韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!プロデューサー/SPY/夜警日誌/トライアングル/主君の太陽など

主君の太陽16話あらすじ&日本語訳 vol.1

   

「本当に消えてほしいときは一度で聞き分けます」

彼女はそう言った。
そして、本当に消えていった。
彼の意志ではなく、自らその言葉を望んで…。

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主君の太陽16話、前半です。

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空港のロビー。
一人座り込んでいるチュ君の元へキム室長がやって来た。

キム室長「主君、テ嬢が遠くへ発つと聞きました。テ嬢と一緒にいたんじゃないんですか?どこなんです?」
チュ君「…。」

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出国ゲート近く。ジヌが待っているそばで、テ嬢は姉と話していた。

姉「まめに連絡するんだよ」
テ嬢「(頷く)」
姉「あまり長い間いるつもりじゃないよね?」
テ嬢「どれくらい長くいるかは、行ってみないとわからないの」

姉は待っているジヌをチラリと見た。

姉「一緒に行くの、あの人?」
テ嬢「(頷く)」
姉「(ジヌに頭を下げる)あれ?あの人、事故のときの…。そうだよね?」
テ嬢「だから心配しないで。元気で行ってくるから」
姉「うん」

「行っておいで」「元気でね」姉妹は強く抱き合った。
姉の元を離れ、テ嬢はジヌと二人で歩き出す。

+-+-+-+

黙って座っているチュ君に、室長は苛立っていた。

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キム室長「テ嬢は主君の元を去ったんですか?」
チュ君「僕が耐えさえすれば、テ・ゴンシルは当然それで構わないだろうと思ったんです。それなのに、怖くて辛いと…」
室長「…。」
チュ君「考えてみれば、たったの一度だってあいつの立場を理解して、気遣って…そんなことしたこともない気がするんです」
室長「つまり、テ嬢の立場を理解して、気遣って行かせたとおっしゃるんですか?!」
チュ君「(視線を上げる)何を馬鹿なことを!テ・ゴンシルを行かせるなんて!34年間やらなかったことを、こんな大事な瞬間にするわけがない!」
室長「…。」
チュ君「僕から離れたいという気持ちを理解することも、気持よく送り出す気遣いもしません!」

チュ君は立ち上がり、歩き出した。

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出国ゲートの列に並ぶテ嬢。
チュ君はようやく彼女を探し、空港内を歩きまわった。
電話を取り出し、辺りを見回しながら呼び出し音を鳴らすチュ君。

チュ君「頼むから電話に出てくれ」

そのすぐ隣を、テ嬢はゲートの向こうへと消えて行った。

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テ嬢はジヌと並んで飛行機の座席についていた。
緊張した様子の彼女に、ジヌが口を開く。

ジヌ「その人とは…ちゃんと整理してきたのか?」
テ嬢「どうやって整理なんか…。無理やり離れて来たんです」
ジヌ「…。」
テ嬢「(落ち着かない)早く飛行機が出発すればいいのに。遠く離れればマシになるでしょう」

二人の席の斜め前にイリョンとマネージャーが座っていた。
彼女は何の着信通知もない電話をパタンと閉じる。

イリョン「カン・ウ、今日出発なのに電話もして来ないわ」

もう一度電話のカバーを開き、また閉じる。
彼女も葛藤していた。

+-+-+-+

チュ君の元へキム室長が走ってくる。

室長「テ・ゴンシル嬢、LA行きの飛行機に乗ったそうです」
チュ君「次の飛行機を予約してください。追いかけます」
室長「はい。会社から旅券が届き次第発券しましょう」

+-+-+-+

副社長にすぐ連絡が入った。

叔母「チュンウォンがアメリカに行くんですか?」
副社長「えぇ。たった今キム室長から連絡を受けて、アン代理がチュ社長の旅券を持って空港へ走りましたよ」
叔母「急にアメリカにどうして?何事かしら?」
副社長「さぁ」
叔母「???」
副社長「あっ!…いや、なんでもありませんよ」
叔母「…。」

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イリョンは一度置いた携帯電話をもう一度手にとった。

マネージャー「向こうでオーディションに合格したら、もう韓国には戻らずに、向こうで演技のトレーニングしようよ。ね?」
イリョン「…。お手洗いに行ってくる」

気の乗らない様子でイリョンが立ち上がる。
後ろに向かって歩き出したイリョンは、テ嬢に気付いて立ち上がった。

イリョン「あ…。テ・ゴンシル」
テ嬢「イリョン!」
イリョン「どうしてここに?あんたもアメリカに行くの?」
テ嬢「…。」
イリョン「チュ社長と一緒にアメリカ出張?」
テ嬢「ううん。私の用事で行くの。あ、あんた映画撮りに行くって記事で見たよ」
イリョン「あぁ。私、オーディション受けに行くの」

そう言って笑ったイリョンの視線が、隣のジヌに移った。

イリョン「お連れさん?」
テ嬢「うん」
イリョン「あぁ。私の席はあっちよ。退屈したら遊びましょ」

俯くテ嬢に笑いかけると、イリョンはもう一度ジヌを見る。
そして、ゆっくりと化粧室へ向かった。

テ嬢「(ジヌに)同級生なんです」
ジヌ「(笑顔)」

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空港ではまだキム室長が走り回っていた。

室長「2時間後に出発する飛行機を予約しました」
チュ君「もっと早いのはないんですか?」
室長「今のところは…」

そこへカン・ウがやって来る。

カン・ウ「テ・ゴンシルさんを行かせたんですか?」
チュ君「…。」
カン・ウ「チャ・ヒジュさんのことが解決したらここを発つと言ってました。それなのに、引き止めずに行かせたんですか?」
チュ君「行かせはしない。追いかけてまた連れ戻す」
室長「ですが、アメリカまでついて行ったとしても2時間のブランクがあるんです。その間に消えてしまったらどうします?」
カン・ウ「…。」
チュ君「…。」

カン・ウが小さな機械を差し出した。

カン・ウ「位置捜索機です。これを持って行ってください」
チュ君「!」

チュ君が受け取る。

カン・ウ「さっき、もしもの時のためにテ・ゴンシルさんの鞄に位置発信機を入れておいたんです」
室長「(感激)」
カン・ウ「テ・ゴンシルさんは知らないはずです。行って… 必ず連れて帰ってください」

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チュ君「カン・ウチーム長、すこぶる有能だ。必ずまたキングダムに戻って働いてくれ」
カン・ウ「…。」
チュ君「給料は2倍出す」

喜ぶチュ君を、カン・ウは厳しい表情でじっと見つめる。
「(装置を)起動してくれ」チュ君が言ったとき、カン・ウの携帯が鳴った。

イリョン(電話)「カン・ウ、テ・ゴンシルがアメリカに行くって知ってた?」
カン・ウ(電話)「お前が何で知ってるんだ?」
イリョン「同じ飛行機に乗ってるのよ!男の人と一緒にアメリカに行くって」
カン・ウ「そうか」

何でもなさそうに返事をし、電話を耳から離すカン・ウ。

カン・ウ「(チュ君に)テ・イリョンさんが今同じ飛行機に乗っているそうです」
チュ君「!」
カン・ウ「まだ出発していません」
チュ君「!」

電話はまだ切れてはいなかった。

イリョン(電話)「もしもし!もしもし!ちょっと!(つい大声を出し、慌てる)??チュ・ジュンウォン社長?」
チュ君(電話)「テ・イリョンさん。よく聞いてください」
イリョン「…。」
チュ君「今からテ・イリョンさんのずば抜けた演技力が必要なんです」
イリョン「え?」

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電話を切ったイリョンはマネージャーに声を掛けた。

イリョン「私の演技、上手いと思う?」
マネ「(笑う)え?」
イリョン「今から私がする演技、絶対に割り込まないで」

立ち上がり、深く息をついたイリョンは、「あぁっ!」と痛そうに歩き出した。

「あああ!」大声を上げたと思うと、その場に倒れる。
テ嬢が慌てて立ち上がった。

テ嬢「イリョン!どうしたの?」
イリョン「(テ嬢の手を掴む)コンシル、お腹が痛いの!」
テ嬢「え?お腹が?」
イリョン「(さらに掴む)あぁ!分かんない。盲腸みたい!」
テ嬢「誰か!誰か助けてくださーい!病院に行かなきゃ」

CAが駆け寄る。
イリョンは体ごとテ嬢にがっしりとしがみついた。

テ嬢「大丈夫よ、イリョン」

テ嬢の背中越しにずっとイリョンの表情が見えているジヌ。
彼は迫真の演技に思わず笑った。

担架に乗せられ、イリョンは飛行機から運びだされた。
「そばにいて!」彼女はぎゅっと握ったテ嬢の手を離さない。
担架は空港前に止まった救急車へと入っていく。

イリョン「一緒に来てぇえ!」
テ嬢「?!」

「保護者の方も乗って!」救急隊員の声に、有無をいわさずテ嬢も救急車に乗り込む。

その様子をチュ君が見守っていた。
イリョンの名演技に思わず笑うチュ君。
救急車は無事、空港から離れていった。

チュ君「テ・イリョンの演技力に感動する日が来るとは」
キム室長「とりあえずは無事引き止めましたが、これからどうされますか?」
チュ君「理解、気遣い。これからやってみなければ。…キム室長はそばで僕を手伝ってください」
室長「?」
チュ君「僕はそういうのが苦手だから、間違えれば厳しく正し、道を間違えそうなら食い止めてください」
室長「…。」
チュ君「15年間、僕のそばでしてくださったように」
室長「えぇ、そうしましょう。ですが、主君」
チュ君「?」
室長「少々寂しいですね。15年こうやってそばについていても微動だになさらなかったのに、ほんの少ししかいなかったテ嬢には、こうも簡単に心を開くんですか?全く…」
チュ君「簡単じゃなかったですよ。僕はそんなに容易い人間じゃないってご存知じゃないですか」
室長「どうでしょうね」

二人はぎこちなく笑った。

チュ君「キム室長」
室長「はい」

チュ君は突然キム室長をガッシリと抱きしめ、背中を叩くと、何事もなかったように歩き出した。

室長「分かりましたから!」

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病室ですっかり落ち着いてコーヒーを飲むイリョンの前で、テ嬢は腕組みをした。

テ嬢「小さいテ嬢」
イリョン「?」
テ嬢「ついさっきまで息ができないほど痛そうだったのに、もう何ともなさそうね」
イリョン「(笑)見てわからない?仮病よ。最近先生までつけてレッスンしてたんだけど、すごく上達したわ」
テ嬢「…。」
イリョン「今度、不治の病の映画の話があるんだけど、やってみようかな。ふふっ♪」
テ嬢「あんた、演技練習のために私を飛行機から降ろしたの?」
イリョン「まぁ、オーディションもたいして気乗りしなかったし、チュ・ジュンウォン社長に頼まれたから」

#言っちゃダメだってば

テ嬢「!」
イリョン「あんたを飛行機から降ろしてくれって」
テ嬢「社長が?」
イリョン「あたしだってやりたくなかったんだから!あんたがチュ・ジュンウォン社長みたいにイケてる人と上手くいくのだって見たくないわ。お腹が痛くなるほど憎たらしい」
テ嬢「それなのにどうして?」
イリョン「あんたが上手くいって、幸せになってくれなきゃダメだからよ」
テ嬢「…。」
イリョン「これ以上見守るのをやめて、安心して持ち場を離れさせるには、あんたが彼と上手く行くしかなさそうだから。だから協力したの」
テ嬢「そうだとしたら、あんた、下手なことしたわ。私、安心して幸せになるために、去るところだったんだから」

イリョンは笑った。

イリョン「あたしが悪びれるのが嫌でそう言ってるんだろうけど、あんた、全~然そんなふうに見えなかったわ」
テ嬢「…。」
イリョン「”私、あなたをすご~く愛してるから去るんです!” そんなキャンディを演じてるじゃない」
テ嬢「キャンディ?」
イリョン「そうよ。”私がいたらないから、あなたのために身を引くんだ” ”愛してるなら私を捕まえて” ”そうすればやむなく留まるわ” そういうことでしょ?」
テ嬢「…。」
イリョン「飛行機に乗ったのを引き止めたんだから、チュ・ジュンウォン社長もやるだけのことはやったのよ。適当なところでそろそろ捕まってやってよ。これ以上長引くと疲れるわ」
テ嬢「(溜め息)イリョン、私が仕方ないふりして適当に捕まるには、致命的な弱点があるの」
イリョン「致命的な弱点?」
テ嬢「(頷く)」
イリョン「はっ!アレでしょ!カン・ウとチュ社長があんたのこと守らなきゃって言って、不憫そうにしてるアレ。それって何?」

テ嬢はイリョンに顔を近づける。

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テ嬢「私ね、幽霊が見えるの」
イリョン「…。えっ?」
テ嬢「(病室を見回し)ここにもいるわ。この病室で亡くなった人みたい」

病室の隅に向かって微笑みかけるテ嬢の視線を、恐る恐るイリョンが追った。

イリョン「あたし、そういうの信じない!」
テ嬢「まぁいいわ。とにかくその人が伝えてくれって。あんたのファンだって」
イリョン「…。」
テ嬢「行くね」

イリョンと幽霊を残し、テ嬢は病室を出て行った。

イリョン「ちょっと!テ・ゴンシル、どこ行くのよ!そんな話して一人置き去りされたら…怖いじゃない。(布団をギュッ)お化けの話、大嫌いなのに」

+-+-+-+

テ嬢はイリョンのVIP病室の前でぼんやりしていた。
テ嬢「すがりついても離れても、他人から見れば私はキャンディなんだ…」

溜め息をつき、その場を離れようとすると、小さな霊が目の前に現れる。
ひき逃げで命を落としたウジンだ。

テ嬢「あんた、ウジンね。どうしてまだいるの?」

ウジンは黙って向こうを指さす。

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ウジンの指す病室の扉を開けると、ベッドの上に座っている女性がいた。
行方不明のウジンのチラシを握りしめた…彼の母親だ。

そう。テ嬢はまだ母親にウジンのことを話していなかった。
ベッド脇で悲しそうに母を見上げていたウジンが、テ嬢を振り返る。

飛びかかってきた犯人から自分を庇い、刺されたチュ君の血。
鮮やかな赤い色がふいに蘇り、テ嬢は病室から逃げ出した。
それでもウジンは彼女の前に立ちはだかる。

テ嬢「ウジン、あんたを見ると悲惨なことを思い出すの。あんたには会いたくないわ」

足早に離れるテ嬢を、ウジンは見送った。

ウジン「…。」

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チュ君も病院に来ていた。
廊下を歩いて行くチュ君に、腰掛けていたジヌが声をかける。

ジヌ「チュ・ジュンウォンさん」
チュ君「?」

ジヌが立ち上がる。

#チュ君を見下ろしてる((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル

ジヌ「去ろうとする太陽を無理やり捕まえて、あなたのそばにまた昇らせたんですね」
チュ君「どなたです?」
ジヌ「コンシルと一緒に発つ人間です。彼女が話したはずですが」
チュ君「…。」

「私と同じものを見聞きする人に会ったんです」
チュ君の頭に彼女の言葉が蘇る。

チュ君「あなたもテ・ゴンシルのように霊を見るっていうのか?」
ジヌ「あなたと違って、コンシルと同じ世界を見ている人間だってことですよ」
チュ君「…。」
ジヌ「

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テ嬢は病院の庭で、ベンチに座って考え込んでいた。
そこへキム室長が駆けつける。

キム室長「テ嬢!」
テ嬢「(立ち上がり)キム室長」
室長「何も言わずに消えてどうするんですか!」
テ嬢「…。」
室長「主君を避けて、逃げ出そうとしたんですか?」
テ嬢「逃げたんじゃありません。ただ、探したいことがあって」
室長「何を?」
テ嬢「私がこうなった理由です」
室長「…。」
テ嬢「どうして私にだけ死んだ人が見えるのか、理由を探しに行こうとしてたんです」

#それにしても…。探査機を出して「必ず連れ戻せ」と言ったカン・ウのグッジョブ&名言はどうしてくれるんだ

+-+-+-+

チュ君とジヌは病院の屋上に来ていた。

チュ君「あんたと一緒にいた場所を見れば、その理由が分かるのか…?」
ジヌ「それは僕にも分かりません。行ってみなきゃ」
チュ君「確かでもないのに、あいつをそんな遠いところまで連れて行こうとしたのか?」
ジヌ「大事なのはそこじゃありません。コンシルが初めて自分の問題を直視し始めたことでしょう」
チュ君「…。」
ジヌ「これまでひたすら隠れて、避けて、苦しんでいただけだった。そんなときに現れたあなたは絶好の避難所になったんだ」
チュ君「…。」
ジヌ「だけど今、コンシルはあなたから離れようとしている。だから僕は彼女に会いに来たんです」

向き合った二人に張り詰めた空気が走る。

チュ君「あんたはテ・ゴンシルに何がしてやれるんだ?」
ジヌ「霊魂として彷徨った3年間の記憶、それを取り戻すのを手伝うことです」
チュ君「…。」
ジヌ「コンシルが霊魂を見るようになったのはその時からだから、記憶を取り戻せばコンシルも変わるでしょう」
チュ君「どう変わる?」
ジヌ「これ以上怖がることもなく、霊魂を見る能力を受け入れることができる。あるいは、その能力を失うこともあるでしょう」
チュ君「もう幽霊が見えなくなる可能性もあるのか?」
ジヌ「えぇ」
チュ君「…。」
ジヌ「能力を受け入れるにしても、失うにしても、チュ・ジュンウォン、あなたという防空壕は、これ以上コンシルにとって何の意味もなくなるでしょう」
チュ君「テ・ゴンシルもそれを分かっていると…?」
ジヌ「(頷く)えぇ。それで僕と一緒に行こうとしていたんです」
チュ君「…。」

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+-+-+-+

キム室長とテ嬢の話は続いていた。
ベンチに座り、じっくり話す二人。

テ嬢「キム室長もイリョンみたいに、私が社長のために去るんだってお思いだったんですね。私、ホントに自分のことだけ考えて、発とうとしてたのに」
キム室長「…。」
テ嬢「考えてみたら、キャンディは私より遥かに純情派ですね。相手のために去るんですから。私はそんなふうに清く明るく美しくはできません」
室長「テ嬢も主君のように随分変わりましたね」
テ嬢「
?」
室長「自分を好きになってくれる人がいるだけで恐縮してたのに。(下の方を指し)低くべちゃんこになっていた太陽が、今は高~く昇って輝きたいなんて。引き止めることもできやしない」

上を指さす室長につられ、テ嬢も視線を上げ、微笑んだ。

テ嬢「…。」
室長「どうしていいやら分かりませんよ、全く」

思わず笑ってしまう室長。

テ嬢「ひょっとして、社長もそう誤解していらしゃるんでしょうか?」
室長「…。」
テ嬢「私、ホントにキャンディーの振りしてることになってるんですか?」
室長「さぁ。主君はどう思ってるのか分かりません。主君ですから」
テ嬢「…。」

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屋上から降り、病棟の廊下を歩いてきたチュ君は、向こうからテ嬢が来るのに気づき、立ち止まった。

チュ君「無理やり捕まえて昇らせておいても、目の前にいるとやっぱり生き返るな」
テ嬢「社長。私をどうして引き止めたんですか?」
チュ君「…。」
テ嬢「私、あなたの前じゃあまりに不出来で、あなたのために身を引いてあげようと思ったんだけど?」
チュ君「何をキャンディーの振りしてる?俺が追いかけて行って後ろから抱きしめるとでも思ったか?」
テ嬢「(微笑)バレました?」
チュ君「図々しい太陽、清純可憐な月の振りしたのか?」
テ嬢「いや、私は…それでも、社長のためだって言ったら、少しでも気を悪くせずに理解してくれると思ったんです」
チュ君「図々しくてもハッキリした太陽のほうがいい。顔を少しずつ変えて、人を混乱させる月は嫌いだ」
テ嬢「そうですね。じゃあ、図々しく話します」
チュ君「…。」
テ嬢「私、自分のために発とうとしてるんです。社長のことを全く考えてないわけじゃないけど、自分が優先でした」
チュ君「…。」

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テ嬢「私ね、初めて防空壕にすがりついたときが一番楽だった…。何も考えず、むやみに体当たりすれば良かったから」
チュ君「…。」
テ嬢「だけど、社長を好きになり始めたんです。その頃からだったかもしれません。幽霊を見る自分がすごく嫌になったのは」
チュ君「…。」
テ嬢「落とせるだけ落として私に合わせたって言ったでしょう?だけど、その底にいる私は…すごく惨めでした」
チュ君「…。」
テ嬢「私、このままじゃ生きていけません。私がどうしてこうなったのか突き止めて、幽霊を見る能力なんて、なくせるものならなくしたいんです」
チュ君「突き止めて、また俺のもとに戻ってくればいいだろ」
テ嬢「戻ってくるって約束はできません」
チュ君「…。」
テ嬢「変われなきゃ、社長のそばには絶対に戻るつもりはないから」
チュ君「…。」
テ嬢「言ったでしょう?不吉な太陽としてあなたのそばに昇りたくないって」
チュ君「ドライバーが刺さったとき、お前に会いに行くんじゃなかった」
テ嬢「あなたの人生がそこで終わらなかったから、もっといい未来を生きる方法を見つけたんです」
チュ君「…。」
テ嬢「私のこと、理解してくれますか?」
チュ君「犬コロじゃない。もうわかったからやめろ」
テ嬢「ありがとうございます」
チュ君「この世で一番怖ろしいと言ってた病院にいるところを見ると、防空壕恋しさに戻ってくることはなさそうだな…。お前と合意し直す武器をまた探さなければ。それまで待ってろ」
テ嬢「私は予定通り発ちます」
チュ君「そうすれば、お前は空港に辿り着く前に警察に会うことになるだろうな」
テ嬢「どうして?」
チュ君「お前はセクハラ犯だ」
テ嬢「(笑)」
チュ君「俺の体中をあちこち触りまくったろ。許可なくベッドにまで潜り込んだ」
テ嬢「…。」
チュ君「お詫びに金でも払え。(手を出す)10万ウォン。(両手を広げ抱きしめる仕草)100万ウォンだ」
テ嬢「理解してくれるって言いませんでした?」
チュ君「理解はしても、気遣ってやるつもりはない。俺は絶対に、お前を気持よく送り出したりしないから」
テ嬢「…。」

そう言い切ると、チュ君は強い足取りで彼女の前を去って行った。
彼の後ろ姿を振り返り、溜息をつくテ嬢。

+-+-+-+

カッコよく言い切ったものの、社長室へ帰ってきたチュ君は悶々としていた。
自分が口にした数々の言葉が、今、彼自身に戻ってきたのだ。

「俺は自分のやりたいようにやる。これから全て、お前一人で耐えろ」
「これ以上幽霊を恐れることなく、一人でいても大丈夫だと思うなら、もう自分の家に帰れと送り返してやる」
「あの女にプライドはありません。俺を手放してはならないハッキリした理由があるから、プライドを保つ余裕がないんです」
「終着点が明確なら、俺は怖くない」

チュ君「(イライラ)”お前が耐えろ” ”終着点はある”と毎日のように言ってたが… 本当にそのとおりになったな。(笑顔に)それでも率直な気持ちは伝えたんだから」

途端に満足気な表情で姿勢を崩し、彼はゆったりと足を組む。が…

「(霊魂になった姿)…愛してる」

チュ君「…あれで良かったのか?」

「予想の着く最悪の状況まで行ったようだな」

チュ君「(顔をしかめる)あんなこと言ったのを忘れてた!コ女史に言ったこと…あれは最悪なのに」

「死ぬんだ、終わりだ、未来はない。そんな状況でなけりゃ絶対に口にしないことを言った!またそれを拾い集めて、耐えて、複雑になるのは嫌だ!」

チュ君「…あれは耳に入ってないはずだ。あのときコ女史との取引は終わったんだ。金だって大奮発したのに、(コ女史がテ嬢に)言うはずがない」

一人であれこれ考えた末、チュ君は机に頬杖をつき、ふっと溜め息をついた。

チュ君「これまでいいこと言ってやってこそ、どうして俺にそんなこと出来るんだ?…そう問い詰めることも出来るのに。うーん」

#暇そうだ。とにかく暇そうだ

+-+-+-+

外へ出かけていた叔母夫婦がアン代理と共にキングダムへ戻ってきた。

副社長「ハンナ嬢が犯人だったんですって?はぁ、チュ社長、大変なことになるところだったな。(妻に)君の目論見どおり一緒になってたらどうなってたか」
叔母「…。チュンウォンがどんなに驚いたかしら」
副社長「(アン代理に)犯人はテ・ゴンシルのおかげで捕まったんだってね」
アン代理「えぇ」
副社長「君、パンシルが本当に大功績を立てたんだよ」
叔母「…。」

急いで歩き出した叔母を、二人が追った。

+-+-+-+

叔母は社長室へ入ってくるなり、チュ君のデスクへ直行した。
頬杖をついたまま、じっと目を閉じている甥を心配そうに覗きこむ叔母。

叔母「チュンウォン、大丈夫?」

チュ君はその体勢で目を閉じたまま、片手だけをひょいと上げる。

1763

チュ君「叔母さん、今は辛いから後にしてください」
叔母「そうね」

副社長がチュ君の目線にしゃがみこんだ。

副社長「チュ社長、辛いだろうから、上海キングダムの会議や書類の決済は全部俺がやっておくよ」

チュ君の目がパッと開く。

チュ君「(ジロリ)」
副社長「…。」
チュ君「(右手で頭を指し)こっちで悩む頭と(左手で頭を指し)こっちで悩む頭は別々だから、両方とも僕がちゃんとやります。みんな(両手をブラブラ)出て行ってください」

それだけ言って、彼はもう一度頬杖をつき、目を閉じた。

+-+-+-+

叔母夫婦は仕方なく副社長室へ戻ってくる。

副社長「チュ社長のショックは大きいようだな。そばで癒してやる人が必要ですよ」
叔母「私がいるでしょう?」
副社長「いや、君もいるが、今回は温かい愛の手が必要だ」
叔母「誰のことです?」
副社長「パンシルですよ!」
叔母「!」
副社長「アン代理の話を聞くに、テ・ゴンシルが事件を全部解決して、遠くへ去ろうとしてたみたいですよ。チュ社長も追いかけて行って引き止めて」
叔母「…。」
副社長「まったく…切ないよ、やるせない。本当に…」
叔母「…。」

+-+-+-+

テ嬢もまた、ひとまずキングダムへ来ていた。
スタッフ休憩所でハンジュと姉と3人でテーブルを囲むテ嬢。

ハンジュ「アン代理にお二人の話を聞いて、本当に感動しましたよ!テ・ゴンシルさんが飛行機に乗って、主君が追いかけて!くぅーー!大変だよ」
テ嬢「…。」
姉「…。」
ハンジュ「僕ね、もともと愛にしっかり終止符を打つには、一度飛行機に乗るのが必須だと思ってましたから(笑う)よく分かってる。はははっ」
テ嬢「そんなんじゃないんだけど…」
姉「コンシル、チュ社長がそこまで行くなって引き止めるんだから、行くのやめなよ。ね?」
テ嬢「私、彼のために行くんじゃないよ」
姉「ちょっとあの男の人が…!(ハンジュがいるのを思い出し、やめる)あんたがそういうの見えることだって知ってるのに、それでも好きだって言うならいいんじゃないの?」
テ嬢「(溜め息)お姉ちゃんから見ても、私が自分の身の程も知らずに無茶してるように見える?」
姉「(首を横に振る)」
ハンジュ「テ・ゴンシルさん、押した引いたの駆け引きもそのくらいにしましょうよ」
姉「どうしてコンシルにそんなこと言うの?」

そこへアン代理がやって来てテ嬢に声を掛ける。

アン代理「副社長室でお呼びです」
テ嬢「私を?」
アン代理「えぇ」

アン代理について行くテ嬢の姿を、ハンジュは愉しげに見送った。

ハンジュ「あとは奥様さえ上手く突破すれば、副社長の思い通りになりますね」
姉「…。」
ハンジュ「いや、僕はね、主君とテ・ゴンシルさんは不可能に見えて、乗っかるラインを間違えたかな?そう思ってたのに、こりゃ黄金ラインだったな。はははっ!」
姉「…イ・ハンジュさん。副社長ライン(配下)だったの?」
ハンジュ「もちろんですよ~。僕が副社長の目であり耳であり口であり、頭♪肩♪膝~♪」
姉「それじゃ軽口はイ・ハンジュさんだったの?!!!」
ハンジュ「!!!」
姉「今まで私に牛モツ奢って、豚足奢って、軽口叩くために釣ってたのね!」

+-+-+-+

何だか軽口君で前半後半のインターバルを置くのがホン姉妹のやり方の一つだと再確認したところで、一旦区切ります(笑

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