韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!プロデューサー/SPY/夜警日誌/トライアングル/主君の太陽など

プロデューサー10話あらすじ&日本語訳 vo.2

   

キム・スヒョン、IU、コン・ヒョジン、チャ・テヒョン、出演、KBS韓国ドラマ「プロデューサー」10話、中盤です。

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真っ黒い大きなマスクをつけ、キャップを被り、シンディはカフェを覗いた。
若者が3人座っているのが見える。「あの… こちらが…」

「シンディジョラさん?!」その中の女性が言った。
シンディが頷くと女性は隣の空席を勧める。

#わー ホントに来ちゃうなんてね

#男性陣はカメオ出演のチョン・ジュニョンさんとロイ・キムさんですね。

男性1「お会いできて嬉しいですよ。だけど、どうしてそんなガチガチに覆ってらっしゃるんです?借金も財産なら、アンチもファンです。アンチだってちっとも恥ずかしいことじゃないですよ」
シンディジョラ「…。」
男性1「僕だってちゃんとした仕事があるし、みんなそうですよね」

#うんうん、そんなもんだよね。みんな普通の人なんだよ

男性1「僕は良才洞で花の卸しをやっているんです」

男性が名刺を差し出す。
「私は一山に住んでる高校生です」隣の女性が手を上げた。
「僕は司法研修生です」もう一人の男性が名刺を出す。

「あぁ、皆さん初めまして」シンディジョラがマスクの向こうで微笑んだ。

シンディジョラ「私は名刺がなくて」
男性1「就職活動中ですか?僕らのカフェでも、就職活動しながら活動なさってた方が、この間公務員試験に合格なさったそうです。あまり心配なさらなくても大丈夫ですよ。上手くいきますから」
男性2「”シンディガニシンディ”さんはどうして来ないんでしょうね。遅れる方じゃないのに」

「ところで」シンディジョラが口を開いた。「一体どうしてシンディのアンチになられたんですか?」

男性1「実は僕、スジさんのファンなんですけど、スジがやってたCMを全部シンディが奪って行っちゃうから、胸が痛くてね」
女性「私もともとシンディの大ファンだったんですよ。前にどこかの飲食店で見かけたんですけど、写真一枚撮ってくださいって言ったら、スッピンだからって撮ってくれなかったんです。何がスッピンよ、BBクリームまるまる1本は塗ってたわ」
シンディジョラ「…。」
女性「たくさん人がいるところで断られちゃって。それで、ひねくれてアンチになったんです」

「ふぅん」シンディジョラが言った。「ごめんね」

一同「?」

「今撮ろう。撮ったげる」シンディジョラ、もとい、シンディはマスクと帽子を外す。

一同「!」
シンディ「私、今日は本当にBBクリーム塗ってきたから、撮ってあげるよ」

「撮って」シンディがテーブルのカメラを指さすと、目の前の男性が素直に答えた。「…はい」
突然不思議な撮影会が始まる。「1,2」シャッターが切られた。

シンディ「あのさ、どうやってBBクリーム丸1本塗るわけ?」
女性「…。」
シンディ「あんただって塗ってりゃわかるでしょ?豆粒くらいでも、余って拭き取るくらいなのに」

シンディがジロリと目の前の男性を睨む。

男性1「!」
シンディ「私がスジのCMを奪ったのより、スジが私のを奪ったほうが多いんですから!」
男性1「…。」
シンディ「あぁ!それに、スジの試験番組のせいで、私が出てる一泊二日が休止になったの、ご存じないんですか?」
男性1「それは良かったんじゃ… あ!…じゃないですね」

今度はもう一人の男性だ。

シンディ「そんなに勉強熱心な方が、どうしてアンチカフェの活動なんか?」
男性2「すみません!僕、勉強でものすごくストレスがたまって。だけど、法的に問題にならない程度に、ほどほどにやってたんです、これでも」

「名誉毀損ギリギリでしたよね?」男性2の矛先が隣の男性1に向かう。

男性1「お前、家も金持ちなんだから、罰金も払えるだろ」
男性2「…。」

「サインください」男性1が言う。

シンディ「スジに貰えばいいでしょ」
男性1「実物の芸能人見るの、初めてなんですからぁ」
シンディ「!」

2030

男性1「…。」

「”シンディガニシンディ”さん、どうして来ないんでしょうね」男性2がまたその名前を持ち出し、電話を掛けた。

#あ、もしかしたら♪

どこかから電話の鳴っている声が聴こえる。

男性2「あ、いらっしゃった。シンディガニシンディさん!」

鳴っている電話を片手に、ニコニコとカフェに入ってきたのは、シンディのマネージャーだ。

シンディガニシンディ「!!!!!」

彼は咄嗟に踵を返し、全速力で逃げ出した。

男性2「何で行っちゃったんだろ?」
男性1「僕たちがシンディの悪口言ったら、”胸のつかえが取れた”って、涙流して喜んでたのに」

「あの」シンディが手を叩き、話を遮る。

シンディ「帰る人は帰らせて。今日ここに集まった理由は、どうすればシンディが潰れるかってことでしょ」
一同「…。」
シンディ「言ってみて、早く。私はそれさえ避けて通れば大丈夫ってことなんだから。ん?ん?ん?」
一同「…。」

#シンディのキャラづくりもホントに上手いよねぇ。こんなに小憎たらしいのに可愛くてたまらない。
うまいわー

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スンチャンはあれからまだずっとPCに向かっていた。
画面の中にはいろいろなシンディが並んでいる。
彼女の表情を見つめるうち、スンチャンの顔に笑みがこぼれた。

2038

#今度の放送がどういう回なのかさっぱりわからん

廊下を通りかかったイェジンは、中にスンチャンがいるのに気づいた。「?」
外からそっと様子を窺ってみる。
画面のシンディを見つめるスンチャンの横顔がとても楽しそうで、彼女はなんとなく考えを巡らせた。

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イェジン(インタビュー)「私って勘がいいんです。特にカップルの勘。誰が誰を好きだとか、そういうのもすぐわかるし、誰と誰がお似合いだとか、そういうのもビビっと来るんです。だから、私が紹介して結婚したカップルはもう4組になるんですよ。(小声)そのうち2つは離婚したけど、それはそれとして。そのくらい私、勘がいいんです。ペク・スンチャン、好きな人が出来ましたね。あははっ」

#何が「あははっ」やねん

イェジン(インタビュー)「あの子、シンディが好きなんですよ。まぁもちろん、テレビ局で働いていれば、ときどきそういう子もいますよ。芸能人と接して、好きになることだってありますよね。だけど到底ムリよ。だってね、シンディを好きになってどうするの?!あはははっ」

#何が「あはははっ」やねんって

イェジン(インタビュー)「例えば私がウォンビンさんと番組をやって、ホントに男として好きになっちゃった、それと同じことじゃないですか?あ、ウォンビンさんは結婚したんだった、まぁとにかくそういうことですよ。ふははっ」

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スンチャンのCM編集はまだ続いていた。
再び廊下にやって来たイェジンが、コンコンとノックする。

スンチャン「?」

「屋上」イェジンは指で上を指した。

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「私たち乾杯しなきゃね、ペク・スンチャンPD」チューブアイス片手にイェジンが言う。

イェジン「初めての予告制作、おめでとう」

スンチャンがチョコンとチューブアイスの先をぶつけた。「ありがとうございます」

イェジン「徹夜したんだって?」
スンチャン「はい。初めてでまだわからなくて。原本が28時間分あるんですけど、そこから一番面白い部分を30秒選ぶっていうのは、思ったより難しくて」

話しているスンチャンの顔を、イェジンは嬉しそうに覗き込む。

スンチャン「何…どうしたんですか?」
イェジン「スンチャン、考えてみたら私、あんたに悪いことしちゃった。ずっと自分の話ばかりしてたでしょ。人の話を聞いてあげるのが好きだとは言ってたけど、あんただって自分のしたい話があったはずなのに」
スンチャン「?」
イェジン「あんたにもあるんでしょ?そうでしょ」
スンチャン「(考)」
イェジン「言ってみなさいよ、聞いたげるからさ」

突然のことに、スンチャンは戸惑って考え込んだ。

イェジン「私が当ててみようか?」
スンチャン「…え?」
イェジン「あんた、好きな人が出来たでしょ。それで悩んでるのよ」
スンチャン「ど…どうしてわかったんですか?」
イェジン「何ビックリしてんの。テレビ局で8年働いてりゃ半分巫女のようなものよ。私がそれくらい気づかないと思う?」
スンチャン「いえ、ご存知だったなんて、すごくビックリして…」
イェジン「いつからなの?」
スンチャン「え?」
イェジン「いつからそうやって一人でクヨクヨしてたのよ」
スンチャン「あ… しばらく経ちます。最初は全然そんなことなかったんですけど」
イェジン「(うんうん)」
スンチャン「だんだん自分でも気づかないうちに」
イェジン「けどさ、何でこう連続して片思いなわけ?私も経験してるからわかるけど、これってクセになるのよ」
スンチャン「…。」
イェジン「人は愛する経験も大事だけど、愛される経験も大事なの。一人で家を建てたり壊したり… ものすごく疲れるわよ」
スンチャン「今回は違います!何も言えずに一人で悶々とするようなバカなことはしませんから!」
イェジン「けどね、スンチャン。テレビ局で人とつき合うってのはさぁ、あんたもわかってるでしょ、ここは噂の工場だって。誰かが喋ったら、それこそスキャンダルよ」
スンチャン「その部分は僕が全て背負います!最後まで責任をもちますから」

「ふふっ」彼の逞しい宣言に、イェジンは優しく笑う。「うん、そのマインドは気に入ったわ」

イェジン「年取ってすり減った男にはない、その天然記念物級のマインド。私も協力してあげる。力になれるかわかんないけど」
スンチャン「………え?」
イェジン「シンディは知ってるの?あんたが自分のことそこまで思ってるって」

「!」スンチャンの頭の中でこんがらがっていた糸が、一瞬でほどけた。「先輩」

イェジン「大丈夫だってば」
スンチャン「(困惑)」
イェジン「わかったから。ねぇ、ここなら誰も聞いてないでしょ?私、もう名前言わないから。私たちだけのときはSって言う?あ、シンディならCか。だけどCだとちょっとバレそうじゃない?」
スンチャン「そういうことじゃなくて」
イェジン「ちょっと、心配ないって。誰にも言ったりしないから、ホントに」
スンチャン「…。」
イェジン「あんたも相談したいことがあったら言って。私が何でも聞いてあげる。ね?」
スンチャン「先輩、僕、そんなんじゃなくて」
イェジン「あんたさ、不格好な告白しちゃダメよ」
スンチャン「…。」

※”不格好”と訳したところ、原語では『어슬프게』と言っています。これは、序盤のスンチャンの告白の言葉にも出て来た言葉。
自分のことを「先輩にとって僕は幼く、未熟で不格好」と言う部分です。
訳が難しい言葉で、2箇所の訳を揃えようと悩んだ末に”不格好”になりました。
スンチャンが『不格好な告白』と聞いてちょっと深刻な表情になったのは、そのせいかもしれません。

イェジン「相手はシンディよ。スターなの。あんたの気持ち、察しもつかないはずよ。だからね、私が言いたいのは、まだ準備ができてないってこと」
スンチャン「…。」

イェジンは頼もしくスンチャンの肩に腕を回した。

イェジン「片思い専門の子たちって、よく焦って勇気を出して失敗するけど、愛にも予告が必要なのよ」
スンチャン「…。」
イェジン「俺はもう少ししたら告白するぞ、もうすぐ近づくからなって。そうすれば相手も心構えができるの。期待もできるし。Noだと思ったら、防御策だって取れるしね」
スンチャン「予告…ですか」
イェジン「私を見なさいよ。予告もなしにお酒飲んでポロッと喋っちゃって、ジュンモとどれだけ気まずくなっちゃったか」
スンチャン「…。」
イェジン「いまだにその余波が続いてるんだから」
スンチャン「…。」
イェジン「予告が大事なのは番組だけじゃないわ。現実でも大事なの」

2031

イェジンはスンチャンの腕をポンと叩いた。「戻ろう。仕事しなきゃ」

スンチャン「あの…。いい予告って、どんなものですか?」
イェジン「?」
スンチャン「先輩ならどんな予告が見たいですか?」

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お店で待ちぼうけのヤンミを放ったらかしにして、ホンスンはジュンモと食事をしていた。

ホンスン「ホントに誰にも言うなよ。あの日、俺どうかしてたんだ」
ジュンモ「だな。ショッキングだ」
ホンスン「お前が俺に勝つには、イェジンとつき合うしかない。それなら、もっとショッキングだ」
ジュンモ「そうだな。けど、一体何があったんだよ?コ・ヤンミさんのこと身震いするほど嫌ってたのに」
ホンスン「いやさ、先週あの女、何日か休んだろ。それがいけなかったんだ。毎日悪口言ってたのに、突然姿が見えないと、心に穴が空いたような、そういうのあるだろ。愛憎の念みたいなもんか?」
ジュンモ「…。」
ホンスン「勘違いしちゃいけないんだがな、そういうのは。居心地悪くてたまらないよ」
ジュンモ「…。」

#ずっと少しずつ描かれてた、このホンスンとヤンミのエピソード。
「憎らしかったのに、突然姿が見えなくなると…」「勘違いしちゃいけない」っていうホンスンの話を聞いて、台詞はないけどジュンモはちょっとイェジンのことを考えてるのかなぁと、ここを狙って今までずっとこのエピソード描いてきたんですかねぇ。凄いねぇ

+-+-+-+

ジュンモが家へ帰って来ると、イェジンの部屋から叫び声が聴こえた。「蚊ーー!」
「蚊だって?!」ジュンモは彼女の部屋に駆けつけ、電気を点けた。「どこだ、どこだ?」

イェジン「あっちに飛んでったんだけど、いなくなっちゃった」

「あぁ、噛まれちゃった」イェジンが腕を掻く。
「噛まれたのか?!」ジュンモは彼女の腕を掻いてやり、頭からすっぽり掛け布団を被せた。

ジュンモ「とにかくお前は布団かぶって先に寝てろ。俺が捕まえるから」

#おかんやな

ジュンモは真剣な顔で部屋の空間を睨む。

イェジン「ねぇ、捕まえた?」
ジュンモ「待ってろって。寝てろ」

ブーン パン!

「!」イェジンが布団から顔を出した。「捕まえた?」

ジュンモ「捕まえたけど、こいつじゃない」
イェジン「何で?」
ジュンモ「お前、噛まれたんだろ?けど、こいつからは血が出ないからな」

「まだ別のヤツがいるんだ」ティッシュで手のひらを拭き、ジュンモは再び部屋を見渡す。

イェジン「(起き上がり)どこから入ってきたのかな?ジュンモ、網戸の修理、ちゃんと申し込みなさいよね」

「ぶつくさ言ってないで寝てろって!」座っているイェジンに、彼は掛け布団を被せた。

イェジン「ねぇ、ジュンモ」
ジュンモ「何だ?」
イェジン「私、引っ越すね」

「…。」彼の視線がゆっくりイェジンに向かう。

ジュンモ「結局、行くって?」
イェジン「ここでご飯作れっていうの?」
ジュンモ「そんな意味じゃないってわからないのか?お前、こんなに俺とくっついてて、俺のことわかんないのかよ?」

「そうだね、私たち、何でこんなにくっついてたんだろ」布団を被ったまま、イェジンが言う。「こんなに長い年月」

ジュンモ「…。」
イェジン「問題なのは、私たちが長い間一緒にいすぎたってことよ。だから私、ある日はあんたのこと友だちに見えたのに、別の日は男に見えたりするんだと思う」
ジュンモ「…。」
イェジン「だから、この結論は私たちがくっついてる時に出すべきじゃない気がする。私もあんたも勘違いするかもしれないから」
ジュンモ「…。」
イェジン「慣れ親しんで気楽だからそばにいて良かったのか、本当に男として、女として好きなのか、私も知りたいの」

+-+-+-+

編集室で、再びスンチャンは画面を見つめていた。
イェジンの言葉が繰り返し思い出される。

2032

「いい予告?正直なものかな。トキメクのもいいし、魂奪われるようなのもいいし、みんなそう言うけど、私はむしろ本心の見える予告が好き。率直で淡々としてるの」

2033

「キラキラ光るたくさんのネオンの中で、ひっそり燃えている蝋燭を見つけた、そんな気分?」

#ここのシンディーの映像、あまりにピュアで愛らしくて、見ていて泣けてしかたありませんでした。

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朝。
目が覚めたイェジンは部屋から出ようとしてふと立ち止まった。「?」

壁に小さな血の痕がついていたのだ。
彼女は嬉しそうに笑った。「結局捕まえたのね!」

#ジュンモが部屋を出て行く前に、彼女は先に眠ってしまったってことですね。

イェジン「どうしよう。跡が残りそう」

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スンチャンは小道具置き場のソファで目を覚ました。

#そろそろ匂い始めたはず(笑

「今、何時ですか?」ぼぅっと起き上がり、FDに尋ねる。

FD「もう12時ですよ。ランチタイム」
スンチャン「…。」
FD「徹夜したんですか?」
スンチャン「…えぇ」
FD「来るべき時が来ましたね」
スンチャン「…え?何の時?」
FD「PDさんは多分、しばらく幻覚に悩まされますよ。日常のすべてにテロップがついて、BGMが流れるんです」
スンチャン「…。」
FD「編集症候群って言うんですけど、PDとして進化するための正常なステップだと思って、あまり驚かないでください」
スンチャン「…?」

+-+-+-+

スンチャンはふらふらとフロアを歩いていた。
向こうから来るのは… 昼食へ向かう局長軍団だ。
「?」彼はじっと目を凝らした。

「何にしようか」
「何を召し上がります?」
「何食べましょうか」

スンチャン「???」

BGMが頭の中で流れ始めた。

2035

#この音楽、日本のドラマ「空から降る一億の星」のOST「Resolver」ですね

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ミューバン班は揃ってカフェへやって来た。

イェジン「みんな注文しなよ。何食べる?」
男性スタッフ「俺はグレープフレーつジュース」
女性スタッフ「私も」
タジョン「私はアイスアメリカーノ」

「みんな座ってて」イェジンは注文カウンターに並んだ。
そこへ、タジョンが自分のカードを差し出す。

イェジン「この子ったら?いいのよ、一番下なのにお金なんか」
タジョン「ポイントカードです。ポイント貯めてもらおうと思って」
イェジン「?…あぁ、そう」

皆が苦笑いした。

イェジン「ポイントカードは私も持ってるんだけど…。あんたの使ってあげるよ」

イェジンはふとタジョンの服装を振り返った。「あんたどうしたの?」
タジョンは分厚い革ジャンを羽織っていたのだ。

イェジン「体が熱いって言ってた子が、こんなもの引っ掛けて。暑いんじゃないの?」
タジョン「暑いんですけど、PDさん、私の服装が気になるっていうから」

「私が話したんです」後ろで女性スタッフがフォローする。

イェジン「あぁ、だからってここまでしなくても。暑いでしょ。ここは外なんだし」

「はい」タジョンがスルリと革ジャンを脱ぐと、カウンターのスタッフが彼女のセクシーバディに釘付けになった。

イェジン「…タジョン、そんなに暑くないんなら着れば?」
タジョン「暑いんですけど」
イェジン「席に座ってなさいよ。何でここに立ってるわけ?あっち行って!」

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「ん?」車の中で、シンディは書類に目を丸くした。「これ何?」

マネ「あぁ、それ予告の台本。今回、一泊の予告は独特なのを作るらしい」
シンディ「何でこんなにコメントが…?!誰が書いたの?こんなの」
マネ「傘PD」
シンディ「!」

シンディはもう一度書類を覗き込む。

シンディ「一体あの傘PD、まともに出来る仕事があんのか?センスも悪いし、人の機嫌も取れない。その予告のコメントも変だ」

マネージャーがハンドルを切り、車が路肩に停まった。

シンディ「何?」
マネ「(ニヤニヤ)俺が言ってやろうか?台本変えてくれって」
シンディ「だってこれ、1つや2つ変えて済むようなものじゃないし」
マネ「じゃあどうする?」
シンディ「今さらどうしようもないわよ」

「行って」シンディは前を指さした。

マネ「(ニヤニヤ)ホントにいいのか?」

#おまい、その感じやめれ!

シンディ「何が?」
マネ「Go?」
シンディ「ふざけてんの?」

マネは素直に前に向き直り、アクセルを踏む。
車が走りだすと、シンディはせっせと鏡を覗いた。

+-+-+-+

シンディがやって来るのを、スンチャンはロビーで出迎えた。「い、いらっしゃいませ」
シンディはわざと澄ました顔で、視線を外す。

マネ「次は前もって連絡してください。こういうのホントに困るんです」
スンチャン「わかりました」

「こちらへ」スンチャンが改札機にカードをかざし、シンディとマネージャーを通す。

マネ「ちょうど時間が空いたから良かったものの、ホントにこういうの困りますから」
スンチャン「えぇ、コンセプトが急に…」

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スンチャンは二人を録音室に通した。

スンチャン「何か飲み物でも」

「いいんです」シンディがソファに腰を下ろす。

マネ「あの、PDさん。ちょっとお話が」

マネージャーは威圧的な口調で切り出す。「この台本、PDさんが書いたんですか?」

スンチャン「はい」
マネ「こんなのをシンディにやれと?」
スンチャン「…いまひとつですか?」
マネ「少なくとも3案は出して、選べるようにしてくださらなきゃ」

シンディが苛立ちを最大限に押さえ、マネージャーを呼んだ。「いいから」

「…。」マネージャーはヘラヘラと端っこへ腰かける。「君がいいなら…いいんだ」

シンディ「マネージャーさん、私、お茶一杯だけ」
マネ「飲み物いらないって言ってたのに」
シンディ「(ジロリ)」
マネ「あぁ、どんなお茶?」
シンディ「十全大補湯」
マネ「?!」
シンディ「…。」
マネ「近くに売ってるところがあるかどうか…」

”行きなさいよ”シンディが目で出口を指す。

マネ「…きっとあるよな」

マネージャーは部屋を飛び出した。

スンチャン「…。」
シンディ「どうすればいいですか?」

「あ、はい」スンチャンはタブレットを手に、彼女の隣に腰掛けた。

スンチャン「台本にあるコメントは、僕たちの会議中に実際に出た声を再構成したものなんです」

#へぇー なるほど。面白いね。

シンディが思わず笑う。

シンディ「会議室でPDさんたち、こんなこと言ってるんですか?」
スンチャン「はい」
シンディ「それじゃ、これを言った当事者たちが自分で吹き込めばいいじゃないですか。どうして私に…」
スンチャン「予告の目的は、視聴者を誘い込むことですから、やっぱり番組で一番愛されている方々にやっていただくのがいいと思うんです」
シンディ「愛されている?」
スンチャン「はい」
シンディ「いいですね、その言葉」
スンチャン「事実ですから」

シンディがもう一度笑った。「だけど」

シンディ「愛されてる人が言うには、このコメントって… 卑屈すぎますよ」

+-+-+-+

「キュー!」録音が始まった。
シンディに加え、男性陣の中からスンユンとジェミンがマイクの前に立っている。

シンディ「すごくざわついてるわ。試験番組がめちゃくちゃ強いって」
スンユン「はぁ、うちの打ち切り説がまた出ちゃった」
ジェミン「たったの5週で打ち切りの危機だなんてな」
シンディ「ネットの反応も酷いわ。はなっからナシ!悪口もナシ!検索ワードランキングなんてとっくの昔に消えてるわ」
スンユン「まだ諦めるには早いぞ!俺たちには6.8%の視聴者がいらっしゃるんだ!」
ジェミン「俺たちを無視した93.2%の視聴者はどうすんだよ?」
シンディ「このまま脆く消えてしまうのか、最後の闘魂を発揮するのか!まだ本格的なスタートも切れていないリアル野生ロードバラエティ、一泊二日シーズン5!!!」

最後にシンディがしおらしい声で付け足す。「…1回だけ見てください」

ガラスの向こうで、満面の笑みのスンチャンがVサインを出した。

+-+-+-+

3人の出演者が録音ブースから出てくる。

ジェミン「PDさん、僕らここまでしなきゃいけないんですか?貧相すぎません?」
スンユン「何で?面白いと思うけど。俺はこういうの好きだな」
シンディ「1回だけ見てくださいなんて…。反応悪かったらどうするの?」
スンチャン「祈りましょうよ。いい反応を」
スンユン「あ、シンディ。この間の撮影で撮った写真、SNSにあげてもいいか?」
シンディ「何?」

シンディがスンユンのカメラを覗き込む。「何よ。全部映り悪いじゃない」
「いいと思うけどな」スンユンがカメラの液晶画面をスンチャンに向けた。「PDさん、綺麗ですよね?」

スンチャン「シンディさんは元々お綺麗だから、綺麗だとは思います」
シンディ「…。」
スンユン「ほらな」
スンチャン「…けど」
皆「?」
スンチャン「普段の姿ほど良くはない気がします」

皆がもう一度写真を覗く。

スンチャン「つまりシンディさんは、一般的に知られる(上から手をかざし)”綺麗に見える角度”から狙って撮るより、こっちの左側、横顔のラインの方がもっと生きるんです」

二人の男の子が左側を素直に覗き込む。(←笑

スンチャン「だから、この角度をおさえるには、右側から(ぐるっと回りこむ)こうやって撮ってあげるのが、シンディさんの魅力が出るんです」

彼が語るのを、シンディはお人形のように緊張して聞いた。

スンユン「作家のキム・ジュンマン先生みたいだ」

スンチャンが楽しそうにニコニコする。
「他には?」シンディが口を開いた。

スンチャン「え?」
シンディ「私、他にどんなとき綺麗ですか?」
スンチャン「…。」

「俺たち、ここにいていいのかな?」見つめ合う二人の横で、スンユンがポツリと言った。

ジェヨン「だよな。何か甘いぞ」

「実は僕」スンチャンは実直に話し始める。

スンチャン「予告を作りながら夜通しシンディさんの顔を見てたんです。シンディさんの魅力は何か、僕がもっと生かさなきゃいけないポイントは何か」

「PDさん、僕は?」ジェミンが口をはさむ。

スンチャン「(即答)見てないからわかりません」
スンユン「僕は?」
スンチャン「…。」
スンユン「(即撤退)ご覧になってないんですね」

#スンユンくん、いいキャラしてますよね。

スンチャン「とにかく、見ていて感じたことは、シンディさんはメインカメラが回っていない時や、シンディさんご本人が鏡を見ていないときが、はるかに綺麗だってことです」
シンディ「!」
スンチャン「今みたいに」

2036

#あーもう 嬉しすぎてシンディの代わりに泣く!

「赤くなってる!」「照れてるぞ」男の子たちが囃し立てる。

シンディ「やめてよ」
スンチャン「別に他意があるわけじゃなくて、PDとしてそう分析したってことです」
シンディ「えぇ… ありがとうございます」

シンディははにかんで下を向いた。

+-+-+-+

マネージャーたちが現れ、スンユンとジェミンが先に録音室を出た。
スンチャンとシンディは二人残される。

シンディ「十全大補湯、近くに売ってないみたい」

「遅いわね」シンディは照れ隠しに笑った。

スンチャン「…シンディさん」
シンディ「はい?」
スンチャン「シンディさんのお家で言ったこと、すみませんでした」
シンディ「この間謝ったでしょう?いいんですよ」
スンチャン「いいえ、僕、かなり誤解してたことに気づいて…」
シンディ「!」
スンチャン「心からお詫びしたいと思ってたんです。ごめんなさい」

シンディの表情がふっと和らいだ。「えぇ。わかりました」

2037

そこへシンディのマネージャーが嬉しそうに駆け込んでくる。「やっと見つけたぞ!」

マネ「冷めるかと思って、めちゃくちゃ走ってきたんだ」
シンディ「走らなくて良かったのに」

+-+-+-+

シンディたちがスンチャンとともにロビーへやって来たところで、ミューバン班の一行と出会った。
「一体どうしたの?」イェジンが笑顔を見せる。

シンディ「こんにちは、PDさん」

イェジンが意味深な目でスンチャンを見た。

イェジン「あ、そうだ、シンディ。あんたに連絡しようと思ってたのよ。この間の放送で私にありがとうってコメントしてくれたの、あれ、シンディのファンたち大騒ぎなのよね。私にキャンディやら何やら」
シンディ「…えぇ」

「あ、それからさ」イェジンがわざとらしくシンディに近づく。

イェジン「一番最後に言ってた、傘になってくれた人?」
シンディ「!」
スンチャン「!」
イェジン「あれって誰?」

シンディが左に目を泳がせ、スンチャンが右に目を泳がせ、ヘラヘラしていたマネージャーが突然ハッと顔をこわばらせた。

シンディ「うふふ♪ いるんですよ、そういう人が♪」
イェジン「あぁそう、いるんだ」

イェジンが気の毒そうにスンチャンを見る。

スンチャン「…。」
イェジン「今日はどうしたの?」
スンチャン「録音ですよ。一泊の予告コメント」
イェジン「予告コメントを出演者がやったの?元々やってなかったじゃない」
スンチャン「あぁ、今回は特別にやってみたかったんです」
イェジン「あははは、特別にね♪」

イェジンがニヤニヤと二人を見る。

シンディ「?」
スンチャン「あ、今回はホントにそういうコンセプトなんです!」
イェジン「うんうん、そういうコンセプトなんだろうね」

「…。」妙な空気にシンディが口を開いた。「私、行きますね。スケジュールがあるから」

イェジン「あ、あのさシンディ、私あさって引っ越すの。大きな家じゃないけど、引越し祝いするときに招待するよ。時間があったら来てね」

「えぇ」少し間を置いてシンディが頷く。「予定が合えば」

シンディがファンに囲まれて去っていくのを、スンチャンはイェジンと二人で見送った。
「ちょっと!」イェジンがスンチャンの脇をつつく。

スンチャン「?」
イェジン「顔に出てるわよ」
スンチャン「先輩!考えていらっしゃることはわかりますけど、それ本当に違うんです!」
イェジン「大丈夫だってば!愛するのはいけないこと?青春は罪?そうでもして会いたい気持ち、私が理解できないと思う?」

「先輩」スンチャンはイェジンの後についてエレベーターに乗り込んだ。

イェジン「だけどシンディ、心の中に傘の人が一人いるみたいだけど。あんた、どうしたもんかな…」
スンチャン「先輩、僕が好きな人はシンディさんじゃありません。それは違います!」
イェジン「ふぅん、そうなの。違うの?」
スンチャン「…。」
イェジン「じゃ、誰?」
スンチャン「(ジーッ)」
イェジン「ふはは、誰なのよ~、あんたが好きな人は」
スンチャン「まだ予告してないんです」
イェジン「(笑)」
スンチャン「だから、まだ言えません」
イェジン「何よ!その人に予告してないかもしれないけど、何で私に言えないの?!」
スンチャン「(困)」

#もー どうしようもない。スンちゃんはちゃんと先輩の言うとおりにしてるのだ

イェジン「もういいよ!私はあんたと仲がいいと思ってたから、恥ずかしい話まで全部したのに、あんたは違うってことでしょ」
スンチャン「いや、そうじゃなくて」

エレベーターが停まり、扉が開いた。

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スンチャン(インタビュー)「うーん。イェジン先輩って他は全部いいんですけど、思ったより鈍いのが玉に瑕(きず)で…。けど、もっと困るのは、本人は自分が勘がいいって信じてることで…(絶句)」

イェジン(インタビュー)「ふふふ、言ったでしょ?ペク・スンチャン、コロッとやられちゃって、全く。だけどちょっと不憫ですよね。シンディは他に誰かいるみたいだったから。はぁ、私、こういうの気づかないタチなら良かった。鈍感ならこんなこと気付かずにやり過ごせるのに、私はこういうの全部見えちゃうから、疲れるわ」

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ここで区切ります。

 - プロデューサー