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マンホール-不思議の国のピル6話あらすじ&日本語訳vol.1

   

ジェジュン(JYJ)、ユイ、チョン・ヘソン、バロ(B1A4)出演のKBSドラマ『マンホール 不思議の国のピル』6話のあらすじを、細かいセリフの翻訳を混じえて紹介します。

2011年夏、海の家の火事から見事スジンを助け出したピル。
期待して現在へ帰ったピルを待っていたのは、あのときの怪我のせいで6年間意識不明の自分でした。
それでも、魂になって彷徨ったお陰で、知らずにいた両親の思い、スジンの思いに触れることができました。
さぁ、動けない体を連れて、再びマンホールに吸い込まれてリセットしないと、本当に死んでしまいます!
でも、どうやって?

では、さっそく~♪

+-+-+-+-+

「時間がないんだ。お前に話してもわからないから」ソクテに憑依し、自分の体を運び出そうとしたピルは、廊下でスジンに出くわし、押し切ろうとした。
しかし、それでもスジンは彼らの前を動かなかった。「わかるわ、私」

スジン「あんた、ピルでしょ」
ピル(憑依)「!」

二人の間に、沈黙が流れる。

ピル(憑依)「お前、俺のことが見えるのか?」
スジン「ううん、感じるの」
ピル「…。」
スジン「ピルだよね?そうでしょ?」

スジンはじっと彼の目を見た。「目を見ればわかるわ」

ピル「…。」
スジン「あんたの目には… どこか特別ものがあるの。ずっと昔から」

スジンは強く彼に抱きついた。「どんなに待ってたか」

#開始1分で泣いてる私って。・゚・(ノД`)・゚・。

スジン「あんたに言いたいことがたくさんあったの」
ピル「…。」
スジン「これからは私のそばにいてくれるんでしょう?」

何か言おうと彼が口を開けたのを、スジンが遮った。「こんなふうに一緒にいてくれるんでしょう?ピル」
彼はもう一度、今度は自分からスジンを抱き寄せる。「俺…」

ピル「ずっとお前のそばにいたって」

「スジン…」聞きたかった言葉…。彼の腕の中でスジンの目に涙が溢れた。

と…

いきなり後ろから背中を引っ張られ、ピルはソクテの体からふるい落とされた。
クギルの父も同様、ソクテの父の体から脱出していた。

スジン「!」

体を乗っ取られていたソクテ親子は、あっという間に警備員に取り押さえられる。

スジン「待ってください!(ソクテに)ピル、大丈夫?」
ソクテ「あれ?スジン?お、俺なんでここに?」

スジンは驚いてソクテの目を覗き込む。

ソクテ「なんでここに俺がいるんだよ?」
スジン「…ううん、確かにピルだったのに」

こうして不憫なソクテ親子は知らないうちに”患者泥棒”になってしまったのだ。

そして…。

この日のマンホールは、誰も吸い込むことなく12時を迎えた。

6話『愛せよ、今日が最後であるかのように』

+-+-+-+

ソクテがいなくなった後、チンスクたちはもう一度飲み直していた。
「最近連絡も寄越さないでどうしてたんだ?」カウンターに入っているクギルが、タルスの前にビールを置く。

「別に」ビールをスッと押し戻し、タルスはグラスにワインを注いだ。「事業やってる先輩にへつらって、食いっぷち得てるさ」

チンスク「それじゃ食いっぷちキープするにはもう帰らないと。12時過ぎたよ。私、明日出勤しなきゃ。帰ろうよ」
タルス「それにしても、お前なんで就職したんだ?起業するんだって、あんなに張り切ってたのに」
チンスク「なんでって… ピルのせいよ。昔あいつにさ、一緒に起業しようって思い切りそそのかされたんだから。そのくせ自分は…」

勢いで言ってから、チンスクは言いよどむ。「…臥せってるし」

皆「…。」
チンスク「1年1億プロジェクト、しっかり計画してあったのに」
クギル「その話、ピルから持ちかけたのか?初耳だな。あぁ、俺もピルに釣られたことがある。高校の時、チョンエが俺のこと好きだってピルが言ったんだ」
チンスク「もう!何言ってんのよ」
クギル「いつも俺のことばかり見てるって。そのときすごく胸が踊ったんだけどな…」
チョンエ「ちょっと!私、タルスさんを見てたんだから。クギルさんはただ横にいただけよ」
クギル「チッ」
チョンエ「(チンスクに)ねぇ、昔さ、赤いジャンパー着たタルスさんに初めて出会ったとき、一目惚れしちゃったよね。あの赤い色が目の前に…!」

興奮してタルスの方を向き、彼女はハッと我に返った。「(小声で)落ち着け心臓」

タルス「あの赤いジャンバーって、ピルの服だったんだけど」
チョンエ「?」
タルス「俺が寒そうだからって、自分のをくれたんだ。しばらくはあればっか着てたな」
チンスク「そうだったの?!それじゃ、タルスさんも釣られたんじゃない、ピルに。そのせいでチョンエがストーカーみたいに追い回すようになったんだから」
クギル「あぁ、そのジャンパー、俺が着てればよかったのに」
チョンエ「だからってバッタ物がブランド品になる?」(←ひどい
クギル「実用にはバッタ物のほうがいいぞ。試してもみないで言うなよ」(←めげてない
チョンエ「(タルスをみて)私はブランド品がいいわ♪」
チンスク「やれやれ、いまだにお盛んね」
タルス「ブランド品ならそのまま大事に閉まっておいたらどうかな」
チョンエ「私の家に?」

そこへ、チンスクの携帯にメッセージが入った。「どういうこと?今病院で大騒ぎだって」

+-+-+-+

ソクテは必死で警備員に弁明していた。「どうしてここにいるのか自分でもわからないんです」
そこへチンスクたちが駆けつける。

チンスク「ソクテ!(横にいるソクテ父を見て)おじさんどうしてここに?」
ソクテ父「幽霊に取り憑かれたんだ」
チンスク「え?」
ソクテ父「幽霊に取り憑かれたんだ」
看護師「この人たち、スタッフの服を着て、患者を拉致しようとしたんです」
チンスク「えぇ?!ピルを拉致しようとしたって?」
ソクテ「違うよ…」
看護師「すぐ見つかって幸いでしたよ」
ソクテ「違うんだ、みんな。自分でもどうしてここにいるのかわからないんだってば」

病室の中では、元通りベッドに戻されたピルに、スジンが付き添っていた。
少し離れたところで事情を聞かれていたピルの両親がやってくる。

ピル父「(警備員に)この人たち、私が治療を中止するんじゃないかと騒ぎを起こしたようです。(ソクテを指し)ピルの友だちで、(ソクテ父を指し)うちの職員です。このまま穏便に済ませましょう」
ピル母「(警備員たちに)理解に苦しむでしょうけれど、ただ呆れた人たちだと思ってくださいな」
ソクテ「おばさん!僕、ホントにやってないんです!(父親に)父さん、何とか言ってくださいよ」

ソクテ父はじっと前を見据えたまま、考え込んでいるだけだ。

ソクテ「僕、どうしてここにいるのかわからないんだ。気がついたらここにいたんだ」

奇妙な状況に、チンスクは首を傾げた。「…。」

+-+-+-+

「あり得ないわ」ピルの病室でチンスクが語る。

チンスク「治療中止しないってソクテは知ってたのに、どうしてピルをさらう必要が?」
スジン「それ、ソクテじゃないわ」
チンスク「?」
スジン「ピルよ」
チンスク「(溜息)あぁ、ホント頭がどうにかなりそう」

「それは俺のセリフだよ」ベッド脇でどうすることもできないピル(魂)が漏らす。

スジン「チンスク」
チンスク「何?」
スジン「私、ピルに会ったの」
チンスク「(絶句)」
スジン「私にキスまでして行ったわ。ピルは自分の体をどこに連れて行こうとしたのかな」
チンスク「それはソクテだってば。あんた大丈夫?」

「スジンはお前に気づいたようんだが」ピル(魂)の隣で、クギル父が口を開く。

クギル父「そんなことが可能なのか」
ピル(魂)「…。」
クギル父「それにしてもこいつめ、こんな大事なときに恋愛ごととは」
ピル「すごく辛そうだったから。ただ… 慰めてやりたかったんだ」

+-+-+-+

ソクテの父はピルの父の前でじっと下を向いていた。

ピル父「息子が分別のない考えを起こしたら、大人が止めないと。一緒にやってどうするんですか」
ソクテ父「幽霊に取り憑かれるほど精神が弱いわけではありませんが、あれは決して私ではありませんでした」
ピル父「その話はもういい!全く呆れる。自分が恥ずかしくないんですか!」
ソクテ父「…。」
ピル父「普段から私にライバル意識みたいなものを持っているようだが、もうこんな恥さらしなことに関わるのはよしましょう。今日はいろんなことがあったから、私が我慢しますよ」

一度背を向けて、ピルの父はハタと立ち止まる。「あぁ」

ピル父「うちの家になぜ郵便物を届けない?」
ソクテ父「!」
ピル父「私が知らないとでも?何と幼稚な…」
ソクテ父「…。」

一人になると、ソクテ父はもう一度繰り返した。「あれば俺じゃなかった」

ソクテ父「俺のしわざじゃない。間違いなく何かあるぞ。邪悪な気を感じる!」

+-+-+-+

「間違いなく一緒に飲んでたよね」解放されたソクテは、チョンエと二人の先輩と共に、ビリヤード場に来ていた。

ソクテ「疲れてちょっと眠っていたら、誰かに飛びかかられて。気がついたらピルの病院だったんだ」
タルス「アルコール性認知症かな?」
チョンエ「ただのバカよ」
クギル「こいつ、酔ったらどうしようもないな。酒やめろよ」
ソクテ「違うって、兄貴。酔ってたんじゃないんだ、ホントに。なんだか自分の体を盗られた気分だ」
チョンエ「ふざけないで。あげるって言われても要らないわ」
ソクテ「妙な気分なんだよ…」

+-+-+-+

ピルはクギルの父と共に、魂だけでマンホールへやって来た。「12時をのがしたことなかったのに」

ピル「一度のがしたら終わりってことないですよね?また作動しますよね?」
クギル父「お前にもわからないのに、俺にわかるわけないだろ」
ピル「”現実”でも時間は同じように流れてるはず。こうしてる時間はないのに」
クギル父「スジンが結婚するってのも、マンホールのことも、正直お前が何言ってるのかさっぱりわからん」
ピル「明日こそ成功しないと。もう一度戻って、全部元通りにしなきゃ」

ひとしきり頭を悩ませ、ピルは考えを切り替える。「僕たち二人じゃ無理ですね」

ピル「味方を一人増やしましょう」

+-+-+-+

スジンはチンスクをアトリエへ連れてくると、鏡を指した。「これだわ」

スジン「ピルが鏡に映ったの。ここからシャーッって」

#あーそうか。それでキスの直後、ピルが離れるときにビックリして鏡を見てたんだね。ホントに姿が見えたのか。

チンスク「ここからシャーッって?」
スジン「うん」
チンスク「スジン、最近人と会ってる?」
スジン「ううん」
チンスク「あんたさ、外に出て人に会ったほうがいいよ。前はあんたの周りにたくさん人がいたでしょ」
スジン「そんなことどうでもいいよ。ピルはソクテの体に入って、自分の体をどこに運び出そうとしてたのかな。また会いに来るはずよ。ピルには私が必要なの」
チンスク「スジン、私あんたのせいで家に帰れないよ」
スジン「あんたには理解できない。私の目にはピルが見えるのよ。ホントにここからシャーッっと通り過ぎて、あの扉から出てったの。ついて行けばよかった…」
チンスク「…。」

+-+-+-+

タクシーの前で、クギルとタルスはどちらがチョンエを送るかで揉めていた。

タルス「チョンエは俺が送っていくから」
クギル「お前は方向が違うだろ。俺が送っていくから。店は閉めたから大丈夫だ」
タルス「もう一度開けてこい。今は夜中も稼ぎどきだろ」
クギル「そんなことお前に言われる筋合いないぞ」
タルス「戻って掃除でもしろよ」
チョンエ「もういいわ。ふたりとも帰って。私一人で帰るから」
タルス「一人で帰るって?」
チョンエ「それが何?」

「…。」クギルがタクシーのドアを掴んでいた手をスッと離した。「そんなのダメだよ。こんな時間に一人で帰るなんて」

クギル「(タルスに)お前が送ってやれよ。久しぶりに会ったんだから、積もる話もあるだろうし」
チョンエ「ううん、私一人で帰るって」
タルス「(クギルに)それがいいな。明日また集まろう。ピルの様子も見に」
チョンエ「明日?明日は引っ越しするから無理なんだけど。お母さんと二人でやる予定で」
クギル「あぁ、そうなのか?」
タルス「引っ越し?」
クギル「遅くなるから、とにかく送ってやれよ」

タクシーが走り出すと、チョンエは見送るクギルを振り返った。「…。」

+-+-+-+

ようやく自宅へスジンを送って来たチンスクは、彼女の両親に釘を差した。「スジンのこと、しっかり見守ってやってください」

両親「え?」
チンスク「その… ピルが自分に会いに来たからって、病院に行こうとするのを引っ張って来たんです」
両親「!」

+-+-+-+

タクシーを降り、チョンエとタルスはぎこちなく並んで夜道を歩いていた。

チョンエ「家まで送ってくれなくてもよかったのに」
タルス「久しぶりだから。6年ぶりだし。君、ちょっと変わったな」
チョンエ「人はみんな変わるものでしょ。若い頃は順風満帆だったけど、生きてくのは楽じゃないわね」
タルス「いやぁ、君の口からそんな言葉が出るとは」

「俺に…会いたいと思わなかった?」タルスが言う。

チョンエ「いやまぁ… たいして」
タルス「本に書いてあったけどな。女は反対のことを言うって」
チョンエ「まだ本で恋愛を勉強してるの?女のことは女から学びなさいよね」
タルス「だって、女のことを女から学ぶには、まずは女と付き合わなきゃいけないのに、女のことがわからないから付き合えないし」
チョンエ「(苦笑)」
タルス「そうなりゃ当然女から学べないから、結局永遠に女を知らないってことになる」
チョンエ「はぁ、もういいよ。いつもややこしいんだから、ホント」

しばらく歩き続けて、タルスはある場所で立ち止まった。「もう入りな。あそこが君の家だろ」

チョンエ「どうしてわかったの?」
タルス「この家を通り過ぎるの、もう3回目だ」
チョンエ「あぁ」
タルス「じゃあな」
チョンエ「うん」

軽く手を振り、タルスは呆気なく背を向けた。

チョンエ「あぁー、足が痛い。(胸を押さえ)なんでこうムカムカするんだろ」

そこへチョンエの携帯にメッセージが入る。
チョンエの乗ったタクシーを、ナンバーごと撮影した写真が添付されている。
クギルからだ。

クギル(メール)「念のために… 無事着いたよな?壊れてた階段と玄関の電気、昼間のうちに直してた。心配しないで上がれよ」

「!」チョンエは明るくなっているアパートの階段を見上げた。「…。」

+-+-+-+

クギルはそのままビリヤード場に戻り、本当に掃除をしていた。
掃除をしながら、チョンエから返事が来ないか、しきりに携帯を見る。

その様子をやきもきしながら見守っているのが、ピルと彼の父親だ。

ピル「戻ったらクギル兄に言ってやらないと。チョンエのことは諦めろって。絶対あり得ない構図なのに、あそこまで諦めが悪いとは」
クギル父「あぁ。戻ったらクギルに伝えてくれ」
ピル「えぇ、必ず言いますよ」
クギル父「もう少し勇気を出して、突っ走れとな」
ピル「え?諦めるんじゃなくて?チョンエとは絶対ムリですってば」
クギル父「俺だってそう思うが、誰にわかるんだ?チョンエが最終的に誰を選ぶことになるのか」

ピルは思わず笑った。

クギル父「そういうお前はどう思う?スジンはお前を選ぶと思うか?」
ピル「…。」
クギル父「そんなこと誰にもわからないさ。あぁ、愛は死んだってわからん」
ピル「…。」
クギル父「とにかく、クギルは絶対にダメだ。クギルには憑依するな」
ピル「ソクテより力もあるし、ちょうどイイのに」
クギル父「あいつが傷つく。ダメだ!」
ピル「ソクテのことは薦めたのに?」
クギル「ソクテは俺の息子じゃないだろ。俺の息子に手を出したら絶対に手伝わないからな」
ピル「わぁ、利己主義だなぁ。それじゃ誰にしようかな」

「パワー・オブ・ラブ」クギルの父が言う。

クギル「時空をも超える愛の力を信じてみるのはどうだ?」
ピル「…。」

+-+-+-+

ベッドに横になっても、スジンはピルの写真を見つめたまま、離さずにいた。

チンスク「私、帰るからね」
スジン「…。」
チンスク「帰るってば。ちょっと!あんた目が変だよ」
スジン「まだ信じないのね。頭がおかしいと思ってるわけ?」
チンスク「うん。完全におかしいね」

スジンは苛立って起き上がる。「説明のしようがないわ!ピルがこうやって私の前に現れて…!あぁ゛!」

チンスク「スジン、とにかく今日は何も考えずにゆっくり休もう。眠れないなら”爆弾酒“を作ってあげるから、それでも飲んで寝れば?」

「いらない」スジンはゴロンと横になった。「私ホントに大丈夫だから心配しないで。帰って仕事しなよ」

スジン「(布団をかぶり)私も早く寝て、明日ピルに会いに行かなきゃ♪」
チンスク「あんたさ、夜の間、外うろついちゃダメだよ。おじさんに見張っててもらうからね」
スジン「電話してよ。週末遊びに来て。焼肉でも食べようよ」

+-+-+-+

「どうだ?」下へ降りてきたチンスクに、スジンの両親が様子を訪ねた。

チンスク「さっきは変だったんですけど、もう大丈夫みたいです」
スジン母「さっきは変だったのに、今は大丈夫って… それこそ変じゃないの?」
スジン父「そうだ。変ならずっと変、大丈夫ならずっと大丈夫じゃないと。コロコロ変わったら余計に変だぞ」
スジン母「変だわ」
スジン父「変だ」

#この両親、ちょっとかわってるよね…

チンスク「お二人とも落ち着いて。私たちまでおかしくならないようにしましょう。スジンにとって今日は辛い一日でしたから、これも仕方ありません。だから、しっかり見守ってあげてください」

+-+-+-+

チンスクはようやくスジンの家を後にした。「2時間くらいは寝られるかなぁ」
そこへ向こうから角を曲がってきたのがピルだ。「あれ?チンスクだ。なんでスジンの家から?」

すれ違いざまに、ピルは言った。「おい、気をつけて帰りな」

チンスク「?」

チンスクがブンッと振り返り、背後を見た。「?」

ピル「何だ?お前も俺がわかるのか?」
チンスク「(ジーッ)」
ピル「お前ら霊感でもあるのか?」

チンスクはそのままピルの家へと視線を移し、じっと眺めた。
ピルもそれにつられて視線を移す。

ピル「父さん、母さん、おやすみなさい。明日には全部解決してるから」

+-+-+-+

スジンの両親は、娘をどちらが夜通し見守るかで揉めていた。
そのスキに、スジンはそっと家を脱出する。
ちょうどスジンの家に入ってきたピルは、彼女の後を追った。「あいつどこ行くんだ?こんな夜中に」

「スジン!」ピルは走っていって彼女の前に立ち塞がる。
彼の魂をすり抜けた瞬間、スジンはハッとして立ち止まった。「あっ!」

スジン「あんたでしょ、ピルでしょ。(キョロキョロ)ねぇ、どこにいるの?」
ピル(魂)「なにか感じてはいるようだけど…」

彼は困って頭を抱えた。「どうやって話せばいいんだ?」

+-+-+-+

自宅へ帰ったソクテ親子は、並べた布団に横になっていた。

父「なぜ寝ない?国から給与を得ている公務員は、自分ひとりの体じゃない。眠れなくても寝ないと公務に支障が出るぞ。寝ろ」
ソクテ「父さん。さっき僕たちに何が起きたんでしょう」
父「我々に理解できないことが起きているんだ」
ソクテ「(うんうん)」
父「気をしっかり持て。心の平穏を維持するんだ」

と、父はふたたび怒りがこみ上げ、飛び起きた。「人前であんな恥をかかされるとは!」

父「ポン局長から受けたこの屈辱、決して忘れまい」
ソクテ「(うんうん)」
父「必ずやこの汚名を晴らしてみせよう」
ソクテ「父さん、僕の分も!」
父「あぁ。復讐心は渇きをもよおす。まずは水を一杯持って来い」

「はい」ソクテが立ち上がり、寝室を出ると…
ハクション!
次の瞬間、彼は台所へ向かわず、玄関を出た。

父「何だ?あいつどこ行くんだ?あぁ、水が無くなったのか。いや、やかん一杯沸かしておいたはずだ」

怪しい。
ソクテの父は立ち上がった。

+-+-+-+

ちょうどスジンがトンネルの前まで来たところで、ソクテが駆けつけた。

スジン「ソクテ?」
ソクテ「どこ行くんだ?」
スジン「ちょっとピルに会いに」

ソクテの横を通り過ぎ、スジンは急に立ち止まった。「!」
ゆっくり振り返り、”ソクテ“を見る。
”ソクテ”は何も言わず、じっと彼女を見つめ返した。

スジン「…ピルでしょ、あんた」

ピルはソクテの体を借り、一歩二歩と彼女に近づいた。「お前…」

ピル(憑依)「お前、俺がわかるんだな」

「スジ…」言い終わらないうちに、スジンが彼に抱きつく。
ピルもまた、彼女に応えた。

木陰で目撃したソクテの父は、息子とスジンが抱き合っているのを見て、首をひねった。「この光景は何だ?」

+-+-+-+

ピルは彼女と、二人でよく過ごした公園に来ていた。
「待って」スジンが話をさえぎる。「待ってよ」

スジン「ねぇ、それって韓国語で話してる?」
ピル「俺は韓国語しかできないぞ」
スジン「あんたの話、ちっともわからないよ。あんたが魂だってことも理解できないのに、怪我したのも全部ファンタジーだって?これまでの6年、全部?」

「あぁ」眼下の夜景に目をやったまま、ピルは静かに言う。

スジン「トンネルの前にあるマンホールで、行ったり来たりしてるって?」
ピル「(頷く)」
スジン「夜12時に行って、昼12時に帰って来るわけ?ねぇ、そんな話ってある?ふしぎの国のアリスじゃあるまいし」
ピル「アリスはうさぎの穴、俺はマンホールだ」

スジンは困って大きなため息をつく。
「なぁ、あれ覚えてるか?」ピルがくるりとベンチの方に向き直った。「ガキの頃、あのベンチで…」

スジン「覚えてない!」
ピル「おい、よく思い出してみろよ、俺たち…」
スジン「(耳を塞いで)覚えてないってば!」
ピル「(絶句)そんならあれは全部なかったことなのか?俺たち3年生のとき…」
スジン「言わないでよ!」

~~~~幼かったとき~~~~

二人のおチビさんは公園のベンチに並び、気持ちのいい風に吹かれていた。

スジン「ここに座ってるとすごくイイ気分だね」
ピル「他のヤツらは知らないんだ。僕が見つけたんだから。この場所、これからはお前のだぞ」
スジン「ホント?」
ピル「もちろん。他のヤツらは誰もここへ来させるもんか」

そう言ってピルはふぅっとシャボン玉を吹く。
その頬に、スジンはチュッと口づけた。

~~~~~~~~

「やめてってば!」公園を出て歩きながら、スジンが訴えた。

ピル「それじゃ、あれはどうなんだよ?3年生のとき…」
スジン「ちょっと!あんた次の日の図工の時間、どんな絵を描いたか覚えてないの?あのせいでどれだけ皆にからかわれたか」
ピル「そのときはチューしたら結婚しなきゃいけないと思ったんだ」

「ok、いいわ」スジンは頷き、彼に向き直った。「結婚しよ」

ピル「…え?」
スジン「マンホールに入れば、元通りになるんでしょ?そうなったら結婚しようよ」

「あ…」いきなりの言葉に、ピルは絶句した。
長い沈黙に、スジンは小さく拗ねる。「チッ」

スジン「元に戻ったら、私はどうなってるの?」
ピル「あ、あぁ。お前はそのままだ。俺のこと待ってる」

スジンは黙って微笑む。

ピル「…結婚の準備をしながら」

二人は手を取り合って歩き出した。

スジン「(アクビをして)酔っ払ったみたいに体が言うこときかないわ」
ピル「ん?大丈夫か?眠い?」
スジン「私が眠気を我慢できないの、知ってるよね」
ピル「知ってる」

スジンがふらりとよろめいたのを、ピルは慌てて支え、その場にかがんだ。「おんぶしてやるよ」

スジン「いいってば」
ピル「いいからおぶってやるって。あんまり待たないぞ」

背中にスジンを乗せ、ピルは立ち上がった。

ピル「心の中を全部見せることはできないけど、俺、毎日3回以上はお前のこと考えてた。人はこういうのを愛だって言うんだ」
スジン「…。」
ピル「なぁ、聞いてるのか?」
スジン「…。」

眠っている様子のスジンに、ピルは苦笑いを浮かべた。「…そうか」

ピル「言いたいことがある時はいつもいないって言ってたけど、言いたいこと言えたから、寝たんだな」

「…聞いてたよ」寝言のようにスジンが言う。

ピル「聞いたならそれでいい。マンホールに入れば、お前は忘れちまうけど。俺が覚えてるからいいや」
スジン「…。」
ピル「なぁスジン、頼みがあるんだ。明日の夜12時にマンホールに入れなかったら、永遠に消えちまうかもしれない。だから…」
スジン「んー、静かにして」
ピル「あぁ、ごめん。寝ろよ」

#肝心の頼み事、遅いってば!

そっと後をつけたソクテの父は、頭のなかで謎が深まるばかりだ。
ソクテがなぜスジンをおんぶして歩いているのか…?

ソクテ父「そんなはずはない。ソクテのヤツがあんなにモテるはずないんだから」

「お前、一体何者だ?」ソクテの父は目を細めた。

+-+-+-+

ここで区切ります。
チョンエの三角関係ネタがちょっと長かったけど、ここもピルが昏睡状態になったせいで、みんなが散り散りになってしまったために、何の進展もしてないんですね。もともとはタルスとチョンエが同棲してたのに。
ピルは2011年にタイムスリップしたとき、特別この三角関係をいじったわけではないと思うけど、それこそ、”バタフライ効果”で、一つのことが大きく波及するんだなぁと。

 - マンホール-不思議な国のピル ,

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