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空から降る一億の星(韓国版)あらすじ&日本語訳 9話前編

   

ソ・イングク、チョン・ソミン、パク・ソンウン主演、tvN韓国ドラマ【空から降る一億の星】、9話の前半、詳細なセリフの日本語訳を交えながら、あらすじを紹介していきます。

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現れたユリから話を聞いていて、ジングクは結局真っ暗になるまで公園のベンチで過ごした。
録音を止めたところで、電話が鳴る。
「なんで電話に出ないのよ?」ソジョンの苛立ちが電話を通して伝わってきた。

ジングク(電話)「仕事してたんだ」
ソジョン(電話)「メールは?何してたの?なんでメールも見ないのよ?」

ソジョンは署の前にいた。
おおぜいの報道陣が集まっている。

「今ね、オム・チョロンがキム・ムヨンを捕まえに行って…」そう言い始めたところへ、向こうからサイレンが近づいてきた。

ソジョン(電話)「来たわ」

押し寄せる報道陣の前で、警察官たちが垣根を作る。
帽子にマスク姿で車を降りてきたムヨンは、イ班長とファン捜査官に両脇を囲まれて署内に連行された。

運転席でチョロンの携帯が鳴る。
ジングクからだ。
彼は浮かない表情で拒否ボタンを押した。

チョロン「…。」

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ムヨンが連行されると同時に、別の捜査員が彼の自宅の捜索に入っていた。

冷凍庫を開けると、そこにあったのは古い画用紙だ。
子どもの描いた家族の絵だった。

捜査員「なんだこれ」

家の前のガラクタを調べていた捜査員が、赤いボックスを開ける。
そこにあった黒い容器の中に、目的のものが見つかった。
凶器になったと思われる、トロフィーの像だ。

捜査員「見つかりました!」

#前に黒い容器にまとめてるなぁと思って見てたけど、それをまた赤いボックスに戻したんですね^^;

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取調室でムヨンを追及するのはファン捜査官だ。
自宅で押収した証拠品を、さっそくムヨンの前に並べる。

トロフィーの先端の像。
そして、血のついた封筒。中に金が入っている。

捜査官「見覚えがありますね?」
ムヨン「はい」
捜査官「どこにあったかも知ってるようだな。自分で隠したんですか?」
ムヨン「はい」
捜査官「どこで手に入れたんです?」
ムヨン「…。」
捜査官「自分で家に持ち込んだんでしょう?どこにあったんです?」
ムヨン「あの人の家に」
捜査官「チョン・ミヨン?」
ムヨン「はい」

「あっさり吐いたな」隣のブースで見守る課長(←かどうかは不明。ジングクが課長と呼ばれているのでややこしいですが)が満足気に言った。

別の警察官「物証を突きつけられたら、どうしようもないですよ」
課長「ようやく足を伸ばして寝られそうだ」

そこへ、ジングクが入ってきて、取り調べを見守る同僚たちに加わった。

捜査官「チョン・ミヨンはあなたが殺したんですか?」
ムヨン「はい」
捜査官「なぜ?」

ムヨンは目の前にある金の入った封筒を指した。

捜査官「金のため?」

ムヨンはコクリと頷き、隣のブースへとつながるガラス窓を探るように見つめた。「…。」

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「嘘です」ガラスの反対側でジングクが言う。

皆「?」
ジングク「彼が殺したんじゃありません」
イ班長「何言ってんだ」
ジングク「チョン・ミヨンを殺した犯人、今、外へ来ています。今日午後自首し、一次陳述は全て録音済みです」
課長「自首?」
イ班長「ユ警査!」

「…。」こちら側を窺うムヨンの真意を探るように、ジングクは彼を見つめた。

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ユリは署内の小さなスペースで、ソジョンと一緒に待っていた。

ソジョン「ユ課長があなたのことすごく考えてるの、わかってるわね?」

ユリは俯いたままうなずく。

ソジョン「あなたの発言一つで、ユ課長の立場が悪くなることもあるわ。だから、勇気を出して本当のことを陳述するのよ」

そこへチョロンが姿を見せた。「自首したっていうのは君か」

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ジングクは課長に携帯画面を見せていた。
ユリが外国人男性と戯れている動画が映し出されている。

ジングク「アメリカで中学に通っているとき、ユリがボーイフレンドとふざけて撮った映像です」
課長「…。」
ジングク「どういうわけかそれがチョン・ミヨンの手に渡り、それ以来1年以上、金品を要求されていたようです」
課長「…。」
ジングク「最初はバッグやアクセサリーを巻き上げる程度でしたが、チョン・ミヨンの父親の会社が不渡りを出した6月から要求がエスカレートし、事件当時は1億ウォンを要求されていたそうです」
課長「それでこの子が殺したって?」
ジングク「…。」
課長「僕が殺した、私が殺した。一体本当に殺したのは誰なんだ?」

「記者たちはどうする?」課長が苛立った様子で外を指差す。
「はい」イ班長が弱々しい声を出した。「急いで真偽を確認します」

イ班長「それまで情報が漏れぬよう責任を持って対処します」

「…。」イ班長は恨めしそうに隣のジングクを睨みつけた。

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ジングクが録ったユリの証言音声に、捜査員たちが皆で耳を傾けていた。

ユリ(音声)「車もバッグも売って… 売れるものは全部売りました。2000万ウォン渡して頼んでも、あぱずれだって… あんたみたいなのは口で言ってもわからないから、病院の掲示板を見ろって」
ジングク(音声)「病院ってハジン産婦人科のことかい?お母さんの病院?」
ユリ「はい。最初は病院のサイト、それから、みんなのグループチャット。あちこちに公開するって。ホントに死にたかった…。眠れなくて薬を飲んでたんですけど、ちょっと飲みすぎて…。暗くなってから起きたら警察が来て、ミヨンが死んだって。サンフンのことを訊かれたんです。恋人のチェ・サンフンが殺したんじゃないかって」

「だけどね、おじさん」ユリの話に聞き入るうち、捜査員たちの表情も暗く沈んでいく。

ユリ「それを聞いて… すごく嬉しかったんです。ミヨンが死んだんだから。最初は自分が殺したのかどうかもわかりませんでした」

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暗い取調室に一人取り残されていたムヨンは、入ってきたジングクを見て安堵の表情を見せた。「知った顔に会えて嬉しいな」

ムヨン「なんで今頃?」
ジングク「どうだ?被疑者としてここに座った気分は」
ムヨン「ひどいもんですよ」

ジングクは口元だけに笑みを浮かべた。「お前が殺してないことはわかってる」

ムヨン「なんだそれ。お前が殺したんだろうって、人をあれだけ締め上げておいて」
ジングク「ひどい気分だっていいながら、なぜ嘘をつく?殺してもいないのに」
ムヨン「…。」
ジングク「イム・ユリを庇ったって証拠でも残しておきたかったのか?」

「まさかぁ」ムヨンが苦笑する。
次の言葉を、ジングクはじっと待った。

ムヨン「早く終わらせたくて」
ジングク「…。」

「こんなことってないですか?」ムヨンが訊き返す。「考えすぎて… 頭を突き破って出てきそうになること」

ジングク「それで?考えはまとまったか」

ムヨンは困ったように笑い、首を横に振る。「答えが出ない」
彼の頭に染み付いていたのは、「全部ゲームなのか」というジンガンの問いかけだった。

ムヨン「バカだな。違うって言えば良かったのに」

うなだれるムヨンを慎重に観察すると、ジングクは一呼吸置いた。「イム・ユリが自首した」

ムヨン「…?」
ジングク「頭を捻ったところで、役には立たんってことだ」
ムヨン「…。」

※ムヨンの「違うと言えば良かった」っていうのは、普通に聞いていれば『ミヨンを殺したと自白したこと』に対する後悔。ジングクもそう受け取っているようですね。

ジングク「ユリがミヨンから恐喝されていたのは知ってるよな」
ムヨン「だいたいは」
ジングク「8月26日の夜、酔ったチョン・ミヨンを家まで送ったろ。事件の2週間前だ」
ムヨン「正確には27日です。0時を回ってたから」
ジングク「それ以降、チョン・ミヨンに会ったことは?」
ムヨン「ありません」
ジングク「そうか。イム・ユリによると、事件当日は一日中電話が繋がらなかったそうだが」
ムヨン「仕事で忙しかったんです。次の日、イベントがあったから」

※次の日のイベントっていうのは、スンアの展示会ですね。

ムヨン「仕事が終わって折り返したんだけど、繋がらなかったんです。帰ってからまた掛けたら…」

そのときはユリが電話を受けた。

ムヨン「薬を飲んだみたいでした。まぁそれはたまにあることで。だけど…」

「どこ?」ムヨンの問いに、ユリは小さく囁いた。「…ミヨンが戻ってきた」

ムヨンは電話を切り、雨の中、ユリのもとへ出掛けたのだ。
その道中…

ジングク「チョン・ミヨンが転落するのを見たって?」
ムヨン「見たんじゃなくて、音が聞こえたんです」

「嘘だ」ジングクはかすかに微笑み、懐から写真を出す。
付近車両の映像内に見つけた、ムヨンの姿だ。

ジングク「時間が合わない。2時34分、ヒューイット・ヴィラ裏の道路でお前が映ってた時間。チョン・ミヨンが転落したのは、正確に3時4分。そこからヒューイット・ヴィラまでは這っても3分で行ける」
ムヨン「27分のブランクですね」
ジングク「あぁ。そのときお前はもうチョン・ミヨンの家にいたってことだ。何をしてた?事が全て終わるのを黙って見守っていたのか」
ムヨン「…。」
ジングク「いずれにしても、薬を飲んでいたイム・ユリは、お前がいつ家に入って来たのか思い出せないだろう。チョン・ミヨンが転落したとき、お前がそこにいたのかどうか、殺人容疑が解けるのに決定的なのはそこだ」

ムヨンがキョロキョロと辺りを見回した。「何時ですか?」

ムヨン「10時過ぎたら、被疑者の同意なしに取り調べできないんですよね?」

ムヨンが立ち上がる。

ジングク「座れ」
ムヨン「同意しません」

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翌朝。
チョン・ミヨン殺人事件の新しい犯人逮捕のニュースが街を駆け巡っていた。
逮捕された犯人の家から凶器が見つかり、自供も得ているという。
決め手はブラックボックスの映像だったとニュースは強調していた。

職場でニュースサイトを見て、ジンガンは驚愕した。

ジンガン「!!!」

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昨日の逮捕以降の混乱を受けて、刑事たちは捜査会議を開いていた。

ファン捜査官「イム・ユリの記憶は途切れ途切れですが、供述には一貫性があり、これまでキム・ムヨンとイム・ユリ双方の供述に矛盾はありません。チョン・ミヨンの携帯電話からも同じ動画が見つかっており、チョン・ミヨンがイム・ユリにたびたび同じ動画を送っているのも確かです。先程入手した入出金記録によると、キム・ムヨンが現場に到着した時刻は、供述どおり3時以降である可能性が高いと思われます。また、現場に到着する直前の2時39分、近くのコンビニエンスストアで1550ウォンの決済を…」

ドアが開き、チョロンが入ってくる。

別の警察官「1550ウォン?」

「はい」席へ向かいながらチョロンが答えた。

チョロン「携帯を充電して、乳飲料を1本買ったそうです」
別の警察官「乳飲料?」
チョロン「はい。携帯を充電する間ずっとそこにいたかどうか、そこはまだ確認できていません」
ファン捜査官「今のところ、薬を飲んで潜んでいたイム・ユリがチョン・ミヨンを殺害、遅れてやって来たキム・ムヨンが現場を片付けたとみられます」
課長「共謀の可能性は?」
皆「…。」
課長「キム・ムヨンが単に証拠を隠滅しただけなら、我々は昨日完全に無駄足を踏んだことになる」
皆「…。」
課長「二人の関係は?つき合ってたのか?」
イ班長「いえ、そうではないようです。二人とも否定していますし」
捜査官「はい。二人の通話記録を見ても、事件後、二人の間で口裏を合わせた痕跡はありません」

チョロンが手にしているのは、キム・ムヨンの通話記録だ。
彼はそれを人知れずギュッと握りしめた。「…。」

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捜査課長の記者会見が始まっていた。

入り口で見守るソジョンの携帯が鳴る。
ジンガンからだった。「あぁ、ジンガン」

「ソジョンさん…」電話越しにジンガンの声が震えていた。

ソジョン(電話)「その声、どうしたの?」
ジンガン(電話)「ひょっとして、昨日逮捕された人って… 名前はキム・ムヨン?」
ソジョン「あぁ、ニュース見たのね。そう、キム・ムヨンよ」
ジンガン「本当に… その人、自分が殺したって?」
ソジョン「うん」

「だけどそれ、嘘みたい」ソジョンは会見場から遠ざかり、話を続ける。

ジンガン「嘘?!」
ソジョン「すぐニュースになるだろうから。それ、キム・ムヨンがやったんじゃないわよ」

「!!!」ジンガンは腰が抜けたようにその場に座り込んだ。

ジンガン「わかったわ。ありがとう、ソジョンさん」

電話を切ると、ジンガンはまるでやっと息を吹き返したかのように、大きく胸を撫で下ろした。

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「はい、代表にお伝えください」ムヨンはまだ留置場にいるものの、固定電話の使用を許されていた。「あぁ、ミンギュさんにも」
電話を切ると、ムヨンは「もう1件お願いします」と看守に願い出る。
電話使用記録書に電話番号を書こうとして…

『010-409…』

「…。」思い直して、彼はそれを線で消した。

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記者会見を終えた捜査課長たちは、案の定記者たちに追われていた。

記者「昨晩イム・ユリが自首したのをなぜ隠していたんですか!」
記者「なぜ発表が遅れたんですか!」

イ班長がジングクを捕まえる。「今度こそ絶対に許さんからな。必ずや辞職に追い込んでやる」

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会見場を最後に出ようとしたチョロンに、ファン捜査官が声を掛ける。「二人の通信記録、ピックアップしたか?」
「はい」チョロンがちょうど手に持っていたファイルに視線を落とした。

ファン捜査官「電話やメールの頻度が高い順に並べてあるよな?」
チョロン「はい」

ただ「はい」と答えるだけのチョロンに、ファン捜査官は怪訝な表情を浮かべた。「何だ、早くくれよ」

ファン捜査官「さっさと電話して、関係ないヤツを省いた参考人リストを作らないと」

「あ、はい…」チョロンは手に持った二つのファイルのうち、イム・ユリのリストを差し出す。

チョロン「キム・ムヨンの参考人は僕がリストにしてお渡しします」
ファン捜査官「そうか?」

ファン捜査官がすんなり受け入れて部屋を出ていくのを、チョロンは神妙な面持ちで見送った。「…。」
一人になると、チョロンは端の席に腰を下ろし、改めてキム・ムヨンの通信記録を開いた。

リストには、キム・ムヨンが通信した相手の電話番号と、通信回数が記されている。
その中に、見覚えのある番号があったのだ。
自分の携帯に打ち込んでみると、その人物の名前が自動的に表示された。

『010-409-0745 ジンガンさん』

チョロン「どうすりゃいいんだ、ホント…」

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ジンガンたちDESIGN & LOOKの3人は、仕事でARTS社へやって来た。
入れ替わりに出てきたのは、NJグループのチャン・セランだ。

ファン代表「チャン・セランだわ」

秘書が車のドアを開け、セランが乗り込むそばを、彼女たちは静かに通り過ぎた。

ファン代表「死んだ専務の持ち株、チャン・セランに移ったみたい」
イム代理「お姉さんですよ。妹じゃなくて」
ファン代表「そうなの?」
イム代理「チャン・セラン常務の方がお姉さん。何年か前に離婚して戻ってから、経営権を巡って骨肉の争いをした末に… 結局あんな形で勝ったんだわ」
ファン代表「弟が死んだのに、勝ったなんて思うかしら?」
イム代表「わかりませんよ。私たちとは人種が違うじゃないですか」

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「銀行から小切手の照会がありました」ARTS社を後にした帰りの車で、秘書がセランに告げた。

セラン「小切手?」
秘書「はい。キム・ムヨンに渡した小切手です」
セラン「なぜ?何か問題が?」
秘書「そうではなく… 彼がそれを匿名で施設へ寄付したようで。額面が大きいので、施設が銀行へ照会を」
セラン「10億寄付したって?!」
秘書「はい。ヘサンにある自明保育園といいまして、キム・ムヨンが15歳になるまで育ったところです」

「そうなの…」セランは静かに考えを巡らせる。
受け取った10億もの大金を、惜しげもなく全額寄付するとは…。

セラン「彼、最近はどうしてるの?」

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取調室にムヨンが呼ばれていた。
向き合っているのは、チョロンだ。

チョロンはムヨンの通信記録を本人の前に差し出す。
7番目の番号にチェックマークが書き込まれていた。

チョロン「知ってる番号でしょう」

「…。」ムヨンがリストから顔を上げ、チョロンを見る。

チョロン「僕ら、前に会ったことがありますよね。ジンガンさんの家の前で」
ムヨン「…。」

チョロンがジンガンにキスをしようとしたのを、後をつけていたムヨンが遮ったのだ。

チョロン「ジンガンさんがどうしてあんなに戸惑っていたのか、やっとわかりました」
ムヨン「…。」
チョロン「僕のみたキム・ムヨンさんは… ジンガンさんを困らせるか、危険な目に遭わせるか、泣かせるか…」

イム・ユリがジンガンを轢き殺そうとしたこと。
ムヨンを逮捕しようとしたとき、ジンガンが泣いていたこと。
これまでのことが一つずつ思い出される。

「もしくは」チョロンは通信記録のファイルを手に取る。「殺人事件の参考人にするか」

ムヨン「…。」
チョロン「資格がないじゃないか。少しでも誠意が残っているなら、これ以上ジンガンさんに連絡するな」

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DESIGN & LOOKの3人は仲良く飲みに出掛けていた。

ファン代表「さっきARTSへ行ったとき、チャン・セランがソンス洞に出すっていうパブの話、聞いたでしょ」

「はい!ANGELS TEAR!」ジンガンたちが元気いっぱいに答える。

ファン代表「そう、ANGELS TEAR!国内最大規模のパブ兼工房だそうよ。私たちのすべきことは?」
イム代理「絶対ゲットしないと!」
ファン代表「そう!気に入ったわ」

運ばれてきた酒で、彼女たちは乾杯する。
「彼氏よ、彼氏」酒の進むジンガンを指差し、ファン代表が囁いた。

ジンガン「彼氏?」
イム代理「いいんですよ~。実際、私だって彼氏に腹がたったときは、お酒に走りますから」
ジンガン「彼氏のせいじゃないですってば」
ファン代表「どうしたの?誠実なあなたの彼氏も、仕事に行き詰まってナーバスになってるとか?」
ジンガン「違いますよ~!内緒」
イム代理「かといって、男があまりに無難だと、面白くないですよね」
ファン代表「(イム代理を指し)こういう子が、一番安全パイと結婚するのよ」
ジンガン「安全パイってどんな人なんですか?」
ファン代表「それこそ私の専門分野よ」

若い二人が身を乗り出す。

ファン代表「安全パイっていうのはね、誠実にお金を持ち帰り、ルックス不相応で、有難いほど鈍感な男よ」
イム代理「何よ~、完全にブ男じゃないですか」
ファン代表「イケメンは自分がイケメンだってわかってるから。ブ男の方がいいのよ」
ジンガン「貧乏でイケメンで気難しい男は最悪ってことですね」
ファン代表「そう!うちにも一人いるわ。そういう男に出会ったら、問答無用で逃げなきゃダメ」
イム代理「もう~!好きで結婚なさったのに」
ファン代表「だからこそ私には断言する資格があるのよ。人はダメだとわかってても行ってしまうもの。行ってみて、気づいたときには、もう後戻りできないのよ」

ファン代表の言葉に、ジンガンは思わずフッと息をつく。

ファン代表「全部タイミングがあるの。後戻りできるなら、そのとき振り返らず走るのよ」

「わぁ~!すごい自信!」ジンガンたちは手を叩いて先輩を讃えた。

ファン代表「飲んで!飲みなさいよ」

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「遅いじゃないか」すっかり酔っ払って帰ってきた妹を、ジングクはやっとのことでベッドまで運んだ。

妹「お兄ちゃん、私、運動会で1等だったよね。走るたんびに1等のハンコをポンポンポン!」
兄「はぁ、小学生のとき貰ったハンコを忘れられないとは、どれだけ自慢するネタがないんだか」

「さっさと寝ろ」電気を消し、兄が部屋を出ると、ジンガンの顔からさっと笑みが消えた。

ジンガン「…。」

+-+-+-+

翌朝。

「ジンガン?」温かい飲み物のトレーを手に、ジングクは妹の部屋を覗いた。

ジングク「?」

昨夜遅く、ずいぶん酔って帰ってきた妹は、すでに姿がなかった。

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ジンガンは自転車を一心に飛ばしていた。

「人はダメだとわかってても行ってしまうもの」
「全部タイミングがあるの。戻れるうちに、振り返らず走るのよ」

前方の標識に、『ウォニョン警察署』の文字が見える。

「本当に… 俺には心がない思うか?」
孤独なムヨンの声が、感触が… 心の中でじわじわと膨れ上がっていた。

ウォニョン警察署の門の前で、ジンガンは一気にブレーキを握った。
キュッと鋭い音を立て、自転車が止まる。

ジンガン「…。」

警察署を出入りする人々が、朝から何人も目の前を通り過ぎる。
やっぱり…。
考えた末に、大きく溜息をつくと、ジンガンはクルリと来た道へ向き直った。

そこに立っていたのは…
チョロンだ。

チョロン「…。」
ジンガン「チョロンさん」
チョロン「ジンガンさん…」

言葉に窮し、チョロンは自転車を指した。「自転車に乗られるんですね」

ジンガン「えぇ」
チョロン「僕、ちょっとサウナに行ってて」
ジンガン「あぁ」
チョロン「ユ課長、呼びましょうか」
ジンガン「いえ、いいんです!土曜日だから、運動してただけで」
チョロン「えぇ。この間は夕食ご一緒できなくてごめんなさい」
ジンガン「いえ、いいんですよ。チョロンさんが忙しいの、知ってます。ニュース見たので」

「…。」二人は同時に口をつぐみ、俯いた。

チョロン「警察の仕事ってこんなものです。まぁ、そのうち終わりますよ」
ジンガン「…。」
チョロン「食事でもしましょう、仕事が一段落したら。映画も観に行って」

「えぇ」ジンガンはニッコリ微笑み、頷いた。
頭を下げ、少し自転車を押したところで、思い直してチョロンの前へ戻る。「チョロンさん!」

ジンガン「映画じゃない方がいいわ」
チョロン「?」
ジンガン「リストが100個あるって言ってたでしょう?その中で一番楽しいことをやりましょ」

いつになく積極的なジンガンに、チョロンは思わず笑った。「それなら…」

チョロン「海を見に行きましょうか」
ジンガン「いいわ!海!」

チョロンと別れ、ジンガンは自転車を押して歩き出した。
これでいいんだ。
心にそう言い聞かせながら。

+-+-+-+

ジングクが留置場へやってくると、中から出てきたファン捜査官が彼を呼び止めた。「ユ警査」

ファン捜査官「イム・ユリの令状審査、ユ警査が行かれますか?」
ジングク「そうしよう」
ファン捜査官「えぇ。で、どちらへ?イム・ユリは護送車に乗ってますけど」
ジングク「キム・ムヨンは?」
ファン捜査官「あいつの令状は棄却になりましたよ」
ジングク「棄却?殺してないにしても、証拠隠滅や犯人隠匿は確かなのに、実質審査もなしに?」
ファン捜査官「仕方ないですよ。検察が釈放しろって言ってるんですから。ヤツら、こういうときいつも言うじゃないですか、非拘束捜査の原則!ってね」
ジングク「それで?」
ファン捜査官「出て行きましたよ」

ジングクは呆れてそこに立ち尽くした。

+-+-+-+

ここで区切ります。
ファン捜査官、たまに口が悪いけど、ちゃんとした人で株が上がりました。

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