韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!プロデューサー/SPY/夜警日誌/トライアングル/主君の太陽など

夜警日誌あらすじ&日本語訳17話vol.2

   

チョン・イル、チョン・ユンホ(東方神起ユノ/ユンホ)出演、「夜警日誌」17話の後半です。 あらすじの中で表情や心の動きも拾いながら、台詞もまじえて詳細に翻訳していきますね。

+-+-+-+

キサン君を先頭に、官僚たちが揃って蒼天塔工事現場を訪れた。
リン、それに護衛をつとめるムソクも一緒だ。

キサン君「完成を急ぐのだ。落成式は盛大に執り行うぞ」
リン「…。」
キサン君「満朝の百官と民が、余の威厳を仰ぎ見ることになるであろう」
リン「殿下、すでに重い税金や労役のため、民から怨みの声が上がっております」
キサン君「怨みの声とは!税金を厳しくするなり、より多くの民を動員するなり、何としてでも責任者であるお前が成し遂げるべきことであろう!」
リン「しかし…」

キサン君の後ろで話を聞いている領相が僅かに視線を動かす。
働いている人夫たちの中に、領相の部下が混じっていた。

キサン君「完成予定を前倒しにするのだ」

キサン君が歩き出すと、官僚たちがそれに続く。
領相が部下にそっと頷くと、部下が上階で作業している男に目で合図を送る。
男はそっと持ち場を離れると、歩いてくるキサン君を見ながら、木材をくくっている縄に手を掛けた。

ふと上を見上げたムソクは、不審な男がいるのに気づく。「?!」
その瞬間、男が縄を引くと、ぶらさがっていた巨大な石が一気に落下した。

#この石、コントか?

ムソク「殿下!!!」

ムソクがキサン君を後ろから抱えると、ひらりと身を翻す。
危ういところで石を避け、キサン君とムソクは折り重なるように倒れた。

リン「殿下!!!」

キサン君は衝撃で気を失っていた。
現場はたちまち大騒ぎだ。

ムソク「大丈夫ですか?!殿下!」
リン「早く御医を呼べ!」

内官がキサン君を背負い、官僚たちに周りを囲まれて駈け出した。

ムソクはその場に残り、去っていく官僚たちにそっと目を配る。

ムソク「…。」

後ろを妙に気にする領相の様子が、どこか気に掛かった。

+-+-+-+

大妃、そしてリンや領相がキサン君を見守り、御簾の外にも官僚たちが勢揃いしていた。
駆けつけた御医が診察を始めると、キサン君が目を開ける。

大妃「気が付かれましたか、主上」

仰向けのまま目をキョロキョロさせると、キサン君は起き上がった。

キサン君「一体どうなってるのだ。なぜこんなことが…?」
御医「御身体にこれといって異常はありません」
大妃「天が助けてくださったのです。本当に宜しゅうございました、主上」

「よかった?」キサン君が鋭い目で大妃を睨む。

大妃「?」
キサン君「誰だ?」
領相「何のことでしょうか」
キサン君「余を殺そうとしたのは誰だ!月光、お前か?」
リン「殿下!」
キサン君「それとも領相の仕業か?」
領相「殿下!なぜそのようなことを!」
キサン君「御祖母媽媽がやらせたのですか?」
大妃「主上!なぜそんな!」
領相「殿下、これは単なる事故です。管理者を厳しく罰しますので、疑いをお捨てください」
キサン君「これは事故ではない。欲深い誰かが余を殺害しようとしたのだ!」
大妃「主上、どうか安静に」

#さーて、真犯人はこの中に♪

「あぁ、そうさ」突然聞こえて来た声に、キサン君は顔をあげた。
いつも自分をからかう、自分そっくりの幻が現れたのだ。

偽キサン君「此度のことも、お前の疑念や妄想だってことで終わるんだろうな」
キサン君「…。」
偽「今、ちゃんと思い知らせておかないと、またうやむやになるぞ」

「…。」大きく目を見開き、キサン君は怒りの炎をめらめらと燃やす。

キサン君「今度ばかりは黙ってはおらぬ。人夫たちは一人残らず余が自ら尋問する。誰が余を狙ったのか、自白させてみせようぞ!」

+-+-+-+

訳もわからないまま集められた人夫たちの中には、チャン氏とサゴンの姿もあった。

サゴン「我々はどうなるんだ?」
チャン氏「そんなの私に分かるわけないだろう!とにかくこりゃ悪い予感がするな」
サゴン「そんなのは分かってる!」

そのとき、誰かの命令する声が響いた。「一人残らず捕らえよ!」

武官たちが片っ端から人夫たちを捕らえ始めたのだ。
彼らは無抵抗なまま、突然現れた武官たちに殴られ、悲痛な叫び声を上げた。

+-+-+-+

領相の部下は、足早にどこかへ歩いていた。
そのあとを誰かが素早くつけてくる。ムソクだ。

ある建物の中へ入ると、そこで待っていた一人の男が頭を下げた。
キサン君の頭上で、石を吊るす縄を切った男だ!

領相の部下「ご苦労だったな」

男はびくびくと落ち着かない様子で、領相の部下の出方を窺った。

領相の部下「このことは墓場まで持って行くのだぞ」
男「わ、分かりました!」

報酬の入った小袋を無造作に放って渡したかと思うと、部下はその瞬間小刀を抜き、男の腹に突き刺した。

男「うっ!」

男が倒れるのも待たず、部下は足早にその場を離れる。

入れ替わりに入って来たムソクは、倒れている男にさほど仰天することもなかった。
さっと近づくと、すみやかに脈を確認する。「…。」彼の顔が厳しくなった。

+-+-+-+

キサン君はたった一人で酒をあおっていた。
飲んでも心は一向に落ち着かない。「サダムはどこへ行ったのだ!!!」

苛立ちを隠そうともしないキサン君を、幻がじっと眺めていた。

偽キサン君「お前は軟弱すぎる」
キサン君「!」
偽「何かあれば、すぐにサダムを呼びつけるだろう?」

「サダム… サダムはなぜまだ来ぬのだ!」キサン君は再び叫ぶ。

偽「そんな軟な心では、それ以上王として持ち堪えられないぞ」

「黙れ!!!」とうとうキサン君は立ち上がり、これまで無視してきた幻を怒鳴りつけた。「今すぐ出て行け!」
幻はこの時を待っていたかのようにニヤリと微笑み、ゆっくりと立ち上がる。

幻「違うな。その肉体から出て行くのは… お前だ」
キサン君「?」

幻はゆっくりとキサン君に詰め寄る。
そして、一気にキサン君の体の中へ飛び込んだ!

と、悲鳴を上げて”幻”がキサン君の体から追い出される。
「?」いや、追い出されたのは… キサン君本人の魂だ。
彼は自らの体から追い出されたのだった。

443

魂「こ、これは一体どうなっているのだ?!」
キサン君(憑依)「どうなったも何も。俺がお前から王座を奪ったのさ」
魂「!!!」
キサン君(憑依)「王ってはどうやってやるものか、しかと見せてやる」
魂「今すぐ… 今すぐ余の体を返してくれ!!!」

慌てて取り乱す本物の魂を、体を乗っ取った幻は満足気に眺める。

キサン君(憑依)「何で返さなきゃいけない?長い間この時を待っていたんだ。お前も待ってろ!」
魂「!!!」

ちょうどそこへ、サダムが顔を出した。

サダム「殿下、ご無事でいらっしゃいますか」
キサン君(憑依)「ようやく現れたか」
サダム「塔の建築現場で大変な事故に遭われたと聞きました」
キサン君(憑依)「如何にも。余を殺そうとする謀反がな。当事者は残らず斬首するつもりだ」

サダムは素早く視線を動かし、考えを巡らせると、さっとキサン君に近づいた。

サダム「殿下、斬首よりもっといい方法があります」
キサン君(憑依)「そうか。それは何だ?」
サダム「人身供犠をなさいませ」
キサン君(憑依)「人身供犠と…?」

※人身供犧=祭祀のとき、生きた人間を生贄として神に捧げること

サダム「生贄として塔に捧げるのです。どうせ賤しい命、殿下を手に掛けようとした者たちなのですから」
キサン君(憑依)「!」
サダム「彼らの魂が蒼天塔の気運をより強めることでしょう」

キサン君(憑依)が顔を輝かせ、豪快に笑い声を上げる。

キサン君(憑依)「なるほど!それは面白そうだ。そやつらを残らず生贄にするぞ!」

何の躊躇もないキサン君の反応に、言い出したサダムも訝しげに王を見つめた。

+-+-+-+

「生きている人間を埋めるとは正気なのか」「止めなければ」王が下した命令に驚いた官僚たちは、口々に領相に訴えた。
「…。」一体どうしたものか、領相も渋い表情で唸る。

悩んでいる暇はなかった。

捕まった人夫たちが連れて来られたのは、工事現場に掘られた穴の前だ。
彼らは次々に容赦なく穴の中へと落とされる。
彼らに混じっていたサゴンとチャン氏も、ささやかな抵抗の末、穴の中へと落ちた。
穴の中から発せられる嘆き声が、辺りに響き渡る。

キサン君は酒の瓶を片手に、愉しげに笑いながら現場に現れた。
塀から下を覗くと、ちょうど下には穴に落とされた人夫たちが一望できる。

キサン君「余の塔のために命を捧げるお前たちの魂を慰めてやろう」

手に持った瓶の酒を、王は下にいる男たちめがけて振りかけた。
信じられないような王の行為に、後ろに控えるムソクは思わず目を閉じる。
一体我が王は何を考えているのか…。

キサン君「余はここに朝鮮一の塔を建てるぞ!何をしておる?早く塔を建てろ!」

「殿下」後ろで静かに見守っていたサダムが口を開く。

サダム「あとは地臺石で封じるだけです」
キサン君「そうかぁ」

※地臺石=塔を建てる地面を押し固めた後に置く石。

「殿下!」そこへやって来たリンがたまらず声を上げた。

リン「おやめになるべきです!」
キサン君「月光!お前も見物しに来たのか?あやつらの悲鳴を聞きに来たのか?!」
リン「殿下の民なのです!なぜ彼らを殺そうとなさるのですか!」
キサン君「余のための塔、王室のための塔だ。その塔を輝かせるために、あやつらの命が必要なのだ!」
リン「殿下!」

「何の価値もない命だぞ」人夫たちを指さし、キサン君は顔を歪ませる。

キサン君「あやつらには、王のために死ぬ栄誉をやろう!」
リン「殿下、お気を確かになさってください。そうでなければ…」

キサン君はいきなりリンの胸ぐらを掴む。

リン「!」

ギラギラとした視線で、キサン君はリンを睨んだ。

キサン君「何だ?余を王座から追い払い、自分が王になるつもりか?」
リン「殿下?!」
キサン君「そうか、わかったぞ。余を殺そうとしたのはお前だな!」
リン「!!!」
キサン君「お前を許すまいぞ!!!」

キサン君はリンを突き飛ばすと、そばにいたムソクの腰の剣を抜く。

ムソク「!!!」

雄叫びを上げ、キサン君はリンめがけて刀を振り下ろした。
その瞬間… ムソクが割って入り、剣の鞘で阻んだのだ。

キサン君「ムソク、貴様!!!」
ムソク「殿下!落ち着いてください」
キサン君「お前には豫讓になれと言ったはず。月光の忠犬となり、余を裏切るのか!!!」
ムソク「殿下!!!」

キサン君は刀の先をゆっくりとムソクへと突きつける。
まるでどこを刺そうか迷っているかのように、ムソクの顔から胸へと刀の先を動かす間、ムソクは身じろぎ一つせず、殿下を見つめた。

ムソクの左胸の上で止まった刀の先を、キサン君はゆっくりと押し付ける。

ムソク「…。」

じっとしているムソクの後ろで、リンが目を大きく見開いた。

ムソク「私の忠誠心に僅かばかりの嘘もございません」
キサン君「それならなぜ余の前に立ち塞がり、余の志に背くのだ!」
ムソク「誤った御命には向かい立ち、殿下を星君に導くのが、真の忠臣の道理であると考えます」
キサン君「!」

堂々としたムソクの態度に、キサン君はどうにも引き下がれず、胸に当てた刀を更に押す。
刀先は衣服を突き破り、赤い血が滲んだ。

444

ムソク「…。」

血が広がっていくと共に、痛みに耐えるムソクの顔も赤くなっていく。
「…。」呻き声一つあげないムソクに、キサン君はとうとう根負けして刀を抜いた。
乱暴に刀を放り出すと、その場を立ち去る。

「うっ」よろめいたムソクをリンが抱きとめた。「大丈夫か!」

445

+-+-+-+

リンと共に宿へやって来たムソクは、トハに傷の手当てを受けた。
薬を塗り、包帯をしっかり巻いてもらうと、ムソクは黙って衣服の前を合わせる。

トハ「傷が深くなくて幸いでした」
リン「何と無謀なんだ。殿下に斬られたらどうなっていたか」

「死ぬことは怖くありません」ムソクは淡々と言った。

ムソク「殿下があのように変わってしまわれたのが… ただ胸が痛むのです」

446

「…。」リンにはムソクの気持ちがとてもよくわかった。
彼はそれ以上何も言わず、ただムソクの横顔を見つめた。

+-+-+-+

祠堂で祈祷するサダムは、リンに対する怒りを募らせていた。

サダム「大君が百人の命を救うならば、我はその何倍もの怨霊を作りましょうぞ!」

+-+-+-+

スリョンは梅蘭房にサダムを訪ねていた。

スリョン「大君の心を手に入れさせると、私におっしゃいましたね」
サダム「…。」
スリョン「その言葉、まだ信じて宜しいのですか?」

顔を上げると、サダムは静かにスリョンを見つめる。

サダム「お嬢様を見ると、ある女性を思い出します」
スリョン「?」
サダム「実に美しく、不憫な女性でした。一人の男を手に入れるため、私と取引をしたのです」
スリョン「その女性は、男の人の心を手に入れたのですか?」

サダムは頷く。

サダム「その女性と私、どちらも望むものを手に入れました」
スリョン「私も道流の望むものを差し上げます!」

「…。」スリョンの心の中まで覗きこむように、サダムは目を見開いて彼女を見つめる。

サダム「いいでしょう。取引を」

「出て来なさい」サダムが後ろに声を掛けると、一人の女が現れた。
「!!!」スリョンはその女を見て目を見開く。
トハではないか!

スリョン「あ、あなた!」

トハはスリョンに何の反応も見せず、サダムの隣でじっと前を向いたままだ。

スリョン「どうしてここにいるの?」

「この娘をなぜ呼んだのです!」スリョンはサダムに向かって声を荒らげた。

サダム「これはお嬢様がご存知のあの娘ではありません」
スリョン「?」
サダム「私が使っている鬼神奴隷ですよ」
スリョン「…鬼神奴隷?」

サダムは手元に置かれていた赤い包みを開き、中から小さな人形を取り出した。
それを口元へ持って行くと、小声で何か話しかける。

スリョン「?」

するとトハの姿をした鬼神奴隷は、スリョンのそばに跪き、彼女の手に口づけた。

447

スリョン「!」

スリョンは恐る恐る小さな人形を手に取ってみる。

サダム「これで大君の心を手に入れられることでしょう」

+-+-+-+

黒装束に身を包み、目以外は入念に黒い布で覆った男が二人、夜の宮廷に忍び込んでいた。
彼らは塔の工事現場へやって来ると、櫓の影に身を潜め、様子を窺う。

リンとムソクだ。

たとえ夜であっても、工事は進められていた。
要所要所に立っている見張りと、新たに呼ばれた人夫たちがいる。
彼らの盲点を縫うように、リンとムソクは闇に紛れて進んだ。

彼らはある地点までやって来ると、反対側から近づいた仲間に目で合図をする。
サンホンだ。

3人はタイミングを合わせて一斉に飛び出すと、片っ端から見張りを倒し、先へと進んだ。
彼らが辿り着いた目的地は、人夫たちが囚われている穴だ。

「兄貴?!」サゴンが一番に立ち上がった。
サンホンが口を覆う布を外す。

448

※霊と関係ない時はサンホン兄の活躍が見られるのですぅ♥キャポー

サンホン「少しだけ待ってくれ。すぐに助けだしてやる」

「我々は助かりましたよ!」チャン氏が呼び掛けると、人夫たちが立ち上がり、歓喜に湧いた。

3人は上から綱を下ろし、人夫たちを順に引き上げる。
人夫たちは騒ぐこともなく、先に登る者を後の者が下から助け、粛々と綱を登った。

+-+-+-+

宿屋に現れたのは、スリョンのお付の下女だ。
「スリョンお嬢様がお呼びよ」彼女はトハを呼びに来たのだった。

トハ「こんな夜遅くに、どうして?」
下女「そんなの私だって知らないわよ。さっさとついて来て」

「…。」ふてぶてしい下女を、オンメは不機嫌そうに睨む。
「何て失礼な子なの?」下女が外へ出て行くと、オンメは思わずぼやいた。

トハ「大丈夫です。ちょっと行って来ますね」

+-+-+-+

トハはスリョンの部屋へ招かれ、彼女とふたりきりで向き合っていた。
ただならぬ空気だ。

「お飲みなさい」スリョンは自ら入れた茶をトハに勧める。
スリョンの意図も分からぬまま、トハは椀を手に取り、一口すすった。

トハ「なぜ私をお呼びになったのですか?」
スリョン「私は幼い頃から月光大君と共に育ったわ。今では縁談も出ている関係よ」
トハ「!」
スリョン「ひょっとして大君を慕っているの?」
トハ「え?」
スリョン「月光大君はあなたと釣り合うような人ではないわ」
トハ「…。」

俯くトハの様子を、スリョンはゆっくりと観察する。

トハ「お話が済んだのであれば、これで失礼します」

トハは立ち上がると、深々とスリョンに頭を下げた。
頭を上げ、歩き出そうとした瞬間、トハは妙な感覚に頭を押さえる。

トハ「?」

何だか頭がクラクラすると思った途端、急激に意識が遠のいていく。
トハは崩れるようにその場に倒れ、気を失ってしまった。
後に残されたのは、何事もなかったかのような静寂だ。

そこへ、扉の影からトハの姿をした鬼神奴隷が現れる。
スリョンは顔を上げ、鬼神奴隷に微笑みかけた。

+-+-+-+

オンメとチョヒは誰もいない宿屋の一階で悶々と待ち続けていた。
そこへ、ぞろぞろと帰ってきたのは、リンたちに付き添われたサゴンたちだ。
「オンメ」入ってくるなり、サゴンはオンメに呼び掛けた。

「ご無事だったのですね!!!」感嘆の叫び声を上げたオンメは、両手を広げて抱きとめようとしたサゴンの脇をすり抜け、後ろにいるサンホンの胸へと飛び込んだ。「旦那さん!」

453

#優しい兄貴はちゃんと抱き止めてくれるのだ↑♥キャポー

「…。」咄嗟に受け止めたものの、サンホンの視線は思わずサゴンへと向かう。

454

#どちらも優しくて遠慮深い二人。サゴンを気にするサンホンと、オンメの背中を寂しそうに見つめるサゴンの目線がなんともリアルです。

オンメ「ご無事で本当に良かった!」

サンホンは困ったように頷き、自分の腰に回したオンメの手をそっと外す。

サンホン「私は大丈夫だから… 彼を看てやってください」

サンホンはそう言ってサゴンを見やり、さっさと自分の部屋へと向かう。
「いいってば」サゴンはふてくされたように呟き、そばの椅子に腰掛けた。

チョヒ「おじさん、死の淵から蘇ってどんな気分?晴々しい感じでしょ」
チャン氏「自分の命がこんなに尊いものだとはな」

ホッと安堵の雰囲気の中、リンは誰かを探すように辺りを見回す。

チョヒ「その気持ち、よく分かるわ!私、病弱でね、何度も死の峠を超えたの。命があるって、本当に有り難いことよ」

そう言って笑うチョヒの後ろに、妓生の霊が忍び寄り、彼女に同意するように頷いた。

#そっか。チョヒがときどきお客相手に悩ましいポーズとったりしてるのは、この霊の仕業か

リン「トハはどこにいるのですか?」
オンメ「さっき誰かが呼びに来て出掛けたんだけど」
リン「?」

「まだ帰ってない?」オンメがチョヒに尋ねる。
チョヒは黙って首をかしげた。

その瞬間「ここにいます!」トハがひょっこり帰って来る。
彼女の顔を見て、リンとムソクは揃って微笑んだ。

トハ「!」

逆にトハは、リンとムソクにハッと驚いた表情を見せる。

トハ「無事戻られて本当に幸いです!」

トハは満面の笑みで、彼らの生還を喜んだ。

+-+-+-+

地下室へ向かったムソクは、手に持った鬼針盤を見つめていた。
さっき塔の工事現場で戦った時、落として割れてしまったのだ。

彼の後ろにトハが現れ、鬼針盤を覗きこんだ。

トハ「何をなさってるんですか?」
ムソク「鬼針盤が割れてしまって…。どうすればいいか考えていたんだ」
トハ「大変ですね。旦那さんには鬼神が見えないのに」

「?」ムソクは何となく気になって、トハを見つめた。
トハはくるんとした丸い目を見開き、無邪気に彼を見つめ返す。

トハ「それなら、夜警師の仕事は出来ないんですか?」
ムソク「…。」

トハは鬼針盤に手をのばすと、ムソクの手を包み込むように両手で覆う。

ムソク「?!」

やはりどこかトハの様子が気に掛かり、ムソクはさらにトハから目が離せなくなった。
トハは鬼針盤を持つムソクの手を表に向けると、指先で彼の指をそっとなぞる。

449

ムソク「…。」

ムソクは思わず彼女の指をすり抜け、手を引っ込めた。

ムソク「何のつもりですか」
トハ「心配なさらないで」
ムソク「?」
トハ「鬼針盤の代わりに、私が…」

トハはムソクの耳のそばに口元を寄せた。

トハ「旦那さんのおそばで目になって差し上げますから」

ムソク「…。」

戸惑うムソクの隣で、トハは妖しく微笑んだ。

+-+-+-+

翌日。

工事が止まっている現場を、リンは憂鬱な表情で眺めていた。
そこへ背後からやって来たのはサダムだ。

サダム「昨夜、閉じ込めていた人夫たちを何者かが脱出させたそうです」
リン「そのようだな」

「実に愚かなことです」サダムはまっすぐにリンを見据え、淡々と言った。

リン「人の命を救うことが愚かだと?」
サダム「そのせいでさらに多くの命が失われることでしょう」
リン「そうはさせぬ」
サダム「どんなに苦労しても、人の力ではどうにもならぬことがあるのです。この蒼天塔の完成は、この先朝鮮の運命を覆すほどの大きな変化をもたらすでしょう」

「…。」サダムの静かな言葉に、リンはごくりと唾を飲んだ。

+-+-+-+

ふと目を覚ました本物のトハは、鈍い痛みの残る頭を押さえた。

ここは一体どこだろう。
倉庫のような建物の隅で、彼女は気を失っていたのだ。
周囲には薬剤のような箱がズラリと並ぶ棚がある。

トハ「私…どうしてここに?」

トハは鍵の掛かった扉を叩いた。「開けてください!ここに人がいるんです!開けてください!」

+-+-+-+

緊張した面持ちで、スリョンは人形を手に取った。
大きな目で人形を見つめ、彼女は力強く命令する。

スリョン「主人として命じるわ。トハという女と大君が永遠に離れ離れになるようするのよ」

宿の部屋にいた鬼神奴隷が、パチリと目を開けた。

450

+-+-+-+

ここは宿の裏庭だ。
目隠しで視界を遮り、ムソクはここでも黙々と剣の修行に勤しんでいた。
剣を振るいながら前進するムソクの足が、突然ピタリと動きを止める。

ムソク「!」

彼の刀先は、トハの首を切り裂く寸前のところで止まっていた。

ムソク「?」

何者かの気配に、ムソクは目隠しをはずした。
彼の目の前で、トハは首に刀を向けられたまま、余裕の笑みを浮かべていたのだ。

ムソク「大変なことになるところだった」
トハ「副護軍の剣なら、怪我をしても後悔などいたしません」

「?」思いもよらないトハの言葉に、ムソクは訝しげに彼女を見つめる。「どういう意味ですか」

トハ「副護軍…」

すがるような目で、トハはムソクに近づく。

ムソク「どう… したんです?」

トハはムソクの胸にしがみつき、小さな吐息を漏らす。

ムソク「!」
トハ「なぜ… なぜ私の気持ちを分かってくださらないのですか」

ムソクは思わずトハの両腕を掴み、体を離した。「こんなことをしてはいけない」
それでもトハは再び彼にしがみつく。

トハ「私がお慕いしていたのは大君ではありません。副護軍だったのです」
ムソク「!」

トハの真意が分からず、どうすることも出来ずに立ちすくむムソクを、トハはさらに強く抱きしめる。

451

そこへ… ぶらりと現れたのはリンだ。
彼は目の前の光景に愕然とした。

リン「何をしているのだ?」
ムソク「!」

「…。」トハはリンの動揺を背中越しに窺い、ひそかにほくそ笑むと、驚いた表情で振り返った。

トハ「!」

それでもトハはムソクの腰に回した手を離すことなく、くるりと身を翻し、彼の背後に身を隠す。

リン「君も… 承知なのか?」
ムソク「大君、誤解です」
リン「誤解?」

452

ムソクの肩越しに顔を覗かせ、自分を上目遣いに見るトハの目に、リンは言葉を失った。

リン「…。」

そのときだ。「今度は何事ですか?」

リン「?」

急に聞こえて来た声に振り返ったリンは、さらに愕然とした。
ここにもう一人、トハがいるではないか!
リンに声を掛けたトハは、ここで初めてムソクの後ろにいる女に気づく。「?!」

リン「?!」
ムソク「?!」

一体何が起きているのか事態が把握できず、皆が顔を見合わせる中、ムソクの背後にいるトハが一人、静かに微笑んだ。

+-+-+-+

ここでエンディングです。

キサン君も偽物、トハも偽物。
映像を見てる分には何の混乱もしませんが、逐一書き起こすとなると、すごくややこしいです…。

体を乗っ取られて、誰にも気づいてもらえずに一人ぼっちでイジケてる本物のキサン君が見たいです、ハイ。

そして、偽トハが結構気に入っている私(笑)
本物が健全すぎて面白みがないから、ちょっとぐらいこうやってかき乱してくれてもいいんだけど…ってね^^

 - 夜警日誌 ,