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SPY(スパイ:JYJジェジュン主演)1話あらすじ&日本語訳vol.1

      2015/01/11

KBSで放送が始まったキム・ジェジュン、ペ・ジョンオク出演のSPY、1話です。

今期少し忙しめなので、どれだけ出来るか分かりません。
事前情報も今の時点ではジェジュンが出てて母子で諜報員?ってくらいのことしか知らない状況でして(笑)
遅れたり、縮小したりすることがあるかもしれませんが、生温かく見守ってくださいまし。

では、さっそくいきましょー

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しとしとと雨に濡れる路地裏。
一人の若い男が電話で話しながら、慣れた足取りで歩いていた。

「母さん、あくせく準備しなくてもさ… そうだよ、気楽にすりゃいい。いつもどおりの食事でね。息子の友だちが来たと思えばいいんだ。来週末はどう?俺?どこって、釜山だよ」

ここは中国。潯陽だ。
彼—ソヌは暗い階段を下りながら、わざと気持ちよさそうに深く息をついてみせる。「海を見たら気分爽快だな」

「仕事は終わったよ。少し休んだら出発するから。いいって、KTXならすぐ着くから。あぁ、分かったよ、母さん」

「愛してるよ」電話を切ると、まわりをさっと警戒し、建物の前に停めてあった車に乗り込んだ。
何もなかったか?」車の中で待っていた中国人が声を掛ける。
ブツを運ぶだけの仕事だ。何もあるわけない」ソヌが頷くと、中国人が直ちに車を発進させた。

と…

曲がり角を右から突進してきた大きなトラックが、ソヌの車に突っ込んだ。
小さな車の脇腹に、トラックのフロントが鋭角に突き刺さる。

トラックからすぐに数人の男たちが降りてくると、気を失っているソヌの手からアタッシュケースを奪い取った。
「財布と時計も奪え」後ろに控えていたリーダーらしき男が指示する。「強盗に見せかけるんだ」

ソヌの胸元から抜き取った財布を開くと、そこに家族写真が現れた。

001

リーダー「…。ソンエ…」

運転席の中国人を始末した後、手下がソヌにナイフを振り上げた瞬間、リーダーが声を発する。「待て、そいつは放っておけ」

彼らがゆっくり去っていく後ろ姿を、朧げに意識を取り戻したソヌは虚ろな目で追った。「…。」

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『冬季暖房費対策会議』

小さな集会所いっぱいに集まった住民たちが、口々に意見を言い合う。
暖房費を浪費する住民への非難が始まり、会議は荒れていた。

真ん中に座り、静かに成り行きを見つめている女性が一人。
ソヌの母親、ヘリムだ。
彼女は会議の資料を軽くめくり、壁の時計へと視線を移すと、正面で辟易している議長に小さく手を挙げた。

議長「さぁさぁ、話もすっかり長くなったから、彼女の有益な意見も聴いてみましょうよ」

皆が静かになると、ヘリムは遠慮がちに立ち上がった。

ヘリム「(資料を掲げ)ここをご覧いただくと、1ページ目がビラ全体世帯の暖房費で、(次のページを見せ)2ページ目は公社からいただいた統計資料です。ご覧になれば分かりますが、私たちの暖房費との差が大きすぎます」

住民たちが資料を覗き、頷いた。

ヘリム「統計上だけで見れば、捏造があったと考えてもおかしくないほど…」

「ちょっと!」暖房費が高いと責められていた大柄な女性が話を遮る。

女性「私たちがメーターを誤魔化してるって言うんですか?そんなテクニック知ってるわけないでしょ!」

住民たちが一斉にざわめく。

ヘリム「テクニックはいらないんです」
住民たち「?」
ヘリム「メーターのバッテリーさえ抜けば、検針部が止まりますから」

「…。」住民たちが思わず顔を見合わせた。

ヘリム「そこでですが、皆でビラを一周りして、メーターのバッテリーを1つずつチェックしてはいかがでしょう?」

「そうね」「やるべきだわ」賛成の声があがり、ヘリムは安堵の笑みを見せた。

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「あぁ、ソヌ。無事着いた?」自宅へ戻ったヘリムは、息子からの電話を受けながら、戸棚を開けた。
「晩ご飯まだよね?」そう言って、棚の中の薬の瓶に手を伸ばす。

ヘリム「えっ?!」

彼女は突然驚いて声を上げた。

ヘリム「交通事故ですか?どこの病院なんです?今、今すぐ行きます!」

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「今回の件は説明が必要だ。しばらく休んでいてくれ。分かったな?」病室でスーツ姿の男が淡々と話す。
そこへ扉が開くと、ヘリムが駆け込んできた。「ソヌ!!!」
「あぁ、母さん。驚いたろ」ベッドで包帯に巻かれていたソヌが体を起こす。

ソヌ「何でもないんだから、来なくても良かったのに」
ヘリム「何があったの?電話で聞いて、一体何事かと…」

「痛くない?」彼女は思わず息子の頬に触れる。

ヘリム「どこを怪我したの?」
ソヌ「頭と腕をちょっと。大したことないって」
ヘリム「大したことないわけないじゃない!顔の傷だけでも痛そうなのに!」

「ソヌ」付き添っていた男性が遠慮がちに声を掛けた。「お母さんと話して。また今度な」

ヘリム「こちらはどなた?」

男がソヌをチラリと見ると、ソヌは咄嗟に苦笑で誤魔化す。「うちの部署の主任だよ」

ソヌ「すぐ治療を受けられるように、助けてくれたんだ」
男「(調子を合わせて)えぇ」
ヘリム「ありがとうございます!主任さん!」
男「はい、初めてお目にかかります」
ヘリム「えぇ、ありがとうございます」
男「立派な息子さんで」

男は病室を後にした。
頭を深々と下げると、扉が閉まった途端にヘリムの笑顔が消えた。「あの人、どことなく目つきが冷たいわ」

ソヌ「…。」

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「行くよ。行かなきゃな」熟年の男性が執務室で電話を受けていた。
デスクの上のネームプレートには『CTO キム・ウソク』とある。
ソヌの父親だ。

ウソク(電話)「けど今はちょっとね。いや、そうじゃないよ。ソヌを顧みないわけじゃなくてね、大した怪我じゃないっていうから。それなら、もう少ししてから行ってもいいだろう?」

「私はね…」ウソクは真摯な様子で話を続ける。

彼の近くにあるデスクの上に、ファイルが置いたままになったいた。
『国防部 情報流出防止システム 構成図』『国防部 保安システム 追加設置日程』

ウソク(電話)「今、国防部の仕事があるから。ソヌの声だけ聴くよ。ちょっと替わってくれ。…駄目って?(笑)」

「理事」秘書がそっと呼びに来る。

ウソク「(秘書に)すぐ出るから準備してくれ」

ウソクは鞄を手に立ち上がった。

ウソク(電話)「終わったらすぐ行くから。はぁ、ソヌのやつ心配させやがって」

「怪我したくてしたわけじゃないでしょう?」病室の外で、ヘリムがウソクに言い返した。

ヘリム(電話)「分かったわ。来るとき、ヨンソの学校が終わる時間なら連れて来て」

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病室に戻ると、ヘリムは持って来た着替えをベッド脇の引き出しにきっちり収納し、息子の肩に上着を羽織らせる。

#丁寧に引き出しに収納したのはトランクスっぽいね。
ヨンダル@トライアングルの赤トランクスが混じってたらクスっと笑えたのに。

そして、冷蔵庫にしばらく困らないだけの飲み物をせっせと詰め、バッグからブランケットを出して息子の膝に掛ける頃には、ソヌが呆れて溜息をついた。

ソヌ「大袈裟過ぎるって」
ヘリム「事故直後が一番大事なの。今しっかり養生してこそ、早く治るのよ」
ソヌ「…。」
ヘリム「で、どこで事故に遭ったの?釜山?」
ソヌ「(狼狽)いや、こっちに戻ってきてから。病院まで歩いて来たんだ」

そう誤魔化すソヌを、そばでカルテをつけている看護師がチラリと見た。

ヘリム「疲れてるから事故に遭ったりするのよ。地方やら外国に出張ばかりしてるから」

ヘリムが息子に飲み物を注ごうと目を逸らしている間に、ソヌは看護師に出て行くよう、手で合図する。

ヘリム「ソヌが公務員になったって聞いて、危険なことはひとつもなさそうだだって安心してたのに」
ソヌ「人が聞いたら、俺が危険な仕事でもしてると思うじゃないか」
ヘリム「ソヌ、今回怪我もしたんだから、主任さんに言って、内勤に替えてもらいなさいよ。平凡に見えても、他の人たちみたいに暮らすのが一番幸せなのよ」

「母さん」ソヌはベッド脇に体を寄せ、母の手を握った。

ソヌ「俺、もう絶対怪我したりしない。母さんに心配かけるようなことはないから」
ヘリム「…。だから、これからも出張ばかりするってことね」
ソヌ「(微笑)愛してるよ、母さん」

002

まっすぐ彼女を覗きこむ息子の目に、ヘリムは何も言えずに溜息をついた。

ソヌ「ね?」
ヘリム「…。」

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一週間後。

ソヌは取り調べを受けていた。

調査員「これまで情報機関で働いている間、不正や犯罪を犯したことはありますか?」
ソヌ「ありません」

ソヌの指先には嘘発見器が取り付けられている。
調査員はリアルタイムデータを一瞥し、次の質問に移った。

調査員「一週間前の作戦失敗に、責任があると思いますか?」
ソヌ「思いません」
調査員「大韓民国に対するあなたの忠誠心、信じてもいいでしょうか?」
ソヌ「はい」

モニタールームでは二人の上司がその様子を見守っていた。
一人は病室でソヌに付き添っていた『主任さん』、ソン・ジュンヒョクだ。
一緒にいるのは、さらに上官のようだった。

ジュンヒョク「彼は元々機材部にいたんですが、うちの担当官の目に留まって、3年前から現場チームで働いています。今回の作戦以前は100%成功させていたエリートでした」
上官「うまくやってたつもりが、結局下手打ったか。で、何であいつだけ殺さなかったんだろうな」
ジュンヒョク「私も奇妙に思ってもう一度調べてみましたが、ご覧になれば分かる通り、疑わしい点はひとつもありません」
上官「向こうのヤツらの反応は思ったより早い。気をつけるんだ」
ジュンヒョク「はい」
上官「(ソヌを指し)あいつは今後どうする?」
ジュンヒョク「どうせ当分の間は現場復帰できないでしょうから、分析チーム員にできればいいなと」
上官「(笑)現場で駆けまわってたやつが、机の前でじっと仕事できるかね」
ジュンヒョク「しっかりやるはずです」
上官「家族関係は?」
ジュンヒョク「えぇ、家族関係はこちらです」

ジュンヒョクが手元のファイルを開く。

ジュンヒョク「父親キム・ウソクは国防部でコンピューター保安の専門家をしていましたが、退職しています。現在はIT保安業者で働いています。中国にいるときに(**保留**)パク・ヘリムと出会い、結婚しています」
上官「(**保留**)」
ジョンヒョク「えぇ。ソヌは母親の影響で中国語に長けてるんです。ですから、私の仕事の手助けになると思いまして」
上官「分かった。しっかり見てろ。役に立つ男か、不意打ちを食らわせる男か」

上官が狭いモニタールームを出ようとすると、入れ替わりに男が入ってきた。
適当に頭を下げて中に入るその男を、上官は振り返ってボヤく。「アイツは全く…」

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「アイツを何で地方へやらないんだ?」廊下を進みながら上官が思わず漏らした。

上官「同期だからか?」
ジョンヒョク「役に立つ男ですから、私がしっかり管理します」
上官「アイツが何かやらかしたら、全部君の責任だぞ。いいな」

「分かりました」そこへ上官の電話が鳴る。

上官(電話)「(愛想よく)はい、議員。ちょうどお電話を差し上げようと思っていたんですよ」

「もういい」と手で合図し、上官は背を向けた。

ジョンヒョク「…。」

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ジョンヒョクたちと入れ替わりでモニタールームに入った男、キム・ヒョンテは、取り調べを受けているソヌを見つめた。

調査員「もしかして今、我々に隠していることはありますか?」
ソヌ「ありません」

調査員の見ているPCモニターに『FALSE』の赤い文字が点灯する。
「面白いヤツだな」モニタールームでコーヒーをすすったヒョンテは、ソヌに関するファイルを手に取った。

ヒョンテが注目したのは一枚の写真だ。
その中で、ソヌは母親と並んで笑顔を見せていた。

003

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キム・ウソク、パク・ヘリムの家庭はとても平凡で幸せそうだ。
ヘリムはダイニングで娘のヨンソが広げているテキストを覗いた。「まだその問題やってるの?」

ヨンソ「めちゃくちゃ難しいんだから。よく知りもしないで」

ヘリムが娘の隣に腰を下ろす。「どれどれ。AとBについて定数がひとつしかないとき、Kの条件。何?」

ヨンソ「4より大きくて…」
ヘリム「そう、4より大きくて、5以下。だから答えは、”Kの最大数は5”でしょ」

「ホントに?」ヨンソはテキストをめくり、答えを確かめる。「はっ!どうして分かったの?」

オーブン加熱が終了した音に、ヘリムはキッチンへ戻る。
肉の焼き具合は上々だった。

ヨンソ「お母さん、私が彼氏を連れて来たら、そんなふうにご馳走作ってくれる?」
ヘリム「二人ともひどい目に遇うわよ。あんたは残りの問題をやりなさい。高2にもなってお母さんより数学が出来ないなんて」
ヨンソ「お母さんがおかしいんだよ」

ヘリムは包丁立てからクルリと鮮やかに包丁を抜き取り、手早く食材を刻み始めた。

「あぁ、まだ問題があるな」夫のウソクはリビングのソファで仕事の電話中だ。

ウソク(電話)「資金も足りないし。それは認める。だが、技術では我々が一番だ。そこは認めろよ」

彼は頭を抱えた。「それなら、その人と改めて一席設けてくれ。私が説得するから」

電話を切り、彼は深い溜息をついた。

ヘリム「あなた」
ウソク「ん?何だ?」
ヘリム「仕事は終わりにして、お客様を迎える準備をしてくださいな。ソヌが初めてガールフレンドを連れて来るのに、その格好で出迎えるの?」
ウソク「おかしいか?ソヌだって特別に準備しなくていいって言ったんだろう?」
ヘリム「あなたったら」
ウソク「分かった、分かったよ。すぐやるから」
ヘリム「ヒゲも剃ってくださいね」

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「最後の質問」ソヌを取り調べている若い女性調査官はそう言うと、視線をクルリと一旦外す。

調査官「嘘をついてもバレるから、正直に答えたほうがいいわ」
ソヌ「…。」
調査官「今、付き合っている異性はいますか?」
ソヌ「え?(頷く)えぇ、います」
調査官「…。」

女性調査官は面白くなさそうに頬をふくらませ、モニターを覗く。

ソヌ「これで終わりですよね。調査が終わったら、すぐ現場復帰できるんですよね?」
調査官「…。」
ソヌ「お疲れ様でした」
調査官「あ、これは調査じゃなくて、面接ですけど」

「約束があるんで、もう行きますね。よろしくお願いします」ソヌはさっさと立ち上がり、調査室を飛び出した。

モニタールームの画面に一人呆然と残された調査員が映し出される。

ヒョンテ(マイク)「おい、今度はアプローチもしないうちに振られたのかよ」

調査員が振り返り、カメラを睨む。

ヒョンテ(マイク)「こりゃ新記録じゃないか?」

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ソヌが急いで外にでると、電話が鳴った。

ソヌ(電話)「もしもし。あぁ、遅くなってごめん。今終わったんだ」

「いつ頃来られる?」手土産をぶらさげ、待っている女性が尋ねた。
彼女はソヌのガールフレンド、ユンジンだ。

ソヌ(電話)「さきに入って食事してるか?母さんに言っておくからさ」
ユンジン(電話)「そんなのダメよ、絶対!私一人で行っても、何話していいのか分からないわ。凍え死んだってここで待ってるから、早く来て」

ユンジンは電話を切ると、エントランスの前で凍える手を温めた。

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家の中ではヘリムがすっかり食事の準備を整えていた。
なかなか来ない息子に、彼女は携帯電話を手に取ると、窓からマンションの前を覗く。
ユンジンがポツンと一人で立っているのが見えた。

「これくらいならいいだろう?」着替えた夫が出てくると、ヘリムは頷き、電話を掛けた。

ウソク「何を見てるんだ?」
ヘリム「(ユンジンを指し)あの子、ソヌのガールフレンドじゃないかしら」
ウソク「そうか?」
ヘリム「何てこと… 寒いのに」

そこへ電話が繋がった。

ヘリム(電話)「もしもし。今どこなの?」

ソヌの車は渋滞に巻き込まれていた。

ソヌ(電話)「あぁ、母さん。ちょっと遅くなりそうなんだ。この先で事故が遭ったのかな、すごく混んでてさ」

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マンションのエントランスへ下りてきたのは、ソヌの父ウソクだ。
健気に待っているユンジンに、ウソクは声を掛けた。「イ・ユンジンさんかな?」

ユンジン「?」
ウソク「こんばんは。ソヌの父親です」

「あぁ!」ユンジンは大きく頭を下げる。「お父様」

ユンジン「ソヌさんと一緒に入ろうと思って、ちょっと…」

言いづらそうに説明するユンジンに、ウソクは優しい笑みを浮かべる。

ウソク「ソヌが少し遅れると言ってましてね」
ユンジン「…。」
ウソク「寒いから、先に入りましょう」
ユンジン「はい」

ユンジンがウソクの後に続いて中へ入っていく。

その姿を、誰かがひっそりと窺っていた。「…。」
手にしっかり握っているのは… ソヌの財布に入っていたのと同じ、ウソク一家の写真だ。

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「スリッパを履いてね」ユンジンを家の中へ通すと、ウソクは妻にバトンタッチした。

ヘリム「いらっしゃい。ソヌの母親です」
ユンジン「こんばんは、お母様。私、イ・ユンジンと申します」

ヘリムは思わずユンジンの足先から顔まで、視線を行き来させる。
気まずくて笑みを浮かべたユンジンに、ヘリムはハッとして笑みを作った。

ヘリム「中へどうぞ。コートも脱いで、楽にしてくださいね」
ユンジン「はい」

「あの、これ」ユンジンが持って来た手土産の袋を差し出す。

ヘリム「あら。何ですか?」
ユンジン「大したものじゃないんですけど、月餅っていう中国のお菓子なんです」

ニコニコしていたウソクが驚いて袋に視線を移す。

ユンジン「お母様が昔のことを思い出しながら召し上がってくださればと」

「まぁ、ありがとう」ヘリムは少々無理に笑ってみせた。「美味しくいただきますね」

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彼らはソヌの到着を待たずに食事を始めた。

ヘリム「お口に合うかしら?ロクな物が用意できなくて」

「よく言うわ」ソヌの妹、ヨンソが間髪入れずにからかう。

ユンジン「とても美味しいです、お母様。こんなに真心のこもった家庭料理、いつ以来かしら…」
ウソク「家庭料理が恋しいってことは、一人暮らしのようですね」
ユンジン「はい。大学時代からずっと」
ヨンソ「どこの大学?何科?」
ウソク「…。それなら、故郷は?」
ユンジン「実はお母様と同郷なんです。私も中国の潯陽出身で」

ヘリムの目線が僅かに動揺する。

ウソク「あぁ、そうなんですか。い、いやぁ、これは大した御縁だね」
ヘリム「ご両親は今も潯陽に?」
ユンジン「あ、それが… 亡くなりました」
ヘリム「あぁ… ごめんなさい。御二人とも?」
ユンジン「はい」
ウソク「それはとても辛いでしょうね。ご両親もなしに遠いところで一人…」
ヘリム「ご両親の故郷は?」
ユンジン「両親の故郷も潯陽です」
ヘリム「正確にいうと潯陽のどのあたりかしら?もしかしたら知っている人かもしれないわ」
ユンジン「あ、それは… 私の幼いころに亡くなったので。そこまで聞く機会もなかったんです」
ヘリム「それなら、他に兄弟とか…」

「そうだ」ウソクはヘリムが畳み掛ける質問を遮った。

ウソク「ソヌの話によると、旅行会社で働いているそうですね」
ユンジン「はい。中国専門の旅行会社なんですが、小さい会社なので時々ガイドとして一緒に行き来して…」

そこへユンジンの隣に座っていたヨンソの肘が、水のボトルを押し倒した。
ユンジンは床に落ちそうになったボトルを、なんなく手のひらで受け止める。
「…そんな感じです」ユンジンは苦笑いし、ボトルをテーブルに戻した。

ウソク「危ないところだったな」

その間もヘリムの鋭い視線はユンジンから離れることがない。

ヘリム「ソヌとはどうやって知り合ったんですか?」
ユンジン「就職のとき、ビザのことで困っていたんですけど、そのとき、そばで見ていたソヌさんが助けてくれたんです」
ヘリム「困ったことって… どういう…?」
ユンジン「お母様もご存知かと思いますが、公共機関に行くと、たまに何の理由もなく不法滞在者みたいな対応をされることがありますよね?」
ヘリム「…。」
ユンジン「最初は腹が立って悔しい思いをしても、ずっと我慢しているうちに何も感じなくなっていたんです。でも、代わりに怒ってくれたんです、ソヌさんが。それで私もハッと気づいたんです。”あ、怒らなきゃ”って」

またしても鋭い視線でユンジンを見据えていたヘリムは、ふと我に返り、笑顔を見せた。

ヘリム「つい立ち入ったことを聞いてしまったわ。ごめんなさいね。どうぞ召し上がって」

「はい」頷くユンジンに笑いかけると、ヘリムはそれでもまた彼女をじっと見つめた。

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食事を終えると、彼らはリビングへ場所を移した。
ヘリムはソヌの小さいころの写真を出してきて、ユンジンに見せ始める。

ヘリム「これはソヌが5歳のとき。こっちは小学校の入学式よ」

ユンジンが目を留めたのは、幼いソヌが食事をしている写真だ。「子どもの頃からカレーが好きだったんですね」

ヘリム「違うわ。この日、ものすごく胃もたれして、それ以来カレーの匂いも大嫌いですよ」
ユンジン「?」
ヘリム「だから、この家ではカレーを食べないんです」

不思議そうにもう一度写真を見つめたものの、それ以上ツッコむ訳にも行かず、ユンジンは笑みを浮かべた。「そうですか」

ヘリム「実はソヌ、この頃まで話せなかったんです」

ソファで寛いでいたウソクが、顔を上げて妻を見る。

ユンジン「本当ですか?」
ヘリム「何が悪かったのか… 随分心配しました。病院にも連れて行ったし、自閉症の治療も受けて」
ユンジン「今のソヌさんからは想像もできないけど…」
ヘリム「幼い子がどうやって覚えたのか、前に私が使っていた言葉遣いを真似したことがあったわ。そんな言葉を使っちゃいけないと叱ったけど、それが子どもの口を閉ざしてしまったんです」

「あぁ…」ユンジンが困って下を向く。

ヘリム「ヒドいと思うでしょう?でも、母親の思いってそういうものなんです。良いところだけ似てくれればいいし、私が経験したような酷い目に遭わずに生きてくれればって…。ソヌには平凡な人に出会って、平凡な幸せを喜びながら生きてほしいわ…」

ヘリムの目が遠くなる。
「私がもっと努力しますから」ユンジンはヘリムを励ますように言った。「私もそんなふうに生きたいです」

ヘリム「…。」

そこへ騒々しく玄関の扉が開いた。「?」
息を切らして飛び込んできたのは、ソヌだ。
皆の視線が一斉に彼に移った。

ソヌ「ごめん。すごく遅くなったよね」

ユンジンがわざと彼を睨む。

ウソク「あぁ、かなりね。もっと早く帰って来ないとな」

一人で奮闘していたユンジンを気遣うように、ウソクがチラリと見ると、ユンジンが微笑み返す。
じっと黙っているヘリムが気になり、ユンジンはそっとヘリムの横顔を見つめた。

+-+-+-+

ユンジンは帰り支度を整えると、玄関の前でソヌの両親を振り返った。

ユンジン「今日は本当にありがとうございました、お母様、お父様」
ソヌ「(両親に)ユンジンを送ってくるよ」
ユンジン「ううん。まだ夕食も食べてないじゃない。私一人でいいから」
ソヌ「何だ?俺、振られたのか?」
ヘリム「遅いんだから、送ってあげないと。若いお嬢さんなんだから」

ソヌは安心したように微笑むと、ユンジンと一緒に家を出た。

玄関の扉が閉まると、ウソクは妻の肩に手を起き、ねぎらった。「大変だったろう?」

ウソク「姑の役割も難しいもんだ」
ヘリム「姑だなんて。気が早いわ」
ウソク「どうした?気に入らなかったのか?私は気に入ったけどな」
ヘリム「ただ… ちょっと気になるのよ。あまりに人を意識するし、姿勢も最近の子とは違うわ」

#それはあなたのことだと思うけどね

ウソク「また始まった。初めて会う人を、頭の先から足の先まで観察する癖」
ヘリム「そんなんじゃないわ。ただそう感じて」
ウソク「心配ないさ。ソヌは私に似て、女性を見る目だけはまともだからね」

「もう嫉妬かい?」ウソクはからかうように妻を覗きこむ。

ヘリム「そんなんじゃありませんって!全く!」

「分かったよ」ムキになる妻がおかしくて、ウソクは愉しげに笑った。

+-+-+-+

一旦区切ります。
数カ所、保留のまま公開しますが、分かり次第修正しますね。
多分他にも聞き間違えているところがありそう…。すみません。

ソヌの家族がこれからどうなるのか分かりませんが、お父さんが思いの外いい人で、嬉しいです。
いい人だからこそ、今後の苦悩が深くなりそうですが…。

ソヌ、ナチュラルでいいキャラですね^^
ヒョンテさんとか、他にもいい感じのキャラがいて、先が楽しみです。

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