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ネイルもカンタービレ(のだめカンタービレ韓国版)あらすじ&日本語訳 11話vol.2

      2014/11/23

チュウォン、シム・ウンギョン主演、「ネイルもカンタービレ/明日もカンタービレ」(韓国版のだめカンタービレ)11話後半です。

+-+-+-+

「見たか?!」イラクがオケの練習室に駆け込んでくる。

#オケの人たちも何時間ここでお喋りしてるんだか

イラク「客席に放送局のカメラも来てるぞ」

皆の顔が一斉に輝いた。

イラク「今日でオレたち、完全に全国区だ!全国区!」

浮かれる皆の前でシウォンが立ち上がった。「ちょっと落ち着いて」
「あのさ」イラクが小声でシウォンに言う。「ユヌから連絡あったか?電話に出ないんだ」

シウォン「あ… ユジンに連絡あったんだけど、靭帯の負傷だったみたい」
イラク「…。」
シウォン「自分たちのことに集中しよう。あと10分なんだから」

「みんな衣装と楽器の最終チェックね」一気に練習室の緊張が高まった。

イラク「…。」

+-+-+-+

ユジンは控室で葛藤していた。
「あんたは私たちの指揮者だからね」シウォンの言葉を反芻する。

ユジン:
침착해.
너는 지휘자야.
네가 넘어지면 친구들도 같이 넘어져.
落ち着け。
お前は指揮者なんだ。
お前が潰れたら、友人たちも一緒に潰れる。

「友人?」不意に割り込んできた声に、ユジンは目を開けた。

父(声):
최고가 되면 부수적으로 따라오는 게 친구다.
그전에는 모두 라이벌이지.
最高まで上れば友人は勝手についてくるものだ。
それまでは全員ライバルだろう。

「…。」ユジンは視線を上げ、鏡の中の自分をじっと見つめる。

父(声):
마음을 보이지마.
보이면 그게 네 약점이 된다.
心の中を見せるな。見せれば、それがお前の弱点になる。

272

「!」ユジンは思わずカッとなって手元の楽譜と指揮棒を払いのける。
部屋の隅まで飛んだそれは、床に飾ってあった植物を掠め、黄色い小さな花びらが辺りに散らばった。

ユジン「…。」

そこへ入り口の扉が開いた。
顔を見せたのはネイルだ。
「?!」二人の目が鏡越しに合う。「…。」

ネイルは黙って部屋の奥まで入ってくると、床の上の指揮棒と楽譜を拾い上げ、丁寧にテーブルへ戻した。

ユジン:

ネイル:
있잖아요…
난 불안할 때 선배 손 잡으면 마음이 편안해지더라.
あのね…
私、不安なときに先輩の手を握ると心が穏やかになったんです。

ユジン:

ネイル:
원래 그렇대요.
체온이라는 게 마음을 편안하게 해 준대요.
もともとそうなんですって。
体温って心を落ち着かせてくれるそうですよ。

そう言って、ネイルはじっと黙っているユジンの手を取った。

ネイル:
오늘은 내 손이 약손이에요.
今日は私の手がお薬デス。

273

両手で包み込んだネイルの手が、トントンと彼の手を宥めた。
ネイルの穏やかな笑顔の前で、ユジンはゆっくりと息をつく。「…。」

+-+-+-+

客席は観客で埋まっていた。

学長の隣の席にソニョンが落ち着かない様子で腰を下ろすと、キョロキョロと客席を見渡した。

ステージにはR☆Sオケの団員たちがすっかりスタンバイしていた。
ピアニスト、ソン・スジとユジンが満を持して登場すると、大きな拍手が起きる。

#ソン・スジの存在をすっかり忘れてたよ

ネイル(声):
라흐마니노프 피아노 협주곡 2번.
이 곡은 그가 자신의 갚고 짙은 우울증을 낫게 해 준 의사에게 헌정한 곡이다.
고죄와 치유의 과정을 담은 협주곡.
지금 이 음악이 내게 말을 걸어온다.
이제 괜찮아. 다 잘될 거야.
ラフマニノフピアノ協奏曲2番。
この曲は深刻だった彼自身の鬱病を軽くしてくれた医師に献じた曲だ。
苦悩や治癒への過程をこめた協奏曲。
今、この音楽が私に語りかける。
”もう大丈夫。全部上手く行く”

曲はピアノから始まる。
だんだんクレッシェンドしていくピアノの音に、ユジンの緊張が高まった。

277

#彼女のミステリアスな存在感、凄いね。さっきまで忘れてたけど

「最高のステージ、最高の場でなければ行く意味などない」父の言葉が頭に渦巻く。
「まさか… まだ克服できないのか」控室での父の視線が甦った瞬間…
彼の手から指揮棒がスルリと滑り落ちた。「!!!」

ステージの団員たち。客席。一番後ろで見ているネイル。皆が凍りついた。

ユジン「…。」

我に返ったユジンの耳に、ピアノの音が戻ってくる。
僅かな変化に、スミンが懸命に頷きかけた。

275

スミン(アイコンタクト)「チャ様、大丈夫!」
シウォン(アイコンタクト)「リハどおりやればいいのよ」
イラク(アイコンタクト)「大丈夫だって!チャ・ユジン!」

274

イラクはいつもどおりユジンにウィンクしてみせた。

276

さぁ、ピアノにオケが合流する。
ユジンは足元に落ちた指揮棒に目もくれず、自分の手で指揮を始めた。

278

重厚な調べに、客席のチャ・ドンウの顔が俄に輝く。
彼だけではない。
駆けつけたイラクの父、それにト教授、すでに皆を惹きつけていた。

ユジン(声):
당신이 틀렸습니다.
최고가 아닌 날 최고처럼 느끼게 해 준 게 친구입니다.
또 당심이 틀렸습니다.
보여 준 마음은 약점이 아니라 마음으로 돌아왔습니다.
あなたは間違っています。
最高じゃない僕を、最高の気分にしてくれるのが友人なんです。
まだあります。
さらけだした心は弱点になるのではなく、心として返ってくるんです。

279

最高の団員たちにより、最高潮の中で演奏が終わった。
大きな拍手が湧き起こる。

扇子で拍手をしていたト教授は、ふと思い直し、扇子を膝の上に置く。
そして改めて自分の両手で大きく手を叩いた。

280

壇上でユジンとソン・スジが握手を交わす。
その姿に、父チャ・ドンウがおもむろに拍手を叩く。
大きく強く。

客席に向き直ったユジンの目に、父の姿が飛び込んでくる。
彼を見つめ拍手を送る父は、微笑んでいた。

282

+-+-+-+

誰もいない練習室へ戻ってくると、ユジンは深く息をついた。
顔は青白く、動揺は見て明らかだ。

イラクたち3人が駆け込んできて、彼を囲んだ。

283

#先輩、美しすぎマス!

イラク「ユジン、大丈夫か?」
ミニ「先輩、今日ホント素敵でした!」

「最高!」スミンも彼女に合わせ、ポーズを取る。「最高!」

イラク「そうだって。他の指揮者だって指揮棒飛ばすことはあるんだし」
ユジン「………。」
スミン「そうそう。今まで失敗しなかったチャ様が例外なんだってば」
ミニ「(うんうん)」
ユジン「………。」
スミン「元々良くあること…だもんね?」
イラク「(うんうん)」

「私ね」ミニが続ける。

ミニ「先輩が素手で指揮するほうが、見ていて自然でした」

スミン「あ、私も!」

「…。」じっと固まったように黙っていたユジンが、小さく溜息をつく。
3人とも不安そうに彼を見つめた。

ユジン:
민희야.
ミニ。

ミニ:

ユジン:
저번에 너한테 동정 바라냐고 한 거… 미안하다.
그땐 네가 알바로 힘들게 버티는 거 이해 못했어.
同情して欲しいのかって、前にお前に言ったこと… すまなかった。
あのときはお前がバイトして踏ん張ってるのが理解できなかったんだ。

ミニ:
…선배.
그게 언제적 일인데.
…先輩。
それ、とっくの昔のことなのに。

ユジン:
수민아.
고맙다. 나 좋아해 줘서.
スミン。
ありがとな。オレのこと好きでいてくれて。

スミン:
…싫다고 안해서 내가 고맙지.
イヤだって言われなくて、嬉しいのは私の方だってば。

目を潤ませるスミンに、ユジンは微笑みかけた。

イラク:
야야야! 너 왜 울어라 그래?!
おいおいおい!お前、何泣かせようとしてんだ?

ユジン:
유일락.
ユ・イラク。

イラク:

ユジン:
나한테도 너 베스트 흐렌드야.
オレにとっても… お前はベストフレンドだ。

イラク:
…유진아.
… ユジン。

ユジン:

イラク:
어디 아파? 왜 그래?
どっか悪いのか?どうしたんだよ?

ミニ:
사람이 갑자기 변하면 죽는다는데…!
혹시 불치병…
人が突然変わったら死ぬ前兆だって…!
ひょっとして… 不治の病とか…

「ちょっと!」「おい!」スミンとイラクが慌てて声を上げる。「何てことを!」
「ごめんなさい!」ミニが自分の口を叩いた。「この口が悪いんです!」

イラク:
병명이 뭔데? 많이 아파? 힘들어서 그래?
病名は?だいぶ悪いのか?辛くてそんなこと言ってんのか?

スミン:
진짜 그래서 아까 떨어뜨린 거야?
아파서… 손 떨려서?!
だからさっき落としちゃったの?
辛くて… 手が震えて?

ミニ:
제가 이상하다 그랬잖아요.
내일이는 알아요?
だから様子が変だって言ったんですよ。
ネイルは知ってるんですか?

ユジンは困って首を振る。「そ、そうじゃなくて…」
3人が一斉にユジンにしがみついた。

ユジン:
저리 가 이 바보들아!!!
あっち行け、このバカども!!!

「お前らに心をさらけ出すなんて勿体ない」ユジンは練習室から逃げ出した。

イラク:
유진이가 원래대로 돌아왔어.
ユジンが元通りになった…!

スミン:
이게 차느님이지!
あれでこそチャ様!

ミニ:
다행이다…
良かった…!

+-+-+-+

すっかり誰もいなくなったホールの客席に、一人ポツンと残っていたのは、ネイルだ。

ネイル「…。」

彼女はガランとした広いステージを見つめた。

ネイル(心の声):
이제 무대로 가야 돼.
관객석에 있으면 아무것도 할 수 없어.
바라보는 거 외엔…
もう舞台に上がらなきゃ。
観客席にいたら何も出来ない。
観ていることしか…。

#ユヌとの2重奏がリハで終わってしまったので、中途半端な状態で、正直「あれ?まだ言ってるの?」と思ってしまう。
地方から駆けつけることになってたユヌの先輩は結局どうなったん?

+-+-+-+

ソニョンは会場を出て行く前夫を見つけ、急いで追いかけた。「待って!」

ソニョン「どうして電話に出ないのよ!あなたを探しに空港まで行ったのに」
トンウ「いい話じゃないのは明白だ。わざわざ言い争いたくなかったからな」

「チャ・ドンウが言い争いたくないって?」ソニョンが思わず笑う。「あなたも年をとったわね」

トンウ「また喧嘩するつもりでないのなら、ここで別れよう」

チャ・ドンウが背を向けようとすると、ソニョンが悲痛な顔を浮かべる。「ユジンに会ったの?」

トンウ「会った。相変わらずだ」
ソニョン「…。」
トンウ「まだ留学出来ないんだろう」
ソニョン「…。」
トンウ「だから、あのとき私の言う通りにすべきだったんだ」
ソニョン「あのとき?!気を失った子を無理やり引っ張って飛行機に乗せること?!そのせいでどれだけ悪化したと思ってるのよ!」
トンウ「怖がるからって放っておくのか?ショック療法でもやるべきだったんだ」

ソニョンは呆れて溜息をついた。

トンウ「そらみろ。相変わらず同じ会話を繰り返しているだけじゃないか」
ソニョン「これからは予め連絡してから来て。今日ユジンがミスしたの、あなたのせいだって分かってないでしょ」

「分かっている」ソニョンに横顔を向けたまま、彼は言う。「相変わらず気が小さい」

ソニョン「!!!」

「それでも」チャ・ドンウが彼女に向き直った。「収拾するときはなかなか落ち着いていた」

トンウ「一応成長したようだな」
ソニョン「…。」
トンウ「次は海外の舞台で会おうと伝えてくれ」

去っていく前夫の背中を見送るソニョンの表情は、いくらか穏やかだった。

+-+-+-+

学長ミナはシュトレーゼマンと二人、カフェで向かい合っていた。

シュトレーゼマン「話をしましょう」
ミナ「仕事の話なら明日にしてください」
シュトレーゼマン「Oh、仕事の話じゃないって、分かっているでしょう?」

シュトレーゼマンが握った手を、ミナは振り払う。

#何なの、この人たち。いみわからん

席を立ったミナを追いかけようとしたシュトレーゼマンは、よろけてその場に倒れこんだ。
「!」ミナは慌てて駆け戻る。「大丈夫ですか?お怪我は?」
テーブルに手をつき、シュトレーゼマンは少々楽しそうに起き上がる。

ミナ「わざと倒れたんですか?!」
シュトレーゼマン「Oh、違いますヨ。でも、ミナがこうして心配してくれるなら、もっと早く倒れれば良かったですネ」

「…。」ミナは拗ねたように隣に腰を下ろした。

ミナ「許したわけじゃありません。いつ行ってしまうか分からない人に… 未練はないわ」
シュトレーゼマン「今回は本当に… 全部整理して来たんです。これ以上時間がありませんから。ミナ… ワタシたち、あとどれくらい一緒にいられるでしょうネ」
ミナ「そんなことを考えていらっしゃったんですか?」
シュトレーゼマン「誤解して、躊躇っているうちに、ずいぶん長い時間を無駄にしました。これ以上、時間を無駄にして生きる余裕も理由もありません」

シュトレーゼマンを見るミナの表情が和らいだ。

ミナ「何がなさりたいんです?」
シュトレーゼマン「Oh、まずは一緒にコーヒーを一杯飲みましょう」

皆がつまらなそうにそっぽを向く。

シュトレーゼマン「お嬢さん」

もう一度彼を見たミナは、にっこり微笑んだ。

+-+-+-+

イラクの父の店で、打ち上げが始まっていた。
今日はシウォンたちAオケからのメンバーも一緒にテーブルを囲む。

イラク父「我が子みたいなヤツらが毎日成長していくのを見るのは感慨無量だ!」

「そこでだ!」イラクの父は持って来たご馳走をテーブルに置く。皆が一気に湧いた。
イラクの父は目の前に座っているシウォンをひと睨みし、ミニに声を掛ける。「ミニミニ、たくさん食べろよ!」

イラク父「ここにいる逞しいお姉さんに取られないようにな!」

「はい、お父さーん」ミニもノリで調子を合わせる。
イラクの父が厨房に戻ると、シウォンは隣のジェヨンに囁いた。

シウォン「ねぇ、何か変。何で私のこと嫌ってるの?」
ジェヨン「味方になっても嫌うんだな」
ソンジェ「それも超嫌ってる」

シウォンの向かいで気にしていたイラクは、切り分けた肉をまずシウォンに差し出した。「あーん」
シウォンは言われるまま、パクっと口に入れる。

イラク「どうだ?旨いだろ」
シウォン「(頷き)美味しいね」
イラク「うちのオヤジの料理… 超旨いんだ」

+-+-+-+

ロビーの階段の下でモジモジしていたネイルは、2階から降りてくるト教授の姿に、慌てて小さく身をひそめた。
ネイルの前を通り過ぎたト教授は、彼女がホッとして立ち上がると、不意に立ち止まる。
そして、クルリと身を翻し、ネイルの姿を捉えた。「おならソング君」

ネイル「はっ!こんばんは、教授」

ネイルはぺこりと頭を下げ、固く身構えた。

ト教授「あぁ。今日二重奏はキャンセルになったそうだが、どうしたんだ?」
ネイル「ユヌ先輩の具合が悪くて…」
ト教授「具合が悪い?演奏を諦めるくらいなら… ひょっとして手じゃないのか?」

ネイルが驚いて顔を上げた。「あ… はい」

ト教授「だいぶ深刻なんだろうなぁ」
ネイル「…。」
ト教授「どうして痛めたんだ?」

「教授!」ネイルは意を決して口を開いた。「私、来週からレッスンに出ます!」

ト教授「(ぼんやり)あぁ、そうか…」

ぼんやりとそう言っておいて、ト教授はハッと目を見張った。「レッスンに出るって?!」
「それじゃさようなら!」ネイルはそれ以上耐えられないとばかりに、急いで逃げ出した。

彼女がいなくなると、ト教授は電話を取り出す。「アン教授」

ト教授(電話)「おならソングの学生のことですがね、何か嫌ったり怖がるようなものがあるんですか?えぇ、そうです。扇子?!」

#何でそこでアン教授に訊くかなぁ。ユジン先輩に電話しなさいよー!!!

ト教授(電話)「なぜこの扇子が嫌なんです?どうして?」

+-+-+-+

左手は指ごとにギブスで固定され、その上からしっかり包帯が巻かれている。
薄暗い病室のベッドで、ユヌは眠っていた。
携帯の着信を告げるバイブレーションの音が、静かな病室に低く響く。

「はい、ユヌは寝ていますけど」代わりに電話を取った母親が、小声で言った。

母親(電話)「手術したって、どうして知ってるんですか?登録されてない番号だけど…」

母親はハッと顔を輝かせた。「ユヌの友だちですか?」

「あぁ、違うんです」電話の向こうで答えたのはユジンだ。

ユジン(電話)「それではこれで」

#確か前に電話で話してましたけど、ずいぶん印象が違いますよね、お母さん。

ユジンは電話を切り、小声で悪態をつく。「面倒くさいヤツだ」

そこへネイルがやってくる。
ここは、彼らの部屋の前の廊下だ。「ふん♥ 私のこと待ってたんデスね」

ユジン「いや。風に当たってただけだ」

「待ってたくせに♥」ネイルが彼をつつく。
ユジンはそれ以上否定することなく、小さく微笑んだ。
「さてさて、確かめてみようかなぁ~」ネイルが携帯を出す。

ユジン「何を?」
ネイル「見ててください」

ネイルが携帯の画面を触り始めると、程なくユジンの携帯が鳴った。

発信者 ソルレイム♡♡♡

ユジン「チッ!」
ネイル「ソルレイムに♡3つ!!!」
ユジン「お前が入力したんだろ。オレじゃない」
ネイル「消してないってことは、受け入れたってことじゃないんですか?」

「また始まった、ソルレバル」くっついてきたネイルを、ユジンはぼやきながら押し戻す。

ネイル「ユヌ先輩から連絡があったんですけど、治療は無事済んだって」
ユジン「…良かった」
ネイル「はい。ホントに良かったです。ユヌ先輩、これが最後の演奏だと思ってたみたい。だけど、葬送曲だなんて…ちょっとビックリでした」
ユジン「…。」
ネイル「もう少ししたら先輩も留学するんだろうし、そうしたら私だけになっちゃいますね」
ユジン「…。」

「…ソル・ネイル」ユジンが言い掛けたその時、イラクたちが大騒ぎしながら駆け寄ってきて、二人に抱きついた。

イラク「オレらのこと待ってたんだな!」
ユジン「そんなわけないだろ」
イラク「分かってるって!ベストフレンドだもんな」
ユジン「何が分かってんだよ!」
スミン「チャ様!私もチャ様のことはもう何だって分かるわー」
ユジン「だから何が分かるんだって!!!」
ネイル「先輩から離れてくださーい!」

「離れろ!このバカども!!!」ユジンがいつものように皆を一斉に押しのける。

イラク「オレたちバカども!2次会はユジンの家だぁ!」

皆が一斉にユジンの家のドアに突進した。

ユジン「おい!何でオレの家に?!オレの家で2次会?!」

+-+-+-+

ユヌは静かに目を開けた。
「気がついた?」ベッド脇に座っていた母親が、彼を覗きこむ。

ユヌ「…母さん」

「…。」母は潤んだ瞳で何も言わず彼を見つめた。

ユヌ「泣いたの?」

母親は冗談ぽく彼を睨みつける。
「はぁ」ユヌは愉しげにため息をつく。「女性を泣かせたくないんだけどな」

母「そんなこと言える様子じゃ、大丈夫ね」
ユヌ「…。」

「手術、上手く行ったって」母は少し身を乗り出し、ユヌにそう言って聞かせた。「心配ないわ」
母の言葉に、ユヌも笑顔を見せる。「良かった…」

ユヌ「それなら… 日常生活には支障ないんだね」

「えぇ」母親は辛うじてそう言い、涙を堪え切れずに視線を外した。

ユヌ「母さん… 僕、大丈夫だよ」
母親「…。」
ユヌ「もう一度やり直せるから…。やり直す力を貰ったんだ」

284

ユヌはそう呟き、幸せそうに目を閉じた。

+-+-+-+

朝だ。

ユジンの部屋にはあちこちに屍が転がっていた。
「シウォン♥」「チャ様」イラクとスミンはベッドの上で寄り添ったまま、幸せな夢の中だ。
昨日の大騒ぎのまま、片付けてもいないテーブルの上で、誰かの携帯が鳴り始めた。
床から手を伸ばし、携帯を掴んだ人物が起き上がる。ネイルだ。
ソファの上で眠っているユジンは、電話の音に身動きもしない。

ネイル(電話)「もしもし」

「チャ・ユジンの携帯では?」電話の向こうから男性の声が聞こえた。

ネイル(電話)「先輩ですか?」

「あぁ、先輩の携帯だった」ネイルは後ろで眠っているユジンを揺する。「先輩、起きてください」

ユジン「おい、隣が自分ん家なのに、何でここで寝てんだよ?さっさと帰れ」
ネイル「あぁ… お腹空きました。何か作ってくださいよ」

+-+-+-+

電話の向こうから聴こえてくる会話に眉をひそめていたのは、ソニョンの兄、ユジンの叔父だ。

「お前、どんどん図々しくなってるぞ。せめて顔洗ってから頼め」
「先輩の歯ブラシ、使ってもいいですか?」
「夫婦でも一緒に使ったりしないぞ:」
「もー ケチ」

「あ、ところで電話ですよ」ネイルはようやく電話を差し出した。

ユジン「何で今頃言うんだよ」

彼は電話を受け取り、画面に表示されている名前を凝視した。「?」

ユジン(電話)「叔父さん」
叔父(電話)「あぁ、私だ。今日は休みだろう?」

「えぇ」ユジンは欠伸をしながら答えた。「週末ですから」

叔父「それならちょっと家に寄りなさい。その子を連れて」
ユジン「誰ですか?」
叔父「今、お前の歯ブラシを使うと言った子だ」
ユジン「!」

+-+-+-+

ユジンは母のカフェに来ていた。

ソニョン「叔父さんから呼び出し?何か悪いことでもしたの?」

「いや。何も」ユジンはぼんやりとストローを吸う。

ソニョン「そう強く出るってことは何かあるのね。何なの?」
ユジン「何もないって」
ソニョン「…。」
ユジン「母さん、いつまでここにいるんだよ?何企んでるんだ?」
ソニョン「ちょっと!私は潔白よ。企んでなんかないわ」
ユジン「…。」

「社長♪」そこへやって来たのはミニだ。

ミニ「あ、先輩いらしたんですか」
ユジン「お前こそどうしてここに?」
ミニ「?」
ソニョン「あぁ!ミニ!オケの団員だったわね!」

ソニョンは今頃ユジンとの関係に気づき、声を上げる。

ミニ「私、ここでバイト始めてだいぶ経ちますけど」
ユジン「…。」
ミニ「あぁ、確かに。先輩はほとんどここに来ませんからね」

「うちの息子はそういうところがあってね」ソニョンが息子の肩に手を回す。

ソニョン「だけど、ホントに稀な偶然よね。そうでしょ?」

ミニはバイトの準備をしに奥へ去って行った。

ユジン「まさか他に偶然はないだろうな」

ちょうどそこへ、”偶然” 店に入ってきたのはネイルだ。「社長、こんにちは」

ユジン「お前までどうした?!」
ネイル「あ、知らなかったんデスか?私、ここでピアノ弾いてるんですけど」
ソニョン「(ニコニコ)」

「それでは親子二人、深い会話をどうぞ」ネイルはしとやかに頭を下げ、ウィンクすると、これまた奥へ去って行く。

ユジン「母さんが呼んだのか?あいつが来たのか?」
ソニョン「誰かが呼んだならどうだって言うの?ところであんたたち、仲直りしたみたいね」
ユジン「…。」
ソニョン「そうでしょ。あの子に最近チクチクやられっぱなしだったんだから。だけど、今日は機嫌が良さそうだし、仲直りしたのね。図星でしょ」

285

ユジンは一人ウキウキしている母親をマジマジと見つめた。「ソニョン氏」

ソニョン「?!」

+-+-+-+

目を覚ましたユヌはギョッと目を見開いた。
いつからそこにいたのか、シュトレーゼマンが間近で自分の顔を覗きこんでいたのだ。

286

シュトレーゼマン「ふむ。なぜ驚くんです?」

「…教授」ユヌは起き上がった。

シュトレーゼマン「病院までワタシに知らせてくれて、礼を言わなければネ」
ユヌ「教授に嘘をつくわけにはいきませんから。たいしたことでもないのに、来てくださってありがとうございます」
シュトレーゼマン「たいしたことではない?チェロはまた弾けるんですか?」

「…。」ユヌの表情が曇る。

シュトレーゼマン「ふむ。ワタシの知っているイ・ユヌくんはひたすら耐えるタイプです」
ユヌ「…。」
シュトレーゼマン「軽いケガで舞台を放棄するような人ではありませんネ」
ユヌ「またチェロを弾けるようになるかどうか、それはまだ分かりません」

「友人たちには言わないでください」ユヌが顔を上げ、まっすぐにシュトレーゼマンを見る。
「はて」シュトレーゼマンは少々不思議そうにユヌを見つめた。「どこか…」

ユヌ「?」
シュトレーゼマン「よく似ています」
ユヌ「え?」
シュトレーゼマン「君とチャ・ユジンです」
ユヌ「…。」(←この瞬間の顔、とてもいい
シュトレーゼマン「悩み事をひたすら一人で抱えるところが、とても似ていますネ」

ユヌはふっと微笑んだ。

シュトレーゼマン「これからどうするんです?」
ユヌ「違う生き方をしてみたいんです。やり直すんですから」
シュトレーゼマン「何を?」
ユヌ「何でもです。やりたいことは全部やって、会いたい人にも… 好きなだけ会います」
シュトレーゼマン「それなら、やりたいことの中に、指揮もありますか?」
ユヌ「?!」
シュトレーゼマン「一度考えてご覧なさい」
ユヌ「…。」

287

+-+-+-+

「おお!」インターネットに上がっている記事を前に、皆が湧く。

288

『韓音大オーケストラ
ライジングスターの華麗なるデビュー』

「韓音大のライジングスターはその名の通りだった」イラクが記事の冒頭を読み上げる。
「ラフマニノフピアノ協奏曲2番の旋律の中に、指揮者チャ・ユジンとクラシック界のアイドル、ソン・スジの協演は、大学オケの境地を超えており、3度のアンコールとスタンディングオベーションを受けた」シウォンとスミンが続きを読む。
289

「やった!!!」彼らは思い切り歓声を上げた。

+-+-+-+

「ありがとうございます、理事長!」電話をしながら、理事長は思わず立ち上がった。

学長「失望させないよう、しっかり運営していきます」

「やった!」学長は電話を切ると、飛び上がる。
少女のように駆けまわっていたところへ、不意に入ってきたのはシュトレーゼマンだ。
「!」彼女は驚いて背を向ける。そして、改めて笑顔で彼を振り返った。

ミナ「フランツ、すごくいいニュースがあるんです」
シュトレーゼマン「ふむ。理事会でライジングスターが…」
ミナ「?!」
シュトレーゼマン「公式オーケストラとして認められたというニュースですか?」

彼女はうんうんと嬉しそうに頷いた。

+-+-+-+

「先輩、お金持ちだったんですか?!」ネイルが連れて来られた邸宅は、うっすら霧がかかった山の中にそびえ立っていた。

ユジン「金持ちなのは叔父さん。ずっと住んでたから、ここが実家みたいなものだ。お祖父さんが生前大事にしてた家でもある」
ネイル「先輩、ここで育ったんですか?」
ユジン「あぁ」

ネイルは圧倒されて辺りを見渡す。

ユジン「考えてみたら、ここが一番ホッとする場所だな」

ユジンの携帯にメッセージが届いた。
携帯を覗き、ユジンはニヤリと微笑む。
「何ですか?」ネイルが彼をつついた。「私にも教えてくださーい」

ユジン「たいしたことじゃない。R☆Sが韓音大の公式オケに承認された」

290

そう言ってユジンは彼女にニッコリ笑い掛けると、彼女が顔をあげる前にクルリと背を向けた。

ネイル「わぁ~!!!」

+-+-+-+

「ふむ」研究室で、シュトレーゼマンは静かに考えを巡らせていた。「こんなに簡単に承認されるはずはないのに」

シュトレーゼマン「それに、イ・ユヌとベイビちゃんのことだって、問題にしようと思えば出来るのに、諦めたってことでしょ?何を企んでいるんです?」

+-+-+-+

「キム博士のことで、ソル・ネイルを口実に僕を呼んだんですか?」ユジンは叔父と医師を前にしていた。

叔父「昨日のお前の公演、チャ・ドンウが来ていたんだって?」
ユジン「…。」
叔父「またお前のことでソニョンを苛立たせて行ったことだろう。昨日今日のことじゃない」
ユジン「…すみません」
叔父「キム博士のところへ行かなくなってだいぶ経つだろう?これでは時間を無駄にするだけだ。やるだけやってみて、駄目なら諦めることも考えるべきじゃないか?」
ユジン「…。」
キム博士「一番落ち着く場所でやれば、催眠も上手くいくんだ。一度試してみよう」

「…。」ユジンは大きく息を吐きだした。

+-+-+-+

ユジンはソファの上に横に座って足を投げ出し、目を閉じた。
キム博士がただちに催眠に掛かる。「左腕を肩の高さに挙げてください」

ユジンが言われたとおりに動く。
キム博士の指示はさらに続いた。

キム博士「さぁ、これから10歳の頃へ戻りますよ。チャ・ユジンさんは飛行機に乗りました。何がありましたか?」
ユジン「…。」

キム博士が目を閉じているユジンを覗きこむ。
「…。」ユジンが不意に目を開けた。「やめましょう」

キム博士「…。」
ユジン「いろいろやって駄目だったんです。年齢退行療法なんて出来るわけありません」
キム博士「深い催眠が必要なんだが… 前よりも掛からないね。ひょっとして、留学は諦めたのかい?」
ユジン「まさか」
キム博士「前に言ったろう?催眠に上手く掛かる方法だよ」

「えぇ」ユジンは力なく笑った。

ユジン「後ろで受け止めてあげるから安心して倒れてみろ、そう言われたとき、信じて倒れられる方が催眠にかかりやすい…」

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お屋敷内を探検していたネイルは、ステレオの両隣にレコードがたくさん置いてある部屋を見つけた。

ネイル「わぁ!」

思い切って中へ入ってみる。

ネイル「すっごくたくさん!」

彼女はふとレコードプレイヤーに目を留める。
スイッチをひねると、ターンテーブルが回り始めた。
ネイルの顔がパッと輝く。

部屋の前を通りかかったユジンの叔父は、ステレオの前に立っているネイルの気配に振り返った。「?」
レコードの針に恐る恐る手を伸ばす彼女の姿に、叔父は思わず笑みを浮かべる。
彼はそのまま部屋の中へ入っていった。「音大生なら…」
「!」ネイルが驚いて顔を上げた。

叔父「こんな場所をそのまま通り過ぎるわけにはいかないよな」

「勝手に入ってごめんなさい!」ネイルが頭を下げる。

叔父「いいんだ」

叔父は目の前の棚を開け、一枚のレコードを抜き取る。

叔父「うちの父、つまりユジンの祖父は音楽がたいそうお好きでね」

叔父はレコードをセットすると、そっと針を落とした。
静かなピアノの音色がふんわりと流れてくる。

※エリック・サティ「ジムノペディ」第1番

ネイル「あ、ジムノペディ。私も好きな曲です」

二人はソファに腰を下ろし、レコードの音に耳を傾けた。
ネイルはテーブルの上に置いてある写真を手に取る。「先輩の子どもの頃ですね」

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それはジェットスキーにまたがっている少年の写真だ。
目を閉じていたユジンの叔父がハッと目を開けた。

ネイル「今とおんなじだ♪」

嬉しそうに写真を見つめるうちに、ネイルはふとあることに気づく。

ネイル「だけど、このときは水が怖くなかったんですね」

叔父が思わず身を乗り出す。「それを…知ってるのかい?」

ネイル「え?」

叔父は納得したように頷き、ニッコリ笑った。「確かに… ユジンが女友達を連れてきたのは初めてだからね」

叔父「連れて来いとは言ったものの、本当に連れて来るとは思わなかったが… それなら、事情を知っていても不思議ではないな」
ネイル「何のことですか?」
叔父「ユジンの事故のことだ」

そのとき、ちょうど治療を中断したユジンが部屋の前を通り過ぎようとして、立ち止まる。

叔父「飛行機の事故だよ」
ネイル「?」

「叔父さん!」ユジンが慌てて叔父を止めた。

叔父「?」
ユジン「何をなさってるんですか?」

「…。」突然のことに、ネイルは戸惑って視線を逸らした。

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ここでエンディングです。
全く… 毎回なんちゅーところでエンディングにするんですか。
観る方にも1時間観る間に気持ちの山ってものがなきゃいけないのに、どこに山を作って、どこを目指して盛り上がればいいのかさっぱり分かりませんよ。

ここにラフマニノフのピアノコンチェルトを持って来たのは、そういうわけだったんですね。
この曲はラフマニノフが精神衰弱を克服する足がかりになった曲。
治療には催眠療法が使われたそうです。
ユジン、ネイル、それにユヌがそれぞれの苦悩を乗り越えようとする姿を、この曲と重ねあわせたんでしょう。
単に原作から1つずらした形になっていますが、こういう理由なら納得です。

まぁでも…ブラームスで「歌え!歓喜の歌を!」は聴きたかったな…。

前に出て来たときも優しかったけど、ユジンの叔父さん、いい人でホッとしましたね。
叔父さんの豪邸を訪ねるエピは、久々にかなり原作に沿ったものです。(一応ここまでは:笑)
お祖父さんのレコード部屋で先に音楽を聴いていたのは千秋先輩で、聴いていたのはバッハのマタイ受難曲でした^^

 - のだめカンタービレ(韓国版)