韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!セリフを題材にした文法解説も

空から降る一億の星(韓国版)あらすじ&日本語訳 4話後編

   

ソ・イングク、チョン・ソミン、パク・ソンウン主演、tvN韓国ドラマ【空から降る一億の星】、4話の後半、詳細なセリフの日本語訳を交えながら、あらすじを紹介していきます。

PCトラブルのため、作業が遅れました。
休日ほぼ一日潰しましたが、何とか復旧したので頑張ります!

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一足先に待ち合わせ場所に戻ってきたジンガンは、特にワケもなくセルフショットを撮り、兄に送って時間を潰した。

#暇な時に用事もなく自撮りを送る相手が、お兄ちゃんだということですね。

躊躇いもなく大きく溜息をついたところで、スンアたちが現れる。

スンア「退屈だったでしょ。何してたの?」
ジンガン「ううん、漢江を見て散歩してコーヒー飲んで、あっという間に時間が過ぎたわ」

「楽しかった?」ジンガンの問いに、スンアはムヨンにしなだれかかって微笑む。「うん、おかげさまで」

そのときだ。
白い車が彼らの後ろに滑り込んできた。
後部座席から降りてきたのは、スンアの母親だ。

スンア「お母さん!」

ツカツカと近づいてきた母親は、娘たちを睨みつけると、ジンガンの頬を思い切りひっぱたいた。

スンア「お母さん!!!」

もう一発食らわせようとしたところを、スンアが止めた。「お母さん、どうしちゃったのよ!」

#驚くでもない、止めるでもない、人のやることを冷静に見守っているムヨンのこの感じ。施設でそうやって育ってきたんだな…と思ったりします。

スンア母「(ジンガンに)信用ならない娘。全部あんたのせいよ!」

「行くわよ」彼女は有無を言わさずスンアを車に押し込み、走り去った。

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「…。」じっと下を向いたまま動かないジンガンに、ムヨンは掛けるべき言葉が見つからずにいた。
躊躇いながら、彼が足を彼女へ踏み出そうとした瞬間、ジンガンが足早に歩き出す。
「あぁ、あのおばさんヒドイな」後ろに続きながら、ムヨンがたまらずボヤく。
黙って後を追うのは気が引けたのだ。

ムヨン「ぶたれたの初めてか?」
ジンガン「…。」
ムヨン「初めてなんだな」
ジンガン「…。」
ムヨン「メシ食いに行く?」
ジンガン「…。」
ムヨン「メシ食ってないだろ。こんな日に一人でメシ食うのは最悪だ」

ジンガンが急に立ち止まり、彼を振り返る。「だから俺と食事しようって?」

ムヨン「…。」
ジンガン「そうよ。平手打ちなんて初めて。一体何なのかさっぱりわからないし… すごく恥ずかしくて悔しくて!辛くてたまらないわ」
ムヨン「…。」
ジンガン「それなのに、あんたと食事?楽しくてたまらないあんたをもっと楽しませるために、食事までしてあげなきゃいけないわけ?私が何で?!!!」

怒りを爆発させるジンガンを、ムヨンは静かに見つめ返した。「嫌ならいい」

ジンガン「嫌よ!」

「それに…」怒鳴ったことで、ジンガンの怒りが加速する。「全部あんたのせいよ」

ジンガン「スンアのおばさんが怒るのも当然だわ。私だって怒ったはずよ。あんたみたいなのと娘がつき合って、喜ぶ母親なんてどこにもいないわ」
ムヨン「そうかな」
ジンガン「そうよ!だから帰って。頼むから帰ってよ!!!」

「…OK」ジンガンの暴言に何ら反応することなく、ムヨンは背を向ける。
反対側に歩き始めると、ジンガンの目から涙が溢れ出した。

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「ブサイクだなぁ」妹から届いた愛らしいセルフショットに、ジングクはほろ酔いで目を細めた。

ソジョン「目に入れても痛くなさそうね」
ジングク「まだ目に入れてみたことはないけど… 一度入れてみようか♪」

携帯を目に入れる真似をして、ジングクはげらげらと笑う。「痛いな」

ジングク「(携帯の写真を指し)まだ子どもなんだ」
ソジョン「自分の方が子どもでしょうよ。ジンガンは最初から分別があったわ」
ジングク「そうだったか?」
ソジョン「そうよ。子どもの振りしてくれてただけ。ユ課長に気を遣ってね」

「わははは」ジングクは豪快に笑う。「そうだそうだ!よくわかってるなぁ」

ジングク「自分の方がしっかりしてるとわかったら俺が傷つくから、分別がない振りをしてるんだ。俺は俺で、あいつを傷つけないように、気づいてない振りで子ども扱いしてやってる」
ソジョン「(うなずく)」
ジングク「つまりだ、あいつは子どもの振りをして、俺は子ども扱いしてるから、これぞ”分別がない”じゃないか」

#酔っ払いめ。延々と何が言いたいのか…^^;

ソジョン「だけど… 何でまた私はそれを理解できちゃうわけ?」

すっかり酔いの回ったジングクは、座ったままウツラウツラし始める。
「…。」彼の横顔を眺め、ソジョンは小さく溜息をついた。「年取ったわね、あなたも」

ソジョン「それなのに、自分のことは後回し」

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「…。」屋上部屋の前で、ムヨンは物思いに耽っていた。
子猫がよちよちとやって来て、小さな声を立てる。

ムヨン「?」

ムヨンは振り返り、声の主を覗き込んだ。「まだいたのか」
猫を抱き上げ、彼はもう一度眼下の街に目をやる。「見ろよ」

ムヨン「世の中おかしなことだらけだよな」

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秘書が持ってきた写真の束を、ウサンは飽き飽きした表情でめくった。
スンアがムヨンと密かに会っているのを隠し撮りしたものだ。
二人がモーテルに入ろうとしている瞬間も捉えていた。

ウサン「何だ?これは」
秘書「どうやら常務が…」
ウサン「…人事部主任を呼べ」

そこへ内線が鳴った。「ペク副社長の奥様がお見えです」

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「私がこんなこと言うのもどうかと思いますけど」トイレ掃除をしながら、家政婦が言った。「これだけはお嬢さんも知っておかれた方が」
開いたドアの向こうで、スンアがうなだれている。

家政婦「お金っていうのは本当に恐ろしいものなんですよ」

玄関チャイムが鳴る。
家政婦が急いで部屋を出ていった。
「…。」スンアの視線が向かったのは、家政婦がテーブルに置いたままにした携帯電話だ。

#トイレ掃除に使っていたゴム手袋をテーブルに放り出して行くなーっ

家政婦の携帯を掴むと、スンアはトイレに入り、鍵を掛けた。

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デスクに戻ったところで、ジンガンの携帯が短く音を立てた。
”ジンガン姉、私、スンアよ” スンアがメッセージを送ってきたのだ。

スンア(メール)「家政婦さんの携帯からメールしてるの」

「…。」スンアの母に侮辱された忌々しい記憶が、またジンガンの胸に蘇る。

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アーツのレシピ工房で作業をしていたムヨンは、デスクに置いてあった陶器を手に取った。

ムヨン「…。」

恥ずかしくて悔しくてたまらない、全部あんたのせい… 自分に怒りをぶちまけるジンガンの姿が頭にこびりついている。
ムヨンは陶器をゴミ箱へ放り投げた。
ガシャンと冷たい音を立て、それは無残に砕け散る。
「何だ?捨てたのか?」驚くヒジュンを残し、ムヨンは工房を後にした。

ヒジュン「高いのに、俺にくれりゃよかったじゃないか」

「スンアに振られたのかな?」ヒジュンは溜息をついた。「財閥二世には勝てないよな」

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社を出ようとしたウサンの車の隣に、向こうから入ってきた車が止まる。
窓から顔を出し、微笑んだのは姉のチャン・セラン。NJグループの常務だった。

セラン「プレゼントを送ったのに、お礼もないの?」
ウサン「…。」

渋い弟の表情に、セランは満足げだ。
姉のセランもまた、夕食会をスンアにすっぽかされた一人だった。

セラン「私、スンアを見直したわ」
ウサン「?」
セラン「正直、あんなに根暗でまどろっこしい子、何が面白くて何年も付き合ってるのかと思ってたけど、隅に置けないわね。意外に魅力的だわ。あんたみたいな男には勿体ないくらいよ」
ウサン「お前の思惑通りになんかなるかよ」
セラン「あら?それじゃ、クールに結婚するつもり?」
ウサン「…。」

「なおさら興味津々だわ」セランは笑って車の窓を閉めた。

ウサン「…。」

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バスに揺られながら、ジンガンはスンアからのメッセージを見つめていた。

”今、家政婦さんの携帯からメールしてるの。これをムヨンさんに伝えてちょうだい”

ひとしきり見つめてから、ジンガンはメッセージウィンドウを開く。
送信先はムヨンだ。
入力欄をタップして、ジンガンの手はまた止まった。

ムヨンに怒りをぶちまけてしまったのが思い浮かぶ。
「全部あんたのせい」「スンアのおばさんが怒るのも当然」「娘があんたみたいな男とつきあって喜ぶ母親なんていない」

「…。」彼女は物憂げに窓の外を見やった。

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”夕方会える?” 屋上部屋へ帰ってきたところで、ムヨンの携帯にメールが入った。
ジンガンからだ。
彼は上まであがった階段を、また下り始めた。

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「どうしたんだ?」思いつめた顔で座っていたジンガンは、ムヨンの声で顔を上げた。

ムヨン「お前からデートに誘うなんてさ」

それは、以前トラックに轢かれそうになった子猫を助けた、あの店先だ。
ムヨンが向かいに腰を下ろすと、ジンガンは携帯を差し出した。「スンアが伝えてくれって」

ムヨン「それだけ?転送すればいいだろ」

「…。」あっさり言われ、ジンガンは携帯を引っ込めた。「そうね」

ジンガン「謝りたくて。この間はごめん」
ムヨン「…。」
ジンガン「あんたのせいじゃないのに、言い過ぎたわ」

「…。」ムヨンは黙って立ち上がると、横に停めてあったジンガンの自転車にまたがる。

ジンガン「どうしたの?」
ムヨン「タダで謝ろうって?」

「メシおごれよ」さっさと自転車を漕ぎ出すムヨンを、ジンガンは慌てて追いかけた。「ちょっと!」

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通りを歩いていたユリの顔がパッと華やいだ。
と、次の瞬間、笑みが消え去る。

向こうを自転車でやってくるムヨンが見えたものの、後ろに早足でついて来る女がいたのだ。

ムヨン「!」

ムヨンのその柔らかな表情に、ユリは思わず後退りした。

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近くの飲食店に入ると、ムヨンは改めてスンアからのメールを読んだ。

”大事なことに気づいたの。これからはもっと賢くなろうと思う。ずっと一緒にいられる方法を見つけるわ。ムヨンさん、私の気持ちは決して変わらない。だから、少しだけ待って”

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スンアはふさぎこむのをやめた。
身なりを整え、食事をちゃんと摂る。
ムヨンにはもう会わないと母親に告げ、自分が悪かったと詫びたのだ。

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メールに目を通すと、ムヨンは少し困ったようにジンガンを見た。

ムヨン「メシ食ったんじゃないのか?」

ジンガンはもりもりご飯を食べ、肉を追加で注文する。

ジンガン「食べたっていいでしょ」
ムヨン「ゆっくり食えよな」

一口食べて、ジンガンの携帯を返す。「ビンタされたのに、よくこんなお使いしてられるな」

ジンガン「もうやらない。これがホントに最後」

「順序がおかしい」ムヨンがポツリと言った。

ジンガン「何の?」
ムヨン「”ジンガン姉、私、スンア。今、家政婦さんの携帯からメールしてるの。ムヨンさんにこれを伝えてちょうだい”」

#↑これも完璧に覚えてる^^

ジンガン「?」
ムヨン「ごめんの一言がないだろ」
ジンガン「急いでたからでしょ。人の携帯使ってギリギリでメールしたから」
ムヨン「おばさんだってそうだ。ビンタするなら一番に我が娘スンア、二番にスンアがつき合ってる男。おかしいだろ、順序が」
ジンガン「その話はやめて。心臓に悪いから」

「娘が大事だからよ」ジンガンは再び手元の皿に視線を落とす。

ムヨン「お前は?大事じゃないのか」
ジンガン「やめてってば。ただでさえ頭から離れないんだから。考えたくないのに、もう数え切れないほど考えたわ」
ムヨン「…。」
ジンガン「だけど、考えるたびに悲しくて情けなくて… 申し訳ない気になるの」
ムヨン「悲しくて情けないのはわかるけど、申し訳ないって何だよ?」

「お兄ちゃん」ジンガンが下を向いたまま言った。

ムヨン「…?」
ジンガン「ブザマにビンタなんかされてさ」
ムヨン「…。」
ジンガン「お兄ちゃんに申し訳なくて」
ムヨン「…。」
ジンガン「そのうちスンアまで憎らしくなる」

店員が追加注文の肉を運んでくる。
「やった、肉だぁ」ジンガンが、顔を上げた。

ジンガン「食べなよ。おごりなんだから」

「…。」ムヨンは彼女を見つめたまま、動かない。

ジンガン「何?そんなに見ないでよ。あんたのお母さんだって、あんたのこととなると同じだったはずよ。母親っててそういうものでしょ」
ムヨン「さぁな。母親なんていないから」

「…。」ジンガンの動きが一瞬止まった。
「お父さんは?」せっせと料理をつつきながら、彼女は淡々と続ける。

ムヨン「いない」
ジンガン「いつから?」
ムヨン「ガキの頃から」

「… ねぇ」彼女が顔を上げた。「こんなことでお互い憐れに思うの、やめよう」

ジンガン「もうすぐ30よ。私も両親はいないわ」
ムヨン「知ってる」
ジンガン「?… あぁ、スンアから聞いたのね」
ムヨン「なぜか最初から知ってた気がする」

「顔に出てるのかな?親なしで育ったって」そう言って彼女が笑うと、ムヨンもそれにつられて笑った。

ジンガン「それじゃ、誰に育てられたの?」
ムヨン「施設」

「…。」ジンガンが深刻な目で彼を見た。

ムヨン「憐れに思うのやめようって言ったろ」
ジンガン「誰も憐れだなんか思ってないわ」

店員が少し離れた席に料理を運ぶ。
背を向けている女性客… ユリは、二人の会話に思わず爪を噛んだ。

「それに俺は30だ」ムヨンが言った。「もうすぐじゃなくて、もう30」

ジンガン「だから?」
ムヨン「”オッパ”って言ってみろよ」

呆れ顔で、ジンガンは外へ向かって言った。「オッパー(お兄ちゃん)、変な子がからかうんだけどー」
二人は目で笑い合う。

ジンガン「それっていつから?」

ジンガンの視線を追って、ムヨンは自分の肩を見た。「さっそく訊くか」

ムヨン「覚えてない。お前は?」
ジンガン「私も覚えてない。家が火事になったってお兄ちゃんが言ってた」
ムヨン「ご両親はいつ?」
ジンガン「お父さんは私が生まれる前、お母さんは私が7歳のとき。お姉ちゃんは私が小学校に入る前に移民した」
ムヨン「…。」
ジンガン「お兄ちゃんと二人で暮らしてたの。お兄ちゃんが育ててくれた。一人で」

ジンガンは静かに微笑む。
これまでムヨンに対し、こんな顔を見せることはなかった。

ムヨン「それなのに心に傷もないなんて凄いな」

「ふふ」ジンガンは小さく笑い、少し間をおいて言った。「嘘よ」

ムヨン「?」
ジンガン「デタラメだってば、傷ついたことないなんて。当たり前でしょ。両親がいなくて腕に火傷まであるのに、あり得ない」

「…。」ムヨンが微笑んだのを見て、ジンガンも微笑む。「わかったかも」

ムヨン「何が?」
ジンガン「何であんたを見ると喧嘩したくなるのか。小学生のときのこと、思い出すのよ。戦争みたいだった小学生の頃」
ムヨン「?」
ジンガン「実はあれも嘘。ビンタされたことあるわ。一度だけど。9歳のとき、担任の先生にね」
ムヨン「それでも一度なら上出来だ」
ジンガン「でしょ。だけど、あのときは子どもだったから、バカみたいに話しちゃったの、お兄ちゃんに」
ムヨン「…。」
ジンガン「その夜、お兄ちゃん一人で泣いてた。布団かぶって、めちゃくちゃ泣いてた」

「…。」しばらく彼女を見つめ、ムヨンは言った。「いっぱい食べな」

ムヨン「嘘つくのも大変だったろ」

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「エイリアン、爬虫類」「宇宙人、ワニ革財布」帰り道、並んで歩きながら、二人は自分たちが今までつけられた”あだ名”を挙げ、笑い合った。

ジンガン「ホントに多いわ、あだ名。ヘサンに住んでるときは、カバンを鶏小屋に捨てられたこともあったし」
ムヨン「ヘサン?」
ジンガン「うん、幼稚園の頃。どうかした?」
ムヨン「俺も元々はヘサンに住んでた」
ジンガン「ホント?!施設がヘサンにあったの?」
ムヨン「うん」
ジンガン「ふーん。子どもってどうしてあんなに残酷なのかな」
ムヨン「残酷ってことなら大人の方がヒドイだろ」
ジンガン「そうだけど、良い人の方が多いわ」

ムヨンが押していた自転車を停める。

ジンガン「すねた?」
ムヨン「…。」
ジンガン「すねちゃダメ」

「じゃあな」ムヨンがクルリと背を向けた。

ジンガン「猫は元気?」
ムヨン「そうだな」
ジンガン「名前は?」
ムヨン「名前?カン」

「カン?」ジンガンがニッコリ微笑む。「可愛い」

ムヨン「姓がジン、名前がガン、ジンガンだ」

ジンガンは溜息をついた。「訊いた私がバカだった」

ジンガン「わかってる?あんた、ホント小学生並みよ」
ムヨン「名前なんかない」
ジンガン「名前ないとダメでしょ。いなくなったらどうすんのよ」
ムヨン「元々俺のじゃないのに、いなくなるって言われても。俺はいつも出てけって言ってるんだ」
ジンガン「あんたのこと、まだ好きになれそうにないわ」

ムヨンはニヤリと笑った。「まぁ頑張れよ」
ふふんと笑い、ジンガンは小さく言った。「頑張るわ」

ムヨンと別れ、ジンガンは自転車を押して坂を上がると、家の前に停めた。
角で誰かがじっと見ていることに気づくことはない。

ユリ「…。」

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「…。」ベッドに横たわり、ユリは思い返していた。
ビルの屋上にあがり、飛び降りる瞬間を待っていた、あのときのこと。

柵の上に足を乗せ、一歩前に踏み出す。
その瞬間、そばで声がした。「飛び降りるのか」
男がやって来て、隣で柵の下を覗き込んだ。

ユリ「…?」

「俺と遊ぼう。超楽しいぞ」その男… ムヨンはそう言って、手を差し出したのだ。

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ジングクは街中で見かけた占い小屋に入った。

ジングク「男は陰暦1990年1月11日申の刻。女は陽暦1990年4月7日なんだが…」
占い師「相性を?」

「…。」少し考えて、ジングクは微笑んだ。「いや、女性の生まれた時間を一つだけ考えてください。男性と一番相性のいいのを」

しばらく経って、ジングクはメモを片手に嬉しそうに出てきた。

#お兄ちゃんの優しい笑顔、どこまでも妹思いで胸がギュッとなります…。

小走りで横断歩道を渡ろうとすると、赤い車がいきなり突っ込んできた。
「!!!」危ういところで停止し、驚くジングクを無視して発進する。
運転席にいたのは、ユリだ。

ジングクは急いで車に戻り、ユリの後を追った。
様子がおかしい。持ち前の勘が働いたのだ。

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ユリの車は、何度も角を曲がった末に、地味な建物の前で停まった。
ユリが降りてきて、建物に入っていく。

【小児青少年精神科】

ジングクはすぐにインターネット検索し、この精神科について調べた。

【小児、青少年のトラウマ専門精神科医師ヤン・ギョンモ氏】

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ヤン・ギョンモ博士はどこか浮かない表情で小さく息をついた。
教会で見かけたムヨンの姿が、頭から離れなかったのだ。

書棚から一冊の本を手に取ると、裏表紙をめくる。
彼自身の著書だ。

そのとき、ノックもなしに部屋のドアが開いた。「?」

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突然ヤン博士を訪ねてきたユリは、じっと俯いたまま、爪を噛んでいた。
「ユリ」ヤン博士がそっと声を掛ける。

ユリ「3日も眠れないの」
ヤン博士「それでも、これ以上薬はダメだ。私が処方しないことは君もわかってる。処方だけなら他の病院でいくらでもしてもらえた。そうだね?」
ユリ「…。」
ヤン博士「話がしたいんだろう」
ユリ「あんたが私の人生をぶち壊したの」
ヤン博士「…。」
ユリ「あんた… それとあの女」
ヤン博士「お母さんも君が元気になるのを願っておられる」
ユリ「母親だなんて言わないで。ぶっ殺すわよ。あんたもあの女も死んじゃえばいい」

「あの野郎も」消え入りそうな声で、ユリはそう付け足した。

ヤン博士「あの野郎?その話をしたいんだね?」
ユリ「… あの野郎って言わないで」
ヤン博士「…。」

「”あの野郎”じゃないわ」ユリの目に涙がにじむ。
楽しそうに自転車を漕ぐムヨンの姿が、瞼の裏に張り付いたまま離れなかった。
店で聞こえてきた身の上話も…。

ユリ「あんな顔、初めて見た。私にはあんなこと話したこともないのに!」
ヤン博士「君には一度もしたことのない話を、別の人にしていたんだね」

「そうだね?」言いたいことを反復してくれるヤン博士の前で、ユリはわっと泣き出した。

ヤン博士「好きなのかい?その人のこと」

ユリが顔を上げ、強がるように笑う。「好きじゃないわ」

ユリ「なんでみんなそう言うの?」
ヤン博士「…。」
ユリ「ホントに好きじゃないのに、どうして…」

ユリはヤン博士にカッと目を見開いた。「あんたのことはわかってる」

ユリ「またあの話を搾り出して本を売るつもりなのよ。もう騙されないわ」
ヤン博士「…。」
ユリ「薬、ちょうだいよ。先生!薬ください」
ヤン博士「…。」
ユリ「薬ちょうだいってば!!!」

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連れ立って夕食に出掛けた強力3班の面々とは別に、ジングクは屋台の隅で一人、酒をすすっていた。
降り出した雨が、屋台を囲むビニールシートを強く打つ。
手元の買い物袋から出した本を、静かに眺めた。

【児童心理相談事例集~トラウマと共に~】

ヤン・ギョンモ博士の代表的な著書だ。

【目次】
プロローグ – トラウマと共に生きるということ
1. 殺人者の息子 – 加害者の家族として生きねばならないということ
2. 記憶を失った少年 – 過去を想像せねばならないということ
3. 傷つかない子 – 二度の絶縁が残したモノ
4. 子犬を叩く理由 – 虐待の連鎖
5. 生き残った子 – 大惨事で生き残った後
6. 暗黒の52時間 – 誘拐経験
7. 見えない少女 – 富裕家庭の”みにくいアヒルの子”
エピローグ – 人、空間、そして時間

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切れたままの電球を買ってくるよう言われ、ユリは職場を出た。
コンビニを出て、黒い傘を開く。
傘からビールフェスティバルのロゴが現れた。

ユリ「…。」

その瞬間、ユリの脳裏に記憶が滑り込んでくる。「!」

傘を持つ男性の手に、自分の手が伸びる。
男性はユリに傘を持たせ、その上から手を添えた。
1502号室のプレートが一瞬掠めた。

「”オッパ?”」

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部屋から出て傘を広げると、ムヨンは辺りを見回した。「ニャオ~」
左手に持っているのは缶詰だ。

ムヨン「ニャオ~、雨降ってるじゃないか。カン!ジン・ガン!」

「ユ・ジンガン!」何となくそう呼んでみる。
向こうで小さく猫の鳴き声がした。

ゴミ捨て場の柵の中から、子猫がひょっこり顔を出した。

#可愛すぎる…。反則だよね

ムヨン「お前、ユ・ジンガンか?」

子猫が柵から飛び降りると、前に置いてあった赤いボックスが倒れた。
その拍子にボックスの蓋が開く。

「!!!」

そこに見えたのは、小さな銅像だ。

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屋台にいるジングクの携帯が鳴った。
「つまり課長は僕が必要なんですよね」電話の向こうから聞こえたのは、チョロンの声だ。

ジングク(電話)「やれやれ、酔ってるな」

焼肉屋を出たところで、チョロンは座り込んで電話をしていた。
「僕が超有能だから」チョロンは笑う。

チョロン(電話)「やりますよ。再捜査」

「わかった」短くそう答えるジングクの笑顔は温かい。

チョロン(電話)「では明日」
ジングク(電話)「おい、先に切るやつがあるか」
チョロン「?」
ジングク「辰の刻(※ジンシ)だ」
チョロン「秦始皇帝?(※ジンシファン)」
ジングク「子丑寅卯辰、辰の刻だ。ジンガンが生まれたのは」

「あぁ!」チョロンは飛び跳ねんばかりに立ち上がる。「ありがとうございます!」

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ジンガンが部屋で肌の手入れをしているところへ、メールが入った。
”何してます?”チョロンからだ。

”楽しく会食した帰り道なんです。今日はすごく気分が良くて。ジンガンさんも楽しい夜を”

「会食?」ジンガンは窓の外を覗いた。

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帰ろうとして、ジングクは恨めしそうに雨を見上げた。
そこへ電話が鳴る。
「お兄ちゃん、飲んだんでしょ」ジンガンからだ。

兄「あれ?エスパーだな」

「会食だって聞いたから」傘を手に、ジンガンは家を出た。「飲酒運転したら許さないわよ」

兄「心配性だな。おいおい、来なくていいって。傘あるから、来るなよ」
妹「嘘。傘はここにあるのに。バス停まで行くから」

ジングクは本の袋を小脇に抱え、身をかがめて駆け出した。

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雨はさらに強まっていた。
それでもジンガンは鼻歌を歌いながら、のんびり通りを歩く。

大急ぎで駆けて来たジングクは、角の向こうにジンガンが歩いてくるのを見つけ、影に身を潜めた。「!」
ワッとおどかしてやろうと思ったのだ。

ジンガンの後ろに、赤い車がゆっくりと近づいてくる。
ジングクの隠れている十字路に差し掛かったそのとき…!
車が急にアクセルを踏み込んだ。

妹「?」
兄「!」

ジングクが全速力で飛び出し、妹を抱きかかえる。

妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん大丈夫?!」
兄「あぁ。大丈夫か?」
妹「私も大丈夫」

ジンガンに突進してきた車が、そこに停車していた。
「じっとしてろよ」ジングクが慎重に近づき、ドアを開けると…
若い女が運転席で気を失っていた。

兄「!!!」

ユリだった。

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ここでエンディングです。
ユリの存在感が凄いです。
凄い顔面力。
表情だけで引きつけられる。

 - 空から降る一億の星