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SPY(スパイ:JYJジェジュン主演)11話あらすじ&日本語訳vol.2

   

JYJキム・ジェジュン、ユ・オソン出演、「SPY」11話。後半に進みます。

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それぞれの長い夜がゆっくりと流れていく。

ダイニングの上には、食べる人のいない晩ごはんがすっかり冷えていた。

ヘリムは娘の寝室へ入ると、布団を掛け直した。
ずっと一人で泣いていたのであろう… ヨンソの眠る枕元には丸めたティッシュがいくつも転がっている。
ヘリムはベッドの縁に腰を下ろし、娘の寝顔を見つめた。

ヘリム「ヨンソ… ごめんね。あなたを愛していないからじゃないの。いつかあなたもお母さんの思いを理解できる日が来るわ」

ヘリムは書き置きといくらかのお金を、サイドテーブルの上に置いた。

『試験が上手く行ってよかったわね。
お母さんはヨンソのこと、すごくすごく愛してるわ』

ヘリムが部屋を出て行くと、ヨンソはそっと目を開ける。

ヨンソ「…。」

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翌日。
ヘリムはいつになく硬い表情で街の中を歩いていた。
ある建物を探し当てると、彼女はその古びた建物の外階段を上がっていく。

中に入ると、彼女は金網の張られた窓口を覗いた。

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ここで武器を売っていると聞いたわ」そこにいる男に中国語で声を掛け、封筒を小窓から差し出す。
「誰のご紹介で?」男は封筒をチラリと見ると、韓国語で答えた。

ヘリム「中国にいる友人です」

彼女は洗面所の戸棚にあったメモ帳を開いて渡した。

男「何をお渡ししましょう?今あるのはナイフに斧…」
ヘリム「銃を」

男の視線が鋭くなる。
「そんなものは売っていませんよ」男はメモ帳を突き返した。

男「警察に通報する前にお帰りを」
ヘリム「…。」

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ヘリムが建物の外へ出てくると、男が一人、彼女を待っていた。
彼女が出てきたのを見ると、ニヤリと意味ありげに笑う。
さっき、部屋の奥で退屈そうにしていた男だ。

男は「シッ」と人差し指に口を当て、まず探知機をヘリムの体にかざした。「ときどき警察の手先が来るもんでね」

男「金は持って来てますよね?」

ヘリムは頷く。
「ついて来て」男が歩き出した。

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男が案内した先にあったのは、何の変哲もない一台のトラックだ。
そこは人気のない路地の突き当りになっており、ヘリムは後ろを警戒して振り返った。

男「何してるんです?早く来てくださいよ」

荷台の木箱を開けると、緩衝材の中に黒い銃が見える。
ヘリムは封筒を男に手渡し、箱の銃を手に取った。

男「殺したい人がいるようだな。旦那?恋人?」

男の言葉に答えることなく、ヘリムはテキパキと銃に弾をこめる。

男「それなら俺たちに任せりゃいいんだ。安くしてやるからさ。この3倍程度でいい。とりあえず手付金だけ出しなよ」

男はヘリムがすっかり武器の準備を整えるのを覗き込んだ。「おいおい、おばさん、何やってんだ?」

その瞬間、ヘリムは男が伸ばした腕を押さえたかと思うと、あっという間に動きを封じ、首に銃を突きつける。
「!」彼女に近づこうとしていた男の仲間が、唖然として立ち止まった。

ヘリム「死にたくなきゃ全員退きなさい!」

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国家情報院の職員たちが、いつになく忙しくオフィスの中を行き来していた。
防弾チョッキを身につけ、銃を手に出て行く職員を、怪訝そうにウナが振り返った。「みんなどうしたの?何の騒ぎ?」

ウナ「戦争に行くわけじゃあるまいし、完全武装しちゃって。何があるのか言ってくれてもいいのに」

ソヌのブースに入ってきて、彼女はそうぼやいた。

ウナ「あんた、何か聞いてないの?」
ソヌ「何も知らないけど」
ウナ「主任、今まで一言も言わなかったのに、突然よ。今だって何があったのか話してくれないの」
ソヌ「…。」
ウナ「こんなんじゃ分析班なんて要らないよ」
ソヌ「主任は?」
ウナ「ヒョンテ先輩と部屋にいる」

「あ!」ウナは抱えてきた箱を開けた。「これ、貰って」
彼女は小さなケースをソヌに差し出す。

ソヌ「これ何?」
ウナ「解毒キット。ファン・ギチョルの毒注射、覚えてるでしょ?その解毒剤だって」
ソヌ「…。」
ウナ「3分以内に打たなきゃいけないの、分かってるよね?じゃなきゃ意味ないよ」

ウナがブースを出て行く。
ソヌはペン型の注射器とアンプルの収められたケースを見つめた。「…。」

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ジュンヒョクがヒョンテと共に姿を見せる。
「主任」ソヌの声に、二人は揃って振り返った。

ソヌ「折り入って話があるんです」
ジュンヒョク「今?今はちょっと何だから、行って戻ってから聞くよ」
ソヌ「監督官に関係のある話です」

「!」ジュンヒョクもヒョンテも、驚いてソヌを見つめる。

ジュンヒョク「監督官?」
ソヌ「監督官が持って来たハードディスクのことで」
ジュンヒョク「!」

「…。」3人の間に俄に緊張が流れる。

ジュンヒョク「よく知ってるな。ヒョンテ、お前が話したのか?」

「いいえ、一人で突き止めたようですが」ヒョンテはソヌから目を離せぬまま、ポツリと答えた。

ジュンヒョク「そういうことなら、中で話そう」

ジュンヒョクはソヌを自分の執務室へ入れ、続いて入ろうとしたヒョンテを遮る。「お前は外にいろ」

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「もっと早く来いよな」ジュンヒョクはいつもの調子で軽くボヤいた。「えらく忙しいんだ」

ソヌ「あの… ハードディスクがこれまでに引き起こした幾つかの…」

その瞬間、慌ただしく扉が開く。
飛び込んできたのは次長だ。「ソン主任!」

次長「キム議員が来られるって、なぜ言わなかった?!」

次長はジュンヒョクを指さし、非難する。

ジュンヒョク「え?いつおいでに?」
次長「とっくに来られてるそうだ!さっさとついて来い!出発前に説明を聞かせてくれってな」

「早く来いって!」有無を言わせず手招きし、次長が部屋を出て行く。
「ちょっと待っててくれ」ジュンヒョクはソヌに言い残し、次長の後を追って部屋を出ると、お付きの部下に中をよく見張っておくよう告げた。

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一人になると、ソヌの携帯にメッセージが届いた。
中身は動画だ。
ユンジンがキチョルの手下たちに捕まっている様子が映し出された。

ソヌ「!」

カメラのアングルがクルリと切り替わると、テシクがアップになる。「やぁ」

テシク(映像)「恋人が死ぬのを見たくなけりゃ、ハードディスクを持っていらっしゃいよ。1時間あげますから」

からかうようにテシクが手を振る。
こんなところでジュンヒョクが戻ってくるのを待っている暇はない。
ソヌは立ち上がり、外の様子をチラリと確かめると、ジュンヒョクのPCに手を伸ばした。

ジュンヒョクのPCに繋がっているディスクドライブを表示させる。
一つはローカルディスクであるCドライブ。
そして、もうひとつ、Dドライブが認識された。

Dドライブにアクセスを試みると、パスワード入力欄が表示された。

そこへメールの着信音が鳴る。
『5分経過』ユンジンの携帯からのメッセージだ。

ソヌ「…。」

ソヌは慌てることなく、そのまま電話を掛け直した。「ブツを手に入れたいなら、今すぐユンジンを解放しろ」

テシク(電話)「参ったな、キム・ソヌさん、興奮しないでくださいよ。やる気の元を用意してあげようとしたんですから」

テシクたちはユンジンの部屋に居座っていた。
彼は腕を縛られたユンジンをチラリと見やる。

テシク(電話)「どうかな?指の一本でも切れば、気が変わります?」

「いっそのこと俺を殺せ!」スピーカーフォンにした電話から、ユンジンの耳にも彼の声が届く。

ソヌ(電話)「俺がやると言ってるだろ。ユンジンには絶対手を出すな。あいつは何の関係もないんだ」

どこまでも自分を信じている彼の声に、ユンジンの胸が痛んだ。「…。」

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テシク(電話)「それなら今すぐハードディスクを持っていらっしゃいな。そうしなきゃ… 可愛い恋人は苦しんで死ぬことになりますよ」

ユンジンの目から静かに涙がこぼれ落ちる。
「おっ?あと50分だな」テシクはそう言って電話を切った。

テシク「いやぁ。君を本当に愛してるんだな」
ユンジン「…。」

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ソヌは携帯のタイマーを45分にセットし、ジュンヒョクの部屋を出た。
彼がアタッシュケースを手にしているのを見て、ジュンヒョクのお付きの部下が彼の前に立ちふさがる。

部下「何をなさってるんです?」

「主任に持って来いと言われたんです」ソヌは努めて自然に答えた。

ソヌ「次長にお見せするものがあるそうで」

「お待ちを」部下はその場で携帯を取り出した。
静かに待つソヌを、部下はまばたきもせずに睨む。
数度の呼び出し音の後、「電話に出られません」という定型メッセージが流れた。

ソヌ「では、行きますので」

ソヌは軽く会釈し、再び歩き出した。
自分のブースにいたヒョンテは、目の前を通り過ぎるソヌをそっと目で追う。
彼がアタッシュケースを持っているのを見て、ヒョンテはただちに立ち上がった。

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「おい、キム・ソヌ!」後を追ったヒョンテが声を掛けると、聞こえているのかいないのか、ソヌはそのまま廊下の角を曲がった。
続いて廊下の角をヒョンテが曲がってみると… そこにもうソヌの姿はない。

ヒョンテ「…。」

ヒョンテはすぐに携帯を取り出した。「あぁ、主任」

ヒョンテ(電話)「ひょっとして今、キム・ソヌを呼ばれました?」
ジュンヒョク(電話)「いや、何のことだ?」

その瞬間、ヒョンテは全力で駆け出していた。

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ヘリムはキチョルたちのアジトを見上げていた。
銃を握ると、彼女は迷わず階段を上がる。

2階はガランとしていて、人の気配は感じない。
慎重に進んでいくと、奥の窓辺で人影が動いた。
「ソンへ…」キチョルの声だ。

キチョル「ここに何の用だ?」

「…。」彼女はまっすぐ奥まで進むと、キチョルに銃を突きつけた。

ヘリム「皆はどこへ?」
キチョル「仕事だろうな」

「お前こそ」キチョルは眉をひそめる。「また俺を殺しに来たのか?」

ヘリム「そうよ。今度は確実に逝かせてあげるわ」
キチョル「…。」

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駐車場へやって来ると、ソヌは再びユンジンの携帯に電話を掛ける。「ユンジンを解放しろ、今すぐだ」
「ハードディスクは入手なさったんです?」テシクが尋ねた。

ソヌ「あぁ。だから、今すぐ解放してくれ」
テシク「何をそんなに焦ってるんだか。今、僕のそばにいるから早くいらっしゃいよ。傷つけるような人は誰もいない」

車に辿り着き、ドアに手を掛けたその瞬間…
ソヌは動きを止めた。

ソヌ「…。」

カチャッ

何か小さな音が背後で聞こえたのだ。
ゆっくりと振り返ったソヌが見たのは、銃口を自分に向けているヒョンテの姿だった。

ソヌ「!」

「さっき声を掛けたんだが」ヒョンテは小さな声で言った。

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テシクは封筒にいくらかの金を入れ、用意したユンジンの偽造パスポートを彼女に見せると、それをチェストの引き出しに収めた。

テシク「頑張った分の報酬だ。ここに入れておくから大事にしろ。仕事が終わったらすぐ中国へ行くから」
ユンジン「それなら… ファン・ギチョル同志は?」
テシク「あぁ、あの反動分子は気にしなくていい。事が終われば粛清される。実はイ・ユンジン君も危なかったんだ。ファン・ギチョルの手先じゃないかと疑わしかったんでね。」
ユンジン「!」
テシク「平壌にアパートもあるし、家族も保護されてる」
ユンジン「私は…!」

「…。」テシクが鋭い目で彼女を振り返る。

ユンジン「党がしてくれたことだと思っていました」

テシクはニッコリ微笑み、身を乗り出す。「確かに」

テシク「俺たちはみんな党の命令に従っているんだからね」
ユンジン「…。」
テシク「とにかく、ファン・ギチョルという人間はもういない。存在したこともない。君はこれからずーっと、俺の命令だけ聞いていればいい」

「俺の言葉はすなわち党の言葉だ」テシクは人差し指で天を指した。

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「そいつを持ってどこへ行くつもりだ?」銃を構えたまま、ヒョンテはアタッシュケースをチラリと見た。

130

ソヌ「先輩、行かせてください。これがないと僕の恋人が死ぬんです」

「どこまで信じなきゃなんないんだよ!!!」混乱したヒョンテが思わず声を上げる。

ヒョンテ「なぁ、俺も人間的には本当に好きだったんだ。それでも何だか変だ。それで中国支部にお前の母親の身分照会を依頼してみた。妙なことに、パク・ヘリムって名前じゃ20歳以前の情報が全くないってな」
ソヌ「…。」
ヒョンテ「お前に話そうかどうしようか…ものすごく悩んださ。こんなことになって俺も残念だ。そいつを置け」
ソヌ「僕は決して嘘をついてるわけじゃありません。先輩、お願いです」
ヒョンテ「お願い?何がお願いだよ」
ソヌ「…。」
ヒョンテ「お前はそいつで恋人を助けだして、幸せになると思ってんだろ。みんなで馬鹿を見るだけだぞ」
ソヌ「それじゃ何もするなって?黙って見てろって言うんですか?!」
ヒョンテ「あぁ、じっとしてろ。黙って見てりゃいい。なぁ、俺の願いは何だと思う?監督官一人捕まえりゃそれでいい。主任の約束を取りつけたのに、お前がそんなことしたら、全部台無しに…!おい、さっさとそいつを置け」

「…。」ソヌはアタッシュケースを静かに地面に置いた。

ソヌ「後ろを向け。手は後ろに」

ソヌは言われたとおり背を向け、手を後ろに組んだ。

ソヌ「監督官についてどれくらいご存知なんです?顔を見れば分かりますか?」
ヒョンテ「他のことはともかく、指が2本ないのは確かだ」

背を向けたまま、ソヌが密かにほくそ笑んだ。

131

ヒョンテ「俺の仲間を殺したとき、ヤツの指も一緒に飛んだからな」
ソヌ「指だけで… 見分けられますか?」

「当然だろ」ヒョンテは構えていた銃を下ろし、ベルトに戻す。

ヒョンテ「ヤツは今、韓国にいる。なんとしても俺が捕まえて…」
ソヌ「主任が匿っています」

ソヌに手錠を掛けようとした手が止まった。「?!」

ソヌ「監督官は… 亡命したんです」
ヒョンテ「!」

背後にいるヒョンテの様子を注意深く窺うと、ソヌは素早く身を翻し、ヒョンテの手首を掴んで車体の上に組み伏せる。
ヒョンテが抵抗し、二人は再び向き合った。

ソヌ「先輩、主任がどんな約束をしたか知りませんが、全部嘘なんですよ」
ヒョンテ「笑わせやがって!」

ソヌがアタッシュケースを指さす。「あれは主任が個人的に着服しようとしているものです」

ヒョンテ「…。」
ソヌ「国家情報院内にも知っている人はほとんどいません」
ヒョンテ「…。」
ソヌ「無くなったとしても、大きな問題にはならないはずです」
ヒョンテ「だからって、お前が持って行っていいわけじゃないだろ」

ソヌがもう一度ヒョンテに飛びかかる。
激しく攻防を繰り返した末、ヒョンテは腹に飛び蹴りを食らい、後ろの車に叩きつけられた。「あぁ!」
呻いているヒョンテに近づくと、ソヌはそこへ腰をかがめた。「休んでいてください、先輩」

ソヌはヒョンテの片腕に手錠をはめると、そこにあった車のドアに繋いだ。
ヒョンテのポケットから手錠のキーを取り出し、手の届かないところへ放り投げる。
彼は懐から小さな通信機材を取り出し、ヒョンテの懐に入れた。

ソヌ「これでソン・ジュンヒョク主任の話を傍受できます。自分で聞いて判断なさってください」

ソヌはヒョンテの後頭部を突いて気絶させ、アタッシュケースを手に車に乗り込んだ。

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ジュンヒョクが飛んで戻ってきた時には、すでに時遅しだ。

ジュンヒョク「おい!キム・ソヌはどこだ!」
部下「主任のところへバッグを持って行くって、出掛けましたけど。電話に出られなかったもので…」

ジュンヒョクはデスクの電話に飛びついた。「おい!正門だ!早く繋げ!!!」

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ソヌの車が正門にたどり着く。
「お疲れ様です」ソヌは身分証を見せ、いつものように挨拶をした。

後ろの詰め所で電話が鳴っている。
警備員が走って戻るのを横目に、ソヌは正門を出た。

+-+-+-+

ガックリうなだれて電話を切ると、ジュンヒョクはいきなり部下の胸を足で蹴り飛ばした。

ジュンヒョク「キム・ソヌを捕まえろ。今すぐ捕まえろ!!!!!」

全員が一斉に駆け出した。

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銃を突きつけられたまま、キチョルは携帯に視線を落とした。
着信音が鳴ったのだ。
メッセージを開き、キチョルは思わずふっと笑う。

ヘリム「?」
キチョル「俺を殺せば全部終わると思うか?」

#うんうん さっきから盛大に突っ込みたいのはそれ
せっかく銃をあれだけかっこ良く手に入れたのに

キチョル「息子が自由になって、家族も平和に暮らせると思うか?」
ヘリム「あなたを殺して、私も死ねばいいわ」
キチョル「そうすれば、ソヌを脅迫する人も、理由もなくなるもの」

「遅かったな」キチョルは短く告げ、携帯を彼女の前に放り出す。

ヘリム「?」
キチョル「お前の息子、もうやらかしたぞ」

「!」ヘリムは銃を向けたまま、もう片方の手で携帯を手に取った。

『キム・ソヌがハードディスクを確保。現在、接触の準備中』

ヘリムは急いで自分の電話を取り出した。

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ソヌは車を停め、ユンジンのアパートの様子を窺った。
携帯のタイマーを確認する。
残り6分13秒。

ソヌ「…。」

秒数が減っていくのを、ソヌはじっと見つめた。
そこへ電話が鳴る。

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「お願い!」呼び出し音を聞きながら、ヘリムは祈った。「お願いだから出て!ソヌ!」

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ソヌは鳴ってる電話を後部座席に放り投げ、代わりにアタッシュケースを手に取った。
ケースを開き、彼は静かに作業を始める。

電話の鳴る音だけが車内に響き続けた。

ドライバーでノートPCのカバーを取り外すと、ソヌは中に収められているハードディスクを取り外した。

残り3分22秒。

ハードディスクのラベルについているバーコードの上に、持って来たバーコードシールを貼る。

残り2分42秒。

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「電話に出られません」呼び出し音が定型メッセージに切り替わった。
ヘリムは手元にあったキチョルの携帯を突き返す。「作戦中止しろと言いなさい!」

ヘリム「早く!」
キチョル「ヤツら俺の言うことを聞くと思うか?見りゃ分かるだろ。みんな俺だけ除け者にして現場に行ってるんだ。もう誰も俺の言うことなど聞かん。上から来たヤツに従ってるんだ」
ヘリム「私がハードディスクを取り戻すわ。あんたと他のクズ共みんな捕まえて、うちの息子は悪くないって、全部私が悪いんだって言うわ!」
キチョル「キム・ソヌが事を起こした以上、全部おしまいだ」
ヘリム「!」
キチョル「お前も、お前の旦那も、キム・ソヌにキム・ヨンソも。スパイの烙印を押されて、一生何も出来ず、監視されて…酷い目に遭いながら生きていくんだ」

「黙りなさい!!!」ヘリムの声が響く。「これ以上ゴチャゴチャ言ったら、死体にして引きずっていくわよ!!!」
「俺がそんなに憎いか」キチョルの目が悲しく光った。

キチョル「30年経った今でも殺したい程?」

「えぇ」ヘリムが目を大きく見開いた。

キチョル「お前が生きていることを最後まで黙っていたのに?」
ヘリム「…。」
キチョル「お前がこれまで幸せに暮らしてきたのは、全部俺の犠牲があったからだ」
ヘリム「…。」
キチョル「教化所(※北朝鮮の刑務所)で犬扱いされたって、秘密を守った俺のお陰だと言ってるんだ」
ヘリム「お礼の一つでも言うべきかしら?今、息子がスパイになってるっていうのに!!!」

「…。」キチョルは彼女を見上げていた視線を静かに伏せた。「方法が全くないわけじゃない」

ヘリム「?」
キチョル「ヤツらからハードディスクを奪って、一緒に国を出ることだ」
ヘリム「!」
キチョル「俺も出世したって何もいいことはない。お前だってこの国にはもういられないだろう?」
ヘリム「一体何を…?」
キチョル「お前さえ消えりゃいいんじゃないのか?」
ヘリム「!」
キチョル「南の政府には全部俺がやったことにしておいて、お前を拉致したことにしたなら?そうすりゃお前の家族は生きる道が出来るだろう」
ヘリム「…。」
キチョル「あのハードディスクで取引を持ちかければ、ソン主任も無視は出来ないはずだ」

#全然関係ないけど、キチョルの部屋にちゃんと2月のカレンダーが掛けてあるのがちょっと微笑ましい(笑

「…。」ヘリムは静かに考えを巡らせる。「ハードディスク、それさえあれば…」
「ソンへ、俺たちさえ消えりゃいいんだ」キチョルの声は低く、どこまでも穏やかだ。
彼をじっと見つめると、彼女は銃を構え直した。「あのとき二人一緒に死ぬべきだったのよ」

ヘリム「そうすれば何も起きなかったはずだわ。誰も傷つかなかった…」

「そうだな」キチョルが頷く。
「それも良かったろう」ヘリムを見上げ、彼は笑みをこぼした。

ヘリム「…。」

133

+-+-+-+

車を降りると、ソヌは銃をセットし、歩き出す。
外で待ち受けていた手下に続いてユンジンのアパートへ入ると、ガムテープで口を塞がれたユンジンの視線とぶつかった。
「!」彼女の姿が痛々しく、ソヌの目が悲しく光る。

134
テシク、そして手下たち。全員が彼を静かに見ていた。

+-+-+-+

ここでエンディングです。
キチョルとヘリムのシーンは見応えありますねー。
特に、とことん自分に毒づくヘリムを、キチョルが静かに受け流す感じがとても切なく、そこに過ぎ去った長い年月を感じたりしますです。

何とか事を荒立てずにアタッシュケースを取り返そうとしたヒョンテも良かったし、
狂気のジュンヒョクも面白い。
そして、ハードディスクを運び出すソヌが、どこかとても冷静なのが印象に残りました。

ソヌはハードディスクに何の細工をしていたんでしょうか?
続きが気になります。

 - SPY ,

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