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マンホール-不思議の国のピル13話あらすじ&日本語訳vol.1

   

キム・ジェジュン(JYJ)、ユイ、チョン・ヘソン、バロ(B1A4)出演のKBSドラマ『マンホール 不思議の国のピル』13話のあらすじを、細かいセリフの翻訳を混じえて紹介します。

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「もしもし!兄貴、聞こえるか?クギル兄!」電話の応答はない。
ピルは駆け出した。

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執拗に蹴り上げた末に、クギルがぐったりと動かなくなると、”黒ずくめの男”は背後から小さな声が聞こえてくることに気がついた。「?」

携帯電話が落ちていたのだ。

声(電話)「兄貴、何ともないよな?大丈夫だろ?兄貴、待ってろよ、すぐ行くから!もしもし、兄貴、聞こえる?もう着くぞ」

腰をかがめて電話の画面表示を覗き込む。

黒ずくめの男「ポン・ピル?!」

男は後ろで伸びている男の元へ戻り、そこで初めて顔を確かめる。「!!!」

黒ずくめの男「何だよ…!なんでよりによって!」

そこへ足音が近づいてくる。
男は急いでその場を退いた。

「クギル兄!しっかりしろよ、兄貴!どうしたんだよ!」駆けつけたピルは伸びたまま動かないクギルを必死で揺すった。

ピル(電話)「もしもし、119番ですか?人が倒れているんです」

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ジェヒョンの車がマンションの駐車場に入ってきた。
助手席の黒いバッグを掴み、トランクに入れると、車の窓ガラスを覗いて手早く見た目を整える。

家へ戻ると、リビングにスジンがいた。「遅かったわね」

ジェヒョン「あぁ」
スジン「どうしてそんなに汗かいてるの?」
ジェヒョン「運動も兼ねて、ちょっと走って帰ってきたんだ」
スジン「ふーん」

そこへスジンの電話が鳴った。

スジン(電話)「…えぇっ?!クギルさんが?!わ、わかった」

ジェヒョンの顔がわずかに引きつる。

ジェヒョン「何かあったの?」
スジン「大変!クギルさんが暴行に遭って、病院に入院したって」
ジェヒョン「え?!」
スジン「すぐ病院に行かなきゃ」
ジェヒョン「ああ、一緒に行こう」

二人はすぐに玄関へ向かった。

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緊急病棟では医師がクギルに応急処置を行っていた。
ベッド脇で、ピルは派出所へ電話を入れる。「今、現場から被害者を病院へ移送して来ました。容態を確認したらすぐご連絡します」

電話を切ると同時に応急処置が終わった。
そこへソクテ、チンスクとチョンエが駆け込んでくる。

ソクテ「(ピルに)どうしたんだ?」
ピル「通り魔暴行に遭った」
チョンエ「!」
ピル「暴行現場を目撃して俺に電話をくれたんだけど、その瞬間、兄貴もやられたみたいだ」
チンスク「容態は?」
ピル「まだ意識が戻らないけど、そんなに大きな怪我じゃないらしい」

小さな安堵の溜息が漏れる。

チョンエ「クギルさん…」

チョンエの声が聞こえたからだろうか。
「あぁ…」クギルが呻き声とともに目を開けた。

チョンエ「気がついた?」
ピル「!」
クギル「ここどこだ?」
チョンエ「病院よ。倒れてるのをピルが見つけて、連れて来たんだって」
ソクテ「兄貴、大丈夫?」
クギル「あぁ、大丈夫」

「起きないと…」起き上がろうとしたクギルを、チンスクがさっと制した。「ダメよ」

ピル「兄貴、じっとしてろよ。検査も受けないと」

「何て顔なのよ…」血まみれの顔をチョンエがしきりに撫でる。

チョンエ「そんなことがあったら逃げなきゃ、どうして足を突っ込むのよ」
クギル「人が殴られてるのに、知らん顔できるわけないだろ」
ピル「兄貴、犯人のことで思い出せることないか?顔は?」
クギル「見てないんだ。いきなりやられたから」

そこへスジンとジェヒョンが到着する。

スジン「クギルさん、大丈夫?」
クギル「この程度で来ることないのに」
スジン「クギルさんが怪我したのに、じっとしていられるわけないでしょ」
クギル「あぁ…ジェヒョンさんも来たんですね」

#どきっ!こんなにすぐ再会するとはね

ジェヒョン「当然のことです。心配したんですよ」
クギル「ありがとうございます。来てくださって」
ジェヒョン「このくらいで済んで本当によかった」

ジェヒョンの視線がピルへと向かう。「ところで犯人は捕まったんですか?」

ピル「いいえ。取り逃がしました」
ジェヒョン「…。」

「兄貴」ピルはクギルの顔を覗き込んだ。「何が何でも捕まえるから、心配するなよ」

ピル「みんな、俺、現場に行かないと。同僚たちが出動してるはずだ。クギル兄を頼む」
皆「(うんうん)」
クギル「ピル、気をつけてな」

病棟を出て行くピルを、ジェヒョンがそっと目で追った。「…。」

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ピルが事件現場へ戻ってくると、そこは黄色いテープで封鎖され、すでに他の警察官たちが集まっていた。
先輩のチェ警査が声をかける。「被害者の容態はどうだ?」

ピル「大きな怪我はなく、意識が戻ったのを見て戻ってきました。証拠品かなにか見つかりましたか?」
先輩「全く。きれいなもんだ。どえらく悪賢いヤツだな」

キョロキョロと周囲を見渡したピルの目が止まる。
防犯カメラを見つけたのだ。「あの防犯カメラ、確認してみないといけませんね」

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ピルたちは派出所へ戻り、さっそく事件発生時刻の防犯カメラの映像を確認する。
第一被害者がフラフラと角を曲がっていった後、男がもう一人やってきて立ち止まり、角を曲がる。

先輩「ストップ!こいつ、怪しいな」
同僚「えぇ、被害者たちの外にこの道へ入ったのはこの人しかいませんね」
先輩「拡大してみろよ」

映像の中の”怪しい男”が拡大される。

先輩「痩せ型に…身長は180くらい。顔は完全に隠しちまってるな。もう少しハッキリしたものがあればいいんだが」

「なぁ」先輩がピルの肩をちょんとつつく。「朝になったら俺たちでもう一度現場に行ってみよう」

ピル「わかりました」
先輩「マスク一つで顔を全部隠してやがる…」

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朝が来た。

洗面所の鏡の前でいつものように化粧水をスプレーしていたジェヒョンは、急にビクリと顔をしかめた。
化粧水がヒリヒリとしみたのだ。
首に2センチほどの赤い傷がある。

スジンはダイニングで朝食の用意をしていた。
リビングのテレビではニュースが放送されている。

ニュース「ふたたびソウルで通り魔暴行事件が起きました。昨夜ソウル市銀河区のある通りで、通行人のカンさんを理由なく暴行した犯人が、それを目撃した別の市民ヤンさんにまで暴行を加えて逃走し、警察が捜査に乗り出しました。警察は重要容疑者と思われる人物の映った防犯カメラ映像を入手し、それを公開して全国手配を…」

そこへ洗面所からジェヒョンが出て来た。「何をそんなに夢中で見てるんだい?」

スジン「あぁ、ジェヒョンさん。クギルさんの事件がニュースに出てるわ。犯人が防犯カメラに映ってたみたい」

画面には向こうから通りを歩いてくる犯人の姿と共に、容疑者の特徴が『痩せ型、身長180cm以上、黒い帽子、黒いマスク』と紹介されている。

ジェヒョン「食事にしよう」

ジェヒョンがダイニングを振り返ったとき、スジンが声を上げた。「ちょっと」

ジェヒョン「?」
スジン「ジェヒョンさん、首どうしたの?(傷に手を伸ばし)怪我したの?」
ジェヒョン「ちょっと引っ掻いたんだ。ひげを剃ってて」
スジン「痛そう。薬塗ってあげるわ」

ジェヒョンが彼女の手首を掴む。「大丈夫。自分でやるよ」

ジェヒョン「食事にしようよ」
スジン「うん…。痕が残りそう」
ジェヒョン「ピルさんが昨日の事件を捜査するって言ってたけど、何かわかったって?」
スジン「さぁ、わからないわ。あれから連絡してないから」
ジェヒョン「…。」
スジン「後で会ったら聞いてみるわ」
ジェヒョン「…。」
スジン「ジェヒョンさん、服を準備してくるわ。先に食べてて」
ジェヒョン「あぁ」

スジンが部屋へ向かうと、ジェヒョンはそっとテレビを振り返った。「…。」

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ピルは第一被害者カン氏の病室を訪れていた。

#良かった…。これまでおっちゃんの安否に一切触れないから気が気じゃなかったよ。

「防犯カメラの映像が手に入りました」そう言って、被害者カン氏に写真を見せる。

カン氏「思い出せませんね」

「早く捕まえてください」ベッド脇で妻が訴えた。

#この人が家で待ってる恐ろしい嫁ね(笑)

ピルはその後も事件現場付近の人々に、写真を見せて回る。「昨日向こうの通りで暴行事件があったんですが、防犯カメラに人が映っていたんです」
前日、昼にトンネルで通り魔暴行に遭った被害者の元も訪ねた。
それでも皆、首を横に振るばかりで、なかなか有力な情報は手に入らない。

+-+-+-+

スジンは実家へ来ていた。

スジン母「えぇっ?クギルが暴行に遭ったの?」
スジン「うん。ニュースにも出てた」
母「はっ!あのニュースがそうだったの?!クギルは大丈夫?」
スジン「入院してる。大怪我はしてないけど、すごくショックだったと思うわ」
母「何てこと… どこの気狂いがそんなマネしてるんだか!」
スジン「そうよね。お母さんもお父さんも夜遅くに出歩かないでね」
母「あんたたちこそ気をつけなさい。パク君も薬局を早く閉めて家に帰るように言いなさいね。はぁ、大の男がやられるんだもの、安心して暮らせやしないわ」
スジン「早く帰るように言ったわ」
母「ねぇ、ところでパク君とは上手くやってるの?」
スジン「もちろん。何事もないわよ」
母「あんた、パク君としっかりやりなさいよ。どこを探してもパク君みたいな婿はいないわ」
スジン「やれやれ、わかりましたってば」

母はキッチンから大きな風呂敷包みを二つ持ってくる。「パク君の好きなカッキムチとカワハギの和え物よ。持って行って」

スジン「やった!ありがとう、お母さん。ついでにクギルさんにもあげなきゃ」
母「そうなさい」

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ジューストラックのそばに黒い車が停まった。
タルスに先立ち、秘書が正面に回ってみると、トラックの荷台の扉は固く閉ざされ、人の気配はない。

秘書「今日は閉まっているようですが」
タルス「どうしたんだろう?電話してみてください」

秘書がその場で電話を掛ける。「もしもし、今日ジューストラックはやっていないんですか?会議に必要なドリンクを注文したいんですが」
通話はすぐに終わった。

タルス「何て?」
秘書「今日は営業しないそうです」
タルス「何かあったのかな」

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「あーん♪」チョンエはクギルに手作りのお弁当を食べさせていた。

#ふふふ^^ なんて微笑ましい

クギル「あははっ!怪我して幸せだな。ご飯も食べさせてもらって。このまま怪我してようかな」
チョンエ「バカなこと言ってないで早く食べて。あーん」
クギル「(おかずを指差し)お肉をくれよー」

そこへスジンが顔を見せた。「あ、ご飯食べてたのね」

スジン「大丈夫?」
クギル「大丈夫♪ あははは」
スジン「お母さんが作ったおかずを持ってきたんだけど」
チョンエ「おかずは私が用意するのに。でも、ありがとね、スジン」
スジン「チョンエも大変ね。クギルさん、事件のことニュースに出てたわ」
クギル「あぁ、俺も見た。俺、有名人になったんじゃないか?」
チョンエ「もう!お気楽なんだから!もう他人事に足を突っ込むんじゃないわよ。喧嘩も出来ないくせに」
クギル「あのときはコンディションが良くなかったんだってば」

ドアが開き、ピルが入ってくる。
彼の顔を見て、スジンは固まったようにそっぽを向いた。

ピル「スジンも来てたんだな」
スジン「…うん」
チョンエ「ピル、犯人のことで何かわかった?」
ピル「いや、何も。被害者全てに会ってきたけど、みんな顔を見てないって言うし、突破口がないんだ」

「なぁ」クギルが口を開く。「お前に会ったら話そうと思ってたことがあるんだ」

ピル「?」
クギル「落ち着いてみたら思い出したことが一つあって」
ピル「何だ?」
クギル「犯人の手首に傷があったんだ」
ピル「傷?」
クギル「あぁ。かなり大きい傷みたいだった」

クギルはチョンエにペンとメモ用紙をもらう。「見てろよ」

クギル「(絵を描きながら)こんなふうに、手首に長い… そう、こんな傷だった」

ピルには一つ心当たりがあった。
前回、マンホールに1時間早く吸い込まれたときのことだ。
暴行犯を捕らえようとして、手首に傷があるのを見たのだった。「あぁ、あいつだ」

チョンエ「何のこと?」
ピル「手首にこういう傷があるヤツを前に見たことがある」
チョンエ「誰なの?」
クギル「どんなヤツなんだ?」
ピル「そのときも人を暴行してるところを捕まえたんだけど、結局取り逃がした。きっと同一人物だ」
チョンエ「はぁ、そのとき捕まえていれば…。一体どんなヤツなの?!」
クギル「きっとイカれてるんだ」

「…。」スジンは緊張した様子で口をぎゅっと結んだまま、何も話さない。
何か思い当たることがある様子だ。

ピル「(メモ用紙を手に取り)兄貴、とりあえずこれを本署に報告して、捜査の参考にするよ」
クギル「あぁ、絶対捕まえようぜ。そいつの顔が見たい」
チョンエ「お願いね、ピル」

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「スジン!」病院を出たスジンを、ピルが追いかけてきた。

ピル「荷物もあるんだし、家まで送るよ」
スジン「結構よ」

「重そうに見えるのに」ピルが荷物に掛けた手を、スジンは引き剥がす。「ううん、大丈夫。重くないから」

ピル「この程度の厚意は受け取ったっていいだろ」
スジン「あんたがジェヒョンさんに悪い感情を持ってる以上、前みたいに接することは出来ないわ」
ピル「…。」
スジン「私たち、時間を置きましょ」

「じゃあね」スジンはあっさりと背を向けた。

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ジェヒョンに捨てられた昔の恋人ヨンジュは、今日も二人で撮った写真を見つめていた。
首に残っている赤い傷は、昨夜、ジェヒョンに締め上げられた痕だ。
鏡を覗き、首の傷を確かめると、ヨンジュは不気味な笑みを浮かべた。「ジェヒョンさん…」

ヨンジュ「私の手に入らないなら… 誰も手に入れられやしないわ」

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持ち帰った惣菜を冷蔵庫へ移しながら、スジンはふと手を止めた。

スジン「ジェヒョンさんの手首にも傷があるのよね…。何だか気が悪いわ」

そこへ電話が鳴り始める。
相手の表示を見て、スジンの顔がパッと輝いた。「もしもし」

「私です、ヨンジュ」相手はヨンジュだ。「お茶でもしません?」

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公園のベンチでスジンが待っているところへ、ヨンジュは二人分のコーヒーを持って現れた。
白い華やかなブラウスに、鮮やかな朱色のパンツ姿だ。「いい天気ですね」

ヨンジュ「こんな日はスジンさんと写真を撮りに出掛けたら良かったでしょうに」
スジン「そうですよね。今度ぜひ一緒に行きましょ」

「ところで」スジンはコーヒーを飲もうとして、もう一度ヨンジュを振り返る。「すごく素敵なスカーフですね」
彼女の目に留まったのは、ヨンジュが首に巻いているエンジ色のスカーフだ。

スジン「どこで買ったんです?」
ヨンジュ「プレゼントしてもらったんですよ」
スジン「誰が?恋人ですか?」

「えぇ」ヨンジュが得意げに笑った。

スジン「センス抜群の彼氏ですね!幸せそう♪」
ヨンジュ「幸せだなんて。結局その人、別の女に盗られたんです」

「!」スジンがギクリとする。

ヨンジュ「すごく長い間つき合ってたのに。別の女と結婚したんですよ」
スジン「あぁ、何てこと。お辛い…でしょうね」

「辛いわ」ヨンジュは前を向いたまま、淡々と言った。「まだ彼を愛してるから」

スジン「元気だしてください。ヨンジュさんはもっといい人に出会えるわ」

何とか励まそうとするスジンに、ヨンジュは微笑みかけた。「他の人は要らないんです」

スジン「!」
ヨンジュ「私は彼じゃなきゃダメだから」
スジン「あぁ…」

「スジンさんは…」ヨンジュはスジンの方へ向き直る。「旦那さんが他に愛している女性がいるとしたら、その人に旦那さんを渡せます?」
突拍子もない質問にスジンは苦笑いをする。「そんなこと…」

スジン「あり得ないわ」

「どうしてあり得ないの?」ヨンジュの顔から笑みがさっと引いた。

スジン「?」
ヨンジュ「ジェヒョンさんはもともと私の男だったんだから、私に返してもらわなきゃ!!!」

突然声を荒げるヨンジュを見て、スジンは驚きのあまり目を丸くした。「!!!」

ヨンジュ「あんたさえいなかったら、今ジェヒョンさんの隣には私がいたはず」
スジン「!!!」
ヨンジュ「あんたが私の場所を奪ったのよ!!!」

ヨンジュの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。

スジン「あなた… 誰?」
ヨンジュ「私?ジェヒョンさんとお互いに愛し合ってる仲よ」

涙を流しながら、ヨンジュはニヤリと笑う。

スジン「…。」
ヨンジュ「忠告するわ。あんたはジェヒョンさんと長くは続かない。ジェヒョンさんに耐えられる人は私しかいないもの」
スジン「あなた、イカれてるわ…。もう話すことはないから、さ、先に帰りますね」

立ち上がったスジンに、ヨンジュが追い打ちを掛ける。「ジェヒョンさんには暴行の前科と精神病歴があるの、知ってる?」

スジン「!!!」

振り返ったスジンの顔を見て、ヨンジュは愉しげに笑う。「ほらね?手に負えないくせに」

スジン「あなたの言うことは信じないわ」

ヨンジュの笑い声を背に、スジンは逃げるようにそこを立ち去った。

+-+-+-+

まるで方法を忘れてしまったように、呼吸がままならなかった。
ひとしきり歩いてきたところで足を止め、スジンは苦しい胸をドンドンと叩く。

スジン「しっかりしなきゃ。頭がおかしい人なのよ。あんな人の言うこと、聞く必要ないわ」

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薬局のカウンターでジェヒョンは携帯を睨んでいた。
見ているのは通り魔暴行事件のニュースだ。「困ったことになったな」

彼は電話を掛ける。「旅行社ですか?イギリス旅行に行きたいんですが」

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ジェヒョンがマンションへ帰ってきた。
「ただいま」声を掛けても、スジンは硬い表情でソファに座ったまま、彼の顔をまっすぐ見ようとはしない。「うん、お帰り」

ジェヒョン「何かあったの?気分が悪そうだな」
スジン「…。」
ジェヒョン「友だちが怪我したから?」
スジン「ううん」

「ジェヒョンさん」立ち上がったスジンの目が、涙に潤む。「この間、ジェヒョンさんの携帯を見つけてくれた女の人のことだけど」

ジェヒョン「…。」
スジン「ジェヒョンさん、その人のこと知らない?」
ジェヒョン「急にどうしてそんなことを?」
スジン「今日、パク・ヨンジュさんに会ったわ」
ジェヒョン「…。」
スジン「パク・ヨンジュさんの言うには、ジェヒョンさんと長い間つきあっていたって。本当なの?」
ジェヒョン「あぁ」

「!」スジンの息が乱れる。「それならどうして写真を見た時、知らない人みたいに訊いたのよ?」

ジェヒョン「彼女の存在を、君に知ってほしくなかったから」
スジン「!」
ジェヒョン「写真でヨンジュが君に近づいたと知って、やめるよう言い聞かせに行ったんだ。だけど、結局僕の言うことを聞かなかったみたいだな」
スジン「そんな… ジェヒョンさんは結婚までしてるのに、あの人一体どうしてこんなことを?!」
ジェヒョン「ヨンジュに会ってわかっただろうけど、あいつは精神的に問題がある。別れてからもしつこく僕を追い回して、ずっと監視してたんだ。僕もヨンジュのせいでどれだけ辛かったか。法的措置も考えたけど、一時はつき合っていた人だから、そこまで出来なかったんだ」
スジン「そんなことがあったなら、前もって私に言ってくれないと。どんなに驚いたかわかる?」
ジェヒョン「ごめん。全部僕のせいだ」

スジンは大きく首を横に振った。「精神的に問題のある人なんだから、ジェヒョンさんにもどうしようもないわ」
ジェヒョンは彼女を抱きしめる。「すごく驚いただろうね」

ジェヒョン「今後、彼女が君に近づけないよう措置を取るよ」

#どんな措置ですか(((;゚Д゚)))ガクガクブルブル

スジン「わかったわ。ジェヒョンさんも気をつけて」
ジェヒョン「…あぁ」

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ソクテが役所の外でコーヒーを飲んでいると、上司が戻ってきた。「あぁ、ソクテさん」

上司「憩い公園のマンホール、セメントで塞いだのがあったろ」
ソクテ「えぇ、それが?」
上司「管理できてないのか?誰かが壊してるって苦情が入ってるぞ」
ソクテ「ええっ?!」

+-+-+-+

ソクテはマンホールを見に来て愕然とした。
壊そうとして叩いた跡があったのだ。

ソクテ「わぁーポン・ピルのヤツ!正気じゃないな。(捨ててあるハンマーを発見し)どこからこんなもの?どこだ、ポン・ピル、出てこい」

#薄々感じてたけど、バロくんはコミカルな演技をさせたら水を得た魚みたいにイキイキするよね!上手い♪

+-+-+-+

「手首に傷?」先輩のチェ警査が訊き返す。
ピルは派出所へ戻っていた。

ピル「被害者の言うには、手首に長い傷があったそうです」

持ち帰ったクギルのメモを見せる。「本署に報告すれば手がかりになりませんか?」

シン巡査「けど、傷一つでどうやって探すんです?一人ひとり手首を見るわけにもいかないし。容疑者が特定できてからのことでしょう」
先輩「何もないよりイイじゃないか。暴行の前科者の中から手首に傷のあるヤツを抜き出せば、何か出てくるかもしれない」
ピル「(頷く)」
先輩「とりあえず担当刑事に渡すんだ」
ピル「はい、わかりました」
先輩「ところで、友だちの容態はどうだ?」
ピル「まだ病院にいるんですが、思ったより回復が早くて」
先輩「そのくらいで済んで良かった。知り合いがそんな目に遭って気が悪いだろうが、事件は担当刑事に任せて、派出所の業務に戻ろう」
ピル「はい」

そこへハンマーを握りしめ、飛び込んできたのはソクテだ!「おい、ポン・ピル!」

ソクテ「憩い公園のマンホール、お前がやったんだろ!」
先輩「な、何だ?この人は?」
ピル「何でもないんです。僕が何とかしますので」

「外で話そう」ピルは慌ててソクテを外へ押し出した。

ソクテ「お前、気でも狂ったんじゃないか?なんであんなことしたんだよ?マンホール壊して、時間旅行するつもりか?」
ピル「なぁ、そこまでするなんてどれほどのことだと思う?お前に頼んでも聞いてくれないし、自分でやるしかないだろ」
ソクテ「最近新興宗教でもやってんのか?マンホール教とか?最近ホントに変だぞ」
ピル「あぁ、俺の言うことが信じられないのは十分理解できる。けどな、頭がおかしいって言われるとわかってて、お前にこんなこと頼むってことは、どれだけ切迫してると思う?」

「あぁ」ソクテが頷く。「万が一お前の言うとおりだとしよう」

ソクテ「一体どうして時間旅行がしたいんだ?」

「幸せじゃないから」ピルが絞り出すように言った。
「!」ソクテの顔から勢いが消える。

ピル「ここは俺の選んだ現実じゃない。どんなに努力しても何も変えられないんだ」
ソクテ「… なぁ、そんないきなり真剣に言われたら(急に表情を変え)信じるとでも思ったか!」
ピル「…。」
ソクテ「警告だぞ。今度あんなマネしたら警察クビにさせてやるからな!」

「しっかりしろ!」ソクテはそう言い捨て、ガックリ肩を落とすピルを残して立ち去った。

+-+-+-+

ここで区切ります。
気がついたらキャプったのはジェヒョンとヨンジュばかりでした…。
このお二人、キャスティングばっちりでしたね。

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