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夜警日誌あらすじ&日本語訳6話vol.2

   

チョン・イル、チョン・ユンホ(東方神起ユノ/ユンホ)主演、「夜警日誌」6話の後半です。 あらすじの中で表情や心の動きも拾いながら、たっぷり愛情込めて翻訳していきます^^

では、さっそく♪

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鬱蒼とした山の中を、リンはたった一人、ひたすら進んだ。
刺客に斬られた腕が痛む。美しい空色の服が、赤く染まっていた。

空が白み、朝靄で前がよく見えない。
彼はただただ宮廷から少しでも遠く離れようと、走り続けた。

どれだけ走ってきたのだろうか。
痛みと出血で朦朧とする意識の中、彼は空を見上げる。

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頭がくらりとしたその瞬間、リンは足を踏み外し、崖のように険しい斜面を激しく転がり落ちた。

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領相とムソクは、すっかり荒らされた離宮に立ち尽くしていた。

ムソク「申し訳ございません」
領相「お前は任務を疎かにした。それゆえ、今日を限りで罷免する」
ムソク「!」

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「見せなさいよ」オンメの言葉に、トハは腫れた頬を頑なに手で覆い、首を横に振った。
「見せなさいって!」無理やり手を退けさせたオンメは、真っ赤に腫れたトハの頬に目を丸くする。

オンメ「あんた、お金を稼ぎに出掛けて、こうなっちゃったの?」
トハ「…。」
オンメ「ちょっと!それじゃ私が悪者になっちゃうじゃないの」
トハ「あっ、転んだだけですよ。もともとよく転んじゃう方なんです」
オンメ「そんなわけないわ!誰かに殴られた傷よ」
トハ「…。」
オンメ「何で殴られたりするの?可哀想に」
トハ「…。」
オンメ「薬は?」
トハ「塗りました♪ふふっ」

大きなため息をつき、オンメは料理に取り掛かった。「今日はどんなおかずにしようかしら~」
包丁を手に肉を切り始めるオンメを、トハは不思議そうに見つめた。

トハ「(オンメの姪、チョヒに)どうしちゃったの?」
チョヒ「鍛冶屋のおじさんが包丁を作ってくれたから、嬉しいのよ」
トハ「あぁ」

「あっ」チョヒは不意に思い出し、トハを見上げた。

チョヒ「それ、まだ返してないのね」
トハ「ん?はっ、そうだ!」

人の物だから渡せないと断った指輪のことを忘れていたのだ。

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指輪を握りしめ、トハはさっそくスリョンの屋敷の前までやって来た。
そこへ、怖い形相で屋敷から飛び出してきたのは、他でもないスリョンだ。
彼女はトハにも気づかず、大急ぎで走り去った。

トハは声を掛ける暇もなく、スリョンの後をついて走りだす。

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「月光大君を捕まえろ!」街の中は、リンを探して駆けまわる義禁府の姿で、不穏な空気に満ちていた。
走り去る武官たちをやり過ごすと、スリョンは再び走りだす。
スリョンが入って行った屋敷の中へ、後を追ってきたトハも駆け込んだ。

そこは、梅蘭房だ。

各地から集められた美女たちの集団に、トハは期せずして紛れ込んでしまう。
彼女たちは優雅に廊下を歩いてくると、階段を下りてきた女主人ヨンウォルに頭を下げた。

ヨンウォル「今日披露する品物は、大国(※中国)でも珍しいと名高い物ばかりよ。くだらないことをして品物の価値を落とすようなことがあったら、一生この梅蘭房の地下で荷運びして暮らすことになるわ。いいわね?」
女性たち「はい、肝に銘じます」

「す、すみません!」女性たちの中に紛れ、身動きが出来ずにもじもじしていたトハが、手を上げた。

ヨンウォル「?」

振り返ったヨンウォルは、トハの顔を見て目を見張る。「!!!」

一瞬訪れた沈黙の中、不思議な光景が彼女の頭の中に突然降って来た。
男に連れ去られる若い女と、追いすがる女の子だ。

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ヨンウォル「!」
トハ「?」

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しばらくトハを見つめたまま固まっていたかと思うと、ヨンウォルはハッと我に返る。

ヨンウォル「どうしたの?」
トハ「私は… 人を探しに来たんですけど…」

そこへ下女がやってくると、来客だとヨンウォルを呼んだ。

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「人が必要なのです」ヨンウォルを訪ねたスリョンは、単刀直入に切り出した。

スリョン「剣を使える人たちです」

何の驚きも見せず、ヨンウォルはゆっくりと茶を口へ運ぶ。

スリョン「大国まで行ける船の手配もお願いします」
ヨンウォル「密航なさりたいと…。それは危険が大き過ぎますわ」
スリョン「お望みのものは何なりと差し上げます」
ヨンウォル「その言葉、責任を持てますか?」
スリョン「…。」
ヨンウォル「それでは、恵民署を含め、朝鮮での薬剤の専売権を私にくださいませ」
スリョン「そ、そんな!どうして私に?私には何の権利も…」
ヨンウォル「領相は恵民署の提調(※責任者)を兼任していますし、そのため、お嬢様は恵民署や都の医員たちと交流が深いとか」
スリョン「恵民署は貧しい人たちのための場所です。大国から入る薬は高いので…」
ヨンウォル「お考えいただくのはただ一つ」
スリョン「?」
ヨンウォル「民ですか?大君ですか?」
スリョン「!」

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俯いて考えこむスリョンを、ヨンウォルは注意深く見つめた。

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美女たちの集団に紛れたまま、トハはまだ困ってキョロキョロしていた。
取りまとめ役の女性の説明を受けながら、美女たちは屋敷中央の橋を渡る。
「私、人を探しに!」トハはまたしても集団から抜ける機会を失い、持ち場へと急がされた。

「あれは… この間我々に恥をかかせた小娘じゃないか?」席で茶を飲んでいた客が、トハを指さす。
競売の日、檻に人が入っていると、トハを笑った男たちだ。

客1「そういえばそうだな。あの日はどんなに悔しい思いをしたか!」
客2「それなら、この機会に仕返ししてやろう」

客は、橋の向こうにいる係の女性に呼びかけた。

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競売は盛大に盛り上がっていた。
壺、刀、山水画… 美女たちが順番に品を持ち、舞台へ登場すると、そのたびに客席から拍手が湧く。

まとめ役の女性は、ぼんやり立っていたトハを捕まえると、丸めた書を手渡した。

女性「これを持って出なさい」
トハ「あっ!私はそういうのじゃなくて、人を探しに来たんです」
女性「分かったから。探せばいいけど、とりあえず忙しいのよ。ほら、早く!」

女性は無理やりトハの背中を押した。

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司会を勤めるヨンウォルが、次の品を紹介する。

ヨンウォル「次にお見せします品は、虞世南や欧陽詢と共に初唐三大書家として知られる褚遂良の作品にございます」

「待って!」そう言いながら、追い立てられるようにトハが舞台に飛び出してきた。
勢い良く出てきたその勢いで、丸めていた書が開く。

『吾自尊心三分也』(私の自尊心は三分だ)

その内容と、訳もわからず書を掲げるトハの姿に、場内から笑い声が起きる。
不審に思い、振り返ったヨンウォルは、驚いて書を奪い取り、急いで丸めた。

ヨンウォル「私の不手際です。手違いがございました。どうぞ寛大にご理解くださいませ」

ヨンウォルは深く頭を下げる。

さきほどからトハを見てほくそ笑んでいた例の客が手を上げた。

客「ちょうど退屈していたところだったんだ。ちょうど良かったよ」

彼らは顔を見合わせて笑うと、席を立ち、前へ出て来る。

客「皆さんお分かりだろうがね、その娘、三分では安すぎると思わぬか?」

呆然と立ち尽くすトハは勿論、ヨンウォルも困惑して言葉を失った。

客「この娘、前にも見たが、月光大君を制圧するほどの腕力と肝っ玉を持っているんだ。まぁ、敢えて困った点を挙げるとすると、字が読めぬから、自分の値が三分だと知らぬことだな」

場内からさらに笑い声が湧く。

客「それはそれで天然の魅力があるし、それほど欠点になる訳でもなかろう」

トハ「…。」

今日は助けてくれるリンもムソクもいない。
あざ笑う声の中で、トハは完全にひとりぼっちであった。

客「それでは、三分はあんまりだから、一両から始めよう」

客はトハに近づくと、ニヤニヤして耳打ちした。「そのボロ服でも脱げば、十両からにしてもいいぞ」

「それじゃ、十両から始めようか」客がトハの体に手を掛けると、とうとう彼女はその腕を払いのけ、「書」を地面に叩きつけた。
カッとなった客は、トハの髪を乱暴に掴む。

トハ「離して!離してよ!」
客「(ヨンウォルに)房主、何をしておる!今すぐ捕盗庁の従事官を呼べ!この女、今日こそ只では済まぬぞ!」

「おやめください!」ヨンウォルはトハと客を引き離した。

ヨンウォル「(客に)何の真似ですか!」

ヨンウォルはトハを振り返ると、思い切り頬を打つ。

トハ「!」

#良かった。一応昨日と反対の頬(笑

トハが顔を上げると、ヨンウォルはさらにもう一発食らわせる。

#あああ、そっちは昨日腫れた方!

ヨンウォルは小銭を出すと、床にばら撒いた。

ヨンウォル「今日のお前はこの三分にも劣るわ」

「…。」トハは床に視線を落とす。
小銭が三枚、彼女の足元に散らばっていた。
「!」トハは係に掴まれた両腕を力いっぱい払いのけると、ヨンウォルを睨み返す。

ヨンウォル「拾いなさい」
トハ「!」
ヨンウォル「分からないの?お前の賤しい自尊心は、この三分にもならないのよ」
トハ「…。」
ヨンウォル「だから、さっさと拾いなさい!」

「…。」悔しさと惨めさに、目に涙をため、トハは床に這いつくばると、”たったの三分”を拾った。

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トハ「私の自尊心が三分にもならないなら… 」

トハはカッと目を見開き、立ち上がった。

トハ「ここにいるあんたたちは… 二分も惜しいわ!」

トハは手に握った三分銭を放り捨てた。

ヨンウォル「!」

場内に気まずい空気が流れる。
絶句するヨンウォルを残し、トハは舞台を立ち去った。

ヨンウォル「…。」

+-+-+-+

足早に梅蘭房の裏へ出てきたトハは、向こうから来たスリョンに気づき、足を止めた。

スリョン「?」

スリョンを見つめるトハの目はひどく悲しげで、スリョンは咄嗟に言葉を失う。
トハはスリョンの指輪を取り出すと、彼女の手のひらに握らせた。

スリョン「?!」

顔を上げたトハの目から、涙がこぼれ落ちる。

135

トハ「こんなもの10個くれても、姉の腕輪はたったの一つも買えないんです」

そう言って立ち去るトハを、スリョンは驚いて振り返る。「…。」

136

+-+-+-+

斜面を転がり落ちたリンは、そこから動けないまま、ただ虚しく時間を過ごしていた。
体の痛みに呻きながら、リンはそれでも声を発した。「誰かいないか?」

リン「誰かいないか?」

137

#ボロボロに傷ついたイイ男鑑賞タイム

彼は力を振り絞り、叫んだ。「誰かいないのか!!!」

+-+-+-+

「本当にこっちへ来たんでしょうか」守護霊3人衆は大切なリンを探し、森の中を彷徨っていた。

左相(霊)「離宮から逃げてきたなら、この山しかない。ほら、探そう」
ランイ「静かにしてよ。他の声が聞こえないじゃない!」
二人「…。」

その瞬間、どこからか叫び声が聞こえてくる。「誰かいないのか!」

3人衆「!!!」

3人衆は駈け出した。

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「誰かいないか!」リンはありったけの声で叫び続けた。
「誰もいないのか…」その声が絶望に変わった瞬間、斜面の上から3人衆が顔を覗かせる。

ソン内官「あらまぁ!」

「ソン内官…」リンは彼らを見て、臣下の名を呼んだのだ。

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ソン内官「若様ぁ!!!」
リン「…。」

「ちょっと待ってよ!」ランイが感動の場面を遮る。

ランイ「助けて欲しいときになって、やっと呼び掛けるなんて!」
ソン内官「今、そんなことどうでもいいって!若様を助けなきゃ!」

高いところを怖がる左相に呆れ、ソン内官は勇気を振り絞って崖からふわりと飛び降りた。
ランイも飛び降り、そばで見守る。
ゆっくりと降りてくるソン内官に、リンは懸命に手を伸ばした。

ソン内官「大君様、私の手を掴んでください!」

手が届いたその瞬間、ソン内官の手はリンの手を通りぬけ、空を切った。
リンは絶望し、その手を力なく下ろす。
ソン内官の泣き声が響いた。

ソン内官「大君様、私が人を呼んできますから。少しだけ待っていてくださいませ」
ランイ「早く戻ってきてね!」

リンはすがるような目でソン内官を見つめる。「帰って… 来るよな?」
「勿論です!」ソン内官は強く頷いた。

「しっかり見守ってるんだぞ」ランイにそう言い聞かせると、ソン内官は後ろ髪引かれる思いでリンのそばを離れた。

+-+-+-+

「すみません、ちょっと!」「助けてください!」「聞こえないんですか?」
人を呼んでくるとは言ったものの、自分は幽霊の身。
そこらじゅうの人間に必死で呼び掛けたところで、ソン内官に気づく者は誰もいなかった。

ソン内官「あぁ!私の声が聴こえる人はいないんですか?!」

「どうしよう!」途方に暮れ、泣き叫んでいたところへ、向こうからとぼとぼとトハが歩いてくる。
「…。」梅蘭房で受けた辱めが胸をえぐったまま、まだジワジワと彼女を苦しめていた。

泣きながら歩いてくると、そこでトハはようやく道の中央に座り込んで嘆いているソン内官に気づいた。

トハ「?!」

「どうしよう!」ふと顔を上げたソン内官は、自分を見下ろしている視線に気づく。
トハだ!

「あっ!!!」ソン内官は慌てて立ち上がった。

+-+-+-+

「誰かいないか!」ソン内官を待つ間も、リンは僅かな望みに賭け、声を上げ続けた。
朦朧とした意識の中、霊が見えると責められた辛い経験を、彼は思い出していた。

「私の存在そのものが殿下の懸念になるのに、それなら私は… どうするべきなのですか?」
「死んだように… 悲鳴さえも飲み込み… そうやって生きなさい」

悲鳴さえ飲み込んで生きなければならない人生の末が… この姿だ。
彼は悲しみで一杯だった。

+-+-+-+

ソン内官の案内で、トハは松明を手に、肩に縄をぶらさげて山道を進んでいた。

ソン内官「君しかいなかったんだ、本当に。助けてくれる人は君しかいなかった」

「急いで」歩く間も、ソン内官は不安に耐えられず、しきりに話し続ける。
近づいてきた彼らに気づき、左相(霊)が手を上げる。

左相「(リンに)人が来ましたよ!」

その声に、リンが上を見上げた。
「みんないたの?」トハの声が聴こえる。

左相「君がこんなに有難いとは思わなかった」

「あそこ!」ソン内官が指差す方を松明で照らすと、トハは下を覗きこむ。
暗闇の中で、リンとトハの目が合った。

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トハ「き、切干大根!」

そう言い掛け、慌てて口をつぐんだ瞬間、突然別の声が遠くで聞こえる。「こっちだ!!!」

声「こっちに灯りが見えるぞ!」

追手だ!
義禁府がすぐ近くまで迫っていた。

トハは大急ぎで松明の火を消すと、木の陰に身を隠す。
義禁府がいよいよ近づいてくると、トハは咄嗟に足元の石を拾い、別の方向へ投げた。

義禁府「向こうだ!ついて来い!」

#いつも思うけど、こういうときに大声で叫びながら現れる義禁府はマジで役立たず。

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義禁府の集団をやり過ごすと、トハは持ってきた縄を取り出した。
「掴んで!いいわね?」そう声を掛け、リンに向かって投じる。
縄は一発でリンの手元へ届いた。

トハ「上がって来られそう?」

リンが何度も頷いた。

ソン内官「大君様、大丈夫ですか?本当に大丈夫ですよね?(嘆)」

リンが縄を掴んだのを確かめると、トハは縄を力いっぱい手繰り寄せる。「1,2,3!」

#なるほど。ここで男を投げ飛ばすほどのトハの腕力が生きてくるわけね^^

リンは渾身の力で体を起こそうとし、すぐに力尽きた。

トハ「大丈夫?私が降りようか?」
リン「そんなに大声を出したら… 軍官たちが戻ってくる…」
トハ「ごめん。私、心配で…」
リン「いいから。縄を木に括りつけるんだ」

「分かった」トハが縄を木の幹に括ると、リンは今度こそ力を振り絞って上へ登った。
彼が登ってくるのに合わせ、トハも懸命に縄を引っ張る。

トハ「もう少し!」

近づくごとに、リンの全身に力が湧く。
3人衆に励まされながら、リンはとうとう上へ辿り着いた。

トハ「こんなに力持ちで、人だって助けたのに、三分はあんまりだよ…」
ソン内官「大君様、大丈夫でいらっしゃいますかぁ?」
ランイ「斬られてるに、大丈夫なわけないでしょ!」
左相「薬を塗らなきゃいけないんじゃないか?」

「…。」リンは痛みを堪えて立ち上がると、黙って歩き出した。

トハ「ちょっと!一緒に行こう」

+-+-+-+

二人と三人は静かに山の中を進んでいた。

「こっちだ!」不意にまた義禁府の声が聴こえる。
振り返ると、木々の向こう側に追手の近づくのが見えた。

ランイ「あとは私たちが囮になるから。あんたたちは逃げて」
左相「そうだ。君たちは行きなさい。早く!」
ソン内官「(トハに)うちの若様を頼むよ」

三人衆は大騒ぎしながら義禁府の集団へと近づいていく。

トハ「あの人たち、人に話しかけることも触ることも出来ないのに、どうやって囮になるのよ?」

二人はとにかくその場を離れた。

+-+-+-+

もう追手がついて来る様子はなかった。
しばらく進んだところで、二人はようやく落ち着いて歩き出す。
道はすっかり平坦になっていた。

リン「もういいから、お前は行け」
トハ「あんたは… どこに行くの?」
リン「どこに行くって… 家しかないだろ」

「頭おかしいの?!」トハは思わずリンの腕を掴んだ。

トハ「今戻ったら捕まるよ!軍官たちが張ってるんだから」
リン「…。」
トハ「しばらくどこかに隠れてるか… そうだわ、知ってる人に助けてもらいなさいよ」

リンが静かに彼女に向き直る。「知ってる人?」
彼は虚しく笑い、再び歩き出す。

トハ「あんたたちって、人の心配を受け入れるのも相手によるの?」
リン「!」
トハ「心配も、身分の高いあんたたち同士でしかしないわけ?人が心から言ってるのに…」

「ない」リンが静かに言った。

トハ「?」
リン「ないからそう言った」
トハ「…。」
リン「行くところもない。助けてくれる人もいない。何もかもない」
トハ「…。」
リン「休めるところは… 家しか思いつかないんだ」

140

「…。」悲しく目を逸し、歩き出した彼の背中に、彼女は黙って続いた。

+-+-+-+

トハがリンを連れて来たのは、彼女が滞在している宿だ。
中は、食事をしに来た客で大賑わいだった。
客の一人が騒々しく匙で卓を叩く。

客「おい!ここに”夜の天女”がいるって噂は嘘か?!嘘を広めて商売してんのか?」

入り口からそっと中を覗き、どうやって入ろうかとトハは考えを巡らせた。

リン「本当にここに住んでるのか?」
トハ「住んでるのは確かなんだけど、ちょっと問題があって」

トハは誤魔化すように笑う。

そこへチョヒが現れると、大声で騒いだ客の前に歩み寄り、いきなり卓上に足を乗せた。
裾をたくしあげ、艶かしい足を見せると、挑発的な視線を送る。

141

客「お前がその… 夜の天女なのか?!」

チョヒが思わせぶりなポーズを取ると、男たちは皆集まり、彼女を取り囲んだ。

トハ「今だ!」

トハはリンの手を引いて中へ入ると、背中に彼を隠し、急いで二階へと上がる。

+-+-+-+

リンはトハの部屋の扉を開け、中を覗き込むと、そっと足を踏み入れた。
トハが蝋燭を手に後から入ってくると、扉を締め、鍵をかける。

リンは部屋の奥に身を横たえ、トハに背を向けた。

トハは彼に近づき、顔を覗いた。「寝るの?」
「…。」返事の代わりに、小さなため息が聞こえる。

トハ「お腹、空いてない?」
リン「…。」
トハ「何かいるものないの?」

リンは苛立って起き上がる。「ない!」そう大声を上げそうになったところで、彼は言葉を飲み込んだ。

リン「…ない。寝るんだ。腹も減ってない。いる物もない」
トハ「…。」
リン「この惨めな状況を忘れたいから… 放っておいてくれ」

リンは再び横になり、痛みに唸り声を上げる。
手は、まだむき出しの腕の傷口を押えていた。

トハ「…。」

トハは立ち上がると、棚の上に置いてあった小瓶を手に取る。
ムソクに貰った傷薬だ。

トハ「怪我してるみたいだけど… これでも塗って寝てよ」

トハは控えめに小瓶を差し出す。
リンはゆっくりと振り返ると、もう一度身を起こした。

リン「それでは、私が衣の紐を解こう」

この状況で、ようやくリンは得意な冗談を口にし、笑って胸元の紐を解いた。

トハ「この薬、すごく効くはずよ。あ、そうだ!あんたも知ってる人がくれたの」
リン「誰?」
トハ「あ… なんでもない」

「誰なんだ?」急に口ごもったトハに、リンは却って興味をそそられる。

トハ「ううん。なんでもないって」
リン「誰なんだよ?」

頑なに首を横に振り、トハは密かに思い出し笑いを浮かべる。
「言え!!!」リンは大声を上げた。

トハ「あんたを… 捕まえて行った…」

「あぁ~」リンは笑うと、一転して真顔で彼女を睨み、解いた胸元の紐を固く結ぶ。
薬の瓶を手のひらで転がすと、思い切り壁に投げつけた。
瓶は一瞬で木っ端微塵だ。

トハ「ちょっと!薬が!!!」
リン「出てけよ」
トハ「…。」
リン「出てけって」

トハはムッとして立ち上がると、部屋の外に出て扉をバタンと閉めた。

+-+-+-+

部屋の扉の前で、トハは怒りと懸命に戦っていた。
拳を握りしめ、暴れそうになるのを堪える。

「?」そこへ誰かがやってくると、彼女を不思議そうに見つめた。

サンホンだ。

サンホン「どうした?」
トハ「!」

+-+-+-+

ここでエンディングです。
「YOU!そこで彼に助けを求めちゃいなYO!!!」なエンディングでございました。

ヨンウォルの突然の謎のフラッシュバックに「おおっ?何だ!」と身を乗り出したものの、その後のズタボロ王子のセクシーっぷりに、そんなものは軽く吹き飛んだわけです。

いやぁ、いい男の痛々しい姿ほど萌えるものはござーせん♥

リンは追われる身、ムソクもクビ、サンホンは浪人。
三人集まって、予測できない化学反応を起こして欲しいですねぇ。

公の場を離れ、俄然面白くなりそうですが、リンにはぜひ屈辱を晴らして宮廷に戻り、認められた王しか手にできない神弓を手にして欲しい!
(神弓は大蛇と一緒に埃まみれになってましたよね)
暗いストーリーが続きますが、私はその日が来るのを楽しみに見続けます。

長い記事に最後までお付き合い下さった皆さん、ありがとうございました。

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