マンホール-不思議の国のピル11話あらすじ&日本語訳vol.2
ジェジュン、ユイ、チョン・ヘソン、バロ出演のKBSドラマ『マンホール 不思議の国のピル』11話レビュー、後半です。
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チョンエのジューストラックに、客の姿はなかった。
チョンエ「チンスクは上手くやってたのに、私はどうして?チラシも撒いた方がいいのかな」
そこへぶらりとやって来たのがクギルだ。「たくさん売れたか?」
チョンエ「3杯」
クギルはポケットから札を1枚差し出す。「さっぱりしたジュースを1杯くれ」
チョンエはそれを突き返した。「その3杯もクギルさんが買った分だから」
チョンエ「もう飲むのやめなよ。お腹壊すわ」
クギル「腹なんか壊すかよ。(お腹をポン)まだ大丈夫だ。もう1杯くれ」
チョンエは溜息をつき、ジュースの用意を始めた。
クギル「今日みんなで会う日だけど、行くだろ?」
チョンエ「さぁね。行くべきなのかどうか」
クギル「なんで?!」
チョンエ「…。」
クギル「タルスが来るかもしれないから?」
チョンエ「タルスさんの話はしないでって言ったでしょ」
クギル「タルスは来ないって。高貴なご身分なのに、来るわけないだろ」
チョンエ「…。」
クギル「行こうぜ。な?行こう」
チョンエ「(溜息)わかんない」
クギル「行こうってば!」
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執務室の大きなデスクチェアに身を沈め、タルスはぼんやりと窓の方を見つめていた。
「…。」ひとりでに溜息が漏れる。
「理事」職員が入ってきた。「来年度の予算案です。決済をお願いいたします」
受け取ったファイルを開き、タルスは即座にペンをとる。
職員「内容をご確認いただきませんと…」
タルス「兄が代表なんですから、兄に任せておけば入念にチェックなさるでしょう」
職員「それではこのまま進めます」
※壁にかかれている会社名は”ブルームーン商事”ですね^^
ふたたび一人になると、タルスは立ち上がり、長い溜息をついた。「生きるのってどうしてこうも退屈ないんだ?飽き飽きする…」
そこへメールが届いた。
ソクテ(メール)「今日集まる日だよ、タルス兄。時間になったら来るよね?」
タルスは画面をじっと見つめた。「俺が行けるわけないだろ…」
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ソクテは土木課下水管理チームの一員として役所で働いていた。
業務を粛々とこなしながら、彼は携帯を覗く。
画面に表示されているのは、さっき自分がタルスに送ったメールが最後だった。
ソクテ「返事がないってことは、タルス兄は今回も来ないみたいだな…」
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チンスクの串焼き屋、『串サケ』は今日も賑わっていた。
「社長」職員がチンスクに声を掛ける。「あちらにお友だちがお見えですよ」
振り返ってみると、向こうの客席でソクテが手を振っていた。
チンスク「よぉ~ソクテ!いつの間に来てたの?言ってくれればいいのに」
ソクテ「邪魔になると思ってさ。なぁ、社長になってカリスマ性に溢れてるよな」
チンスク「そう?」
ソクテ「カッコイイよ♪ 超胸キュンだよぉ」
チンスク「可愛いんだからぁ❤」
#チンスクもソクテも最近そんなキャラじゃなかったから、戸惑いハンパない
ソクテ「チンスク、足が疲れるだろ。揉んでやろうか?」
チンスク「ここで?人目もあるし、気持ちだけ貰っとくよ」
ソクテ「ふふっ♪」
ソクテはチンスクの手を労るように握った。「起業成功の夢を果たした君には感心だ。綺麗だよ。超リスペクト!」
チンスク「超ありがとう!」
二人はちょんと指を合わせ、笑い合う。
チンスク「そうだ。今日タルスさん来るって?」
ソクテ「どうだろ、来ないみたいだな。メールしたけど返事がないんだ」
チンスク「そうなの?」
「あんまりだわ。チョンエとあんなに仲良くしてたのに」チンスクは顔を曇らせる。
チンスク「ソクテ、ここでちょっとだけ待ってて。仕事終わらせるから、一緒に行こうよ」
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ボンボンホップには一人二人とファミリーが集まっていた。
いつになってもこうして集まる彼らに、オーナーのミジャは呆れ気味だ。
ミジャ「(店員ユンミに)あの子たち、よくあれだけしぶとく会えるわね」
ユンミ「そうね。スジンが結婚したら会わなくなると思ったけど。習慣って怖いわ。いつも会ってたのを、急にやめられはしないのよ」
ミジャ「もっと肴を頼んでくれればいいのに。いつだって貝の和え物一つ頼むだけじゃない」
そこへクギルがやって来て、ミジャに声を掛ける。「生ビールと貝の和え物一つお願いします」
「だから習慣は怖いって言ったのよ」ユンミがそっと呟いた。
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ピルの足取りは重かった。
ボンボンホップの前で足を止め、深い溜息をつく。「…。」
気を取り直し、彼は入り口へと向かった。
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「乾杯!」店の中では、チンスクとソクテ、クギルとチョンエが先に飲み始めていた。
そこへピルが入ってきて、奥の定位置に腰を下ろす。
彼は、何やら仲睦まじいチンスクとソクテに釘づけになった。「?」
チンスク「何見てるのよ?」
ピル「チンスク、お前、えらくソクテと仲がいいな」
クギル「今さらどうしたんだ?こいつら会うたびにこうだろ」
ピル「?」
クギル「おい、お前今日は変だぞ?」
ピルはもう一度チンスクたちを見つめる。「ひょっとして、お前ら付き合ってんのか?」
ソクテ「何言ってんだ?俺たち付き合い始めて361日めだぞ。あと4日で1年なんだからな」
ピルは一人ホッとしたように微笑んだ。「…。」
未来へ来る前の2017年、彼への長年の思いを自ら断ち切ったチンスクの悲しみは、リセットされていたのだ。
#もともと1話でもチンスクはソクテの方と仲が良かったし、そこだけ見ればこの流れに不自然さはないんだけど、チンスクが昔からピルに片思いしてたのは事実。タイムスリップの力技で、経緯や気持ちの変化がウヤムヤになってること、多いよね。タルスオッパがチョンエから離れて会社に戻ってることもそうだし。前回心を痛めたことが、次回であっさりなかったことにされると、正直オオカミ少年に慣れていく村人みたいな心境になってくるよ、、、
ピル「ところで、ソクテ、お前雰囲気変わったな。スーツもちゃんと着こなしてさ」
ソクテ「まぁ、少しは公務員の品位が出てきたってところかな」
ピル「お前も公務員になったのか。おめでとう、成功したんだな」
「?」みながまた疑問符に包まれる。
ソクテ「お前、からかってるのか?」
ピル「?」
ソクテ「合格発表はお前より3日早かったんだ。俺のほうが先輩だぞ。勉強も出来ないくせに」
ソクテの愚痴をかき消すように、ピルは笑顔で拍手をした。「おめでとう」
ピル(心の声)「たった1年でこんなに変わるなんて。ちっとも馴染めないな」
そこへスジンが現れた。
ジェヒョンも一緒だ。
スジン「私たちが最後だったね。ごめん」
ジェヒョン「みなさん、こんばんは。ピルさんも久しぶりです」
ピル「…。」
#今朝会ったのに、わざわざ”久しぶり”と言う皮肉…。
皆が二人を席へ招き入れる。
「椅子を持ってくるよ」席が足りないのを見て、ジェヒョンがさっと動いた。
チンスク「(スジンに)あんた今日キレイね。(小声で)スタジオのことは話した?」
スジン「ううん。許可は貰えなかった。私が働くの、イヤみたい」
一番馴染めないのは… お前だ。
ピルは心の中でつぶやいた。
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ボンボンホップの前に、高級車が一台停まった。
降りてきたタルスが店を見上げ、ふぅっと息をつく。「…。」
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店の中では改めて皆が乾杯の声を上げた。
ジェヒョン「(スジンのジョッキを押さえ)少しだけだよ」
スジン「一杯だけ」
「はぁ、ジェヒョンさんは本当に優しいのね」チョンエが溜息をついた。
チョンエ「私も結婚したら旦那さんに愛されたいわ」
チンスク「だよね~。私も!あ、チョンエ、今日は売れた?」
チョンエ「訊かないで。さっぱりよ。一度コンサルティングしてくれない?商売のことならユン・ジンスク社長が一番でしょ」
チンスク「OK!私がノーハウ全部教えてあげる。その代わり、ジュースは一生タダにしてよ」
そこへそっと店の扉が開き、タルスが入ってきた。
ソクテ「ところで、タルス兄はホントに来ないのかな」
ちょうどソクテが彼の名を口にしたのが聞こえる。
クギル「おい、良心があるならそんな話を口にすんな。いきなり俺たちファミリーを捨てて、町を去ったんだ。恥ずかしげもなく来られるわけないだろ」
チンスク「だけど、お父さんの会社に入ったんだから、もう出世してるはずでしょ。それならカッコよく私たちの前に現れればいいのよ。そうじゃない?」
クギル「あいつが父親の会社に入ったのはな、”一般人コスプレ”で湿っぽく暮らすのが嫌になったからだ。それなのに、ここへまた来るって?俺は”もう来ない”に全財産賭けるね」
雰囲気が沈んだのを見て、チョンエが無理に笑ってみせる。「タルスさんの話はやめようよ」
皆がもう一度乾杯するのを見て、タルスはそのまま店を出た。
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「ねぇ、ところで…」チンスクが切り出す。「考えてみたら、スジンの結婚って私たちの”人生のターニングポイント”だったよね」
チンスク「ピルとソクテは公務員試験に合格したし、チンスクはジューストラックを始めたわ。私は起業して社長になったし」
#社長業は2012年からやってたよね?まぁいいか^^;;;
チンスク「それからクギルさんは…」
と、それっきりチンスクは固まってしまった。
クギル「俺がどうしたよ?」
皆が笑う。
ソクテ「確かにその通りだな。スジンの結婚が俺たちに幸運をもたらしたんだ。俺たちこうして付き合うことになったし♪」
クギル「はぁ、その幸運がなんで俺には来ないんだろう?」
チョンエ「ビリヤード場があるでしょ。生活費が稼げればそれでいいのよ。儲かってるじゃない」
クギル「ありがとな、チョンエ。慰められたよ」
チョンエ「そんなに感動しなくても」
皆が思い思いに話す中、ピルだけは口も開かず、静かにビールを飲み続けた。
ジェヒョンがピルに視線を向ける。「あの…」
ジェヒョン「こうして会った機会に、ピルさんに正式にお詫びします」
皆「?」
ジェヒョン「結婚前に些細なハプニングがあったんですが… あのときは僕が軽率でした」
「いやいや」他の皆が一斉に手を振る。
クギル「100回殴られたって仕方ないですよ。友情が過ぎたって言うか…謝らなくていいですよ」
「いいえ。ちゃんと謝らないと」そう言って、ジェヒョンはピルに頭を下げる。「本当にすみませんでした」
ピル「…。」
「わぁ、ジェヒョンさんは人柄まで素晴らしいわ」チンスクが宥めるようにピルの背中をさする。
ピル「…。」
スジン「全部ハプニングよ。ねぇポン・ピル、あんたももう水に流しなさいよね」
ピルはそれでも何も言えず、俯いた。
「ところで」ジェヒョンが続ける。「ピルさん、付き合っている方はいらっしゃらないんですか?」
ピル「どうしてそんなことが気になるんです?」
ジェヒョン「いや、ただ… 皆さん相手がいるのに、一人でお寂しいかと思って」
ピル「別に寂しくはないけど。ご心配は無用ですよ」
場がピリッとした空気に包まれた。
チンスク「そうよ~。どこかにあんたの運命の相手がいるって。私とソクテみたいにさ」
チョンエ「ねぇ、スジンとジェヒョンさんに比べたら、あんたたちは運命ってわけじゃないでしょ。スジンはイギリス留学中に偶然出会って、結婚までしたんだからさ。それこそ本物の運命だわ。羨ましい」
「スジン」ピルが顔を上げる。「お前たち、イギリス留学中に会ったのか?」
スジン「うん。今考えても不思議だわ」
~~~~イギリス留学中~~~~
スジンが留学先で”偶然”ジェヒョンと会ったのは、一度ではない。
ジェヒョン「こうやってまた会うってことは、デートしろっていう誰かの思し召しじゃありませんか?」
2度めに会った時、ジェヒョンは初めて彼女を食事に誘ったのだ。
~~~~~~~~
スジン「そのときわかったの。運命っていうのがあること」
「…。」ピルは前回2017年に戻ったときのことを思い返した。
チンスクと婚礼品選びに出かけたとき、ジェヒョンと道端で出会ったのだ。
そのとき、彼は留学院の紙袋を持っていた。
ジェヒョン「僕も運命なんて信じていなかったんですけど、スジンに出会って信じるようになりました」
そのとき、ジェヒョンに電話が入る。
ジェヒョンは外に停めた車を移動させるため、一旦店を出た。
それを見て、ピルも立ち上がった。
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車を移動させ、ジェヒョンが店の前へ戻ってくると、そこにピルが立っていた。「ピルさん、どうして外に?」
ピル「ちょっと退屈で…気晴らしでもしようかと」
ジェヒョン「スジンのお友だち、みんないい方たちですね。僕も今後は時々この集まりに参加していいでしょう?」
「…。」それには答えず、ピルは別の話をぶつける。「スジンとイギリスで出会ったのは… 偶然じゃないですよね?」
ジェヒョン「え?どういうことです?」
ピル「おたくが計画的に近づいたような気がして。スジンが留学するのを知って、わざとついて行ったとか?」
「あはは」ジェヒョンは笑い声を上げた。「ピルさん、面白い方ですね」
ジェヒョン「どうしてそんなこと考えるんです?僕とスジンが運命だって、認めたくないんですね。かつてスジンのことをお好きだったのは知っています。でも、スジンはもう結婚したんですから、立場は守っていただきたいですね」
ピルは静かに頷いた。「おたく次第だな」
「どういう意味です?」ジェヒョンの表情が変わった。
ジェヒョン「それじゃまるで、スジンを大事にしなければ僕の場所を奪うと、そう聞こえますが?」
ピル「そう聞こえましたか。そんなつもりで言ったわけじゃありませんが」
ジェヒョン「ピルさんとこうやって感情的に争いたくはないですね。店に戻りましょう」
ピル「パク・ヨンジュさんとはいつ別れたんです?」
ピルは満を持してキラーワードを持ち出した。
「!!!」ジェヒョンが凍りついたのを、ピルはじっくり観察する。
ピル「仕事で偶然パク・ヨンジュさんの家に行ったんです。精神的にかなり辛そうに見えましたけど、その理由がおたくのようだったので」
「…。」ジェヒョンの眉間にふいに力がこもる。「別れたら自分で気持ちに収拾をつけるべきでしょう」
ジェヒョン「別れた後まで僕が彼女の責任を持たなきゃいけないんですか?」
ピル「別れる時にも最低限の礼儀ってものがあります。おたくがケジメのつけ方を間違えたせいで、彼女が苦しんでいるじゃないかと、そう思いましてね」
ジェヒョンがぎゅっと拳を握りしめた。「あんたに俺の何がわかるんだ!!!」
ピル「…。」
ジェヒョン「あの女と別れた後もどれだけ大変だったか!始終俺を監視してストーキングしたんだ。被害者は俺なのに、なんであんたにそんなこと言われなきゃならないんだ?!」
「…。」人が変わったように声を荒げるジェヒョンを見るピルの目は、とても静かだ。
ジェヒョン「ヨンジュに会ってわかったでしょうけど、精神的に問題があるんです。そんな女の言うことを鵜呑みにして僕を疑うなんて、呆れますね」
「だけど…」ピルがようやく口を開く。「なぜあなたの言うことは何もかも信じられないんだろう…?」
ジェヒョン「!」
ピル「俺が知ってるあんたは、羊のようにおとなしそうな顔をして、裏じゃいつも良からぬマネをしてたからな」
「何てことを」ジェヒョンが詰め寄ったところで、スジンの声がした。「やめて、ジェヒョンさん」
ジェヒョンの腕を掴んで引き離し、スジンは大きな目でピルを見る。「ピル、何てこと言うの?」
スジン「ジェヒョンさんのこと知りもしないくせに、なんでそんな言い方するのよ?」
ピル「…。」
ジェヒョン「いいんだ。やめろよ」
「先に帰る。終わったら帰ってきな」さっと背を向け歩き出したジェヒョンを、スジンは慌てて追いかけた。「ジェヒョンさん!」
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車に乗り込もうとしたジェヒョンを、スジンは何とか引き留めた。「そのまま帰るなんて!」
「なんでついてくるんだよ。後で帰ってこいって言ったろ」ジェヒョンの声は冷ややかだ。
スジン「ピルのせいで気を悪くしたでしょう?代わりに謝るわ」
ジェヒョン「なんで君がピルさんの代わりに謝るんだ?!」
スジン「えっ…だって、友だちだから」
ジェヒョンは眉を潜め、疑いの目を彼女に向けた。「君は一体なぜあの集まりに?」
スジン「それ、どういう意味?」
ジェヒョン「正直に言えよ。単に友だちに会うのが目的か?それとも、会わなきゃならない人がいるから?」
「え…」思いもよらないジェヒョンの言葉に、スジンは絶句した。
スジン「会わなきゃならない人だなんて…突然何を言い出すの? 」
「いや、もういいから」スジンが掴んだ腕を、ジェヒョンは冷たく振り払う。「できれば次からあの集まりには出ないでくれ」
スジン「!」
ジェヒョン「もし行くなら、君一人で行けよ。彼らと会うのは…疲れるんだ」
ジェヒョンはスジンを残し、車に乗り込んだ。
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タルスが車を停めたのは、かつてチョンエと共に切り盛りしていたレンタルDVD店の前だ。
ガラスのドアから覗いてみると、中は以前と変わりがなかった。
街灯に照らされ、ほのかに浮かび上がってみえたのは、大きなクマのぬいぐるみだ。
初めてチョンエに気持ちを伝えるため、勇気を振り絞ってプレゼントしたものだった。
#8話バージョンの2017年。スジンのアトリエオープンのお祝いの席でジェヒョンがプロポーズした後のことですね。
そこへ、クギルとチョンエの歩いてくるのが見えて、タルスは慌ててビルの陰に身を潜めた。
クギル「(タルスの車を見て)誰が店の前に停めてんだよ?」
チョンエが鍵を出し、レンタルDVD店の扉に差し込む。「こんなところまで来なくて良かったのに。無駄なことしちゃって」
クギル「無駄だって?!最近どんなに物騒だか。夜遅くに一人で出歩くなよ」
チョンエ「ありがとう。(腕をポン)心強いよ。じゃあね!」
クギル「あ、あの…」
チョンエ「?」
クギル「今日、みんなに会って良かったろ?」
チョンエ「うん。しばらく落ち込んでたけど、みんなの顔見たら気が晴れたわ」
クギル「ほらな?ジューストラックのことで、あまり悩むなよ。すぐお客さんも増えて、上手くいくようになるさ」
チョンエ「そうだね。私にだってきっと運が回ってくるわ」
「じゃあね」「お休み」二人が別れるまで、タルスはビルの陰からそっと窺った。
タルス「ジューストラック?」
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家の前まで帰ってきて、ピルはふと立ち止まった。「?」
隣の家から、スジンの出てくるのが見える。
彼女は両手にダンボールの箱を抱えていた。「スジン?」
ピル「さっきジェヒョンさんと一緒に帰ったんじゃなかったのか?」
#スジンは店に戻らなかったってことですね。
スジン「うん、あんたに渡したいものがあって、ちょっと家に寄ったの」
ピル「?」
「ちょうど良かったわ。受け取って」スジンが差し出した箱を、ピルは受け取った。
ピル「これ、何?」
スジン「んー… 私たちの思い出が詰まったモノたち」
ピル「!」
スジン「子どもの頃からあんたがくれたおもちゃ、人形、カメラ、一緒に撮った写真、全部入ってるわ」
ピル「…それをなんで俺に?」
スジン「あんたに渡してこそ、私たちの関係にキレイさっぱりケジメがつくと思って」
ピル「!」
スジン「あんたの気持ちも一緒に返すわ」
「…スジン」ピルが何か言おうとしたのを、スジンが押さえ込む。「ピル」
スジン「あんたが結婚式に来なかったときも、結納品が届く日に邪魔したときも、私は全部理解したわ」
ピル「…。」
スジン「長いあいだ一緒にいたから、他の誰かがそばにいるのを受け入れるのは辛かったと思うもの。もしあんたが先に結婚することになったら、私も間違いなくそうだったと思うわ。だけど…私たち、いつまでも一緒にいられるわけじゃないでしょう?」
ピル「…。」
スジン「ジェヒョンさんのことが気に入らないかもしれないけど、そろそろ私の選択を尊重してほしいの」
ピル「…。」
スジン「ねぇポン・ピル、今日で過去のことはキレイに忘れて、友だちとして再スタートするのよ。OK?」
「そういう意味で、握手」スジンが明るく手を差し出す。「これからよろしくね」
「…。」ピルは仕方なく箱を地面に置き、彼女の手を握った。
ニッコリ微笑みかけ、その手をスッと外すと、スジンは未練もなく歩き出す。
思い出と恋心の詰まった箱とともに、ピルはそこに一人取り残された。
+-+-+-+
ジェヒョンの車がマンション前の駐車場に滑り込んでくる。
駐車位置を示す白いラインをまたぐように、車は停まった。
エンジンを止め、彼は重苦しい溜息をつく。「…。」
そのとき、後ろで耳障りなクラクションの音が響いた。
車から降りてきた年配の男性が、運転席の窓をノックする。
男性「停めるならまっすぐ停めないと!こりゃ何だ?!他の車はどうしろってんだ?」
ジェヒョン「退きますから」
男性「若者は基本がなっとらん!すみませんと言うのが先じゃないのか?」
「…。」ジェヒョンは大きく溜息をつき、車を降りた。
ちょうどそこへ帰ってきたスジンが、二人の姿を見て立ち止まる。「?」
男性「なぜ降りる?先に車を退かせないか!」
ジェヒョン「それにしても… なんでさっきからずっとタメ口なんだよ!!!」
男性「!!!」
ジェヒョンの鋭い怒号が夜道に響く。
男性はぎょっと目を見開いた。
スジン「!!!」
ジェヒョンはさらに男性に詰め寄る。「車を停めたけりゃ、黙ってじっとしてろ」
車に乗り込み、ジェヒョンは怒りに任せてハンドルを殴りつけた。「畜生!!!」
一部始終を目撃して、スジンは驚きのあまり唇を震わせた。「…。」
優しかったジェヒョンの中に… 自分の知らない何かを見た気がしたのだ。
#いいぞもっとやれ(爆)
+-+-+-+
「別れようって私に言ったんです」精神科医の前で、ヨンジュはポツリと言った。「他に女ができたって」
精神科医「それでヨンジュさんは何と?」
ヨンジュ「別れられないって言いました。ジェヒョンさんはその人を愛してるからじゃなくて、腹いせに結婚したんです」
精神科医「それで、彼の周囲にとどまって監視しているんですか?」
ヨンジュ「先生、ジェヒョンさんを幸せにできるのは私しかいません。あの人はジェヒョンさんのことを何も知らないんです。本当のジェヒョンさんを知ったら…きっと手に負えないはず」
+-+-+-+
部屋に戻り、ピルは受け取ったダンボールの箱を開けてみた。
そこに入っていたのは、一見ほとんどガラクタとも言うべき思い出の品々だ。
ピル「…。」
一つ一つ取り出してみるごとに、ピルの心は絶望に満たされていった。「どうにかなっちまいそうだ、スジン」
ピル「結婚おめでとうって言ってやらなきゃならないのに。お前が幸せそうで嬉しいって… そう言ってやらなきゃいけないのに。俺… どうしても言葉に出来ないんだ」
彼は机の上の置き時計に目をやった。夜11時半を過ぎたところだ。
思い出のカメラをもう一度見つめ、彼は勢い良く立ち上がった。
そうだ、このままじゃいられない。
”元々の現在”に戻って、あれだけ望んでいた警察にもなれたけど、スジンのいない人生なんて俺には何の意味もないんだ。
スジン、俺はこの状況を変えてみせる。
何としてもこの状況を変えて、お前を取り戻すから!
町を抜け、大通りを抜け、トンネルを抜け…
ピルはいつもの街灯の下で立ち止まった。「?」
そこにマンホールの蓋はなく、埋めた跡が丸く残っているだけだ。「えっ…?」
ピルは愕然と膝を落とした。「何だよ?マンホールはどこ行ったんだ?」
#すみません。前に同じ場所でピルの魂がソクテに憑依したときの、「ソクテのヤツどこ行った?!」の言い方と全く一緒で、思い出して笑ってしまいました^^ 可笑しくて3回リピ♪
ピル「どうなってんだよ~~~!!!!!」
ピルの悲痛な叫び声が、虚しく響いた。
+-+-+-+
ここでエンディングです。
スジンが思い出の品をピルに返して、「あんたの気持ちを返す」っていうのは、ちょっと違うと思うなぁ。
高価なものだったり、誓いの意味がこもった指輪だったり、そういうものならわかる。
けど、ああいうおもちゃやガラクタに詰まっているのは、それをスジンにあげたピルの気持ちではなく、「もらって嬉しかったスジンの気持ち」「大事に取っておきたいと思ったスジンの気持ち」の方だ思う。
これはスジンが自分で処分するべきものであって、こんなものを返された日には「こんなに大事に取ってたのか」と男は感激なり困惑なりしますよ、きっと。
スジンの場合は「これからは友だちで」という宣言付きだったから誤解はなかったけど。
それにしても…
そのときそのときでスジンの気持ちをどう捉えていいのか、見ていてちょっと戸惑いますね。
スジンにすれば、一度も告白されたことがないだけでなく、今まで出した手紙だって全く返事がない(※ソクテに横取りされてるので)のですから、本当なら友だちの関係でいることさえ難しかったはず。スジンの気持ちがどう移り変わったのか、今後、スジン側の描写があるといいなぁと思います。
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