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空から降る一億の星(韓国版)あらすじ&日本語訳 3話後編

   

ソ・イングク、チョン・ソミン、パク・ソンウン主演、tvN韓国ドラマ【空から降る一億の星】、3話の後半、詳細なセリフの日本語訳を交えながら、あらすじを紹介していきます。

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「絶対あれだわ」指でストローを弄りながら、ユリが言った。
あの日、床に転がっていた小さなブロンズ像だ。

ユリ「変でしょ。私はミヨンの物だってことも知らなかったのに。だからそのままゴミ箱に捨てたんだけど… 考えてみたら、ミヨンが死んだ日の朝だった」
ムヨン「…。」
ユリ「ってことは、あの日サンフンが置いていったってことになるけど…」

そう言ってユリは考えを巡らせ、あちこちに目線を動かす。「私… 寝てて何の音も聞こえなかった」
ムヨンは何も言わず、彼女の目を覗き込んだ。

ユリ「どうしてかな。どうしてチェ・サンフンはあれを私のところに?」
ムヨン「… よく眠れたのか?あの日」
ユリ「?」
ムヨン「寝てたって言ったろ。最近は薬なしでも眠れるのか」
ユリ「そうよ。薬なんかとっくにやめたわ。ムヨンさんに出会ってすぐやめたでしょ」

「だよな」そう言ってムヨンはニッコリ微笑んだ。

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「名前はイム・ユリ」チョロンが改めて”生意気タトゥー女”について説明する。

ユリ「22歳で、チョン・ミヨンとはアメリカで同じ中学校に通ってました。チョン・ミヨンは3年前、イム・ユリはおととし帰国したんですけど、帰国後もよく会ってて、それなりに親友だったそうですね。今は近くのバンド練習スタジオに住み込みでバイトしてて、他には特に変わったことはないですけど…」

「どうしたんです?」深刻な顔のジングクに、チョロンが尋ねた。

ジングク「変わったことはない… か。何でもないさ。ちょっと気になることがあってな」

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ユリと別れて職場へやってきたムヨンは、トラックを止め、そこでひとしきり考えに耽った。

ムヨン「…。」

雨に濡れた黒い傘。
1502番のルームプレート。
廊下を歩いていく女のヒールの音。
高層階から見下ろしていると、黒い傘を差して誰かが出ていく…。

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アーツ社内を見て回っていたジンガンたちは、ふたたび鋳造機械の前に戻ってきた。
さっきはいなかったムヨンの姿がある。
「あれ?来られないかもって言ってたのに」ジンガンたちを案内していた女性スタッフのユジンが声を掛けた。

ムヨンは着ていたシャツを脱ぎ、タンクトップで作業をしていた。
露わになった彼の肩が、鏡に映っている。
ジンガンはハッとしてそれに釘付けになった。「!」

肩にひどい火傷の痕があったのだ。
自分の肩に上着を掛けてくれたあの日のこと…。
「火傷見るの初めて?」彼の視線を突っぱねたことが脳裏に蘇る。

ジンガン「…。」

ビールの出来についてスタッフと一言二言話すと、ムヨンが彼女の隣にやって来た。
「何見てんだ?」そう言って鏡を覗く。
「あぁ」自分の肩の火傷と、うつむくジンガンの顔を見比べた。「何見てんのかと思ったら」

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「お邪魔しました」レシピ開発のアトリエを素通りしようとしたジンガンを、ムヨンが呼び止めた。「味見するんだろ?」

ジンガン「…。」

「ください」ジンガンが渋々戻ると、ムヨンがビールサーバーの栓をひねった。
その間も彼女の目はムヨンの肩へひとりでに吸い寄せられる。

受け取った黒ビールを口へ運び、ジンガンはうなずいた。「美味しいですね」

ジンガン「やっぱりキル・ヒョンジュさんのレシピは凄い」
ムヨン「どうも。俺のレシピだ」

「あぁ」ジンガンは気まずそうにうなずく。「美味しかったわ」

ムヨン「イム代理はわざと帰らせたのか?」
ジンガン「?」
ムヨン「一人ずつ帰って、二人しか残ってない」
ジンガン「(うなずく)私も帰ろうと思って。一人二人と帰ったから… 」

「お一人で頑張ってください」ジンガンは頭を下げ、踵を返した。

ムヨン「俺はわざと残ったんだ。もともとヒジュンが当番だった」

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外へ続く重たい扉を開けた瞬間、ジンガンは驚いて立ち止まった。
いつの間にか雨が降っていた。

恨めしそうに空を見上げるジンガンの背中を眺め、ムヨンはそこを素通りする。
ジンガンは諦めて彼に声を掛けた。「すみませんけど」

ジンガン「傘、貸してもらえませんか」
ムヨン「あぁ、傘?」
ジンガン「…。
ムヨン「個人的なのはダメだから、公的なものにしないと」

ムヨンが入り口近くの棚を覗き込む。「公的な傘はないな」

ジンガン「何でもいいから貸してくださいよ。店に寄って傘買ったら、すぐ返しますから」

「ホントにないんだけど」そう言ってムヨンは外を覗く。「わぁ、だいぶ降りそうだな」

ジンガン「…。」
ムヨン「待ってて。車で送るから」

ムヨンはシャツを手に外へ出ていく。

素直に待っているのもシャクで、ジンガンはそこにあったダンボールを広げた。
これを傘代わりにすれば何とかいけるかもしれない。
出発しようとしたそのとき… 後ろから伸びてきた手が、彼女の腕を掴む。「!!!」
掴まれた反動で、彼女の体が強く引き戻された。

ムヨンが無言でダンボールを取り上げると、乱暴にそれを放り投げる。

ジンガン「…。」

#ジンガンはダンボールを手に取る前に、自分のバッグをその場に置いてますが… どこへ行くつもりだったんでしょう。

程なくしてトラックを彼女の前に止めると、ムヨンは窓を開けた。「乗れよ。話しかけないから」
そのまま窓をしめ、前を向いたまま、彼女が乗ってくるのを待つ。

ジンガン「…。」

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母が用意したペールピンクのワンピースを、スンアは手に持ったまま部屋から出てきた。

スンア母「着て見せてよ。どうしてそのまま持ってくるの?」

スンアは母の前に腰を下ろす。「話があるの」

母「そう?」
スンア「お母さん、私ウサンさんとは結婚しないわ。会長との食事にも行かない」

母は特別驚いた様子も見せない。「どうしたの?彼が行くなって?」

スンア「… え?」
母「最近会ってる男の子よ。知らないとでも思った?」

「上出来よ」驚くスンアを前に母は笑う。

母「やれやれ、男ってのは。待っていても結婚の”け”の字も出さないと思ったら、やっとワケがわかったわ」
スンア「…。」
母「だけど、ここまでよ。これ以上ウサンを怒らせないで。もうあの男に会っちゃダメよ」
スンア「お母さん、私本当にウサンさんとは結婚しないわ」

身を震わせるように、スンアは首を横に振る。「したくない」

母「嫌だからって別れられるほど簡単な男じゃないわ。怖い人なのよ」
スンア「!」
母「いいじゃない。男らしくて」
スンア「…。」

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途中でコンビニエンスストアに立ち寄り、ジンガンは傘を選んだ。
1本選んでレジへ持っていくと、後から入ってきたムヨンが傘をもう1本、そしてパンとコーヒーを追加する。「これも一緒に」

ムヨン「良心ってもんがないな。どしゃぶりなのに自分の分だけ買って」
ジンガン「…。」

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表のテラスでムヨンが携帯をいじっていると、買い物を終えたジンガンが出てくる。
2本の傘に、パンとコーヒーをテーブルに置き、ジンガンは彼を睨んだ。「何であーだこーだ文句つけるんです?」

ムヨン「?」
ジンガン「このあいだは子どもみたいに人をからかってばかりだと思ったら、今度はいきなり怒った振りして」
ムヨン「…。」
ジンガン「こんなふうに困らせるんなら、何で送るなんて言ったんです?」
ムヨン「タメ口で話せよ。お前こそあーだこーだ」
ジンガン「気楽に話せって。前みたいに」

小さく溜息をつき、ジンガンは腰を下ろした。「そうね」

ジンガン「そうするわ」
ムヨン「お前が先に話しかけたんだからな、個人的に」
ジンガン「ホントに子どもね」

ムヨンは降りしきる雨を見上げる。「あぁ寒い」

ムヨン「これみよがしに見せてたのに、最後まで知らんぷりだな」

「ショック受けんなよ」ムヨンは自分の肩の火傷に声を掛ける。「この女が変なんだ。他の女は違う」
そうして、テーブルの上着を掴んで袖を通した。「女には必殺技なんだけどな」

ムヨン「こんな火傷ごとき、何とも思わないってわけか」
ジンガン「女の子にそんなのが通用するって、本気で思ってるの?」
ムヨン「うん。”大変!いつからなの?痛そう~”」

ジンガンは呆れて笑う。

ムヨン「ほらな。”持てる者”は余裕だ」
ジンガン「火傷が何よ?生きてれば火傷することだってあるわ」
ムヨン「自分は一度も傷ついたことなんかない、あんたの期待するコンプレックスなんて自分にはない、そんな顔だな」
ジンガン「うん、ないわ。傷ついたことなんか」

「…。」ムヨンの頭の中にスンアの声が蘇る。”気の毒だわ。ジンガン姉が一番気の毒”
「そりゃよかった。傷なんてないなら」ムヨンは小さく言って、降りしきる雨に視線を移した。

ジンガン「ん?」

テーブルに置かれたムヨンの携帯が鳴り始める。
”スンア”と名前が表示されていた。

ジンガン「スンアだ」

画面を一瞥し、ムヨンは携帯の代わりに缶コーヒーを手に取る。

ジンガン「スンアだってっば。早く出なよ」
ムヨン「…。」
ジンガン「切れるよ」

電話が切れた。

ジンガン「何で出ないの?」
ムヨン「他の女といるから」

ジンガンは目を見張った。「他の女?」

ジンガン「… 私?」
ムヨン「…。」
ジンガン「わぁ、今まで聞いた中で一番呆れた」

ムヨンはただまっすぐ彼女を見つめるばかりだ。

ジンガン「気になるから訊くけど、一体どういうつもり?」
ムヨン「…。」

視線がただ混じり合ったまま、雨の音が響く。
ムヨンの心の中が見えず、ジンガンは彼の目をじっと見つめた。

ムヨン「一つずつ進もう」
ジンガン「一つずつ…何?」
ムヨン「進もうって、一つずつ。お前といると止まれなくなる。加速がつくんだ」
ジンガン「…。」

理解できず、ただ見つめるばかりの彼女の大きな目を、ムヨンは覗き込んだ。「お前の目…」

ムヨン「… えらく気に障る。ムシャクシャして何かせずにはいられなくなるんだ」
ジンガン「…。」

ようやく視線を外し、どこか困ったように下を向くと、テーブルの物を片付ける。
「ほらな。またムシャクシャさせる」戸惑う彼女を残し、彼は立ち上がった。

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すっかり暗くなっていた。
ゴミの回収袋を手にジングクが家を出てくると、トラックが近づいてきて止まった。
助手席から妹が下りてくる。「!」

ジングク「どうした?」

「刑事さん、こんばんは」運転席からムヨンが顔を覗かせ、笑みを見せた。

ジングク「おぉ。… おぉ」

トラックが走り出し、ジンガンがサッサと家へ向かう。

兄「何だよ?何で一緒なんだ?」
妹「やっと着いた~」

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「だから!」家へ入ってからも、ジングクは妹に詰め寄った。「何であの車から降りてきたんだよ?」

妹「今日ビールメーカーに行ってたの。アーツっていう有名なクラフトビールの会社よ。うちの会社でそこのデザインすることになったの。あの人はそこで働いてる」

「これでいい?」手早く説明して、ジンガンはクルリと背を向ける。

兄「アーツ?そこであいつ何してんだ?」
妹「ビール作りの助手」
兄「お前」
妹「?」
兄「あいつと関わるな」
妹「関わるも何も。心配しないで、あの人スンアと付き合ってるんだから」
兄「スンア?キム・ムヨンがスンアと付き合ってるって?」

ジンガンはさっと人差し指を唇にあてた。「黙っててよ」

兄「…。」
妹「あぁ、言うんじゃなかった」

言いしれぬ不安に、ジングクは立ち尽くした。
気に掛かっていた青年が捜査中の殺人事件と繋がったと思ったら、今度は妹からも繋がったのだ。

#兄がムヨンのことを名前まで知ってることにジンガンは驚きませんね。疲れてるのかな。

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ムヨンを執務室へ呼ぶと、チョン代表はウサンを彼に引き合わせた。「前に紹介したでしょう?チャン・ウサン専務」
「…。」ムヨンは黙って頭を下げる。

チョン代表「専務がムヨンさんにスペシャルレシピを依頼したいって」
ウサン「小さなイベントだから気負いせずに。結婚記念ビールを作ってもらいたいんです。キム・ムヨンさんに」
ムヨン「…。」
チョン代表「お相手はうちのビールがお好きだそうだ。あぁ、一度一緒にお越しください。好みがわかればムヨンさんも構想しやすいでしょう」

「…。」ウサンがムヨンの反応を窺う。
「いいアイディアですね」ムヨンは爽やかに微笑んだ。「そうしてくだされば」

ウサン「日を決めておきます」

頭を下げ退室するムヨンを、ウサンは静かに目で追った。「…。」

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「チェ・サンフンだ、俺はチェ・サンフンだ」チョロンは自分に言い聞かせながら、PCを睨んでいた。
モニターに表示されているのは、チェ・サンフンの写真資料だ。

ジングク「何ブツブツ言ってんだ?」
チョロン「心理的プロファイリングをしてるんです」

ジングクはニヤリとしてチョロンの耳を引っ張る。「プロファイリングの綴り知ってんのか」

チョロン「知ってますよ。P.R.O.F…」

ジングクの視線がPCに向かう。「おい、さっきの写真、見せてみろ」
チョロンが一つ前の写真に戻す。
トランクの蓋を開け、中に詰まった荷物を撮ったものだ。

ジングク「スノーボール?」

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倉庫へ直行したジングクは、実物のトランクを開けた。
写真そのままに中身が詰まっている。

写真にチラリと覗いていた箱は、やはりスノーボールだった。

ジングク「…。」

彼はそのスノーボールを手に、留置室に拘留されているチェ・サンフンを訪ねた。「気になることがあってな」

ジングク「プレゼントするつもりで買ったんだな。死んだ彼女、スノーボールが大好きだったろ。家にすごいコレクションがあった」

「これ、どこにあったと思う?」ジングクはスノーボールの箱を開けた。

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トラックを降りて、ムヨンは電話を掛けた。「着いた。今、家の前」
「ムヨンさん?」聞き覚えのない声が聞こえてくる。

ムヨン「!」

「車から降りることなかったのに」電話の声はそう続ける。
ムヨンの視線の先に、防犯カメラが赤く光っていた。

「スンアの母親です」防犯カメラの映像を見つめながら、スンアの母は言った。「うちの娘は行かないわ」
「お母さん!」やって来たスンアが驚いて声を上げる。
母親がスンアを制した。

スンア母「(ムヨンに)義父母になる方々へのご挨拶で、すごく忙しいの。何が言いたいかおわかりね?ムヨンさんの番号は消すわ。そちらもそうしてくださいな」

電話が切れる。母はムヨンの番号を削除し、娘を睨みつけてその場を離れた。

スンア「!!!」

防犯カメラの映像の中で、ムヨンがじっとこちらを見上げているのが見えた。

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ジングクは戻ってきたイ班長を呼び止めた。「話がある」

ジングク「チェ・サンフンだが… 明日、このまま検察に引き渡すのか?」
イ班長「要請だけはしよう」
ジングク「どう考えてもチェ・サンフンは違うと思うんだ。まだ確証もない。もう少し捜査してから引き渡したほうが、うちのチームにとってもいいと思うんだが」

「チーム?」イ班長が嘲笑を浮かべる。「思ったより早く捕まったのが気に食わないのか」

ジングク「…。」
イ班長「だからあんたはうちのチームじゃないって言ってるんだ」

「でしゃばってないで、自分の仕事を続けろよ」イ班長が背を向ける。

ジングク「状況証拠は状況証拠だ。確証じゃない」

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デスクへ戻り、ジングクは書きかけの告訴状を手に取った。
被告の欄に「オ・バルン」とある。例のスクーター盗難の一件だ。

ジングク「…。」

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ペールピンクのワンピースに身を包み、スンアが家を出てきた。
まるで心が死んでしまったように、その目に生気はない。

迎えの車の扉が開くと、母が彼女を呼び止めた。「笑いなさい」

スンアを後部座席に乗せ、車は出発した。

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「今日はまた何を調べてるんです?」警察官が覗き込む。
ジングクがいるのは、各地の防犯カメラ映像があつまる監視室だ。
彼はそこで防犯カメラの映像を調べ直していた。

ジングク「自分のスクーターを失くしたからって他人のを盗んだヤツがいるんだが、自分のも探し出せとさ」
警察官「そりゃまた。(映像を見て)これ、37-4番地だな。バイクを止めても、防犯カメラもない死角だ」

「だよなぁ」ジングクがうなずく。
と次の瞬間、ジングクが一時停止ボタンを押した。

一人の男が画面手前から傘を差して歩いてくる。
ゆっくりと奥へと歩き、男はそのまま通り過ぎた。

警察官「ハズレだな」

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車の窓から、スンアは流れていく景色をぼんやりと見つめた。
夕暮れ時。
街並みはほんのり赤く染まっている。

”お前が一番可愛いのはどんなときだと思う?” ウサンの声が甦った。
”こんなものいらない、私は違う、少なくともあんたたちみたいな俗物じゃない、そう思ってるときだ”

「!」スンアの目が険しくなる。

”そう、その顔!可愛いな”
”けど、お前はそれじゃ生きられない。俺と同じ俗物だから”

信号が代わり、車が急に止まった。
スンアの体が前後に揺さぶられる。「!」

スイッチが切り替わったように、今度はムヨンの声が蘇る。
”ホントにやりたくないんですか。そんなにイヤならやらなきゃいいのに、そんなに難しいことかな”
”実際はやりたいんだろ”ムヨンの目はそう彼女を挑発していた。”そうだろうな”

「違うわ」スンアはひとりでにそう呟いていた。
車のドアを開いて外へ飛び出すと、彼女は夢中で駆け出した。

#このシーンとてもイイ。急ブレーキで体が揺さぶられたことが、心を揺さぶられることとリンクしていて、脚本うまいなぁと。彼女の表情の変化もイイ!

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帰宅したジングクは、慣れた様子で妹のサンダルを揃え直した。
ノックし、部屋を覗く。
「おかえり」デスクに向かったまま、妹は振り返りもせずに言った。「ご飯いらないから」

「忙しいのか」デスクいっぱいに広げた資料を、兄が覗く。「何だ?これ」

妹「明日までにCI終わらせないと」
兄「CI?」
妹「うん。アーツのロゴを替えるから」
兄「あぁ、そうなのか」

※CI=コーポレート・アイデンティティ(Corporate Identity)。企業の理念に沿ってイメージを統一すること。その一部であるビジュアル(ロゴやシンボルマーク)のデザインを指すこともあります。

「まるでキャリアウーマンだな」壁のボードに貼られたロゴデザインを眺めるうち、ジングクの視線が一点で止まる。「?」
あるロゴに、彼は吸い寄せられるように近づいた。
そのロゴに見覚えがあったのだ。

そう、さっき見た防犯カメラの映像だ。
とおりかかった男の傘に、同じロゴがキラリと光っていた。

#ジングク兄さんは、何かに気づいたのときの「ハッ」とした顔が絶妙だよね。時間が止まったようになって、こっちもハッとする。

兄「これ… これ何だ?」

「なぁ」反応のない妹の肩を、ジングクはトントンと叩いて催促する。「これ何だよ?」

妹「あぁ、グッズよ」
兄「グッズ?」
妹「夏のビールフェスティバルのとき、アーツで作ったグッズに使った絵」

「…。」ジングクはさらに食い入るようにロゴに見入った。

妹「あるでしょ。お客さんに配る傘とかコップみたいなの」

「傘?!」驚いた拍子に手がジンガンに当たり、彼女の持っていたカードが床に散らばった。
1枚に1色ずつ色がついた、配色カードだ。

兄「ありゃりゃ」
妹「お兄ちゃん!ホントに忙しいんだから!」
兄「拾えばいいだろ」

ジングクが拾い集めようとするのを、ジンガンが止めた。「ダメよ、適当にやっちゃ」

妹「順番どおりに並べなきゃ。色別に1枚ずつちょうだい」
兄「全部色別に?」

カードの入っていた箱に、色のリストがついている。
言われたとおり妹にカードを手渡しながら、ジングクは口を開いた。「アーツって言うと、キム・ムヨンが働いてるところだよな」

妹「あぁそうだ!キム・ムヨン。あの人ならこれ、1分で終わるのに。いつになったら終わるかな」
兄「1分で終わるって何が?」
妹「スンアが言ってた。天才なんだって。このあいだスンアのブレスレットが切れて石がバラバラになったのを、あの人が直してくれたって」

「それがね」ジンガンが顔をあげる。

妹「後で見てみたら、最初と全く同じだったんだって」
兄「何?」
妹「本当よ。20個以上も石があったのに」
兄「…。」

また彼の中で点と点が繋がる。
次の瞬間、彼は駆け出していた。

妹「お兄ちゃん!」

#ブレスレットを前と同じ順番で繋いだこと、スンアがジンガンに話す場面はなかったですよね。(訳したそばから忘れるから、あったらすみません)そういうやり取りがあらかじめないと、どうしても引っかかってしまう…。

被害者のチョン・ミヨンがコレクションしていたスノーボールは、彼女が犯人と争ったときに一度ひっくり返ったものの、キレイに血が拭き取られ、元通りの順番で棚に戻されていた。
チョン・ミヨンと親しかったイム・ユリは、キム・ムヨンとも繋がっている。
事件当日スクーターが盗まれた付近の防犯カメラに、キム・ムヨンの勤めるアーツ社が参加したビールフェスティバルの傘を差した男が映っていた。
そして、キム・ムヨンは一度見れば覚えてしまう、天才的頭脳の持ち主だ……

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署に駆け戻り、ジングクは壁の写真を凝視した。
ここに立っていたムヨンの姿が蘇る。
あのとき、ムヨンは言った。「殺人犯を見ていた」と。
その視線の先にあったのは……?

鏡に映った自分を見つめるうち、ジングクは愕然とした。「!!!」

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ムヨンが会社の前へ戻ってくると、誰かがそこに小さくしゃがみこんでいた。
スンアだ。
「…。」ムヨンが黙って覗き込むと、彼女は最初に否定する。「違うわ」

スンア「そんなんじゃない。本当にやりたくないの」

「…わかってる」ムヨンの目は静かで、そこからは何の感情も窺えない。
彼は立ち上がると、スンアに手を差し出した。
立ち上がった彼女を、ただ穏やかに抱きしめる。
彼の腕の中は暖かくて、凍ってしまった心が溶け出していくように感じられた。

そして…
無機質で冷たい機械に囲まれ、そこで二人は結ばれた。

+-+-+-+

夜が明け、まだ薄暗いうちにムヨンは家へ帰ってきた。
階段を上がり、部屋のある屋上へたどり着いたところで、彼は足を止める。

ムヨン「刑事さんか」

ジングクがそこで待っていた。

ムヨン「ここで何してるんですか」
ジングク「お前を待ってたんだ。他に何がある?」
ムヨン「なぜ?」
ジングク「このあいだ訊いたよな。自分のせいで人が死んだら、どんな気分かって」
ムヨン「…。」
ジングク「今度は俺が訊こう。人を殺すとき、どんな気分だった?お前は」

「…。」二人の視線が静かにぶつかりあった。

+-+-+-+

ここでエンディングです。

すっごくステキなシーンだったけど、初めてで工場はちょっと心配(笑)
そして、台の上にヒョイと持ち上げられたスンアが超軽そうだった(笑笑)

 - 空から降る一億の星

Comment

  1. *kirakira* より:

    #ジンガンはダンボールを手に取る前に、自分のバッグをその場に置いてますが… どこへ行くつもりだったんでしょう。 ← コンビニですww 傘買って戻ってくるつもりで〜 おそらくそれほど遠くない所へコンビニがある設定だったでしょうね

    いつも素敵なレビュー本当にありがとうございます

  2. yujina より:

    >*kirakira*さん

    ありがとうございます^^

    >コンビニですww

    やっぱりそうですよね~^^;

    「携帯だけ持ってれば決済できるしなぁ」とか、
    「でも、コンビニで傘買って戻ってくるのは傘を借りた場合であって、ダンボールで行くなら戻ってくる必要ないよなぁ」とか、
    「いや、バッグが濡れるのが嫌だから、そのために傘買って戻ってくるつもりだったのか?」とか、
    いろいろ悩みましたw

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