韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!セリフを題材にした文法解説も

ホテル・デルーナ12話あらすじ&日本語訳~後編

      2020/08/15

IU(イ・ジウン)、ヨ・ジング主演のtvNドラマ『ホテル・デルーナ(호텔 델루나 )』12話、後半のあらすじを、セリフの日本語訳もまじえて紹介していきます。

怨霊と化した殺人鬼

ジウォンが屋上から飛び降りたのを見て、チャンソンは慌てて階段を駆け下りる。

マンウォル「…。」

背後に気配を感じて振り返ると、霊となったジウォンが立っていた。

マンウォル「私が見えるようになったのね」
ジウォン「本当だ。死んだら終わりじゃなかったんだな」
マンウォル「あんたは霊になったの。ク・チャンソンは望んでなかったけど、私はさっさとくたばればいいと思ってたわ」

「…。」ジウォンは自分の手を不思議そうに見つめる。

マンウォル「生きてる人間に手を出すわけにはいかないけど、あんたみたいな怨霊なら、話は別」
ジウォン「怨霊?」
マンウォル「あんたにはゴミ収集車がお似合いよ。粉々にしてやるわ」
ジウォン「!」
マンウォル「ゴミクズになってあの世へ行きなさい」

握った黒い扇子を力いっぱいジウォンに突きつけると、黒い妖気を発し、ジウォンを飲み込もうとする。
が、何らかの力がバリアとなり、マンウォルの攻撃を跳ね返した。

マンウォル「どういうこと?何が邪魔してるのよ?!」
ジウォン「願いが通じたんだ!みんなが俺の呪いを応援してる!」

ジウォンはHellloサイトにこう書き込んでいた。

『命と引き換えに、私の人生を台無しにした人間ク・チャンソンを呪う』

それに共感する返信が殺到していたのだ。

マンウォル「穢らわしい力を貰ったってわけね」
ジウォン「ク・チャンソンを守ってるあんたは何者なんだ?」
マンウォル「黙りなさい、このクズ。臭うわ」
ジウォン「!」
マンウォル「あんたを包んでる穢らわしい力を剥いで、ずたずたに引き裂いてやる。期待してなさい」

「もっとデカくなってやる」ニヤリとして挑発すると、ジウォンは背を向けた。

+-+-+-+

チャンソンが駆けつけたのは、病院の裏口前で息絶えた、ソル・ジウォンの遺体のもとだ。
遺体はその場にいた警察によって、速やかに回収された。

パク警部「ソル・ジウォンによるHellloサイトへの書き込みは、直ちに削除措置を取りました。ただ、それまでに拡散されたものはどうしようもありません。申し訳ない」
チャンソン「パク警部に非はありません。では、僕はもう帰ってもいいですか?」
パク警部「はい」

会釈して背を向けたチャンソンを、パク警部が呼び止めた。「あの」

チャンソン「?」
パク警部「ワインバーに女性が一緒にいらっしゃいませんでしたか?」
チャンソン「…。」
パク警部「ワインバーから電話があったんですが、電話の主が死んだイ・ドヨンさんだとか何とか…」
チャンソン「…。」
パク警部「そんなことあり得ませんけど、ひょっとしてと思って」
チャンソン「ご本人かもしれませんね」
パク警部「?」
チャンソン「僕は霊を信じています。転生も」

「あぁ、転生」パク警部は少し困ったように笑った。

チャンソンは彼が手元に広げている手帳に視線を落とす。
捜査のメモだろうか。絵が描いてある。

チャンソン「絵がお上手ですね。手先が器用だ」
パク警部「ありがとうございます」

「では」チャンソンは笑顔で頭を下げた。

※マンウォルがヨヌを「手先が器用な子だった」と懐かしんだことを元に、チャンソンが転生を信じていることを強調していますね。チャンソンを見送ったあと、パク警部が少し首を傾げて考えているのが印象的です。

+-+-+-+

チャンソンはマンウォルのいる屋上へ戻った。「ソル・ジウォンは死にました」

マンウォル「知ってるわ。霊に会ったから」
チャンソン「…。」
マンウォル「怨霊になったわ。あんたのこと恨んでる」
チャンソン「えぇ。僕を呪う書き込み、読みました。反響が大きくて… ショックです」

「あぁ!」マンウォルが苛立ちを募らせる。「粉々にしてやろうと思ったのに!」

マンウォル「扇子より銃を持ってくるべきだったわ」
チャンソン「あなたが捕り逃がすほど強いんですか?」
マンウォル「大したことないって言いたいけど… そんな状況じゃないわね」
チャンソン「!」
マンウォル「ク・チャンソン。あいつを捕まえるまで家に帰っちゃ駄目。私にピッタリくっついてなさい」

百戦錬磨ク・チャンソン氏

チャンソンが執務室のソファで目覚めると、顔を覗き込んでいたマンウォルがくすりと笑った。

「…。」思わず見惚れて… はっと我に返る。

マンウォル「よくこんなところで寝られるわね」
チャンソン「ホテル内で僕が寝られる場所は、404号室とあなたの部屋だけじゃないですか」
マンウォル「…。」
チャンソン「404号室から出たら、そこは仁川。出勤するのに疲れます」(←疑問が解けた!
マンウォル「誰が404号室で寝ろって?私の部屋で寝ればいいでしょ」
チャンソン「!」
マンウォル「私の按摩器でゴオーーっってやって、アイマスクつければ熟睡できるわよ」
チャンソン「だからって、あなたの部屋で僕が熟睡できると思いますか?」
マンウォル「…確かに。ク・チャンソンは“健康”だから」

ニヤリとするマンウォルに、チャンソンはうんざりした様子だ。

マンウォル「ちゃんと睡眠を取らなきゃいけないのに… 気の毒だわ」
チャンソン「それなら行きましょう。チャン・マンウォルさんの部屋で眠らせてください。按摩器より腕枕がいいんですが」
マンウォル「!」
チャンソン「チャン・マンウォルさんが腕枕してくれれば、按摩器なんて。(頭を撫でる仕草)ナデナデしてください」
マンウォル「!!」
チャンソン「熟睡… できるように」
マンウォル「どうしたのよ、いやらしい」
チャンソン「(ジーッ)」

「やったげるわよ」困ったマンウォルが手に持っていた携帯扇風機を向けた瞬間、チャンソンが手首を掴み、ぐいと引き寄せた。

マンウォル「!!!」
チャンソン「…。」

熱くマンウォルを見つめると、扇風機をくるりと彼女の顔に向ける。

チャンソン「自分の心配をしたほうがいい。顔が真っ赤だ」

#今までちゃんと気づいてなかった。チャンソンって実は百戦錬磨だった。

生命線の謎

気を取り直し、マンウォルはチャンソンを鍼治療に誘った。
死者をも蘇らせると評判の名医で、死にかけていた人が3年経っても生きているという。

さっそく医院を訪れ、2人は並んで診察を待った。
名医と聞いてチャンソンが想像していた人物とは、かなり印象が違っている。
やたらと商売に熱心なのだ。

マンウォル「あの医者が無理やり延命してる患者、デルーナへ連れて行かないと」
チャンソン「まだ生きているんでしょう?どうやってデルーナへ?」
マンウォル「殺すの」
チャンソン「?!」
マンウォル「殺して連れて来るよう、死神に言われたわ」
チャンソン「死神のおつかいもやってるんですか?!」
マンウォル「おつかいじゃないわ。取引よ」

~~~~~~~~

死神の力を借りるため、マンウォルはデルーナのスカイバーで話を持ちかけた。

#なにげに死神さん、めっちゃスカイバーの常連客ですよね♪

マンウォル「処理したい奴がいるの。死神の力を借りたいのよ」
死神「そなたの力で解決できないなら、かなり強い奴であろうな」
マンウォル「怨念が強くて、下手に手を出せば仲間が傷つくかもしれないわ」
死神「…。」
マンウォル「そっと捕まえて私の前に連れて来て」
死神「チャン社長の頼みだ。受けてやるさ」

ショットグラスの酒を飲みほし、死神が続ける。「その代わり」

死神「私の頼みも聞いてもらおう」
マンウォル「言ってごらんなさい」
死神「厄介な亡者がいるのだ。死神にとっては恥ずべき未処理案件と言える。その亡者をデルーナに連れて来てくれれば、私もその怨霊を捕らえてやろう」

「取引成立よ」2人はグラスをカチンと合わせた。

~~~~~~~~

もちろんマンウォルが捕獲したいのはソル・ジウォンだ。

チャンソン「ソル・ジウォンはそんなに危険なんですか?」
マンウォル「怨霊になってあんたに憑いたのは、きっと私のせいよ。麻姑神に言われたの。あんたは花を咲かせた代償を払うことになるって」
チャンソン「あなたの花を咲かせた代償に… 怨霊が憑く?」
マンウォル「あんたにそんな代償を払わせたくないから、可能な限り私が片付けるわ」
チャンソン「それは有り難いですね」

「ク・チャンソンさん」看護師が呼びに来た。
マンウォルは雑誌の隅にあった小さな広告をちぎり、チャンソンに握らせた。「これを見て来たって言いなさい」

+-+-+-+

「ふうむ」チャンソンの脈をとりながら、医師はわざとらしく唸った。
チャンソンはストレスが溜まっているそうだ。
鍼と薬を勧める医師に、チャンソンは切り出す。「私に必要なのは鍼や薬ではありません」

チャンソン「私のストレスは金銭問題が原因です」

「これを見て来たんです。お金が必要で」チャンソンがちぎった広告を差し出す。
電話番号が載ったシンプルな金貸しの広告だ。

医師「!」
チャンソン「先生の番号ですよね?」
医師「ちょうど良かった。こちらも急いでいたんです」

「確認したいことが」医師はチャンソンの手のひらを覗き込んだ。
必要なのは“生命線”だ。
申し分のない長さだった。

医師「あなたの生命線を1センチだけ切らせてください。5000万ウォン差し上げます」
チャンソン「!!!」

+-+-+-+

人の生命線を移植し、延命する。
確かに名医だ。
相応の謝礼も払っているし、騙しているわけでもない。
取引自体に問題はないから、死神にも手が出せなかったのだ。

チャンソン「生命線を売った人は、本当に命を売ったとは思っていないでしょうね」
マンウォル「楽して5000万儲かったと思ってるはずよ」
チャンソン「それをさらに売ってボロ儲けているんでしょうね。財閥や政治家に売るんでしょうか」

「まぁ…」マンウォルは少し言いよどむ。「すごい人に移植するんでしょ」

マンウォル「夜には移植手術があるから、その前にお肉を食べておかなきゃ」
チャンソン「あなたが食べたいだけでしょう?」
マンウォル「この近くに…」
チャンソン「“キム・ジュニョンが行ってた店があるの♪”」←可愛すぎる
マンウォル「!」
チャンソン「(ニコニコ)わかってますってば。行きましょう」

+-+-+-+

「子どもなんですか?」チャンソンが驚いて訊き返した。

マンウォル「そう。殺して連れて行かなきゃいけないのは、あの医者夫婦の子どもなの」

医師は我が子を救いたい一心で、金に困っている人から生命線を買い上げ、子どもに移植していた。
やたらと商売熱心に見えたのは、生命線を買う金を稼ぐためだ。

彼女を見守る、小さな存在

死神と麻姑神は、並んで月齢樹を見上げていた。

麻姑神「マンウォルがこれほどキレイに花を咲かせるとは」
死神「花が散れば、月齢樹の寿命は尽きるのですか」
麻姑神「如何にも。それがあの子の“死”だ」
死神「ようやくチャン・マンウォル社長もあの世へ行けるのですね」
麻姑神「実に長かった。マンウォルにとっても、あそこに小さなホタルとして残った… “あの人”にも」

美しい青い花と戯れるように、枝の間をホタルが一匹、飛んでいる。

麻姑神「あの世へ向かう途中で戻り、ずいぶん長く持ちこたえたものだ。そなたもそろそろ旅立たねばな」

~~~~~~~~

千年の過去。

捕らえられたマンウォルの痛々しい姿を見つめながら、チョンミョンはある言葉を反芻していた。

『お前は裏切り者として生きろ。そうすればマンウォルは助かる』(ヨヌの声)

チョンミョン「…。」

悲しみがこみ上げる。
チョンミョンは満月の髪飾りを力いっぱい握りしめた。

~~~~~~~~

死神「言われたとおりそっとしておきましたが、人間の魂が小さな光となり、これほど長く持ちこたえるとは、驚きました」
麻姑神「自ら掛けた呪いだ。マンウォルとの最後の約束のためにな」
死神「花を咲かせた代償を軽くしようと、チャン・マンウォル社長が私に依頼を持ちかけてきました」
麻姑神「どんな代償を払うことになるのか、マンウォルはまだ知らないようだな」

「知れば… 恐れ悲しむことだろう」麻姑神は顔を歪ませた。

命を削り与える夫婦

夜になった。
手術を待ちながら、チャンソンは手のひらをじっと見つめる。
人の生命線を買い取り、我が子へ移植する両親の気持ちに思いを馳せていたのだ。

マンウォル「…。」

広げた手のひらに、マンウォルはそっと自分の手を重ねた。

チャンソン「?」
マンウォル「奪われないように守ってあげるわ、あんたの生命線」

チャンソンはその手をしっかり握り返す。「手放したくないんでしょうね」

マンウォル「?」
チャンソン「絶対に死なせたくない、切実な思いなんでしょう」
マンウォル「…。」

+-+-+-+

医師と共に、チャンソンは診察室へ移った。

医師「あまり痛まないように1センチだけ切除します」
チャンソン「切って、お子さんに与えるんですか?」

「!」メスを磨いていた医師の手が止まる。

チャンソン「病気のお子さんがいらっしゃると聞きました」

医師はメスを置き、椅子に腰を下ろす。「かなり悪いんです」

医師「外国に手相手術なるものがあると聞いて、藁をも掴む思いでやってみたら、奇跡のように息子が生き延びて…」
チャンソン「ご夫婦お二人ともお若いのに… 苦労なさっているようですね」

医師夫婦は揃って白髪が多く、かなり老け込んでいる。

医師「子どもは幼いのに、私も妻も随分老けました。人には孫と間違えられます」

+-+-+-+

マンウォルが向かったのは、医院の一番奥にある病室だ。
夫妻の息子がベッドで本を読んでいる。

※この子が読んでいる本がヘルマン・ヘッセの『デミアン』。多感な青年が主人公で、神と悪魔、善と悪を意識する描写が印象的です。
ドラマ『プロデューサー』でキム・スヒョン演じる新人ADの愛読書がこの本で、私も当時同じ韓国版を買って読みました。…が、最後まで読んだかどうか、記憶が曖昧(笑)

マンウォル「本を読んでたの?随分難しい本を読んでるのね」
男の子「そんなに難しくありません」
マンウォル「賢い子が意気がるのは嫌いじゃない。気に入ったわ」

「死神なの?」黒いワンピースで身を固めたマンウォルに、男の子が尋ねる。

マンウォル「?」
男の子「手術のたび、夢に黒い服を来たおじさんが出てくるんだ」
マンウォル「そいつと私はファッションコンセプトが違うの。向こうはただの真っ黒。私はダークブルーがプラスされたミッドナイトブラックなんだから」
男の子「黒とブラックは同じだよ」
マンウォル「そうね…。とにかく、ここに来た目的はそいつと同じよ」

男の子がパチパチとまばたきをする。

マンウォル「無理には連れて行けない。だから、賢いあんたがよく考えて決めてちょうだい」
男の子「…。」
マンウォル「あんたの両親が急に老けたのは知ってるわね?」

男の子はベッド脇の写真立てに視線を向ける。
写真の中の両親は今とは別人のように若々しい。

「これのせい?」男の子が手を差し出す。生命線が不自然に伸び、手首を遥かに超えていた。

マンウォル「そう。そこに繋ぎ合わせたのは、あんたの両親の命なの」
男の子「僕が死んだら、お父さんとお母さんが悲しむよ」
マンウォル「それはあんたが心配することじゃない。残される者の問題よ」
男の子「…。」

マンウォルは男の子の手を取り、長く伸びた生命線に手をかざした。
指をゆっくりずらすと同時に、生命線が灰となってのぼっていく。

男の子「でも… 僕、怖いよ」

+-+-+-+

「我が子を救いたい切実な親心が通じた、それだけなんです」チャンソンの説得は続く。

チャンソン「他人の命を買ったのではなく、お二人の寿命を子どもに与えていたということです。それで、お二人は急に老け込んだ」
医師「何をご存知なのかわかりませんが… 息子さえ助けられるなら、どちらでも構いません」
チャンソン「お気の毒ですが、選択するのはお子さんです。お子さんが選択したら… 送り出さなければなりません」
医師「!!!」

+-+-+-+

医師はふらふらと院内を走り、息子の病室へたどり着いた。
不思議に思った妻があとに続く。

息子はすでに息絶えていた。
手首に長く伸びていた生命線は、嘘のように消えている。

夫婦の泣き叫ぶ声が、悲しく響いた。

デルーナの日常

ヒョンジュンがロビーのソファでユナに勉強を教えている。
じゃれ合う2人を、ベテランのソンビとソヒが遠巻きに眺めていた。

ソンビ「あの光景をどう見る?」
ソヒ「インターンとフロントマンは社内恋愛中ですわね」
ソンビ「けしからん。入って間もないというのに」
ソヒ「若者同士ですから。男女が一緒にいて恋愛感情が湧くのは、あの世もこの世も同じですわ」
ソンビ「我々は200年一緒にいても、これほど“公的”なのに」
ソヒ「2000年一緒にいても同じです。キム・ソンビさんは私の好みじゃありませんの。夢にも期待なさらないで」
ソンビ「期待する?不本意だ」

ソヒはぷいと背を向けた。

ソンビ「話の途中だ。断じて違うぞ!」

#この2人の会話、だいたい本筋に関係ないのでカットしてしまうことも多いのですが、いつもユーモアがあって楽しいです。

残される者

ベロニカの葬儀を終えて帰国したサンチェスは、ピザ屋の厨房で黙々とピザの生地をこねていた。

「サンチェス、イカれちゃったの?」窓際の席でマンウォルが言う。「どうしちゃったのよ?」
「実は事情が」チャンソンが躊躇った末に口を開いた。

ベロニカがまだデルーナにいると思い込んでいるサンチェスに、チャンソンはある頼み事をされたのだ。

チャンソン「あまりに切実だったから、いないとは言えなかったんです。サンチェスはホテルに来られないし、来ても会えないことは納得しています」
マンウォル「…。」
チャンソン「会うことはできないけど、まだデルーナにいると思っているんです。僕に任せて、チャン・マンウォルさんは話を合わせてください。サンチェスが立ち直るまで」
マンウォル「いつ立ち直るのよ?」
チャンソン「…。」

サンチェスが厨房から出てきた。

サンチェス「マンウォル、この間はありがとう。おかげでお別れが言えた」

マンウォルは一瞬だけ愛想笑いを浮かべ、ぷいと視線を逸らす。

サンチェス「今、ベロニカが好きだったピザを焼いてるところなんだ。届けてもらうわけにいかないかな?」
マンウォル「…。」
チャンソン「あぁ、そうしよう」

笑顔で答えてやるチャンソンをチラリと見て、マンウォルは呆れたように笑う。「ク・チャンソン、あんた演技が下手ね」

マンウォル「ハッキリ言いなさいよ」
サンチェス「…。」
マンウォル「サンチェス、ピザの他に届けるものはないの?ベロニカが好きだった靴とか宝石とか」
チャンソン「!」
マンウォル「車でもいいしさ」

「えっ」サンチェスがマンウォルとチャンソンを見比べる。「本当に届けてくれるのか?」

#とっくにわかってるけど、今のリアクションでどれだけサンチェスがピュアな人か伝わってきて、胸が痛む…。

マンウォル「もちろんよ。何でも持って来なさいよ。私が届けてあげる」
チャンソン「…!」
マンウォル「あぁ、うちのホテルには海もあるの。ヨットも届ける?そこでヨット遊びをすればきっと楽しいわ」

「チャン・マンウォルさん!」それ以上我慢できず、チャンソンが声を上げた。

マンウォル「何よ!」
チャンソン「(何も言えない)」
マンウォル「慰めてるのよ。早く立ち直らないと私のせいで破産するわ」

チャンソンは立ち上がり、マンウォルを無理やり外へ連れ出した。

サンチェス「……。」

+-+-+-+

「なぜあんなことを?」チャンソンに責められ、マンウォルは反論した。「あんたのせいよ」

マンウォル「あんたがハッキリ言ってやらないから」
チャンソン「辛いだろうと気を遣うのが、そんなに馬鹿げたことですか?」
マンウォル「そうよ!馬鹿げてるわ」
チャンソン「!」
マンウォル「とっくに死んでる子にグダグダと生命線を繋げてやる親も、死んだ彼女のためにピザを焼くあんたの友だちも!…見苦しいわ」
チャンソン「…。」

苛立ちが募り、マンウォルはふうっと溜息をつく。「未練がましくて腹が立つのよ」

マンウォル「ク・チャンソン、あんたは絶対あんなふうにならないで」
チャンソン「僕だってそうならないとは限らない」
マンウォル「!」
チャンソン「手放しなくない、見送りたくない!会えなくなると思うだけで、気が狂いそうなのに!!!僕が… 僕が大丈夫なわけないでしょう」
マンウォル「…あんたは私を見送らなきゃいけない人よ。だから、大丈夫だと言って」
チャンソン「…。」
マンウォル「あんたがそう言ってくれないと… 怖くてどうしようもないの」

そう言って、マンウォルは俯いた。

チャンソン「あなたのそばにいれば何か代償を払わなきゃいけない、それが怖いって… 前に言いましたよね。きっとこういうことです」
マンウォル「…。」
チャンソン「あなたがこんなに嫌がる… 見苦しい姿になること」
マンウォル「…。」

#弱った男子愛好家としましては、悲しみでちょっと憔悴して見えるこのチャンソン、大好きなんですが♪

チャンソン「もう帰ってください。僕は友人のところへ戻らないと」

チャンソンは彼女を残し、きっぱりと立ち去った。

+-+-+-+

ピザ屋に戻ると、サンチェスは2人が出ていったときのまま、テーブルの前でうなだれていた。
「…。」掛けるべき言葉が見つからず、チャンソンはそっと彼の肩に手を置く。

「いないんだな…。ベロニカはいないんだろ?」サンチェスは絞り出すように言った。

精一杯の愛

チャンソンが帰り道を歩いていると、マンウォルが途中に立っていた。

マンウォル「あんたに初めて会った頃、このあたりの木はキレイに花が咲いていたのに」

彼も一緒に周囲の木を見上げる。

マンウォル「もうどこにも咲いてないわね」

マンウォルは懐かしげに微笑む。「あのとき、あんたはここで霊に出くわして、めちゃくちゃ怖がってた」

マンウォル「でも、今じゃ私が怖がってる」
チャンソン「…?」
マンウォル「花が… 散り始めたわ

「…。」チャンソンがゆっくりと目を伏せた。「そうなんですね」

マンウォル「地面に落ちる前に消えてしまって、花びらも残らない。何も… 残さないつもりなんだわ」

「もしかしたら…」チャンソンが口を開く。

チャンソン「最初に葉が一枚落ちてきたときのように、花びらは僕に向かって落ちているのかもしれません

「!」マンウォルがハッと目覚めたように彼を見る。

チャンソン「それが降り積もったとき、重みに苦しむのは、全て僕の課題として受け入れます

マンウォルの目がみるみるうちに潤み、月明かりに光る。
だから、僕を置いて行くことを恐れないで」そう言って、チャンソンは温かい眼差しで彼女を見た。

マンウォル「…。」

マンウォルの目から涙がこぼれ落ちる。

チャンソン「これが… ひ弱な人間に過ぎない僕が、今できる精一杯の… 愛です

「!」彼の愛を噛みしめるように目を閉じると、マンウォルは再び目を開けた。

マンウォル「花びらになって消えてしまうのは… 悲しすぎるわ」
チャンソン「…。」

ゆっくりとチャンソンに近づくと、彼に優しく口づけた。

♪私たちの結末
悲しくなりませんように

この瞬間を思い出して泣かないよう
そうなればいいのに

ハッピーエンドを願うわ♪

体を離した途端、チャンソンがぐいと彼女を引き寄せる。

♪それが叶わないなら
傷になってちょうだい
あなたを覚えていられる傷跡なら
痛みも厭わない
そうしてくれないかしら

か弱いあなたを見ていると
長い苦しみをしばし忘れ
このままもう一度あなたに抱かれて
眠りたくなる

恐れは大きくなるばかりだけど
想いはおさえられないわ
まばゆい冬のあなたにだって会いたくなる

それが叶わないなら
今このときの私を覚えていて
切なくも美しい
私たちの夜も
花びらの舞い落ちる

私たちのハッピーエンド♪

長い口づけの後、チャンソンはマンウォルは暖かく抱きしめた。

+-+-+-+

ここでエンディングです。

溶けました。
完全にトロケました。

チャンソンの言葉って、どうしてこんなにも心がこもっていて温かいんでしょう。
これまでの誠実な彼の姿をずっと見てきたからこそ、温かさが身にしみるように感じられるんだと思います。
(温かくてすごく身にしみるのに、いざ日本語に訳そうとすると、めちゃくちゃ難しい…)

そろそろ終盤に入りますが、今後気になるのは、怨霊ソル・ジウォンとの決着と、“裏切り者”チョンミョンの行く末。
今回、チョンミョンの状況がわかってきました。
転生したミラやパク警部と違い、チョンミョンは死後あの世へ行くことを拒み、ホタルとなってずっとマンウォルのそばにいた、ということですね。
仇だと思われたまま… なんて悲しいことだろう。
悲しいけれど、前世の記憶がないパク警部たちと違い、ホタルになっても記憶はそのままなんでしょうか。

私はパク警部がかなりお気に入りなので、今後のマンウォルの行く末に彼も少し関わってくれないかな?と期待しています。
警察署の前で道路越しに対面した、あの無言のシーンだけで大満足ではありますが…^^;

 - ホテルデルーナ 〜月明かりの恋人〜