SPY(スパイ:JYJジェジュン主演)8話あらすじ&日本語訳vol.1
キム・ジェジュン、ペ・ジョンオク出演。SPY8話前半。
あらすじの中で情景や表情も捉えつつ、台詞を丁寧に拾って翻訳していきます。
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「名前はファン・ギチョル。年齢不詳、役職不明。別名ゴーストと呼ばれる拉致暗殺専門のブラック要員です」
ミーティングブースに集まった面々のノートPCに、北朝鮮軍人の中から見つかったキチョルの顔が表示されている。
ソヌが彼について説明した。
ソヌ「最近、南にいるスパイたちを粛清した張本人で、先日の作戦で囮役となったチョ・スヨンも、この男に殺害されました。我々側の情報員が最後に掴んだのは88年の瀋陽なんですが、それまでは北の領事館所属の運転手としか分かっていなかったのが、アジトで爆発事故が起きたことで、正体が明るみに出たんです。その後、組織はバラバラになり、ファン・ギチョル本人も国へ送還されました。それ以降は公式の席上に一度も姿を現したことはなく、爆発の責任をとって死刑になったと判断されていたんですが、突然対南工作の総責任者としてやって来たんです」
ひととおり説明を聞き、ジュンヒョクが頷く。「28年ぶりか」
ジュンヒョク「なぜ爆発したんだ?うちがやったのか?」
ソヌ「我々ではありません。事故だったのか、別の組織がやったのか」
ジュンヒョク「…。」
ソヌ「今ご覧になっている資料はうちのデータベースにあった情報で、詳しいことは分かりません」
ジュンヒョク「OK.科学捜査の結果はどうなった?ウナ」
質問がウナに移る。
ウナ「はい。注射器から指紋は見つかりませんでした。成分はタンパク質合成化合物の一種なんですが、ごく少量が血液の中に入っただけでも3分以内に死亡するそうです。万が一に備えて、解毒薬を作っておくとのことでした」
「解毒?」ヒョンテが皮肉な笑い声をあげる。「3分なら解毒剤を持って来る間に死んじまうだろ」
ウナ「手首にぶら下げといてあげますよ、先輩」
ソヌ「…。」
ジョンヒョク「OK. 今日はお疲れ。ここで出た話は極秘だから、みんな口に気をつけろよ。いいな?それからファン・ギチョルについて分かったことは何でも俺に報告してくれ」
話を聞きながら、ソヌは何気なくPCの画像を切り替える。
そこに表示された女性軍人の顔に、ソヌは目を細めた。
ソヌ「?」
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個人ブースへ戻り、ソヌは再び資料写真に見入る。
画面には、軍人ファン・ギチョルの写真と共に、女性軍人の写真が並んでいた。
彼は女性軍人の顔をズームアップしてみる。
ソヌ「…。」
そこへヒョンテがやって来て声を掛けた。「行くぞ」
ヒョンテ「地下資料室の閲覧許可が出た」
二人は連れ立って歩き出す。
ヒョンテがチラリとソヌのPCを振り返った。
ヒョンテ「どうだ?他に怪しいヤツは見つかってないのか?」
ソヌ「…えぇ、そうみたいですね」
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地下の資料室は蛍光灯をつけても薄暗い。
埃っぽく、ヒョンテが咳払いをした。
ヒョンテ「94年度以前の資料のうち、データベースに入っていないものが全部こうして置いてあるんだ。言葉通り”情報のゴミ箱”だ。だが、このゴミ箱からも宝物が出ることがある。誰かを攻撃する武器が出ることもあるからな」
「それにしても、全部調べるのにどれだけ掛かるんだ?」ヒョンテが咳き込む。
ソヌは黙って書架へと進んだ。
彼が足を止めたのは、『1991-1994 瀋陽』と書かれた箱の前。ここは中国方面の棚だった。
少し進むと、『1987-1990 瀋陽』の箱が目に留まる。
ヒョンテ「おい、ここへは初めてじゃなかったのか?」
ソヌはその箱を迷わず取り出した。「これ以上我慢できません」
ソヌ「今度こそファン・ギチョルを捕まえます」
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ユンジンは旅行会社の窓口に復帰していた。
デスクに着いた途端、携帯が鳴り始める。「…。」
『発信番号表示制限』
周りを窺い、彼女は困った顔で画面を見つめた。
店の前には、キチョルの手下が3人も彼女を見張っている。
彼女は恐る恐る電話を取った。「…もしもし」
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ソヌとヒョンテは、地下資料室の一角に設けられたデスクで、資料をめくっていた。
ヒョンテ「これだと思っても、もう一度疑わなきゃダメだ。焦ると人は自分の見たいように見るからな」
「答えが出るまで、答えを出すべからず。いいな」ヒョンテが机をコツンと叩く。
ソヌは返事をする代わりに、小さく微笑んだ。
ヒョンテが手を伸ばした次のファイルから、一枚の写真がはみ出しているのを、ソヌはチラリと見る。
ヒョンテ「失敗経験から学んだことだから、肝に銘じろよ」
ソヌ「昔のことは全部忘れたんじゃなかったんですか?」
ヒョンテがふっと笑う。「ありゃ嘘だ」
ヒョンテ「今でもときどき悪い夢を見るんだが、おかしなことに顔が思い出せないんだ。あの事件は昨日のことのように鮮明なのに、俺の前であんなことになった… 」
ソヌ「…。」
ヒョンテ「… あいつの顔は、夢の中でもぼんやりしてるんだ。こんなことなら写真でも撮っておくんだった、馬鹿だな…」
ヒョンテは手に持ったままだったファイルを机の上に戻し、頭を抱えた。
『瀋陽爆発事件』
ソヌ「それなら、先輩の写真は僕が撮りますよ」
ソヌはニッコリ微笑み、ヒョンテが机に戻したファイルに手を伸ばした。
ヒョンテ「遺影か?お前のは俺が撮ってやる」
ソヌは『瀋陽爆発事件』のファイルをめくった。
一級秘密と押印された資料に、事件に関する記録が記されている。
事件の概要、死亡人数、死因…。
数枚めくると、そこに写真が現れた。「…。」
ヒョンテ「おい、それじゃないのか?ファン・ギチョルの爆発事故。そうだろ?」
「…。」ソヌは何も言わず、そっと資料を閉じる。
そこへ溜息をつきながらウナがやって来た。「カビ臭い!」
ウナ「何か見つかりました?」
ヒョンテ「あぁ、見つかったから。こっちへ入って来ないで、そこにいろ」
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彼らは棚から出した『1997-1990 瀋陽』の箱を手に、資料室を出た。
ウナ「ねぇ、さっきさ、今晩あんたの家に行くって情報入手したんだけど」
「おおげさに思うなよ」気の乗らない様子のソヌに、ウナは口を尖らせる。
#3人しかいないのに、今日まで知らされてなかったウナ…。
ウナ「先輩は行くんですか?」
ヒョンテ「どこに?」
ウナ「ソヌの家」
ヒョンテ「何で行くんだよ?自分の実家にだって行かないのに」
「お前は?」ソヌがウナを振り返る。
ウナ「いやまぁ、約束もないから行ってもいいけど。お母さんは何がお好きなの?」
ソヌ「…。」
ウナ「誤解しないで。手ぶらで行くのもどうかと思ってさ」
ソヌ「さぁ… 何が好きかな」
ソヌがぼんやり考えるのを、ウナは期待のこもった顔で待った。
ソヌ「身体にいいものかな」
適当に答え、ソヌはウナを置いて歩き出した。
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食事の準備を進めながら、ヘリムはリビングの夫に視線を移す。
彼はノートPCと睨めっこを続けていた。
ウソクがリビングのテーブルの下へ頭をもぐらせる。
天板には、昨日試したプレートが裏から貼り付けてある。
天板の上からスマートフォンを置くと、彼はPC画面へ戻った。
そのとき、ヨンソが帰って来る。
ウソクはさっとノートPCを閉じ、娘を笑顔で迎えた。
ヨンソはダイニングテーブルの皿に掛けてあるラップを少し剥がし、当然のように一切れつまむ。
同時にそこに置いてあった携帯が鳴った。
ヨンソ(電話)「もしもし。はい、そうです。替わりましょうか?」
ヨンソはチラリと母を見た。
ヨンソ(電話)「あのときの叔父さんでしょ!叔父さんも今日いらっしゃるんですか?」
ヘリムは慌てて電話を取り上げた。「さっさと着替えてきなさい」
ヘリム(電話)「もしもし」
キチョル(電話)「母親に似て勘が鋭いな」
ヘリム「何の用?口を出さないでって言ったでしょう?」
キチョル「ニュースを見てみろ。お前のことやってるから」
「?」ヘリムはすぐさまテレビのスイッチを入れる。
チャンネルを切り替えると、ニュースが始まった。
『地下鉄爆弾テロ 被疑者が自首』
アナウンサー「私製爆弾テロ事件の被疑者が自首しました。事件発生後…」
キチョル(電話)「プレゼントだ。しっかりやれ」
電話はそこで切れた。
呆然と立ち尽くすヘリムに、立ち上がったウソクが寄り添う。「心配するなよ」
ウソク「全部上手く行くさ」
+-+-+-+
辺りは暗くなっていた。
ヒョンテはコンビニでおにぎりを買い、食べながら歩く。
そこへ、一台のバンがやって来て停まった。
ヒョンテ「?」
中から顔を覗かせたのはジュンヒョクだ。「乗れよ」
乗り込んだヒョンテは口をモグモグさせながら車内を見渡す。
車内には作動中のハイテク機器がズラリと並んでいた。
ヒョンテ「これから作戦でも?車まで出して」
「食事がまだだったら、これを」ヒョンテはコンビニの袋に手を伸ばした。
ジュンヒョク「こんなもの食うわけないだろ。そんなことしてないで、ソヌの家へ行って一緒に飯を食おう。和気あいあいと話をしてな。お前にやってもらうことがあるから、そのつもりでいろ」
ヒョンテ「和気あいあいねぇ。キム・ソヌに何かあるんですか?」
ジュンヒョク「そんなんじゃない。何を考えてるか知らないが、お前の考えてるようなことはないから、変に勘ぐるな。うちに必要なものが向こうの家にあるんだ」
「えぇ、えぇ」ヒョンテが頷く。
ヒョンテ「率直に言いますがね、最近他のことでお忙しいようですけど、うちと関係があることなんですかね?」
ジュンヒョク「関係ない。無駄に頭を使うなよ」
ヒョンテ「いや、頭を使ってるわけじゃなくてね、主任より頭が悪いから訊いてるんですよ、純粋に」
ジュンヒョク「俺も純粋に言うがな、お前の気持ちがわからないわけじゃない。おとなしく刀を研いでろ。後でチャンスをやるから、黙って言われたとおりやれ」
疑わしい目で、ヒョンテはおにぎりを口に押し込む。
「おい、行くぞ」ジュンヒョクが運転席に声を掛けた。
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携帯を見ながら職場の駐車場へ降りてきたソヌは、そこで爆弾テロ犯自首のニュースを見た。
ソヌ「…。」
ちょうどそこへ電話が鳴る。「あぁ、ユンジン」
ユンジン(電話)「ソヌさん、悪いけど仕事が遅くなりそう。待ってないで先に帰ってて」
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「うん、じゃあ後でね」そう言うユンジンの声は、微かに震えていた。
電話を切ると、隣にいた男の顔が見える。キチョルだ。「よくやった」
二人は車の中にいた。
キチョル「道すがら話すことがたくさんあるからな」
ユンジン「…。」
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車に乗り込んだソヌは、どこか思い詰めた表情だ。
北朝鮮の軍人の中にいた女性の顔…
そして、地下資料室で見つけた写真… そこにも女の姿があった。
ソヌ「…。」
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ソヌが家の玄関を入ると、リビングのソファから一斉に両親が立ち上がった。
ウソク「!」
ヘリム「!」
ソヌ「?」
ヘリムがソヌの後ろを覗く。「他の人たちは?」
ソヌ「すぐ来るはずだよ」
部屋へ戻るソヌを、ヘリムたちは並んで突っ立ったまま見送った。「…。」
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自室へ入ると、ソヌはすぐに棚から何かを取り出した。
アルバムだ。
ページをめくっていくと、小さな頃の古い写真が現れる。
母と並んでいる一枚を、彼は食い入るように見つめた。
そこへヘリムが入ってくる。
ヘリム「部署の人たちはみんな来るのよね?」
笑いかける母の顔を、ソヌは無遠慮にじっと見た。
ヘリム「何?お母さんの顔に何か付いてる?」
ソヌ「あ… 俺のことでお母さんに苦労掛けちゃったな。ごめんね」
ヘリム「苦労だなんて。母親として当然すべきことよ」
ニッコリ笑ったヘリムは、ソヌの机に視線を移した。
アルバムだ「?」
「あ、そうだ」ソヌが少し慌てたように、母と机の間を遮る。
ソヌ「一人は来られないって言ってたけど、まだハッキリしないんだ」
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「受け取れ」路肩に停めた車の中で、ジュンヒョクが小さな機材をヒョンテに差し出した。
ジュンヒョク「ふざけた真似しないで、言われたとおりにやれよ。あとはこっちでやるから」
小さなケースを開けると、黒いゴマ粒のような物が二つ。
ヒョンテは慣れた手つきでそれを耳にとりつける。極小のイヤモニターのようだ。
ヒョンテ「ウナにも何か指示を?」
ジュンヒョク「あいつに何やらせるんだ?下手に指示したら、あれこれうるさく訊いてくるだろうに」
ヒョンテ「それがいいですよ。あいつにまで汚い真似させる必要ありませんから」
ジュンヒョク「汚い仕事は俺とお前だけでやろう。同期同士な」
「同期同士ね」ヒョンテが笑う。
ジュンヒョクは車のドアを開けた。
ヒョンテ「今度はどこに?」
ジュンヒョク「これに乗って行くのか?手ぶらじゃいけないだろ」
ヒョンテ「いやぁ、きめ細かいですねぇ。国家情報院の宝石だって言われるだけのことはある」
+-+-+-+
ジュンヒョクとヒョンテがソヌの自宅へやって来た。
「キム・ヒョンテです」「こんばんは、お父さん。私がソン・ジュンヒョクです」二人が順に頭を下げる。
ウソクはニコヤカに彼らと握手を交わした。
ジュンヒョク「電話で先にご挨拶したせいか、初めてお目にかかる気がしませんね」
ヒョンテの目が、ウソクの隣で微笑んでいるヘリムへと移る。
彼の視線はなぜかそこで釘付けになった。「…。」
「ヨンソ!ご挨拶しなさい!」ヘリムに呼ばれ、ヨンソが部屋から出てくる。
「こんばんは」ヨンソが頭を下げても、ヒョンテの目がヘリムから離れることはない。
ヘリム「?」
ソヌの視線も動いた。「?」
ジュンヒョク「どうした?」
ヒョンテ「あ、いえ。すごく驚いて。お母さん、とてもお若くて美人でいらっしゃいますね」
ソヌ「…。」
ヒョンテが手土産をソヌに差し出した。
ヒョンテ「だからお前も男前なんだな。幸せ者め。俺を見てみろ」
「そうだ。こいつを見ろ」ジュンヒョクも隣で笑う。
彼も手に持った紙袋を差し出した。「アメリカ出張で手に入れたものなんですが」
ヘリム「あら!こんな高い物いただいていいのかしら」
ジュンヒョク「どうぞ」
そこへチャイムが鳴った。
「私が一番最後ですか?」ウナだ。
入ってくるなり、ウナは張り切って手土産を差し出す。「紅参なんですけど、お母様が気に入ってくださるかどうか」
ヘリム「最近手足が冷えて困ってたんです。ありがとうございます!」
「いえいえ」ウナは嬉しそうに俯いた。
ソヌ「…。」
+-+-+-+
全員が食卓を囲み、食事が始まっていた。
依然としてヒョンテはヘリムが気になって仕方がない。「あ、そうだ」
ヒョンテ「お母さん、以前中国にいらっしゃったんですよね?そのときお父さんに出会われたんですか?」
ヘリム「当時、韓国と中国で極秘に協議することがありましてね」
ヒョンテが頷く。
ヘリム「そのとき、夫が韓国側の代表の一人で、私が通訳だったんです。いろいろ事情があって協議は合意に至らずに終わったんですけど、私が代わりにこの人をパッと捕まえたんですよ」
ウソク「いやぁ、これは国家機密だったのに、オープンにしてよかったのかどうか」
ウソクの冗談に皆が笑う。
たった一人、ソヌだけは浮かない表情で時計を見た。
+-+-+-+
静かに黒いバンが入ってくる。
キチョル「指示通りやれ。怪しい動きがあったらすぐ知らせるんだ」
ユンジン「まさか家を襲うつもりじゃ?」
キチョル「筋書きは君の仕事じゃないと言ったはずだ」
ユンジン「!」
ユンジンは一人、車を降りた。
キチョル「平壌で元気に暮らしてる両親のことを考えろ」
ユンジン「…。」
#両親の居所も握られている、ということですね。
+-+-+-+
力なく歩いて行くユンジンを、停めてあった車の中から男がチラリと見る。
ジュンヒョクにいつも付いている男だ。
ユンジンが通りすぎるのを見送ると、彼はふと向こうに停まっているバンに目を止めた。「?」
+-+-+-+
食事は続いていた。
ヒョンテ「ソヌ、それならお前も中国に知り合いが大勢いるんだろうな。親戚とはマメに連絡取ってるのか?」
ソヌ「いいえ、知り合いは一人もいないんです。みんな亡くなったり、連絡が途絶えて」
ソヌとヘリムが黙って顔を見合わせる。
「叔父さんがいるでしょ」ずっと携帯を触っていたヨンソが口を挟むと、ヘリムがすかさず話を逸らした「そうだわ!」
ヘリム「企画財政部ではどんな仕事をなさるんです?いくらソヌに聞いてもよく分からなくて」
「えぇ、私たち企画財政部では…」ヒョンテがたどたどしく説明を始めた。
ヒョンテ「経済政策の中でメリット・デメリットを調べて、適応できるものを予め…」
そこへ電話が鳴り始める。ソヌの携帯だ。「もしもし」
「着いたんだな。すぐ出るよ」彼は立ち上がる。
玄関を開けると、ユンジンが緊張した面持ちで立っていた。
ソヌ「いらっしゃい」
ユンジン「…。」
ソヌ「早く入りなよ」
ヘリムが玄関近くまでやって来る。
ソヌ「母さん、ユンジンも呼んだんだ。いいよね?」
ヘリム「えぇ、もちろん。ユンジンさん、いらっしゃい」
ソヌ「他人行儀はやめてよ。これからしょっちゅう会うのに」
ユンジン「はい、楽にお話しください」
「癖になってるの」ヘリムは静かに微笑んだ。「分かりました。いえ、分かったわ。どうぞ入って」
ソヌが先にダイニングへ戻ると、ヘリムの厳しい視線がユンジンへと飛んだ。
+-+-+-+
「僕の彼女です」ヘッドフォンからソヌの声が聞こえてくる。
ソヌ(声)「結婚する前に、みんなのいる席で紹介したくて」
キチョルは車の中で思わずふっと笑った。
+-+-+-+
ユンジンの来訪に、皆が食事を中断し、立ち上がる。
ジュンヒョク「ソヌさんには彼女がいたんだな、ウナ。知らなかったが」
ウナ「あぁ~」
ジュンヒョク「美人だな」
ヒョンテ「良かったな、俺も知らなかった」
皆に歓迎され、ソヌの顔にようやく笑顔が見える。
ヘリムとユンジンが無言で視線を合わせた。「…。」
ユンジン「こんばんは、イ・ユンジンです」
「よく来たね」何も知らないウソクが微笑みかけた。
+-+-+-+
ジュンヒョクたちが途中まで乗って来たバンで、エンジニアがイヤホンに耳を済ませ、モニターを見る。
モニターには家の構造が表示され、人間の動く様子が丸い印で記されていた。
#何これ!
ウソクがジュンヒョクと共にリビングのソファへ移動する。
「お母さん、私がやります」ユンジンがヘリムのいるキッチンへ向かった。
「なにしに来たの?」蛇口を捻り、淡々とヘリムが言う。
ユンジン「手伝いに来たんです」
ヘリム「あなたの手伝いはいらないから、戻りなさい」
ユンジン「…。」
「二人で何話してるの?」不意にすぐ後ろで聞こえたソヌの声に、二人は驚いて振り返る。「!」
ヘリム「あぁ!自分がやるってしつこいのよ。お客さんなのに」
ユンジン「シンクに近づかせて貰えないの」
ソヌ「母さんは休んでて。俺たち二人でやるよ」
そこへウナが器を運んでくる。「ご馳走様でした」
ウナ「(ユンジンに)あ、ちゃんとご挨拶してませんよね。ちょっと待って、名刺を…」
戻ろうとしたウナにユンジンが言った。「ウナさん」
ウナ「?」
ユンジン「お久しぶりです」
ウナ「会ったことありました?」
ユンジン「んー、私しか覚えてないと思います。寝ていらっしゃったので」
ウナ「???」
ソヌ「お前が酔った日だよ」
ウナ「あの日!いらっしゃったんですか?」
「あー、バカバカ!」ウナは自分の額をペシペシと叩いた。
ウナ「すみません。元々そんな人間じゃないんですけど、あの日は一体どうしちゃったのか。それに、よりによってどうしてそんな時にユンジンさんに会っちゃったのか…」
ヘリムに目配せされ、ダイニングに居座っていたヨンソが渋々立ち上がった。
「お姉さん」ウナに話しかける。「留学してたんですよね?」
ヨンソ「それじゃ英語上手いんだろうな」
ウナ「うん、まぁちょっとね」
ヨンソ「ちょっと英語の勉強見てもらえませんか?」
「わぁ、それは素敵!」ここぞとばかりにヘリムが煽る。
ウナ「♪」
ヘリム「あ… 失礼だったかしら?」
ウナ「いえいえ、お母さん、失礼だなんて!」
「行きましょ」ウナはヨンソに腕を引かれ、あっという間にいなくなった。
ヘリム「あ、そうだ。ウッカリしてたわ。今日、分別ゴミの日なのよ」
ユンジン「お手伝いします、お母さん」
「洗い物はあなたがやってね」ユンジンは洗い物をソヌに頼み、ヘリムの後について奥へ入っていった。
ソヌ「…。」
母とユンジンの様子を気にしながら、ソヌはシンクの皿に手を伸ばす。
一人、ダイニングに残って酒をすすっているのは、ヒョンテだ。
小さく鼻歌を歌う彼の耳に、車にいるエンジニアから指示が飛んだ。「キム・ソヌのPCに近づいてください。早く」
+-+-+-+
ここで一旦区切ります。
ソヌが冴えない表情をしている原因が、例の北朝鮮の女軍人に関する疑惑と、母とユンジンの間柄、二つあるんですよね。
ソヌの心境が捉えづらくて、見ていてちょっとモヤモヤします。
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Comment
ありがとうございます~o(^o^)o
頭の中がぐるぐるしてますけど、、、(^o^;)
面白いです!
のめり込んでます~