韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

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ネイルもカンタービレ(のだめカンタービレ韓国版)あらすじ&日本語訳 9話vol.2

   

チュウォン、シム・ウンギョン主演、「ネイルもカンタービレ/明日もカンタービレ」(韓国版のだめカンタービレ)9話後半です。

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教授会を後にしたユジンがやって来たのは、誰もいない大ホールのステージだった。
指揮台に立ち、彼は団員たちの座る椅子をじっと眺める。

ユジン「第1バイオリン。コンマス、チョン・シウォン」

バイオリニストたちの姿が浮かび上がる。
コンマスの席にいるシウォンが微笑む。

ユジン「第2バイオリン、ユ・イラク。ビオラ、イ・ダニャ。第1オーボエ、ク・ソンジェ。トランペット、イ・ジェヨン。ホルン、キム・ユジン。コントラバス、チェ・ミニ。ティンパニ、マ・スミン」

次々の彼の頭の中で団員の姿が増えていく。

ユジン「第一チェロ、イ・ユヌ」

「… お前は退け」ムッとしたように彼はユヌの姿を手で払った。

ユジン「…。」

願いを込め、ユジンはこれから出来るオーケストラに思いを馳せた。

#新米教師の成長ドラマか…。

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「おい、ユ・イラク!」急いで階段を駆け下りると、ユジンはロビーを通りかかるイラクを呼び止めた。

イラク「お前の電話番号なんかとっくに消したぞ。お前は”名無し”だ」
ユジン「まだ聞いてないのか?新しいオケを立ち上げる。ブラインドオーディションがあるんだ」
スミン「聞いたよ、チャ様。今、アン教授に会ってきたところ」
ミニ「それって… 私たちを落とすためなんでしょう?」
ユジン「何言ってんだ?」
イラク「ソリストとしてオレたちが勝てるわけねーだろ。仲良く落ちて身の程を知れって?

「そんなに自信がないのか」ユジンは思わず溜息をついた。

イラク「ないに決まってんだろ。ト教授とアン教授、二人共パスしなきゃなんねーのに」

スミンとミニも暗い表情で押し黙る。

イラク「ト教授が落ちこぼれ一掃を狙ってるのは、みんな分かってる」
ユジン「自信がないんなら練習しろ」
皆「…。」
ユジン「そうすりゃ自信が生まれるはずだ」

「どこかの名無しの言うことは意味わかんねーな」イラクが目を逸らし、ユジンの横を通りすぎて行った。

ユジン「…。」

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いつものベンチで、ユジンはじっと考え込んでいた。
ふとチラリと後ろを振り返って見る。

ユジン「今頃”先輩!”とか言いながら駆けて来るのが普通なんだがな。…ホントにもう追いかけても来ないのか。前は考え事をする時間もくれなかったのに、最近はえらく忙しいんだな…」

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「ネイル、お疲れ様」カフェでの演奏を終えたネイルに、ミニが食事を持って来た。
テーブルに移動し、彼女たちは軽食を摂り始める。

そこへやって来たのは、ユジンの母、ソニョンだ。「美味しい?」

「…。」ソニョンの顔を見るなり、ネイルは固まったように黙り込んだ。

ソニョン「?」
ネイル「ミニミニ、私先に帰るね」

ネイルはカバンを掴み、逃げるように店を出て行く。

#ただの子どもだよね

ソニョン「あの子…どうしちゃったの?私の前で変ね」
ミニ「…。」
ソニョン「クラシックの夕べが終わってから具合を悪くしてたって聞いたけど、よくなったの?」

「…知りません。私たち、ユジン先輩のせいでみんなそうなんです」ミニが下を向いて、精一杯の恨み言を吐いた。

ソニョン「ユジンがどうして?」
ミニ「…。」
ソニョン「あぁ!私完全に浮かれてたわよね…。写真まで撮っちゃって」
ミニ「はい。私、ホント寂しいです、社長」

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ネイルたちの様子が気になって、ソニョンは友人ミナのもとを訪れた。
学校で起きていることを知り、ソニョンはミナを責める。

ミナ「ごめん。でも、私は相談しただけよ。提案して来たのはユジンなの」

「でも…どうしたって恨まれる立場だわ」ミナは顔を曇らせる。

ソニョン「だから、何でそんなことをユジンにやらせるのよ?!あんたうちのユジンを…!」
ミナ「…。」
ソニョン「傷つけたら許さないわ」
ミナ「私がいつ傷つけたのよ?あんたとチャ・ドン…」
ソニョン「…。」
ミナ「ウ。…ごめん」
ソニョン「いいのよ。アノ人がユジンを傷つけるのは昨日今日のことじゃないんだから」
ミナ「ドンウさん、ホント顔ひとつ見せないのね。理事長が公演のために招待状送ってるんだけど」
ソニョン「そんな公演観に来る人じゃないわ。自分の息子だろうと最高じゃなきゃ目もくれないのに」

「一生顔も見たくないわ」ソニョンは溜息をついた。

そこへミナの電話が鳴る。

『発信者:フランツ』

彼女は迷わず拒否ボタンを押した。

ミナ「簡単に許すわけないでしょ」

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ユジンがマンションの前へ帰って来ると、引っ越し業者がトラックから荷物を運び入れていた。
そばに立っていたのは… ユヌだ。

ユジン「何でお前がここに?」
ユヌ「引っ越してきた。ここの2階に」
ユジン「2階に?何でだよ?」
ユヌ「何でって?住む家が必要だから」
ユジン「…。」
ユヌ「たびたび会うことになるな」

「よろしく」ユヌが右手を差し出す。

ユジン「…。」

ユヌが出した手を無言で見つめると、ユジンは硬い表情でそのまま彼の横を通り過ぎた。

#冬ソナの1話で、サンヒョクが「잘 지내보자」って全く同じセリフで握手しようとしたのを、チュンサンが無視したことを不意に思い出した(トオイメ

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「はぁ、あいつには感動するね」3階へ上がってくると、ユジンはぶつぶつぼやいた。

ユジン「イラクの店にSオケ。ソル・ネイルのいるところに現れては、甲斐甲斐しくしやがって。何が目的なんだ?」

彼はネイルの部屋の玄関を振り返った。「…。」

ユジン「(笑)そんなわけない。何でソル・ネイルに…」

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部屋の前まで帰ってきたところで、ネイルの携帯が鳴った。

ユヌ(メール)「引っ越しパーティーに招待します。住所は地図と一緒に添付します」

メッセージを手繰って、ネイルは声を上げた。「えぇ?」
彼女はそのまま廊下を戻る。

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ネイルがやってくると、すでにユヌの部屋ではイラクたちがすっかり盛り上がっていた。

ネイル「うちの下がユヌ先輩の部屋なんですか?」
ユヌ「不思議だろ。まさにオレの求めてた部屋が急に空いたんだ」

「怪しい」スミンがユヌとネイルを交互に指さす。

「食おうぜ!」イラクが声を上げる。「焼き肉なんて、チャ・ユジンは家に臭いがつくからって大騒ぎだったのに。さすがユヌは違うよな」

スミンは寂しそうに天井を見上げた。「チャ様はご飯食べたのかな…」

ネイル「…。」
イラク「気にすんなって言ってんだろ!どんどん食え!」

上機嫌で騒ぐ彼らの様子を、ユヌは嬉しそうに眺めた。

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下の階の楽しそうな声は、静かなユジンの部屋に否が応でも響いた。

ユジン「…。」

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テーブルの上にポツンと置かれたナッツをつまみながら、ユジンは顔をしかめる。
彼はとうとう立ち上がった。

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ユジンが2階へ降りてくると、ちょうど帰ろうとする彼らの姿がマンションの前に見えた。
イラクたち3人が手を振って去っていく。
2階から眺めるユジンの視線は、残ったユヌとネイルへと移った。

イラク「ああしてると、ネイルも女の子だな」
スミン「元から女の子でしょ」
ミニ「女の子って言うのはね、お姫様扱いしてくれる男の人の前では、女になるんですよ」
二人「なるほどねぇ」

「私も帰りますね」ネイルが頭を下げ、中に入ろうとすると、ユヌがそっと呼び止めた。「あのさ、ネイル」

ユヌ:
나랑 이중주 안할레?
オレと二重奏しない?

ネイル:
저랑 왜요?
私と…どうして?

ユヌ:
네 피아노랑 같이 연주해 보고 싶어.
진지하게 생각해 봐 줬으면 해.
君のピアノと一緒に演奏してみたいんだ。
真剣に考えてみてくれないかな。

ネイル:
근데 저랑 이중주 하는 게 그렇게 중요한 일이에요?
私と二重奏するのって、そんなに重要なことなんですか?

ユヌは少し考えを巡らせる。

ユヌ:
중요한 게 아니야.
重要なんじゃない。

ネイル:
그렇죠?
ですよね?

緊張していたネイルはホッとしたように笑った。

ネイル:
선배, 오늘 감사했습니다.
그럼 이제 들어가 볼게요.
先輩、今日はありがとうございました。
じゃ、もう帰りますね。

ユヌ:
…간절해.
…切実なんだ。

ネイル:
?

ユヌ:
윤이송음악제 때 네가 연주했던 물의 유희를 듣고 나서부터 지금까지 쭉 그 생각만 했어.
ユン・イソン音楽祭のとき、君が弾く”水の戯れ”を聴いてから、今までずっとそればかり考えてた。

ネイル:

ユヌ:
나 너랑 연주하고 싶어.
네가 차유진과 하고 싶은 마음 그 이상으로.
君と演奏したいんだ。
君がチャ・ユジンと演りたいと思う気持ち… それ以上に。

「…。」ユジンのように演奏したい… 切実に思った自分の気持ちを、ネイルは辿る。

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#この佇まい。 「主君と太陽」8話で、プールサイドにただ座っているジソ氏の姿に唸ったときのことをチラッと思い出した。(リンク先の一番下の写真がそうです)
チュウォンくんはこの先、年齢を重ねるのがホントに楽しみですね。

一人考え事をしていると、ユジンの電話が鳴った。
「国際電話です」画面にはそう表示されている。

「さっさと出なさいヨ、弟子」電話の向こうから聴こえてきたのは、師匠の声だ。

ユジン(電話)「師匠!」
シュトレーゼマン(電話)「ミナがワタシの電話に出てくれまセン。3日に1度だけ許される電話を、オマエに使うとは」
ユジン「お元気そうで良かった」
シュトレーゼマン「耳が腐ってるんですか?お元気じゃありませんヨ。ミナが電話に出ないんです」
ユジン「あんな去り方をしたのに、学長が電話に出たいわけないでしょう。
シュトレーゼマン「今回は逃げたんじゃありません。無理やり連れて来られたんですヨ」
ユジン「そりゃそうです。公演を前に脱走するなんて」
シュトレーゼマン「こんなだから逃げ出したんです。24時間練習ばかり。息が詰まりマス」

ユジンは小さく息をついた。「分かりました」

ユジン「学長によくお話しますから。電話に出るようにって」
シュトレーゼマン「Oh、トーゼンです」

ユジンは深い溜息をつく。

シュトレーゼマン「ふむ。その溜息はどうしました?若いヤツが」

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ベンチを離れ、歩きながら二人の会話は続いていた。

シュトレーゼマン(電話):
그래서 Baby가 너무 느려서 답답합니까?
네놈은 날고 싶은데 Baby는 걷지도 못해어요?
근데 제자, 너는 왜 Baby를 날게 하고 싶은 겁니까?
それで、ベイビがのんびりしているのがモドカシイ?
オマエは飛び立ちたいのに、ベイビは歩くことも出来ないから?
だけど弟子、君はどうしてベイビを飛び立たせたいんでスカ?

ユジン(電話):
저렇게 두는 건 재능 낭비잖아요.
저 재능을 가지고 왜 무시당합니까?
자랑하고 보여주고!
あのまま放置しているのは才能の無駄遣いでしょう!
あんな才能を持ってるのに無下にされることなんてありませんよ。
誇って、皆に見せて…!

シュトレーゼマン:
네가 왜요?
왜 자랑하고 싶어요?
君がナゼ?
なぜ誇りたいんです?

ユジン:

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ピアノ棟へやって来たユジンは、レッスン室から聴こえてくるピアノの音に足を止めた。
部屋の中でネイルがピアノを弾いているのが見える。

※Gabriel Fauré Sicilienne Op78 ガブリエル=フォーレ 『シシリエンヌ』ト短調 作品78

楽しそうに弾く彼女の姿を見つめるうちに、ユジンの顔に笑みがこぼれる。

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と、不意にネイルがピアノを弾く手を止めた。

ネイル「ここまで。私たちの二重奏の曲なんです」
ユジン「?」

すると、部屋の奥からユジンの視界に入って来たのは、ユヌだ。

ユヌ「オレたちの二重奏?」
ネイル「楽しそうでしょ?先輩と演ってみます」
ユヌ「…。」
ネイル「演ってみたくなったんです」

ユヌは静かに微笑んだ。「ありがとう」

ユジン「…。」

ユジンの頭の中に、シュトレーゼマンの言葉が浮かぶ。

シュトレーゼマン(声)「手遅れになってはいけませんよ。感情を表現するのも、認めるのも」

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掲示板にオーケストラのオーディション公告が貼りだされた。
じっと見つめていたイラクは、誰かの声に驚いて振り返る。

シウォン「あんた最近、私のこと避けてるみたい」

突然現れたシウォンに彼は狼狽する。

イラク「あっ!避けてるんじゃなくて、今オレたちの関係はちょっと…」
シウォン「それは分かってるけどさ、それでも会わなきゃ。私が探さなきゃいけない?」
イラク「お前が探してくれれば… オレはまぁ拒否できないけど(ニヤニヤ)」
シウォン「…。」
イラク「いやダメだ!オレたちは今ロミオとジュリエット!対立関係なんだ」
シウォン「何言ってんのよ。コンマス同士、対策立てるべきでしょ」
イラク「コン…マス?お前とオレ… はコンマス同士だよな♥」

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イラクとシウォンは早速イラクの父の店に場所を移た。
食べきれないような大皿を運んできたイラクに、シウォンは目を丸くする。

イラク「腹減ってるだろ?とりあえずは食べながら話そうぜ」
シウォン「何でこんなに?こんなたくさん食べられないよ」
イラク「一人で食えって言ってないぞ。オレもハラペコなんだ。二人で一緒に食えばイイ^^」

二人は一皿のパスタを分けあって食べ始めた。

シウォン「あんた、このままチャ・ユジンのところへ戻るの?」
イラク「それじゃ何だ?どうしろって?」
シウォン「ブラインドオーディションなんて、あんたも嫌でしょ?」
イラク「…。」
シウォン「私だって。うちの団員たちに絶対そんなことさせられない。プライド高い子たちだし、きっと半分は抜けると思う」
イラク「オレたちはどうだって言うんだよ?プライドないからオーディション受けるだろうって?自信のないヤツらは放っておけよ」
シウォン「私たち同士で争うことないでしょ?共通の敵がいるのに」
イラク「共通の敵?」

シウォンは頷いた。

イラク「チャ・ユジン?!」

+-+-+-+

ユジンは再び学長の元を訪れた。

学長「本当に大丈夫?あの子たち、随分誤解しているみたいだわ」
ユジン「オーディションが終われば分かるでしょう」
学長「もし失敗したら…」
ユジン「そんなことはありませんよ。学長」
学長「?」
ユジン「オーディションが終わったら、僕も元の場所へ戻ります」
学長「…。」
ユジン「…そうします」

+-+-+-+

「チャ・ユジンのブラインドオーディション、ボイコットしようよ」シウォンの提案に、イラクは息を呑んだ。

イラク「ボイコット?!」
シウォン「AオケもSオケも誰も受けなければ、このオーディションは無効に出来る」
イラク「…。」
シウォン「それに私、これ以上学長とチャ・ユジンに乗せられたくないの」
イラク「…。」
シウォン「どう?私たちが手を組めば、オーディションを潰せるわ」

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結局ボイコットを承諾したイラクは、メンバーたちに伝えた。
オーディションには気が進まないものの、ボイコットという言葉に皆顔を曇らせる。

スミン「私たち… チャ様にそんなことしていいの…?」
イラク「お前、そろそろ目を覚ませよな」
スミン「…。」
イラク「ネイルとユヌには言うなよ。あいつらはどうせオーディション受けないから」
ミニ「本当にAオケも受けないって?」
イラク「…。」
スミン「私たち…ホントにそんなことしていいの?」
イラク「チャ・ユジンも失敗ってやつを経験するべきだ。皆はいつも経験してることを、あいつは一度だって経験したことないだろ」

+-+-+-+

誰もオーディションに申し込みをしていないとアン教授から聞き、学長は焦りを募らせた。

学長「SオケもAオケも全員ですか?」
アン教授「何を考えているのか、集団ボイコットをするつもりのようですね」
学長「ユジンは知っているんですか?」

+-+-+-+

ユジンがシウォンの元へ乗り込む。

ユジン「お前らしくないじゃないか。お前たちに不利なオーディションじゃないだろ。実力で選ぶのに何で避けるんだ?」
シウォン「Aオケはあんたにとってただエリート意識にとらわれた集合体かもしれないけど、コンマスの私にとっては大切なものだった」
ユジン「!」
シウォン「それを潰したのが、あんたと学長よ」
ユジン「Aオケの団員たちも同じ考えなのか?」
シウォン「…。」
ユジン「じき留学するヤツらが大半だ。あいつらにとって、オーケストラは経歴であり経験に過ぎない」
シウォン「…。」

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シウォンは黙って彼の前を後にする。

+-+-+-+

イラクが家の前へ帰って来ると、そこで待っていたのはユジンだった。
重苦しい表情で溜息をつくユジンの横顔に、イラクもまた溜息をつく。

イラクが目の前を黙って通りすぎようとすると、ユジンは封筒を差し出した。「志願書だ」

イラク「…。これを渡すためにわざわざ来たのか?感心だな」
ユジン「お前らしくないぞ、ユ・イラク。いいチャンスでもあり、最後のチャンスなんだ」
イラク「説教すんな!指揮者だったお前の言うことは聞いたけど、今は違う」
ユジン「何でそんなに信じられないんだ?」
イラク「オレらを捨てたのはお前だ」
ユジン「俺じゃなくてお前ら自身のことだ!」
イラク「何?」
ユジン「お前らは大丈夫だって、オレは信じてるのに、何でお前自身は信じられないんだよ?」
イラク「…。」
ユジン「お前の言う通り、オレは指揮者なのに… 誰よりお前らのことを把握してるのに!そんなオレがお前らは大丈夫だって信じてるのに!!!」
イラク「…。」

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押し黙るイラクの胸に志願書の封筒を押しつけ、ユジンは帰っていった。

イラク「…。」

+-+-+-+

店の入口の階段に座り込み、イラクは志願書を眺めていた。
父親が出てくると、彼はそれをそっと封筒に戻す。

父「男の悩みか?女の悩みか?」
イラク「女の悩みなら、こんなに頭が痛くて悔しくもないぞ」

父親が静かに微笑んだ。

イラク「オヤジ、オレよく分かんねーよ。ユジンはどうしてあんなこと…?ホントにオレたちを追い払うつもりなのか?けど、そんなことより、ただ腹が立って、ぶん殴ってやりたくてさ」
父「イラクはユジンのことがすごく好きなんだな」
イラク「!」
父「感情が深けりゃ、怒りも深いもんだ」
イラク「…。」

+-+-+-+

ネイルが部屋へ帰って来ると、ドアの前にユジンがいた。

ネイル「!」
ユジン「…。」

彼は彼女に向き直ると、気だるそうにもう一度ドアにもたれかかる。
酔っているようだ。

ネイルは家に入ろうとドアに手を掛けた。

ユジン「何でなんだよ」
ネイル「…何がですか」
ユジン「何でオレを追い回さない?」
ネイル「…。」
ユジン「前はウザいくらい追い回したろ。仔犬みたいにな」
ネイル「先輩がウザがるから」
ユジン「それでも追い回したろ。ガラクタをうちへ持ち込んで、好き勝手に追い回して。好き勝手にうちの家に出入りして」
ネイル「だから嫌なんでしょう?」
ユジン「…。トーゼンだろ」
ネイル「嫌なんだから、もうやりません」
ユジン「…。」

パスワードを手早く打ち込むと、ネイルはドアの中へ消えて行った。

ユジン「…。」

彼は思わずその場に座り込んだ。

ユジン「…好き勝手しやがって」

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ユジンを拒絶して家に入ったネイルは、やはり後ろ髪引かれて振り返った。
玄関に戻り、ドアにそっと耳をつけてみる。

ネイル「お酒呑んだのかな?匂いがしてたけど」

我慢できずに開けてみると、そこにもう彼の姿はなかった。

+-+-+-+

オーディションの当日がやって来た。
会場へ来たユジンは客席の中央から誰もいないステージを見つめる。

ト教授「アン教授ももうすぐ来るそうだが、誰も志願していないらしいな」
ユジン「…。」
ト教授「それなら、オーディションは当然無効だな」

駆けつけた学長も、人気のないホールに呆然とする。「本当に誰も来ないの?」

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客席の真ん中にユジンは静かに座っていた。

そこへ顔を見せたのはネイルだ。

彼女は両手を握りしめて目を閉じているユジンと、誰もいないステージを交互に見比べた。

ネイル「先輩、すごく落ち着かないみたい。どうしたのかな…?」

ホールを出たネイルは、ミニに電話をかけた。

ネイル(電話)「どうなってるの?どうして誰もオーディションに来てないの?…え?ボイコットするって?!AオケとSオケ、全員?!!」
ミニ(電話)「あんたに言ったらユジン先輩に話すだろうと思って、言わなかったんだ」
ネイル「ちょっと!それはヒドいよ!…そしたら、ユジン先輩はどうなるの?」
ミニ「知らない。学長と一緒に責任取るんでしょ。話終わったんなら切るよ」

電話はプツリと切れた。

「!!!」ネイルは思わず走りだす。

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「何だよ」駆け込んできたネイルに、イラクがやけに静かに言った。「電話すりゃいいだろ」

ネイル「ラク君、ユジン先輩のオーディション、ボイコットするって?!」
イラク「…。」
ミニ「ラク先輩を責めないでよ。私たちみんなで決めたんだから。私たちがどうたってAオケと戦えるの?」
ネイル「駄目だって!私たちにくれた最後のチャンスかもしれないんだよ!」
ミニ「チャンスをくれるつもりなら、うちが解散になるのを知って出て行ったりしないよ」
ネイル「…。」

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頑なに押し黙る彼らを前に、ネイルは絶句した。

ネイル:
그래도… 유진선배였어요.
それでも… ユジン先輩でしたよ。

イラク:
뭐가?
何が?

ネイル:
미르희가 우리 버렸을 때 우리한테 제일 먼저 달려와 준 사람이요.
ミルヒが私たちを捨てたとき、一番最初に駈けつけてくれた人です!

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「…。」スミンが顔を上げる。
イラクが悲しそうに目を細めた。

221

ネイル:
그리고 맘보 공연했을 때 지휘자 사라졌다는 문자 받고 바로 와 줬단 말이에요!
それに、マンボを演った時、指揮者がいなくなったってメールしたらすぐ来てくれたんですから!

スミン:
정말?!
…そうだったの?!

+-+-+-+

ネイルは足早にホールへの階段を上がった。
そこへ通りかかったユヌは、ただならぬ様子に驚いて彼女を見上げる。

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#ユジン先輩の佇まい収集

ホール前の暗い廊下に、ユジンは一人でいた。
ネイルは黙って、彼の隣に腰を下ろす。

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#葬式帰りか

ユジン「みんな… オーディションに来ないって?」
ネイル「…はい」

ユジンはふっと笑い、下を向いた。

ユジン「こうなるとはな。今まで一緒にやった時間分だけでも、信じてくれるかと思ったのに」
ネイル「言わなきゃ分かりようがないですよ。いつも一人で考えて、一人で決めて。一度だって私たちがどう思うか聞いてくれたことないでしょ」
ユジン「…。」

224

立ち上がろうとしたネイルの手を、ユジンが掴んだ。

ネイル「!」
ユジン「…。ト教授のこと…ごめん。オレが悪かった」
ネイル「…。」
ユジン「お前が怖がるのを分かってて、行かせようとした。そんなことしちゃいけなかったのに…お前の気持ちを先に訊くべきだったのに… ひとりよがりだった。お前のためになるから、いいと思ったんだ」

ユジンの素直な言葉に、ネイルがニッコリ微笑む。
彼女の横顔を、ユジンは静かに見つめた。「ごめんな」

ネイル「私はむしろ感謝してます」
ユジン「…?」
ネイル「私たちにチャンスをくれようとしたこと」

そういって見つめ合う二人の顔は、とても穏やかだった。

+-+-+-+

誰も来ないオーディション会場の審査員席に、それでも二人の教授は待機していた。
我慢できなくなったト教授は、テーブルを扇子でドンと叩き、立ち上がる。
アン教授がすかさず彼の腕を捕まえた。

アン教授「それでももう少し待ってみましょうよ」
ト教授「来るつもりならもう来てるでしょう!審査員が学生を待つなんて!」

そこへスタッフが顔を見せる。「そろそろ始めてもよろしいですか?時間ですが」

ト教授「何を始めるって?」
スタッフ「オーディションです。皆待機していますが」

「?」「!」二人の教授は顔を見合わせた。

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団員たちが大急ぎで走っていた。

イラク(メール):
우리 차유진 한번 믿어 볼래?
그놈은 우리 믿는다잖아.
オレたち、もう一度チャ・ユジンを信じてみないか?
あいつがオレたちのこと信じるっていうんだから。

イラクからのメールが団員たちに一斉に飛んでいた。

イラク(メール)
우리 믿어 준 거 생각해 보면 그놈이뿐이더라고.
미안. 나 먼저 간다!
オレたちを信じてくれたのは、アイツだけだ。
悪い。オレ、先に行くわ

走っていたミニたちは、ロビーで顔を合わせる。

ミニ「メールみました?ラク先輩の裏切り者、ボイコットしようとか言っておいて、一人でオーディション行くって」
スミン「そうよ!で、ミニミニはどこ行くの?」
ミニ「え?私?それは…。そういうスミン先輩は?」
スミン「私?私はまぁ…」

「さっさと行くぞ」じれったくなった木管コンビの一声で、彼らは揃って駈け出した。

+-+-+-+

ト教授「Aオケが先に来るわけはないから、当然Sオケの団員でしょうね」
アン教授「それでも良かったですよ。ボイコットはヤメにしたようで」
ト教授「そうしたところで無駄でしょうよ。どうせあの実力じゃ落ちるのに、わざわざ何で来たんだか」

知らせを聞いて急いで客席へ入って来たユジンの前で、ステージ上に一人のシルエットが浮かび上がる。
その学生はバイオリンを構えると、演奏を始めた。

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固唾を呑んで演奏を見つめるユジンの横顔をそっと見上げると、ネイルは黙って彼の手を握った。

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ここでエンディングです。

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