韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!プロデューサー/SPY/夜警日誌/トライアングル/主君の太陽など

SPY(スパイ:JYJジェジュン主演)15話あらすじ&日本語訳vol.1

   

キム・ジェジュン、ペ・ジョンオク出演。SPY15話前半。
あらすじの中で情景や表情も捉えつつ、台詞を丁寧に拾って翻訳していきます。

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現場に到着したキチョルたちは、ソヌとジュンヒョクの様子を遠巻きに窺っていた。
「準備しろ」彼の指示で、ジョンホが車の中にいる仲間に合図を送ると、皆が銃を手に一斉に動き出す。
ホンランは車の持ち手にヘリムを繋いでいたロープを外し、外へ出て行った。

ヘリム「?!」

只ならぬ空気を察し、ヘリムが目を丸くした。
入れ替わりにキチョルがやって来る。

ヘリム「ソヌに会いに行くって言ってたけど、何を企んでるの?なぜみんな銃を?」
キチョル「心配するな。息子は無事だろう」

「ただし」キチョルは続ける。

キチョル「素直にハードディスクを出さない場合は… 殺さないとな」

彼は手を伸ばし、ヘリムを引っ張りだした。

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「監督官が死んだことも、上は知っているんですか?」ソヌが尋ねた。

ジュンヒョク「当然じゃないか?チョン・ギュヨン次長の指示なんだから」

ヒョンテに録音装置が仕込んであることを知った上で、ジュンヒョクは次長の名を出した。

ソヌ「今この件も、次長の指示ですか?」
ジュンヒョク「いや。もっと上にいる人。チョン次長みたいな小物とはまるで違う人だ。俺がお前たち二人を撃ち殺しても、秘密裏に処理出来る」
ソヌ「あんたが裏金を持って行けなかったとしたら… それでも、後ろ盾になってくれると?」
ジュンヒョク「…。」

そのときだ。

後ろから放たれた銃弾が、現場要員の一人の左胸を貫いた。
キチョルたちだ。
残りの要員たちが一斉に銃を向ける。

#みんなで分担して、背後から一度に撃てばいいのにね

銃を抜いたジュンヒョクは、それをソヌに向けた。
その瞬間、ソヌは彼の手首を返し、あっという間に銃を奪いとる。

立場逆転だ。
手を上げて身を縮めるジュンヒョクに、ソヌはハードディスクをよこせと手を伸ばす。
ハードディスクを受け取ると、ソヌはキチョルへと視線を移した。

キチョル「キム・ソヌ… 以外全部殺せ」

キチョルの手下たちが一斉に銃弾を放つ。
あっという間にバタバタと人が倒れた。

「やめろ!!!!!」

ソヌが地面に向けて発砲し、叫び声を上げる。

#ジュンヒョクがソヌの後ろに逃げてるのが何気にツボ(笑
ホントいい味だすねぇ

ソヌ「あと一発でも撃つヤツがいたら、ハードはないぞ」

キチョルの手下たちが、銃を下ろした。
ジュンヒョクは一目散に施設の裏側へと逃げ出す。

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一部始終を聞いていたチョン・ギュヨン次長は、ウナの携帯電話をテーブルに置き、自分の携帯を取り出した。「全員出動準備だ」

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「先輩は行ってください」ソヌは隣のヒョンテに言った。「ここは僕が何とかします」

ヒョンテ「おい、お前一人残して行けるわけないだろ」
ソヌ「ここからは僕の問題です」

ソヌは手に持ったハードディスクに銃口を向けた。「僕にはこれがありますから。行ってください」

ヒョンテ「分かった。国家情報院が人を送ってるはずだ。すぐ迎えに来るから… 死ぬんじゃないぞ」

ソヌが頷くと、ヒョンテは急いで後ろへ駆け出した。

キチョルの手下たちが再び銃を構えると、ソヌもまた3発威嚇射撃をする。
キチョルの合図でホンランが車へ戻り、車のドアに手錠で繋がれていたヘリムを連れて来た。

ソヌ「…。」
ヘリム「…。」

数日ぶりに、ようやく親子は対面を果たした。

キチョル「母親が俺のもとにいるのを忘れたか?ハードを寄越せ」
ヘリム「…。」

キチョルはヘリムの腕を掴み、ソヌの方へ歩き出す。

ヘリム「ソヌ!」
ソヌ「母さん!少しだけ堪えて。すぐ終わらせるから」
キチョル「どうやら俺が来るのを待っていたようだな。お前が考えた作戦か?」
ソヌ「母さんを放してくれ。ハードディスクさえ持って行ければ、それでいいじゃないか」

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誰もいないキチョルの車に、誰かがひそかに近づいた。

ユンジンだ。

彼女は手に持ったGPS発信機を、ドアのくぼみに潜ませ、タブレットに位置情報が表示されるのを確認する。

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撃たれて地面に倒れていたジョンハンは、視線の先に落ちている銃に、懸命に手を伸ばした。
その瞬間、容赦なく銃弾が畳み込まれる。「!」

ソヌ「撃つなと言ったろ!!!!!」
キチョル「どっちにしたって死ぬヤツだった。苦痛を減らしてやったんだ」」

キチョルは銃の先でソヌの持つハードディスクを指す。「ハードディスクをこっちへ渡せ」

ソヌ「先に母さんを渡すんだ」

「ソンへ、約束を忘れるな」キチョルは隣にいるヘリムに小声で言った。「お前はハードディスクと一緒に俺と行くんだ」

キチョル「(ソヌに)何を根拠に?お前がまた何か企んでいるかもしれないのに」
ソヌ「母さんを渡さなきゃ、ハードディスクもない」
キチョル「そうか。まだ勘違いしてるようだな。今、優位に立っているのが誰なのか」

キチョルがヘリムの腕に銃口を当てると、引き金を引いた。「パン!」
ヘリムがうめき声を上げ、よろめく。

ソヌ「母さん!!!!!」

ヘリムのコートの袖口から赤い血が滴り落ちる。「ソヌ… お母さんは大丈夫よ!」
ソヌの目から涙が零れ落ちた。

ヘリム「…大丈夫だから!」
キチョル「ハードディスクを渡せ!!!母親が死ぬザマを見たくなけりゃな」
ソヌ「ファン・ギチョル… お前にも時間がないのは解ってるはずだが」

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次長の出動命令により、要員たちが数台の車で現場へ近づいていた。

++-+-+

「おい!!!」林の中を逃げ惑うジュンヒョクを、後ろからヒョンテが追いかけた。「ソン・ジュンヒョク!!!」
「助けてくれ!誰か助けてくれ!!!」ジュンヒョクは無我夢中で叫びながら、プール場の裏手へと下り、車道へ出た。

「助けてくれ!」通り過ぎる車に、懸命に両手を振る。
「パン!」後ろでヒョンテが放った威嚇射撃に、ジュンヒョクは驚いて身を屈めた。

ヒョンテ「ジュンヒョク」
ジュンヒョク「…。」
ヒョンテ「俺が… 俺が助けてやる」

「畜生!」ヒョンテは思わず叫んだ。

ヒョンテ「もう終わりだから、お互い全部ぶちまけようぜ」
ジュンヒョク「まだ終わりじゃない!!!笑わせんな!皆が来たらお前から殺してやろうか!」
ヒョンテ「俺が助けてやるって言ってんだ!!!」

ジュンヒョクの電話が鳴り出した。「もしもし、次長?」

「ソン主任」次長は移動する車の中だ。

次長(電話)「俺をそこまで見下していたのか?」
ジュンヒョク(電話)「え?」
次長「今、キム議員に会いに行くところだ。ソン主任が約束をすっぽかすようだから、俺が行かないとな」
ジュンヒョク「!」

ヒョンテが上着の内側のマイクを見せ、ニヤリと笑った。

ジュンヒョク「違います、次長!何か… 何か誤解なさっているようですが、そうじゃなくて、今状況が差し迫っていて、終わったらすぐご連絡差し上げようと思っていたんです!ご報告しようと思っったんですよ!」
次長「分かったから。監督官殺害からハードディスク奪取まで全部、ソン主任が責任を追わないとな」

「おい、チョン次長!!!!!」ジュンヒョクの叫び声が虚しく響く。「違うって!!!!!」

ジュンヒョク「俺一人じゃ絶対死なないぞ!!!知ってること全部ぶちまけるからな!!!」

次長相手に完全に狂ったジュンヒョクの姿に、ヒョンテは思わず笑った。

ジュンヒョク「よく聞けよ、馬鹿を見るのは一緒だからな!いいか!」
次長「ふふん。やれるもんならやってみろよ」

そこで電話はプツリと切れた。

ジュンヒョク「チョン次長!もしもし!」

電話から顔を上げると、ジュンヒョクは情けない顔でヒョンテを見上げた。「ヒョンテ…」

ヒョンテ「あぁ」
ジュンヒョク「ヒョンテ、お前は分かってるだろ。俺じゃない、チョン次長がやらせたんだって、お前全部知ってるじゃないか」

「あぁ、分かってるって」ヒョンテは薄笑いを浮かべ、頷く。

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ヒョンテ「一緒に行って証言してやるさ。この機会に悪いヤツらまとめてとっ捕まえりゃいいんだ」
ジュンヒョク「分かった、お前の言うとおりにするから。言うとおりにする!」

ヒョンテは構えていた銃を下ろし、手錠を出そうと腰に手を伸ばした。

ジュンヒョク「待て、ちょっと待ってくれ、ヒョンテ」
ヒョンテ「?」
ジュンヒョク「一つだけお願いだ。ハードディスクを奪うのを手伝ってくれないか?」
ヒョンテ「!」
ジュンヒョク「俺たち、あれさえ手に入れたら人生一花咲かせられるんだ。あれさえ手に入れれば!ヒョンテ、お前いつまで犬小屋みたいな家でおにぎりばかり食ってるわけにいかないだろ!頼むよ、本当に!ヒョンテ!一つだけお願いだ」

そこへ黒い車がゾロゾロと入ってくると、彼らのそばで停まった。
男たちが降りてきてジュンヒョクを無言で取り囲む。「お前ら何だ?」

ジュンヒョク「ヒョンテ!!!助けてくれ!!!」

男たちは彼を取り押さえると、背中から一発銃を撃ち込んだ。

!!!!!

目に涙を滲ませ、彼の体がゆっくり沈んでいく。
驚いて近づくヒョンテを気にもとめず、男たちはさっとそれぞれの車へと散った。

男のうちの一人が、マイクで誰かに報告するのが聴こえる。「抵抗したので射殺しました」

ヒョンテ「…。」

ジュンヒョクが握りしめた携帯が鳴り始めた。
画面に移っているのは、彼の愛する一人娘の写真だ。
電話の鳴り続ける音が、静かな現場に響き続けた。

181

+-+-+-+

近くで響いた銃声に、キチョルの視線が動く。

キチョル「そうだな。お前の言うとおり、急がなければ」

彼はヘリムを自分の方へ向き直らせると、左胸に銃を突きつけた。
「今度は心臓だ」そう言ってソヌを振り返る。

「…。」ソヌは仕方なく構えた銃を下ろした。
ニヤリと笑ってキチョルが彼に近づくと、その手からハードディスクを奪い取る。

キチョル「最初から素直に渡すべきだったんだ」

ヘリムの隣へと戻ると、キチョルはソヌを振り返り、突然発砲した。

!!!!!

銃弾が肩を貫き、彼はその場に崩れ落ちる。

ヘリム「ソヌ!!!!!」

ヘリムが彼に駆け寄り、キチョルを振り返った。「ファン・ギチョル!!!約束が違うじゃない!!!」
夢中でキチョルを見上げる彼女の視界がぐらりと揺れ、霞む。

ヘリム「私が行くと言ってるでしょう!あなたの言うことは何だってやるわ!ソヌを殺さないで!お願いよ!!!」

銃を向けたまま、キチョルは目の前の母子をじっと見つめる。
「いいだろう」彼は銃を下ろした。「これなら俺たちを追って来られないだろうからな」

キチョル「キム・ソヌ」

ソヌは赤く充血した目で、懸命にキチョルを見上げる。

キチョル「俺が2度も生かしてやったのを忘れるな」

キチョルはヘリムを息子から引き剥がし、歩き出した。
「駄目だ!」立ち上がろうとしたソヌを無慈悲に蹴り飛ばし、キチョルは背を向ける。

ヘリム「ソヌ!!!ソヌ!!!」

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彼の視線の先で、母がどんどん遠ざかっていく。

キチョルたちはすみやかに車に乗り込み、車を発進させた。

+-+-+-+

やっとのことで身を起こすと、ソヌは柵にもたれかかる。

ソヌ「…。」

建物の陰にユンジンの姿が見えた。

ユンジン「…ソヌさん!」

ソヌは彼女に気づくと、道路側を振り返る。
車がやって来て、停まるのが見えた。

ソヌ「駄目だ、ユンジン…」
ユンジン「!」
ソヌ「来たらお前まで掴まる」

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ソヌが首を横に振る。
彼女は身を切るような思いで、その場を離れた。

「おい!ソヌ!大丈夫か?!」ヒョンテがまっすぐソヌに駆け寄る。
「大丈夫かって!こいつ!」ヒョンテの呼びかけで、ソヌは小さく目を開けた。

「おい!」ヒョンテは一緒にやってきた要員たちを振り返る。「早く救急車を呼べ!!!救急車!!!」

ソヌ「ファン・ギチョルが… 西へ逃走しました。追ってください」

+-+-+-+

停めてあったソヌの車に飛び乗ると、ユンジンはハンドルに突っ伏した。
乱れた呼吸を整えると、彼女は落ち着いてタブレットを手に取る。
地図上を赤い印が移動していく。
キチョルの車だ。

彼女はすぐさま車を発進させた。

+-+-+-+

逃走する車の中で、キチョルはさっそく手に入れたハードディスクを読み込んだ。
マカオ銀行の口座が表示される。
彼の顔に笑みがこぼれた。

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助手席にいるジョンホは意識を朦朧とさせていた。
彼はジュンヒョクたちを急襲した際、腕に銃弾を受けたのだ。
腕を撃たれたヘリムもまた、額から止めどなく汗を流し、痛みに苦しんでいた。

キチョル「弱くなったものだな、キム・ソンへ。その程度で痛いふりをするとは」
ヘリム「ソヌに… あそこまでしなきゃいけなかったの…?」
キチョル「あの程度で済んだことに感謝すべきだ。心配するな。あのくらいじゃ死なん」

「俺を見ろ。体の半分が焼けてもピンピンしてるだろ」ハードディスクを手に入れた余裕からか、彼は上機嫌で笑った。

「ううっ!」ヘリムが呻き声を上げた。
再び彼女の視界が歪み、フィルターが掛かったように霞む。
キチョルが顔を近づけ、彼女の腕に触れる。「横になってろ。(***)」
「どうしてこんなこと!!!」ヘリムは彼の手を振り払い、ほとんど声にならない声で叫んだ。

ヘリム「いっそのこと殺してよ!あなただってその方がスッキリするでしょ」

じっとヘリムを見つめ、キチョルは静かに言った。「俺のものだから」

ヘリム「!」
キチョル「年を取って役には立たないし、手こずらせるばかりだが、それでも俺の手を離れるのは我慢ならない」

キチョルがハードディスクを抜き取り、鞄に片付け始める。
ホンランたちが、それをチラリと窺った。
助手席のジョンホもまた、微かに振り返る。

+-+-+-+

ユンジンはキチョルの車を追っていた。
車を走らせながら、彼女はソヌに電話を掛ける。
電話は繋がらない。

「…。」彼女はハンドルを切った。

海辺に車を停め、彼女はもう一度タブレットの地図を見た。
キチョルの車を示す赤い点が離れていく。

「これが終わったら、君は自分の道を行けよ」ソヌの言葉が頭の中を巡る。
「駄目だ、ユンジン。君まで捕まる…!」彼は騙していた自分を行かせてくれたのだ。

ユンジン「…。」

そのとき、電話が鳴り出した。
黒い携帯電話だ。「お母さん?!」

ユンジン(電話)「それじゃ、国境は超えたの?…良かった!良かったわ!!!私もすぐ行くわ。約束したところで待ってて」

そう言って、彼女はタブレットに視線を落とす。
赤い点がみるみるうちに離れ、画面から消えようとしていた。
彼女は静かに目を閉じた。「お母さん」

ユンジン「私、ひとつだけ用事を終わらせてから行くわ。まだ返していない借りがあるの」

「…。」彼女は再びアクセルを踏んだ。

+-+-+-+

現場に救急隊が到着した。
ジュンヒョクがストレッチャーで運ばれていくのを、ヒョンテはじっと見送る。

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「汚れ仕事は俺とお前だけでいい。同期同士でな」
「一つだけお願いだ。ハードディスクを奪うのを手伝ってくれないか?」
「俺たち、あれさえ手に入れたら人生一花咲かせられるんだ。あれさえ手に入れれば!ヒョンテ、お前いつまで犬小屋みたいな家でおにぎりばかり食ってるわけにいかないだろ!頼むよ、本当に!ヒョンテ!」

ヒョンテ「…。」

ヒョンテの懐で携帯が鳴った。「…はい、次長」

次長(電話)「手短に言う。今回の件は家族スパイ事件だ。韓国在住スパイのキム・ウソクとパク・ヘリム夫婦が北の命令を受け、息子を通じて情報を引き出し、亡命した監督官とうちの要員たちまで射殺した、夫婦スパイ団事件」
ヒョンテ(電話)「次長!」
次長「ソン・ジュンヒョクは捜査過程で無理をして死んだんだ。事情説明は俺がやっておくから、お前はしっかり収拾しろ」
ヒョンテ「そうやって蓋をするにはあまりに大事件なんじゃ… いや、そんなことしちゃいけない事件じゃないですか?!」

次長は皮肉な笑みを浮かべる。

次長「どこが大事件なんだ。お前こそ一大事じゃないか。また馬鹿な真似をしてみろ。お終いだからな」

「あぁ」次長は大きく息をつく。「ジュンヒョクの席が空いたな」

次長「いいチャンスだと思って、ちゃんと後始末しろ。まずは現場班からしっかり整理するんだ」

電話が切れると、ちょうど目の前をソヌが運ばれていくのが見えた。
「おい」ヒョンテは救急車の前にいる要員に声を掛ける。

ヒョンテ「これは俺が乗って行くから、追跡班に防犯カメラを調べてファン・ギチョルを追わせるんだ。いいな」

ヒョンテはソヌと共に救急車に乗り込んだ。

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救急車の中で、ソヌは眠っていた。
「誰がそんな言葉を使えって言ったの?」母の声が聴こえる。

幼い彼の使った言葉を、母が厳しく叱ったことがあったのだ。
彼は母の言葉を思い出していた。

「お母さんの言葉遣いを真似しちゃ駄目って言ったでしょ!」
「どうして悪いところまで全部真似しようとするのよ、どうして!」

俯いて涙を流す幼い彼の前に、母は身をかがめた。

「お母さんの真似をしちゃ駄目よ、ソヌ」
「私のせいでソヌに何かあったら… 生きていけないわ」
「だから言ってるの。お母さんの言うこと、分かってくれるわね?」

大きく頷いた彼を、母は抱きしめた。「ごめんね、ソヌ。全部あなたのためなのよ」

幼かった過去の自分は、いつしか母の腕の中で成長する。

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「いつも悩んでいたわ。何があなたにとってより良いことなのか。正しいことなのか」
「あなたを身籠った瞬間から今まで、たった一瞬でも悩まずに生きたことはないのよ、ソヌ」

ソヌ「母さん…ごめん」

そうやって母を抱きしめた手が… 血で真っ赤に染まっている。「!!!」

「何でもあなたの言うとおりにするから、ソヌには手を出さないで!!!」母が叫んだ。

「!!!」ソヌが苦痛に顔を歪め、救急車の中で目をさます。
ゆっくりと色づいた視界の中心で、ヒョンテが自分を覗き込んだ。「ソヌ、大丈夫か?」

ヒョンテ「俺を見てみろ、誰だか分かるか?」

ソヌは思わず痛む右肩に手を伸ばす。

ヒョンテ「出血が多くてショック状態に陥ったらしい。幸い弾は貫通していたから大丈夫だって」
ソヌ「ファン・ギチョルは?追ってますか?」
ヒョンテ「ソヌ、今から話すことをよく聞けよ。ソン・ジュンヒョクは… 何も言えずに道端で死んだ」
ソヌ「…。」
ヒョンテ「ファン・ギチョルは今探しているところだが、どっちにしろ上は…」
ソヌ「僕の家族に被せようとしているんですね」
ヒョンテ「…。」
ソヌ「ソン・ジュンヒョクの代わりに責任を取る人間が必要だから」

メールの着信音が鳴った。
彼は痛む腕を伸ばし、携帯を掴む。
ユンジンからだ。

「ファン・ギチョルは私が追ってるわ」

ソヌ「まだ終わっていません。方法はあります」

ソヌは起き上がろうと上半身を踏ん張った。
「おい何してる」彼を抑え、ヒョンテは運転席を振り返った。「車を停めてください」

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二人は途中で救急車を降りた。
ヒョンテが上着を脱ぎ、ソヌに被せる。

ヒョンテ「辛いだろうが、今しか時間はない。追跡班が捕まえてもオシマイだし、お前が捕まえられなくてもオシマイだ。だから、どんな手を使ってでも、ハードディスクは絶対にお前が持って来なきゃ駄目だ」

ヒョンテは銃をソヌの手に握らせる。

ヒョンテ「それでこそお前の家族が助かるんだ」
ソヌ「先輩」
ヒョンテ「俺は大丈夫さ。どうせ一度汚れた身じゃ会社で役にも立たんし、監督官が死んじまったら以上、失うものもない」
ソヌ「…。」

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ヒョンテ「そんな目で見るなよ。大丈夫だって」

「これでもいろいろ事情は知ってるから」ヒョンテは笑った。」「上も簡単に手は出せない」

ヒョンテは救急車に一人戻ろうとした。

ソヌ「すみません、先輩」
ヒョンテ「すまないと思うか?じゃ、また乗れよ。家に帰ろう」
ソヌ「…。」
ヒョンテ「本当にそう思うなら、死ぬな」

「まだ写真撮ってないんだから」ヒョンテは車に乗り込んだ。

※地下資料室で瀋陽の資料を調べていたとき、お互い相手の遺影写真を撮ろうという話がありましたね。

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ここで一旦区切ります。

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