韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!セリフを題材にした文法解説も

ホテル・デル・ルナ6話あらすじ&日本語訳~後編

   

IU(イ・ジウン)、ヨ・ジング主演のtvNドラマ『ホテル・デル・ルナ(ホテル・デルナ/ホテル・デルーナ)』6話後半のあらすじを、セリフの日本語訳もまじえて紹介していきます。

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本日の霊:王になった男?

デル・ルナの歴史1000年にして、初めて王が客として現れた。
他の客をすべて断り、最高級のサービスをと息巻くマンウォルはじめデル・ルナのスタッフたちだったが、宿泊台帳のサインを見て、彼らは首を傾げた。

宿泊者: 李鉉(イ・ヒョン)

マンウォル「イ・ヒョン?イ・ヒョンって、どの王だっけ?聞き覚えがある気もするし」
スタッフたち「…。」
マンウォル「えーと、李祹(イ・ド)はハン・ソッキュ、李祘(イ・サン)はイ・ソジン、李暄(イ・フォン)はキム・スヒョンでしょ」
ソヒ「キム・スヒョンは違います。ドラマにしか出てこない架空の王ですので」
マンウォル「あぁ、フュージョン史劇ね。知ってるわ、私も」

※ハン・ソッキュ=ドラマ『根深い木』で世宗役。イ・ソジン=ドラマ『イ・サン』で正祖役。キム・スヒョン=ドラマ『太陽を抱く月』で李暄役

ヒョンジュンがスマートフォンで検索している。

マンウォル「イ・ヒョンは誰だって?わかった?」
ヒョンジュン「あ、出てきましたよ」
マンウォル「そうでしょ!出てるじゃない」
ヒョンジュン「(スマホを見ながら)でも、この方もドラマに出てくる王ですけど…」
マンウォル「…?」

朝鮮王イ・ヒョンが見つかったのは、ドラマ『中殿になった女』の人物紹介ページだ。

マンウォル「あぁ、そうだった!このドラマに出てくる王がイ・ヒョンって名前よ」

「やっぱり王じゃないの」マンウォルはホッとしてスマートフォンを乱暴に放り出した。

ソヒ「社長。イ・ヒョンもイ・フォンと同類です。“フュージョン史劇”」
マンウォル「何ですって?!」

#ちょこちょこ史劇っぽい台詞回しになってて面白い^^

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直ちに会議が行われた。

ソヒ「ドラマ“中殿になった女”は、暗殺に脅えた中殿が自身と瓜二つの妓生を替玉にすることで展開するフュージョン史劇です」
マンウォル「(愕然)」
ソヒ「イ・ヒョンは劇中で中殿の夫である王の名前です」
ソンビ「(落胆)」
マンウォル「じゃあさっきの王は何なの?何で自分の名前をイ・ヒョンだって?」
ソヒ「ホテルにいらしたお客様は俳優のパン・テウさんです」

スライドが切り替わり、あるニュース記事が映し出される。

ソヒ「俳優のパン・テウさんは脇役俳優として活動していましたが、初めて主役を手にしたのが王イ・ヒョンの役でした。ところが、撮影も始まらないうちに、不幸にも運動中の突然の心停止で亡くなったのです」
マンウォル「つまり、王ではなく、王の役を手に入れようと演技魂に燃えていた俳優ってこと?」
ソンビ「話し方も歩き方もすべて完璧な王に見えましたが」
ソヒ「役に没頭している状態で死んだため、本物の王だと思っているようです」

「…。」マンウォルは落胆を超えて笑い出した。「あんまり恥ずかしくて」

マンウォル「御膳を下げたら、明日の朝バスに乗せて…送り出して」

そう言ったっきり、彼女は頭を抱えた。

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廊下でチャンソンを見かけ、マンウォルは思わず顔をそむけた。
張り切っているマンウォルたちに対し、チャンソンは最初から疑い半分であり、王だからと特別扱いすることに反対していたのだ。
今となっては恥ずかしくて彼に合わせる顔がなかった。

知らんぷりして通り過ぎようとすると、チャンソンがスッと隣に並ぶ。「王じゃなかったそうですね」

マンウォル「…。」
チャンソン「だから、僕が疑問提起したときすぐに調べればよかったんですよ」
マンウォル「偉そうに」
チャンソン「もしやと思って、他のお客様は帰さないでいました。賢明な対処ですよね」
マンウォル「もういいってば!」
チャンソン「さっき見た時、顔に小さな傷があったんです。気づきました?気づいてないでしょう。朝鮮王朝時代、王の顔に傷があるなんて、あってはならないことじゃないですか」
マンウォル「…。」
チャンソン「廃妃ユン氏を知ってますよね。ドラマ好きだから見たはずですよ」
マンウォル「知ってるわよ、私だって。光海君のお母さん」
チャンソン「燕山君です」
マンウォル「…。」

※成宗の側室から正室となったユン氏は、他の側室たちに嫉妬して呪い殺そうとしたり、毒殺を企てたそうです。
成宗の母のインス大妃が彼女を嫌って苛めたため、ユン氏はある日、成宗の顔を引っ掻いてしまい、廃妃となりました。

チャンソン「だから、どんな王だったのか調べるべきだったんですよ。霊の気運を感じるなんて言いながら、演技者の名演に騙されていたんですか?」
マンウォル「神がかった演技だったのよ!魂のこもった演技、あんたにわかる?死んで自分が王だと思いこんでるなんて、どれだけ王の役をやりたかったのか!霊の神がかった演技をバカにすんじゃないわよ!偉そうに、何様だっつーの!」
チャンソン「…僕は王じゃないと気づいたってだけです」
マンウォル「ホテルマンはね、お客様が王だと言えば、王のようにもてなすものよ。マンスールだろうとフュージョン史劇だろうと、うちのお客様はみんな王様よ!」

※マンスール=アラブ首長国連邦(UAE)の王子であり副総理。数年前、韓国のバラエティ番組に出演し、大変話題になったようです。

やけくそで言い放ち、マンウォルは廊下を足早に去っていった。

チャンソン「お客様を王様扱いしたことなんかないくせに…」

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屋上に佇み、物思いに耽る王イ・ヒョンを、チャンソンはそっと見つめていた。
俳優パン・テウが急死した後、人気があるだけの大根役者が代役となり、批判が集まっているらしい。

チャンソン「この人なら神がかった演技を見せてくれたろうに」

そうつぶやいて、チャンソンはハッとした。「神がかった演技、出来るかも!」

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交渉にあたり、チャンソンは下手に出ることにした。「社長の言葉に大いに反省しました」

マンウォル「?」
チャンソン「お客様は王様だという言葉に、感動もいたしました」
マンウォル「思うところがあるなら、これからしっかりやりなさい」
チャンソン「そこで考えたんです。お客様が神がかった演技をお望みなら、叶えて差し上げないと」
マンウォル「…?」
チャンソン「我々ホテルマン、お客様がお望みであれば王にして差し上げるのです!それがマンスールであろうとフュージョン史劇であろうと」

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チャンソンがマンウォルと共にやって来たのは、『中殿になった女』の撮影現場だ。
幸いサンチェスのピザ屋がファンからの差し入れの注文を受けていたため、彼らにもたやすく入場証が手に入った。

マンウォル「神がかった演技をしたって意味ないわ。顔が映るわけでもないのに」
チャンソン「…。」
マンウォル「撮影現場を見学して、ピザ供養でもしたら帰りましょ」
チャンソン「社長、お客様のお望みなんです。ものすごく期待なさってるんですから。ホテルマンは…」
マンウォル「もう!わかったってば」

「撮影スケジュールもらってきますから、ピザカーの前にいてください」チャンソンがその場を離れた。
そこへ…「フードカーのお姉さん?」声を掛けたのは、中殿役の女優だ。

マンウォル「?」
中殿「衣装スタッフにピザを5つ、車まで持って来てください。お願いしますね」

中殿が背を向けると…

マンウォル「お待ちなさい」(←王妃の口調)
中殿「?」
マンウォル「あんたね、これは配達の車じゃないのよ。食べたけりゃ自分で取りに来なさい」
中殿「…はい」

「無礼な」マンウォルは背を向けた中殿に舌打ちをした。
あぁ、代役俳優さえ演技が上手ければ… マンウォルがぼやいていると、当の代役が事務所と電話で話しているのが聞こえる。

演技に自信のない彼はこのドラマに乗り気ではなく、数億の出演料もいらないから抜けたいと訴えているではないか。
「数億?」マンウォルの目が俄然輝いた。「顔は映らなくても、出演料は出るかもしれないわ」

チャンソンがスケジュール表を手に戻ってきた。「王、思ったより出てませんね。1シーンだけです」

マンウォル「魂の入れ替わった演技、この1シーンで見せないとね」
チャンソン「…?」

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「中殿、余の愛する女性はあなただけだ」

台本を呼んでみて、代役俳優は思わず笑う。「本当に下手だな」
そこへ、中殿らしき女性が向こうを横切るのが見えた。
練習を手伝ってもらおう。彼は後を追いかける。「中殿!」

中殿を追いかけて庭を進み、小さな門をくぐり…。

代役「中殿、台本の読み合わせをしよう。監督、僕ばかり怒るから」

ゆっくりと振り返ったのは…

代役「…どなたです?」
謎の中殿「私をまっすぐにご覧くださいませ、殿下」
代役「???」
謎の中殿「殿下…?」

美しき謎の中殿に釘付けになっている彼の体に、“魂の演技者”パン・テウが乗り移る。

彼は…

覚醒した!

謎の中殿「…殿下?」
王「如何なされた、中殿」

上手くいった。謎の中殿… マンウォルは満足げに微笑んだ。「あなたは“万人之上”、この国の王でいらっしゃいましょう?」

王「如何にも。余はこの国の王、イ・ヒョンである」

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いざ撮影が始まった!
王妃の住まいである交泰殿を前に、王イ・ヒョンは中殿と向き合う。

中殿「殿下、私は偽物です。中殿ではありません」
王「だから余のもとを去ろうとしたのか?」
中殿「おそばにいれば、殿下に危険が及びます」
王「そなたが山に隠れるなら、すべての山を伐採してそなたを探そう。そなたが海へ発つというなら、海の水をすべて干上がらせて阻止しようぞ」
中殿「殿下!」
王「王の命令だ。余を一人にするでない」

王が愛する中殿を優しく抱き寄せた瞬間、目から大きな涙がこぼれ落ちる。

「カーット!」代役俳優が我に返ったそのとき、撮影現場は歓声に包まれていた。

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拍手を浴びる代役俳優を、パン・テウ氏は少し離れたところで眺めた。
「本当に素敵でした、王様」チャンソンが隣で称える。
控えめに咳払いをし、王は静かに微笑んだ。

パン・テウ氏「…。」

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デル・ルナの社長室では、マンウォルが“中殿になった女”の放送に釘付けだ。
朝鮮王イ・ヒョンの演技は間違いなく神がかっており、マンウォルはうっとりと眺める。

このドラマが終わるまで、パン・テウ氏はデル・ルナに滞在することが決まった。
そのいきさつはというと…?

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代役俳優は“謎の中殿”の前で大はしゃぎだった。

代役「あなたと台本の読み合わせをした後、神がかった演技が出来たんです」
謎の中殿「…。」
代役「何ていうか、自分じゃないみたいな… 魂が入れ替わったような演技ですよ」
謎の中殿「…。」
代役「ひょっとして、演技の先生ですか?」
謎の中殿「その演技、これからも続けたいかしら」

#こんな美しい中殿媽媽、初めて見た!

代役「もちろん!よろしくお願いします。このまま力を貸してください」
謎の中殿「それなら、改めて出演料の交渉をいたしましょう」
代役「出演料?いいですよ!よくわかっていらっしゃる。どうぞ持っていってください」
謎の中殿「1話あたりの出演料は具体的においくらですの?」
代役「1話あたり1億2000ですよ。2週抜けることになってたんですけど、また出ることになりましたから。4話で4億8000ほど。まぁ家の保証金くらいにはなりますよ。全部持っていってください!」

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今回の“出演料”については、チャンソンも同意した。

チャンソン「実際にお客様が出演して受け取る出演料ですし、お客様が同意なさったのですから、僕も異議はありません」
マンウォル「ねぇ、私ね、出演料があんなに高いって知らなかったわ」
チャンソン「…。」
マンウォル「ク・チャンソン!あんた、俳優やらない?」
チャンソン「僕はそういうの無理です。全く素質ありません」
マンウォル「そうよね。パッと見ただけでも演技の下手な相よ」
チャンソン「?!」
マンウォル「だから言ってみなさい。あんたこの間、鶏カルグッスを買うお金もないって言ったの、嘘でしょ」
チャンソン「借金返済を延ばしたのは本当で… 鶏カルグッスは大げさでした」
マンウォル「…。」
チャンソン「まぁ、タコを買うくらいのお金はあります」
マンウォル「そうだわ!タコ!あんたのせいでタコ食べられなかったじゃない!」
チャンソン「はいはい、全部僕のせいですよ」
マンウォル「(笑)反省してるなら許してあげる」
チャンソン「行きましょう、西海に。日の出が見られるかはわかりませんけど、タコも食べて」
マンウォル「何なの?なんでそんなに親切なわけ?」
チャンソン「…。」
マンウォル「あぁ、私が最後のお客になるって言ったから、急にサービスが良くなったのかしら。お望みとあらば何でも叶えますって?ずいぶんご立派なホテルだこと」
チャンソン「それほど立派ではありません。ホテルマンはお客様と個人的な感情を交わしてはいけませんので」
マンウォル「…え?私と何を交わしたって?」
チャンソン「葉っぱですよ。2枚になったって見せてくれたでしょう?知らんぷりするわけにはいきませんから」

「…。」黙り込んだ末に、マンウォルは照れくさそうに顔を背けた。「今日はシャンペンをたくさん飲んでもいいわ。まぁ、タコは明日食べに行ってもいいし」

チャンソン「明日は撮影所へついて行かなくては」
マンウォル「あんたは行かなくていいわ。研修社員をつけるから」
チャンソン「?」

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チャンソンは研修社員のキム・ユナとさっそくサンチェスの店で打ち合わせた。

チャンソン「君、研修社員になったのか?」
ユナ「はい。辞めたかったら、いつ辞めてもいいですよ。私が入れば済むことだから」
チャンソン「学生はしっかり学校へ行けよ」

「そう努力してるところです」そう言って、ユナは少し視線を和らげる。

ユナ「学校に対してロマンを持ってる誰かさんへの礼儀というか」
チャンソン「?」
ユナ「放課後だから一緒に行ってもいいですよね?まだ昼は一人じゃ見つけられなくて」
チャンソン「また今度な。今日はここで約束があるんだ」
ユナ「誰とですか?霊と?」
チャンソン「人間だよ。友だち」

「人間には興味ないわ」ユナはさっさとカバンを持って立ち上がった。「じゃあ」

ちょっと困った女、ミラ

一人になったチャンソンの席に、女性が近づいてきた。
アメリカからやって来た、ミラだ。
彼女を見ると、チャンソンは顔をこわばらせた。

ミラ「…久しぶり」
チャンソン「そうだな」

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マンウォルが精一杯のオシャレをして出かけようとしているところへ、ヒョンジュンが声を掛けた。「どこかへお出かけですか?ご機嫌がよさそうですね」

マンウォル「うん、海に」
ヒョンジュン「海ならホテルにもあるじゃないですか」
マンウォル「どこでもいいわけじゃないのよ」
ヒョンジュン「何が違うんです?」
マンウォル「ここには…」
ヒョンジュン「…?」
マンウォル「タコがないじゃない。私、タコを食べに行くんだから」
ヒョンジュン「ユナに買いに行かせましょうか?」
マンウォル「結構よ。自分で行って食べるんだから」
ヒョンジュン「こういうときク支配人がいれば、お供にうってつけなのに。電話してみましょうか?」
マンウォル「電話しなくても来るわ」

「確かに」ヒョンジュンがうなずく。「彼女と一緒にいるんだし、呼びつけるのも野暮ですよね」

マンウォル「?」
ヒョンジュン「ユナが見かけたそうですよ。ものすごい美人だって」
マンウォル「…。」
ヒョンジュン「ク支配人、いつも霊とばかりくっついてるから、普段は人間とつき合わなきゃ」
マンウォル「……。」
ヒョンジュン「じゃないと、ノ支配人みたいに一人で歳を取ってしまったら、気の毒じゃないですか」

「…。」マンウォルはすっかり気落ちして、そっとレースの手袋を外した。

ヒョンジュン「社長、海で美味しいものをたくさん召し上がってくださいね」
マンウォル「チ・ヒョンジュン」
ヒョンジュン「?」
マンウォル「野外プールにお客様がいたら、30分以内に空けさせて。そこで休むわ」
ヒョンジュン「遠くの海へいらっしゃるんじゃ?」
マンウォル「どこでも一緒よ」
ヒョンジュン「?」

「私、行かないから」マンウォルはクルリと踵を返した。

ヒョンジュン「僕がタコを買ってきましょうか?」

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「韓国には絶対帰らないって様子だったのに」ミラが言った。「帰ってきたのね」

チャンソン「絶対帰ってこないと思ってたのに、会ったから落ち着かないのか?」
ミラ「嬉しいからよ」
チャンソン「君から訪ねてきたのがどうにも怪しくて、あちこち調べたんだ。借金して城北洞の本家を追い出されたんだってな」
ミラ「大した額じゃないわ。私、医者なのよ、医者。すぐ返せるわ」
チャンソン「すぐ返せるのか。それは良かった。時間がないからいますぐ精算しよう、まず俺の金を返してくれ。5000ドル」
ミラ「久しぶりに会ってお金の話はないんじゃない?」
チャンソン「久しぶりに会ったからお金の話をするんだ。訪ねてこなかったら訴えてた」
ミラ「信じないわよ。私のこと大好きだったくせに、訴えるはずないもの」

「そうだな」チャンソンは溜息をついた。

チャンソン「家が大変だから5000ドルだけ貸してくれって言われて、学費をはたいて出してやったときまでは、君のこと好きだった」
ミラ「チャンソン、どれだけ私のこと好きだったか、もう一度思い出してみなよ」

チャンソンは胸元から携帯を取り出した。「どれだけ返してもらわなきゃいけないか、まずは計算から」

ミラ「払うわ。払うってば。会いたくて連絡したんだから。会えてホントに嬉しい」
チャンソン「行き当たりばったりなのは相変わらずだな」
ミラ「相変わらず好きでしょ」
チャンソン「…。」

チャンソンの冷たい視線に、ミラは諦めてピザにタバスコを掛け始める。

チャンソン「あんまり掛けるなよ。胃が弱いくせに」
ミラ「あんたも相変わらずね。ねぇチャンソン、今つき合ってる人はいないって聞いたけど…」

そのとき、店の前の通りを誰かが横切っていくのが見えて、チャンソンは目を見張った。「!」
「ちょっと」彼は慌てて立ち上がり、店にあったペンと白い紙を掴んで外へ飛び出す。

夢中で追いかけ、呼び止めたその人は…?

キム・ジュニョンだ!
彼はマンウォルの名前を伝え、彼女のためにサインをしてもらった。
疑い深いマンウォルのために、ツーショット写真つきだ。

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見事ゲットしたサインを手に、チャンソンは携帯を取り出した。
そのとき、マンウォルから電話が掛かってくる。「ちょうど電話するところだったんです」

チャンソン(電話)「今、ある人に会ったんですが…」
マンウォル(電話)「ク・チャンソン。今日は休みにしなさい。来なくていいわ」
チャンソン「一緒に海に行くのはどうするんです?」
マンウォル「ホテルにだって海はあるわ。どこでも同じよ。行かなくていいわ」

マンウォルはそれだけ告げて電話を切ってしまった。
なんだか様子がおかしい。
チャンソンはようやく手にしたサインをじっと見つめた。「…。」

今までと違う風景

マンウォルは一人で庭園の木の下にいた。
どこからかホタルが一匹やって来て、茂った葉と戯れるように飛ぶ。

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千年前のあの日…。

あの日も浜辺でマンウォルが一人海を眺めていると、チョンミョンがやって来て隣に腰を下ろした。「ここにいたのか、妹」

マンウォル「なんでここにいるってわかったのよ」
チョンミョン「ヨヌに聞いた」

チョンミョン「こんなにいい場所があるんなら、兄さんに教えてくれないと。独り占めしちゃ駄目だろ」
マンウォル「一人で呑むのにいい場所なの。消えて」

そこへかすかな羽音とともに、緑色の小さな光が近づいてきた。
チョンミョンが器用に手の中に収め、マンウォルのそばでそっと開いてやる。
ホタルだ。

いつの間にかそこは、無数の緑の光に包まれていた。

チョンミョン「さっきより遥かに景色が良くなったろ」
マンウォル「…ホタルなんてどこだって同じよ」
チョンミョン「同じじゃないさ。さっきは一人だったが、今は俺が一緒にいる」
マンウォル「…。」
チョンミョン「これから俺と一緒に見る景色は、全部これまでと違って見えるはずだ」

チョンミョンの言葉に、マンウォルはじっと彼の顔を見つめた。

チョンミョン「もう一人で呑むのも楽しくなくなるはず。間違いなく君は、俺がふらっと現れるのを待つことになるから

~~~~

マンウォルが立ち去った後、老木の枝の先に青いツボミがふわりと膨らんだ。

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麻姑神は二人の妹たちと共に、白百合の準備に精を出していた。

麻姑神「月の旅館で育てていた頑固な木、だんだんと綺麗になってきたんだよ」
麻姑妹2「お姉さんが送り込んだ青年が、しっかり面倒みてるのね」
麻姑妹1「よく効く薬のはずが、毒になることもあるわ」
麻姑妹2「愛は毒にも薬にもなる。そういうものでしょう?」

3人は穏やかに笑いあった。

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人払いをして、マンウォルは一人でホテル内の海にいた。
パラソルを突き抜けて、夏の紫外線がジリジリと照りつける。
マンウォルは携帯を手にとった。「空調室?」

マンウォル「海岸にいるんだけど、日差しが強すぎるわよ!昼の12時じゃなくて、晩の6時ごろ。夕暮れ時に変えて」

次の瞬間、日差しが低く柔らかになり、空が赤みを帯びた。

マンウォル「カンカン照りだろうと、夕暮れ時だろうと… どっちも同じね。波も強くするように言おうかしら」

もう一度携帯を取ったとき、誰かがふいに現れた。「それでも変わりませんよ」
チャンソンだ。

マンウォル「!」
チャンソン「どうしてここに?僕と一緒に海に行く約束だったのに」

チャンソンは少し怒った様子で隣のチェアに腰を下ろした。
「ちょっと… バカらしくなって」マンウォルが目の前の海を見つめたまま、ポツリと言う。

チャンソン「バカらしい?移り気にも程がある」
マンウォル「休むように言ったのに、なんで来たのよ」
チャンソン「僕、バカらしい真似をしたんですけど、本当に笑われそうで言えそうにありません」
マンウォル「何なの」
チャンソン「笑わないでくださいよ」
マンウォル「笑う気分じゃないわ。何よ?」

チャンソンは懐から取り出した紙を広げてみせた。

#顔が怖い…笑

マンウォル「…?」
チャンソン「嬉しくないんですか?」

マンウォルは身を乗り出し、サインに見入った。

マンウォル「“チャン・マンウォルさん、愛してます”?私に告白してるの?」
チャンソン「違っ!僕が書いたんじゃなくて、キム・ジュニョンのサインですよ!キム!ジュン!ヒョン!」

マンウォルがサインを受け取り、ようやく理解した。「本当だわ!」

チャンソン「走って追いかけて、道端で恥ずかしい思いをして貰って来たんですよ」

「喜ぶと思って」チャンソンはそう言い添えた。

#“喜ぶと思って”って素敵な言葉だよね^^

マンウォルがゆっくり顔を上げ、チャンソンを見る。「…。」

チャンソン「…嬉しくないんですか?」

「嬉しいわ」静かに答え、マンウォルは微笑んでみせた。「すごく気に入った」
「そうだと思いましたよ」チャンソンは少し照れたように、海に視線を移す。

チャンソン「サインを頼むの、めちゃくちゃ恥ずかしかったんですから」
マンウォル「…。」
チャンソン「遠くまで行かなくても、ここもいいですね」

水平線の向こうに、今にも日が沈もうとしている。

チャンソン「…タコはないけど」
マンウォル「構わないわ… あんたがいるから」

「?」驚いてマンウォルの横顔を見たものの、チャンソンはまた海に笑顔を向けた。「海が綺麗ですね」

#I love youの訳語みたい♪

「そうよね」マンウォルもまた、海を眺めて頷いた。「…悲しくなるわ」

チャンソン「…?」
マンウォル「私、ちょっと悲しくなっちゃった」

そよそよと海から吹く風が、彼女の真っ白な帽子を小さく揺らす。

マンウォル「さっきまで見てた海より、今見てる海が… 美しくて」


聞いていますか
私の話を
あなたへの深い気持ちを
毎日恋しくてあなたを呼ぶけれど
届かない思い
ようやく私にもわかった気がします

私の心の中のあなたを 手放すことなどできません
そうしてくても うまくいかないのです
心とは裏腹に突き放そうとするほど
さらに辛くなるのです

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ここでエンディングです。
過去の映像、今回は少しだけでしたが、現在のマンウォルとうまく重ねてあって素敵でした。

チャンソンと一緒に見る海は、一人で見るより美しくて、
かつてチョンミョンと見た風景の美しさを思い出すと共に、彼のいない悲しみがより一層色濃くなったんですね。

ただし、私はマンウォルの美しさに夢中で、海どころではありませんでしたが♪

ではでは、また~^^

 - ホテル・デル・ルナ