韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!プロデューサー/SPY/夜警日誌/トライアングル/主君の太陽など

プロデューサー8話あらすじ&日本語訳 vo.2

   

キム・スヒョン、IU、コン・ヒョジン、チャ・テヒョン、出演、KBS韓国ドラマ「プロデューサー」8話、中盤です。

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ベッドの上で携帯に見入るシンディは、いつになく深刻な表情だった。
『シンディの事故は故意に起きたのか』昨日1日イェジンを悩ませた、あの記事だ。

「PDに真実を求める」
「なんでシンディにそんなことするんだよ」
「PDはシンディのアンチなのかも」
「穴に落とした理由って?そっと押せばいいのに」

記事の下にはズラズラと大量のコメントがついていた。

シンディ「…。」

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イェジンとジュンモがダイニングで朝食の準備をしているところへ、すっかり着替えたシンディが出て来た。
手には荷物を下げている。

イェジン「そんな…ごはん食べていきなさいよ」
ジュンモ「…。」
イェジン「この間言ってたキヌアとレンズなんとか、買って来たのに。食べて行ってくれないと、この家には食べる人いないんだからさ」

「下でキム室長が待ってるんです」シンディがポツリと言った。

「…そう?」イェジンはジュンモと顔を見合わせる。

イェジン「じゃあ、そうする?」

ジュンモが立ち上がり、シンディのバッグを手に取った。「行こう。見送るよ」

シンディ「ネット見てなくて知らなかったんです」
イェジン「?」
シンディ「私のために大変な目に遭ってらっしゃったって」

再びイェジンとジュンモが素早く目を合わせた.

イェジン「うん、まぁ… ちょっと大変ではあったけど。車のサイドミラーを折られて、修理費もバカにならなくてね」
シンディ「…。」
イェジン「でも大丈夫よ」
シンディ「えぇ」
ジュンモ「?」
イェジン「えぇ?」
シンディ「大丈夫なんでしょ?」
ジュンモ「(ビクビク)」
イェジン「あぁ、うん。…大丈夫」

「ちょっと」シンディがイェジンのそばに並ぶと、携帯のレンズを向ける。
イェジンが咄嗟にニッコリ微笑むと、シンディがシャッターを切った。

1971

イェジン「何してんの?」

「どうもありがとうございました」淡々と頭を下げると、シンディは玄関の向こうへ消えていった。

イェジン「はぁ、ホントたいした挨拶よね。だから”頭の黒い獣は飼うもんじゃない”って言うのよ。昔の人の言葉に間違いはないわ」

※머리 검은 짐승은 거두는 게 아니다.=頭の黒い獣は飼うな。人間は恩を仇で返す、という意味。

入れ替わりに弟のイェジュンが帰ってきた。「姉さん!」

弟「たった今、ジュンモ兄とシンディが一緒に出て行ったみたいなんだけど」

「…。」イェジンは怖い顔で前を見据えたままだ。

弟「俺、今、夢見てんだよな?」
イェジン「うん、夢だよ。つまんない夢」

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ジュンモがシンディを連れて下りてくると、キム室長が丁重に頭を下げた。「ありがとうございました、PDさん」

ジュンモ「待ってくださって、ありがとうございます。ピョン代表には上手く言っておいてくださいね」
キム室長「えぇ、承知しました」

「では」もう一度頭を下げ、背を向けたところを、ジュンモが呼び止める。「あの…」

キム室長「?」
ジュンモ「たいしたことじゃないんだけど、僕とイェジンが一時的に住所共有状態だってことは、他のところで言わないでいただけると…」

「あぁ」キム室長は笑った。

キム室長「私もちょっと驚きましたけど、他のところでは言いませんので」

「ふふふ」キム室長はしきりに笑いながら車に乗り込んだ。

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車が走り出す。
しばらく進むと、シンディはハッと身を乗り出した。「!」
脇の歩道を、スンチャンの歩いているのが見える。
「…。」シンディは彼の姿を目で追った。

1964

シンディ(モノローグ):
이제 드디어 한번 인생의 한 부분을 살아보기를
나에게서 나온 무엇인가를 세상에 내놓고
세상과 관계를 맺고 싸우게 되기를
열렬히 갈망했다
人生の一幕を生きてみたい
私から溢れだすものを世界へ放ち
この世界と繋がり 戦いたい
今になってようやく そう熱烈に切望する

이따금 이런 생각을 하곤 했다
지금 바로 지금
틀림 없이 나의 연인이 내게로 오고 있을 거라고
다음 길모퉁이를 지나고 있을 거라고
다음번 창문에서 나를 부를 거라고
時折そんなふうに考えることがある
今 まさに 今
愛する人が 私のところへ向かっているに違いないと
その曲がり角を曲がろうとしているところだと
次に見える窓から 私を呼ぶだろうと

※ヘルマン・ヘッセ『デミアン』の一節。(Google book:訳者が違うので、ピッタリ一致しません)

車が彼を追い越し、その姿が後ろへ消えていく頃には、彼女の目に涙が滲んでいた。

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次の一泊二日の企画会議が行われていた。
集まっているのは、スンチャンを除く全員だ。

ホワイトボードには左に女性陣、右に男性陣の名前が並び、第一回で男性が選んだ女性に線が引いてあった。

ハンナ「こっちが今、1対2の三角関係になってて、こっち(※ダラとスンユン)は一応カップル成立してますけど、男性の方は特に気があるわけじゃありません。女性の方の…若干一方的な感じ?」

彼女の説明に、皆が頷く。

#恐ろしい会議だ そしてやっぱりYGの扱いがビミョーすぎる

「それから…」ハンナはシンディの名前を指した。「この子は何もなし。矢印が出てもいないし、来てもいない」

ジヨン「だから一番期待株なのよ。男性陣たちから見れば、ちょっと手ごわい感じもするし」
イリョン「ラブラインがバンバン弾けてくれれば、視聴者の反応も良くなるはずなんだけどな。今回のコンセプトはそこだし」
ミンジョン「どうして?あるじゃないですか」

「ノッティングヒル♪」ミンジョンがニヤリと笑って言った。

ジュンモ「ノッティングヒル?」
ヒョングン「スンチャンだよ。作家たちの間でスンチャンがイケメンだって」

女性陣が俄然ノリ気を見せ始めた。

ヒョングン「シンディとくっつけようってね。だから、会議の時間にわざとスンチャンを使いに出したんだ」
ジュンモ「ホントなのか?」
ハンナ「いえ、別に意図的じゃないですよ。シンディとペク・スンチャンPDが一緒に出て、靴紐を結んでやったり、まぁそういう場面も生まれたわけだし」

皆がうんうんと頷く。

ハンナ「あそこだけは結構反応があったんですよ」
ジヨン「私たちでちょっとプッシュしてあげたらどうですか?」

「えぇっ?」ジュンモが若干すっとんきょうな声を上げる。

ジュンモ「何言ってんだよ。そんなものプッシュしたからって上手くいくもんか?現実味がないだろ」
イリョン「それはそうですけど、とにかく絵面だけでも可愛く」
ハンナ「(うんうん)」
イリョン「今度の出演者たちの親友を家に招待する企画、シンディにはスンチャンを行かせようか?」

「それいい!」周囲から拍手が起きる。

ジヨン「わかりませんよ。シンディはペク・スンチャンPDに気があるかも」
ジュンモ「…。」

+-+–+

家でとりとめのないことをしながら、シンディはしきりに携帯を見た。
何度みても通知はない。

気を紛らわせるため、シンディはひたすら塗り絵に色を塗った。
そのとき、急に携帯が鳴り、シンディはビクリと震える。

マネージャーだ。

マネ(電話)「代表がそっちへ向かったぞ」
シンディ(電話)「わかったわ」

彼女はテーブルの上に置いてあったスンチャンとの写真に手を伸ばし、小さなバッグの中へと押し込んだ。

シンディ「…。」

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会社へやって来ると、イェジンはタジョンを呼び止めた。「タジョン」

イェジン「会社で個人の宅配受け取るなって言ったよね」
タジョン「PDさんに来たんですよ」
イェジン「え?誰から?」

「シンディのファンクラブみたいですけど」タジョンが目の前にある宅配の箱を見た。

イェジン「ちょ、ちょっと!退けて!退けてよ!」

怯えるイェジンにお構いなく、タジョンは箱を開ける。

イェジン「死んだネズミとかそういうのが入ってるかも!開けないで!」
タジョン「違うと思いますよ」

荷物の一番上に、カードが入っている。

タジョン「愛してるって」
イェジン「え?」

イェジンは恐る恐る近づくと、指先でつまむようにカードを受け取った。
チラリと箱を覗くと、ぬいぐるみやハートのクッションが見える。

イェジン「私に来たの?ホントに?」
タジョン「ご存じないんですか?」

「シンディが書き込みしてたでしょ?」タジョンが携帯の画面を差し出した。

イェジン「?」

それはSNSへのシンディの投稿だ。
「甘い休息。いつも優しいタク・イェジンPDさんと一緒に~♥」今朝撮った写真に、そう添えられている。

イェジンは思わず笑みを漏らした。

イェジン「そうよ、私は優しい性格なんだから。そのとおり。よく言ったわ」

「ちょっと!」イェジンがさらに顔を輝かせる。「”いいね”が5600も?!」

タジョン「シンディがいいってことですよ。PDさんじゃなくて」

イェジンはカードの中を開いた。

「 To 韓国最高の美人PD タク・イェジンPD様へ
愛するタク・イェジンPD様♥
我らがシンディを可愛がってくださり、
甘い休息を取れるようにしてくださり、
本当にありがとうございます」

イェジン「韓国最高の美人PD タク・イェジンPD様?この子たちったら。私の実物見たのね、見たんだわ。じゃなきゃ私のこと、こんな正確に描写できないわよ」

「そうでしょ?」近くにいる男性スタッフを振り返る。

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ジュンモはイリョン、スンチャンと共に昼食に出ていた。

ジュンモ「何食う?」
イリョン「何でもいいですよ」
ジュンモ「おい、アイディアは出さなくても、こういうときは意見ぐらい出せよ」
イリョン「…。」
ジュンモ「(スンチャンに)お前は何食う?お前の食いたいものにしようぜ」
スンチャン「スンデクク?」
ジュンモ「暑い!」
スンチャン「キンパ?」
ジュンモ「はぁ、お前、うんざりしないのか?編集室でずっと食ってるのに」
スンチャン「リ、リゾット?」
ジュンモ「ホント、お前とは合わないな。何がリゾットだよ、軽すぎんだろ。それに普通に発音しろ」
スンチャン「…それなら先輩は食べたいものを食べてください。僕はビビンククスを食べます!」

スンチャンはそう言い放ち、先輩たちの反応も待たずに先を歩き出した。

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3人は仲良くビビンククスをすすっていた。
そこへホンスンと共にイェジンが入ってくると、スンチャンは嬉しそうに隣の椅子のカバンを退ける。
そこへさっと座ったのはホンスンだ。「…。」

「よく考えてみろよ」ホンスンが何やらイェジンに訴えた。「こんな機会はなかなかないぞ」

イリョン「どんな機会ですか?」
ホンスン「友だちがいてな。アメリカでMBAを取って、今、外資系の投資会社のチーム長級なんだ。そいつとイェジンをブラインドデートさせようってな」

「!」スンチャンが箸を止めた。

イェジン「はぁ、うちのステファノは私が一人寂しく老いていくんじゃないかって、えらく世話焼いてくれるのよね」

「ここ、ビビン2つくださいね」イェジンが店員に声をかける。

ホンスン「そいつが理想のタイプを話してたんだけど、イェジンのこと言ってるんじゃないかってビックリしたんだから」
イェジン「何て?」
ホンスン「年齢は関係ないって」
イェジン「ちょっと!悪くないね、悪くない」

スンチャンは深刻な顔で話に耳を傾け、ジュンモは素知らぬ顔でビビンククスをすすっている。

ホンスン「それから、強い女が好きだってさ」
イェジン「私のどこが強いのよ?」
ホンスン「…。」
イェジン「スンチャン、私って強い?」

「全然強くないです!」スンチャンが即答する。「むしろその反対です!」

ホンスン「それにな、お前みたいにスタイリッシュな女が好きだってさ。お前、オシャレだろ」
イェジン「そうね、それはその通り。私オシャレだから」

「ジュンモ!」ホンスンが黙っているジュンモを捕まえる。「お前から言ってやれよ」

ホンスン「お前の親友はこんないい機会を拒んでるんだぞ」
ジュンモ「知るかよ。本人がやりたきゃやる、嫌ならやらない、それだけだろ」

スンチャンとイェジンが黙って彼を見る。

イェジン「気が向かないのよ」
ホンスン「気が向くから会うのか?会ってみなきゃわからないだろ。お前な、すぐ夏が来て秋になるぞ。今年もあっという間だ」

「いいってば」待ちきれずにイェジンがジュンモのビビンククスに箸を伸ばしたところへ、彼女たちの2人前が届いた。

ホンスン「お前の電話番号、そいつに渡すからな。掛かってきたら受けろよ、とにかく」

「おばさん、卵もう半分だけください」ホンスンが店員に頼む。「辛いもの苦手で」
「これ食えよ」ジュンモが自分の卵をホンスンにわけてやる。イェジンも自分の分を足してやった。
その瞬間、スンチャンは素知らぬ顔で自分の卵を口に頬張った。

+-+-+-+

店の外で待ち受けておき、スンチャンは出て来た先輩たちに1つずつキャンディーを配る。
最後にホンスンが手を伸ばすと、スンチャンはわざとらしく言った。「あ、4つしかなくて」

ホンスン「お前は?」
スンチャン「あ、すみません。僕、先に食べちゃったんです」
ホンスン「何だよ、ホントにないのか?」
スンチャン「(もぐもぐ)」
ホンスン「俺、辛いの苦手だから、口直しの飴は絶対舐めるのに」

「…。」実はスンチャン、残っていたキャンディを全部ひと掴みにし、リュックに突っ込んで出て来たのだ。

スンチャン「はい、ホントに一つも残ってないと言われたので」

「あー、辛っ」ホンスンは顔をしかめながら歩き出す。
その後姿を眺め、スンチャンはひそかにほくそ笑んだ。

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「ゆっくり休めたの?」シンディを前に、ピョン代表は寛大さを見せた。

シンディ「おかげさまで」
ピョン代表「どこへ行ってきたの?」
シンディ「友人たちと一緒に」
ピョン代表「私の知らない友だちがいるの?」
シンディ「いますよ、私にも。友人たちが」
ピョン代表「…。」
シンディ「これ以上は訊かないでいただきたいんです。無事に帰ってきたからいいじゃないですか」
ピョン代表「私と戦争すれば、無条件であなたが負けるようにできているの。そんなこともわからないお馬鹿さんに育ててはいないわ」
シンディ「わかってます、私も。だけど、その戦争も簡単には起きないわ。代表の財産目録、一つ目が私なのに」

「私を失うのは嫌でしょう?代表だって」シンディは堂々とピョン代表を見据えた。

ピョン代表「さすがシンディは賢いわ。だけどね、シンディ。私、失ったことがあるのよ。あなたと同じように、私にとって大事な子だったわ。それでも、その子を失ってから、あなたが来たの」
シンディ「…。」
ピョン代表「あなたがいなくなれば、その場所は… またすぐに埋まるわ」
シンディ「…。」

+-+-+-+

会議室で、ジュンモは一人、書類を見つめていた。
そこへスンチャンが近づく。「あの…」
「あぁ、何だ?」書類から目を離さず、ジュンモが言った。

スンチャン「先輩は… いいんですか?」

ジュンモが顔を上げる。「何が?」

スンチャン「イェジン先輩がデートをしても… 先輩は本当にいいのかって、そう思って」

「何言ってんだか」関心がなさそうに、ジュンモはまた書類に視線を戻す。

スンチャン「イェジン先輩のそばに、他の誰かがいても…」
ジュンモ「お前な」
スンチャン「… 先輩は構わないのか、僕はそれが気になって」
ジュンモ「そりゃ質問か?答えなきゃダメか?」
スンチャン「僕、先輩はちょっと卑怯だと思います」
ジュンモ「…。」
スンチャン「イェジン先輩の気持ちを知っていながら放っていること、近づくことも離れることもできないように囲いを作っていること、全部、僕には卑怯に見えます」
ジュンモ「…。」
スンチャン「人の気持ちって、踏みにじったからって消えるものじゃないし…」

「お前…」ジュンモが遮る。

スンチャン「…。」
ジュンモ「会社生活を8年やって来て、悟ったことが一つだけある。何だかわかるか?」
スンチャン「…。」
ジュンモ「良かれと思う気持ちが良い結論を生むわけじゃない」
スンチャン「…。」
ジュンモ「誰かの人生に介入して、たとえそれが好意的だったとしても、もし結果が悪かったら、誰が責任をとれる?」
スンチャン「…。」
ジュンモ「むやみに割り込んじゃいけないんだ。最後まで責任をとれるわけじゃないなら」
スンチャン「…。」

1965

ジュンモはそう穏やかに話すと、スンチャンの前を立ち去った。

+-+-+-+

会社を出るジュンモの表情は冴えなかった。

「PDさん、私のこと、責任もってくれますよね」
「当然だ。俺だけ信じてろ。俺が責任もつから」

忘れられないそのやり取りが、頭の中にまた甦る。

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会社を出ようとして、スンチャンはダンボールを抱えたイェジンを追いかけた。「先輩、帰るんですか?」

イェジン「うん。あんたたち、会議だったの?」
スンチャン「はい、明日撮影なので」

スンチャンがダンボール箱を見る。「これ、何ですか?」

イェジン「シンディのファンの子たちが、私に愛してるって」

スンチャンが箱を受け取る。「駐車場までお持ちします」
二人は並んで歩き出した。

スンチャン「先輩、電話かかってきたんですか?」
イェジン「何の?」
スンチャン「さっき昼ごはんのとき、キム・ホンスン先輩がおっしゃってたデートの」
イェジン「あぁ、それ?ううん、まだだよ」
スンチャン「連絡があったら、お会いになるんですか?」
イェジン「まぁ、そのとき次第で」

「!」突然スンチャンが彼女の正面に回り込んだ。

イェジン「何?」

スンチャンは手すりの上にダンボールを置く。「えっと…」

スンチャン「こういう言葉があるじゃないですか。男は男が見ないとわからないし、女は女が見ないとわからないって」

彼の話にイェジンは真剣な顔でうんうんと頷く。

スンチャン「同じ男から見て、その方はイマイチなんじゃないかって…」
イェジン「あんたに何がわかるのよ?会ったこともないのに」
スンチャン「あ、その方は強い女性が好きだって言ってましたよね。だけど、先輩は強いというよりは、自分の考えはハッキリ主張して、正すところは正して、戦うべきときは戦って…」

「それを強いって言うのよ、スンチャン」イェジンがニッコリ笑う。「ふふふ」

スンチャン「僕は違うと思いますけど」
イェジン「まぁ良しとして。それから?」
スンチャン「それに、その方はスタイリッシュな女性が好きだって言ってましたけど、僕は外見で良し悪しを判断する人は、あまり良くないと思います!」
イェジン「あんた、ヘジュが可愛いから好きだって言ったくせに!」
スンチャン「…。」
イェジン「(笑)もう、何よ!ジュンモのことがあったから?」
スンチャン「!」
イェジン「私がジュンモへの腹いせで他の人とつき合うんじゃないかって?」

「あ… そんなことはないと信じてますけど」スンチャンはそう言って俯いた。

イェジン「まぁ、それもアリね」
スンチャン「ダメです!」
イェジン「何がダメなのよ。うちのお母さんだって、どんな男でもいいからつき合ってくれって言ってるのに」

1966

先を歩き出しながら、イェジンは楽しそうに微笑んだ。

#イェジン、今すんごいイイ気分だよね♪

+-+-+-+

スンチャンは無事イェジンの車にダンボールを積み込んだ。

イェジン「ありがとう!あ、今日の分の返済ね」

イェジンが財布を出したところで、スンチャンがさっとそれを押し返した。「いえ」

イェジン「何で?」
スンチャン「あの、これからは現金じゃなくて現物で返済していただけませんか?」
イェジン「ん?」

#ずっと凄い違和感を感じてるんだけど、スンチャンの車はお父さんのだよね。

スンチャン「例を挙げるとしたら、食事だとかお酒だとか、え… 映画のチケットだとか、そういうので」

「…。」イェジンは怪しげに彼を見た。

スンチャン「10%値引きしますから!」
イェジン「…。」
スンチャン「20%」
イェジン「OK!あんた、後で変更なしだからね。間違いなく自分で20%って言ったんだから」

「はい!」スンチャンの顔に喜びが滲み出る。

イェジン「ところでさ、シンディあの子、何日か一緒に過ごしたのに、無事帰ったとか何とか言ってきてもいいんじゃないの?」
スンチャン「…。」
イェジン「とにかくあの子、ホントに恩知らずのワガママよ。あんた、ひょっとして電話してみた?」

スンチャンは首を横に振った。

+-+-+-+

ドレッサーの前で肌の手入れをしながら、シンディはまた携帯をチラリと見た。
「…。」携帯を手に取ると、マネージャーにメッセージを送る。

シンディ(LINE)「私に電話してみてくれる?」

数秒も待たずに電話が鳴った。「シンディ、どうした?」

シンディ(電話)「ううん、電話が通じてるかどうかと思って」

「ちゃんと繋がってるわ」電話をドレッサーの上に戻し、彼女は大きく溜息をついた。

+-+-+-+

シンディは自分のアンチカフェを眺めていた。

「私、シンディに早く活動再開してほしいよ」
「私も」
「私も」

並んでいる投稿がいつもと違う。

シンディ「どうなってるの?」

「シンディが休んでるから、叩く相手がいなくて寂しい」
「だよね」
「最近生きる楽しみがないよ。なんとなく無気力」

シンディ「呆れるわ、ホント」

彼女は「私も」と2文字書いて投稿ボタンを押した。
彼女の「シンディジョラ」というHNに、他のメンバーが反応する。「何日かぶりですね。何かあったんですか?」

シンディジョラ(投稿)「旅行に行ってました」
会員(投稿)「シンディジョラさん、加入して短いですけど、出席率もいいし、書き込みも多いですよね。今度、運営陣の入れ替えをするんですけど、シンディジョラさんもうちのカフェの運営に加わっていただけませんか?」

シンディ「私にアンチカフェの運営に入れって?バカらしいわ、ホント」

そう言いながら、彼女は返信を書き込む。「本当ですか?ありがとうございます」

投稿した次の瞬間、「シンディジョラ様は運営陣に登録されました」とポップアップが上がった。

シンディ「こいつら全く…。OK、あんたたち変なこと書いたら全部消してやるから」

そのとき、電話が鳴り出す。「!」
発信者を見て、シンディは静かに電話を取った。「もしもし」

「あぁ、シンディ!」電話を掛けて来たのはイェジンだ。

イェジン(電話)「家のものを整理してくれたのはありがたいんだけど、何をどこに置いたのか教えてくれなきゃ。梅エキスはどこに置いたの?」
シンディ(電話)「冷蔵庫の一番下。右側2番目にあるでしょう?」

「そうじゃなくて。それはイワシ出汁。ううん、それはアワビソース」シンディは電話で事細かに教える。「その横」

シンディ「緑のラベルも貼っておいたんだけど」

「あぁ、あった」イェジンがボトルを取り出した。「見つけたわ」

シンディ「あったでしょ?」
イェジン「うん。それでさ…」
シンディ「…。」
イェジン「無事帰ったの?」
シンディ「えぇ、まぁ。帰って来ましたよ」
イェジン「ピョン代表に怒られなかった?」
シンディ「適当に切り抜けました」
イェジン「そう?よかった、よかったわ。私、ちょっと心配してたのよ」

「心配してくださって…ありがとうございます」シンディがポツリと言う。

イェジン「うん。また何か見つからないものがあったら電話するね」
シンディ「あ、PDさん、あの…」
イェジン「?」
シンディ「テレビ局の新人PDたちですけど」

シンディが無意識に口やら耳やら忙しく触り始める。

イェジン「うん」
シンディ「あ、人に訊かれたんですけど、新人PDって仕事も多くて忙しいんですよね?」
イェジン「そうね、やっぱり」
シンディ「つまり、どれくらい忙しいかって言うと、電話の一本もできないとか、メールの一つも送れないとか?」

1967

#もー シンディ可愛すぎてどうにかしちゃいたい(爆

イェジン「そこまでじゃないよ。電話やメールくらいはするでしょ」
シンディ「…。」
イェジン「さっきスンチャンだって、私が帰るとき追っかけてきて、荷物持ってくれたりしたよ」
シンディ「あぁ…」
イェジン「だけど、そんなこと誰に訊かれたの?」

「まぁいいじゃないですか」ムッとしてシンディの声がキツくなる。

イェジン「うん、じゃあね」

イェジンはさっと電話を切った。「今、私にキレたよね?!」

イェジン「ホント、ワガママって一生直らないよね。もうあんたの心配なんかしないから!」

+-+-+-+

洗面所に入ったジュンモは、洗面台にイェジンの電話が置きっぱなしなのに気づいた。
「イェジン、電話が…」外に声を掛けた瞬間、着信音が鳴る。「?」
何気なく画面を見ると…

「From:キム・ヒョンジュン
キム・ホンスンPDからタク・イェジンさんを紹介された、キム・ヒョンジュンと言います…」

メッセージの冒頭が表示されている。
彼は思わず続きをスクロールした。

「…少ししたらお電話しますから、出てくださいね」

ジュンモ「…。」

そのとき、電話が鳴り出した。「!」
ジュンモは咄嗟に「拒否」を押す。

+-+-+-+

「携帯どこやったっけ?」イェジンが部屋から出てくると同時に、ジュンモが洗面所から出て来た。「ここだ」

ジュンモ「お前、いつもあちこち落としていくんだから」
イェジン「うん、サンキュー」
ジュンモ「ついさっき電話鳴ってたぞ」
イェジン「?」
ジュンモ「ホンスンが昨日紹介するって言ってた人だ」
イェジン「あんたが出たの?」
ジュンモ「いや。拒否押した。掛け直すなりしろよ」

「うん」イェジンは特に表情も変えず、頷いた。

ジュンモ「けどな、男ってのは男が見なきゃわからないんだ」
イェジン「?」
ジュンモ「強い女が好きだの、スタイリッシュがどうのって…」
イェジン「…。」
ジュンモ「話を聞いただけでも、そいつはないな」

「不思議だわ」イェジンがふっと笑う。

ジュンモ「何が?」
イェジン「いやね、昨日スンチャンもあんたと全く同じこと言ってたからさ」
ジュンモ「ペク・スンチャン?」
イェジン「うん。その男はないと思うって」
ジュンモ「…。」
イェジン「男の人が二人で同じこと言うってことは、その人はホントにないってことだよね?」

1968

#綺麗!

+-+-+-+

シンディはベッドの中で静かに目を開けた。
ハッとしてサイドテーブルの携帯を掴む。
画面を覗くと、ガックリと息をついた。

起き上がり、LINEのスンチャンの連絡先を開く。

「お元気ですか?」

そう打って、またすぐ消す。

「どうして連絡がないの?」

ダメだ。それもまた消す。
彼女はふぅっと溜息をついた。

「もういいです。連絡しないで」

送れるわけがない。それも消去だ。
携帯をベッドに放り投げ、彼女は布団に潜り込んだ。

+-+-+-+

寝室のドアを誰かがノックした。
顔を覗かせたのはマネージャーだ。

マネ「シンディ、表に人が訪ねて来てるんだ」
シンディ「誰?」

マネージャーが中に入ってきた。「一泊のチームが、今日、親友スペシャルだとか何とか言って、観察カメラを置かせてくれって」

枕に抱きついたままシンディが口を開く。「何よ、事前に許可もなしに?」

マネ「代表には話が通ってたみたいだ」
シンディ「…。」
マネ「代表のおっしゃるには、噂の件もあるから、レギュラー番組には顔を出したほうがいいって」
シンディ「それなら何で前もって言ってくれないのよ!メイクもロクにしてないのに」

「もう!」シンディが眉をひそめる。
「ところで、よりによってあの傘PDが来てるんだ」マネージャーが言った。

シンディ「!」
マネ「代表も嫌がっていらっしゃるのに、何でいつも君に新人PDを付けるんだろうな」

シンディがガバっと起き上がる。「誰が来たって?」

マネ「傘PD」
シンディ「今すぐ帰れって言ってよ」
マネ「わかった」
シンディ「待って!」
マネ「え?」
シンディ「放っといて」
マネ「え?」
シンディ「ううん、帰らせて」
マネ「???」
シンディ「いやダメ!」
マネ「…。」

シンディはぎゅっと目を閉じた。

シンディ「ううん、いいや。会いたくない」
マネ「…。」
シンディ「あぁ!もうわかんない!マネージャーさんのせいで頭こんがらがっちゃったじゃない!」

「あぁ」マネージャーが出て行こうとする。

シンディ「待ってよ」
マネ「?」
シンディ「どうするのかまだ言ってないでしょ」
マネ「あぁ(待機)」
シンディ「何してんの?」
マネ「整理がついたら言ってくれ。ここにいれって言われたらいるし、出てろって言われたら出てるから」
シンディ「…。」
マネ「どうする?ドアに挟まってようか?そうしろって言うなら、そうするから」
シンディ「???」

+-+-+-+

しばらくして…。

マネージャーに招き入れられ、スンチャンがシンディのマンションに入ってきた。
先日のロケで二人と行動を共にしたカメラマンも一緒だ。

リビングへ案内されると、シンディがソファの真ん中に座っていた。
きちんとした服装に着替え、ヘアとメイクも完璧の整え、まるで人形のように背筋をピンと伸ばして座っている。
目が合うと、小さく会釈をし、シンディはすぐにツンと視線を元に戻した。

スンチャン「…あの、シンディさん」
シンディ「私たち、公私は区別しましょ。これは公的スケジュールだから、プライベートな会話は慎んだほうがいいってことです」
スンチャン「…。」
シンディ「個人的に言いたいことがあったら、マネージャーを通してください」

「はい、じゃあ…」スンチャンはさっそく隣にいるマネージャーに何やら耳打ちする。(←笑笑笑

スンチャン「じゃあ僕、カメラをセッティングします」

スンチャンがカメラマンと共にそばを離れた。

シンディ「(マネに)何て?」
マネ「君、ボタンを掛け違えてるみたいだって」
シンディ「はっ!!!」

1969

+-+-+-+

ここで区切ります。
スンチャンの大張り切りっぷりも、シンディの小憎たらしさ(←褒めてます)も、イェジンの凛とした美しさも、ジュンモの一歩引いた優しさや人間くささも、誰も彼もますます愛くるしくてたまりません。

デミアン」、注文しましたよん♪

 - プロデューサー