両足を持ち上げると、ベッドの上に上げ、彼女の手を握り、そっぽを向いた。

チュ君「寝ろ」

#おまいは絶対に「ヤギ」を取り違えている!

テ嬢は自分の手をしっかりと握っている彼の大きな手を見つめ、ためらった。

1631

チュ君「横になれ」

チュ君が彼女のおでこを押し、ベッドに横にならせる。
彼女が横になると、彼は安心したようにテ嬢をチラリと見た。

+-+-+-+

雨が強くなり、雷が鳴り始めた。
手を握ったまま穏やかに眠るテ嬢の寝顔を、チュ君はじっと見つめる。
彼の心に、さっきの”不良幽霊”の吐いた言葉が突き刺さった。

1632

「あんたが幽霊を追い払ってやるせいで、こいつはすごく苦しんでる。
ものすごく辛いってな。この最低男」

チュ君「テ・ゴンシルが苦しんでると…伝え聞いたことにする。お前が苦しんでるのに抱きしめたことをどうこう言うつもりはないから。…幽霊を口実に抱きしめるのも悪くないな」

彼の指が伸び、彼女の顔に掛かった髪を優しく整える。

そうして夜は更けていった。

♪私の指先をあなたがかすめていくと
冷たくなっていた心臓が熱くなる

そっと近づいて 寄りかかりたいけれど
あなたとの距離は縮まらないわ

触れられなくてもいい
抱きしめられなくてもいい
私の運命のように あなたを感じることができるから…

目を開けたテ嬢は、そばで座ったまま眠っている彼の髪をそっと触れようとし、すぐにその手を引っ込めた。

1633

「お前のことがしきりに気になるのに腹が立って、心をコントロールできなくて、プライドが傷ついた。
だから俺も…怖くてたまらない」

テ嬢「怖くて文字も読めなくなったのに…私まで怖がらせちゃ駄目だよね…」

+-+-+-+

翌朝。

『テ・イリョン ダブルスキャンダル!恋人は誰だ?』
『財閥3世との密会?美男子警備チーム長とのロマンス?』

1634

刺激的な記事が世間を駆け巡った。

#タブレット画面に出ている記事で、タイトルでは名前が伏せられていますが、本文には「キングダムのチュ・ジュンウォン社長」「キングダム保安チーム長のカン・ウさん」とハッキリ名前が出ています。

当の二人の男たちが社長室で睨み合っていた。

カン・ウ「自分だと認めてください。4度も破婚しても平気でいられるんですから」
チュ君「…。」
カン・ウ「テ・イリョンさん側でも、社長が本物だと匂わせておく方がいいはずです」
チュ君「俺はゴメンだ。すでにネットにはカンチーム長の顔が出てるのに、もう少しくらい顔が広まっても平気だろ。カンチーム長が認めるんだ」
カン・ウ「僕も嫌です」

#押し付け合い(ププッ

そこへキム室長がやって来る。

キム室長「あの…二人とも否定されると、テ・イリョンさん側が困るようです」
カン・ウ「二股を掛けてバレたという展開に持ち込まれる可能性もあります」
チュ君「キングダムのモデルなんだ。イメージが失墜することもあるな」

チュ君が立ち上がった。

1635

チュ君「それなら、二人揃って否定しないことにしよう。どうだ?」
カン・ウ「いいでしょう」
チュ君「(キム室長に)テ・ゴンシルは?記事を見たんですか?」
キム室長「えぇ。さっき行ってみましたが、記事を見たようです」
カン・ウ「何と言ってました?」
キム室長「特に…気にしている様子はありませんでしたが」

二人揃ってキム室長の表情を覗うチュ君とカン・ウ。

#この図、おもしろいわー

チュ君「今、どこで何を?」
キム室長「キングダムの入り口に幽霊がいるって、それを探しに行きました」
カン・ウ「…。」
チュ君「…。」

+-+-+-+

キングダムの前で、行方不明の子どものチラシを配っている女性がいた。

テ嬢「(姉に)お姉ちゃん、あの人、子どもがいなくなったみたい…」
姉「お母さんの顔、生きた心地がしないようだね。どんなに心配か…」
テ嬢「(溜め息)本当に可哀想。失った子ども…隣にいるの」

テ嬢の目には、必死でチラシを配る女性のそばで、何も言えずに見つめている子どもの姿が見えていた。

姉「何か見えるの?」
テ嬢「子どもはもう死んでるの」
姉「え?!…あのお母さん、子どもが生きていると思って探しているのに」
テ嬢「お姉ちゃん、私が話してあげるべきかな」
姉「…。あなたの子どもは死んでるなんて、どうやって話せる?そんなこと話したら倒れちゃうわ。やめときなよ」

ろくに眠ってもいないであろうその女性は、ふらふらと倒れそうになる。
そこへある男性がさっと寄り添い、「大丈夫ですか?」と声を掛けた。

男性「僕も手伝います」
母親「…ありがとうございます」

彼らは二人で再びチラシを配り始めた。

テ嬢「あのお母さんに話してあげなかったら、一生あのまま子どもを探し回るでしょうね」

テ嬢は子どもの霊が走って逃げていくのに気づき、急いで後を追った。

+-+-+-+

テ嬢はキングダムの階段奥に隠れている子どもの霊に笑顔で声を掛けた。

テ嬢「ウジンだよね?こんにちは」
ウジン「…。」
テ嬢「(お菓子の袋を見せる)このお菓子、好きなんだよね?出ておいでよ。お姉ちゃんと話そう」

一人で何やらしゃべっているテ嬢を、アン代理とお喋り仲間が揃って腕組みをして不思議そうに眺めた。
そこへイリョンが入ってくるのが見える。

アン代理「テ・イリョンのダブルスキャンダル、真相知ってるわよ」
仲間「何?」
アン代理「二人共、(イリョンを指さし)あっちじゃないの。(テ嬢を指差し)あっちの4次元よ」

※4次元=理解できない不思議ちゃんのこと

アン代理「はぁ、私もスキャンダルに気をつけなきゃ」

#アン代理役の女優さん、この放送直前にご自身のスキャンダルが出てましたね(笑

+-+-+-+

ソファの一方にはチュ君、向かい側にはイリョン。
チュ君の両側にはキム室長とカン・ウが並んでいた。

イリョン「記者たちにはうまく言い逃れておいたわ。(チュ君を指し)こちらは食事をするだけの関係、(カン・ウを指し)そちらはお茶するだけの関係だって」(←合ってる

「ありがたいでしょ?」とイリョンは硬い表情で立ち上がった。

イリョン「二人共も私の気を害しないことね。そうしたらパパっと!…そっちとデキてるってことにしちゃうから」

「結構だ」と鬱陶しそうに手で制するチュ君と、強気な彼女を悲しげに見つめるカン・ウ。

イリョン「もうモデル契約も終わるし、キングダムに来ることもないでしょうね」

彼女が背を向けようとすると、チュ君が口を開いた。

チュ君「テ・イリョンさんとは再契約するつもりです」
カン・ウ「?」
イリョン「…本当ですか?」
チュ君「食事だけの関係なのになぜモデル契約を打ち切るんだと思われたくない」
イリョン「…。」
キム室長「それなら秋のキングダムサイン会では、カンチーム長が警護に立つんでしょうね」
イリョン「…。」
カン・ウ「それが僕の仕事ですから」
イリョン「(咳払い)再契約すればキングダムに来ることも多いでしょうね」

最後まで武装したままイリョンが社長室を出て行く。
「モデル料をサービスするよう交渉してください」チュ君がキム室長に指示をしている隣で、カン・ウは去っていくイリョンの後ろ姿を見つめてた。

+-+-+-+

「大丈夫だってば」

テ嬢がウジンを手招きしながら社長室の前までやって来ると、そこへちょうどイリョンが出て来る。

イリョン「大きなテ嬢!」
テ嬢「(笑顔)」
イリョン「あたしの記事、見た?」
テ嬢「うん、見た」
イリョン「あんた、何とも思ってないんでしょ」
テ嬢「…あんたは大丈夫?」
イリョン「あたし、サラリーマンも嫌いだし、呪いのかかった男も嫌いだもの」
テ嬢「…。」
イリョン「あんた、チュ・ジュンウォン社長から5番目の呪いを受けたくてくっついてるの?」
テ嬢「くっついてるのは確かだけど、絶対離れるつもりはないから、呪いを受けることはないわ」
イリョン「あんたが受けないならチュ・ジュンウォン社長が受けるわね」
テ嬢「…。」
イリョン「呪いを”幸運&不運”のいかなご液だとでも思ってるの?避けようと思って避けられるわけ?」

#いかなご液=『一泊二日』」というバラエティ番組の中で、『幸運&不運』という罰ゲームで使われるキツーイ飲み物。

イリョンが出て行くと、彼女は溜め息をついた。

テ嬢「死んだ人からの呪いなら避けていけそうだわ。(隣のウジンを見て)私は死んだ人が見えるから。そうでしょ?」

+-+-+-+

行方不明の子どものチラシ配りを手伝った男性は、そのチラシを手に焦りに焦っていた。

男性「まだ子どもを探してるのか!」

彼は、倉庫の片隅に置いてある血のついたタオルを手にとった。

男性「焼かなければ」

そう言ったものの、困り果てて車のボンネットにもたれ掛かった。

男性「ここにあるもの、早く片付けなきゃいけないのに…」

+-+-+-+

チュ君と、その後ろに控える二人の男性は、さっきよりさらに難しい顔で向かいに座る人物を迎えた。

1636

向かいに座る…テ嬢は、隣の空席を指さす。

テ嬢「ここに子どもが座ってるんです」

キョトンとするキム次長と、恐怖をこらえるカン・ウ。

テ嬢「でも、この子のお母さんは、まだこの子が生きていると思って、ずっと探してるんです」
3人「…。」
テ嬢「チラシに”失踪”って書いてあるから、きっとすごく怖い目に遭ったみたい。何を聞いても怯えて答えないんです」
キム室長「つまり、(テ嬢の隣を指さし)見えもしない子どもをあやしてやるってことですか?」
テ嬢「…。」
チュ君「(一人だけ余裕)初めて経験すれば当惑するでしょう。僕は見えない犬について行ったこともあるんですよ」

チュ君は満足気に微笑んだ。

カン・ウ「何をすればいいですか?」

真摯に申し出るカン・ウに、余裕だったチュ君の笑みが消える。

チュ君「カン・ウチーム長はこういうのを怖がると聞いた。困るなら出て行ってもいい(再び余裕)」
カン・ウ「怖くても避けないことにしたんです」
チュ君「(ドキリ)」
キム室長「(ドキリ)」
カン・ウ「それに、子どもも母親もとても気の毒です。テ・ゴンシルさん、僕は何をすればいいですか?」
テ嬢「(感激)カン・ウさん、ありがとう」
チュ君「…。」

テ嬢はチラシを頼りに説明した。

テ嬢「これをみると、この子は童謡が好きだそうです」
カン・ウ「歌を歌ってやればいいんですか?」(←キャー!歌フラグよっ
テ嬢「クマの絵のTシャツを着てるんです。クマが好きみたい」
カン・ウ「それなら”3匹のクマ”がいいですね。僕が歌ってあげましょう」
チュ君「!」

咄嗟に阻止したのはキム室長だ。

キム室長「いや、カン・ウチーム長一人じゃ照れくさいだろうから、(チュ君に)1フレーズずつ分けて歌うのはどうでしょう?ね?」
チュ君「…。」
キム室長「子どもの名前、ウジンでしたよね?」
チュ君「(頷く)」
キム室長「ウジン、このおじさんたちが歌を歌ってくれるから、よく聴くんだぞ。な?」

#↑このときのチュ君の楽しそうな顔をチェック^^

キム室長「(小声で)カンチーム長、キュー!」

カン・ウは頷くと、表情一つ変えずに歌い出した。

カン・ウ「♪3匹のコブタが一緒に住んでた~ 父さんクマ、母さんクマ 子グマ~」

#キャハハ キャハハ キャハハ

キム室長「(あんたも歌うんか!)♪父さんクマはデップリ 母さんクマはほっそり 子グマはかわいい!」

ウジンの顔が明るくなる。

チュ君「… ♪ウッシ ウッシ ほら上手」

ウジンは嬉しそうにテ嬢を振り返る。

テ嬢「ふふっ この子笑ってますよ。(3人に)もう1回!」
チュ君「!」

3人のおじさんたちが不器用に歌を続けた。

1637

+-+-+-+

ハンジュはテ嬢の浮き沈みを図解していた。

#アメトークか何かに出て来そうな図だ。

ハンジュ「テ・ゴンシルさんは事故に遭うまで人生の黄金期でした。しかし、24歳のとき、突然謎の事故に遭い、そこから3年間ずっと病院にいて、27歳のときひょこっと目を覚まし、長い間負け犬人生を送った後、少し前にキングダムへやって来たんです」

副社長「だからそれはどんな事故なんだ?」
ハンジュ「それはまだわかりません…」
副社長「君、昨日テ・ゴンシルの姉と腹いっぱい牛ハツを食べて、領収書を切ってきたようだが…」
ハンジュ「…。」
副社長「食べながら何を聞いて来たんだ?」
ハンジュ「だから姉とは豚足屋で会うことにしました。テ・ゴンシルさんがどんな事故に遭ったのか、必ずや突き止めますから」
副社長「お前、食べ歩きでもしてるつもりか?」
ハンジュ「(ぼそぼそ)すみません…ちょうど店があったから…」

+-+-+-+

ハンジュはさっそうテ嬢姉のところへやって来た。
牛ハツ屋で事故の話をしているうちに酒がすすんでしまい、その続きの話ができなかったと持ちかけるハンジュ。

ハンジュ「すごく気になって…」
テ嬢姉「うふっ そうよね。その話してるうちに飲んじゃったのよね」
ハンジュ「(期待)」
テ嬢姉「ごめんね。もうそんな憂鬱な話しないから」
ハンジュ「大丈夫だって…」
テ嬢姉「豚足屋に行こうね」

去っていく姉。

ハンジュ「はぁ…聞き出そうと盛り上げてるうちに、大事な話を聞けなかったな。それにしても、軍隊でサッカーした話を何であんなに大喜びで聞いてたんだ?途中でやめることもできやしない。今日も楽しい話を聞きたくて豚足屋に行くつもりなんだろに…(ぶつぶつ)」

+-+-+-+

テ嬢はウジンに案内され、ある人気のない道へ来ていた。

テ嬢「ここで事故があったの?」
ウジン「(頷く)」
テ嬢「あんたが死ぬのをどうして誰も見てないのかな?…誰かが隠したの?」

テ嬢がキョロキョロしていると、車が一台止まり、そこから男性が一人降りてきた。
チラシ配りを手伝った、あの男性だ。

男性「お嬢さん、何かお探しですか?」

男性の顔を見るなり、ウジンが驚いて姿を消す。

テ嬢「あの…ひょっとしてこの辺で交通事故がありました?」
男性「…ないけど」
テ嬢「ないですか?…変ね」

男性はテ嬢が持っているウジンのチラシに気付いた。

男性「その子を探してるんですか?」
テ嬢「えぇ」

「ありがとうございます」と頭を下げると、彼女は初めてウジンがいなくなったことに気付いた。
あたりを探しながら去っていくテ嬢を、男性は心配げに見送る。

男性「あの人が何か見たのか?」

~~ある日のこと~~

車を走らせていた男性は、道の真中で立っていたウジンを轢いてしまう。
倒れたウジンの周りには、彼が食べていたお菓子が散乱し、頭から血を流したウジンはもう動かなかった。

男性はウジンを抱え上げ、車のトランクに積み込むと、その場から逃げ去った。

男性「そんなことはない。誰もいなかったんだ!あの人だって俺に気づかなかったのに」

+-+-+-+

ウジンの母親はまだ一心にチラシを配っていた。
そばでじっと母親を見上げるウジンの声は彼女には届かない。
見守っているテ嬢の目に涙が溢れた。

+-+-+-+

悩んだ彼女が相談したのはチュ君だ。

テ嬢「子どもは死んでいるのに、母親はずっと…。話してあげるべきでしょうか」
チュ君「知らずにいても辛いだろうが、それが生きていく理由になる。知ってしまったら、後を追って死にたくなるだろう」
テ嬢「生涯死んだ子どもをそばにおいて、苦しみながら生きていくことになるのに…可哀想だわ」
チュ君「母親には死んだ子どもが見えないだろう?死んだ子どもが見えると言えば、お前はその人にとって残酷な人間になる」
テ嬢「…。」
チュ君「子どもの居場所が分かったら、出すぎた真似をせずに通報するんだ」
テ嬢「そうですよね」
チュ君「…。」
テ嬢「社長も最初はそうでしたか?」
チュ君「?」
テ嬢「死んだチャ・ヒジュさんを見たって私が言ったとき、酷い人間だと思いました?」
チュ君「俺のそばに…そんなに長い間あいつがいたって聞かされるのは…嫌だった」

チュ君はもたれていたデスクから立ち上がり、椅子に腰掛けた。
その横顔を、テ嬢はじっと見つめる。

1639

チュ君「…。」

+-+-+-+

ここで一旦区切ります。

この↑最後のシーン、他人の痛みを真剣に考えてやる静かなチュ君がとても良くて、何とも余韻が残ります。

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