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マンホール-不思議の国のピル7話あらすじ&日本語訳vol.1

   

ジェジュン(JYJ)、ユイ、チョン・ヘソン、バロ(B1A4)出演のKBSドラマ『マンホール 不思議の国のピル』7話のあらすじを、細かいセリフの翻訳を混じえて紹介します。

スジンたちの力を借り、死の寸前でマンホールに無事吸い込まれたピル。
さて、今度はどこへ…?

では、さっそく~

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2012年9月10日
ポン・ピル入隊2日前

夜。

ピルたち“ファミリー“は全員揃い、男女に分かれて屋台で酒を飲んでいた。

スジン「チョンエ、タルスさんのどこがそんなにいいの?」
チョンエ「(向こうのテーブルのタルスを見つめ)無頓着なようでクール、バカなようで知的。私に興味ないみたいなのに、ドキドキするくらい優しくしてくれる。まさに私のタイプなのよね」
チンスク「典型的な”悪い男“ね。しっかりしなよ」
チョンエ「あんたたちはどんな男が好きなの?ピッタリな人を見つけてあげる。スジン、あんたはどんな男が好き?」
スジン「私?私は… 計算高い男より、ひたむきで優しい人かな?スポーツが得意なら尚いいわ」
チョンエ「チンスクは?」
チンスク「私?私は… 恩に着せたりしないで、後ろで支えてくれる人?それから、存在するだけで私の力になる人」
チョンエ「OK!受け付けたわ。でも、あんたたちが言ってる人、なんでもう知ってるような気がするのかな…?」

「…。」スジンとチンスクの視線は、自然と同じ方向へ向かう。

チョンエ「…間違いなく周りにいそうな気がするんだけど」

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翌日。

ベッドで眠っているピルに、誰かが優しく声を掛けた。「ピル、起きて」
マンホールで時空を越えた“ピルの意識“が体に飛び込んだのは、その瞬間だ。

「?」気だるそうに目を開けたピルは、ハッとして飛び起きた。「わっ、何だ?」
彼を起こしに来たのは、エプロン姿のスジンだったのだ。

スジン「よく眠れた?」
ピル「…スジン?」
スジン「早く下りてきて。朝ごはん作ったから」
ピル「朝ごはん?」
スジン「うん、あんたの好きな豚肉炒めにチャプチェ、全部作ってあるから、早く来て。いいわね?」

部屋を出て行くスジンを、ピルは茫然と見送った。「何だ?あいつ急に新妻コスプレなんか…」

ピル「待てよ?スジンがうちで朝食を作ってくれるわけないじゃないか。あ… それが出来るってことは?ひょっとして俺!俺、スジンと結婚したのか?」

「マジで?!」ピルは小躍りした。

ピル「おい、マンホール!お前ついに大当たりぶちかましたな!わぁ、マジで信じていいのか?夢みたいだ。待てよ、新婚ってことだよな。ok、そんなら服を着替えて行かなきゃ、服を着替えて!」

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きちんと着替え、ピルはゆっくりと階段を下りる。
いつも見ているはずの家が、どこか新鮮に感じられた。

まさに切望していた瞬間だ。
完璧な朝ごはん、美しい妻…
ん?まだ子どもはいないみたいだな。
よかった。たった1日の新婚生活、育児で潰すわけにいかないからな。

ダイニングテーブルの上には美味しそうな食事が並んでいる。
スジンが彼を待っていた。

ピル「スジン、全部お前が作ったのか?俺のために?」
スジン「全部じゃないけど」
ピル「さぁ、スジンが作ってくれた朝ごはん、食べてみようかな」

「ダメ」スジンが彼の腕を掴んだ。「手を洗ってきて」

ピル「なぁ、エビの天ぷら一つだけ」
スジン「ダメ!早く洗ってきて」
ピル「ヤダ。スジンの作ってくれたご飯、早く食べたいんだ」

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ピルは言われるまま、ニヤニヤして洗面所へ入った。「はぁ、あの潔癖症め」
手を洗おうとしてギョッと振り返る。
背後のトイレに父が座っていたのだ。「と、父さん」

父「まだ酔いが冷めてないのか?」
ピル「父さん、ここで何を?」
父「(下をチラリ)便器に座っていて何をしているのかと訊かれたら、何と答えるべきやら」
ピル「父さん、ここは僕ら新婚夫婦の家…」

父が立ち上がる。「トイレでごちゃごちゃ言うな」

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結局、朝ごはんのテーブルは彼の両親も一緒だった。

母「ピル、スジンがあなたに食べさせようと、たくさん作ったのよ。(料理を見て)あらまぁこのチャプチェ見てよ。美人なだけじゃなくて、料理まで上手だなんて」
スジン「味は保証できません。(ピルに)早く食べてみて、ピル」
ピル「スジン、俺たち…(小声で)結婚したんじゃないのか?」
スジン「え?!」
ピル「結婚したんじゃないのかよ?」
母「何言ってるの?」
父「まだ酒が残っているようだな。とにかく食べよう」

ピルは懸命に考えを巡らせた、「あぁ!俺の誕生日か?」
「???」3人が不思議そうに目を合わせる。

母「そうよ。誕生日ってことにしましょ、誕生日」
父「(スジンに頷く)」
母「スジンが美味しい豚肉炒めを作ったのよ」

「食べてみて」箸で一口つまみ、母はピルにそれを差し出した。「あーん」
言われるままに口に入れると、今度は父が野菜包みを差し出す。「食べなさい。父さんからの愛の野菜包みだ」

ピル「と、父さん、結構です」
母「それじゃ母さんがやってあげようか?あーん」
ピル「か、母さん、いいって!」

皆、妙にサービスがいい。
「みんなどうしたんですか!」ピルは恐ろしくなって逃げ出した。

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「父さんも母さんもどうしちゃったんだ?」ピルは家の外へ出て来た。

ピル「それに結婚もしてないのに何でスジンが朝ごはんを?参ったな、一体どういう状況なんだ?」

「ん?」一息ついて、彼は周囲を見渡した。「こんなにキレイな町だったかな」

ピル「(胸をおさえ)それに、何だ?感じたこともないこのイヤな気分は?」

「ピル」そこへやって来たのは、クギルだ。
「…大丈夫か?」やけに悲しげに、クギルはピルを見つめた。

ピル「兄貴、俺すげぇ変なんだ。俺の知ってるみんなと違う気がするし、町も見慣れない。俺、おかしいのかな?」

「そうだな」クギルは優しく頷いた。「現実を否定したいだろうさ」
次の瞬間、クギルはたまらずピルを抱きしめる。「それにしても時が経つのは早い。もう最後だなんて」

ピル「兄貴?何のことだよ?最後って」
クギル「そんなこと俺の口から言えるかよ。お前のほうがよくわかってるじゃないか」

「…。」ピルは不安に襲われ、自分の両手を見た。「俺、ひょっとして余命幾ばくもないとか?」

クギル「そんなこと言うなよ!悲しくなるじゃないか」

「またな」クギルはピルの肩に手を起き、涙をこらえて立ち去った。

何だ…
俺、また先が短いのか?
それでみんな優しくしてくれるのか?

「クソマンホールめ!」ピルは叫んだ。「今すぐぶっ潰してやる」

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朝ごはんも食べず、家を飛び出したピルの背中を、スジンは為す術もなく見送った。

スジン「…。」

ピルはホントに不思議な人…。
視線は私に向いているのに、心はどこにあるのかわからない。
いつもそばにいるのに、遠く感じる。
だから、ピルを見ていると、幸せだけど時々悲しくなるの…。

7話『何が私たちを隔てていたんだろう』

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ピルはマンホールの前に座り込み、ため息をついていた。「一体こりゃ何だ?」

ピル「植物人間の次は不治の病…?(マンホールに)お前、何で俺をこんな目に遭わせんだよ?」

”私を見失わないでね”ここへ来る前、スジンが言った言葉が思い出される。

ピル「忘れないでって言ったけど、スジンはちっとも覚えていないようだし。(マンホールに)なぁ、何でお前、全部リセットして、俺のやったことを水の泡にするんだ?言ってみろよ、俺はどうすりゃいいんだ?お前が連れてきたんだから、知ってるはずだろ」

「はぁ」頭を抱えたところで、上から誰かの声がした。「ここで何してんの?」
「?」顔を上げると、見下ろしていたのはチンスクだ。
彼女は買い物袋を彼の前にホイと置いた。「何してんの?見たんなら持って」

ピル「なぁ、いつ死ぬかもわからない友だちに、こんな重いものを持てって?」
チンスク「まだ生きてるじゃん。それ持って、ついて来な」

「あぁ、こんなことしてる場合じゃないのに」ピルは仕方なく袋を持って立ち上がり、チンスクの持っている袋まで持って、歩き出した。

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チンスクの屋上部屋の前で、ピルは焼き鳥の串刺し作業をする羽目になった。

チンスク「ちょっと!鶏、鶏、ネギ、ネギ、鶏、鶏だって何回言えばいいのさ!やり直し!」
ピル「お前、俺が死んでも葬儀場の前で焼き鳥売ってるだろうな」
チンスク「うん。弔問客がどれくらい来るかによるわね。でも、あんたのお葬式に来る人はもう決まってない?あんたの人脈なんて知れてるんだから」
ピル「マジで冷たいな」
チンスク「ちょっと!あんた間違いなく自分の口で言ったのよ。人生フードトラックと共に美しく終えたいってね。私はそれに賛同しただけだから、文句言わないでやってよ。(串をピルに向け)この串で血を見たくなかったらね」
ピル「この若さで死ぬのも無念だけど、こんな最期を夢見るわけないだろ。男ポン・ピル、そんな侘しい人生送ってないぞ」
チンスク「まだ酔いが冷めてないの?商売初日から何で死ぬ話ばかりするわけ?余命宣告?大げさも度が過ぎると病気よ」
ピル「お前、わざと俺に憎まれ口叩いてるのか?」
チンスク「時間が経つのはあっという間よ。しょっちゅう手紙書くからって言ったでしょ。2年間耐えなさいって、ピル」
ピル「2年とか手紙とか何のことだよ?」

そう言っておいて、ピルはハッとした。「今日って何日?」

チンスク「11日。何で?」
ピル「何年?」
チンスク「2012年」

チンスクは呆れてピルの頭を小突く。「バカなこと訊かないでよ」

ピル「2012年9月11日?」

「わぁっ!!!」ピルは立ち上がった。「入隊前日じゃないか!」

ピルはその日の記憶を手繰り寄せた。

チンスクの開業初日を手伝った後、仲間たちとボンボンホップで飲んだ席にスジンはいなかった。
公募展に応募するために写真を撮りに出掛けて雨に降られ、スジンの大事なカメラが壊れてしまったのだ。

ピル(心の声)「そうだ、スジンは今日、一人で公募展の写真を撮りに行ってた。一世一代の告白のタイミングを逃して串焼き売らなきゃいけないなんて…」
チンスク「何その悔しそうな表情?」

入隊前日をこんな無意味に過ごすわけにはいかない。

ピルは突然わざとらしく悶え始めた。「肉の匂いにやられたらしい。急に腹からシグナルが来たんだけど…もう出ちゃいそうだ」

チンスク「汚い!串の前でそんなマネしないで、さっさと行ってきて」
ピル「あ、あぁ(駆け出す)」
チンスク「ちょっと、そこにトイレあるのに、どこ行くのよ?」
ピル「あっ!!!この感じじゃ絶対“詰まりそう“なんだけど」
チンスク「もう!!!」
ピル「家に帰って解決したほうがいいんじゃないかな」
チンスク「早く行っといで」
ピル「あああ!」
チンスク「きゃー!トラックが来るから早く戻ってきて!」

静かになると、チンスクは小さく溜息をつきた。「あいつがバカやってるの見るのも今日が最後ね」

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ピルは走った。

そう…
これが最後のチャンス。
入隊を目前にした男の切実な思いを込めて、スジンに告白するんだ。

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ピカピカのフードトラックを前に、ソクテが呟いた。「チンスクは大したもんだな」
トラックには”ポンピル串焼き“と大きくプリントされている。「メニュー開発コンテストで優勝するなんて」

クギル「名前が親しみやす過ぎないか?」
タルス「味に勝負を賭けすぎて名前に失敗したようだな。”ポンピル串焼き“って何だよ」
チョンエ「名前なんて関係ないよ。大事なのは優勝したから支援を受けて、起業が叶ったってことでしょ。こうなるんだったら私も支援すればよかった。私ならタルスさんの名前をつけたのにな」
タルス「俺の名前は使用料高いぞ」
クギル「何が使用料だよ。”タルス”でも”ポンピル”でもダサいのは同じだ」
チョンエ「その中でも“クギル”が一番深刻だわ」

とこへスジンがやって来た。
彼女はチンスクとハイタッチを交わし、トラックを見上げる。「トラックの前にいるとCEOらしく見えるわ」

チンスク「そう?似合ってる?」
スジン「オープン記念に写真撮ってあげるよ」

そこにいたみんな、チンスク、ソクテ、そして、チョンとにタルスにクギルがトラックの前に集まり、カメラにおさまった。

タルス「スジン、君も一緒にやるんだろ?」
スジン「ううん、私は行けそうにないわ。公募展目前だから写真を撮りに行かなきゃ。ごめんね、チンスク。その代わり、今後バイトが必要な時はいつでも電話して」
チンスク「うん、心配しないでしっかり撮ってきなよ」

二人は固く抱き合った。

ソクテ「それにしてもスジン、写真を進路に決めたのか?羨ましいな」
スジン「羨ましいなんて。正直、写真じゃどこにも就職できないの」
チョンエ「だから写真なんかやめてお給料のいい職場に入りなって」

皆が言わずにいることだ。
ソクテがチョンエにシーッと人差し指を立てた。

タルス「芸術との狭間で苦悩しなければならないこの奥深い職業を、そこまでシンプルに定義できるのも才能だな」
チョンエ「そうでしょ♪」
ソクテ「チンスク、ピルは何でいないんだ?一緒に商売するんじゃないのか?」
チンスク「そうだね。(昨日?)あんなに走って便所の穴に落ちたのかな」

※チンスクは”昨日“って言ってるけど、同日だと思います…。謎。

チンスクがピルに電話を掛けてみても、『ピーとなったら…』とアナウンスが流れるばかりだ。

チンスク「こいつ、私の電話に出ないわ。はぁ、このフードトラックを最後にこの社会と綺麗さっぱりグッパイするってヤツが、たった1日で心変わりするとは」
スジン「…。」
チンスク「ソクテ、あんたが電話して」
ソクテ「俺がしても出ないって」
チンスク「…。」
ソクテ「わかったよ」

そのとき、スジンの電話が鳴った。
表示を見て、スジンはソクテが電話するのを制する。「待って」

スジン(電話)「ちょっと、あんたどこ?」

「スジン」電話してきたのはピルだ。

ピル(電話)「今みんなと一緒なのか?」
スジン(電話)「フードトラックの前よ。みんな待ってるのに何で来ないの?」

「…。」チンスクの表情が硬直する。

ピル「スジン、今日は大雨が降るんだ。だから写真撮りに行くのはやめろよ。行ったらズブ濡れになってカメラまで壊れちまう」

「何言ってんのよ?こんないい天気なのに」スジンは怪訝な顔で空を見上げた。

スジン(電話)「とにかく早く来なさいよ。私、もう行かなきゃならないから切るわ」

「待って」ピルがストップを掛ける。「どこに写真撮りに行くんだ?…あぁ、そうか、わかった」

電話が切れた。

チンスク「誰?ピル?」
スジン「うん。だけど、まだ酔いが冷めてないみたい。変なことばかり言って」
チンスク「こっちに来るって?」
スジン「それは言ってなかったけど… まぁ来るでしょ」
チンスク「(頷く)」
スジン「私、もう行かなきゃ。ごめんね」
チンスク「いいのよ、今日しかないわけじゃないし。いい写真撮ってきて。力作をね」

「じゃあね」去っていくスジンを見送るチンスクの目から、笑みが消えた。「…。」

ソクテ「ピルを待ってたら遅くなる。俺たちだけで行こう」
クギル「あぁ、電話してきたらそこへ来るように言えばいいんだ」

「OK!行こう」チンスクは明るく振り返った。

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ピルは美しい庭園の噴水の縁に座っていた。
カメラをぶら下げてスジンがやって来たのを見て、彼は立ち上がった。「スジン」

スジン「あれ?あんた何でここに?」
ピル「お前が写真を撮るのに、助手をしてやろうと思って」
スジン「チンスクのフードトラックを手伝うことになってたんでしょ?」
ピル「そうだったんだけど、今日は串焼きで時間を無駄にできないんだ」
スジン「何よ、チンスクはあんたのこと信じてるのに。チンスクが待ってるわ、早く行って」
ピル「他のみんなもいるだろ。それに… 俺、お前に話もあるんだ」
スジン「話?」

「…。」ピルがまっすぐにスジンを見る。

スジン「…何?」
ピル「後で話すよ。今日は時間もたっぷりあるし。とりあえず入ろう」

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施設の中の道はゆったりとしていて、ピルとスジンは並んでゆっくり歩いた。

ピル「ここホントにいいな。撮れそうなところも多いし」
スジン「それにしても、さっきはご飯も食べずに出て行っちゃうなんて。あんたが入隊するからって、張り切ってご馳走作ったのに」
ピル「さっきは腹の具合が悪くて… ごめん。帰ったら一口も残さずに全部食べるよ」

「スジン」ピルは立ち止まり、彼女に向き直った。「今日は俺のこと好きなだけこき使えよ。全部聞いてやるから」

スジン「何?入隊を前にして大人になった?」
ピル「そのかわり、公募展で入賞したら、少しは俺のお陰なんだから、軍隊に行ったらたくさん面会に行ってくれなきゃダメだぞ」
スジン「行ってくれなきゃって何?」
ピル「あ…まぁちょっとな」

スジンはふと向こうを見て小さな歓声を上げた。「綺麗!待ってて、何枚か撮ってくるから」
駆け出したスジンの背中を眺め、ピルはふっと息をつく。「ごめんな、チンスク。友情より愛を選んだ俺を許してくれ」

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それからというもの、ピルはスジンの荷物を持ってやり、タイミングを見て水を差し出し、せっせとスジンを手伝った。
そのうち、スジンが自然よりもピルを被写体にすることが楽しくなったのは、言うまでもない。

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”ポンピル串焼き”には、オープンからさっそく客が訪れていた。

クギル「コンテストで優勝したからか、マジで旨いな」
タルス「こんな名前じゃなかったらもっと旨いだろうな」
チョンエ「チンスクに隠れてこっそり食べるから余計美味しいのかも」

「一人4本だね♪」トラックの横で、ちっとも手伝わずに食べてばかりいる3人は、もう手に4本ずつ食べ終わった串を持っていた。

「何座ってんのよ!」チンスクが後ろで怒鳴った。「手伝いに来たくせに食べてばかり!無料で配ってるわけじゃないのよ」

タルス「さぁ、串焼きで日当は貰ったし、そろそろ動こうか」
クギル「そうだな。”水が来たときに櫓を漕げ”っていうし、俺たちがお客を集めてくるから、お前は一生懸命焼けよ」

「じゃあ俺は北東に」「私も一緒に」「こいつらここでもくっつきやがって」3人はさっといなくなった。
トラックへ戻ってみると、今度はソクテの不器用な仕込みっぷりに溜息が出る。「もう、信頼できるヤツが一人もいないわ」

チンスク「(やってみせて)こうやって刺すんだって何回言えばいいの?」
ソクテ「何で俺はうまくいかないんだ?」
チンスク「あんたは自習室で腐ってるときが一番光ってるね。私がやるから休みなよ。水でも飲んで」
ソクテ「水が無くなりそうだから、汲んで来ようか?」
チンスク「重くてあんたには持てないよ、休んでな。私が行ってくる」
ソクテ「俺だって力はあるんだぞ」
チンスク「こんな細い手首で力なんか出る?私が行ってくるから、休んでなよ」

立ち上がり、チンスクはまた溜息をついた。「力持ちなのはピルだけなのに、あいつどこ行っちゃったの?」

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美しい彫刻が施された噴水に、ピルは小銭を投げていた。「スジン、お前も願い事してみろよ」

スジン「そこらの噴水に願ったからって叶うものじゃないわ」
ピル「ダメもとだよ。これがホントに願いの叶う噴水になるかどうか、そんなの誰にもわからないだろ」

ピルはもう一度小銭を投げると、胸の前で手を固く握り、目を閉じた。

ピル(心の中で)「23年間、この人を想いながら告白できませんでした。今日は絶対に告白が成功しますように。もし今日も失敗したら、この噴水に身を投げて、この世におさらばします」

じっと願い事をしているピルの横顔を、スジンはそっと見つめた。
男の人は入隊前に告白するって聞いたけど…ひょっとして告白するつもりなのかな?
彼女もポケットから小銭を出し、噴水に投じて手を合わせた。

スジン(心の中で)「もしピルが私に告白するつもりなら、今日こそは絶対成功しますように!」

今日こそは…
ピルはこれまでにも告白しようとしてどうしても言い出せなかった歴史があった。

~~~~高校時代~~~~

自転車に色とりどりの風船や花を積み、完璧な演出で登場したピルは、満を持して下校するスジンの前に立ち塞がった。

ピル「カン・スジン!俺、お前…」
スジン「…。」
ピル「お前… お前…」
スジン「何よ?」
ピル「お前がス… お前… ス… おまっ」

困って座り込んだピルの前を、スジンがニヤリとして通り過ぎた。

ピル「カン・スジン!俺、お前を… おまっ… おい、どこ行くんだよ」

何も言えないまま後ろをついてくるピルの気配を感じ、しばし喜びを噛みしめると、スジンはくるりと振り返った。「それで?何が言いたいの?」

ピル「あぁ」
スジン「…。」
ピル「お前、俺、お前… 俺お前を… 俺お前のこと…」
スジン「…。」
ピル「ス、ス、ス…」

スジンはしびれを切らし、またしても背を向けた。

ピル「俺、お前のことス、ス、ス… 何で言えないんだ?」

そこへ後ろからやって来たチンスクが、哀れなピルを見て溜息をついた。「マヌケ」

~~~~~~~~

噴水の前で、二人は同時に目を開けた。

ピル「どんな願い事したんだ?」
スジン「秘密」
ピル「…。」
スジン「ところでさ、入隊前日に私と過ごすの、勿体なくない?」
ピル「俺は楽しいけど」

スジンは下を向き、小さく微笑んだ。

ピル「お前は?」
スジン「まぁ、別に良くも悪くもないけど」
ピル「なぁ、明日には会えなくなるのに、いるときに優しくしてあげなきゃって、そういう寂しさとか未練みたいなの、ないのか?」

「どうかな。それはよくわからない」スジンは噴水を見つめたまま、ポツリと言った。「あんたと一緒にいると、心配とか悩みとか、そういうの感じないの」

ピル「…。」
スジン「最近、仕事のことが心配でホントに辛かったけど、今はそんな考えちっとも浮かばなかったわ」
ピル「他のことはともかく、仕事の心配は要らないぞ」
スジン「え?」
ピル「俺、予知能力があるんだ。のちにお前はピッカピカのスタジオを構えて、大勢の予約客で夜も眠れないほど忙しくなるから、心配すんなよ」

スジンは思わず笑った。「言葉だけでもイイ気分だわ」

スジン「ところでピル、さっき私に何か話があるって言ってなかった?」
ピル「…あぁ。それ?」

スジンが緊張した面持ちで頷いた。「言ってみて」
ピルは少し目を閉じ、ふうっと息をつく。「そうだな。これから話すよ。もう後悔したくないから」

ピル「スジン」
スジン「…。」
ピル「俺さ…」
スジン「…。」

とそのとき、空からざぁっと雨が二人に降り注ぐ。

ピル「あっ」
スジン「カメラが!」

「カメラ貸しな」ピルはカメラを抱えると、スジンの手を引いて駆け出した。

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木の下に駆け込むと、ピルはリュックのファスナーを開ける。「待ってろ」
そこから出した黄色いレインコートに、スジンは目を丸くした。「ねぇ、雨が降るなんて、あんたどうしてわかったの?」

ピル「言ったろ。予知能力があるって」

そう言ってレインコートを広げると、彼はスジンの背中に手を回し、レインコートを掛けた。

スジン「でも、あんたの分は持って来なかったの?濡れちゃうじゃん」

「俺はなくてもいいから、濡れないようにちゃんと着てろよ」甲斐甲斐しくレインコートを着せ、最後にフードを被せてやる。
「ピル」黄色いレインコートのフードの中から、スジンがピルを真っ直ぐに見た。「私に言いたいこと、今日は最後まで全部言わなきゃダメよ」

#このセリフすごい!期待してずっと待ってたところに、雨のハプニングと彼の思いがけない優しさ。気持ちが盛り上がって、ここで“今度こそちゃんと言ってよね”っていう催促が出るの、すごくリアルじゃない?

ピル「…。」

「今、言えそうになくても…」スジンは着たばかりのレインコートを脱ぎ、ピルと自分をまるごと覆うように被せる。「今日中に絶対言ってね」

ピル「あ、あぁ、わかった、約束する」

スジンは満足気に雨空を見上げた。

ピル「なぁ、お前、濡れるぞ」

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雨に打たれながら水タンクを抱えて走ってきたチンスクは、階段の下に見える人影に、ハッとして立ち止まった。

チンスク「…!」

木の下で仲良く雨宿りをしている、ピルとスジンの姿だ。
「…。」ズブ濡れになるのも構わず、チンスクは茫然とそこに立ち尽くした。

そこへ傘を持って駆けてきたのはソクテだ。「チンスク、こんなとこで何してるんだ?」
チンスクの視線の先にいる二人に、ソクテも目をやった。「あれ、ピルとスジンじゃ?あいつら何してるんだ?」
近づこうとするソクテを、チンスクは止めた。「行っちゃダメ」

ソクテ「…?」
チンスク「ピルはスジンに会うつもりで、私の電話に出なかったのよ。だから、行っちゃダメ…」

「…。」チンスクはクルリと踵を返した。

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侘しい愛が
傘もささず、表で泣いている

誰の悲しみが雨となったのだろう
避けても濡れる 無数の雨だれ

「素敵~!」タルスの詠んだ詩に、チョンエが悶えた。「タイトルは何?」
彼らは3人で雨宿りだ。

タルス「イ・ヘインの“傘になって”」
クギル「イ・ヘインって修道女じゃないのか?修道女が詩を書くかよ?お前、チョンエが何も知らないからって嘘つくなよ」
チョンエ「イ・ヘインが修道女なわけないでしょ。歌手よ、歌手!そうよね、タルスさん?」

「…。」タルスは深い溜息をついた。「雨が止みそうだ。行こう、チンスクが待ってる」
タルスが脱いだコートを自分で被ると、すかさずチョンエが中に入る。「私も♪」

クギル「はっ!映画のつもりかよ」
チョンエ「(タルスに)気にしないで行きましょ」
タルス「人生は映画だ。さぁ、ゆっくり行こう」

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ここで区切ります。

1話からそうだけど、ピルが何か大事なことを言おうとすると、スジンは大きな目をパッチリ見開いて、ジーーーーッと見るよね。必ず^^
期待がにじみ出てて、ホントに可愛いです。

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