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空から降る一億の星(韓国版)あらすじ&日本語訳 12話後編

   

ソ・イングク、チョン・ソミン、パク・ソンウン主演、tvN韓国ドラマ【空から降る一億の星】、12話の後半、詳細なセリフの日本語訳を交えながら、あらすじを紹介していきます。

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「それ以上のことだって出来る。だから、もうヤツに会うな」ジンガンは兄の言葉を反芻し、顔を曇らせた。
なぜそこまで彼を拒絶するのだろう。
悲しみと共に、疑問は膨らむばかりだ。

ムヨンもまた、診療所のテラスで写真をじっと見つめていた。
兄と仲良くなってほしいという思いも込めて、ジンガンがくれたものだった。

ムヨン「…。」

事態は、彼女の願いとは違う方向へ進んでいた。

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薄着でテラスにいるムヨンを見て、ヤン博士は毛布を持ってきて彼にそっと掛けた。「寒いのにどうしたんだ?」
何気なく博士を見上げたムヨンは、ハッとして目を凝らした。
柔らかい日差しに包まれたヤン博士の顔と白衣。
それが幼い記憶の一コマと重なったのだ。
おぼろげだった記憶も、みるみるうちに輪郭がクリアになっていく。

ムヨン「先生だったんですか?あの日、ヘサン病院で僕を呼び止めたのは」
ヤン博士「…!」
ムヨン「僕に訊きましたよね。どこへ行くんだって」

「…。」ヤン博士は口を結んだまま、困ったように視線を逸らした。

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自宅へ戻ったジングクは、部屋で本を開いた。
ヤン・ギョンモ博士の著書、『トラウマと共に』の2章だ。

『第2章 記憶を失った少年 ~過去を想像せねばならないということ

我々が自分自身を”自分”だと思うのはなぜだろうか。なんらかの過程を経て形成されるのだろうか。心理学者たちの研究によると、大部分の人は3歳までの記憶がない。それでも、我々は自分の記憶にない時期の“自分”が、今と同一の“自分”であると容易に認識する。欠けた記憶を埋めてくれる証言が豊富に存在するからだ。主に両親をはじめとする肉親たちから聞く話によって、自ら覚えているのと同じくらい鮮明にその時間を“記憶”する。自分はいつどこで生まれ、どこで暮らし、どんな性格の子どもだったか知っているのだ。すなわち、一つの点だったときから出発して現在に至るまで自分を繋ぎ、一貫した存在として認識し、それを通して自分について基本的な安定感を得るのだ。

想像してみよう。5歳のある日、なぜかあなたは全ての記憶を失ったまま迷子になった。いつどこで生まれたのか、両親はどんな人なのか、なぜ記憶を失ったのか思い出せないだけでなく、あなたについて証言してくれる人もそばにいない。そして、不幸なことにあなたは優れた頭脳と鋭い感受性の持ち主だ。ようやく6歳になったあなたに、生きていれば無数に聞く質問を投げかけよう。

“君は一体どうしたんだい?”

6歳の少年は考え始める。“僕は一体どうしたんだろう”
あなたには可能だろうか。たった一人でその質問に対する十分な答えを見つけることは… 』

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ヤン博士は重い表情でムヨンの隣に腰を下ろした。「そうだ」

ムヨン「!」
ヤン博士「…。」
ムヨン「なぜ?どうして黙ってたんです?」
ヤン博士「こうなるとわかっていたら、君を逃してやったりしなかったからね」
ムヨン「逃がす?」
ヤン博士「あぁ、わざと」

「わざと?」理解できず、ヤン博士を見つめるムヨンの目が揺らいだ。

ヤン博士「幸か不幸か君は記憶を失っていて、私もそれを知っていたから」

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ジングクは静かに本を読み進める。

『湖の畔で初めてミョンホに出会った。インターンを辞め、田舎に引きこもって釣りで暇をつぶしていた頃だから、私がまだ児童精神医学を学ぶ前のことだ。その日、釣った魚を逃してやり、振り返ってみると、私を見つめている幼い子どもの瞳にぶつかった。“ぶつかった”という言葉がピッタリ会う、心を揺るがすほど澄んでいて空虚な瞳だった』

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「3年ぶりだったが、すぐにわかった」ヤン博士が言った。「忘れがたい眼差しだったから」

ムヨン「3年ぶり?」
ヤン博士「あぁ。それでも君に会えたのが信じられなくて、腕を見たんだ。火傷の痕をね。君の火傷を治療したのは私だったから」

「…。」にわかに信じがたく、ムヨンは半ば狐につままれたような表情で考えを巡らせる。「つまり、湖で会ったのが最初じゃなかったんですね」

ヤン博士「あぁ。治療が始まって3週くらいだったろうか。まだ傷の治っていない君が、病院の外へ出ていくのを見た」

病院のエントランスを出ていくムヨン少年を追いかけ、ヤン博士は彼を呼び止めた。
ムヨンの記憶にも残っている、あの瞬間だ。

ヤン博士「空虚な君の目を見たら、ふと… これが最後のチャンスかもしれないと思ったんた」
ムヨン「最後のチャンス?」
ヤン博士「過去から完全に自由になる…最後のチャンスだ」
ムヨン「わぁ、そんなに酷い過去だったんですね。記憶のない子どもが一人で病院を出ていこうとしてるのに、捕まえないくらい。最後のチャンスだと思うくらいに」
ヤン博士「…。」

「話してください。僕の過去」ムヨンはまっすぐにヤン博士を見る。
「患者を診ないと」ヤン博士は立ち上がった。

ヤン博士「今日はここまでにしよう。必ずしも過去を知る必要はない」
ムヨン「!」
ヤン博士「だから、もう少し考えてみよう。君も、私も」

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買い物袋を手にムヨンの家にやってくると、ジンガンは買ってきた水のボトルを冷蔵庫に収めた。
冷凍庫にしまってあった画用紙を広げてみて、家族を描いたその絵にひとりでに溜息が漏れる。

ジンガン「…。」

部屋の隅々まで掃除機を掛け、主のいない家を整える。
手帳を破り、何か書き記すと、猫のぬいぐるみのポケットにそれを預けた。「元気でね」

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ジングクはそっと本を閉じた。
しまい込んであった“失踪児童捜索”のチラシを広げ、じっと見つめる。

ジングク「…。」

ノックの音が聞こえて、ジングクは慌ててそれを隠した。
顔を見せたのは、ジンガンだ。

妹「私、もう彼とは会わないわ」
兄「…そうか」

扉が閉まると、ジングクは大きな溜息をついた。
2人が別れるのはジングクが望んだことだが、心が晴れるはずはなかった。

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翌日。
ムヨンは数日ぶりに自宅へ戻ってみた。
部屋は丁寧に手入れされており、窓辺にキレイな花が飾ってある。

テーブルの上に、猫のぬいぐるみがチョコンと座っていた。
「?」ポケットから覗いているメモをつまみ上げる。

『ごめんなさい。兄を許して』

それはとても短いメッセージだった。

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ジングクはヤン博士の診療所を訪れていた。

ヤン博士「ムヨンのことでいらしたのなら、少し前に出て行きました」
ジングク「あぁ。良かった、ここにいたんですね」
ヤン博士「知っていらしたとばかり…。どういったご用件でしょう?」
ジングク「すみません。連絡もなしにいきなり」
ヤン博士「いいえ、よくいらっしゃいました。診療が少し残っていますので、中でお待ちいただけますか?」
ジングク「えぇ」

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ぼんやり通りを歩いていたジンガンは、急にハッと顔を輝かせた。「あんたでしょ!」
腰をかがめて撫でたのは、家出したムヨンの猫だ。

#笑顔を見るのが久しぶりで、純粋に嬉しい。

ジンガン「元気だった?」

駆け出した猫を追いかけて住宅街を進んでいくと、ジンガンはようやく猫を抱き上げた。「どこ行ってたの?何も言わないで」

ジンガン「お主人、心配してたのよ」

猫を見つめているうちに心が和み、ふっと笑みが漏れる。
後ろから誰かが角を曲がってきて、立ち止まった。

ムヨンだ。

ムヨン「…。」

彼の気配に気づき、ジンガンもまたゆっくりと振り返った。「…。」

#こういうシチュエーション、前にもあったよね^^;

立ち上がり、彼を見ると、彼女は腕に抱えた子猫を黙って差し出した。

ムヨン「(受け取った猫に)本物だな。どこ行ってたんだ?外は楽しいか?」

ムヨンは子猫をそっと地面に下ろした。「大丈夫。外がよければ、いつだって出て行けばいい」
「…。」ムヨンが子猫に言い聞かせるのを、ジンガンは黙って聞く。

ムヨン「だけど、帰りたくなったらいつでも帰って来いよ」

猫が走り去るのを、ムヨンはそのまま見送った。
立ち上がると、俯いたまま黙っているジンガンの髪に、そっと手を伸ばす。「…。」
髪を優しく撫でられるうち、ジンガンの目から涙が溢れた。

彼女の髪の乱れをキレイに整えると、ムヨンはつぶやいた。「これでいい」

ムヨン「…行きな」
ジンガン「…どこに?」
ムヨン「…。」
ジンガン「どこへ行けばいいの?」
ムヨン「…。」
ジンガン「捕まえるって言ったのに… 今度私が帰ろうとしたら捕まえるって」
ムヨン「…。」

ジンガン「私、どこへも行かないわ。行けない」
ムヨン「…。」
ジンガン「どこへ行ってもムダ。どうせ戻ってくるんだから」

ムヨンは押さえきれずに彼女に口づけた。「!」

熱く、
暖かく…

#助けてー溶けるー

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2人はムヨンの家の前で、寄り添って夜空を見上げていた。

ムヨン「別れようって言われると思った」
ジンガン「言ったわ。お兄ちゃんには。もう会わないって… 嘘ついた」
ムヨン「…。」
ジンガン「別れられるなら、別れてる。でも、別れたってムダだから。あんたがイヤだって言わない限り、私はどこへも行かない」
ムヨン「イヤだって言っても、行くなよ」
ジンガン「イヤなの?」
ムヨン「何があって行くなってことだ。もしイヤだって言っても、100%嘘だから」
ジンガン「なんでそんな嘘つくの?」

ムヨンは少し考える。「嘘はつかない」

ジンガン「嘘はダメよ」
ムヨン「あぁ。絶対嘘つかないから」

ジンガンはホッとして彼の手を握った。「だけど…」

ジンガン「私たち、いよいよこっそりつき合わなきゃ」
ムヨン「…。」
ジンガン「これ以上お兄ちゃんが壊れてくの、見てられる自信ないもん」
ムヨン「自信あるぞ。こっそりつき合う自信」
ジンガン「じゃあ私も」

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ヤン博士は1枚のチラシを見つめていた。
それは…
ジングクが長年持っていた、失踪児童のチラシだ。「これは!」

ジングク「その子を… 探しているんです」

その言葉に、ヤン博士はすばやく記憶をたどった。
火傷を負った少年のベッドに、保護者の名前が記されていた。そこに『ユ・ジングク巡査』とあったのを思い出したのだ。

ヤン博士「ユ・ジングク… どうりで聞き覚えのある名前だと思いました。あのときの警察の方だったんですね」
ジングク「え?」

病院着で出て行こうとするムヨン少年に上着を羽織らせ、若きヤン博士はそのまま少年を見送った。
その直後、慌てた様子で少年を探しているジングクを、博士は目撃していたのだ。

ヤン博士「1993年の秋、私もヘサン病院にいました。ヘサン病院救急室、1年目のインターンとして」
ジングク「!」

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家へ帰ろうとしたジンガンは、後をついてくるムヨンを振り返った。「送ってくれるの?」

ジンガン「こっそりつき合う自信、あるんでしょ」
ムヨン「…。」

「メールするから」ジンガンはニッコリ微笑んだ。

ムヨン「俺、しばらく仕事を休もうと思って」
ジンガン「辞めるの?」
ムヨン「うん。取り調べが残ってるし、調べたいこともあって」
ジンガン「?」
ムヨン「俺のこと、先生は知ってるみたいだ」
ジンガン「あんたのことって?」
ムヨン「過去のこと。でも、話してくれない」
ジンガン「どうして?」
ムヨン「さぁ。なんていうか… あんまり良くない過去なのかな?」

そう言って、ムヨンは微かに笑った。

ジンガン「良くない…?」
ムヨン「もし… いっそ知らないほうがいいくらい悪い過去だったら?」
ジンガン「!」

「知らないほうがいいくらい…悪い?」思いもよらぬ話に、ジンガンはただ戸惑ってムヨンの言葉をなぞった。

ムヨン「いいんだ。考えるな」

彼はジンガンを抱きしめた。「安心しろよ。心配ない」

ムヨン「これは俺の問題だ。お前は考えなくていいから」
ジンガン「本当に知らないほうがいいくらい悪い過去だったら… 知らないでいてほしいな」
ムヨン「…。」
ジンガン「あんたの心に訊いてみて」
ムヨン「俺の知らない自分がいるかもしれない」
ジンガン「大丈夫。あんたの心は私がぎゅっと捕まえてるから」

ムヨンの胸に手を置き、ジンガンは微笑んだ。「そのかわり約束して」

ジンガン「二度と黙っていなくならないこと」
ムヨン「…。」
ジンガン「携帯は必ず持ち歩くこと」
ムヨン「…。」

黙っているムヨンを、ジンガンは覗き込む。「絶対に怪我しないこと」
胸元のジンガンの手を、ムヨンはしっかりと握り返した。「約束する」

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翌朝。
ヤン博士の診療所へ戻ってくると、ムヨンはスッキリした表情で博士に尋ねた。「気になって仕方ないんです」

ムヨン「何ですか?先生の知っている僕の大層な過去って」

「お茶を淹れようか」ヤン博士が立ち上がろうとする。

ムヨン「父は殺されたんでしょう?」
ヤン博士「殺された?」
ムヨン「えぇ。銃で撃たれて」
ヤン博士「銃?そんなものあるわけないだろう、映画じゃあるまいし」
ムヨン「いつからか同じ夢ばかり見るんです。父が銃で殺される夢」
ヤン博士「…。」
ムヨン「きっと僕の過去だろうと思ったんだけど… 先生のお陰で心の準備ができました」

「教えてください」ムヨンがうなずく。「父は殺されたんですね?」
「いや」一度立ち上がったヤン博士が、もう一度腰を落ち着けた。「君のお父さんは自殺なさった」

ムヨン「!… 自殺?」
ヤン博士「正確には山で墜落死したんだが、皆は自殺だと」

ムヨンは感情をおさえ、淡々と続ける。「なぜ自殺したんです?」

ヤン博士「わからない」
ムヨン「先生ならここで引き下がれますか?僕、一度始めたら途中で止まれないんです」

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覚悟はしていたものの、自殺という言葉はやはり衝撃だった。
銃で殺されたんだろうと想像して疑わなかったのだ。

「銃については聞いたことがない」というヤン博士の話に、嘘は感じられなかった。
ヤン博士も看護師たちの噂話を耳にしただけで、詳しいことは知らないのだ。

看護師たちは、火傷を負った少年をこう噂していた。
「クムア山で自殺した男の子どもだ」と。

帰りのバスの中で、ムヨンはクムア山を検索した。
地図が表示されたところへ、メールがすっと飛びこんでくる。
「起きた?」ジンガンからだ。「今日、辞表出しに行くの?」

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ジンガンが携帯をじっと見つめていると、ピロンと着信音が鳴った。

ムヨンからだ。「先生に会って、家に帰るところなんだ。会社に返す荷物をまとめて行こうと思って」
バスを降り、彼は家への道を歩きながらメールを打っていた。

ジンガン(メール)「もう行って来たの?先生、何て?」
ムヨン(メール)「まだよくわからない。今度話すよ。ところで、俺の名前、何だと思う?」
ジンガン「名前?」
ムヨン「うん。俺の本当の名前」
ジンガン「わぁ!ちょっと緊張する。何ていうの?」
ムヨン「ソンホ。俺の名前。カン・ソンホ」

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先に出勤するからと家を出ると、ジングクは考えに没頭しながら通りを歩いていた。
「ムヨンが… ソンホなんですか?」彼の問いに、重苦しく頷いたヤン博士の表情が蘇る。

ウォニョンマートの角へ差し掛かると、向こうに見えた人影に、彼は立ち止まった。「!」

ムヨンが同時に気づき、彼を見ていた。

ムヨン「…。」
ジングク「…。」

“ムヨンが… カン・ソンホです” ヤン博士の声が、もう一度ジングクの頭を巡った。

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ここで12話は終了です。

韓国の人名をカタカナにする際、私はいつも発音に近い形で表記しています。
(※たとえば東方神起のメンバーはユンホでなくユノ表記)
それに倣うと、ソンホでなくソノなのですが…。
ソンホと書いたほうが読んだときに語感がしっくりくるので、今回はこの表記にしました。

今回、全体を通してムヨンとジンガンが本当に美しかった…。
お互いへの愛が暖かくて、だからこそ悲しくて、何とも切ない1時間でした。

 - 空から降る一億の星