主君の太陽15話あらすじ&日本語訳 vol.2
ソ・ジソブ、コン・ヒョジン、ソ・イングク、キム・ユリ出演「主君の太陽」15話後半です。
ではさっそく。
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カン・ウが出て行った後、次に社長室へやって来たのはテ嬢だ。
テ嬢「社長」
チュ君「…お前にまで消えろなんて話はしたくない。ヒジュの話をするつもりなら、やめろ」
テ嬢「私、100億のレーダーつけてみたんです。ここに何度もヒジュさんが引っ掛かるんですよ」
チュ君「…。」
チュ君の沈んだ様子に、テ嬢はレーダーの仕草をした手をおろした。
チュ君「俺が死んだとき…そう言うべきか?…とにかく、そのときヒジュに会った。あいつの前で、前に読んだあの本を読み終え、閉じたんだ。そうしたら気が楽になった。字もスラスラ読めるし。もう、ヒジュのことは憎くない。それは、終わったってことじゃないのか?」
テ嬢「私、ずっとヒジュさんを見てるんです。ハンナっていう人のそばに」
チュ君「守りたい人は共犯者だって言ってたろ。だからそばにいるんだ」
テ嬢「…。」
チュ君「その双子の姉をつついたからって、失くなった俺の金が返ってくるわけでもないだろう。知りたくないことばかり知る羽目になる」
テ嬢「だけど…!」
そのとき、彼のそばにヒジュの霊が現れた。
悲しそうにじっとチュ君を見つめている彼女。
チュ君「俺はここで終わりにしたい」
ヒジュは、涙に潤んだ目でテ嬢を見た。
テ嬢「だけど…」
ヒジュはゆっくりと首を横に振る。
チュ君「あいつは犯罪者で俺は被害者だった。悔しいことは全部耐えたのに、見えも聞こえもしないことまで理解しなきゃならないのか?」
チュ君は立ち上がり、デスクを回り込むと、テ嬢のそばへやって来る。
テ嬢はヒジュが気になり、まだ彼女の方を見ていた。
チュ君「つまりお前も…」
テ嬢「…。(振り返る)」
チュ君「これ以上、死んだやつを見るな」
彼がテ嬢の肩に手を置くと、ヒジュが消えて行った。
テ嬢「(頷く)そうですね。私にしか見聞きできないことを無理に理解してくれなんて、もう言いません」
チュ君「…。」
テ嬢「(自分の肩のチュ君の手に触れる)社長ももっと楽に生きてください。私が解決してあげようと思ったけど…レーダーは役に立ちませんね」
肩の手を離そうとすると、チュ君は逆に力いっぱい彼女の両肩を掴んだ。
チュ君「テ・ゴンシル。お前、最初は間違いなく自分が見聞きするものが嫌で、防空壕だと言って俺にすがった。それなのに、なぜだんだん躍起になって俺に優しくしたり話を聞いてくれたりするんだ?お前がそんなだから…俺が役に立たなくなるじゃないか」
テ嬢「…代わりに楽になったでしょう?」
チュ君「…。」
テ嬢「私たち、お互い役に立たなくなればなるほど、生きるのが楽になるでしょうね」
チュ君「…。」
チュ君は、彼女の両肩を掴んだ手をそっとおろした。
チュ君「お前なしじゃいけない気がして、躍起になってお前を見つけたのに、もう本当に俺なしで残念な程度なんだな…」
テ嬢「…。」
チュ君「悔しいな。ずっと見ていたら無念で”消えろ”と言ってしまいそうだ。…もう行け」
彼が背を向けると、テ嬢はゆっくりと入口まで歩き、扉を開けて出て行った。
彼の背後で遠ざかっていく足音、ドアの閉まる音。そして、チュ君のそばには誰もいなくなった。
+-+-+-+
ハンジュは心から寂しそうにカン・ウを見上げた。
ハンジュ「カンチーム長、本当にお辞めにやるんですか?」
カン・ウ「えぇ」
ハンジュ「キム室長もお辞めになったと聞いたけど…そうなんですか?」
カン・ウ「そのようです」
ハンジュ「…。」
カン・ウ「これまで…ありがとう」
カン・ウはハンジュの肩を叩き、微笑むと、警備室を後にした。
ハンジュ「テ・ゴンシルさんが辞めて、キム室長やカンチーム長まで…。エライことだ。それじゃチーム長は…」
ハンジュはやはり思い直して首を振った。
+-+-+-+
カン・ウが警備室を出て来ると、そこへイリョンがやって来る。
カン・ウ「…。」
イリョン「…。」
二人は公園に場所を移した。
イリョン「あたし、アメリカへ行くことに決めたの」
カン・ウ「そうか。良かった」
イリョン「だけど、ただ行くのは悔しいの」
カン・ウ「何が?」
イリョン「あたしと、一度だけ一緒にご飯食べようよ」
カン・ウ「…。」
イリョン「あんたのために予約を取り消したレストランがいくつあると思う?」
カン・ウ「そうだな。そうしよう。俺が奢る。何食べたい?」
二人はごく普通の店で食卓を囲んでいた。
カン・ウ「サラリーマンの給料で一番高い店に連れて行こうと思ってたのに、ここがいいのか?」
イリョン「ここ、たくあんでも一緒に食べろって、結局来れなかった店でしょ。どんなにいい店だろうと思って、来てみたかったの」
カン・ウ「お前の立場を考えて貸しきった。好きなだけ食べな」
イリョン「(店をチラリ)実際来てみたらホントつまらない」
カン・ウ「健全だろ。俺とお前、高校時代に合コン程度で会って、トッポッキを食べて別れるみたいに、健全に別れよう」
乾杯のコップを差し出したカン・ウに、「どうでもいい」とイリョンは小皿を差し出した。
イリョン「たくあんでも持って来て」
カン・ウが皿を持って席を立つと、イリョンは鞄から酒の瓶を出し、両方のコップに継ぎ足した。
イリョン「あたしは女子高生?健全に別れるなんてさ」
戻ってきたカン・ウは、漬物の皿をイリョンの前に置き、席についた。
イリョン「(コップを持ち)乾杯しましょ。一気よ」
カン・ウ「…。(自分のコップを手に取る)」
イリョン「黒ひげクジラみたいに、ひとっ払いで飲むのよ」
カン・ウ「了解」
一瞬で飲み干すカン・ウを、イリョンは横目で盗み見た。
— 時間経過 —
カン・ウ「はぁ…、変だな。まるで酒でも飲んだみたいだ」
イリョンが身を乗り出す。
イリョン「カン・ウ、あたしこのまま別れるのは嫌」
カン・ウ「?」
イリョン「あたしがストレートにお酒飲もうって言ったら、あんたまたカッコつけて、飲まないって言うでしょ」
カン・ウ「俺、酒飲んだのか?」
イリョン「…。(頷く)」
カン・ウ「俺、カッコつけてるんじゃなくて、もともとあまり飲めないんだけど」
イリョン「(カン・ウを覗きこむ)あんた、あたしのことちっとも綺麗だと思わないの?お酒飲んだら、ちょっとくらい綺麗にみえない?」
カン・ウ「綺麗だよ。テ・イリョンはすごく綺麗だ」
イリョン「!」
カン・ウ「ときどきお前が急に現れたとき、”わぁ、すごく綺麗だな”…そう思ったよ」
イリョン「…。綺麗なのに、どうして好きじゃないの?」
カン・ウ「俺には絶対守りたい人がいるから」
イリョン「…。」
カン・ウ「守れてるのか分からないけど」
イリョン「あんたテ・ゴンシルの警備員なわけ?!」
カン・ウ「…あぁ」
イリョン「…。」
カン・ウ「俺の名前を一度だけ呼んでくれさえすれば、ジャーンと登場できるのに… 呼んでくれないんだよな」
イリョン「…。」
カン・ウ「だから俺、ずっと見守ってるだけなんだ」
イリョン「…。」
カン・ウ「あの人が…これ以上怖い思いをしないで、安全ならいいけど。そうすれば警備員の席を空けていられる」
何も言えないイリョンの前で思いを吐き出したカン・ウは、深く溜め息をついてうなだれた。
イリョン「あたし、あんたのこと守るのは嫌!だからお酒飲ませたんだから!」
彼女の瞳から零れ落ちる涙も、すでに下を向いている彼の目には入らない。
イリョン「あんた… 安全でいたくて悲しいふりしてるんでしょ…」
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「どこに行くって?」
テ嬢は部屋にやって来た姉に、ジヌの写真集の風景を見せる。
テ嬢「ここ」
姉「外国じゃないの?あんた、外国に行くつもり?」
テ嬢「お姉ちゃん、私みたいに死人の見える人がいるの。一緒に行こうって」
姉「!そんな人がいるの?ホントに見えるって?」
テ嬢「うん。私は覚えてないんだけど、彼は私のことよく知ってるみたい」
姉「?」
テ嬢「お姉ちゃん、病院で3年間眠ってる間、私の霊魂がその人と一緒にいたんだって」
ジヌはカフェでまたジュンソクを相手に呟いていた。
ジヌ「コンシルは一緒に行くって言うかな?一緒に行けばその男と離れやすくなるのに。(ジュンソクに)お前、最初から二人のこと見てたんだろ?どうなると思う?」
姉「同じものを見れば理解は出来るだろうけど、あんた、好きな人を置いて行けるの?」
テ嬢「自分の見たいものだけ見て、聞きたいものだけ聞く人のそばに、役にも立たないものを見聞きする私がいたら、気が休まらないと思うの」
姉「…。」
静かに微笑むテ嬢が不憫で、姉はそれ以上何も言えずに彼女の肩を撫でた。
+-+-+-+
空港に到着したチュ君は、誰かを探して歩いていた。
ベンチに座っているハンナの前にやって来ると、彼女は立ち上がった。
チュ君「思ったより早く逃げ出したな。もう少しで逃すところだった」
ハンナ「私を捕まえに来たんですか?」
チュ君「俺がお前をただで放してやると思うか?」
ハンナ「叔父の前では私の話を信じると言ったわ」
チュ君「お前を犯人として捕まえれば、姪だとかばったキム室長に害が及ぶ。父が側につけた極秘警備員が正義感を発揮して警察に突き出せと言うが、そうするつもりはない。今ここで、俺とお前で直談判しよう」
ハンナが微笑むと、彼は彼女に手を差し出した。
チュ君「俺のネックレスを出せ。それから”消えろ”」
ハンナ「私を犯人だと確信しているのね。テ・ゴンシルっていう女がヒジュから何か聞いたんですか?」
チュ君「あいつを巻き込むな。死んでヒジュに会いたいか?そうしたければ好きにしろ」
ハンナ「あの女が特別なのね。もうチャ・ヒジュは完全に消してしまったのかしら。15年待ってよくやく会えた甲斐がないわ」
チュ君「と言うことは、前にヒジュとやりあったのを糸口に、また俺に接近したのか?口説くのはお前の担当じゃなかったようだな。いくら双子でも、俺はたったの一度だってお前に目を向けたことはなかったからな」
ハンナ「…。それなら真実を話してあげるわ、チュ・ジュンウォン」
チュ君「…。」
ハンナ「あんたが愛していた女はチャ・ヒジュじゃない」
チュ君「?!」
ハンナ「双子の姉、ハンナだった」
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テ嬢は旅行に出かける荷物を全て詰め、最後に残った写真集を手に立ち上がった。
そこへ… ヒジュの霊がいるのに気づく。
テ嬢「私、ここを去るんです」
ヒジュ「力になって。ごめんなさい…」
突然テ嬢の体に向かってくると、彼女が避ける暇もなく中へ入った。
+-+-+-+
チュ君「俺の初恋がチャ・ヒジュでなくお前だって?」
ハンナ「ヒジュは見ているだけだったから、ハンナがヒジュの振りをして、代わりに声を掛けたのよ」
~~図書館にいるチュンウォンに近づくハンナ
ハンナ「あんた、チュ・ジュンウォンだよね?」
チュンウォン「?」
ハンナ「私、チャ・ヒジュ」
微笑むハンナに、思わずチュンウォンの顔からも笑顔が漏れる。
そんな二人を、本棚の陰から本当のヒジュが見守っていた。
~~
現在のハンナ「ハンナはこの世のもの全て持ってるみたいに輝いてる子だったけど、結局あんたのことも手に入れた」
チュ君「…。」
ハンナ「暗くて不幸だったヒジュがあれほど望んだもの… それさえも奪ったのよ」
チュ君「…。」
ハンナ「ヒジュはすごく腹を立てた。それであの事件を企てたの」
過去のヒジュ「すまないことになったわね、チュ・ジュンウォン」
チュ君「ヒジュとハンナ、二人で仕掛けたことだろ!」
ハンナ「チャ・ヒジュが一人でやったことよ。ハンナは絶対にそんなことする子じゃない。天使みたいな子だったのに」
チュ君「…。」
ハンナ「思い出してみなさいよ。あんたが好きだった子を」
チュ君「…。」
チュ君の頭の中に、明るく笑う”ヒジュ”の顔が浮かぶ。
ハンナ「二人のうち一人が死んだの。あんた見たわよね。あの子が死ぬ瞬間を」
チュ君「!!!」
ハンナ「死んだのはどっちかしら?ハンナなのか、ヒジュなのか」
チュ君「お前、誰なんだ?お前がチャ・ヒジュなのか?」
ハンナ「私はいい子のハンナだってば。死んだのは悪いチャ・ヒジュ」
チュ君「…。」
ハンナ「チュンウォン、あんただって15年間そう思ってきたでしょ?死んだ子は悪い女だって。死んだのがいい子なら、あまりに悲劇じゃない?」
チュ君「お前が…チャ・ヒジュだな」
ハンナ「…。」
~~15年前の事件
犯人と”ヒジュ”を乗せた車は道を逸れて大破していた。
助手席で朦朧とする”ヒジュ”を残し、運転席を出た犯人は、車の前に立ってサングラスとマスクを外した。
「ここでチャ・ヒジュは死ぬのよ。さもなければ、チュ・ジュンウォンを殺すわ。どうか…あんたがチャ・ヒジュとして死んで頂戴」
犯人が車を離れると、程なくして車は爆発し、炎に包まれた。
~~
現在のハンナ「生きている私は…いい子のハンナなの」
チュ君「…。」
ハンナ「チュンウォン、あんたの愛してたハンナよ。だからあんたのそばにまた戻ってきたの。戻ってくれば、あんたが私のこと愛してくれると思ったのに、とんでもない女が割り込んでたわ」
チュ君「お前は違う。偽物だ」
ハンナ「今更どうして?あんたは自分の傷のせいで、あの子がどうして死んだのか、一度だって知ろうとも理解しようとはしなかった」
チュ君「…。」
ハンナ「今まで思っていたとおりに留めておけば、楽に生きていけたのに」
チュ君「本当に…あいつは俺のために死んだのか?」
ハンナ「そうよ。あんたのせいで死んだの」
言葉を失うチュ君に、彼女は再び余裕の微笑みを見せた。
ハンナ「私はハンナ。違うと思う?だけどあんたは絶対に暴けない」
ハンナはトランクを手に取り、1歩踏み出した。
ハンナ「とにかく… すまないことになったわね、チュ・ジュンウォン」
15年前のヒジュの言葉と、今の彼女の言葉が重なる。
ぼう然とする彼を残し、”ハンナ”は歩き去った。
+-+-+-+
キム室長はヒジュが眠る納骨堂を訪れていた。
彼女の写真に、会うこともできないで死んだ姪へ想いが新たになる。
位牌のとなりにある双子の天使の像に、彼の視線が移った。
+-+-+-+
歩いてくる”ハンナ”を、テ嬢が呼び止めた。
テ嬢「チャ・ヒジュ!」
ハンナ「!」
それは、テ嬢の体を借りた、本物のハンナだろうか。
ハンナ「今、私を何て呼んだんですか?」
テ嬢(ハンナ)「チャ・ヒジュ」
ハンナ「?」
テ嬢(ハンナ「ヒジュ、私よ。あんたがチャ・ヒジュだって知ってる唯一の人」
ハンナ「…?」
テ嬢(ハンナ)「私の代わりにハンナ・ブラウンとして生きて楽しかった?」
ハンナ「!あなた何言ってるの?」
テ嬢(ハンナ)「あんたと直接話たくて、この人の体を借りたの」
ハンナ「あり得ない…。あっちへ行って!」
ハンナは思わず後ずさりすると、テ嬢(ハンナ)が近づく。
テ嬢(ハンナ)「信じられない?あんたが最後に私に言ったこと、話してあげようか?」
ハンナ「?」
テ嬢(ハンナ)「”ここでチャ・ヒジュは死ぬの。さもなければチュ・ジュンウォンを殺すわ。どうかあんたがチャ・ヒジュとして死んで頂戴”」
ハンナ「!!!」
テ嬢(ハンナ)「あんたとして死んで、私として生きられるようにしてあげたでしょう?どうして戻ってきたの?ヒジュ」
ハンナ「あんた…本当にハンナなの?」
テ嬢(ハンナ)「(頷く)」
ハンナ「!!!」
テ嬢(ハンナ)「あんたに会いたくてこの人の体を掠めたの」
ハンナ「…。」
テ嬢(ハンナ)「ヒジュ、私たち、一緒に行く?」
ハンナ「…。」
テ嬢(ハンナ)「チャ・ヒジュはハンナ・ブラウンの名前を掠めて生き、私はこの人の人生を掠めて生き返るの」
ハンナ「…。」
テ嬢(ハンナ)「私、あんたのせいで死んだのよ。そうでしょ?あんたは私がまた生きられるように出来るわ。力になって。私たち、双子でしょ?」
ハンナ「…。そうね、一緒に行きましょ。私がチャ・ヒジュがハンナ・ブラウンとして生きたように、あんたはテ・ゴンシルとして生きればいいわ。手伝ってあげる」
テ嬢(ハンナ)「…。」
ハンナ「そうして絶対にチュ・ジュンウォンのそばには戻らないの。良かった。私、あの女が彼のそばにいるの、本当に嫌だったんだから」
テ嬢「(ハンナ)「…。」
ハンナ「あの女が消えれば、チュ・ジュンウォンはまた一人になるわね。チュ・ジュンウォンにはチャ・ヒジュの呪いが掛かってるって話、すごく気に入ったわ。私、またあの子に呪いを残して行けるわね」
二人は微笑み合った。
+-+-+-+
打ちひしがれたチュ君は、まだそこに座り込んでいた。
彼の思考を辿るように、組んだ指が静かに動く。
頭の中に浮かぶのは、テ嬢の言葉だった。
「怖いからって逃げないで。それは恥ずかしいことだわ」
彼は顔を上げ、立ち上がると、力強く歩き出した。
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テ嬢(ハンナ)「もう戻らないかもしれないし、何も話さずに発つことだって出来たでしょ。どうして全て話たの?」
ハンナ「…。」
テ嬢(ハンナ)「チュンウォンをもっと苦しめたかったの?」
ハンナ「ハンナとして帰ってくれば、彼を手に入れられると思ったの。それなのに、私に偽物だって…」
向こうから歩いてきたチュ君は、二人の姿を見つけ、ハッとして立ち止まった。
テ嬢と一緒にいることに驚き、再び歩き出す。
テ嬢(ハンナ)「愛してたのがあんたじゃなかったって気づいたのよ」
ハンナ「そうね。私は彼が愛したハンナじゃないわ」
二人に近づこうとしてどんどん速度を早めたチュ君を、寸前のところで誰かが捕まえた。
カン・ウだ。
「何だ?」と驚くチュ君に、カン・ウは無線機を片手に「シーッ」と合図をする。
カン・ウ「作戦中です」
二人は柱の陰からそっとハンナを見る。
テ嬢(ハンナ)「本当のあんたをチュンウォンは知らないわ」
そう話すテ嬢の体には、小さなマイクとイヤホンが取り付けてあった。
テ嬢は…カン・ウと協力していたのだ。
ヒジュ「そうね。本当のチャ・ヒジュとはまともに会ったこともなかったから。でも、生涯胸の中に呪いとして残る名前は私よ。チャ・ヒジュ」
テ嬢「それは本当のあんたね」
ヒジュ「そう。本当の私はチャ・ヒジュだから」
テ嬢「(微笑む)」
ヒジュ「ハンナ、あんた、私を守りたいって言ったんですって?」
ヒジュは手を差し出した。
ヒジュ「行きましょ。私があんたのこと守ってあげる」
テ嬢が彼女の手を取る。
テ嬢「死んだハンナは、生き残ったヒジュを守りたいって言ったの。無念に一人損したようにね」
ヒジュ「?」
テ嬢「美化して言うと、”犠牲、献身、愛”なんです」
ヒジュ「?!」
テ嬢「だけどあなたは最後までそれを分かってはあげられなかったんですね、チャ・ヒジュさん」
ヒジュ「!!!」
握った手を離そうとすると、テ嬢が彼女の腕をすかさず掴んだ。
ヒジュ「あんた、ハンナじゃないわね」
二人の様子に、カン・ウが緊張を高める。
ヒジュ「私を騙したの?!」
テ嬢「ハンナを殺して全てを騙したのは、チャ・ヒジュ、あなたでしょう?」
強く掴まれた腕を、ヒジュは振り払った。
ヒジュ「暴けるようなものは何一つ残していないわ」
テ嬢「…。」
そこへ…「ヒジュ!」キム室長が駆け寄り、声を掛けた。
ヒジュ「!」
キム室長の登場に驚くチュ君たち。
その後ろに、刑事たちが近づいた。
振り返ったヒジュに、キム室長は納骨堂にあった天使の像を掲げた。
キム室長「死んだ子のそばに残したものがあるじゃないか」
ヒジュ「!」
キム室長がそれを落とすと、冷たい音を立てて割れた天使の像から、100億のネックレスが飛び出した。
ヒジュ「!!!」
カン・ウが後ろに控えた刑事たちに合図をすると、先頭を切ってヒジュに近づいた。
彼女の前まで来ると、刑事に場を譲る。
刑事「幸い、時効成立まで2日残っていました。チャ・ヒジュさん」
#こっちのドラマでも警察は無能だったorz
おとなしく手錠を掛けられたヒジュは、その衝撃にうなだれた。
~~数時間前。納骨堂にて
ヒジュ「本当に私が横取りしたのは、このネックレスじゃなくてハンナの人生なのに、誰も知らないのね」
ネックレスをおさめた天使の像を、彼女は納骨棚に収める。
ヒジュ「すまないことになったわね、ハンナ。私の双子のお姉さん」
+-+-+-+
連行されるヒジュを、キム室長が追いかけた。
刑事たちが立ち止まり、時間を与える。
キム室長「ヒジュ、私がこれからもそばにいるから」
ヒジュは冷たい表情のまま何も答えず、歩き出した。
キム室長「…。」
+-+-+-+
ヒジュが去っていく姿を眺めているテ嬢のそばには、カン・ウがいた。
カン・ウ「全て終わりました。テ・ゴンシルさん」
テ嬢「(微笑)本当に全て終わったんですね」
カン・ウ「…。」
テ嬢の視線は、向こうで立ちすくんでいるチュ君に移った。
彼女はカン・ウに小さく頭を下げると、彼の横を通り過ぎ、チュ君へと歩き出す。
彼女の背中を、カン・ウが振り返った。
チュ君の顔を、テ嬢は優しい目で覗きこんだ。
静かに見つめ返すチュ君。
+-+-+-+
チュ君とテ嬢が外に出て来る。
テ嬢「あの…、ヒジュさん、いや、ハンナさんが最後に社長に伝えたいことがあるそうなんです。社長も言いたいことがあるでしょう?」
チュ君「…。」
いつの間にか、彼の前に立っていたのは、テ嬢ではなくハンナだ。
ハンナ「チュンウォン、もうこれ以上私が…あんたの痛みでなくなればいいのに」
チュンウォン「…ごめんな」
ハンナ「…。」
チュンウォン「何も知らずに、憎んだりして…ごめん」
ハンナの手が伸びてきて、優しく彼の頬に触れた。
それ以上言葉は何もいらない。
見つめ合うと、ハンナは静かに消えて行った。
広大な空へ、あとかたもなく。
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「お前が何で泣くんだ?」空から視線を戻したテ嬢が涙を拭うと、チュ君が漏らす。
テ嬢「社長は泣けないから私が代わりに泣いてあげてるんです」
チュ君「…。」
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その頃、ジヌはなかなか現れないテ嬢を空港で待っていた。
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チュ君「100億のレーダー。でかしたな。行こう、俺がもてなしてやる」
テ嬢「…。私、ここを去ります」
チュ君「?」
テ嬢「それでもチャ・ヒジュさんのことを全部解決して行けて、気持ちが楽になりました」
チュ君「…。」
テ嬢「これまであまり役に立てなかったけど、そうならなくて良かった」
チュ君「行くってどこに?」
テ嬢「私と同じものを見聞きする人に会ったんです。その人と行くところがあるんです」
チュ君「…。」
テ嬢「社長が霊魂になって私に会いに来たとき、私が太陽みたいに光り輝いてるって言ってました。私は死んだ人にしか光っていられない太陽みたい」
チュ君「…。」
テ嬢「(涙をこらえる)私はただ…幽霊たちに人気のある、光り輝く太陽でいたいのに、社長を見ていたら、死人を作り出す不吉な太陽のような気がして… 自分がすごく怖くて嫌になるんです」
チュ君「俺がいなかったら残念な程度どころか、 怖くて嫌になる…そんな存在なのか?」
テ嬢「あなたのそばにそんな太陽を昇らせたくないんです」
チュ君「…。」
テ嬢「もう今度こそ… 私に”消えろ”と言ってください」
チュ君「…。俺がこれまでお前に平気で消えろと言ってきたのは、お前が必ず俺の元に戻ってくると分かっていたからだ」
テ嬢「…。」
チュ君「…お前の望むとおりにやってみよう」
テ嬢「…。」
チュ君「…消えろ、テ嬢」
目に涙を溜め、その言葉を聞き入れた彼女は、頭を下げ、彼に背を向けた。
チュ君「…。」
残された彼の視界の中で、彼女がどんどん遠ざかっていく。
彼は小さくなって空港の中に消えて行くまで…じっと彼女の後ろ姿を見送った。
チュ君「このまま太陽が消えたら…俺は滅亡だ」
日が傾いた空港前の広場で、彼はいつまでもそこに佇んだ。
+-+-+-+
ここでエンディングです。
#美しく晴れた日の悲しいシーンって、本当に悲しい。
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Comment
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泣きました(T_T)
セリフがわかると更に増す切ない4人の気持ち
お忙しいなか、本当にありがとうございます(^・^)
あと、2話、どういう展開になるか楽しみですね