トライアングル3話あらすじ&日本語訳vol.1
ジェジュン(JYJ)、イ・ボムス、イム・シワン(ZE:A )主演、「トライアングル」3話、セリフの日本語訳を交えつつ、あらすじを追っていきますね。
+-+-+-+
真夜中。
ヨンダルは恐ろしい夢に叫び声を上げて飛び起きた。
死んだキチャンに首をしめられ、もがき苦しんだ末に。
彼の叫び声に驚き、ジャンスも目を覚ます。
ジャンス「どんな夢だったんだよ?」
ヨンダル「キチャン兄貴が…」
ジャンス「え?」
ヨンダル「ここにいちゃ後ろめたい。金をまとめるんだ」
ジャンス「どこ行くんだよ?」
二人はすぐさま金の詰まったバッグを引きずるように担ぎ、アジトを後にした。
ジャンス「金って何でこんなに重いんだ!」
暗いトンネルを奥まで進むと、彼らは荷物をおろした。
ジャンス「ここなら大丈夫かな?」
ヨンダル「お前さえ変な気起こさなきゃ大丈夫だ」
ジャンス「俺が?お前、俺のこと疑ってんのか?」
ヨンダル「…。」
ジャンス「おい、ヨンダル!俺はお前のために命だって掛けられるんだ!お前がそんなふうに思ってるなんて寂しいぞ」
ヨンダル「そんなことはないだろうが、万が一お前が変な気起こしたら、そのときはぶっ殺してやる」
ジャンス「こいつ、酷いな…。俺はお前のこと信じてるのに、何でお前は俺のこと信じられないんだ?俺はお前にとってその程度なのか?」
ヨンダル「お前を信じられないんじゃない。金を信じられないんだ。金をな」
ジャンス「(頷く)そりゃお前の言うとおりだな。なぁ、俺だって一言だけ言うぞ。もしお前が俺を裏切ったら、そのときは俺がぶっ殺すからな」
ヨンダル「とりあえず今日は気分直そうぜ」
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二人は高級ホテルの部屋を借りる。
「女を呼んでワインでも飲んだら最高だな!」豪華な部屋にはしゃぐジャンス。
ジャンス「女を呼ぼうか?」
ヨンダル「こいつ、無駄口叩いてないで酒でも頼め」
ジャンス「酒?なんで酒を?」
ヨンダル「全く、ダサいな。(メニューを手に取る)ルームサービスだろ」
ジャンス「ルームサービス?」
ヨンダル「あぁ」
ヨンダルは軽くメニューのページをめくると、受話器をとった。
ジャンスがメニューを覗きこむ。
+-+-+-+
テーブルの上にはすぐに色とりどりのオードブルと高級酒が並んだ。
二人はようやく落ち着いて乾杯を交わす。
ジャンス「いくらホテルだからって、(ボトルを指し)この酒1瓶に350万ウォンも取るなんて馬鹿げてないか?350万もあればカジノでチップじゃんじゃん使って皇帝なみに遊べる」
ヨンダル「ルイ何世だか、そいつは750らしいぞ」
ジャンス「何だって?!頭おかしいんじゃないか?そんなもの一体誰が飲むんだよ?」
「俺たちだ」ヨンダルは語気を強めた。
ヨンダル「俺たちだって飲める。金の洗浄さえ上手くいけば、俺もお前も人生逆転だ」
ジャンス「ひゃはー!考えただけでも最高だな!はははっ」
「人生逆転に乾杯!!!」はしゃぐジャンスに同調せず、ヨンダルは落ち着いた口調で続ける。
ヨンダル「その前に、バレないように振る舞わなきゃダメだ」
ジャンス「…。」
ヨンダル「パッと使うのは今日を最後にして、大金を手に入れた素振りは絶対にするな」
ジャンス「自分の心配しろよ。VIPルームに入って金をドブに捨てたりすんなよな」
#ホンマそれ。夢は世界大会と言いながら、一人で負けてばっかなのが全ての元凶。
ジャンス「なぁ、それにしてもだ。いくらバレないように気をつけるにしても、引っ越しはしろよ」
ヨンダル「…。」
ジャンス「さっきキチャン兄貴の夢見たんだろ?お前、倉庫に暮らしてたら、ずっとキチャン兄貴の夢にうなされるぞ」
ヨンダル「…。」
+-+-+-+
薄暗い建物の中で、集まった男たちが熱い拳を振り上げていた。
彼らの中央では、大きな檻の中に犬が2匹。
闘犬賭博だ。
彼らの間を縫うように、こっそりドンスたちが進む。
上の階段から入ってきた男が、彼らの姿に気づき、大声を上げた。
金がばら撒かれ、場内は混乱に陥る。
ドンスは大声の主めがけて走りだした。
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署に戻ると、捕まえた闘犬賭博の元締めの取り調べが始まる。
キチャンが刑務所に入ってからは自分たちの組織は潰れたも同然で、何も知らないと主張する男。
男「刑務所のキチャン兄貴に聞いてくださいよ。何で自分にばかり訊くんです?全く!」
ドンス「まさにそのト・ギチャンだが… 死んだぞ」
男「それどういう意味です?キチャン兄貴がどうして?」
ドンス「自殺に見せかけて誰かが殺ったんだ」
男「!」
ドンス「それが誰なのか、心当たりはないか?」
男は静かに考えを巡らせる。
ドンス「言ってみろ。闘犬賭博の件は蓋をしてやる」
男「…。」
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取り調べを終えたドンスは、デスクで考え込んでいた。
男とのやりとりを頭の中で反芻する。
男「キチャン兄貴が捕まった時、イ・ジョンスとハン・チルボクがフィリピンに逃げたのはご存じですか?あのときインターネット賭博で自分たちが稼いだ金は50億くらいにはなったはずです。その金をキチャン兄貴はどこかに隠したんですがね、フィリピンに逃げたイ・ジョンスとハン・チルボクがその金を奪うためにキチャン兄貴を殺したに間違いありませんよ!」
ドンス「イ・ジョンスとハン・チルボクは手配中で国内には入れないのに、どうやって殺すんだ」
男「50億が掛かってる話なんです!その気にさえなりゃどんなことだって出来ますよ!」
そこへタク刑事が出先から戻ってくる。
ドンス「これまで容疑者線上に上がってるのは何人だ?」
タク刑事「事件翌日に出頭したヤン・ガンチョルを含めて6人です」
ドンス「ヤン・ガンチョルの方は?」
タク刑事「カン刑事が把握中です。ところで、ホ・ヨンダルはどうします?」
ドンス「…。」
タク刑事「あいつ、ト・ギチャンと深い関係があるのは確かなようですが」
ドンス「連絡してみろ」
+-+-+-+
ホテルのベッドでぐっすり眠っていると、ヨンダルの電話が鳴った。
目をつむったまま電話を手でたぐり寄せ、寝ぼけまなこで応答する。
「俺だ」ドンスが短く言った。
ヨンダル(電話)「(寝ぼけて)俺だだと?タメ口かよ?だから誰なんだよ?こいつ」
ドンス(電話)「ソウル広域捜査隊チャン・ドンスだ」
「ん?」ヨンダルはようやく目を細く開け、起き上がった。
ヨンダル「あぁ、班長さん。朝早くからどうなさったんです?」
ドンス「朝早く?今何時だと思ってんだ?しっかりしろ!」
ヨンダル「…。」
ドンス「今すぐソウルに出てこい」
ヨンダル「え?何でです?」
ドンス「来いと言ったら来るんだ。”何で?”だと?」
ヨンダル「班長さんに来いと言われたら行って、帰れと言われたら帰んなきゃいけないんすか?」
ドンス「…。」
ヨンダル「用事があるなら、班長さんがいらっしゃればいいでしょ」
ドンス「何だと?お前、今なんて言った?」
「死にたいのか?こいつ!」ドンスの厳しい声が耳元で響く。
ヨンダル「こいつだのあいつだの、やめてくださいよ。気分悪いですから」
ドンス「こいつ!!!お前は俺の情報屋なんだ!行けっつったら行って、死ねっつったら死ぬのが情報屋だぞ!こいつ!!!」
ヨンダル「あ゛ー!俺、今から情報屋はやりません。やらなきゃいけない理由もないし」
ドンス「こいつ、ホ・ヨンダル!お前、ホントに死にたいのか?今どこだ?どこにいるんだ、こいつ!!!」
ヨンダル「いいっすから。知りたいことがあるなら、ご自分でいらしてください」
ドンス「…。」
ヨンダル「じゃあ切りますよ」
ヨンダルは一方的に電話を切ると、つまらなそうに電話を放り投げた。
ヨンダル「旦那、俺は50億の大金持ちなんだ。あんたの情報屋の役目はこのホ・ヨンダルじゃない」
+-+-+-+
怒りに震えるドンスは、ヨンダルをすぐ捕まえて来いとタク刑事に命じるが、すぐに思い直し、タク刑事を呼び止める。
ドンス「死んだト・ギチャンとホ・ヨンダルがどんな関係だったのか、まずそれから把握しろ」
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ホテルを出てくると、ジャンスが立ち止まった。
「ヨンダル、あいつ…」ジャンスが指さした先に、見覚えのある男が歩いている。
ジョンヒの前で自分に恥をかかせた若い男、ユン・ヤンハだった。
ヨンダル「…。」
ヤンハが優雅にホテルに入っていく横顔を目で追うと、ヨンダルは彼の後について中へ入った。
ヨンダル「おい」
ヤンハ「?」
ヨンダル「もう一勝負やろう」
いきなりの言葉に、ヤンハは驚くこともなく静かに笑みを浮かべる。
ヤンハ「無駄なゲームには興味ないんですが」
ヨンダル「無駄?」
ヤンハ「おたくの実力じゃ100回やっても結果は同じだってことです」
ヨンダル「こいつ!俺のこと馬鹿にしてんのか?」
ヤンハ「馬鹿にしてるんじゃなく、事実を言ってあげてるだけですよ。事実をね」
ヨンダル「…。」
ヤンハ「僕はラスベガスでゲームした人間です。あなたのように街のホールデムバーで遊んでる人とはワケが違うんですよ」
ヨンダル「やれやれ、そうですか。そんなに上手なら俺と一勝負しろって!」
ヤンハ「嫌です」
背を向けたヤンハの肩を、ヨンダルが掴む。
ヨンダル「逃げる気か?」
ヤンハ「何です?幼稚ですね」
ヨンダル「何だと?幼稚?」
ヨンダルは両手でヤンハの襟元を掴む。
ヨンダル「お前、死にてーのか?」
ヤンハはひるむことなく、ヨンダルの目を見据えた。
そこへジャンスが止めに入る。
手を離すと、ヤンハは乱れたスーツをさっと直した。
ヤンハ「そこまでやりたいならやりましょう。あなたの実力がどこまで情けないレベルなのか、もう一度思い知らせて差し上げますよ」
ヨンダル「…。」
ヨンダルは睨んだ目を離さず、ポケットから名刺を出した。
ヨンダル「俺の電話番号だ。必ず連絡しろ」
同じく視線をそらすこと無く、ヤンハは指先で名刺をかすめ取ると、余裕の笑みを浮かべたままゆっくりと背を向けた。
怒りの収まらないヨンダルが思わず大声を上げる。
ジャンス「実際あいつの言うとおりだぞ。俺が見たってお前の力不足だ」
ヨンダル「…。」
ジャンス「勝てないって」
ヨンダル「おい!お前まで馬鹿にすんのか?」
ジャンス「ホントなんだから仕方ないよ」
歩きながら、ヤンハは指に挟んだヨンダルの名刺をチラリと見る。
『信用照会なしにすぐ現金をお渡しします
ボス担保貸 営業理事 ホ・ヨンダル』
ふっと鼻で笑い、名刺から顔を上げると、彼はそこで立ち止まった。
廊下の向こうを黄色い制服を来たジョンヒが横切って行くのが見える。
彼は顔を輝かせ、彼女が歩いて行く姿をじっと目で追った。
+-+-+-+
ホールを歩き、角を曲がると、ジョンヒはそこで待っていた男に気づいた。
ヤンハだ。
足を止め、彼の顔を見ると、彼女は何も言わずに立ち去ろうとする。
ヤンハ「こんにちは」
ジョンヒ「!」
ヤンハ「僕の勘違いじゃなければ、初対面じゃないと思うんだけどな」
ジョンヒは覚悟を決めて彼の前へ戻った。
ジョンヒ「なぜこんなことを?」
ヤンハ「一杯やろうよ」
ジョンヒ「お客様と外での付き合いはしないって言いましたよね」
ヤンハ「20日ほどここのスイートにいます。僕と一杯やってくれなかったら、不法カジノでディーラーしてるってバラすかもしれませんよ」
ジョンヒ「…。」
ヤンハ「待ってます」
絶句するジョンヒにニヤリと笑うと、ヤンハは去っていく。
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ジョンヒは仲の良い職場の先輩にヤンハのことを打ち明ける。
先輩「バラすって?!そんな卑怯なヤツがいるなんて!」
ジョンヒ「…。」
先輩「それで?あんた行くつもり?」
ジョンヒは困ってため息をついた。
ジョンヒ「わかんない」
先輩「そいつも頭おかしいけど、あんただってそうよ」
ジョンヒ「?」
先輩「いくらディーラーになりたいからってさ、不法カジノのディーラーになるなんて」
ジョンヒ「すぐに借金返さなきゃ、うちの家を競売に出すっていうのにどうしようもないよ」
先輩「…。」
ジョンヒ「きっかり三ヶ月だけ働いて全部返したら、そのときやめればいいって言ったの」
先輩「…。」
ジョンヒ「先輩、私ホントにどうしたらいい?」
先輩「そんなの私だって分かんないよ」
「けど…」先輩が続ける。
先輩「スイートルームに泊まってるってことはVIPに違いないけど… ヴィジュアルはどう?イケメンなの?」
ジョンヒ「(呆れる)先輩!よくそんなこと私に言えるね」
先輩「いや、何… 気になるものは気になるでしょ」
ジョンヒ「…。」
+-+-+-+
チャンマダムとマンガンが通りを歩いてくると、質屋の前で物乞いをしている男性を見かける。
「お助けを」整った身なりのその老人は、道行く人に力なく声を掛けては手を差し出した。
「おやおや社長さん」マンガンは立ち止まると、財布から札を出し、老人に渡す。
マンガン「これで飯でもどうぞ」
男「ありがとうございます!」
マンガンが歩き出すと、チャンマダムは笑った。
マダム「あんた金持ちね。乞食に5万ウォンも上げるなんてさ」
マンガン「あの旦那はタダの乞食じゃない」
マダム「特別な乞食ってのがいるわけ?」
マンガン「マダムは知らないようだがな、あの旦那はチョン会長といって、カジノが出来た頃から有名な人だ。テジョンでデカいバス会社をやってたんだが、有り金全部カジノに食われちまって、風疾で半身不随になった」
マダム「…。」
マンガン「結局、嫁と子どもに捨てられて、物乞いになったってわけだ」
マダム「いくらスッたの?」
マンガン「200億」
「わぁ」マダムは立ち止まり、老人を振り返った。
マダム「最高ね」
マンガン「最高だろ」
二人の視線の先で、老人は変わらず通行人に声を掛け続ける。
マンガン「有り金全部スッて、乞食で手にしたはした金で、今でもカジノに出入りしてるって話だ」
マダム「ふぅん」
マンガン「俺もカジノのおかげで食ってるが、全く恐ろしいもんだな」
「やれやれ」マダムがため息をつく向こうで、老人は杖をつき、ヨロヨロと歩いて行く。
+-+-+-+
事務所に戻ったジャンスは、意を決して父親のミンチュンに声を掛けた。
ジャンス「父さん、現ナマで50億手に入れたらどうする?」
ミンチュン「こいつ、何言い出すんだ?俺に50億手に入ることなんかあるか!」
ジャンス「…。」
ミンチュン「最近はロトに当たったって10億にもならないんだぞ」
ジャンス「父さん、ここにだよ、現ナマ50億があるってことにしてよ。そしたらどうする?」
「50億?」ミンチュンが顔を上げる。
ジャンス「うん!」
ミンチュン「50億が目の前にあるって?」
ジャンス「(頷く)」
ミンチュン「そうなりゃな、その瞬間から金が金を産むんだ。その金でカジノに行って、金持ち相手にすりゃ100億だ。そうすりゃ俺とお前とお前のガキ、3代遊んで暮らせる」
ジャンス「…。」
ミンチュン「100億。はははっ」
ジャンス「ってことは、現ナマ50億ありゃ金持ちの客をつかめるのか?」
ミンチュン「待てよ。お前、最近変な気でも起こしてるんじゃないのか?」
ジャンス「!」
ミンチュン「バクチ打つつもりだろ」
ジャンス「金くれてから心配してくれよ。金がなくてピーピーなのにさ」
+-+-+-+
人気のないビリヤード場のソファにヨンダルはいた。
女を強く抱き寄せ、激しくキスを交わす。
彼の手が女の身体を弄った。
ひょっこりと入ってきたジャンスは、キョロキョロと見渡すと、奥にいるヨンダルの姿に気づき、ニヤリと笑った。
お楽しみの彼らに近づくと、ビリヤードのキューでコンコンと音を立てる。
#黙って見てりゃいいのに、余計なことを(爆
ジャンス「真っ昼間からお盛んだな」
慌てて女が立ち上がった。
ジャンス「部屋でも取れよな、部屋でも」
女が出て行くと、何事もなかったように玉を打ち始めたヨンダルに、ジャンスは「行こう」と声を掛けた。
ヨンダル「どこに?」
ジャンス「引越し先見つけなきゃダメだろ」
+-+-+-+
街へ繰り出したヨンダルたちの姿を、車の中で覗っている人物がいた。
ソウル広域捜査隊の刑事たちだ。
イ刑事が電話を手に取る。
イ刑事(電話)「僕です。調べてはみましたが、特に何もありませんよ。死んだト・ギチャンは舎北出身ですが、組織に入る前から親しかったようです」
話しながらも、彼らは向こうへ歩いて行くヨンダルをじっと目で追う。
イ刑事(電話)「いいえ、ホ・ヨンダルは舎北出身じゃなくて、他所から来たようです」
+-+-+-+
二人はジャンスの顔なじみの不動産屋のドアを開けた。
店主「どうした?」
ジャンス「どうしたって、不動産屋なんだから部屋借りに来たに決まってるでしょ?小奇麗なアパート、ないですかね?」
店主「ジャンス、お前引っ越すのか?初耳だが」
ジャンス「うちじゃなくてね、ヨンダルが一人で住む家だから狭くてもいいんです」
店主はとたんに表情を厳しくする。
店主「家賃を払う金はあるのか?」
ジャンス「ありますよ!金もないのに家探しにくるわけないでしょ」
店主「ジャンス、お前じゃなくてヨンダルに聞いてるんだ」
ヨンダル「…。」
ヨンダルは黙って懐に手を入れると、札束を取り出し、振ってみせた。
ヨンダル「1月あたり1束渡せばいいですか?」
店主は顔を輝かせる。
店主「ピッタリな部屋があるよ!」
そこへ入ってきたお婆さんに、ジャンスはまた親しげに挨拶する。
「ジョンヒはカジノに就職したんですね」その言葉に、ヨンダルが顔を上げた。
ジョンヒの祖母だったのだ。
ジョンヒの祖母は彼らがいるのに構わず、ソファに座ると、店主に話し始めた。
ジョンヒ祖母「うちの離れを貸したいんだけど、いくらになる?」
店主「いくらにもならないよ」
ジャンス「離れってビョンテの部屋じゃないのかい?」
ジョンヒ祖母「ビョンテは母屋に来ればいいだろ」
「お体の具合は?」店主が世間話を始めると、ヨンダルはジャンスを肘でつついた。
外へ出るよう促すと、ヨンダルは中のお婆さんの様子をチラリと覗う。
ヨンダル「オ・ジョンヒの婆さんか?」
ジャンス「あぁ」
ヨンダル「俺、そこに入居する」
ジャンス「何だって?!ボロ屋敷だぞ」
ヨンダル「関係ねー」
ジャンス「お前、ジョンヒのヤツをどーにかするつもりじゃないのか?」
ヨンダル「こいつ!そんなんじゃねぇって」
ジャンス「それじゃ何であんなボロ屋敷に!」
ヨンダル「俺の勝手だろ」
店の中へ戻っていくヨンダルに、ジャンスは呆れて立ち尽くした。
+-+-+-+
私服に着替え、退勤しようとエスカレーターを上がってきたジョンヒは、不安げに足を止めた。
「俺と一杯やらないと、不法カジノでディーラーやってることがバレるかも」
ヤンハの言葉が気にかかる。
小さく息をつき、口を固く結ぶと、ジョンヒはホテルの奥へと歩き出す。
+-+-+-+
エレベーターの数字が21階を指し、ドアが開いた。
薄暗い廊下に少し怯むと、ジョンヒはもう一度気を引き締めて歩き出す。
廊下を突き当たりまで進み、そっと呼び鈴を鳴らすと、程なくドアが開き、ヤンハが顔を出した。
立っている彼女を見ると、ヤンハはまるで来るのが分かっていたように微笑んだ。
ヤンハ「(中を指し)どうぞ」
ジョンヒ「入る前に… 確認しておきたいことがあるんです。私が私設カジノで働いてること、秘密にするって先に約束してください」
「OK」ヤンハは軽く頷いた。
促され、ジョンヒが中へ入ると、彼女の背後でドアが閉まった。
部屋はとてもシックで、余計な装飾がなく、すっきりと整えられていた。
「どうぞ座って」ジョンヒにソファをすすめると、ヤンハもそばの一人用ソファに腰を下ろす。
ヤンハ「酒は何にします?ウィスキー、ワイン、シャンパン、コニャック。何なりと」
ジョンヒ「何でも」
ヤンハ「それならワインにしよう」
ヤンハは背の高いワイングラスを並べ、片方に赤ワインを少しずつ注ぐと、「さぁ」とジョンヒに差し出した。
ジョンヒは彼が自分のグラスを満たすのも待たず、一気にそれを飲み干す。
彼女が息をつくと、ヤンハが顔を上げて笑った。
ヤンハ「ゆっくり飲みましょうよ」
ジョンヒ「(ボトルを指差し)これさえ一本あければいいんでしょう?」
ヤンハ「…。」
呆れるヤンハに、もっと注いでくれと、ジョンヒはグラスを差し出して催促する。
彼は何も言わず、彼女のグラスに少しワインを注ぎ足した。
彼女は今度もゴクゴクと一気に飲み干す。
ヤンハ「これじゃつまらないな」
ジョンヒが眉間にしわを寄せ、グラスを置く。
ジョンヒ「あんたね!こんなことで人の弱みを握って面白い?」
怒りだしたジョンヒの表情を、ヤンハが愉しげに見つめる。
さらに怒りが募り、ジョンヒは自分でワインの瓶を掴むと、手酌で飲み始めた。
ジョンヒ「せっかくなんだから、もっとパァッと遊ぶ?王様ゲームなんかどう?王の命令なら言われるまま飲んで、服も一枚ずつ脱ぐのよ」
ヤンハ「面白そうだな」
「いいわ」ジョンヒは強気に微笑んだ。
ジョンヒがバッグからトランプを出し、切り始める。
その様子を眺めると、ヤンハは落ち着いてワイングラスを口に運んだ。
「先に選んで」ジョンヒはカードを2枚裏返して並べる。
彼女を見つめたまま、ヤンハはそのうちの1枚を手繰り寄せ、チラリと表を確かめると、彼女の前に掲げてみせた。
13 キングだ。
ジョンヒ「!」
ジョンヒの顔に失望が広がった。
彼女が諦めてワインをグラスに注ぎ始めると、カードの向こう側でヤンハの指先がかすかに動いた。
カードの裏に爪で小さく折り目を入れたのだ。
グラスをあける頃には、そろそろ辛くなってきたジョンヒの目が潤んでいた。
ヤンハが容赦なく畳み掛ける。
ヤンハ「服は?」
ジョンヒ「え?」
自分から言い出した限りはどうしようもなく、ジョンヒはため息をつくと、上着の紐を解き、脱ぎ捨てた。
そんな彼女の様子を、ヤンハは無表情で眺める。
ヤンハ「もうやめましょううか?」
ジョンヒ「何言ってんのよ!もっとやるわよ!」
ジョンヒはボトルの底に残っていたワインをグラスに注ぎ、空にした。
悔しさに口をぎゅっと結び、再びカードを切る。
ムキになる彼女を見つめるヤンハの目は、いつの間にか少し変化していた。
ジョンヒ「選んで」
2枚のカードの上でわずかに迷った彼の指は、やはり13のカードを手にしていた。
ヤンハ「自信がないなら今からでもやめるといい」
ジョンヒは彼の譲歩にさらに意地になり、最後のワインを飲み干した。
何も言えずにただ見つめている彼の前で、彼女はさらにストッキングを脱ぎ始める。
彼女の行動を静かに見守ると、彼は呆れたように笑った。
#このあたりのヤンハの表情の変化、ものすごくいいです^^そして横顔が美しすぎる
ジョンヒ「…。」
ちょうどそこへ、チャイムがなる。誰かが訪ねてきたようだ。
ヤンハが立ち上がった。
ドアを開けると、若い女が入ってくる。
「着たわ♪」彼に笑いかけると、女は彼に軽く抱きついた。
ヤンハ「連絡もなしにどうしたんだ?」
女「サプライズ♪」
女はそこでソファにポツンと座っているジョンヒに気づく。
女「誰?」
ジョンヒは気まずくなって下を向いた。
ヤンハ「飲み友達」
たまらずジョンヒがバッグを持って立ち上がると、女は自分に気を遣うことはないと余裕を見せる。
ジョンヒが部屋を出て行くと、ヤンハは閉まったドアを無言で振り返った。
+-+-+-+
女がジョンヒと入れ替わりにソファに腰を下ろすと、ヤンハは飲み残しのグラスに手を伸ばす。
女「私が雰囲気壊しちゃったんじゃない?」
ヤンハ「たいしたことはない。気にしないでいいよ」
女「ここはどう?」
ヤンハ「まぁね」
女「(呆れて)それだけ?ソウルにはいつ来るの?」
ヤンハ「流刑に遭ってる人間の自由になることかな。刑が解けないとね」
女「誰が流刑にしたっていうのよ。自分が逃げ出したくせに」
笑ったヤンハの目は少し悲しげに映った。
+-+-+-+
ここで一旦区切ります。
ヤンハがストーリーに絡んできて、俄然楽しくなってきました。
ヤンハもヨンダルも、きっとジョンヒを通して変わっていくんでしょうね。
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