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韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!セリフを題材にした文法解説も

ネイルもカンタービレ(のだめカンタービレ韓国版)あらすじ&日本語訳 5話vol.2

      2014/11/03

チュウォン、シム・ウンギョン主演、「ネイルもカンタービレ/明日もカンタービレ」(韓国版のだめカンタービレ)5話後半です。
セリフのやりとりと共に、あらすじを詳しく追っていきますね。

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「観客が選んだのはSだと言うんですね?」教授たちを前に、理事長が言った。

理事長「ト教授も同じ意見かしら?」

「…はい」ト教授は静かに答える。

ト教授「しかし」
学長「?」
ト教授「実力はAオケの方が数段上だったのです」
学長「…。」

「そのとおりです」口を開いたのは、教授たちの後ろでソファに腰掛けていたシュトレーゼマンだ。

シュトレーゼマン「優れたオーケストラです。あの状況であのレベルの演奏をするためには、どれだけ練習したでしょうネ」

ト教授が頷いた。

シュトレーゼマン「ただ、観客は実力より楽しいオーケストラを選んだというコトです」

「そういうことです」ト教授が結ぶ。

「それでは投票結果を申し上げます」学長が立ち上がり、手元の封筒を開いた。

学長「Aオーケストラ、3人。Sオーケストラ2人」
アン教授「観客の票を入れたら同点ですね」

「それが…」学長が困惑した表情を浮かべた。

学長「お一人、投票なさっていません。シュトレーゼマン教授」

皆が黙っているシュトレーゼマンを振り返る。
学長の出したシュトレーゼマンの票は、白紙のままだった。

理事長「巨匠はどうか賢明なご決定を」
シュトレーゼマン「あー、私がどちらかに決めなければならないようですネ?」

再び皆の視線が集まる。

シュトレーゼマン「…。」

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SオケとAオケの面々の元へ、それぞれの顧問教授がやって来る。

アン教授「(Sオケに)どう伝えればいいものか…」

ト教授「(Aオケに)教授たちの投票では、もちろん君たちが優位だった。最終決定はシュトレーゼマン教授に委ねられたが…」

「教授はどちらに投票したんですか?」ユジンがアン教授に尋ねる。
「どっちなんですか?」シウォンがト教授に詰め寄る。
イラクが緊張して強く爪を噛んだ。

「投票せずに…」
「逃げた」

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「あぁ!」執務室へ戻ると、学長は思わず叫んだ。「奇行もいい加減にしてよ、フランツ!」

彼女が持っているのは、彼の残したメモだ。

『ユンイソン音楽祭に行きます』

学長「コーナーに追い詰められたら逃げ出す癖がまた!…また出たんだわ!」

「お会いしとうございますわ、フランツ」彼女は皮肉を込めて漏らした。

+-+-+-+

スッキリしない結果とは言え、Sオケのメンバーたちは大いに満足していた。
イラクの父の店に集まり、打ち上げだ。

「さぁ」グラスを手に、ユジンが立ち上がる。「Sオケに乾杯!」

「Sオケ!Sオケ!Sオケ!!!」皆がグラスを合わせた。
「たくさん食べろよ!」イラクの父親が張り切って料理を運ぶ。

ネイル「先輩、ちゃんと食べながら飲んでくださいね。あぅん、今日はホントに頑張りましたねぇ♥」
ユジン「たくさん食えよ」
イラク「けど、オレたちどうなるんだ?このまま教授が戻らなかったら、AオケとSオケ、このままずっと続くのか?」
ユジン「…。」

「教授が戻らなかったらいいのに」ミニが思わず本音を漏らす。

スミン「そうそう♪ 指揮者はチャ様でも十分だし♥」
ユジン「…。」

ユジンの電話が鳴った。『発信者:チェ・ドギョン』

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「朝帰国したのよ」トギョンはまだ学校にいた。

トギョン(電話)「あんたが指揮する日に合わせたの。トーゼン私が観なきゃね。久しぶりに一杯やりましょ♪」

「どうして?」彼女の顔が曇る。

トギョン「どこって?打ち上げ行ってるの?あんたが?!」

そのとき、彼女の前に誰かが現れた。「!」
スンオだ。

スンオ「今頃現れたのか?」

「ぜひ行くわ」トギョンは電話の向こうにそう言うと、電話を切った。

トギョン「私のこと待ってたの?」
スンオ「当然だろ」

「とりあえず、どっか行こうぜ」スンオはトギョンの手を掴む。「オレと一杯やろう」
トギョンは動かなかった。

トギョン「スンオ、私はトップに立ちたいの」
スンオ「え?」
トギョン「自分がトップに立てないなら、その隣にでも立たなきゃ」
スンオ「…。」
トギョン「私たち、家同士もよく知ってる関係だけど、後引きずったりしないわよね?今までいい友だちだったんだから」
スンオ「!」

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「私、約束があるから行くわ」絶句するスンオを残し、トギョンは優雅に立ち去った。

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Sオケメンバーは気持ちよく酒に酔っていた。
ひときわ騒々しいのは、イラクたちのいるテラス席だ。

スミン「うるさいってば、ユ・イラク!あんたのバイオリンは認めるから、駄々こねないでよ!」
イラク「お前はティンパニーが似合ってる。ムダに盛り上がるからな」
スミン「あんたたち、打楽器なしにリズム合わせられると思ってんの?ティンパニーは最高なんだから!」
イラク「(笑)」
オーボエ君「管楽器をバカにすんなよな」
クラリネット君「そーだ!お前らはいくらでも誤魔化せるけどな、オレら間違えたら終わりだぞ」

テーブルをバンと叩き、ミニが立ち上がる。「皆、私には勝てません!」

ミニ「楽器は大きいのが最高!コントラバスが最高なんだから!」

「おぉ~♪」小さなミニのデカい発言を、皆が囃し立てる。
盛り上がる彼らを、ユジンは愉しげに眺めた。

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そこへ…

ネイル「!」
イラク「!」

突如現れたのは… トギョンだ。「こんばんは♪」

トギョン「ちょっとお邪魔してもいいですか?♪」

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#「ダメダメダメ!」「どうぞどうぞ!」「ヤバイ」

「ありがとうございます」トギョンはたった今までネイルが座っていたユジンの隣に腰を下ろした。

トギョン「楽しそうだわ」
ユジン「(微笑)」
トギョン「1ヶ月ぶりのデートも断るはずね」

「!!!」ユジンのマンションに入っていくトギョンの姿が、ネイルの頭の中で鮮やかに蘇る。
ネイルは思わず二人の間に割って入った。

ネイル「出てってください!ここは私の席なんです!出てって!」
トギョン「?(この子、一体誰?)」

ここぞとばかりにスミンも加勢する。

スミン「右腕はソルレバル!左腕は私の指定席なんだから!」
トギョン「?(こっちはまた誰?)」

トギョンは余裕の笑みを見せた。「誰?お友だち?」
ユジンは苦笑する。

ネイル「悪いけど、私は妻デス!あなたちょっと失礼ですヨ」

「オラバン♪」ネイルは夢中でユジンにしがみついた。
「やめろって」ユジンが彼女を押しのけたのをみて、トギョンがフッと笑う。

トギョン「相変わらずの人気ね」

そう言って、彼女は不意に小さく咳をした。

ユジン「喉が痛いのか?もう出ようか?」

「!!!」優しく声を掛けるユジンに、ネイルは衝撃を受けた。

トギョン「ううん。あなたの団員たちが気になるもの、はぁ、久しぶりにこういう雰囲気もいいわね」
ユジン「チャ・ドギョン、こういう飲み会大嫌いだったのにな」
トギョン「あなたこそ変わったみたい。ますますステキだわ」

椅子の背に掛けてあるバッグを取り、ネイルはユジンの後ろを通ってスゴスゴと店を出て行く。
ユジンとトギョンが気付かずに話し続ける中、イラクやスミンは寂しそうなネイルの姿を目で追った。「…。」

管楽器コンビ「超キレイだなぁ。やっぱりミス韓音は違いますね」
トギョン「ありがとう♪」

ふとユジンは我に返ったように後ろをキョロキョロする。

トギョン「誰か探してるの?」
ユジン「あぁ、ソルレバル。あいつ一日中何も食べずに人の世話ばっかしてたから」
スミン「…。」
ユジン「食い物置いてどこ行ったんだ?」
イラク「…。」
トギョン「ソルレバル?さっきの子?」

ユジンが笑顔で頷く。
「ネイルは出て行ったけど」スミンが恨めしそうに呟いた。

ユジン「そうか?何で食い物置いて出てったんだ?」

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ネイルはもぐら叩きに怒りをぶつけていた。

ネイル「私にはいつも接近禁止だとか言うくせに、ミス韓音には甘すぎ!オラバンも接近禁止にしてやるー!!!」

制限時間が過ぎ、機械が静かになった。
「…。」ネイルは力が抜けたようにしゃがみ込み、ちょこんと出ているもぐらの頭を撫でる。「ごめんね」

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「行こう」冷たい顔でトギョンを睨むメンバーたちを前に、ユジンはあくまでも優しくトギョンに声を掛けた。

ユジン「これ以上いたら風邪引くぞ」

「飲み過ぎたから先に帰るぞ」ユジンは立ち上がり、メンバーたちを残してトギョンと一緒にその場を離れた。
去っていくユジンに、メンバーが口々に不満の声を漏らす。

イラク「オレら、2次会行くからな!」

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店を出ると、トギョンはさっとユジンの腕に手を伸ばした。
その瞬間、ユジンが立ち止まる。

トギョン「?」

ユジンは彼女の手をそっと外した。(←や、優しい…

ユジン「元恋人としてはこれが限界だ」
トギョン「ユジン…」
ユジン「一人で帰れるよな?」

「じゃあな」ユジンは彼女を残し、一人足早に立ち去った。

+-+-+-+

部屋の電気もつけないまま、ネイルはベッドの上でぼんやりしていた。
優しいユジンのことばかりが頭に浮かぶ。

ネイル「まただ。毎日会ってるのに、どうして?」

「ネイル」彼が呼ぶ声が聞こえたような気がして、彼女はハッと振り返った。「ソル・ネイル!」

ネイル「違う!先輩はソルレバルって呼ぶんだもん!ソル・ネイルじゃないもん!お母さん、私、ホント変だ…どうかしちゃったのかな」

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「ソル・ネイル!」玄関の前で、ユジンは何度もネイルを呼んだ。

ユジン「まだ帰ってないのか?」

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+-+-+-+

Sオケメンバーは意気揚々と2次会へ旅立った。

イラク「ユジンが羨ましがるくらい楽しく遊ぼうぜ!」

遅れて仲良く出て来たのは管楽器コンビだ。

クラリネット君「ミス韓音なんてクソ食らえだ!あんなもの、全部化粧のお陰だぞ」
オーボエ君「あんな女より、オレはお前との友情を取るぞ!」

そこへ、コントラバスを抱え、横を通り過ぎようとしたのはミニだ。

管楽器コンビ「ミニ、2次会行こうぜーー!」

ミニは彼らを振り返り、苦笑いした。

ミニ「私、先に帰りますね。明日の朝バイトがあるんです」
管楽器コンビ「…。」
ミニ「今日は楽しかったです、オッパ♪ また明日」

「あんにょん」ミニは小さく手を振り、ペコリと頭を下げて背を向ける。

管楽器コンビ「…。」

彼らはぼんやりと彼女を目で追った。

クラリネット君「ミニって前からあんな可愛かったか?」
オーボエ君「だよな。毎日コントラバス担いでるから、気づかなかった」
クラリネット君「ミニ、彼氏いるのかな♪」
オーボエ君「きっといないぞ♪」

+-+-+-+

「2次会!2次会!」街を歩く彼らの前に見えてきたのは、屋台だ。
「屋台行こうぜ!」誰かが言ったのを、イラクが慌てて止めた。「待った!」

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イラクの目に映ったのは、一人で飲んでいるシウォンの姿だ。

イラク「屋台は違う気がする」
メンバー「行こうって、屋台!」
イラク「いやいや、今日はオレらが勝ったんだから、もっと豪華なとこにしようぜ」

「オレがおごるから!」イラクはそう言って、メンバーたちを送り出す。
先に行かせておいて、イラクは別方向へ向かった。

+-+-+-+

コンコンッ

シウォンの前で、誰かがテーブルを叩く。
イラクがグラスを片手に、彼女の向かいに腰を下ろした。「失礼しまぁす」
「エリートコンマスが焼酎か?」彼はテーブルの上の焼酎を、自分のグラスに注ぐ。

イラク「ワインってタイプに見えるけど」
シウォン「用でもあるの?ないなら行きなさいよ」

シウォンは酒を注ぎ足し、一気に流し込んだ。

イラク「今日はオレらの勝ちだ。分かってるよな?」

「…。」シウォンは少し苛立ったように溜息をついた。

イラク「コンマスは負けてるがな、オケとしてはお前らに負けてないぜ」
シウォン「…分かってる」
イラク「?」
シウォン「あんたたち立派だった。バカにして悪かったわ」
イラク「オレたちはまぁ… まぁ立派だろ?今からでも分かってくれたならいいけど」

シウォンは突然代金をテーブルにバンと叩きつけ、立ち上がった。

イラク「!」
シウォン「認めるわ。リベンジするチャンスがあるといいけど」
イラク「…。」
シウォン「そのときは私たちだって黙ってやられたりしないわ」

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イラク「♥♥♥」

男前に去っていくシウォンを、イラクは口をポカンと開けたまま目で追った。

イラク「すげー迫力。綺麗だなぁ」

+-+-+-+

翌日。

ピアノの前でレッスン時間を待っているネイルは、とても憂鬱そうに見えた。
そこへアン教授がやって来ると、彼女の顔を覗きこむ。

アン教授「うちのネイルはレッスン受ける気分じゃないみたいだな」
ネイル「はい…先生。私、滅入ってるんです」
アン教授「気分の良くなるニュースを教えてあげようか?」
ネイル「何ですか?」

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「チャ・ユジンが来るよ」アン教授が内緒話のように囁いた。

ネイル「!!!」

「私、帰ります、先生」ネイルは思わず立ち上がる。

アン教授「どうして?君たち喧嘩したの?」
ネイル「いえ、そうじゃなくて…」

「でも、今は先輩の顔みられません!」ネイルはギュッと目を閉じた。

アン教授「どうしたんだい?」
ネイル「昨日のことで寂しいし… とにかくそういうことなんです!」
アン教授「ユジンが寂しい思いをさせるのは、いつものことじゃないか。それでもメゲなかったのに」

「そうなんです」ネイルは頷く。

ネイル「そうでした」
アン教授「それなのに、突然どうしたの?」

「私にもよく分からないんです」そう訴えるネイルに、アン教授は思わず笑った。

アン教授「そういう時期なんだね」
ネイル「え?」

+-++-+-+

レッスン室を出たネイルは、ぼんやりと廊下を歩いていた。

ネイル「そういう時期って何かな。先生、ときどきヘン」

ロビーまでやって来ると、彼女は慌てて隠れる。「!」
2階からユジンが下りてきたのだ。

廊下を通り過ぎるユジンを、ネイルは陰からそっと見送る。
彼の姿さえ見れば、その顔にはやはり笑顔がこぼれた。

ネイル「良かった。今日は会えないかと思ったのに♥」

+-+-+-+

「もう少し早く来れば良かったのに」アン教授がユジンを迎えた。

アン教授「そうすればネイルに会えたよ」

「えぇ、今日は一日見かけませんでした」ユジンは持って来た楽譜をピアノの上に広げる。
「そうかい?」アン教授が笑う。

アン教授「春だねぇ♪ いい時期だ」

「?」ユジンが楽譜から顔を上げた。「秋ですけど」

アン教授「(ニコニコ)」
ユジン「あぁ、指揮科に転科するのは無理なんでしょうか」
アン教授「そういえば、君はまだピアノ科だったね」
ユジン「はい。申請期間も過ぎたので、他に方法がないかと」

「アン教授!!!」そのとき、突然怒鳴りこんできたのはト教授だ。

ト教授「アン教授はご存知だったんですか?ひょっとして結託したのでは?!」

彼は手に持った資料を突きつけ、激昂する。

アン教授「何のことです?」
ト教授「ユンイソン音楽祭ですよ!」
アン教授「ユンイソン?あぁ、シュトレーゼマン教授がそこへいらっしゃってるそうですね」
ト教授「文書が来ました。音楽祭マスタークラス参加学生の推薦ですってよ!」

そう言って、ト教授は乱暴に書類を投げた。

アン教授「誰なんです?」

ト教授の視線がユジンに移る。

ユジン「…僕ですか?」
ト教授「お前だけじゃない!!!マ・スミン、ユ・イラクまで!万年留年生のユ・イラクだ!そこまでならまだ理解しましょう。どうしておならソングなど弾く学生をマスタークラスに推薦するんですか!!!国際的な音楽祭なんですよ!!!」

「ソル・ネイル?」ユジンとアン教授の声が揃った。

ト教授「マスタークラスに入りたくても入れない学生たちを差し置いて、貴重な一席をおならソングに譲れと言うんですか!!!それだけは出来ません」
アン教授「いや、それでもマエストロシュトレーゼマンが推薦なさったのなら…」
ト教授「とんでもない!!!」

そこへト教授の携帯の着信音が鳴る。
「この機にはっきり言ってやらねば」メールを開きながらも、ト教授の怒りは収まらない。

ト教授「…。」

メールを開くと、ト教授の不意に静かになった。「…。」

『”皇帝”のピアノ主人公を教えてあげるから、
私が推薦した学生たちを寄越してください』

ト教授「私が”皇帝”を弾く学生を探していること、シュトレーゼマン教授に話したんですか?」
アン教授「えぇ。見つけなきゃならないんでしょう?それで…」
ト教授「あの老いぼれめ!!!」

「よりによっておならソングを!!!」ト教授の怒りの頂点は、まだまだ上にあった。

ト教授「おならソングの学生に、この貴重なチャンスをやれと?!!!」
アン教授&ユジン「…。」

+-+-+-+

「あなたがソル・ネイル?」目の前で小さくなってコーヒーをすする女の子を前に、ユジンの母ソニョンは目を見開いた。

ソニョン「面接に来た学生が、あなたなの?」
ネイル「はい、私です」

話を聞くと、ソニョンは納得したように笑った。「そうだったのね」

ソニョン「私、学生夫婦なんだと思ってたわ」
ネイル「…。」
ソニョン「済州島出身で、お父様はポニー牧場をなさってて、お母様は海女さん?わぁ、素晴らしいわ。逞しい生活力でしょうね」

ネイルはコクリと頷く。

ソニョン「兄弟は?一人っ子?」
ネイル「はい」

「一人っ子同士なら悪くないわねぇ」ソニョンはそう呟きながら考えを巡らせる。

ネイル「?」
ソニョン「どこのソル氏?生年月日は?何時に生まれたの?」
ネイル「えーーっと」
ソニョン「…。」
ネイル「…ミニミニの社長さん」
ソニョン「?」
ネイル「今何の話をなさってるんですか?」

ソニョンは明るく笑った。「そのくらいは知っとかなきゃね」

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+-+-+-+

トボトボと部屋に帰ってきたネイルは、玄関を開けた瞬間、呆気にとられた。

ネイル「何でこんなにキレイになってるの?幻覚まで見えるようになっちゃった…」

広々とした部屋の真ん中で茫然と突っ立っていると、キッチンから誰かが声をかける。「あっという間に散らかしやがって」

ネイル「?!」

驚いて振り返ったネイルの目に飛び込んできたのは、エプロン姿で布巾を畳んでいるユジンの姿だ。

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ネイル「!!」
ユジン「古くなっても捨てられない、道端で拾ってくる。だから散らかるんだ」
ネイル「どうやって入ったんですか!どうして暗証番号わかったんですか!!!」
ユジン「うちと一緒だからな」
ネイル「!…女の子一人の部屋なのに」
ユジン「?」
ネイル「犯罪ですーーー!」
ユジン「人のこと言えんのか?毎日無断侵入、無断飲食してるくせに」
ネイル「それは先輩の世話を焼きたくって」

「…。」ユジンは淡々と布巾を畳んだ。

ネイル「これからはチェ・ドギョン先輩に世話を焼いてもらうんでしょ」
ユジン「何でチェ・ドギョンが出てくるんだ?」
ネイル「…。」
ユジン「あいつが元カレに世話焼くようなヤツでもなし」
ネイル「元カレ?!」

俄に顔を輝かせ、ネイルはユジンの元へ駆け寄った。
彼女は、彼の向かい側に座っているぬいぐるみを抱き上げる。

ネイル「先輩、これ何ですか?」
ユジン「…。」
ネイル「これって”愛の贈り物”かなー」
ユジン「浮足立つな」

「途中で拾ったんだ」彼は素っ気なく言う。

ユジン「お前、ピアノ弾くんだからもっと指を大事にしろよ」

ぬいぐるみの両脇は、手をすっぽり入れられるようになっている。
ネイルはそこに両手を入れ、腰掛けた。

ユジン「もう寒いんだ。ずっと持ってろ」
ネイル「はぁい♪ オラバン♥」

114

「私も脈ありってことかなぁ♪♪♪」ネイルがぬいぐるみを抱き、嬉しそうに微笑むと、ユジンはさり気なく書類を差し出した。

ユジン「お前、ユンイソン音楽祭のマスタークラスに招待された」
ネイル「♪♪♪」
ユジン「出発は来週だ。準備しとけよ」
ネイル「♪♪♪」

ネイルはうっとりとユジンを見つめる。

ユジン「お前ひょっとして… ユンイソン音楽祭知らないのか?」
ネイル「♪♪♪」
ユジン「毎年、最高の演奏家たちのレッスンが受けられて、演奏会もある、国内で一番由緒ある音楽祭だ」
ネイル「知りまセン。それにこんなの行きませんヨ。私は先輩と一生一緒にいるんだもーん♥」
ユジン「…そうか。嫌なら仕方ない」

ユジンはネイルが突き返した書類を手に取った。「オレは行ってくるから」

ネイル「?!… 先輩、行くんですか?」
ユジン「どうした?行かないんだろ?」
ネイル「行かないなんて言ってませんーーっ」

ネイルが書類を取り戻そうとするのを、ユジンは阻止した。「動機が不純だ」

ユジン「マスタークラスに入る資格がない」
ネイル「先輩が行くのに、私がいなくちゃ」

+-+-+-+

Let’s Go~~~!走れ~~~!
大はしゃぎの車内で、ユジンは頑なに目を閉じた。
後部座席にいるネイルとスミンは、助手席のユジンにキンパやナッツを食べさせようと、さっそくバトルを始める。

ユジン「静かにしろ!!!このバカども!!!!!」
二人「(ギクッ)」
ユジン「音楽祭に行くのに緊張感もないのか!寝てろ!!!」

+-+-+-+

115

すっかり熟睡していたユジンは、ネイルに起こされ、車を降りた。
ぼんやり歩き出して、彼はギョッとして立ち止まる。

ユジン「何だここは!!!!!」
一同「ウォーターパーク♪♪♪」
ユジン「(絶句)」

「おい親友」イラクが口を開けた。

イラク「21世紀に勉強しかしない男なんて魅力ないぞ」

116
スミン「チャ様とのウォーターパークの思い出…。キャー♥ 一生忘れないわ♪」

「これは先輩の水着。用意しておいたんですぅ」ネイルはキレッキレの水着をドーンと差し出した。

ユジン「!!!オレは…すぐ日焼けするんだ」
イラク「もう夏でもないだろ」
ユジン「イヤだ!!!」

「お前らだけで遊べ。オレは車にいるから!」逃げようとするユジンを、ネイルがすかさず捕まえる。

ネイル「私と車の中で二人っきりがよかったんデスね♪ いいですよん、私たち二人水入らずで~」

スミンがウキウキして駆け寄る。「もしかして身体に秘密が?♥」

スミン「デベソとかぁ~♪」

ネイルとスミンは両側からユジンの上着をチラリとめくってケラケラと笑う。

ユジン「何想像してんだ!」

「車は動かせないぞ」イラクが指にはめたキーをくるくると回した。

イラク「金もなし~♪車もなし~♪ オレたちが戻ってくるまでここで待ってるか?」

イラクがボタンを押すと、車のロックされる音がユジンの背後で鳴った。

+-+-+-+

ひとしきり大騒ぎして遊ぶと、3人は水から上がってぼんやりと並んで座った。

スミン「チャ様は結局来ないわね。水着姿、見たかったのにぃ♪」

#あかんって、想像してしまうからやめれー(マジ照れ

イラク「だから模範生だってんだ。遊び方を知らないヤツ」
ネイル「先輩、もしかしてカナヅチなのかな?」

「!」3人は揃ってダークな笑みを浮かべた。

ネイル「ここまで来たのにただで帰っちゃ勿体ないですよネー。先輩に素敵な思い出作って上げましょ♥」

+-+-+-+

117

『人間の心は無限の力を持っています…』

救命胴衣を身につけ、ユジンはヘッドホンから流れてくる睡眠療法の声に集中していた。

『心は宇宙を支配します。心はあなたの体を支配します…』

「ここは深い森の中の草庵だ」ユジンは自分に言い聞かせた。

ユジン(心の声)「誰が何と言おうと… ここでオレは…」

そこへ飛び込んできたネイルの声が、彼の集中をぶった切った。「泳ぎましょー、先輩!」
「見えるもんか!聴こえるもんか!」ユジンは頑なに目を閉じる。

ユジン(心の声)「ここは森の中の草庵だ」

「ダメだ、もう行かなきゃね」ネイルが言った途端、ユジンがパッと目を開ける。

ネイル「先輩、泳ぎもしないし、つまんない」
ユジン「行くって?」
ネイル「(うんうん)救命具を返さなきゃ。脱いでください」
ユジン「ホントか?ホントに行くのか?」(←どんだけ可愛いねん

ユジンはネイルに救命具を脱がされながら、嬉しそうに入り口のイラクたちを見上げた。

イラク「あぁ。先に行って練習しなきゃな。オレのスピリッツを発信しないとな」
スミン「ワタシも♪ 有名なティンパニー奏者が来るんだから」

「だよな」ユジンは張り切って立ち上がった。「やっと頭ン中が正常になったな」

ユジンが嬉しそうに歩き出すと、後ろを続くネイルがほくそ笑んだ。

+-+-+-+

カフェの一席で、ソニョンは頭を抱えていた。

ソニョン「何でよりによって海辺なのかしら。まさかあの子、海に入ったりしないわよね」

彼女が電話を手に取ると、正面の入り口が開き、一人の男性が店へ入って来た。「ソニョン!」

ソニョン「あら!お兄さん!どうしたの?」

「カフェをしていると聞いたが、本当だったんだな」ソニョンの兄は感心して店を見渡す。

兄「楽しいか?」
ソニョン「息子の話を人の口から聞くのは楽しいわね」

ソニョンは向かいの席を兄に進めた。

兄「この間まで息子を手放したいと言っていたのに」
ソニョン「^^」
兄「コーヒーをもらえるかな?」

「ここにアメリカン一つね」ソニョンはカウンターに声を掛ける。

兄「ユジンは元気かい?」
ソニョン「えぇ。ユンイソン音楽祭に行ってるんだけど、よりによって海辺だって言うから、気になって…」
兄「海に入ったりはしないだろう。飛行機も船もあれだけ嫌がるヤツが」
ソニョン「そうよね?」
兄「治療は受けてるのか?」
ソニョン「…。」
兄「キム博士はずいぶん長く来ていないと言っていたが」
ソニョン「病院の治療は効き目がないみたい。睡眠治療をしてるようだけど」

「事故の後遺症が深刻だな」兄は深く息をつく。

兄「このまま放っておくのか?指揮者になるのは難しいぞ」
ソニョン「指揮者デビューしたって言ったでしょ?」
兄「それでも国内の大学オーケストラだ。これ以上の成長は難しい。指揮者が夢なのに海外に行けないなんて」

「またその話?」ソニョンは視線を逸らす。

兄「ユジンは… このまま腐らせるのはあまりに惜しい。私の下で仕事を覚えさせよう」
ソニョン「言ったでしょう?ユジンは指揮以外に何一つ興味はないの」
兄「三韓電子はうちの家業だ。ここまで大きくしたんだから、私も信用できる人間に後を譲りたい。ユジンなら任せられる」
ソニョン「…。」

+-+-+-+

閉じこもっていたジャグジールームを出て、ユジンはプールサイドへとやってきた。
そこへ、後ろにぴったりついていたイタズラ3人組は、いきなり彼の腕を掴み、プールへと放り投げる。

ユジン「!!!!!」

ユジンはパニックに陥った。
「先輩気持ちいいでしょ~?」3人組は慌てているユジンを、高いところから見物する。

ユジン「!!!!!」

ユジンの頭のなかに、幼いころの恐怖が鮮明に蘇る。
救命道具を着け、暗い海の中で泣いている自分の姿が…。

ネイル「…?! ラク君、ちょっとヘンみたい」
イラク「(笑)水深1メートルなのに?」

「体が…動かない」ユジンは水の底に…沈んだ。

ユジン(心の声)「オレ… また海で溺れたのか?このまま… 死んでいくのか?」

「オラバーン!」ネイルが叫び声を上げ、駆け出す。
「?」近くにいた若い男性が、異変に気づいた。「?!」

+-+-+-+

ここでエンディングです。

日本版のドラマではバッサリ省かれたエピソードですが、原作では「ニナ・ルッツ音楽祭」として描かれており、水場へ遊びに来る流れはだいたい原作通りです。

それにしても、1話ごとの区切り場所がちょっとスッキリしませんねぇ…^^;
SオケとAオケの「負けたら解散バトル」なんて、アイドルの企画みたいな要素を加えるから、演奏が終わって満足!ってとこで気持よく終われなくなっちゃうし。

というわけで、さっさと次へ~♪です^^

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