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夜警日誌あらすじ&日本語訳8話vol.2

   

チョン・ユンホ(東方神起ユノ/ユンホ)、チョン・イル主演、「夜警日誌」8話の後半です。 あらすじの中で表情や心の動きも拾いながら、詳細に翻訳していきますね。

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朝議では昨夜の火災についての報告が淡々と行われていた。

兵判「民家12棟が消失したのみ。幸い士大夫(※両班。特権階級)に大きな被害はありませんでした」

「火事?」何も知らずにいたキサン君が驚いて身を乗り出す。「火事が起きたと?!」

兵判「はい、殿下」

「火、火が…。火が出るとは…」キサン君は譫言のように呟く。
「?」官僚たちの視線がキサン君に集まった。

右相「殿下、どうなさったのですか?単なる火災に過ぎません」
キサン君「滅火軍(※消防隊)に準備させて、万全を…万全を期すように」

こうしてはいられない。キサン君は官僚たちを残し、急いで席を立った。

領相「…。」

どうも殿下の様子がおかしい。何かありそうだ。
領相は静かに考えを巡らせる。

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スリョンは父のいる舎廊棟へやって来ると、建物の陰で立ち止まった。
父パク・スジョンが何者かの報告を受けているようだ。

女「大妃殿の女官が一人、持病で死んだそうです」
領相「女官の年齢は?」
女「23,4かと存じます」
領相「そんな年齢で持病とは…。もう少し調べてみよ」

「はい」女は頭を下げ、領相の前を立ち去った。
不意にこちらへ歩き出した父に驚き、スリョンは背を向ける。

領相「スリョン?」
スリョン「…。」

スリョンは仕方なく父へと向き直った。

領相「なぜ黙って行こうとしたのだ?」
スリョン「父上」
領相「何だ?」
スリョン「”忠臣は二人の主君に仕えない” そう言っていたムソクお兄様を、とてももどかしく思っていました」
領相「?」
スリョン「仕える方に忠義を感じられないなら、当然他の人に仕えるべきだと思っていたからです。だから、父上は月光大君を支持するのだろうと、そう信じていました」
領相「私に言いたいことは何だ?」
スリョン「父上の忠誠心はどちらに向いているのですか?月光大君ですか?月光大君…ですよね?」
領相「何と答えて欲しい?」
スリョン「…。父上の本心が知りたいのです」
領相「お前のことを可愛いと思ってはいるが、本心を見せることは出来ん」
スリョン「父上!」
領相「これまで誰にも見せたことはない。そのお陰で今まで生き残ることが出来たのだ。だから、これからも私の本心などに興味を持つな」
スリョン「…。」

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言葉を失う娘を残し、領相は立ち去った。

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恵民署は患者に溢れていた。
忙しく患者を回り、処置をするスリョンの元へ、来客の知らせが入る。

訪ねて来たのは梅蘭房のヨンウォルだった。

スリョン「何の御用です?」

「せっかちな性格でして」ヨンウォルは微笑む。

ヨンウォル「じっと座って待つことが出来ないのです」

「何のことでしょう?」スリョンは首を傾げると、ヨンウォルは豪快に笑い声を上げた。

ヨンウォル「なぜそんなことを?そんな純情な顔でとぼけられては、私が困りますわ」
スリョン「房主と話すことはありません。もうお帰りください」

「私はお嬢様とたくさん話すことがあるんですが」ヨンウォルは椅子に腰をおろし、スリョンを見上げた。

スリョン「房主も私との約束を守れなかったではないですか」
ヨンウォル「約束は守れなかったけれど…」

「これがありますわ」ヨンウォルは卓上においてあった紙をスリョンの方へ差し出す。

スリョン「!」
ヨンウォル「これを人が見れば、何と言うか」
スリョン「…。」
ヨンウォル「殿下と領相は対立しているそうですね。そこへ、お嬢様が月光大君を助けようとしたと…。それが知れれば、領相大監はどうなるでしょうね」
スリョン「…恵民署と生藥鋪には足りない薬がありません。も、もう補充してしまったので、生藥鋪にはもう薬が一杯で…」

慌てるスリョンの言葉を、ヨンウォルは冷ややかな顔で聞き流す。

ヨンウォル「私はいつでも準備が出来ています」

「心の準備が出来たら、お訪ねくださいな」ヨンウォルはそう言って立ち上がった。

ヨンウォル「長く待つつもりはありませんので」
スリョン「…。」

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196

リンはそっと格子の中を覗いた。
格子の向こうの庭では大勢の人間たちが働いている。
刺客の香りの出元が軍器寺だと睨み、調べにやって来たのだ。

刺客の首筋には、リンが激しく扇子を叩きつけた傷があるはずだった。

「全員の首筋を調べるわけにはいかないし…」リンは考え込んだ。

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守護霊3人衆はまだリンの屋敷前の松の木の下に座り込んでいた。
落ち着かずにウロウロするランイにソン内官が癇癪を起こす。「あんた、じっとしてなさいよ!」

ソン内官「それにしても、何で私たちについてくるのさ?あんたも三途の川を渡ってここまで来たんなら、私たちみたいに守りたい人がいるんじゃないの?」
ランイ「!」
ソン内官「それなのに、何で行かないのさ?!」
ランイ「う、うん。行かなきゃね」

ランイは困って視線をそらす。

そこへリンがやって来て物陰から顔を覗かせた。

ランイ「あっ!リンだ!リン!」

3人衆が揃ってこちらを見ると、リンはニッコリと笑って手を振った。

197

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リンの頼みで、3人衆はさっそく軍器寺へ潜入した。
軍器寺の庭で働く職員たちを一人ひとり、熱心に首筋に傷がないか確認して回る。
実に涙ぐましい努力だ。

再び集合した3人は揃って顔を曇らせた。「いないな」「全然見えないよ」「本当にいるのかな」
ソン内官が「傷だ!」と指さした男に皆の視線が集まるが、それは垢だと即座に却下される。

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リンが探している男は屋内で書き物をしていた。
「別提様」職員がやってくると、男に声を掛ける。

男「何事だ?」
職員「焔焇が足りません。期限が迫っているのですが」
男「そうか。どうしたものか…」

考えを巡らせると、男はふと思いつく。

男「焔焇なら、薬として使うものが生薬鋪に保管してあるはずだ。一度調べてみよう」

すっかり諦めた3人衆が軍器寺の門に座り込んでいると、初めて見る男が出てきたのに男に気づく。
ソン内官がさっと近づくと、男の首筋を凝視した。「あらま!!!」
とうとう首筋に傷のある男を見つけたのだ!

ソン内官「あいつ!あいつですよ!!!」

ソン内官の知らせを聞き、陰に潜んでいたリンが男を確認する。
リンはそっと男を追った。

198

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すっかり焼け落ちてしまった家々を前に、住人たちはただただ涙に暮れていた。

惨憺たる焼け跡を、トハは茫然と見つめる。
彼女は、焼けた柱にそっと手を触れ、目を閉じた。
「…。」荒れ狂う火鬼のエネルギーを感じ、トハはハッとして手を離す。

トハ「駄目…。駄目よ!」

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昭格署の前までやって来たトハは、来てはみたものの中へ入ることも出来ず、悶々としていた。
そこへ、目の前を通り過ぎたのは、他でもないホジョだ。

トハ「!」

彼女は迷わず中へ入ると、彼を追いかけた。
昭格署を出て街の中を通り過ぎ、静かな集落へ。
トハは暗くなっても歩き続けるホジョを懸命に追いかける。

そこへ、警備のため街を回っていた官軍がトハの前に現れた。

官軍「火災に備え、怪しい者は全て捕らえている」
トハ「その…えっと…」

ホジョを見失うのではないかと気が気でないトハは、思わず駈け出した。

官軍「怪しいぞ!捕らえよ!」

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ムソクは一人、静かな竹林の中を進んでいた。
立ち止まると、彼はそっと暗号を唱える。
姿の見えない誰かが合言葉を返した。

199

ムソク「…。」

男がムソクの背後に姿を現した。

男「手配書は殿下のお考えです。月光大君に疑われないためにと」
ムソク「そう思っていました。殿下はどうしておいでですか?そう… あの道吏について、殿下は何と?」

「道吏のことには口出しせず、任せられた任務に専念せよ」キサン君の言葉はこうだった。

男「そう仰せでした」
ムソク「…。」
男「お辛いでしょうが、月光大君を庇護している勢力を、必ずや突き止めていただかなければ」

「えぇ」ムソクは頷く。

ムソク「承知しています」

「それでは、次の予定まで」ムソクは背を向けたまま、その場を後にした。

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生薬鋪にやって来た”首に傷のある男”、軍器寺の別提は、管理係の案内で奥の棚へやって来る。

別提「これは木炭ではないか」
管理係「はい、さようでございます」
別提「このような雑な管理をして、混じって爆発でも起こしたらどうするつもりだ!」
管理係「さようですか?存じませんでした!」

管理係が木炭の袋を慌てて撤収しようとすると、別提は棚の前、足元に置いてあった箱に手を伸ばす。
目当ての焔焇の箱だった。
彼は蓋を少し開け、中をさっと覗く。

別提「これだけあれば良い。人を呼んでくれ」

「はい。運び屋を連れて参ります」

管理係がその場を後にすると、別提は棚に残っている木炭の袋を下ろし始める。
そこへ、突然目の前に扇子がバサッと開いた。

別提「!」

顔を上げた別提の前に立っていたのは、リンだ。

別提「誰だ?」
リン「お前こそ誰だ?なぜ私を殺そうとした?!」

#主人公ってさ、もうちょっと泳がせて調べようとかせずに、すぐ本人に直接ぶっちゃけに行くよねー

その瞬間、別提は手にひらでリンの胸をドンと突き飛ばすと、近くにあった薬剤の箱を掴んで投げた。

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官軍から逃げてきたトハは、追手を避けて街の中を逃げまわるうち、通りを歩いてきた人とぶつかって声を上げる。「あっ!」
ムソクだった。

ムソク「!」
トハ「はっ!」

そこへ「こっちだ、捕まえろ!」と官軍の声が間近で聞こえる。
ムソクは咄嗟にトハの手を引くと、張り出した塀の陰に身を潜める。
塀の向こうを、官軍たちが通り過ぎる足音が聞こえた。

ムソク「どうしたんです?なぜこんな夜に追われているんですか?」
トハ「火鬼。火鬼を追いかけていたんです」
ムソク「本当にそんな鬼神がいると信じているんですか?!見えもしない物に惑わされるとは」

「見えます!」トハは立ち上がった。

トハ「私の目には見えるんです!」
ムソク「…。」
トハ「あなたに見えないからって、ないわけじゃありません!」
ムソク「火鬼、呪い、妖術!」
トハ「!」
ムソク「この朝鮮の国を、恐れ多くも左道が惑わそうとは…!」

そのとき、トハは妙な気配を感じ、後ろを振り返る。

トハ「!!!」

真っ赤な火鬼が渦を巻き、目の前を横切るのが見えた。

トハ「火鬼!火鬼が… 出てしまったわ!」

ムソクは不思議そうにトハと彼女の視線の先を見比べる。「火鬼?」

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リンと別提は狭い倉庫の中で生薬鋪で激しく戦っていた。
二人が殴りあうたびに、棚にぶつかり、薬剤が散乱する。

男がリンを持ち上げ、投げ飛ばすと、その上に馬乗りになった。

そのときだ…。

彼らの背後に火鬼が忍び寄ると、間近の棚に飛び込んだ。
あっという間に激しい炎が上がる。

別提はハッとして振り返ると、火に気づき、慌てて逃げ出した。
その場にあった棚を、倒れているリンの上に倒して…。

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スリョンは大急ぎで屋敷を飛び出した。

スリョン「本当に生薬鋪なの?」
下女「はい、お嬢様」
スリョン「生薬鋪は駄目よ。あそこは駄目!」

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消防隊が到着したころには、生薬鋪全体に火が回っていた。

消防隊と言っても、大きなことは出来ない。
手作業で桶の水を掛けるのが精一杯だった。

そこへ到着したスリョンは、燃え盛る炎に目を丸くする。

スリョン「薬が全部燃えてしまうわ!何をしてるの?早く火を消して!!!」
下女「落ち着いてください」

遅れてトハとムソクが生薬鋪の前に駆けつける。

生薬鋪職員「大変だ!焔焇に火がついたりしたら…!」
町人「何だって?どうなるんだい?」
生薬鋪職員「きっと爆発する!焔焇に火がついたら爆発します!!!」

そばにいたトハにも彼らの話が耳に入った。
「逃げてください!」爆発に備えて逃げ出す人々に反し、トハは一人、火の中へと駈け出した。
彼女と一緒に来たムソクは気付かない。取り乱すスリョンを落ち着かせようとしていたのだ。

ムソク「スリョン、落ち着くんだ」
スリョン「お兄様、薬剤を外へ出さなければ!燃やしてしまうわけにはいかないんです!燃えてしまったら… 燃えてしまったら…」

「…。」興奮するスリョンにこれ以上掛ける言葉もなく、ムソクはトハを振り返る。

ムソク「?」

トハの姿はなかった。

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まだ燃えていない扉を破り、トハは中へ入った。
火の間を縫って中へ進むと、彼女はまだ中を漂っている火鬼の姿を見つける。

キョロキョロと辺りを見渡すと、トハはふと足元に目を留めた。

トハ「!!!」

足元に倒れた棚の下で、リンが脱出しようともがいていたのだ。

トハ「何でここに?」
リン「!」

「怪我してるの?!」トハはリンの元へ駆け寄った。

トハ「怪我は酷いの?!」
リン「お前、頭おかしいのか?何でここに来たんだ?!」
トハ「!」

彼女は立ち上がると、棚を動かそうと踏ん張った。
二人で力を込めても、なかなか棚は動かない、

#うーん。そんな重い棚には絶対に見えないけどね

リン「もうやめろ!逃げるんだ!」
トハ「あんただったら?そのまま逃げる?私が動けずにいたら逃げるわけ?!」

#もー!手を止めて喋ってる場合じゃないってば

リン「…。」
トハ「待ってて。あと少しだけ」

「少しだけよ」トハはもう一度、渾身の力を込めて棚を持ち上げた。
彼女に合わせ、リンも力いっぱい押し上げる。

棚は見事持ち上がり、リンはそこに出来た空間から転がり出た。
トハは急いでリンを助け起こすと、そこで立ち往生してしまう。

トハ「!」

周りをすでに火で囲まれていたのだ。

「!!!」その瞬間、天井から燃えた木材が落ちてくると、二人の間を遮った。
お互い姿が見えるまま、突然離れ離れになってしまった。

トハ「焔焇を持って逃げて!」
リン「?」
トハ「火鬼が触れたら都中が灰になるわ」
リン「お前は?」
トハ「それが爆発したら、みんな死んでしまうの!一人でも生きなきゃ!」

一体どうすれば…リンは歯を食いしばった。

トハ「早く行って!行ってよ!!!!!」

トハを包む炎がさらに激しくなる。
リンは後ろにあった焔焇の箱を抱えると、彼女を振り返った。
炎の向こうで、頷いている彼女の顔が見える。「早く!早く行って!」

200

「…。」彼女の悲痛な叫びに、リンは覚悟を決めて駈け出した。
外へ出ると焔焇の箱を管理係に引き渡し、彼はそばにあった水を全身に浴びる。

スリョン「大君?大君!!!」

リンはそのまま踵を返すと、黙って火の中へと戻って行った。

思わず追いかけようとしたスリョンをムソクが捕まえる。

スリョン「離してください!大君が危ないんです。危ないんです!!!」

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燃える室内へ戻ってきたリンは、燃えている棚を倒し、道を作りながら奥へと進んだ。
炎の向こうに、倒れているトハの姿が微かに見える。

リン「!」

リンは夢中で彼女の元へと火を飛び越えた。

#「その火を飛び越えて来い!」あまちゃんが懐かしいよ

トハの意識はすでになかった。

リン「おい!しっかりしろ!目を開けろよ、目を開けろって!」

「目を開けろ!!!」必死で叫んでも彼女は目を開けない。
リンは愕然と肩を落とした。

リン「お前まで逝ってしまったら… みんなが言った通りじゃないか。私が不吉だからそばからいなくなるんだって… その通りじゃないか!!!」

「だから、目を開けてくれ」リンはもう一度呼び掛ける。

リン「駄目だ!目を開けろ!!!」

「私を一人にしないでくれ」いつの間にか彼の瞳から涙が溢れていた。「目を開けてくれよ…!」

201

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「?」目の前で泣いているリンに気づき、トハはふと目を開けた。

リン「!!!」
トハ「…。」
リン「き、気がついたか?!」

トハはしばらく彼を見つめると、燃えている周囲に目を泳がせ、再び気を失う。
リンは無我夢中で彼女を抱え上げると、火の中を迷わず進んだ。

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外へ出てきたリンに、生薬鋪の職員たちが口々に「大丈夫ですか」と声を掛ける。
リンの姿に一瞬安心したものの、次の瞬間、スリョンは愕然と立ち尽くした、
彼はその腕にしっかりとトハを抱きかかえていたのだ。

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「月光大君だ!」野次馬から声が上がるものの、リンの耳にはそんな声は届かなかった。
彼は気を失ったトハを抱えたまま、まっすぐ門を出て行く。
誰もが何も出来ず、ただぼんやりと彼を見送った。

「…。」ムソクとスリョンも、また同じだ。

203

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梅蘭房の自室で、ヨンウォルは台帳をつけていた。
そこへ駆け込んできたのはスリョンだ。

スリョン「生薬鋪が全て燃えてしまいました!」
ヨンウォル「!」
スリョン「薬の専売権を… 差し上げます。ですから早く!早く大君を私の前に連れて来てください!」

「約束を守ってください!!!」スリョンの得体のしれない不安が叫び声となった。

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夜が明けようとしていた。
リンはトハを背中に背負い、あてもなく歩く。

「おろして…」トハの弱々しい声が肩越しに聞こえた。

リン「気がついたか」
トハ「歩けるわ」
リン「少しだけ… このまま歩こう」

「大変でしょ?」トハの言葉に、リンはふっと笑う。

「ありがとう」そう言って、彼は立ち止まった。

トハ「?」
リン「こうして… そばにいてくれて」

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トハは戸惑ったように目を伏せる。
リンは彼女の反応に表情を和らげると、再び歩き出した。

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距離を保ったまま、ムソクは二人の後をゆっくりついて歩いた。

「…。」不思議な感情が彼の中をじわじわと満たしていた。

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「生薬鋪から火が出たと?!」火災が伝えられると、キサン君は叫んだ。「今すぐサダムを連れて来い!!!」

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焦らすだけ焦らし、すっかり日が高くなってから、ようやくサダムはやって来た。
彼が入ってくると、キサン君は両手でサダムの手を取る。

キサン君「お前を信じることが出来ず、火気を呼び入れてしまった。実に悪いことをした。面目ない」
サダム「殿下、陽の気が昇天し、都に火が出たのです。陽の気を抑えねばなりません」
キサン君「あぁ、そうだな。そのためにはどうすればよいのだ?どうすれば陽の気を鎮められる?お前の言う通り、何でもやろう」

「…。」サダムはすぐには口を開かず、余裕のある目でキサン君を見つめる。
彼は完全に主導権を握ったのだ。

サダム「陰の気が強く、長い間閉ざされていた粛清門を開放なさいませ。出来ることなら陽の気を呼び入れる祟礼門を閉ざさねばなりません。冠岳山からの火気を遮断するため、祟礼門の前に池を掘ってくださいませ」

直ちにサダムの言った通りの処置が実行される。
突然閉ざされた祟礼門の前では、通り道を失った人々で大混乱が起きていた。

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開放された北側の粛清門から、続々と幽霊たちが宮廷内に入っていく。
リンとトハはその様子をじっと窺った。

トハ「あの男の目的は火鬼じゃないわ」
リン「それなら?」
トハ「火鬼はただの囮だったの。都を陰の気で満たすための…」
リン「…。」
トハ「目的は都中を陰の気で満たすことだったのよ!」
リン「なぜ?理由があるはずだろう?」

「…。」二人は頭が混乱したまま、宮廷に入っていく幽霊を見送った。
夜警師の姿をした、その幽霊を…。

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リン「!」
トハ「どうかした?」
リン「…。」
トハ「どうしたの?」

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「いや… 何でもない」リンはじっと幽霊の後姿を見つめる。
漠然としていた彼の目が鋭くなった。

+-+-+-+

火事騒ぎなどどこ吹く風、今夜もオンメの宿は大盛況だった。
しつこい客に困っていたチョヒは、とうとう客の手を払いのけてしまう。「離してよ!!!」

チョヒ「あんたたちなんか相手にしたら私の格が落ちるわよ!」
客「こいつ、格だと?ここで酒を売ってる分際で、俺たちでも勿体ないと思え!」

客が振り上げた手を、誰かがさっと掴む。

サンホンだ。

サンホン「酔っているようだ。もう帰った方がいい」

連れの男が殴りかかると、サンホンはもう片方の手でその拳を掴み、そのまま涼しい顔で手首を捻り上げる。
そして、順に二人の男を放り出した。

男たちは引き下がらない。
一人はそばにあった竹筒を、一人は熱い茶瓶を掴み、立ち上がった。
「だ、駄目よ!!!」

咄嗟にサンホンの背中をかばったオンメの背中に、客がぶちまけた湯がかかる。

サンホン「!」

悲鳴を上げて床に崩れ落ちるオンメを、サンホンが抱きとめた。

客「女の後ろに隠れるとはな!」
サンホン「…。」
客「恥を知れ!恥を!!!」

彼は冷静だったサンホンの怒りに火をつけてしまったようだ。
いきなり駆け寄ると、サンホンは男の胸を足で突き飛ばす。
殴りかかってきたもう一人の男を、そばの卓上に叩きつけた。

怯えて縮み上がった客に拳を振り上げると、ようやくそこでサンホンは踏みとどまったのだ。

+-+-+-+

オンメの背中は火傷で赤く腫れていた。

「振り向いてもくれない人相手に、未練ったらしいったら!」水に手ぬぐいを浸しながら、チョヒはぼやいた。

チョヒ「私、片思いだけは理解できないわ」

傷口に冷たい水が触れると、オンメは「ひゃっ」と声を上げた。

チョヒ「そんなもの、何でするのよ!」
オンメ「そっとやってよ。痛いわ」

+-+-+-+

サンホンはオンメの部屋の前までやって来ると、漏れ聞こえてくる声にひとしきり躊躇った。

サンホン「…。」

彼は後ろ手に持った薬の包みを部屋の前に置くと、そっとその場を後にする。

208

鍛冶場へ戻った彼の表情はいつもに増して深刻だった。
もう一度懐から手配書を出すと、広げて眺める。
成長した人相書きの大君と、最後に見た幼い姿が重なった。

「これからは人間らしく生きよ」
「鬼神のことなど気にすること無く、人間に目を向けるのだ」

船の上で言われた言葉が再び頭に浮かぶ。

サンホンは揺れに揺れていた。
大君のことがどうにも気に掛かり、一方ではそんな過去に囚われる自分は断ち切りたい… それも本心だった。

サンホンは手配書の大君の顔をもう一度見つめる。
そのままそっと手配書を丸めると、窯の中へ投じた。

+-+-+-+

サンホンが鍛冶場を出ると、ちょうど向こうからリンとトハが戻ってきた。
ふと振り返ったサンホンは、リンの顔を見て目を凝らす。「?」

サンホン「!!!」

ハッと目を見開いたサンホンは、咄嗟に柱の陰に身を隠した。

リン「これからは考えて行動しろよ。体が疲れるばかりだ」
トハ「私のこと心配してくれてるの?」

サンホンは柱の陰からそっとリンの姿を盗み見た。

リンは立ち止まり、トハを振り返る。
彼の返事を待ち、目をくるくると動かす彼女に、リンは顔を緩めた。

リン「心配なんか…」
トハ「嬉しいな。心配されて」

209

リンもまた嬉しさを堪えられず、ニヤリと笑う。
そうして、再び二人は歩き出した。

そのときだ。

突然柱の陰から飛び出したサンホンが、リンの肩を掴み、振り向かせた。

リン「!」
サンホン「!」

サンホンを睨みつけたリンの目が、次第に驚きへと変わる。

リン「!!!」

210

+-+-+-+

ここでエンディングです。

えーと。

一番思いが叶って欲しい人は、オンメさんでいいや(爆)

火事でリンとトハがお互いを助け出すシーンは良かったけど(棚がどうにも重そうに見えないのは、結構なマイナスだと思うよ、実感湧かないからね)、これはイル君の表情がとても良かったのが大きかったですねー。
「火鬼が!」って言われても「ふーん」ってなっちゃって、もう一歩引き込まれるところまでいかない。
火鬼のCGはよく出来てると思うんだけどなぁ。
「そんなこと言われても」っていうムソクの反応と同じですよ、正直なところ(笑
もう少し没頭できるといいんだけどな。
※私は初見で訳しているので、細切れに止めながらの視聴であり、通して見ている皆さんとは感じ方が違うかもしれません^^;

サンホンが気づくようで気づかない、じれったい週でしたが、ようやく…ですかね?
ようやくってことでいいんですかね?脚本家さん。
んでもって、サンホンって意外と純情でぼんやりさんですよね?(笑

夜警師の霊を見て、リンはサダムの目的について何か勘づいたようで、そのへんも早く展開させて欲しいところです。

ではでは、今週も長い翻訳にお付き合いいただき、ありがとうございました!
来週はどうか難しい名詞が減りますように(笑

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