ネイルもカンタービレ(のだめカンタービレ韓国版)あらすじ&日本語訳 13話vol.1
シム・ウンギョン、チュウォン主演、「ネイルもカンタービレ/明日もカンタービレ」(韓国版のだめカンタービレ)13話前半です。
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そう、そのままだ。上手くやれてる。
世界に見せてやるんだ。ピアニストソル・ネイルを…。
コンクールの一次予選。
ネイルの演奏が始まった。
曲が進むにつれ、ト教授の手が拍子に合わせて自然と動く。
ト教授(心の声)「楽譜通りでありながら、自分だけのフィーリングもこもっている!」
「いいぞ。そのまま行けばいい」ト教授の顔に笑みがこぼれた。
審査員が囁いた。「今までで一番いいですね」「音がとても多彩だわ」
曲の途中でそっと入ってきたのはユヌだ。
彼はじっとステージに見入っているユン・イソン教授の隣に腰を下ろした。
#そうか。ユヌだったかー。そういやユジンは最後にユン教授に楯突いて終わったんだった。
ネイルの集中力は曲の進行とともに高まり、人々をどんどん彼女の世界に引き入れる。
最後まで一気に突き進むと、彼女の演奏は終わった。
できた!
鍵盤から手をあげた瞬間、彼女は思わず拳を握る。
立ち上がった彼女は、今度は堂々と客席に向かって頭を下げた。
ユジン(アイコンタクト)「よくやった、ソル・ネイル」
ユヌがネイルの視線を追う。
その先には温かく微笑んでいるユジンがいた。
ユヌ「…。」
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ネイルの演奏を聴き終え、ロビーへ出たユン・イソン教授を、ユヌが追いかけた。
ユン教授「本選の審査員である私が、こうして一次予選から見ることになったわ。イ・ユヌ君に頼まれたからよ」
ユヌ「ありがとうございます、先生」
ユン教授「これ以上は期待なさらないで。私にとってソル・ネイルさんは、マスタークラスを途中で逃げ出した学生に過ぎませんから」
そう言いながら、ユン・イソン教授はどこか楽しそうだ。
#お肌が一段とツヤツヤですね、本日のユン教授。
ユヌ「それが今日で変わったと思います」
ユン・イソン教授は意味深な目でユヌをジロリと見た。
ユヌ「先入観のせいで、本選で演奏さえ聴かないことがあるかもしれないと思って、前もって見ていただけたらと思ったんです」
ユン教授「イ・ユヌ君がそこまで考えるのには、他に理由があるのかしら?」
ユヌ「成長していくのを見守りたいピアニストなんです。ですから、暫くの間、違った目で見ていただければと」
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控室では審査結果を待つネイルとト教授が長い待ち時間を過ごしていた。
ト教授「結果は一体いつ出るんだ?」
ネイル「先生、私落ちる可能性もあるんですか?上手くやれたと思ってたけど」
ト教授「その自信はどこからくるんだ?一次で半分が落ちるんだぞ」
ネイル「1位にならなきゃいけないんです。予選から苦戦してちゃダメじゃないですか」
ト教授は彼女の隣に腰を下ろす。「自信を持つのはいいが、油断は禁物だ」
ネイル「…。」
ト教授「ちゃんと調律されたピアノの弦は、演奏者の心の有り様をそのまま現す。そんなふうにいつもピンと張ってなきゃいけない」
ネイルは教授の言葉に頷く。
ト教授「慢心して気を抜いた瞬間、演奏は弛み、力を失ってしまうんだ」
そこへ一次合格者決定の知らせが入る。
ネイルは緊張して思わずト教授の腕を掴んだ。
#もうすっかりお互い信頼感が出来上がってますね。
ト教授がネイルを親のように可愛がってるのが微笑ましく^^
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ユジンは急いで学校へ戻っていた。
学内を走る彼の携帯にメッセージが入る。
ネイル(メール)「先輩、私、一次合格しました!!」
「当然だろ」彼の顔が輝いた。
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オケの練習室は緊迫感に満ちていた。
お互い腹を探りあい、誰も口を開かない。
その中でただ一人、イラクだけはひたすら幸せの中にいた。
ミニ「あの二人、何かありますね」
スミン「決まってるわ。ありゃ告白したばっかりよ!」
イラクはシウォンから受け取った投票用紙を浮かれたまま数え始める。
シウォン「チャ・ユジン、遅いね。とりあえず投票用紙配るね」
そこへユジンが入って来た。「ごめん。遅くなった」
ミニ「そうだ!今日ネイルの一次予選なんだ」
その声にユジンは思わず微笑んだ。
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ほどなくして、皆がソリストとして相応しい人物の名を記した投票用紙が中央に集められる。
ユジンが投票用紙を一枚ずつ分け始める。だんだんと彼の表情が変わった。
全て分け終えると、隣で見ていたシウォンが無言のまま席へ戻る。
皆の緊張が高まった。
ユジン「投票結果を発表する。Aオケのメンバーから一番たくさんの票、全4票が入ったユ・イラク」
イラク「…?」
ユジン「今回のソリストだ」
ジェヨンたちが密かにほくそ笑む。
「やった!」スミンたちが素直に手を叩いた。
イラク「そんなのあるかよ!」
ユジン「そういうわけで曲はチャイコフスキーのバイオリン協奏曲ニ短調だ。明日から練習を始める」
ユジンは淡々と告げる。
イラク「待ってくれよ、おい!」
ユジン「?」
イラク「オレが何で!何かの間違いじゃないのか?」
ユジン「間違いじゃない。SオケのメンバーもAオケのメンバーも皆1、2票ずつだ。ユ・イラクは4票。お前が一番多い」
イラク「…。」
ユジン「皆オーケストラを思っての投票だろう。他意は絶対にないと、そう信じる」
うつむくジェヨンたちをユジンは静かに見据えた。
イラク「(皆に)そりゃオレがちょっと上手いのは分かってるけどさ。お前ら人を見る目はあるさ」
「けど…」イラクはユジンに向き直る。「オレ、ホントにソロやるのは嫌なんだ」
#ソリスト希望じゃないのにオーディション受けるのがおかしい
皆が静まり返ると、ジェヨンが待ってましたとばかりに口を開く。
ジェヨン「本人が嫌だって言うんだから、敢えてやらせる必要あるのか?」
ソンジェ「いっそのことユ・イラクに指名させたらどうだ?ソロに相応しい人を」
ユジン「…。」
「あぁ、それがいい」イラクもホッとして同調する。
イラク「オレよりシウォンの方が…」
ユジン「約束したろ」
イラク「!」
ユジン「誰に決まろうと認めるってな」
皆が再び黙り込んだ。
ユジン「…。」
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外へ出たユジンをイラクが追ってきた。「チャ・ユジン!」
ユジン「…。」
イラク「ユジン!もう一度投票し直そう!な?」
ユジン「ソリストはお前だ。二度はやらない」
イラク「… 怒ったのか?」
ユジン「…。」
イラク「オレがソリストに決まって…怒ってんのか?」
頑なに背を向けているユジンに、イラクの不安が募る。
沈黙の後、ユジンが口を開く。「あぁ」
イラク「チャ・ユジン…」
ようやく振り返ったユジンの目は本当に怒りに満ちていた。「あいつら、お前のこと馬鹿にしやがって!!!」
イラク「…。」
ユジン「お前が辞退するのを分かっててやったんだ。誰よりもオケを大事にしてるのを分かってるから!」
イラク「…。」
ユジン「公演をぶち壊しにしないために、お前が自分から引き下がると分かっててやったんだって!」
イラク「…。」
ユジン「だからあいつらお前を選んだんだ。お前はそれを分かってて調子を合わせた」
イラク「…。」
悲しそうなイラクの顔に、ユジンはいくらか落ち着きを取り戻した。
ユジン「毎日4時間。お前の家でレッスンしよう」
イラク「え?」
ユジン「何が何でも練習しろ。あいつら何も言えないようにしてやるんだ」
イラク「…。」
茫然とするイラクを残し、ユジンは背を向けた。
イラク「おい、チャ・ユジン!オレのこと超好きなんだろ?!まぁ、オレはモテるけどさ、お前にそんなに好かれたら困っちまうだろーが!」
足早に去っていくユジンに、イラクは小さく笑みを浮かべる。「ありがとうな… ユジン」
#このシーン良かったわー。ユジンが怒るところで勝手に涙が流れてた。
ピュアなイラクは気持ちが直に伝わってくるから、見ていて胸がキュンと締めつけられるね。
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疲れて部屋に帰ったユジンは、ソファの中央に陣取っているオラバン&ネイル人形の隣にドッシリと腰を下ろした。
ふうっと深い溜息をつくと、ソファの後ろからニョキッとネイルが顔を出す。
彼女はニヤリと笑うと、後ろから彼の目を手で覆った。
ユジン「ソル・ネイル、そんなことやっても無駄だ」
ネイル「!」
「はー、つまんないの」ネイルが口を尖らせる。「どうしてメールの返事くれないんですか?」
ネイル「お祝いメール待ってたのに」
ユジン「一次予選で祝ってる場合か。見に行ってやったのに」
ネイル「それでも~。上手かったって言ってくださいよ~」
ユジン「これからもっと上手くやるだろ」
ネイル「?」
ユジンの横顔を見てネイルがニコリと笑う。
ユジンもまた、ひとりでに微笑んだ。
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二人は仲良くキッチンのカウンターで向き合い、もやしのひげ根取りを始めた。
ネイル「それってヒドいじゃないですか。ちょっとガッカリしちゃったな」
ユジン「相手からソリストが出るのが嫌なんだろう。オレも予想してなかった。いくら喧嘩してたって、オケへの愛情はあるはずなのに、あんな投票するとはな」
ネイル「先輩、失望しちゃいました?」
ユジン「あぁ、ちょっとな」
#世界一美しいもやしの下処理
「嬉しいな」ネイルが幸せそうに呟いた。
ユジン「?」
ネイル「先輩が私に悩みごとを相談してくれるなんて。私たちホントに夫婦みたい♥」
「!」ユジンは持っていたもやしをトレイに放り投げる。「こんなことしてていいのか?」
ユジン「二次課題の練習もしないで!」
ネイル「あぁ…」
ユジン「…。」
ネイル「二次の曲も仲良くなれる作曲家だったらいいな」
不安そうに言うネイルを、ユジンはじっと見つめる。「…。」
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「シューマンのソナタはどうだ?」ト教授の提案にネイルは首を傾げた。
ネイル「よく分かりません」
ト教授「ムソルグスキーも知らないか?」
ネイル「…。」
ト教授「スクリャービンも?プロコフィエフも?」
ネイル「プ…?」
ト教授「一体今までどんな曲をやってきたんだ?」
ネイル「私が気に入った曲です。リストの”愛の夢”とか、ベトベンの”月光”とか」
ト教授「そういう曲はコンクールに使わん」
ネイル「…いい曲なのに」
「それなら」気を取り直し、ト教授は手元の曲リストに視線を戻した。
ト教授「ショパンのエチュード25番は知らなくて当然だな」
ネイル「ショパンのエチュード25番?」
ト教授「何だ?知ってるのか?」
ネイル「…。」
ト教授「25番の11だ。難易度は最高」
ネイル「前に弾いたことあります。たぶん手が覚えてます」
ト教授「そうか?一度弾いてみなさい」
彼女はひどく硬い表情でピアノに向かった。
※ショパン 練習曲Op.25 第11番 別名「木枯らしのエチュード」
それは、幼い頃に弾いた曲だ。
彼女の演奏を聴き、「もうこんな曲が弾けるとは!」とピアノ教師は目を輝かせた。
「これからは先生の言う通りにしなさい。最高のピアニストにしてあげる!」と。
ト教授(心の声)「こいつ、ただ上手いだけじゃない。鳥肌が立つほどだ。炎が燃え盛っている!人の心を動かすピアノだ」
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レッスン室から漏れ聞こえる激しいエチュードに、ユジンは壁にもたれかかって耳を傾けた。
そこへユヌが現れ、彼の隣に並ぶ。
ユヌ:
2차예선 곡인가?
二次の曲かな?
「やっぱいいな」ユヌが呟く。
ユヌ:
내일이 피아노 왜 이제야 세상에 나왔을까?
ネイルのピアノ、何で今まで世に出なかったんだ?
ユジン:
?
ユヌ
내 보물.
내놓고 자랑하고도 싶은데 꼭꼭 숨기고 싶기도 하네.
불안해서.
オレの宝物。
おおっっぴらに自慢したいけど、大事に隠しておきたい気もする。
不安で…
ユジン:
…。
ユヌ:
너도 그렇지?
お前もそうだろ?
ユヌの言葉に、ユジンは小さく笑みを浮かべる。
ユジン:
무슨 말인지 모르겠네.
뭐? 보물?
꼭꼭 숨든 세상에 나서서 자랑하든 그건 본인이 선택하는 거야.
물건이 아닌 이상.
何言ってるんだか。
宝物?
隠れようが世に出ようが、それは本人の選択することだ。
物じゃない以上はな。
#前にミルヒに「なぜ君がネイルのピアノを自慢したいのか」と訊かれたユジンですが、ここへ来るまでに考え方が変わっていますね^^
ユヌ:
…。
나 한음 지휘과로 편입해.
オレ、韓音の指揮科に編入する。
ユジン:
?!
ユヌ:
첼로를 포기할 수 없을 줄 알았는데
지금은 지휘를 해 보고 싶어졌어.
チェロを諦めれると思ってなかったけど…
今は指揮をしてみたくなったんだ。
+-+-+-+
シュトレーゼマンの研究室へやって来たユジンは随分苛立っていた。
ユジン「イ・ユヌが指揮科に編入するそうですね。教授が推薦なさったとか。どうして言ってくださらなかったんですか!」
シュトレーゼマン「そんなに大したことですか?」
「…。」シュトレーゼマンの力の抜けた反応に、ユジンは思わず押し黙った。
「大したことじゃないですね」ユジンは溜息をつく。
ユジン「ご用件は何ですか?」
シュトレーゼマン「ふむ。仲の良い師弟同士、一度ヨーロッパへ行ってみましょーか?」
ユジン「ヨーロッパですか。また逃げるつもりじゃ…」
シュトレーゼマン「逃げるんじゃないですヨ。オマエを連れて行くために、しばらくここを留守にするんです。ミナの許しも貰ってるんですから」
#いつも「オマエ」と訳してるけど、本当は「キサマ」にしたい(笑)
ここ以外は実に丁寧な言葉遣いなので、そのたびにちょっとクスっと笑えるポイントです^^
ユジン「あの… またお遣いが必要なら」
シュトレーゼマン「行かないつもりですか!」
ユジン「…。」
シュトレーゼマン「誰もが行きたがる国立音大ですヨ。卒業してもR☆Sの指揮をするつもりですか?」
「…。」考えこむユジンの顔を、シュトレーゼマンが覗く。
シュトレーゼマン「もしかしてベイビのことでスカ?」
ユジン「!」
シュトレーゼマン「ベイビをコンクールに送ったのは、ヨーロッパに留学させるためなんじゃ?」
ユジン「…。」
シュトレーゼマン「ベイビが優勝したら、ヨーロッパに留学することができます。一緒に行かないんデスか?」
ユジンは顔を曇らせた。
#冒頭でユン・イソン教授がお肌ツヤツヤって書いたから今まで我慢してたけど、ユジン先輩こそ今日ツヤツヤじゃない?♪♪♪
+-+-+-+
イラクは店のテーブルでぼんやりしていた。
「あいつら、お前のこと馬鹿にしやがって!」声を荒らげるユジンの顔が思い浮かぶ。「お前が辞退すると分かってやったんだ。誰よりオケを大切にしてるって分かってるから!」
深い溜息をつき、眉間にしわを寄せると、父親が心配そうに顔を覗きこんだ。
彼は息子を励ますため、心を込めた料理を差し出す。「きっと食欲出るぞ!」
父「ソリストになったのに、体壊したら大変だ」
イラク「…そうだよな。オレ、ソリストなんだし」
父「(ニッコリ)」
イラク「体壊しちゃダメだ」
彼は父の前で無理に微笑み、料理に手を伸ばした。
#上着を脱いでから食べたほうがいいってば。トマトソースが飛ぶからー!
+-+-+-+
イラクは相変わらず浮かない顔で学内を歩いてきた。
彼を見つけたシウォンが嬉しそうに彼の背中をバチンと叩く。「R☆Sのソリスト、ユ・イラク!」
イラク「!…そう言うなよ。バツ悪い」
シウォン「何で?自慢したっていいくらいなのに」
イラク「オレの人気が予想外でごめん。オレがいなけりゃお前が選ばれたはずなのに」
「謝ることなんかないよ」シウォンの笑顔はどこまでも眩しい。「私だってあんたに入れたんだから」
イラク「?!」
シウォン「人間ユ・イラクの弾くバイオリンが魅力的なんだから仕方ないでしょ」
イラクの顔が不意に輝いた。「!」
シウォン「あんたには十分資格がある」
イラク「ホントか?お前もそう思うか?!」
シウォン「(うんうん)」
イラク「ふふっ♪ お前もオレのソウルに惚れたんだな」
シウォン「私にはソウルが足りなかったみたい。票も少なかったし」
「そんなことないって!」イラクが慌てる。「オレが証人だ。お前のソウルに惚れた生き証人!」
イラク「オレもお前の名前書いたんだ。だから、そんなこと言うなよ」
シウォン「(笑顔)最初、自分が選ばれなくてガッカリしたのは事実だけど、あんたなら認めるよ」
「だから、しっかりやんなよ!」シウォンはもう一度イラクの背中をボンと叩いた。「!」
イラク「あぁ。あいつら、ぐうの音も出ないようにしてやる」
彼はシウォンの明るいオレンジ色の唇に人差し指を当てると、彼女がキョトンとしている隙にさっと背を向けた。
シウォン「?… ♥」
#なんかさー シウォンもすんごい可愛くなっちゃったよねぇ 青春だねー
+-+-+-+
イラクをソリストとして、Sオケの練習が始まった。
いざソロパートとなると、彼のグラグラと不安定な音程に皆の顔が引きつる。
ジェヨン「あのソロにオレたちのトランペットを合わせなきゃなんないのか?」
ソンジェ「オレのオーボエが勿体ない」
困り果てたユジンは、イラクが演奏を止めるとそれでも微笑んでみせた。
ユジン「ソロ部分は今よりテンポを早くしたほうがいいかもな」
イラク「あぁ、分かった」
「10分だけ休憩だ」ユジンは練習を中断した。
#ハイネックのスリムなセーター姿、しゅてきしゅてき~♥
何となく全体を漂う気まずい雰囲気に、スミンたちはさっとイラクの元へ駆け寄った。
ミニ「先輩、どこか具合悪いんですか?」
イラク「いや、全然」
スミン「じゃ、どうしてあんな演奏に?」
ミニが思わずスミンを叩く。
イラク「…。」
シウォン「オケと合わせるのが初めてだからよ」
「初めてだから何だよ?」ソンジェが思わず嘲笑した。「恥ずかしくないのか?」
ジェヨン「今頃わかったのかよ」
シウォン「(イラッ)あんたたちでもきっと一緒だったわ!」
ジェヨン「オレが?」
ソンジェ「まさか」
シウォン「!」
「…。」ジェヨンたちの態度に反応することなく、なんでもない振りをしているイラクを、ユジンはじっと見つめた。
+-+-+-+
エチュードを弾けば弾くほど、ネイルの中で幼い頃のレッスンが甦った。
彼女がミスをするたび、ピアノ教師は定規で手を叩いたのだ。
「練習してないの?」
「一晩中やるつもり?」
「もう一度最初から」
「100回やりなさい。またミスしたら1000回よ」
「駄目!」ネイルは雑念を振り払おうと首を横に振った。「他のこと考えないで!」
ネイル「1位になって、先輩とヨーロッパに行くことだけ考えなきゃ」
懸命にピアノに向かうネイルの姿を、廊下で静かに見守っている人物が一人。
シュトレーゼマンだ。
+-+-+-+
鍵盤に突っ伏しているネイルの肩に、シュトレーゼマンがそっと触れた。
ネイルが驚いて顔を上げる。
ネイル「あ… ミルヒ」
ミルヒ「ベイビちゃんのコンクールのことを聴いて、お祝いしに来たんですケド、なぜそんな暗い顔なんです?」
ネイル「…。」
ミルヒ「この曲に何か良くない思い出でも?」
ネイル「ミルヒの目には… 見えるんですか?」
ミルヒ「演奏者の心は演奏に全て表れます」
ネイル「…。」
ミルヒ「この曲はね、右手の速いアルペジオが激しい冬の木枯らしを連想させるから、木枯らしのエチュードと呼ばれるでしょ?けれど、アルペジオよりもベイビの顔に木枯らしが吹き荒れてますヨ」
「あ…」ネイルは思わず顔に触れた。
ネイル「ごめんなさい。他のことばかり思い浮かんで」
ミルヒ「Oh、違うんデスよ。そんなベイビの感情を利用して、全部ぶちまけるんです」
ネイル「え?」
ミルヒ「ベイビの怒りや感情のカケラを、演奏の中に全部注ぎこむんです。それが、ベイビだけの演奏を創りだしてくれます」
ネイル「…。」
ミルヒ「演奏の中に全てを投げ出して。その後は、いつもの幸せなベイビちゃんに戻ればいいんですヨ」
ネイル「ミルヒ…」
ミルヒ「ピアノを前にして恐れることなんてアリマセンよ!ベイビ!」
虚ろだったネイルの目に力が戻る。「ミルヒの言うとおりにやります」
ネイル「私、避けたりしません」
シュトレーゼマンはホッとしたように顔を緩めた。
+-+-+-+
軽食を持って2階へ上がってきたイラクの父親は、部屋の中から聴こえてくる声に、ノックするのを止めた。
部屋の中では、ユジンがイラクの練習に付きっきりだ。
ユジン「もう指が疲れたのか?何でビブラート掛けないんだよ?前は好きだったろ」
イラク「それは… オレのフィーリングでやり過ぎだって言われそうで」
ユジン「いいんだ、お前のフィーリングでやっても」
#ユジンに「いいんだ」って認めてもらうと、見てる方もすんごくホッとするね。
ユジン「前はちょっとやり過ぎだと思ったけど、捨てるな。演奏には自己陶酔も必要だ」
イラク「(ホッ)」
ユジン「この協奏曲を聴く人は、何て言うか… お前のソウルを聴くんだから」
「そうか!」イラクが声を上げる。
肯定する代わりに、ユジンがゆっくりと1回瞬きをした。
イラク「それならオレのソウルを思いっきり発揮していいのか?」
ユジン「だからって見当外れはダメだぞ。曲を壊さない範囲での話だ」
イラク「そりゃトーゼンだろ。オレ、マジで昔のユ・イラクじゃないからな!」
ニッコリ笑ったイラクに、ユジンも微笑んだ。
イラクがもう一度ソロパートの演奏を始める。
「イラク、ファイト!」イラクの父親は中に声を掛けることなく、そっとその場を後にした。
+-+-+-+
ここで一旦区切ります。
もっと書き起こししたいところだけど、だいぶ作業遅れてるから我慢ガマン。
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Comment
あらすじありがとうございます。ユジンとネイルのかけ合いが好きな私は、何を言っているのかも分からず見ていましたが、ここのあらすじを知って、ものすごく助かってます。これからもよろしくお願いします。
いよいよ大詰めになり重要なコンクールになりました。ピアノの演奏も増えて楽しめました♪最初ミルヒはちょっと鬱陶しい事もありましたがいい所でユジンやネイル、そしてユヌに的確なアドバイスをしていて重要でしたね(笑)話し方も慣れました。コンクールの曲の意味もミルヒのお陰でよくわかりました。
世界一綺麗なもやしの下処理!私も同意見です(笑)
yujinaさん いつもありがとうございます
13話前半、自分の聞き取り能力のレベルの低さのせいでモヤモヤしていましたが
yujinaさんが訳してくださったものを読ませていただいてやっと、良いセリフがたくさんあったことがわかり「うん・・・こうじゃなきゃ・・・!」とヨロコんでいます!
もっともっとドラマを楽しみたい!