韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!プロデューサー/SPY/夜警日誌/トライアングル/主君の太陽など

プロデューサー9話あらすじ&日本語訳 vo.2

   

キム・スヒョン、IU、コン・ヒョジン、チャ・テヒョン、出演、KBS韓国ドラマ「プロデューサー」9話、中盤です。

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イェジンが部屋の荷物を整理するのを、スンチャンはせっせと手伝った。
「ちょっとダンボールが足りないわ」イェジンが部屋を出て行く。「待ってて」

スンチャンは手に持った小物やぬいぐるみを箱につめると、ふとそこに置いてあったアルバムに手を伸ばした。
ベッドの上に腰を下ろすと、ページをめくってみる。
そこに並ぶイェジン少女の屈託ない表情に、スンチャンの顔から笑みがこぼれた。「可愛い♥」

1998

ページをめくっていくと、少女は成長し、学生服に身を包む。
彼女のそばには、いつもジュンモの姿があった。

#「いつもそばにいるよ~♪」と歌詞をかぶせる憎いOST

「?」そのとき、スンチャンが一枚の写真を覗き込む。
途端に彼はアルバムを抱え、部屋を飛び出した。「先輩!先輩!」

「あ、ビックリした」ダンボールを抱えてベランダから戻ってきたイェジンが目を丸くする。「何?」

スンチャン「先輩と僕、初めて出会ったのはいつだと思います?」
イェジン「いつ?入社式の日じゃないの?」

「ブー♪」スンチャンが弾むように言う。「その前にも会ってるんです」

イェジン「ん?」

スンチャンがソファに腰を下ろし、アルバムを広げた。「ここです」

イェジン「あはは、これ私とジュンモじゃない」
スンチャン「ほら、これです。その後ろに」

イェジンとジュンモの少し後ろに控えめに写っている少年を、彼は指差した。

イェジン「この子がどうしたの?」
スンチャン「僕ですよ!」
イェジン「?…あんただって?」
スンチャン「えぇ」
イェジン「えっ?ホントにあんたなの?!」

1999

「あはは、不思議だね!」イェジンがスンチャン少年を指さして笑う。

スンチャン「でしょ?不思議でしょう?」
イェジン「確かにあんた、生まれてからずっとここに住んでるんだし、公園でよく遊んでたんだから、会うことだってあるよね。偶然に」
スンチャン「”縁”とも言えますよ」
イェジン「ふふふ、何もそこまで」
スンチャン「もちろんジュンモ先輩とはもっと長い縁ですけど、僕とも小さな縁があったってことですよ」

「そうだね」イェジンが頷く。

イェジン「そういう縁だってことだね」

「ねぇ、あんためちゃくちゃ可愛いよね」写真の中のスンチャン少年に、イェジンが微笑む。

スンチャン「そうですか?(嬉嬉嬉)」

「先輩、僕にこの写真ください」スンチャンは自分の写った写真を指さした。

イェジン「そうしようか?」

「そうだね」イェジンはページを覆っているカバーをめくり、写真を剥がした。「お礼のプレゼント」

スンチャン「ありがとうございます!」

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サンダル履きでぶらっと出て来たジュンモは、ブランコにぼんやりと揺られていた。

彼が思い出していたのは2002年、大学時代のことだ。

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ジュンモは汗だくになってリアカーを引き、坂道をのぼっていた。
「ジュンモ、キツイ?」後ろから聞こえるイェジンの声に、「話しかけんな!」と言うのが精一杯だ。

ジュンモ「おい、こんな高いところにあるなんて、一体いくらなんだ?」
イェジン「300に20」

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2008年、入社したときも、彼はイェジンの引っ越しの荷物をせっせと運んだ。

ジュンモ「ここ、ちゃんと日が当たるのか?」
イェジン「半地下だから半分は入るでしょ。まぁ、一応南向きだから」
ジュンモ「いくらだって?」
イェジン「2000に40」

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2012年にも彼女は引っ越したばかりだ。
「7000で借りたって?全部お前の金なのか?」荷物を抱えて階段をあがりながら、彼は驚きの声を上げた。

イェジン「2000は借金」
ジュンモ「やるなぁ!すげぇぞ、イェバル!」

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こうしていつも彼女が引っ越すたびに手伝ってきたのはジュンモだ。
しかし今またイェジンが引っ越すというのに、彼は暇を持て余し、一人ぼっちでブランコに揺られている。

2001

ジュンモ「…。」

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夜。

スンチャンは自室の机に向かい、ただひたすら写真を見つめた。

ふと思い立ち、彼の右半分を後ろへ折り返す。
ジュンモの姿が隠れ、自分とイェジン二人だけが残った。
彼は満足気に微笑むと、小さな箱にそれをしまいこんだ。

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「引っ越し、嬉しいか?」ソファでいつものようにお酒を並べ、ジュンモが尋ねる。

イェジン「うん、ワクワクする。今まですごく頑張ってきたから」

「そうだな」ジュンモが頷く。

イェジン「今度引っ越したら、大学時代から数えて13?14回めかな?」
ジュンモ「14回めだ」

イェジンが苦笑いした。「家を探して荷造りするのはホントうんざりだったけど、もう自分の家が出来たわけだし」

「とにかく、ジュンモ、ありがとうね」イェジンがまっすぐ彼を見る。

ジュンモ「気が早いぞ。引っ越してからにしろよ、挨拶は」
イェジン「ジュンモ、私、実はすごく後悔してるんだよね」
ジュンモ「何を?」
イェジン「あんたの家に上がり込んだこと。あんたに面倒掛けたこと。それに… お酒飲んで失言したこと、あんたを困らせたこと、全部」
ジュンモ「…。」
イェジン「ごめんね。私が揺るがせちゃった、25年の友情を」

「…。」やり切れず、ジュンモは黙って俯く。

イェジン「私、ちょっと分別つかなくなってたみたい。私が引っ越したら、私たちまた元通りだからね」
ジュンモ「イェジン」
イェジン「ん?」
ジュンモ「俺たち、例えばそれぞれ別の相手に出会って結婚するとしてさ」
イェジン「うん」
ジュンモ「お互いの相手は、俺たちのこういう関係を嫌がるだろう」
イェジン「…。」
ジュンモ「そしたら、お前どうする?」
イェジン「私たちの関係、私たちの歴史は私たちにしかわからないわ。だけど、それぞれの相手は嫌がるかもしれない…。ううん、もしかしたら嫌がって当たり前なんじゃないかな」
ジュンモ「…。」
イェジン「他の人と結婚したら、私たちこんな関係続けられないわ」
ジュンモ「つまり、結婚したら、俺と会うつもりはないってことか」

「絶対会わないなんてことは…」よくわからなくなって、イェジンは考えを巡らせる。

イェジン「会社だって同じなのに。会うことは会うよ。だけど、今と同じようにはいかないよね」

「そうだな」ジュンモが頷く。「けど…」

ジュンモ「俺、それは嫌だ」
イェジン「嫌ならどうすんのよ。そこは異性間における友情の限界ってやつじゃない?」
ジュンモ「…。」

2002

「ちょっと」シンディがふとテレビを見て言った。「あれ、シンディじゃないの?」

ジュンモ「?」

画面の中には、競技場で走っている人たちの姿が見える。その中にシンディの姿があった。

イェジン「あの子、ギブスが取れたばかりなのに、何あんなに走ってるわけ?!それにシンディあの子、あんな番組には出なかったのに。バラエティだってあんたの番組が初めてだし。最近あれこれいろいろやってるのね」

画面の中央で一生懸命走っているシンディを、ジュンモは無言で見つめた。「…。」

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シンディは本当に頑張っていた。

事務所の新人、ジニが活躍する後ろで、どの競技もビリながら懸命に競技に取り組む。
前は断じてNGだった水だって、顔から思い切り被った。
ゲームで後輩に叩かれても、ぐっと堪える。
避けている汁物を食べ、後輩に率先して「美味しい!」と笑顔を見せた。

#「頑張れー」ってつい口に出てしまう。

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収録帰りの車の中で、シンディは疲れ切った様子で目を閉じていた。
電話が掛かってきて、マネージャーが申し訳なさそうに声をかける。「シンディ」

マネ「ラジオの電話インタビューが、CM明けに始まるって」

シンディは電話を受け取り、声の調子を整えるために数回咳払いをした。「はい、こんばんは~♪」

「シンディさん、光栄ですよ!」電話の向こうのスタジオで、ラジオDJの隣で微笑んでいるのは新人のジニだ。
ジニはSUPER JUNIORリョウクがパーソナリティを務めるラジオ番組にゲスト出演していた。

リョウク「普段はこんなふうに電話インタビューを受けてくださらないのに。いやぁ、愛する後輩、期待の新星、ジニさんのために、今日は特別に時間をくださったんですよね?」
シンディ「えぇ」

「ジニさんってどんな方なんですか?」リョウクの質問は最初からジニについてだ。「お話を聞かせてください」

シンディ「えぇ、ジニはすごい実力を持った子で…」

2003

行き交う車もまばらな夜の道路を、シンディの車は静かに走り抜けた。

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ジュンモは不機嫌そうにテレビのスイッチを切る。「あれがピョン代表のやり方だ」

ジュンモ「前もそうだった」
イェジン「そうね…。何年か前、あんたがお酒飲んで言ってた。あの子、何て名前だっけ?」
ジュンモ「…。」
イェジン「もう名前も思い出せないや。一時はすごく売れてたのに」
ジュンモ「ユナ」
イェジン「あぁ、そうだわ、ユナ。だけど、ユナにピョン代表がどうしたって言ってたっけ」
ジュンモ「抱き合わせ販売だ。あのとき売れてたユナを前に立たせて、Pinky4を売りだした」
イェジン「あぁ、そうだったわ。それでPinky4がパッと売れたのよね。シンディもそう」
ジュンモ「契約更新が近づいたら、最後の最後まで搾り取って自分の育てたい新人を育てて、用済みになったら容赦なく捨てる。それがピョン代表だ」
イェジン「だけど、まさかシンディにもそんなことするかな?」
ジュンモ「…。」
イェジン「シンディは今トップ中のトップなのよ。気が狂ってでもいなきゃピョン代表も…。それにシンディだって、一癖あるけど考えのしっかりした子だし」
ジュンモ「…。」
イェジン「ところで、ユナって子、あのときどうしちゃったの?どういうつもりでピョン代表に歯向かったわけ?あんた仲良かったんじゃないの?あの頃」

ジュンモはそれに答える代わりに小さく息をつく。「疲れた。部屋に戻る」
さっと立ち上がり、背を向けたジュンモに、イェジンはあっけにとられた。

イェジン「話が面白くなってきたと思ったら、急に疲れただなんて」

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部屋にこもり、ジュンモはじっと考え込んでいた。

「ユナ、MCにいいだろ?最高だろ」懸命にユナを推す自分の言葉が甦る。

~~~~

「最高だった。今はそうじゃない」会議で、先輩PDが言った。

作家1「あの子、最近イメージが安っぽすぎますよ。この前なんか金貸しのCMに出てたんだから。ずいぶん叩かれてるし」
作家2「だいぶ前から好感度下がってますよ。パトロンがいるって説もあったし、事務所も匙を投げた子なんですから」
ジュンモ「…。」
作家2「マネージメントができてないみたい。もう使い物にならないわ」
ジュンモ「ユ作家だって、一緒に番組やったじゃないですか!そんな子じゃないでしょう?!」
作家2「…。」
ジュンモ「それにね、好感度が下がってるなら、俺たちが上げてやればいいんだ。ちゃんとキャラをつけてやって」
同僚たち「…。」

~~~~

しつこくユナを推すジュンモを呼び、テホCPが言った。「お前、どうしたんだよ?」

テホCP「あの子のこと好きなのか?」
ジュンモ「そんなんじゃなくて!先輩、俺たちPDなんだぞ。何の罪もなくあんな目に遭ってるのは明らかなのに、何もしてやれないのか?」
テホCP「PDだからって、俺たちが全部決められるわけじゃないだろ」
ジュンモ「…。」
テホCP「人はあの子が出るのを良く思わないんだ。見たくないって言ってるのに。視聴者にそっぽ向かれたら、PDに一体どんな力があるんだよ?」

「俺が責任持つって!」ジュンモが声を荒らげる。

テホCP「お前がどうやって責任持つっていうんだ?あの子を出したら、番組が叩かれる。お前の正義感のために番組が潰れてもいいのか?」
ジュンモ「…。」
テホ「放送3社がどこも使わないって言ってるのに、俺たちが被ることないだろ」

~~~~

「PDさん、ホントに私の責任取ってくださるんですよね?」
「当然だ。俺のことだけ信じてろ」

ジュンモの頭の中を、あの言葉が何度も巡った。「俺が責任を持つから…」

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鼻歌をうたいながら事務局前を通りかかったホンスンは、ふと足を止め、後戻りした。「?」
そこにはヤンミではなく、別のセクシー美女がPCに向かっていたのだ。

ホンスン「あのぉ」
女性「はい?」
ホンスン「元々ここにいらっしゃった…」
女性「あぁ、今日はお休みされたので、私が代わりに来たんです」
ホンスン「あはは♪ 歓迎しますよ」

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イェジンは会社に向かって車を走らせていた。
なんとなく彼女は首を傾げる。「何か足りない気がするのはどうして?」

「まさか!」ちょうど彼女は赤信号で車を停め、助手席のバッグを探る。「携帯!大変、ぼんやりしてた」

イェジン「もう遅れそうだし、どうしよう」

彼女は車をUターンさせた。

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駐車場にイェジンの車が戻ってくる。
車を降りると、彼女は時間を気にしつつ、足早に家へ向かった。
「ちょっとお嬢さん」そこへ声を掛けたのが、スンチャンの母親だ。

イェジン「はい?」

「あら、前に会ったことがあるわね」彼女の顔を見て、スンチャンの母が言った。
「あ、えぇ、そうですね」イェジンが怪訝そうに頭を下げる。

イェジン「何かご用ですか?」
スン母「ここは正面駐車が決まりなの、ご存じない?車を停め直してもらわないと」
イェジン「あぁ、うっかりしてました。これからそうします」

イェジンは急いで建物に入ろうとする。
「これから?」スンチャンの母が食い下がった。「今すぐ直してほしいんだけど」

イェジン「あの私、今急いで家に物を取りに上がるところだったんです。それだけ持って降りてきたら、駐車し直すも何も、またすぐ出掛けますから」
スン母「私はね、自分の損得のために言ってるわけじゃなくてね、ここの平和と秩序のために言ってるの!」
イェジン「…。」
スン母「排気ガスがそこの花壇にどれだけ悪いか!あなたも花になったつもりで考えてご覧なさいよ!どれだけ不快だか!」

「そうですね」イェジンは辛抱強く小言につき合う。「花の立場になって考えられなかったことは本当に謝ります」

イェジン「それから、今後ここの平和と秩序のために努力することも約束します」
スン母「…。」
イェジン「だけど今は私、荷物を取りに行ったらすぐ車を出すって言ってるんですよ。花にはちょっと申し訳ないけど」

行こうとしたイェジンの前に、それでもスンチャンの母は立ち塞がった。「悪いけど、私お嬢さんのこと信じられないわ」

イェジン「それじゃどうすれば?覚書でも書けばいいんですか?」
スン母「…。」
イェジン「花の立場ばかりで、同じ住民の私の立場は考えてくださらないんですか?」

「母さん?」そのとき、向こうからやって来たスンチャンが声を掛けた。

スン母「あぁ、スンチャン」

「私の息子」今まさにやりあっていた女性の発した言葉に、イェジンは凍りついた。「!!!」
「あ、先輩」スンチャンがイェジンにニッコリ笑い掛ける。
“Oh, my god!”思わず両手で口を押さえたイェジンを、スンチャンの母が不思議そうに見た。

2004

イェジン「あぁ、うん、スンチャン(苦笑)」
スンチャン「あ、母さん、僕の会社の先輩なんです。タク・イェジンPDっておっしゃって。(イェジンに)先輩、母です」

「初めまして、お母さん!」イェジンは半ば泣きそうな顔で深々と頭を下げた。

スン母「あら、あらまぁ… 私ったら、息子の先輩の方だなんて知らなくて、とんだ失礼をしてしまったわ!どうしましょう!一度どころか、二度も!」
イェジン「いえいえ!そんなことありません!私、すぐ車だしますから!正面駐車しなきゃいけないのに、ごめんなさい!私どうかしてました!」

「すみません!」駈け出したイェジンを、スンチャンの母親が慌てて止める。

スン母「いいえ、先輩!動かさなくていいんです!」
イェジン「(オロオロ)」

#あははは そのうち出くわすと思ってたこの3人、コミカルになっててホッとした(笑

スン母「私が悪かったの!管理人でないくせに!」
イェジン「いえいえ!仕方ないですよ」
スン母「だって、今すぐ戻って出掛けるって言ってたのに。私、もともと人を信じられないタチだから」

「ごめんなさい」スンチャンの母が頭を下げる。

イェジン「いいえ、そんな!」
スン母「うちのスンチャンをよろしくお願いします」
イェジン「そんな!すごく頑張ってますよ」

二人が競うようにペコペコと頭を下げ合うのを、スンチャンは楽しそうに眺めた。

+-+-+-+

再びイェジンが出掛けた時には、助手席にスンチャンが加わっていた。

イェジン「私さっきめちゃくちゃビックリしちゃって」

まだまだ可笑しくて、スンチャンは笑いがこみ上げるのを押さえられない。

イェジン「今でも足が震えてるわ」
スンチャン「え?僕が運転しましょうか?」
イェジン「ううん、そこまでじゃないよ」
スンチャン「うちの母はリサイクルごみとか排気ガスとか、そういう問題に昔から敏感で。ときどき近所の人たちとトラブルを…」
イェジン「(ニコニコ)」
スンチャン「”汝矣島のおせっかい”ってアダ名まで」

※正確には오지라퍼(オジラッパー)と言っています。오지랖이 넓다(でしゃばる)と랩퍼(ラッパー)を合わせた言葉で、ぺちゃくちゃといらぬおせっかいを焼く人を指すようですね。

「そうなの?」イェジンが笑う。

イェジン「これだから、普段からキチンとしてなきゃいけないのよね」
スンチャン「(ニコニコ)」
イェジン「自分のこの性格、ホント直さなきゃいけないとは思うんだけど、いざそういう状況になったらカッとなって、なかなか上手くいかないのよ」
スンチャン「(ニヤニヤ)」
イェジン「とにかく、お母さんによく申し上げてね」
スンチャン「(デレデレ)」
イェジン「あんたのお母さんだって知ってたら、絶対あんな真似しなかったのに」
スンチャン「大丈夫です。気になさらないでください」

#嬉しいよねぇ。好きな先輩が自分の母親に失礼なことしちゃったからって、こんなに焦って気にしてくれるの。

「ふふ」イェジンがホッとしたように微笑んだ。

イェジン「ところであんた、何で今日出勤なの?ヒョングンとか他の子たちは、1日2日休み取ってたけど」
スンチャン「まだちょっと…」
イェジン「何?一番下だから遠慮したの?」

「はい」スンチャンが頷く。

スンチャン「その代わり早く終わらせて、先輩の新しいアパートに行くつもりです」
イェジン「?」
スンチャン「サッシ屋のおじさんがいらっしゃるから、荷物を運ぶついでに」
イェジン「それなら私も一緒に行かなきゃ」
スンチャン「はい♥」
イェジン「けどさ、私はすごく有難いけど、こんなにこき使っていいのかな?」
スンチャン「あ… 僕、好きでやってることですから」
イェジン「へぇ、あんたこういうの好きなの?引っ越しとか内装とか、そういうの」

#あんたって人はつくづく…

スンチャンが戸惑ってハッと表情を変えた。「いえ」

スンチャン「そういうのが好きっていうよりは…」
イェジン「…。」
スンチャン「…先輩が好きでやってるんです」

#わー 言っちゃった 言っちゃった

「あはは、ホント?」イェジンは軽く笑い声をあげる。

スンチャン「?!」

思わぬ反応に、スンチャンは彼女を二度振り返った。「…はい」

2005

#二度見 スンチャン

イェジン「それなら、明日ちょっと手伝ってくれる?ミューバンの上半期スペシャルなんだけど、いつもよりステージが多いのよ。チャンシクとかジョンヒョンとか、他にも暇な子たちは手伝ってくれるって」
スンチャン「…はい」
イェジン「うん、ありがと。いやね、会社にいる子たちには話したんだけど、あんたたち今週は欠放だから、家で休んでる子を呼び出しちゃいけないと思って、言えなかったのよ」
スンチャン「(プチどんより)」
イェジン「これでも私が一番好きな後輩だし、なんだか悪いと思っちゃって」

「?!」またスンチャンが彼女を振り返った。「本当ですか?」

イェジン「そうだよ。先輩だからって何でもかんでも頼むと思う?そんなことないわよ。申し訳ないことには違いないんだから」
スンチャン「…いえ、申し訳ないってところじゃなくて…」
イェジン「?」
スンチャン「その前に、僕が一番好…」
イェジン「知らなかった?私、後輩の中であんたのこと一番好きだよ。あっという間に仲良くなったよね」

再びスンチャンに喜びがこみ上げた。「むふっ♥ぐふっ♥」

+-+-+-+

スンチャンの母親が家に帰って来ると、ソファにゴロンと寝転がっていた姉のジェヒが起き上がった。

姉「あれ?お母さん、青リンゴ買いに行ったのに、どうして手ぶらなの?」

「青リンゴ食べたくて仕方なんだけど」彼女はますます大きくなったお腹をさすった。

母「青リンゴどころじゃないわよ。大変なの」
姉「何?」
母「スンチャン、もうダメだわ!」
姉「どうしたのよ?!」
母「あのとき言ったでしょ、分別ゴミ収集で一悶着あったって」
姉「うん、向かいの棟のクズね?」

#まぁ、分別ゴミの”ゴミ”とクズを掛けてるのかと^^;

母「そうよ!その向かいのクズが…」
姉「またクズな真似したの?」
母「スンチャンの会社の直属の先輩だっていうじゃない!」
姉「ホント?!」

「なんてこと…」姉は力が抜けたように後ろに身を沈める。「スンチャンの将来を開いてやるどころか、災いを撒いたわね」

母「そうよね。だけど、今日またやっちゃったの。その先輩が正面駐車しなかったもんだから、車を動かせって騒いじゃったのよ」
姉「もうダメだ。うちのスンチャン、向かいのクズに完全に嫌われちゃったわ」
母「どうすればいいのかしら。向かいのクズ、性格も普通じゃなさそうなのに、私のせいでスンチャンが睨まれたらどうしよう!」
姉「はぁ、よりによってそんな先輩が向かいに住んでるなんて」

そう言っておいて、姉はふと考えを巡らせた。
前に、スンチャンが外泊した次の朝、向かいの棟から出て来たことがあったのだ。
「会社の先輩のお宅で」スンチャンはそう言った。

姉「お母さん!あのときスンチャン、向かいに住んでる先輩の家に泊まったって言ってなかった?」
母「?」
姉「その先輩じゃないの?」
母「あなた、何て恐ろしいこと!!!」
姉「だって、社宅でもあるまいし、同じ棟に先輩が二人もいるかな?」
母「きっといるんだわ。他にも先輩が」
姉「違うと思うけど」
母「いるはずよ!男の先輩がね」

+-+-+-+

その男の先輩は、神妙な顔で会議室のドアをノックした。
【試験番組 ”スターウォーズ”】と張り紙がしてある。

「先輩、どうなさったんです?」担当PDが彼を警戒した。

ジュンモ「お前がやってんだな」
PD「えぇ、まだ時間帯を聞いてないんですよ。テホ先輩がどこか弱いところに突っ込んでやるって言ってたけど」

ジュンモは腕をまくりあげて間(ま)をあける。「俺たちだ」

PD「え?」
ジュンモ「俺たちのところだよ。お前らが入るのは」

「あぁ、はい…」PDは気まずそうに目を逸らした。

ジュンモ「誰が出るんだ?」
PD「キャスティングに手こずってまして」

「だろ?」ジュンモがようやくニヤッと笑う。「大変だろ」

PD「だから、スジとBIGBANGのテヤンを…」
ジュンモ「…。」
PD「やっとのことでキャスティングしたんです」
ジュンモ「手こずってるって言ったよな?」
PD「手こずって、ようやく決まったんですよ」

ジュンモはただ頷くしかない。「収録は?上手く行ったのか?」

PD「準備が出来なかったんですよ。時間がなくて」
ジュンモ「だろうな♪ やっぱり試験番組だから」
PD「それでも意外にすごく笑えるんですよ。あまり仕込んでないのが良かったのか、突発的なハプニングも多くて」
ジュンモ「…。」
PD「今、編集会議をやってるんですけど、構成さえうまくやればイケそうです」

「…。」それ以上ジュンモに言葉はなかった。

+-+-+-+

「だからってさ!」ジュンモはテホCPに毒づく。

ジュンモ「うちのチームの会議室を試験番組にやってどーすんだよ!」
テホCP「お前んところは欠放だから会議もしないだろ」
ジュンモ「するって!しっかり話し合って、再跳躍のチャンスにしろって言ったくせに」
テホCP「そりゃしなきゃな、再跳躍」
ジュンモ「けどな、会議室を追い出されたら、俺たちどこでジャンプすりゃいいんだよ?」
テホCP「その辺のカフェとか、他の場所でやればいいだろ」
ジュンモ「!」
テホCP「とりあえずはそこに入る番組が先なんだから。事情はわかってるだろ?」

「スターウォーズだとか、何だよそのタイトル」ジュンモはボヤいた。

ジュンモ「てんでダメだ!一目でわかる」

「ダメだと思うか?」テホCPが彼の顔を覗き込む。

ジュンモ「上手くいくわけないだろ」
テホCP「…。」
ジュンモ「週末バラエティを舐めるんじゃないぞ、ホント」

大預言者ジュンモの予想に、テホCPは思わずニヤリと笑う。

ジュンモ「何でそんな顔してんだよ?」
テホCP「いや、お前がダメだって言ったら、なぜかホッとしてな」
ジュンモ「先輩ホントに!!!」
テホCP「とにかくジュンモ、冗談抜きにお前も気を引き締めろよ」

「?」ジュンモはふと向こうに目を凝らす。
ロビーにイェジンがいるのが見えたのだ。
彼女はスンチャンと仲睦まじく並んで会社へ入ってくる。

テホCP「欠放って何だ?誰かにとっちゃ割り込むスキマだぞ。絶好のチャンスじゃないか。ずっとそこにいられるって油断してるうちに奪われるんだ、その場所を…」
ジュンモ「…。」

2006

二人は入り口の改札機に社員証をかざし、向こうへ曲がっていく。

ジュンモ「奪われるもんか!あそこは俺の場所だ。奪われないぞ!!!」

#「あそこは俺の場所」という言葉には、「イェジンの隣」という意味も含まれていたんでしょうか^^

ジュンモはスタスタと歩き出した。

テホCP「あいつ、そこまで番組に愛情持ってたのか?(大声で)おい!昼飯一緒に食わないのか?!」

+-+-+-+

「こんなこと一度や二度じゃなかったのに、気持ちの整理がつかないな」ジュンモはぶつぶつと呟いた。
デスクで溜息をついているところへ、スンチャンがやって来る。
沈んだ様子のジュンモに、彼はそっと飲み物を差し出した。

ジュンモ「何だよ」
スンチャン「あ、疲れていらっしゃるみたいで。紅参を水出しにしました」
ジュンモ「お前が飲め、お前が」
スンチャン「それとも、コーヒーでも買って来ましょうか」

「…。」顔を上げ、ジロリと睨むジュンモに、スンチャンはニッコリ笑った。

ジュンモ「お前、休めて嬉しいのか?よくも笑ってられるよな」
スンチャン「…。」

ジュンモが立ち上がる。「浮かれやがって。ずっと休ませてやろうか?」

スンチャン「…いいえ」

スンチャンを残し、ジュンモはイライラとその場を後にした。

スンチャン「…。」

+-+-+-+

傷心のスンチャンが向かったのは、久々のFDくんの元だ。

FD「どこまで教えてあげればいいんだか」

「行きますよ」FDは手にもった冊子をパンと鳴らした。

FD「これは基本的なことなんですけど」
スンチャン「基本ですか?」
FD「もちろん欠放を喜んで受け入れるPDだっていますよ。視聴率がいい番組のPDたち。堂々としていられるからね」
スンチャン「(頷く)」
FD「だけど、視聴率の良くない番組のPDの立場になると、欠放っていうのはめちゃくちゃ辛いんです。不安なんですよ。しかも試験番組がその時間帯に入るなんて。ざっくばらんに言えば味見するってことでしょ?」
スンチャン「あぁ…味見か」
FD「メインPDの心中はどうだと思います?」
スンチャン「良くないと思います」
FD「不安、気落ち、恥ずかしさ、そういう複雑な感情が渦巻くんです。そんなときに、チームの一番下が他の番組のPDとぺちゃくちゃお喋りしたり、家に行って手伝ったりしてたとしたら?そりゃ最悪ですよ!」
スンチャン「さ、最悪ですか?」
FD「そりゃそうだ!実の両親の出来が悪いから、隣の金持ちの家へ行って、じゃれてるようなもんです」

「僕はじゃれてるわけじゃないんです」スンチャンが歯向かう。

スンチャン「ホントにイェジン先輩をお手伝いする用事があって」
FD「こういうとき、一番下の役割がホントに大事なんですよ。先輩を笑わせたり、雰囲気に合わせてね」
スンチャン「僕だってやってみたんです。飲み物を出して、笑顔で声も掛けてみたし」
FD「そうしたら?」

「お前、休めて嬉しいのか?よくも笑ってられるな」スンチャンはジュンモそっくりに顔をくしゃっと歪めてみせる。「浮かれやがって。ずっと休ませてやろうかっ?!」

#ぎゃはは(_≧Д≦)ノ彡☆バンバン 
素晴らしすぎるキャプが撮れたけど、自粛

スンチャン「…そう言われました」
FD「まぁ、ジュンモPDはそうだな。だけど、とにかくメインPDじゃないですか。元気つけてあげなきゃ、一人じゃない、いつも僕たちがそばにいるって、そういうことも感じさせてあげてさ。同僚愛だよ!」
スンチャン「…えぇ」

「?」スンチャンは頷きながら、ふとFDが持っている手帳に目を留める。「それ、何ですか?」
表紙には「2015試験番組 スターウォーズ 放送日:2015.06.14」と書いてあるではないか。

スンチャン「スターウォーズっていったら、試験番組の…?」

「はっ!」FDは驚いて手帳を落とした。「バレちゃいましたね」

スンチャン「…。」
FD「ラ・ジュンモPDには秘密だから。バイトのつもりで手伝ってくれって言われて、とりあえず二股を…」

「シッ!」絶句するスンチャンに、彼は人差し指を突き立てた。

+-+-+-+

ここで区切ります。

 - プロデューサー