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マンホール-不思議の国のピル10話あらすじ&日本語訳vol.2

   

ジェジュン(JYJ)、ユイ、チョン・ヘソン、バロ(B1A4)出演のKBSドラマ『マンホール 不思議の国のピル』10話レビュー、後半です。

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ソクテの率いるチームは別の現場へ移っていた。
『工事中』の黄色い柵で囲まれているのは、トンネル前のあのマンホールだ!

職人がマンホールの蓋を開ける。

ソクテ「入っていただいて、中の状態を確認してください」

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「残念だわ」チョンエたちはレンタルDVD店の前まで帰ってきた。「時間さえあれば、あそこのウェディングドレス全部着るのに」
店の前に停まっている車を見て、タルスがドキリとして立ち止まる。「あっ」

チョンエ「どうしたの?」
タルス「チョンエ、どこかへコーヒーでも飲みに行こうか」
クギル「金の無駄だろ。店の前まで来て何がコーヒーショップだよ?店で飲めばいいだろ」

「行こう、早く」タルスがチョンエの腕を引っ張ったそのとき、車のドアが開いた。
下りてきたのは、若い男性だ。「お坊ちゃま」

タルス「!」

続いて後ろのドアから熟年の女性が下りて来ると、タルスを見て溜息をつく。「…。」
チョンエとクギルが不思議そうに二人を見比べた。

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訪ねてきた女性… タルスの母を店へ招き入れ、タルスとチョンエは正面に並んで座った。

タルス「電話でもしてから来てくださらないと」
母「電話すれば会えるの?」
タルス「僕の生活をご覧になったなら、もうお帰りください。週末家に寄りますから、そのとき話しましょう」

母親の視線は隣りにいるチョンエに向かう。「お嬢さん」

母「初対面で失礼だけど、とても美人ね」
チョンエ「ありがとうございます」
母「息子の教育が悪くて、お嬢さんにも迷惑を掛けたわ」
チョンエ「いいえ!タルスさんは私にすごく優しくしてくれ… くださいます」
母「優しくしているなら幸いね。だけど、この子はここにそう長くはいないわ。家に戻らなければならないの」
チョンエ「!」
タルス「帰るだなんて!ここが僕の家なのに、どこへ帰るんです?」

タルスの母が呆れたように眉間にしわを寄せた。

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クギルは外で懸命に中の様子を覗いていた。
後ろで運転手が静かに待っている。

クギル「どなたなんです?」
運転手「奥様ですか?お坊ちゃまのお母様です」
クギル「お坊ちゃま?タルスがですか?」
運転手「えぇ。会長の末のご子息でいらっしゃいます」
クギル「か、会長?!」

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「お嬢さん」タルスの母は続けた。

タルス母「申し訳ないけれど、あなた方に縁はないわ。我々に歓迎されない関係なの。だからこのまま手放してくださいな。掴まえていたところで、決して手に入らないから」
タルス「母さん、チョンエが母さんにそんなことを言われる筋合いはありません」

「お帰りください」タルスがチョンエの手を握る。「僕ら二人はあの家に歓迎されなくて結構です」

タルス母「あの家ですって?」
タルス「えぇ、あの家」

母は話を打ち切り、立ち上がった。

タルス母「(チョンエに)突然訪ねてきて悪かったわ。だけど、私の言ったことを忘れないで頂戴、お嬢さん」
タルス「!」
タルス母「商売をしている家に嫁いで長いから、守れない約束はしないわ。どんなに掴まえても、この子は決して手に入らないの」
チョンエ「…。」
タルス母「申し訳ないけれど、愛は気持ちだけじゃ成就しないのよ」

最後に息子をキッと睨みつけ、母は店を出て行った。

#ここは”いかにもな母親”を持ってくる必要があったのはわかるけど、ひたすらチョンエにばかり矛先が向かってたのはどうかと思うよ

「驚いたろ?」凍りついてるチョンエの手を、タルスは優しく握った。「大丈夫だ。気にするなよ」
「…。」チョンエが頑なに手を引き抜く。

タルス「!」
チョンエ「…タルスさん、誰なの?」
タルス「誰って、君のシニカルな同業者かつ同棲相手だよ」
チョンエ「…。」
タルス「大丈夫さ。チョンエ、大丈夫だって」

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来たときのペアルックに着替え、ピルとチンスクはスタジオの1階へ下りてきた。

スジン「二人ともお疲れ様。今日はゆっくり休んでね」

「まだ予定が一つ残ってるの」そう言って、チンスクはチラリとピルを見る。「婚姻届を出しにいかなきゃ」

ピル「え?お、おい、結婚式もまだなのに婚姻届出す人がいるかよ」
チンスク「(じろり)」
ピル「今日はここまでにしよう」
チンスク「イヤ」
スジン「わぁ、すごい推進力ね。一瀉千里(=物事が速く捗り、よどみがない)だわ」
チンスク「そうじゃなきゃダメなのよ。私、不安症だからさ。何ていうか、仕事を終わらせてしまわないと気がすまない、そういう不安感?」

二人を見比べて、スジンはふぅっと息をついた。「それは二人で解決してもらって…」

スジン「さぁ、帰って!」
チンスク「(笑)帰るわよ。スジン、今日はありがとう」
スジン「いいの、おめでとう」

「ピル」チンスクは指先でちょんとピルの胸をついた。「あんたはついて来な」

ピル「(ヤケクソ)あぁ、出そうぜ、婚姻届」

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二つ並んだ公園のベンチに、クギルとタルスが座っていた。
「あぁ!」クギルが苛立ちを押さえられず、立ち上がる。「お前、誰なんだよ?」

タルス「…。」
クギル「俺たち中学ん時からずっとつるんでたよな。それなのに、お前が誰なのかマジでわかんねぇ」
タルス「俺はタルスだ。お前の知ってるタルス」
クギル「あぁ、お父さんは地方で公務員をなさってて、家庭の事情でソウルへ出てきて一人暮らししてる、あのタルスか。それとも、とんでもない金持ちの末の坊っちゃんのタルスか?」
タルス「あの家が嫌で、ここへ出て来たんだ」
クギル「…。」
タルス「クギル、やめようぜ。俺、ただでさえ混乱してんだ」
クギル「そうだろうよ。チョンエのショックを考えたらな」
タルス「…。」
クギル「なぁ、チョンエは好きだって気持ちさえあれば愛が成就すると思ってたはずだ。それなのに、お前のせいでそれが壊れちまったんだ」
タルス「そんなことないさ!」
クギル「お前、チョンエの幸せを願ってるか?」
タルス「!」
クギル「それならもう手を引け」
タルス「…。」

「お前の家に帰るんだ」そう言い捨て、クギルは足早に立ち去った。

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作業を終え、ソクテは役所へ戻ってきた。
「あぁソクテさん」ロビーで同僚が彼を呼び止める。

同僚「あそこは排水不良でもないのに、どうして詰まったんだ?」
ソクテ「マンホールの蓋を開けてみたら、中がタバコの吸殻で一杯だったんですよ」
同僚「タバコの吸殻?」
ソクテ「はい。最近どこも禁煙だから、みんな路地まで出てタバコを吸うみたいで」
同僚「困ったもんだな」
ソクテ「まぁ、明日には終わりそうです。この機に町の下水管とマンホールを全部無くしてしまいたいくらいですよ」
同僚「ソクテさんが入ってから民願処理が早くなったって、上じゃみんな喜んでるよ」
ソクテ「本当ですか?」
同僚「頑張りなよ」

「ありがとうございます」振り返ったところで、ソクテの目の前をピンク色のカップルが通り過ぎた。「!」

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窓口の前に並ぶ順番待ちの椅子にチンスクたちが座るのを見て、ソクテが声を掛けた。「お前らどうしたんだ?」

チンスク「婚姻届出しに来たの」
ソクテ「…。あぁ、そうか」

チンスクが嬉しそうにピルの顔を覗く。

ソクテ「あっちでやろう。手伝ってやるから」
ピル「公務員はどうだ?なっただけのことはあるか?」
ソクテ「ああ、まぁな」
ピル「そうか。頑張れよ」

#おまえががんばれ

ピル「いつかは現実になるさ」
ソクテ「え?」
ピル「あ… 何でもない」

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ソクテが婚姻届の用紙を持ってきて、二人に差し出した。「まずはこれに記入して、家族関係証明書だけ発給してもらえばいい。あっちにあるけど、一緒に行こうか?」

チンスク「ううん、ありがとう、ソクテ。忙しいんだから仕事して」
ソクテ「友だちなんだから、こんなときは手を貸すもんだろ」
ピル「(婚姻届を指し)手を貸してもらうほど大したもんじゃないぞ」

「…。」冷たい空気が走ったことに、気づかないのはピルだけだ。

チンスク「ピル、あんたはこれ書いてて。私は必要な書類を取ってくるから」

チンスクは立ち上がってソクテと一緒に歩き出した。

ピル「(書類を見て)こんなもの…。さてと、妻の姓名はユン・ジンスク。漢字は…。電話番号は010…。生年月日は1990年… 何月だっけ?」

#昨日じゃん!(過去だけど)

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いくつか自動書類発行機が並んでいるところに、チンスクとソクテはいた。

チンスク「一人でできるのに」
ソクテ「いいよ。俺がしてやるから」

ソクテが慣れた様子でタッチパネルを押す。
あっという間に下から書類が出始めた。

チンスク「おおっ、いい時代ね。楽だわ」
ソクテ「お年寄りには難しいらしい。毎日ここで教えてるんだ」
チンスク「今みたいに?」

ソクテは優しく微笑み、プリントの終わった書類を差し出した。「ほら」

ソクテ「これでホントにお前ら家族になるんだな」
チンスク「(うなずく)」
ソクテ「ピルは…優しくしてくれるか?」
チンスク「(うなずく)お互いによくわかってるから、気楽よ」

「…そうか」ソクテは寂しそうに呟いた。

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ピルは書類と懸命にニラメッコをしていた。
そこへチンスクたちが戻ってくる。「全部書けた?」
彼女は隣に腰を下ろし、書類を覗いた。「自分のだけ書いたの?」

ピル「いや、その…」

いや、その… に繋げる言葉が見つからず、ピルはただチンスクを見た。「…。」

チンスク「あんたまさか私の電話番号も誕生日も知らないの?」
ピル「…。」

「書いてやるよ。貸してみな」ソクテが書類を受け取った。

ピル「…。」
チンスク「…。」

スラスラと書き終わり、婚姻届を差し出すと、ソクテは硬い表情で二人を見た。
書類にはチンスクの漢字や電話番号、生年月日、住所がきちんと書き込まれている。
チンスクに睨まれ、ピルは俯いた。「思い出せなくて…」

#「9」の書き方がすごい個性的だね。ピルの誕生日は5月19日?住所がオシャレ♪
ピルの名前は”筆”だったのか!そして、チンスクの家って今どこなの?

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役所の外で待っていると、チンスクが出て来た。

ピル「お前、ホント疲れてるみたいだぞ。うちへ帰ろう」
チンスク「ピル、帰る前にちょっと寄りたいところがあるの。あんたと行きたいのよ」
ピル「?」

チンスクは先に歩き出した。

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「わぁ!」ピルが感嘆の声を上げた。「ホント久しぶりだな、学校」
二人は母校の高校のベンチでグラウンドを見下ろしていた。

ピル「でも、何で急に学校に来ようって?」
チンスク「ピル、考えてみたら、私ホントに長い間あんたのこと好きだったんだよね。ただいい友だちのまま、そばに残れればいいと思ってたけど、今となっては後悔してる。”あんたのことが好き”さっさと言えばよかったって」
ピル「…。」

チンスクが向こうを指差した。「校門、見える?」

チンスク「校門の前で、初めてあんたのこと好きになったの」
ピル「俺、校門で何したっけ?」
チンスク「思い出せない?」

「?」ピルがキョトンとしてチンスクを見る。

校門の前。
そこは、チンスクが思いがけなくピルの優しさに触れた場所だ。
他の生徒たちに後ろ指をさされながら廃品を集めている祖母に、チンスク自身も声を掛けられなかったのに、ピルだけは人目も気にせず手伝っていたのだった。

#ここのピルは元々何度もリピったくらい好きだけど、今ここで見たら泣けてきた。

ピル「あぁ」
チンスク「初めてだった。涙が出るほど誰かに感謝したのは。それで、私もあんたにとって有り難い人にならなきゃって」
ピル「お前ん家のおばあちゃん、俺のことホントに気に入ってたからな」

「ピル」チンスクが静かに言う。「私、すごくあんたのことが好き」
「だけど」チンスクは前に向き直った。「初めて好きになったこの場所で、あんたへの気持ちを終わらせなきゃ」

ピル「…?」
チンスク「私たち、結婚はやめよう」
ピル「…チンスク?」
チンスク「おばあちゃんが言ってたわ。女は自分を愛してくれる男と出会ってこそ一生幸せになれるって」

「けど」チンスクは少し恨めしそうにピルを見た。「あんたじゃ不十分だわ」

ピル「…。」
チンスク「後で離婚するよりマシだと思って。離婚したら愛も友情も失って、私たちには何も残らないわ。そうじゃない?」
ピル「…。」

「…。」チンスクはバッグを開け、丁寧に折りたたんだ書類を出した。
”提出しなかった”婚姻届だ。

ピル「!」

それを少し眺めると、チンスクはそれをひと思いに破った。

ピル「あ…」
チンスク「私、人妻になる心の準備が出来てないみたい。そのかわり、見てなさいよね。私がどんなに素敵な男の人に出会うか。あんた、そのうちすごく後悔するはずよ。私みたいな女を逃したこと」

まっすぐに前を向き、チンスクは大きく一つ、息をつく。
チンスクの突然の決心に、ピルはただ黙って彼女の横顔を見つめることしかできなかった。

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同僚たちが皆帰宅してからも、ソクテは一人、デスクに残っていた。
頬杖をつき、ボンヤリと資料をめくる。「…。」
しきりに思い出されるのは、昼間のチンスクのことだ。

~~~~

ピルを外で待たせておき、チンスクはソクテに先導されて窓口へ向かった。
「これ、受理をお願いします」ソクテが係に差し出した婚姻届を、チンスクは慌てて取り上げたのだ。「待って!」

ソクテ「どうした?」
チンスク「やっぱりダメだわ」
ソクテ「何だよ?急にどうしたんだ?」

「私、帰るね」チンスクはそのままクルリと背を向けたのだった。

~~~~

ソクテ「…。」

彼女に電話してみるも、繋がらない。
「…。」ソクテは上着とカバンを掴み、立ち上がった。

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チンスクは客のいないボンボンホップのカウンターで、一人酒を飲んでいた。

#何を飲もうと勝手だけど、こういうときに飲むのはビールじゃない気がする(笑)

朝、ピルのベッドを片付けたとき、枕元で見つけたスジンからの手紙が思い浮かぶ。
『訓練兵ポン・ピル、元気にしてる?…』

ウェディング撮影のとき、スジンの手を握っていたピルの真っ直ぐな目…。
それは自分に向けるそれとは違っていた。

チンスク「…。」

そこへ携帯にメッセージが入る。
昼間撮影した写真を、スジンが送ってきたのだ。『今日撮った中で、一番うまく撮れた写真よ。いつもこうやって笑っててね。愛してるわ』

チンスクは声を上げて泣いた。
そこへ、入ってきたのはソクテだ。「チンスク!」
彼は驚いて彼女の隣に腰を下ろす。

ソクテ「どうしたんだよ?婚姻届も出さないで。何で泣いてるんだ?」
チンスク「ソクテ、今日は何も言わずにそばにいて…」

彼の胸で泣きじゃくるチンスクを、ソクテはただ黙って受け入れた。

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スジンは一人アトリエでPCの画面を見つめていた。
画面の中に、笑っているピルとチンスクがいる。
改めて二人を眺めてみて、スジンはふっと微笑んだ。
拡大して、さらに二人にじっと見入る。「…。」

携帯を手に取ると、彼女はピルにメッセージを打ち始めた。

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ピルは一人、すっかり暗くなった通りを歩いていた。
そこへ着信音が鳴る。「?」

スジン(メール)「ポン・ピル、あんたといるチンスク、すごく幸せそう。いつもチンスクを幸せにしてあげてよね^^」

ピルは大きく溜息をついた。「マンホールを通れば通るほどこじれるな…」

ピル「何がどうなってるのか、もうさっぱりわからないや」

彼はスジンへの返事を打ち始める。『スジン、俺、チンスクと別…』
そこまで打って、手が止まる。

ピル「…。」

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帰宅しようと外へ出たところで、スジンの携帯がピンポンと鳴った。「?」

ピル(メール)「スジン、お前も幸せにな^^」

「…。」スジンは大きく息をつくと、笑顔で歩き出した。

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薬局のカウンターで仕事をしているジェヒョンに、先輩薬剤師が声を掛けた。「早く終わらせて帰れよ」

ジェヒョン「もう終わります。気をつけてお帰りください」
先輩「あぁ、休暇はどこへ行くか決めたのか?」
ジェヒョン「家でゆっくりしようかと」
先輩「いやぁ、独身はいいなぁ。妻子持ちは家にいるのも仕事だ。休暇の前に一杯やろうな」

先輩薬剤師が退勤すると、入れ替わりに男がふらりと入ってくる。
黙って処方箋を差し出すと、男は定まらない視線でジェヒョンを見た。「…。」

ジェヒョン「お客様」
男「何だ?」
ジェヒョン「これでは処方できません。もう一度病院へ行って、処方箋を持ってきてください」
男「何言ってんだよ。処方箋はここにあるだろ」
ジェヒョン「これはコピーなさったものでしょう」
男「病院で貰ったのをそのまま持ってきたんだ。ごちゃごちゃ言ってないで薬を出せ!」
ジェヒョン「それはいけません。処方箋なしに薬を出すのは違法なんです。しかもこれは向精神性の薬ですので…」

「おい!」男はいきなりカウンター越しに身を乗り出し、ジェヒョンの襟を掴む。「さっき病院で貰ったって言ってるだろうが!」

ジェヒョン「…。」
男「数日前もここで受け取ったんだから!」

「離してください」ジェヒョンはまっすぐに男を見つめ、低い声で言った。
ジェヒョンの冷たい視線に、男は思わず手を離す。「病院でもう一度貰ってくるからな!」

男が退散すると、ジェヒョンは手元に置いてある鏡を覗いた。
男に掴まれた弾みで、シャツのボタンが外れている。「…。」
ジェヒョンは拳を握りしめた。

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薬局の灯りを消し、ジェヒョンは外へ出た。
「?」何か気配を感じ、彼はビルの曲がり角を振り返る。
そこに誰もいないのを見ると、反対側へと歩き出した。

曲がり角からそっと女性が姿を現し、遠ざかっていくジェヒョンの背中を睨みつける。
ジェヒョンと関係のあった女性… ヨンジュだった。

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薬局で処方箋を受け取ってもらえず、男はフラフラとトンネルの中を歩いていた。
「?」ふと背後に人の気配を感じて振り返った瞬間、後ろにいた黒ずくめの人物が殴りかかった。
スラリと背の高い、その人物は…?

+-+-+-+

午後10時59分。
トンネルの先のマンホールに囲いが張られ、こんな夜遅くに工事が行われていた。
「大工事ですよ」電話で話しているのは、ソクテのチームの一員だ。「もう11時なのに、いつ終わるのか」

マンホールに潜っている職員が、中に溜まっているゴミを一つずつ外へ出している。

職員(電話)「めちゃくちゃ詰まってるんですから!」

+-+-+-+

ピルもまたマンホールへと続くそのトンネルに差し掛かっていた。
向こうで人がもみ合っているのに気づき、彼はハッとして目を凝らす。「ん?」
誰かが、倒れている人を執拗に蹴っていた。
「おい!」ピルは迷わず駆け出し、黒ずくめの男に飛びかかる。
逃げようとした相手の背中をキックして倒すと、ピルはあっという間に馬乗りになって取り押さえた。
ふと相手の手首を見ると、そこには大きな傷跡が。「?!」

そのとき…

マンホールを照らす街灯がチカチカと点滅し、無数の光の線がマンホールから飛び出した。
取り押さえた男の黒い帽子を剥ぎ取ろうとしたところで、ピルは光線に包まれ、光の玉となってマンホールへ吸い込まれる。

「???」突然体が解放され、黒ずくめの男は驚いて辺りを見回した。

+-+-+-+

「わぁあああ」ピルは叫びながらマンホールスライダーを滑り落ちる。

#あぁ久しぶり!

何だよ?
まだ12時にもなってないのに!
何だ?どうなってんだよぉ~!

*-*-*-*エピローグ*-*-*-*

チケットを手に飛行機に乗り込んだスジンは、自分の席に腰を下ろす。
緊張した様子で、彼女はふぅっと息をついた。

反対側の通路に、一人の男性客がやって来た。
乗務員に案内され、男性客はスジンより一つ後方の席に着く。

ジェヒョンだ。
スジンの横顔に目をやり、彼はニヤリと笑った。「…。」

*-*-*-*-*

ここでエンディングです。

何なの、この最後数分のホラー全開っぷりは?!
観終わったらそれしか頭に残らん。
最後の飛行機のシーンは、予定変更がなければ1週間後の9月13日。
ピルは7日の23時にマンホールに吸い込まれていますので、これまでのルールに則れば、この飛行機のシーンは理論上存在しないはずです。また別の設定なのかもしれませんが…。
※今、これを書いている時点で11話の予告動画が公開されており、とても混乱してます^^;;;

今回、ピルは凛々しく切ないタキシード姿以外、見せ場がありませんでしたね…。
彼の意志抜きで置かれてしまった状況だから仕方ない分はもちろんあるけど、全て人任せで、どうせまたリセットされるんだからと放棄しちゃったら元も子もないです。ピルの魅力が死んじゃってるじゃないですか…。

逆に、公務員になったソクテは、とても落ち着いていて素敵でした♪

最後に…。

一瞬だけ映ったスジン→ピルへの手紙を、判読できる範囲で訳しておきます。
画像に何度もシャープネスかけて、コントラストも上げたけど、それでも読み取れない部分は省きますね。

『訓練兵ポン・ピル!元気にやってる?あんたが入隊してから1週間経ったわ。
変だよね?間違いなく1週間しか経ってないのに…(略)
私がこんなこと言ったからって、笑わないでよね。ただそうだってだけよ。
考えてみたら、あんたと私、今まで離れて過ごしたことなかったかもね。
23年間隣の家で暮らしてたから、当然かも。
毎日のようにピルに会って、あんたが何してるか自然と分かって… いつも一緒にいろんなことしたじゃない?
だからかな、この1週間は馴染みがなくて。
毎晩うるさく歌を歌ってたあんたがいないから、夜はすごく静かに感じるし、
しきりに”スジナ~”って誰かに呼ばれてる気がするし…
裏山に上ったら、ベンチにあんたが座ってる気がして…。
とにかく、最近こうなの。やたらとあんたのことが思い浮かぶわ^^
軍人に全く関心もなくて、考えることもなかった私が、おとといテレビでやってたた訓練兵のドキュメンタリーを観たわ。
もっと可笑しいのは、画面に出てるたくさんの訓練兵の中に、もしかしたらピルがいるんじゃないかって…
自分でも知らないうちに、あんたを探してた。ホント笑っちゃうでしょ?
そこにあんたがいるはずもないのに… ただ同じ訓練兵っていう気持ちだけで、テレビに出てる軍人にまで親近感を感じて、その姿にピル、あんたを探してた…。
訓練はどう?すごく大変でしょう?9月になっても相変わらず真夏みたいに暑いのに…(後略)』

 - マンホール-不思議な国のピル ,

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