韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

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主君の太陽10話あらすじ&日本語訳 vol.1

   

どうにも世界的ピアニストには聴こえないタッチでも、なんとなく「世界的ピアニストなのかな?」と思わせちゃう、有無を言わせぬキングダム・マジック。
本日もそんなキングダムが舞台の「主君の太陽」10話です。

恋愛もののドラマを見ていて、一番面白いのがこの8~10話あたり!
気持ちがクレッシェンドで高まり、自分の心に戸惑い、相手を想って孤独を感じる。
気持ちが通じ合うまでの上り坂が堪らなくいいのです♥

それぞれ自分の気持ちに気付いているチュ君とテ嬢。
正体を明かし、テ嬢の秘密も知ったカン・ウは、私の思惑通り心置きなく2番手男子の王道を進んで悶絶させてくれるのでしょうか。
こちらもめちゃくちゃ楽しみ!

【注】2番手男子の王道とは?(笑):一途にヒロインを思い、見守り、手を差し伸べ、見返りを求めずに無償の愛を注ぐ。そして、美味しいところは一番手に譲り、報われない思いにひとしれず苦しむ男子。本作と同じホン姉妹の作品で言えば、シヌヒョン@美男がわかりやすい存在。2番手男子に入れ込む傾向のある私は、切なさに何度床をのたうちまわったことか。2番手組合メンバー募集中♪

1581

本日の一番カッコいいチュ・ジュンウォン社長

こほん、では始めましょう。

+-+-+-+

待ちに待ったチュ君が中国から帰ってきた!
大喜びで彼を探すテ嬢の前に現れた彼は…見知らぬ若い女性を連れていた。

まるでテ嬢のことなど最初から知らないかのように目の前を通り過ぎるチュ君の冷たい表情に、
驚いたテ嬢は彼から目を離すことが出来ず、ただただ彼を見つめた。

叔母「会えて嬉しいわ、ソヒョンさん」
副社長「こんにちは」
ソヒョン「はい。私もお会いできて嬉しいです」

ソヒョンは出迎えた叔母たちに笑顔で頭を下げると、呆然と立っているテ嬢が気になり、振り返った。

叔母「行きましょう」

歩き出したソヒョンは立ち止まり、もう一度テ嬢を振り返ると、チュ君に声を掛ける。

ソヒョン「あのお嬢さん、こちらの職員ですか?」

#”お嬢さん”って、どうみてもあなたの方がだいぶ年下ですけどね

ソヒョン「ずっと見てますね」
チュ君「(硬い表情でソヒョンに)見てないで早く行きましょう。我慢の限界だ」

そう言って歩き出そうとしたチュ君は、苦痛で微かに顔を歪めた。

チュ君「先に行ってて」

チュ君は踵を返した。

チュ君「(テ嬢に)1週間元気だったか?」
テ嬢「…。」

テ嬢は彼の顔を見ることが出来ず、黙って俯いた。

チュ君「何ともないようだな。俺は死ぬ思いだったのに」

テ嬢が初めて恨めしそうに顔を上げ、彼を上目遣いに見た。

テ嬢「社長、本当に結婚されるんですか?」
チュ君「…。」

1週間ぶりにテ嬢の顔をまっすぐ見つめたチュ君。
彼の頭のなかには、ルイ・ジャン夫人の言葉が蘇る。

「気にならないの?この人があなたのことどう思ってるか」

チュ君「(呟く)何が秘密だ。まる見えじゃないか」
テ嬢「?…何がまる見えなんですか?」
チュ君「俺にとっては幽霊と同じくらい怖ろしいものがな」
テ嬢「私のこと避けたくて結婚されるんですか?」
チュ君「テ・ゴンシル、俺に影響をあたえるほど、自分が重要人物だと思ってるのか?」
テ嬢「…いいえ」
チュ君「それなら、お前が理由を尋ねる資格も、俺が答える義務もないな」
テ嬢「…えぇ」

頷くテ嬢をしばらくじっと見つめると、彼は足早に彼女の前を立ち去った。

テ嬢「…。」

+-+-+-+

社長室の前へチュ君がやって来ると、ソヒョンがそこで待っていた。

ソヒョン「叔母様は先にお入りになりました。行きましょう」

彼女がチュ君の腕を取ろうとすると、彼は素早く手で制した。

チュ君「前にも言ったとおり、人に体を触られるのは嫌なんです。たとえ倒れそうだとしても、出来ることなら触れないでください」

その様子を、偶然やって来たカン・ウたちが見かける。
チュ君の様子に、ハンジュが溜め息をついた。

ハンジュ「うちの主君、結婚相手に対してもホントに薄情だな」
カン・ウ「…。」
ハンジュ「触らせないような相手と何で結婚するんだ?」

カン・ウは何も言わず、チュ君の後ろ姿を見つめた。

+-+-+-+

休憩室の階段に座りこんでいるテ嬢の手元で、太陽のネックレスが揺れていた。

テ嬢「早く言ってよ。電話にも出ないで…」

やって来たカン・ウが彼女の寂しげな後ろ姿を見つけた。

カン・ウ「テ・ゴンシルさん」
テ嬢「…カン・ウさん」

テ嬢はネックレスをさっと後ろに隠し、立ち上がる。

カン・ウ「チュ・ジュンウォン社長が結婚するって、知らなかったんですか?」
テ嬢「えぇ。あんまり突然で、どうしていいか分からなくて…」
カン・ウ「ルイ・ジャン氏の公演の日、チュ・ジュンウォン社長は出張に出掛けるなり戻ってきてたでしょう?」
テ嬢「…。」
カン・ウ「あのとき… 何かあったんですか?」
テ嬢「あの日、戻ってきたんですか?」

彼女はぼんやりと視界に映った後ろ姿を思い出した。

テ嬢「それじゃ、あのとき見たのは社長だったのかな?」
カン・ウ「やっぱり…あなたに会いに来たんですね」
テ嬢「私、あのとき正気を失ってて、自分が自分でなかったんです。はっ!奥さんの幽霊が入って来たときに社長に会ったんだわ…」
カン・ウ「?」(←このカン・ウがよくする表情。相手の真意をさぐるように目を覗きこむの大好き

1575
テ嬢「二人で何話したんだろう?」

「何が秘密だ…まる見えじゃないか」チュ君の言葉が蘇った。

テ嬢「私の秘密を話したみたい…!」
カン・ウ「…秘密ですか?」
テ嬢「社長のこと好きだって話しちゃったみたい!」
カン・ウ「!」

#あ゛ーあ゛ーあ゛ー

テ嬢「どうしようー!」

+-+-+-+

社長室で二人になると、キム室長はチュ君に訴えかけた。

キム室長「いくらビジネス上必要であっても、結婚をこんなふうに利用していいんですか?」
チュ君「いいんです。(自分の頭を指す)ここで計算し、答えの出たことだから」
キム室長「テ嬢はものすごく驚いて、気が動転していたようです。どうなさるおつもりですか?」
チュ君「あいつのことでいくら計算しても答えが出ないのは、(頭を指す)ここじゃなくて… 別のところに入り込んでいたからです。自分でもえらく驚きましたが、一応は認めますよ」
キム室長「それなら当人にも言ってあげるべきでしょう。結婚するわけじゃないことも」
チュ君「嫌です」

彼は初めてキム室長の方へ向き直った。

チュ君「キム室長、僕が今でも文字を読ま…、読めないのは、頭でなく心の問題です」
キム室長「…。」
チュ君「うまく動いている頭だけで生きていきたいんです」
キム室長「テ嬢は霊魂の見える人だから、社長の抱えている問題をしっかり見つめて、包み込んでくれるんじゃないでしょうか」
チュ君「いつか死ぬ日が来れば、そのとき幽霊になって会いに行きますよ」

デスクに戻るチュ君。
キム室長は言葉もなく、窓辺に立ち尽くした。

+-+-+-+

テ嬢とカン・ウは顧客センターに来ていた。
まだぼんやりとしているテ嬢を、そばでカン・ウが見守る。

テ嬢「私を突き放そうとしてるんだわ。私、社長がいなきゃ駄目なのに…」
カン・ウ「テ・ゴンシルさんが逃げこむ場所は、彼じゃなきゃいけないんですか?」
テ嬢「世界でたった一人の人なんです。バカみたいにしがみついて、やっとのことでそばにいるのを許してもらったのに」
カン・ウ「結婚すると言って他の女性を隣に立たせたのは、女として自分のそばに立つなという意味でしょう」
テ嬢「(溜め息)結婚するのに… 私が好きだって分かっちゃったら、消えろって言うでしょうね」

カン・ウの口調が強くなる。

カン・ウ「彼のことが好きなんでしょう?」
テ嬢「…。」
カン・ウ「ないがしろにされて、辛くないんですか?」
テ嬢「(溜め息)カン・ウさんの世界から見れば、私はキャンディーで、社長は白馬に乗った王子様でしょう?」
カン・ウ「…。」
テ嬢「でも、私の世界から見れば、自分はオバケが見えるただのレーダーで、社長は私が隠れられる防空壕なんです。私はキャンディーになっちゃいけないの。彼は王子様になるつもりはないから」
カン・ウ「…。」
テ嬢「それでもレーダーとしては役に立つから、そばにはいさせてくれるみたい…」

「私、行かなきゃ」テ嬢は唐突に立ち上がり、カン・ウを残して出て行った。

カン・ウ「…。」

+-+-+-+

テ嬢がそっと社長室のドアを開けると、視線を上げたチュ君は耳につけていたイヤホンを外し、腕を組んで身構えた。
ぎこちなく微笑み、テ嬢は彼の前へと歩み出た。

テ嬢「社長、結婚…おめでとうございます」
チュ君「何だって?」
テ嬢「さっきはあんまり驚いて大事なことを言えなかったんです。結婚、おめでとうございます。幸せになってください」
チュ君「どうした?怖いな」
テ嬢「もう社長は他の人のスイートホームになるんだから、防空壕でいるのは負担だろうけど、なくしてしまうんじゃなくて…」
チュ君「…。」
テ嬢「地下2階くらいは残してくれたら、私、邪魔にならないようにこっそり使っちゃ駄目ですか?」
チュ君「スイートホーム?俺は甘いモノは嫌いだ」
テ嬢「それなら…(明るく)早く息子さんを作ってください」
チュ君「?!」
テ嬢「社長とおんなじ能力のある息子さんを作って私に預けてくださったら、私、タダでお世話しますから!」
チュ君「いきなり入って来て、どこまで行くつもりだ?息子を作れと?」
テ嬢「…。」

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かすかに苦笑いまで浮かべていた彼は、急に厳しい表情で立ち上がった。
視線で彼女を捉えたまま、デスクをぐるりと彼女の方へ回りこむ。

チュ君「テ・ゴンシル、お前…。クルミを割らせた夫人との秘密のせいか?」
テ嬢「私の秘密…あの奥さん話したんですか?」
チュ君「聞かなかった。秘密は隠したいものなんだから、わざわざ聞く理由もないだろう。だから、聞かないと丁重にお断りした。(笑顔)ありがたいだろ」
テ嬢「(安堵)そうだったんですか。…たいしたことじゃないんです」
チュ君「聞かないことにはしたが、お前の様子を見てるとまる分かりだな」
テ嬢「(ドギマギ)」
チュ君「(楽しそう)雑すぎて、隠すつもりがあるのか、どうにも疑わしい」
テ嬢「…。」
チュ君「いきなり入って来て、おめでとう?お幸せに?」
テ嬢「(萎縮)」
チュ君「寂しくても悲しくても泣かないって主張する、(キャンディーの真似)かの有名なあの子と同じパターンじゃないか」
テ嬢「…。」
チュ君「いや、むしろ簡単なことだ。頑張って祝っておいて、俺のスイートホームの地下2階に入荷して、今後生まれるリトル防空壕のおばになるって?バツが悪いだろうから、何も聞かなかったことにしてやる」
テ嬢「…。」
チュ君「いいな」

俯いて黙っているテ嬢を前に、チュ君は満足気に腕を組んだ。
一通り聞いたところで、テ嬢が顔を上げた。

テ嬢「何か誤解なさっているようですけど」
チュ君「?」
テ嬢「私があの奥さんに話した”好きな人”、社長じゃありません。他の人なんです」
チュ君「…。」(←まる分かりなのはこの人
テ嬢「誰だか分かってるでしょう?私ね、甘いのが大好きなんです」
チュ君「…。」
テ嬢「それにね、これまでは防空壕だと思ってそばにいたけど、女の目で見たら社長みたいな酷い男は大っ嫌いなんですから!」
チュ君「あぁ。お前の趣味じゃなくてありがたいね」
テ嬢「それじゃ、消えろって言われる前に出て行きますね」
チュ君「!」
テ嬢「その言葉、ホントに気分悪かったんですから!」

勢いよく出て行こうとするテ嬢。

チュ君「待て!」
テ嬢「!」
チュ君「消えろ!!!」
テ嬢「…。」

テ嬢は泣き出しそうな顔で社長室を出て行った。

チュ君「言い訳にするなら他のものにしろ。なんでよりによってカンキャンディなんだ!」

1582

+-+-+-+

沈んだ表情で出て来たテ嬢を見て、キム室長が思わず立ち上がった。
涙をこらえて顔を歪ませたテ嬢は、何も言わず去っていく。
キム室長は恨めしそうに社長室のドアを見た。

+-+-+-+

テ嬢はチュ君の叔母に呼び出され、副社長室へやって来た。

#呼びに来たアン代理はこの一瞬のために気合を入れてこんなにオシャレをして来たのか?泣ける

ルイ・ジャンのミューズという位なら芸術を見る目があるのだろうと、叔母はある美術品をテ嬢に見せる。
それは、チュ君の結婚祝いに、先方の家から贈られたものだと言う。

壺を少し持ち上げ、中を覗きこんだテ嬢は、底に何かが潜んでいるのに気づき、驚いて壺を落とした。
壺はかろうじて元の箱へ収まる。副社長が慌てて壺の無事を確かめた。

テ嬢「ごめんなさい。驚いて…」
叔母「(落ち着き払って)驚いたようね。やはりお嬢さんが扱うには手に余る品物だわ。割れたらどうするつもりだったの?」
テ嬢「…。」
叔母「考えただけでも怖ろしいでしょう?触れるんじゃなかった…そう思った?」
テ嬢「はい。そんな物には触らないでください。よくありません」
叔母「え?」
副社長「テ・ゴンシルさん。これは”そんな物”とよぶには余りに高貴な白磁ですよ」
テ嬢「それは今みんなで高貴だ高貴だって褒め上げるからですよ。もともとはただの水桶だったはずです」
叔母「…。」
テ嬢「誰でも触れるものじゃないなんて、そんなことむやみに言わないでください。図に乗って傲慢になりますよ」
叔母「何ですって?!私に言っているの?!」
テ嬢「いえ…私、この壺のことを言ってるんです」

気まずくなった副社長はそっと席を立った。

叔母「いい?この壺に当てつけてチュンウォンの結婚を壊そうなんて思わないことね」
テ嬢「…。」
叔母「敢えて優しく話してあげたものを、何ですって?図に乗って傲慢になる?!」
テ嬢「ごめんなさい。私はただこの壺のことを言っただけなんです。この子(壺)はもともと水を溜めておく器だったのに、人がじっと見ていると気持ちがそこに込められて、妙なものが出て来ることがあるんです。使い方を間違えたら、本当に壊すしかなくなってしまいますよ」
叔母「優しく言って聞かせたんじゃ分からないの?どうやってでもチュンウォンの結婚を壊すつもり?!」
テ嬢「…。」
叔母「本当に危険な子ね!!!」
テ嬢「見えないから分かっていただけないと思いますけど…。私、社長のところへ行ってお祝いも言いましたし… この壺は下手に触ると大変なことになりますから、どうか気をつけてください」

テ嬢は席を立った。

テ嬢「それ…壊さなきゃいけないわ。惑わされる…」

テ嬢が逃げるように部屋を出て行く。
妙なテ嬢の様子に、今日も叔母たちはポカンと口を開けた。

副社長「パンシル、ファイト!」

+-+-+-+

顧客センターへやって来た姉は、テ嬢の前で泣きながら鼻をすすった。

姉「副社長室に呼ばれてひどい目にあったの?」
テ嬢「ちょっと怖かった…」
姉「手切れ金でも投げつけられたの?!」
テ嬢「ううん。おばけを見たの。気をつけるように言ったのに、分かってくださらなかった…」
姉「そうだったの…。みんながやたらと噂してるのよ。あんたが社長に言い寄って振られたって」
テ嬢「私がやってたこと… 他の人からみたら完全にキャンディーね。私の事情分かってくれるのはオバケだけ」

+-+-+-+

副社長室へやって来たチュ君は、壺をじっと睨んでいた。

叔母「結婚話が出たんだから、あの子には出て行ってもらうんでしょう?」
チュ君「そのつもりはありません。安全に置いておくために結婚話を持ちだしたんです」
叔母「これからもそばに置くつもり?あの子が出て行かないって?」
チュ君「僕が出て行かせないんです」
副社長「(チュ君の言葉にシビれる)」
チュ君「手放すわけにはいかないから、ひとまず結婚話で安全を確保して、これからも付き合います」

そう話しながら、彼はずっと腕組みをしたまま、壺から目を離さない。

叔母「いつまで?」
チュ君「僕が嫌になるまでです」
副社長「(酔いしれる)」

叔母は今度こそ言葉を失った。

壺を手にとったチュ君は、くるくると回して柄を確かめた。

チュ君「(呟く)これのせいで驚いたのか?」

#何か、↑この一言で泣きそうになった。完全に不意打ち。何を難しい顔して壺を睨んでるのかと思ったら、テ嬢のためだったんだ…。

副社長「とんでもなく高いものだったもんだから、びっくりして壊すところだったぞ」
チュ君「(まだ壺を調べる)高くて驚いたんじゃないはずだ」

チュ君は壺の中を覗きこんだ。

チュ君「何か憑いてたのか?」

しまいに、チュ君は軽く舌打ちをして乱暴に壺を箱のなかに放り込んだ。

副社長「ああっ!!!」
叔母「チュンウォン!!!」
副社長「金の自慢で脅かせる奴じゃないから、今後はやめてください」

壺を平手で叩き、チュ君は素っ気なく出て行った。

副社長「チュ社長、ファイト!」

+-+-+-+

イリョンはテ嬢の話を一笑に付した。

イリョン「”大きなテ嬢”がチュ社長と付き合ってるって?笑わせるわね。チュ社長はセジングループの娘と結婚するのよ」
同級生1「そうなの?キングダムホテルで働いてるミギョンが、イベントしてるところ見たって」
イリョン「ちょっと遊んだだけでしょ。正直、遊び相手にするにもレベルが合わないわ」
同級生2「どうして?大きなテ嬢がどうだっていうの?賢いし、可愛いし、スポーツもできるし、性格だっていいわ。”大きな太陽”がただの名前だと思ってるの?」
イリョン「(憮然)」
同級生1「私、キングダムホテルの社長と付き合ってるって聞いて、あの子ならそれもアリだと思ったわ」
イリョン「(テーブルを叩く)あんた!テ・ゴンシルを見れば目がさめるはずよ!会ってみる?めちゃくちゃビックリするわよ」

友人たちは目を見合わせた。

+-+-+-+

顧客センターで一人になると、テ嬢はなんとなく太陽のネックレスを取り出し、眺めた。
そこへ扉が開き、チュ君が顔をのぞかせる。
軽い調子でドアにもたれかかると、「大丈夫か?」と声を掛けた。

チュ君「壺に何が見えた?怖いものがついて来たんじゃないのか?」
テ嬢「ついて来てません。でも、危険だから気をつけるように伝えてください。私が話しても通じなくて…」
チュ君「なぜ俺のところに来なかったんだ?」
テ嬢「…。」
チュ君「お前が必要とするときに避けるとは言ってない。スイートホームの地下2階に防空壕を残しておけと言っておいて、(手を出し)なぜ使わないんだ?」
テ嬢「…正直に言ってもいいですか?」
チュ君「話せるのなら話してみろ」
テ嬢「…好きな人が誤解するかと思って」
チュ君「…。お前、まだそれをカンキャンディーだと言い張るつもりか?」
テ嬢「社長はまだそっちだと誤解するつもりですか?」
チュ君「誤解?」
テ嬢「前に見たアニメ映画で、雷の夜にオオカミとヤギが出会ったんです。オオカミは生きるためにヤギを捕まえて食べなきゃいけないんだけど、ヤギのことがすごく好きになって、食べられずに飢えて死にそうになるんです」
チュ君「…。」
テ嬢「生きるためには、食べ物は食べ物として見なきゃ。好きなヤギとして見ちゃ駄目なのに…。ホントばかみたいでしょう?私はそんなことはしません」
チュ君「つまり… (テ嬢を指し)オオカミが(自分を指し)ヤギを生きるための食料だと考えるって…?」
テ嬢「えぇ。だから、ヤギが好きなのかって、オオカミに聞くのはやめてください」
チュ君「まぁいい。オオカミはそういうことにして、ヤギはどうなんだ?」
テ嬢「ヤギもオオカミが好きなんです」
チュ君「それでどうなった?」
テ嬢「あんまり好きでこう言ったんです。”オオカミさん、私を食べてください”」
チュ君「!!!(←素直すぎる)そのヤギ、狂ってるな」

顔をしかめて首を振り、出て行くチュ君。

テ嬢「…だからって、オオカミがヤギを食べるわけないでしょう?好きなのに」

テ嬢は深い溜息をつき、自分の心を注意深く反芻するようにネックレスを指に絡めた。

+-+-+-+

社長室に戻ったチュ君もまた、計算のできないものと一人で悶々としていた。
「秘密を教えてあげましょうか?」… 聞くのを断ったその秘密が、モヤモヤと心の中を占めていく。

1577

チュ君「あのとき… 聞いておけば良かったかな」

+-+-+-+

カン・ウはチュ君父の意志をキム室長に伝えていた。

カン・ウ「チュ社長が本当に結婚するのなら、予定を早めて帰国されるそうです」
キム室長「…。」
カン・ウ「(微かに語気が強くなる)この結婚について、何と報告すべきでしょうか」

キム室長は重苦しい表情で目を開けた。

キム室長「実は…」
カン・ウ「…。」
キム室長「この結婚は偽物です」
カン・ウ「!!!」
キム室長「両者ともにビジネスなんです」

+-+-+-+

数日前。

中国で対面するソヒョンとチュ君に、結婚相手と会うような雰囲気は微塵もなかった。

チュ君「あなたの提案を受け入れれば、セジングループのトップが変わることになるんですか?」
ソヒョン「私は留学でなく流刑に遭ったんです。結婚を口実に韓国へ戻れば、継母に邪魔されることなく、病院にいらっしゃる父の借名株を手に入れられるはず」
チュ君「…。」
ソヒョン「私。セジンの持ち株会社をセジンセメントに替えるつもりです」
チュ君「結婚で煙に巻くのに1週間あればいいんですか?」
ソヒョン「協力してくださるなら、キングダムの上海進出にセジンという翼をつけて差し上げましょう」

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チュ君はテーブルの上に組んだ両手の指を、強く握った。

チュ君「その提案、受け入れましょう」

+-+-+-+

キム室長は事情をカン・ウに話して聞かせた。

キム室長「1週間経てば、なかったことになるかもしれない結婚です。会長には無理に日程を変更する必要はないと伝えてください」
カン・ウ「テ・ゴンシルさんは知っているんですか?」
キム室長「知りません。チュ君から話すまでは言っちゃ駄目ですよ」
カン・ウ「…承知しました」

+-+-+-+

チュ君の叔母はいとおしそうに白磁を撫でた。

叔母「華やかな青磁より上品な白磁の方が好きだわ。品のある儒生のようでしょう?」
副社長「むやみに触らないほうがいい。触ったら良くないって言ってたのに… 見るだけになさいよ」
叔母「馬鹿げた話だわ」

上品なものが好きな叔母は、目の前で靴を脱ぎ、足を掻く夫に眉をひそめた。
部屋から追い出し「私の趣味じゃなかったのに」と愚痴をこぼす。

叔母「私、品のある儒生のような男性が好きだったのに」

彼女が壺を撫でると、そこで若い儒生の顔がゆらゆらと揺れた。

+-+-+-+

壺をサイドテーブルに飾り、ベッドで眠っていた叔母は、妙な笛の音に目を覚まし、耳を澄ませた。

吸い寄せられるように歩いて行くと、そこには一人、笛を奏でている端正な儒生の姿。

叔母「どなたです?」

美しいその儒生は、問いかけに笛の音を止め、彼女を見上げた。

叔母「上品な儒生様が私をお呼びになったのですか?」

儒生はそっと彼女に手を差し伸べた。
無意識に近づき、彼に手を伸ばす。触れようとした瞬間、儒生は煙のように姿を消した。

叔母「!」

ハッとして目を覚ますと、彼女は寝相の悪い現実の夫に毒づいた。

+-+-+-+

テ嬢は保安室のカン・ウを訪ねていた。

テ嬢「副社長の部屋へ行ってみようと思うんです」
カン・ウ「一緒に行きましょう」
テ嬢「駄目です!カン・ウさんは行かないほうがいいですよ」
カン・ウ「幽霊が…いるんですか?」
テ嬢「そこで見たものがあるんです。それで確かめに行こうと思って。鍵だけ貰えれば行って来ますから」

ほんの少し下を向いて考えを巡らせた彼は、もう一度顔を上げた。

カン・ウ「一緒に行きます」
テ嬢「…。」
カン・ウ「確認できないと、僕も今後副社長室の前を通れませんから」
テ嬢「…。」
カン・ウ「鍵を持ってきますね」

二人が一緒に出掛ける様子を見かけたキム室長は、社長室へ向かった。

+-+-+-+

「まだいらっしゃるんですか?」

デスクで音声書類を聞いているチュ君に、キム室長が声を掛けた。

チュ君「出張後で片付けることが多いんです」
キム室長「…。」
チュ君「キム室長にしてもらうことは終わりましたから、先にお帰りください」
キム室長「はい」

チュ君に背を向けたキム室長は、今思い出したようにわざとらしく声を大きくした。

キム室長「テ嬢も帰るところだったから、一緒に出ようかな?」
チュ君「……。」
キム室長「いやいや、カンチーム長が送っていくだろうな」

咳払いをし、キム室長は社長室を後にした。

チュ君「………。これみよがしに…。俺は聞かないぞ」

+-+-+-+

チュ君が大急ぎで顧客センターの扉を開けると(がははは)
真っ暗な部屋には誰もいなかった。

チュ君「何だ?もう帰ったのか?」

+-+-+-+

テ嬢とカン・ウは人気のない副社長の部屋へゆっくりと足を踏み入れた。
懐中電灯を持つカン・ウの手が小刻みに震える。

テ嬢「カン・ウさん、怖かったら掴まってもいいですよ」

テ嬢が腕を差し出す。

カン・ウ「…。それじゃ、少し頼らせてください」

カン・ウは差し出された手ではなく、彼女の肩に手を回し、しっかりと掴んだ。

テ嬢「?」
カン・ウ「子どもみたいにしがみつくのは嫌なんです。僕はこの体勢の方が慣れてますから」
テ嬢「(微笑)そうしましょう。けど、(彼女の肩を抱く彼の手をトン)手の力をちょっと抜いてください」
カン・ウ「あぁ、力…抜きます」

テ嬢は改めて暗い部屋を見渡した。

テ嬢「どこだろうなぁ」

奥のテーブルの上に、壺の姿はない。

テ嬢「壺もないし、幽霊もいないですね」
カン・ウ「いないんですか?」
テ嬢「(キョロキョロ)」

カン・ウは彼女の肩を掴んでいた手を離し、そばにあったソファに座り込んで深く息をついた。

カン・ウ「テ・ゴンシルさんは怖くないんですか?」
テ嬢「私も怖いです。カン・ウさんより少し慣れているだけですよ」
カン・ウ「そんなに怖くて、長い間隠れるように生きて来たんですか?」
テ嬢「コシテルに閉じこもってたんだけど、社長に出会って、すごく良くなったんです」
カン・ウ「…。」
テ嬢「息をつける場所が出来て人生が変わったんですよ」
カン・ウ「チュ・ジュンウォン社長は、僕には決してあげられないものを、テ・ゴンシルさんにあげられるんですね」
テ嬢「でも… もう結婚するんだから、今みたいにそばにはいられないわ」
カン・ウ「…。」

カン・ウはハッとして一旦言葉を呑み込んだ。
「1週間後にはなかったことになるかもしれない結婚です」
キム室長の言葉を反芻すると、彼は立ち上がる。

1579

カン・ウ「テ・ゴンシルさん、いなくても大丈夫かどうか、一度試してみてはどうですか?」
テ嬢「?」
カン・ウ「出張でいない間だって、会社にも出て来てちゃんと持ちこたえたでしょう?」
テ嬢「でも、社長がそばにいるのに、私が頼らずにいられるかどうか…」
カン・ウ「1週間程、距離を置いてよく考えてみてください」
テ嬢「…。」
カン・ウ「万が一いなくても大丈夫だと結論が出たら、状況が変わったとしても、彼のそばには行かないでください」
テ嬢「…。」
カン・ウ「辛くなるでしょう?」
テ嬢「…。」

-+-+-+

テ嬢とカン・ウは保安室へ戻る階段を降りていた。

カン・ウ「待っててください。家の前に美味しい夜食屋さんができたんです」
テ嬢「そのお店… いるんです」
カン・ウ「…。それじゃ、いないところに案内してください」
テ嬢「その隣のキムパブ屋さんには何もいませんよ。けど、マズいんですよね」
カン・ウ「キムパブ屋さんがいいです!」

わかりやすいカン・ウに、テ嬢は笑って腕を差し出した。

テ嬢「掴んで」

笑い合った二人は腕を組んで歩き出す。
その様子を、降りてきたチュ君が静かに見送った。

チュ君「…。」

+-+-+-+

イリョンが保安室を覗いた。

ハンジュ「あっ」
イリョン「カン・ウ、いないんですか?」
ハンジュ「今巡回中ですけど。テ・イリョンさん、よくお会いしますねぇ」
イリョン「あなたも私のこと近所のお嬢さんだって言うの?!」
ハンジュ「もー、女神でしょ!我が保安室に降臨した女神。あははははっ」
イリョン「(満足)」

彼女は奥のPC脇に置いてあるぬいぐるみを指した。

イリョン「あの子は何?」
ハンジュ「あぁ、チーム長のですよ」
イリョン「(ぬいぐるみを手に取り)可愛いとこあるのね」
ハンジュ「テ・イリョンさん、すみませんけど写真を一枚だけ、えへへへ」
イリョン「ふふふ♪」

+-+-+-+

一旦テ嬢と別れ、一人で保安室へ向かっていたカン・ウは、ギクリとして足を止めた。
脇にあるトイレに、何だか良からぬ空気を感じたのだ。
拳をぎゅっと握りしめ、恐怖と戦う。

カン・ウ「ずっとこうしてたら、いつ一緒に夜食屋に行けるんだ?」

ゆっくりと近づき、遠巻きにトイレの中を覗く。

イリョン「わっ!」
カン・ウ「ひゃっ!」

1580

無邪気に飛び出してきたイリョンに、カン・ウは思わず目をつむった。

イリョン「…。」
カン・ウ「…。」
イリョン「…。」

そっと目を覆った手をのけてみた彼は、「あ゛ー」と唸り声を上げ、ネクタイを緩めた。

カン・ウ「なんだよー!」
イリョン「カン・ウ~!あんた超かわいいよ!今、怖くて(目を覆う)こうやったの?」
カン・ウ「…。」
イリョン「もう一回やってよ」
カン・ウ「もういい。何で来たんだよ」
イリョン「あたしとあんた、しばらく記事になるかもね」
カン・ウ「何だって?」
イリョン「地下鉄で一緒に写真取られたでしょ?明日仲のいい記者の人たちと会うんだけど、今あたしと一緒にビール一杯やるならボディーガードってことにしてあげるわ。また撥ねつけたら彼氏だって言うから!検索ワード1位になるわね」
カン・ウ「それなら、今からテ・ゴンシルさんとキムパブ食べに行くから、お前も隣でタクアン食べてろ。友だちだろ?」

カン・ウが歩き出すと、イリョンはいつになく厳しい声で彼を呼び戻した。

イリョン「カン・ウ!」
カン・ウ「…。」

振り返ると、トコトコと駆け寄ってきたイリョンは、彼の白いシャツの胸元に口づけた。
顔を離すと満足気に呟く。

イリョン「ちゃんと付いたわ♪」

カン・ウは胸元のキスマークを掴み、彼女を睨みつけた。

カン・ウ「!!!」
イリョン「行きましょ。コンシルにも見せてあげるの。(キスマークを指差し)この色と私のリップ、同じだって」

カン・ウは途方に暮れて溜め息をついた。

+-+-+-+

ここで区切ります。

悶絶…。萌えとは全く違うところで悶絶ですた。
訳すのむずかしいデス

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