韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

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プロデューサー10話あらすじ&日本語訳 vo.3

   

キム・スヒョン、IU、コン・ヒョジン、チャ・テヒョン、出演、KBS韓国ドラマ「プロデューサー」10話、終盤です。

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帰りの車の中で、マネージャーが口を開いた。

マネ「シンディ、俺は過ぎたことをわざわざほじくり返す性格じゃないって、君も知ってるだろ」
シンディ「?」
マネ「この間、君がミューバンで1位になった時、雨の中、傘になってくれた人に感謝してるって、そう言ってたよな」
シンディ「…うん。それが何?」
マネ「俺、それが自分だと思ってた」
シンディ「!」
マネ「口には出さなくても、心の中ではそんなに俺のこと思ってくれてたんだなぁって、正直感動したし、マネージャーって職はこんなにやり甲斐があるんだ… そう思ってたんだけど」

マネージャーはポツリポツリと語り、次第に声を震わせる。

シンディ「さっさと本題に入りなさいよ」
マネ「あれは… あの傘か?傘PD?」
シンディ「…。」
マネ「図星か?そうなのか?」
シンディ「…。」
マネ「あの人は傘のことで君に突っかかって来たんであって、いつ傘になってくれたんだよ?俺なんか何百回も傘さしてやってるぞ」
シンディ「…。」
マネ「俺は寂しいよ、シンディ!」

シンディは静かな溜息を一つ。「”シンディガヌグシンディ”さん」

「はい」マネージャーが思わず答える。
少し間をあけて、マネージャーが目をまん丸に見開いた。「!!!!!」

シンディ「静かに行きましょうよ、”シンディガヌグシンディ”さん」

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エレベーターの扉が開き、一人で乗っていたホンスンはふと顔を上げた。「!」
澄ました顔で入ってきたのは、ヤンミだ。
入ってすぐにドアの方へ向き直った彼女を、ホンスンは恐る恐る後ろから窺った。

ホンスン「あの日は… すみませんでした」
ヤンミ「…。」
ホンスン「僕にも事情が…」

ヤンミがふいに振り返る。

ホンスン「…あったけど、すみませんでした!」
ヤンミ「噛み終わったガムも、紙に包んで捨てるのが礼儀ですわ」

#何て身にしみる台詞なんだ…

ホンスン「…。」
ヤンミ「期待を膨らませている人に拒絶の意志を表わすにも、メールくらいは送ってやるのが礼儀」
ホンスン「(しょんぼり)」

ヤンミがじわじわと彼に迫った。「… Adios, amigo(さようなら、友よ)」

エレベーターの扉が開き、ヤンミは何事もなかったように出て行った。

ホンスン「!」

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朝食を摂りながら、イェジンの弟、イェジュンが溜息をついた。

弟「ここで食べる最後の朝食ってことか?」
イェジン「(頷く)」
ジュンモ「たびたび来いよ。まぁ、そんなこと言わなくても来るだろうがな」
弟「姉さんは10代の頃から貧しさを経験して、自分の家や不動産ってヤツに執着があるんだ。けど俺は違う。体の休まる場所が自分の家なんであって、自分の金で買ってこそだとか、そんなのは違うと思うんだ」
イェジン「あんたまた何が言いたいのよ?」
弟「俺、30分以上乗り物に乗ると酔うんだ。京畿道から登校なんてムリだよ、ホント!」
イェジン「どうしろっていうのよ」
弟「あの家は貸しに出して、このままここに住むわけにいかないかな?」

「…。」ジュンモが黙って二人を見比べる。

弟「嫌なら月極でも」
ジュンモ「俺はそう言ったんだが、姉さん嫌だってさ」
弟「頭オカシイぞ!」
ジュンモ「あんた、考試院から追い出されたくなかったら、それくらいにしな」
弟「あぁ… ここはバッチリなのに。ヨソん家の姉さんたちは、もっとよろしくやってるぞ。はぁ、ツイてない」

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イベント会場にはシンディのプラカードやファンカフェのTシャツを来たファンたちが続々と集まっていた。
楽屋の前までやって来たシンディは、「ジニ&シンディ」と書かれた貼り紙に立ち止まる。「…。」

マネ「何でこんな…。どうなってるんです?シンディ単独イベントじゃなかったんですか?」

「コミュニケーション取れてないんでしょうか?」イベント関係者が言う。

関係者「所属事務所の方から連絡を受けて、シンディさんのギャラを下げる条件で、ジニさんをオプションでと頼まれたんですよ」

シンディが貼り紙を思い切り剥がす。「!」

シンディ「順序が逆だわ。オプションが前なんてあり得る?そうでしょ?」

シンディは後ろ手に張り紙をマネージャーに渡し、楽屋へ入っていった。

マネ「(そっと関係者に張り紙を渡し)貼り直してください」

+-+-+-+

中へ入ると、ジニはもうメイクを始めていた。
ドレッサーに向かい、ジニは鏡越しに挨拶をする。「こんにちは」

「シンディ、来たのね」奥に腰掛けているピョン代表が言った。

「椅子」シンディにそう言われ、マネージャーが慌てて椅子を持って来た。

シンディ「私の前に置いてどうすんのよ?鏡の前に置かなきゃ」

シンディはドレッサーを占領しているジニに近づくと、足で思い切り椅子を突き飛ばした。

ジニ「!!!」

#負けるなシンディーーー

シンディ「ここに置いて」

マネージャーがドレッサーの前に椅子を置くと、彼女はそこに何食わぬ顔で腰を下ろした。「始めて」

ピョン代表「シンディ、あなた何してるのよ!妹の前で幼稚な!」

「お母さん」シンディがクルリと後ろを振り返る。「あの子が私の場所にずっと座ってたのよ」

シンディ「あの子、メイク最初からやり直さなきゃね。私が泣かすから」
ピョン代表「!」

シンディはジニをチラリと見据え、鏡に向き直った。

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イベントが始まっていた。

ステージの上で、シンディはジニの”いいお姉さん”を演じる。
「シンディ、ジニの面倒をよく見てますね」後方で見ていたキム室長が、ピョン代表がそっと囁いた。

ピョン代表「あの子、本当に手強いわ。私が甘やかしすぎたのね」

イベントはサイン会に移った。
やって来るファンたちは、ジニの前を素通りし、シンディの元へ向かう。

ファン「この頃よくテレビに出てるからすごく嬉しいです!」
シンディ「そうでしょ?ファンの方たちともっと近づきたいって頼んだら、代表がオーバーなことを(笑)何でもOKなさるんですよ」

「だってね」シンディの声が大きくなる。「貸金業者の広告までOKなさるって噂も聞いたんです」
カメラを構えている報道陣がざわめく。
「ダメです!」「ダメですよ!」ファンが口々に声を上げると、報道陣が一斉にシャッターを切り始めた。

ファン「ダメですよ」
シンディ「まさかそんなことありませんって」

「だけど、代表にやれって言われたら、私はやらなきゃ」シンディはしおらしい顔でファンを見上げる。

シンディ「それが契約の条件だから。私が貸金業者の広告をやっても、あまり嫌わないでくださいね」

『シンディ、叔父さんが来たぞ』というプラカードを掲げ、中年男性がシンディの前にやって来た。

ファン「シンディさん、私は法務法人チュンギョンの弁護士、ソ・ギョンソクともうします。前におっしゃっていた不公平契約のことでしたら、各条例ごとに無効訴訟を起こせますよ」
シンディ「…。」
ファン「私が無料弁護をお約束いたします!」

「わぁ!」ファンが湧いた。
シンディは可愛く両手を頬にそえて微笑む。「やっぱりシンディのパワーの源はおじさんファンの方々だわ♥」
「ありがとうございます♥」彼女は手でハートを作ってみせた。

シンディ「だけど、うちの代表はまさかそんなことなさいませんよ」
ファン「(頷く)」
シンディ「もしそんなことが起きたらご連絡しますね。名刺をください」

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ジュンモはイェジンと一緒に分別ゴミを出しに来ていた。
持って来たゴミを、それぞれの箱に分けて入れる。「括って捨てなきゃいけないんじゃない?」

そこへまたタイミング悪く…良く通り掛かったのは、スンチャンの母親だ。「?」
「あらまぁ」スンチャンの母親は笑顔で声を掛けた。「先輩」

イェジン「あ、こんばんは、お母様」

「旦那様?」スンチャンの母がジュンモを指した。

イェジン「いえいえ!友だちです。スンチャンと同じチームのメインPDさんなんですよ」
母「!」

「スンチャンのお母さん」イェジンがそっとジュンモに言う。

ジュンモ「あぁ!初めまして!ラ・ジュンモともうします」
母「つまり、ラ・ジュンモPDさんはうちのスンチャンの直属の上司でいらっしゃるってことですわね?」
ジュンモ「えぇ、まぁ、そうとも言えますね」
母「ここの棟にお住いなんですか?」
ジュンモ「はい」

「あらまぁ!」母が顔を輝かせる。

母「つまり、スンチャンがたびたび泊まっているのは、ここにお住まいの先輩のお宅?」
イェジン「(ニッコリ)」
ジュンモ「えぇ(ニコニコ)」
母「あらまぁ!(歓喜)あの、ご夕食はお済みですか?」
ジュンモ「あ、これから食べようかと」

+-+-+-+

スンチャンの自宅のテーブルの上には、ぎっしりとご馳走が並んでいた。

母「たいしたものはないけど、たくさん召し上がってくださいな」

父のすぐそばにイェジンとジュンモが座り、その向かいにはスンチャンがいる。
兄や姉、妹たちも勢揃いしていた。

ジュンモ「ホント…素晴らしいですね。ありがとうございます」

皆が箸を手に取った。

母「ところで、会社でうちのスンチャンはどうかしら…しっかりやってますか?」

「あ、スンチャンですか?」ジュンモの視線が、スンチャンに向かう。

ジュンモ「すごく立派ですよ!しっかりやってます」
母「うふふ♪」
父「我が子を自慢するのは愚かなことですがね、自分の子だからというわけじゃなくて、この子はそういうところがありまして。幼い頃から目立っていて、賢くて失態もないし、完璧というか」
イェジン「…。」
ジュンモ「…。」
父「ひょっとして人より目立ちすぎて恨まれたりしないかってね…」

ジュンモがまっすぐスンチャンの父を見る。「そんな心配はなさらなくてもよろしいかと、お父様」

父「あぁ、それなら幸いです」
母「だけど、テレビ局にいるとやっぱり芸能人も多いでしょう?うちのスンチャンはマスクもずば抜けてるから…」
スンチャン「(困)」
母「芸能人に見染められて口説かれたりしなかと、毎日気を揉んでいるんですよ」
イェジン「あぁ、そんな心配は本当になさらなくて大丈夫です」

「やめてください」たまらずスンチャンが止めた。

姉「そうよ、やめましょ。お食事できないわ。(ジュンモたちに)とにかく、両親はスンチャンをすごく可愛がってまして。わかってやってくださいね」

「はい」ジュンモたちはニコヤカに頷いた。

皆が箸をとったところで、姉がまた話し始める。「長男が…まだ社会的にも家庭的にも不安だから」
また皆が箸を止めた。

長男「…。」
姉「やっぱり家の期待は全部次男の方に…」
長男「おい、何でそんなこと言うんだよ」
皆「…。」
父「食べましょう!」

今度こそ皆が箸を取る。
と、次に声を上げたのはスンチャンの妹だ。「スターウォーズの時間だ!」

ジュンモ「!」
妹「友だちの間じゃ超期待作なんだよね」
スンチャン「(オロオロ)」

ジュンモが箸を置く。

スンチャン「何が期待作だよ。そのせいで一泊二日が休止になってるのに」
父「そうなのか?どうして休止なんだ?メインPDさん、何があったんです?なぜなんです?」
ジュンモ「たまにあることですから」
父「…。」
母「あら、困ったわね…」
ジュンモ「…。」

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スンチャンの家族はテレビを前に大爆笑だ。
ジュンモとイェジン、そしてスンチャンを除いては…。
イェジンまでがとうとう笑いを堪え切れず、ジュンモは思わず彼女を睨みつけた。

さぁ、いよいよ番組の最後にスンチャンの予告が流れる。

『こうやって脆くも消えてしまうのか。
最後の闘魂を発揮するのか』

テロップにシンディの声が重なっている。

ジュンモ「この予告、ペク・スンチャンPDのデビュー作なんです」
父「あぁ!」

皆の視線がテレビに向かった。

姉「涙でちゃう」
義兄「(淡々)ホルモンのせいだ。最近えらく感情的だから」
妹「(?)」
スンチャン「おい!」
父「何でだ?上品でいいじゃないか」
長男「そういうコンセプトじゃないのか?店先に”私たちもうダメです、靴下10足だけ買ってください”そんなふうに書いてるヤツ、あるだろ」
姉「ちょっと!」
スンチャン「…。」
母「それで、何をどうしようって話なの?
スンチャン「まさにそこなんです。そうやって気に掛かるように作った予告なんです」
皆「…。」

彼らのやり取りを、ジュンモとイェジンが黙って聞いている。

父「うちのスンチャン、上手くやったんでしょうか?メインPDさん」
ジュンモ「…。」

ジュンモの視線がスンチャンにぶつかった。

ジュンモ「えぇ、上手くやったんです。元々予告なんて、流れた後は誰も覚えていませんから。だけど、今はどうです?とにかくみんな一言ずつ何か言ったでしょう?上手くやったんですよ」

母が喜んで手を叩く。
場は上手くおさまった。

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団欒が終わり、ジュンモとイェジンはスンチャンの部屋でようやく一息ついていた。

イェジン「ねぇ、あんたが誰と結婚するかわからないけど、あんたと結婚するって人がいたら、私は全力で止めるわ」
ジュンモ「お前のお母さん、うちの母さんと甲乙つけがたいな。干渉と執着。大変だろう」

ジュンモはそう言いながら笑う。

ジュンモ「けど、うちの父さんは違う」
イェジン「うん、お父さんは違うね」
スンチャン「今日はちょっとみんなオーバーだったんです。もともと個人のプライベートに…」

そのとき、父がガバっと扉を開ける。「ラ・ジュンモPD、私と将棋を一局やりませんか?」

ジュンモ「あ、僕、将棋は指せなくて」
父「あぁ、そうですか。ちょうどいい、私がお教えしますから」

「早くいらっしゃい」父が強引に手招きする。「やっぱり家というものは人がワイワイしていないと」
仕方なく部屋を出ながら、ジュンモはボソッとスンチャンに言った。「うちの親父はああじゃないぞ」

+-+-+-+

部屋にはイェジンとスンチャンが残った。

イェジン「ねぇ、このことシンディが知ったら、二人の関係が発展するには致命的だわ」
スンチャン「ホントにそんなんじゃないですってば!」
イェジン「ふはは♪ あんたリアクションが凄いから、ときどきからかいたくなるのよね」

「おい」父が再び扉を開ける。「チームに分かれて賭けをすることになったぞ」

+-+-+-+

ピョンエンタ軍団が帰りの車に向かった。
ジニが後部座席のドアを開けようとすると、ついて来たシンディがすかさず手を掴む。

ジニ「何なんですか?今度は」
シンディ「あんた、前に乗りな」
ジニ「私がどうして?代表と話があるならどうぞ。私は外で待ってるから」

ジニが離れようとすると、またシンディが強く手を掴み直した。「!」

シンディ「乗れっていったら乗りなさいよ」
ジニ「…。」

ジニは凍りついたように前の座席へ移動する。
「外で5分だけ待っててください」運転手が外へ出ると、シンディはピョン代表の隣に乗り込んだ。

ピョン代表「あなた、ちょっと調子に乗りすぎよ」

ジニが後ろを振り返る。「代表!私、めちゃくちゃ腹が立ってるんですから!」

シンディ「お母さんが私を春川で乗せたのは、こんなにいい車じゃなかったわ」
ピョン代表「そうね」
シンディ「私は代表のおかげでここまで脚光を浴びたし、代表は私のおかげで多くを手に入れたわ。お互い仲違いしようがないのに、どうしてこうなっちゃったのかしら」
ピョン代表「あなたがお利口にしてれば、仲違いすることもないのよ」
シンディ「内容証明が来たわ。この間私が雲隠れしたときに被った損害、違約金を払わなければ訴訟を起こすって」
ピョン代表「そのことなら私の弁護士と話しなさい」

「うーん」シンディはあくまでも落ち着きを見せる。

シンディ「私のアンチファンの中に司法研究生がいて、それで調べてみたんだけど、私はあのとき怪我してたし、医師の診断では最低でも4日は入院しなきゃいけなかった…」

「それなのに」シンディが語気を強める。「事務所が無理にスケジュールを消化させようとしたのよ」

シンディ「だけど、実際向こうから違約金は請求されていない。なぜなら?その後私がグラビアにイベントに、あらゆることをやってあげてるから」
ピョン代表「ずいぶん準備したわね、あなた」

シンディが微笑む。「私を脅迫しないで」

シンディ「私、お金でやられるほど貧乏でもないし、味方がいないわけじゃないわ」
ピョン代表「…。」
シンディ「あと10ヶ月。それまでシンディを潰さないでくださいね、お母さん」
ピョン代表「…。」
シンディ「やれと言われたことは一生懸命やるけど、自滅することまで言われるままにやるほど素直じゃないの」
ピョン代表「シンディ、お母さん、そんなふうに教えたかしら?そんなに力んで話すとバレバレよ。あなたは今自信がないって」

2039

シンディはピョン代表を睨みつけたまま、ふっと笑う。「ジニ」

ジニ「…?」
シンディ「聞いたでしょ。あんたにしっかり聞かせるために乗せたの。しっかりしなさい、あんたにもすぐ起きることよ」

「…。」ジニは頑なに前を向いたまま、小刻みに震える。
「私はこれで」シンディは冷ややかな笑みを浮かべ、車を下りた。

+-+-+-+

一人スンチャンの部屋に残ったイェジンは本棚に並ぶ本にひとしきり関心した。
本棚の上に、不似合いなパンダが置いてある。「?」
そうだ… あのとき、スンチャンがパンダを抱えていたこと、それを背中に隠したことを、彼女は思い出した。

イェジン「子どもじゃあるまいし、ぬいぐるみが好きだなんて」

チョンと触った途端、コロッと転がり落ちたパンダを、彼女は咄嗟に受け止める。
棚に置き直したとき、弾みで腕のボタンを押した。

「先輩はいつも…」

イェジン「?」

ふいに聴こえてきた声に、イェジンは驚いて辺りを見渡す。
どうやら声の元はパンダだ。

「ご自分のことを”自分は強い、強い女だ” そうおっしゃいますけど」

イェジン「あれ?何これ?」

「僕がこの2ヶ月間、先輩を見ていて出した結論は、先輩はそんな強い方ではありません」
「先輩の目にはまだ幼く、未熟で不格好でしょうけど、こんな僕でも良ければ…こんな僕の気持ちでもいいのならば…僕が先輩のおそばにいたいんです」
「ある人が僕に言ってました。本心がすぐ表に出る人だって。だけど、他人にはすぐわかる僕の気持ち、先輩は気づいていないみたいです」

2040

「!」イェジンはこれまでのスンチャンとのやり取りを思い浮かべ、わっと床へ座り込んだ。

「あんた好きな人ができたんでしょ?それで悩んでるのよ」
「どうしてわかったんですか?」

イェジン「まさか!」

「いつから一人でクヨクヨしてたのよ?」
「しばらく経ちます。最初は全然そんなことなかったんだけど、だんだん自分でも知らないうちに…」

イェジン「…。」

「先輩、僕が好きな人はシンディさんじゃありません。そうじゃないんです!」
「ふぅん、そうなの?じゃあ誰?」

イェジン「!」

#イェジンの反応いいね リアルだし可愛いね

+-+-+-+

帰りの車の中でいつものように鏡を覗いていたシンディは、ふと思い出して鏡を置き、窓の外をのんびりと眺めた。

#スンチャンに言われたことを思い出したってことですね^^

+-+-+-+

シンディアンチだった男性たちは、ネットカフェにいた。
二人はシンディの公式ファンカフェ、「イップシンディ」に加入し、嬉しそうに顔を見合わせる。
彼らの手元には、シンディに貰ったサインが置いてあった。

+-+-+-+

家へ戻るイェジンの様子がどことなく気になり、ジュンモは彼女の顔を覗きこんだ。
彼女の脇をちょんと突つき、笑いかけてみる。
彼の気遣いに、イェジンも小さく微笑み返した。

+-+-+-+

部屋に戻って来たスンチャンは、棚の上のパンダに顔色を変える。「?」
ゆっくりとそれに近づくと、彼は考えを巡らせた。

2041

+-+-+-+

『10 予告の理解
いずれにせよ予告は本編のためにある』

+-+-+-+

イェジンは公園のブランコにいた。
そこへ誰かがやって来て、彼女の前で立ち止まる。
「せ、先輩」スンチャンだ。

イェジン「あぁ、来たのね。座って。急に呼び出してごめん」

スンチャンは隣のブランコに腰を下ろした。

イェジン「ここで過ごす最後の夜だわ」
スンチャン「…。」
イェジン「スンチャン」
スンチャン「…はい」
イェジン「私さっき、あんたの部屋にしばらく一人でいたとき…」
スンチャン「わかってます」
イェジン「わかってるって?」
スンチャン「部屋に戻ったら、人形の場所が変わってて… 察しがつきました」
イェジン「あぁ、そうか… そうだったのね」

イェジンが咳払いをする。

イェジン「あんたってホントに几帳面で… こんなこともすぐ感づくのね。ご両親の言うとおりすごく賢いわ」
スンチャン「…。」
イェジン「とにかく、あんたもビックリしたよね。でも、私もビックリしたんだから」
スンチャン「…。」
イェジン「私、あんたのそんな気持ち、ホントに… 全然知らなくて」
スンチャン「…。」
イェジン「あんたが何で私のこと?想像も出来なかったのよ、私」

2042

深刻な顔でじっと前を向いていたスンチャンが、ゆっくり彼女を振り返った。「先輩」

イェジン「ん?」
スンチャン「意図したわけじゃなかったけど… 予告にはなったでしょう?」
イェジン「え?何が?」
スンチャン「僕が生まれてはじめて、ありったけの勇気を出して…」
イェジン「…。」
スンチャン「告白するっていう、予告」
イェジン「…。」

2043

スンチャンがイェジンのブランコのロープを掴み、ぐいっと引き寄せる。
彼女の体が大きく揺れると、スンチャンは迎えるように口づけた。

+-+-+-+

【エピローグ】

「答えは一緒にいるときに出すべきじゃない」ベッドの上で掛け布団を被ったまま、イェジンはジュンモに引っ越しの決意を告げた。

ジュンモ「…。」

イェジンが眠りに落ち、無事に蚊を退治してからも、ジュンモは彼女のそばにいた。

ジュンモ「俺だってわかってるさ。俺たち長い間一緒にいすぎたんだ。こんなことを言うのは25年の友情を賭けたギャンブルだってことも。けど、参ったな。だんだん不安になるんだ。このままお前を行かせたら、何か起きそうな気がしてさ」

+-+-+-+

ここでプロデューサ10話はエンディングです♪

「予告にはなったでしょう?」っていうスンチャンの表現が、凄いセンスを感じて身震いしました。
確かにその通りだ!

また、こんなとき黙ってないでスンチャン本人を呼び出して直接話す、そういうところがイェジンらしくてイイなと、そう思います。なかなかできませんよね、こんなこと。

私はいつからかシンディに傾いてるので、最近はめっきりシンディの甘酸っぱい片思いの方を楽しんでますが^^

最終週、今(最終回放送3日前)の時点では、結末のシナリオもキャストに配られていないそうで、一体どんな結末が用意されているのか、どうやってそこへ向かうのか、とても楽しみです。
「どうせジュンモが本気になったら勝てっこないんだから」と予防線を張りつつ、「でもそれじゃ普通すぎるよねぇ」とも思いつつ、「結局誰もくっつかないってのもアリだな」とも思ったり♪

今回約89分という最長回でしたが、長文に最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

 - プロデューサー

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