韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!セリフを題材にした文法解説も

スイッチ-世界を変えろ 23話 あらすじ&日本語訳

   

チャン・グンソク主演SBS韓国ドラマ『スイッチ-世界を変えろ』23話あらすじを、セリフの日本語訳を混じえて紹介していきます。

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隣の扉から現れたハット姿の男に、ペク検事(ドチャン)はまるで心臓を掴まれたように愕然とした。

ペク検事(ドチャン)「!!!!!」

言葉を失った彼の前で、男は品よく微笑んで見せる。「お会いできて光栄です、ペク・ジュンス検事」
君の心中は全てわかっている、とでも言いように、男は右手でそっと制した。「かつて伝説の詐欺師がいました」

ペク検事「…。」

「サ・マチョン」その男… サ・マチョンはストレートにその名前を出す。

マチョン「ひょっとしてご存知ですか?ペク・ジュンス検事」
ペク検事「… 聞き馴染みのある名前です。20年前に死んだと聞きましたが」
マチョン「詐欺師にとって最大の境地は、死まで欺くことですよ」

「…息子までも?」ペク検事は、辛うじて出た微かな声を震わせる。

マチョン「事情があったんでしょう。息子まで欺かねばならないほどの」

「…。」ペク検事の顔に悲しい笑みが滲む。「その事情、実に気になりますね」

マチョン「そうでしょう。このプロジェクトに手を貸してくだされば、詳しくお話ししますよ」
ペク検事「プロジェクト?」
マチョン「どうなさったんです?全部わかってるじゃありませんか」

「選手を認めるのは選手ですから」マチョンはそう言って微笑んだ。
「…。」ペク検事… ドチャンの目に涙が滲む。
数奇な運命を辿った末、詐欺師として思いがけない対面をしてしまった父を前に、彼から出たのは笑い声だった。

ペク検事「地獄の門プロジェクトの背後にはすごい企画者がいると予想はしてましたが、それが… あなただったんですね」
マチョン「クム・テウンを追っているすごい検事がいるのは知っていましたが、それがペク検事とは思いもしませんでした」
ペク検事「…。」
マチョン「このプロジェクト、”選手”がもう一人必要です。ペク・ジュンス検事のような」
ペク検事「一緒に… 詐欺を謀ろうと?」
マチョン「えぇ。我々で」
ペク検事「…。」

「検事さんと詐欺師。我々で思う存分やってみましょう!」マチョンが強い眼差しで彼を見た。

ペク検事「…我々?」

マチョンが感慨深げに笑う。
ペク検事もまた、笑いながら目を赤くした。

#えっと、この会話に震えて、視聴時は休憩しました。字面だけじゃあまり…ですが^^;
マチョンはペク検事の中身がドチャンだと知りながら、徹底してペク・ジュンスを相手に話しています。
ドチャンもまた、相手に自分の正体がわかっているのを知りながら、それでもあくまでペク検事という立場で話しています。
そうやって「知りながら装ってる」ことも、お互い承知。
詐欺師と検事という立場を言葉では保ちつつ、これが20年ぶりの親子再会の会話だと思ったら… 震えませんか?ㅠㅠ

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『12 暗闇に罠は仕掛けない』

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ホテルを出て、ドチャンはぼんやりとハンドルを握っていた。

#何なのちょっとカッコ良すぎじゃない?!

「検事さんと詐欺師。我々で思う存分やってみましょう」さっき聞いたばかりの言葉が、頭の中をぐるぐると巡る。
「…。」ドチャンは長い溜息をついた。

ドチャン(心の声)「チッ、父さんも何一つ変わってないな。20年ぶりに現れて、思い切り詐欺をやらかそうって?」

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もう恒例となった2人での打ち合わせのため、ハラとドチャンは取調室で落ち合った。
「ビクトールに会いに行った件はどうなった?」座るやいなや、彼女が尋ねる。
「あぁそれ?」ドチャンの声は妙に明るい。

ドチャン「職業上、いろんな人に会うからわかるんだけど、あの人は普通の事業家だ。それもかなり堅実な」

「?」ハラが目を細める。「詐欺師だって言ったじゃない」

ハラ「それを探りに行ったんじゃないの?」
ドチャン「…。」
ハラ「何なに?2人で内通でもして来たんじゃない?詐欺師同士、協力しようって」

#普通にバレてる

ドチャン「人を何だと思ってんだ?俺は今ペク・ジュンス検事なんだからな」
ハラ「中身はサ・ドチャンよ」

「オ検事、これはチャンスだぞ」ドチャンはやけに真剣な目で言った。

ハラ「チャンス?」
ドチャン「これでクム・テウンをおびき出そう」
ハラ「…?」

「考えてみろ」ここからは怒涛の詐欺口上…もとい、”作戦説明”だ。「ガス事業ってのは天文学的な金が入ってくるものだろ」

ドチャン「クム・テウンがいくら麻薬で大儲けしたとしてもだ、1000億ウォン代の事業に投資するほどの金を用意するのは容易くない」
ハラ「だろうね」
ドチャン「あちこちに散らばってる財産を一箇所に集まるはずだ。そうすりゃ、これまで違法に蓄積してきた借名財産も表に出てくる」
ハラ「そのプロセスを監視しておいて、一箇所に集まった瞬間、すくい上げる…?」
ドチャン「ビンゴ!さすがだな」

ハラは得意げにニヤリとする。「私は”鋭利”(=ハン イェリ)だからね」
ドチャンがふっと笑った。

ハラ「けど、クム・テウンは本当に餌に食いつくかしら」
ドチャン「餌を投げてそ~っと揺らさなきゃな」

そこへドチャンの携帯(=ジュンスの物)の唸る音が聞こえた。
画面には…”クム・テウン”。

ドチャン「クム・テウンだ」

ハラが小さく頷く。
ドチャンは無意識にネクタイを整え、電話を取った。「ペク・ジュンスです」

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クム・テウンに呼ばれ、ペク検事(ドチャン)は彼の執務室にいた。
「キング・オブ・ファベルジェ…」クム・テウンが切り出す。

クム代表「何年も準備してきた展示会でした。それを台無しにしておいて、結局その悪ふざけの目的はチョン・ドヨン検事長の兵馬俑でした」
ペク検事「…。」
クム代表「ギャラリーから奪いたかったもの、持ち出したかったものは、キング・オブ・ファベルジェではなく、私がキングに仕立てたがっていたチョン・ドヨン検事長」

呟くように言い、クム代表はペク検事を見た。

ペク検事「なぜ私にそんな話を?」
クム代表「今私の前にいるのは… ペク・ジュンス検事に間違いありませんか?」

「…。」ペク検事はクム代表を見つめたまま、ゆっくりと身を乗り出す。「不愉快ですね」

ペク検事「私がペク・ジュンスであること、もう一度証明しろとおっしゃるんですか」
クム代表「合理的疑惑ですよ。2人が1人を演じることは出来ても、1人が同時に2箇所にいるのは不可能ですから」
ペク検事「火傷の痕、もう一度お見せしなければなりませんか」
クム代表「…。」

#クム代表にしてみれば、もう一度火傷の痕を見せろというのは簡単だけど、それじゃ能がないしカッコ悪いよね。

そのとき、部屋の電話が鳴った。
キム室長が受話器を取る。「代表室です」

キム室長(電話)「…サ・ドチャン?」
クム代表「!」

受話器がクム代表の手に渡る。
「クム代表~」受話器の向こうから、調子のいい声が聞こえてきた。

(電話の声)「お元気でしたか」
クム代表「!」
(電話の声)「最近も将棋を指してらっしゃるかな…」

何も言わず、クム代表はゆっくりと身を起こす。
「ははははは」彼の様子を嘲笑うように、笑い声が聞こえてきた。

(電話の声)「盗聴装置、見つけたんですね。かじらなくたっていいのに。鼓膜が破れるかと思った…」
クム代表「サ・ドチャン…!」
(電話の声)「お客様、驚かれましたか~?俺は逃げたりしません。頑張って探してご覧なさいな」

電話はプツリと切れた。

クム代表「!!!」

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クム代表が訪ねたのは、声の専門家の研究室だ。

クム代表「教授、声にも”声紋”があると聞きましたが」
教授「そのとおりです。一卵性の双子でも音声分析をすれば区別が可能です」

クム代表がUSBメモリを差し出す。「この声を分析してください」

流れてきたのは、ドチャンがクム代表に掛けてきた、挑発的な電話の音声だ。
続いて…
「不愉快ですね…」執務室を最後に訪ねてきたときのペク検事の音声が流れる。

教授が音声分析図を指す、「1つ目は116から129ヘルツ。2つ目は124から137ヘルツ。この2人は間違いなく別人です」
「それなら…」クム代表が懐からペンを取り出し、軸を回す。
ペク・ジュンスが「サ・ドチャンを売りに来た」と訪ねてきたとき、そのやり取りを密かに録音した装置だ。

クム代表「このペンの声の主は、間違いなく2人のうちどちらかと一致するはずです」

ペンに録音された声がPCのスピーカーから流れる。「私と共に水に落ち、生き残ったものです。束草で…」

教授「この声は…」

「…。」クム代表が目を見開き、教授の言葉を待ち構えた。
「こちらと一致しますね」そう言って教授が差したのは… サ・ドチャンの挑発電話の声ではないか!

#ええええ

クム代表「…確かですか?」
教授「えぇ、確かです」

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クム代表はいささか呆然とした様子で外へ出て来た。「いまや検事が詐欺師に真似ごとまで…」

クム代表「サ・ドチャン、ペク・ジュンス、いつまで俺を翻弄できると思った?詐欺師と検事がグルになるとは…。2人まとめて縛り上げてやる」

弄ばれた屈辱に、クム代表はヒクヒクと鼻を震わせた。「もう遊びは終わりだ」

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クム代表はさっそくペク検事をオフィスへ呼びつけた。
彼の姿をみとめると、クム代表は軽快に立ち上がる。「夜分にすみません。急用でして」

ペク検事「いいえ。何事でしょう」
クム代表「トルキスタンの地獄の門、投資しようかと」

「?」ペク検事が眉をひそめる。

ペク検事「断られたとおっしゃっていたんじゃ?私の能力外だと思いますが」
クム代表「法っていうのは、その気になれば何にだって絡められるものでしょう。何なりとこじつけてビクトールを連れてきてください」
ペク検事「…。」
クム代表「我々2人で… 成功させましょう!」
ペク検事「…。」

訝しげに見つめるペク検事の肩を、クム代表はしっかりと掴む。「このプロジェクトが成立すれば、シャンパンをご馳走しますよ」

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ペク検事(ドチャン)はその足でビクトールのホテルを訪ねる。

#部屋へ入る前に眼鏡を外したのは結構ポイントかと。もう鎧は外したということじゃないかな^^

ソファに掛けるなり、彼は話し始めた。「急に呼ばれてクム・テウンに会ってきました」

ペク検事「何か嗅ぎつけたのか、ビクトール・ジャンに会いたいと」

ビクトールがサ・マチョンを振り返る。「どうしましょう」

ビクトール「私が一度会うべきかと思いますが」
マチョン「行かなきゃならんな。その方がいいだろう」

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クム・テウンの執務室にキム室長が入ってきた。「代表、ペク・ジュンス検事がビクトールと一緒に来ています」
指先で弄んでいたペンを、クム代表は懐のポケットに戻す。「入ってもらえ」

ペク検事に続き、ビクトールが入ってくる。

#なぜビクトールが呼びつけられる立場になってるのか…。

クム代表「ようこそいらっしゃいました、ビクトール社長。またお目にかかりましたね」
ビクトール「韓国はこんなことでいいのですか。検事を送って脅迫なさるとは」

#ビクトールビクトールってみんな呼ぶけど、”ビクトール社長”って呼び方、変じゃない?まーいいけど。

クム代表がチラリとペク検事を見る。「何をおっしゃいますか」

クム代表「引っ掛かるだけのことがあったからでしょう」
ビクトール「…。」

「それではお二人でどうぞ。私はこれで」早々に引き上げようとしたペク検事を、クム代表が引き止める。「いや」

クム代表「一緒にやりましょう」
ペク検事「私の仕事はこの方をお連れするところまでだと思っていましたが」
クム代表「一緒にやりましょうよ。共に始めたんですから、最後まで共にしないと」

「さぁ、お掛けください」クム代表は笑顔で応接ソファを指した。

ペク検事「…。」

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ソファへ腰を下ろすなり、クム代表は単刀直入に切り出した。「天然ガス事業、私が投資します」

クム代表「1000億」
ビクトール「2000億に引き上げます」
クム代表「2000億?」
ビクトール「そうでもないとチェ・ジョンピル総裁に面目が立ちませんから」

「2000億」クム代表はその巨額にも努めて表情を変えず、考えを巡らせる。「いいでしょう」

ビクトール「無記名債券で」

「…。」クム代表がゆっくりと身を乗り出す。「断る理由を作ろうと?」

ビクトール「お嫌ならこの取引はご破算ということで。私はロシアへ戻ります」

ビクトールが立ち上がろうとしたところへ、クム代表の声が抑え込む。「そうしましょう」

クム代表「2つとも条件を飲みますよ。2000億、無記名債券」
ペク検事「!」
ビクトール「2週間差し上げます」
クム代表「いいでしょう」

商談は迅速に。
ビクトールは立ち上がり、ペク検事と共に足早に部屋を後にした。
クム代表は2人が去っていくのを眺め、考えを巡らせるように腕を組む。「…。」

キム室長「代表、あまりに無謀ではありませんか。2000億という現金をどうやって…」

「キム室長」クム代表はむしろどこか愉しげだ。「サ・ドチャンはどうなった?」

キム室長「巧く逃げ回っていまして…」
クム代表「たった今出て行ったのに、見てなかったのか?」

「どういうことでしょうか」キム室長がドアの方を振り返る。「今のはペク・ジュンス検事で…」
「サ・ドチャンだ」クム代表がニヤリと笑う。

クム代表「ペク・ジュンスの振りをしているサ・ドチャン…。2人で共謀してるんだ」

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ふたたび襲った胸の苦しみに、ジュンスはベッドの脇で顔を歪めた。
薬を取りに棚へ向かうものの、薬の蓋を開けた瞬間、彼はぐらりとその場に崩れ落ちた。

「先輩、相談したいことが…」扉を開けたハラの目に、床に散らばった薬が映る。「?」
その先に… ジュンスが倒れていた。「…先輩」

ハラ「先輩!しっかりして!」

直ちに医師が呼ばれた。
「…。」部屋は鎮痛な空気に包まれ、皆、なかなか口を開かない。

ハラ「…。」

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「総裁、大変なことに!」ユン秘書がチェ・ジョンピルの元へやって来た。

チェ前総理「ん?何事だ?」
ユン秘書「ビクトールがクム・テウンと契約すると言ってきました」
チェ前総理「クム・テウンのヤツと?!」

「あの野郎!!!」いよいよ頭に血がのぼったチェ・ジョンピルは、アッと後頭部を押さえ、その場に倒れてしまった。

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ドチャンは入り組んだ商店街をぼんやりと歩いていた。
前をまっすぐ見つめながら、その景色は全く目に入らない。

思い出されるのは、20年前のことだ。

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その日は5月5日、子どもの日だった。
日めくりカレンダーが赤く印刷されている。

縁側で1人、ドチャンが膝を抱えていると、老婆が入ってきた。「お父さんは帰っていらしたの?」
以前、薬局の男に金を巻き上げられて困っていたところを、父と自分が取り返した、その老婆だった。

目の下に黒くクマを作り、ドチャンは黙って首を横に振った。
「食べなさい」老婆は持ってきた蜜餅の袋を差し出す。

ドチャン「いいです。お腹空いてないから」
老婆「ただあげるんじゃないよ。前にお世話になったから、お礼にあげるんだ。さぁ、食べなさい」
ドチャン「それじゃあお父さんが帰ってきたら渡します」

老婆が出ていくと、門の外で楽しげな声が聞こえる。「?」
父親と仲良く手をつなぎ、男の子が通り過ぎた。
男の子の手に持ったキレイな風船が、塀の上に顔を出して揺れている。
「…。」ドチャンは小さく溜息をつき、再びぎゅっと膝を抱えた。

そこへ入ってきたのは、見知らぬ男と警察官だ。「ご免ください」

ドチャン「どちらさまですか?」

「警察なんだけど」その男… 刑事が言った。「家に誰もいないの?」
ドチャンは怯えたように頷き、上目遣いに刑事を見る。
刑事は仕方なく懐から出した封筒を、幼いドチャンに差し出した。

ドチャン「なんですか?」

「…。」刑事はそれには答えず、庭に視線を移す。
封筒の中身を出してみて、書類に目を凝らすと、ドチャンはあっと息を呑んだ。

『死亡診断書
姓名:サ・マチョン
死因:自殺』

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あの悲しみを胸に歩いてきた20年。
その20年を思いながら、ドチャンは父の待つ小さな料理屋に辿り着いた。

店に入ると、彼は小さく会釈をして、サ・マチョンの前に腰を下ろす。

ペク検事(ドチャン)「ひとまずビクトールに引き合わせました。クム・テウン、食いつきはしましたが…」
サ・マチョン「ヤツは疑り深いナマズです。いつ釣り糸を切って逃げるかわかりませんから…」

「網に入れるまでは、釣り上げたことにはなりません」ペク検事が言葉を繋ぐ。
マチョンはニッコリと微笑んだ。「忘れていなかったんですね」

「…。」ペク検事はまっすぐにマチョンを見つめる。「九九より先に詐欺を習いました」

ペク検事「よくご存知のはずですが」
マチョン「… 決して油断してはいけません。ナマズをまな板に乗せ、首を切り落とすまでは」

「もちろん」ペク検事は小さく頷いた。「ヤツのせいで、20年父と別れて生きてきたんですから」
「…。」言葉が出ず、マチョンは思わず唇を噛み締め、俯いた。

ペク検事「失礼でなければ、手がどうしてそうなったのか…」

「…。」左の義手を、マチョンは軽く持ち上げ、見つめた。「教訓です」

ペク検事「?」
マチョン「詐欺師の末路は決して美しくはないという…。息子に会ったらぜひ聞かせたいと思っていた教訓ですよ」
ペク検事「…。」

マチョンはグラスの酒を流し込む。「それでは、次の準備が出来たらご連絡を」
彼はは早々に席を立った。

ドチャン「…。」

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「食いつくには食いついたんだが…」2人きりの取調室で、ドチャンはどこか歯切れが悪い。

ハラ「食いついたけど?」
ドチャン「簡単に飛びつきすぎて、なんだか妙だ」
ハラ「そりゃまたどういうこと?」
ドチャン「事が上手く行きすぎたら、まずは疑わないと」
ハラ「上手く行ったら、次に進めばいいことでしょ?」

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執務室でハラたちは次の作戦の打ち合わせだ。
チーム全員に資料が共有された。

ハラ「国税庁で貰ってきた総合所得税、財産税の申告内訳です。大まかに逆算すると、クム・テウンの財産は法的に20億程度」
コ係長「20億の人間がどうやって2000億も?10,100… 100倍にもなるのに」
ハラ「だから、しかと隠しておいた借名口座を解約して、一箇所に集めるはず」

皆が資料をにらみ、頷く。
ペク検事がチラリとハラを振り返り、再び資料に視線を戻した。「…。」

ハラ「まず、クム・テウンが最も手軽に資金を引き出せるのは、K貯蓄銀行です。イム係長は金融監督院に協力を仰ぎ、K貯蓄銀行から得体の知れない会社へ不正融資がないか、監視してください」

さっそくイム係長は金融監督院へ出向き、K貯蓄銀行の融資状況について、2017年からの資料提供を依頼した。

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一方、キム室長は不動産業者を周り、不動産の売却を依頼していた。
その動向はインテとウンジコンビが見守り、動きがあるたびに報告を入れる。

報告を受け、コ係長が業者へ把握に回った。
売りに出た不動産は、売買成立までインテたちが動向を見守る。

インテ「(自撮りを装い写真撮影)キム室長、契約したみたいだな」

インテの報告はもちろんドチャンの元にも同時に届いていた。

インテ(メッセージ)「クム・テウン、不動産整理中」

銀行口座に不動産ばかりではない。
株式も数十億から数百億単位で売り払うはずだ。
国税庁に協力を要請し、株式市場の流れも監視がおこなわれた。

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再び捜査チームの全員が集まり、現在の状況についてミーティングが行われていた。
スクリーンに表示されているのは、ビル売買サイトだ。
赤く囲まれたビルは、売買価格が10億万となっている。

コ係長「クム・テウンが借名所有していると見られるこのビル、売りに出されているのを確認しました」

画面が株式情報に切り替わる。

イム係長「株式市場もなんだか妙です。大きく売りに出てるみたいですよ」
ハラ「OK、あとは債権市場で2000億代の売買が出るかどうか、それだけ確認すればいいわ」

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廊下を歩いてきたキル・デロ検事は、ひっそりしているハラたちの部屋のドアを窺った。
ドアに耳をつけてみても、何も聞こえてこない。「何やってんだ?」

#おまいこそ、何やってんだ?だ。

キル検事「ちっとも聞こえない」

ドアノブを握ってみる。
カチャッ
鍵がかかっていた。

ドアの内側では、誰かがドアノブを回す音に、全員がビクリとする。「!」
慌ててPCのキーを叩き、スクリーンの画面を切り替えた。

キル検事がカードキーで鍵を開けると…?
スクリーンに映し出されているのは、暴力団組員の写真だ。

イム係長「鮫派のヤツら、困ったもんですよ!」
ヤン部長「だから、こいつら捕まえろって、ずっと前から言ってるのに…。コ係長!一体どうなってるんだ!」
コ係長「あ、鮫は鮫だから、子ザメを~」
ヤン部長「こいつ!」
コ係長「申し訳ありません。ちゃんとやります」

「…。」ペク検事が背を向け、笑いを噛み殺す。

#↑これ、笑ってるよね?

ヤン部長「キル検事、何か用か?」

「何でもありません。続けてください」キル検事が部屋を出て行った瞬間、全員がぐったりと息をついた。「はぁ」

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「クム・テウン、本当に財産を整理してるのか?」帰宅したドチャンに、ボン監督が驚いた様子で訊き返す。

インテ「わぁ、ホントに契約するつもりなんだな」
ウンジ「ってことは、隠し財産が実際2000億になるってこと?凄い…。子どももいないって聞いたけど」

「…。」聞いているのかいないのか、ドチャンは考え込んでいる様子だ。

ウンジ「その大金、後はどうなるの?」
インテ「どうなるって。俺らが上手くやって、クム・テウンを一文無しにしてやるんだろ」

「そうだ」ドチャンがようやく口を開く。「パンパンウォから連絡はないのか?」

インテ「また金がなくなったら連絡してくるだろ」
ドチャン「…。」

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ハラはまだ職場に残っていた。
「もし詐欺なら、トルキスタンの旅券で事前に来ているはずです」ミーティングでのドチャンの言葉を反芻する。

ところがその後、ドチャンは話を翻した。
ビクトールは堅実な事業家に過ぎないというのだ。

ハラ「態度が変わったわ。間違いなく詐欺師だって言ってたのに… 堅実な事業家だなんて」

彼女はイム係長を呼んだ。

イム係長「ええっ?ペク検事を尾行しろって?」
ハラ「はい。誰に会っていたか、怪しい点はなかったか。写真もお願いします」

「やめましょうよ」イム係長は悲しそうにハラを見た。

ハラ「え?」
イム係長「ペク検事を疑っていらっしゃるじゃないですか…」

「えぇ」ハラが素直に頷く。

イム係長「ペク検事、よそに女はいませんよ」
ハラ「!」
イム係長「ひそかにオ検事を見るとき、どんなに切ない目をしてるか…」
ハラ「そんな関係じゃありませんよ!」
イム係長「わかりました。確かめたいのが人の心理ですから。万が一、別の女がいたら、証拠も何も私が足をへし折ってやりますよ」
ハラ「(唖然)」

「久しぶりに腕がなるわ」イム係長はブツブツ言いながら背を向けた。

ハラ「…行ってらっしゃい」

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ハラの母親が買い出しを終えて店の厨房へ戻ってくると、ハラが来て下ごしらえをしていた。「オ検事、何やってるのよ」

母「いいって、あんたにわからないでしょ」
ハラ「お母さん大変でしょ。私がやったげる」

母は娘がチキンに衣をつける仕草をそっと見つめた。「うちの娘は粉を捏ねる姿も可愛いわね」

ハラ「やっと気づいた?」
母「お父さんもいないし、まともなことは何もしてやれなかったのに、一人でコツコツ勉強して検事になって…」

母は娘の細い肩をその腕に包み込んだ。「ありがたいわ」

ハラ「もぅ、どうしちゃったのよ。お母さん、年取った?」

「この子ったら」そうやって母はビニール手袋をはめた手の甲で、涙を拭った。「好きに泣かせてもくれないの?」

ハラ「泣かないでよ。衣がしょっぱくなるわ」
母「泣いてないわよ」
ハラ「泣いてるじゃない」
母「あんたこそ涙ぐんじゃってさ」
ハラ「違うもん!」
母「嘘ばっかり」
ハラ「やめてよ~。さっさとやろう♪」
母「疲れてないの?」
ハラ「大丈夫」

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クム・テウンが料亭の個室に呼び出したのは、チン検事長だ。

#一目見てうんざり…。また人が変わって繰り返すんじゃないよね、まさか。

チン検事長「何が望みなんです?」
クム・テウン「オ検事たちを阻止してください」
チン検事長「…。」

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ドチャンはお昼の町なかをぼんやり歩いていた。
考え事に沈んでいる様子だ。

「…。」少し後ろで様子を見ていたハラが、トンと彼の背を叩く。「お昼ごはんは?」

ドチャン「メシはいいや」

2人は路上に描かれたハートのマークに差し掛かる。

ハラ「このハートを見るたびに気になってたんだけど、鼓動がゆっくりって、どういう意味?」

「さぁな」ドチャンは首をかしげる。「俺もよくわかんない」

ハラ「意味もわからずに言ってたの?」
ドチャン「小さい頃、親父から聞いた話なんだ」
ハラ「あぁ、早期教育?九九より先に詐欺を習ったってやつ?」
ドチャン「どんな状況でも慌てるな、興奮するなってことだな」
ハラ「ふーん」

向こうから父親と手をつないだ男の子がスキップしてくる。

ドチャン「…。」

その幸せな後ろ姿を、ドチャンはそっと振り返った。「実はさ」

ドチャン「俺、小さい頃から子どもの日が一番キライだった。その日、親父の死亡通知書を受け取ったんだ」

「…。」ハラが思わず口をつぐみ、俯いた。

ドチャン「みんなが遊園地へ行って、風船持って綿菓子を食べてる日に、俺には遊んでくれる人もいなかった」

「いいわ!」ハラが明るく彼を覗き込む。

ハラ「今度の子どもの日、私が一緒に行ったげる」
ドチャン「一緒に行く人、いるんだけど」
ハラ「誰?」

「秘密♪」ドチャンが顔を近づけ、ニヤリとした。「今回の仕事が終わったら教えてやるよ」
「ズルい」ハラは顔をしかめ、歩き出した。

ハラ「私、遊園地好きじゃないから」
ドチャン「行きたいくせに」
ハラ「違うけどっ」
ドチャン「ふん♪」

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天然ガス事業を横取りされたショックで倒れてしまったチェ・ジョンピルは、病院のベッドに横たわっていた。
ノックの音が響き、病室のドアが開く。
「どちらさん?」目を閉じたまま、チェ・ジョンピルは声を掛けた。

入ってきたのは…

サ・マチョンだ。「ご挨拶が遅れました。サ・マチョンと申します」
「えっ?」チェ・ジョンピルは慌てて眼鏡に手を伸ばし、起き上がる。
眼鏡をはめると、サ・マチョンに向けてパチパチと瞬きをした。

#もはやじいちゃん何やっても可愛い

チェ前総理「サ・マチョン!」

マチョンは端正に頭を下げる。
チェ・ジョンピルにとってのサ・マチョンは、クム・テウンから聞かされた話が全てだ。
名のしれた詐欺師であり、愛する娘を殺した憎き人物…。

チェ前総理「お前は娘を殺した… あのサ・マチョン!」
マチョン「まずは私の話を聞いてから、殺すなり何なりなさってください」
チェ前総理「…?」
マチョン「総裁がタクシーに乗ろうとしたところへ、突然クム・テウンが2倍出すと言って、タクシーを逃したそうですね」
チェ前総理「一体何を言っとる?!」
マチョン「総裁、そのタクシーに乗らなくて、いや、乗れなくて本当に良かったとお考えください」
チェ前総理「?」
マチョン「そのタクシーには爆弾が積んであったんですから。じき爆発するはずです」

#ハッと気づいた。そうだ、じーちゃんむしろ助かったんだね(笑

チェ前総理「お前、何者だ?」
マチョン「クム・テウンが総裁の財産を目当てに、子どもがいながらご令嬢と結婚したのをご存知ですか」
チェ前総理「!!!」

~~~~~~~~

「刑事?!」自分を訪ねてきた男を、チェ・ジョンピル議員は豪快に笑い飛ばした。
それがクム・テウンだ。

チェ議員「恐れ多くもお前が娘を?」
クム・テウン「…。」
チェ議員「野望がデカイのか、面の皮が厚いのか」

「用意した結婚資金です」クム・テウンが封筒を差し出す。「お受け取りを」
中から出てきたのは、男の写真と書類だ。

クム・テウン「第一野党候補パク・スヨンが痴情のもつれで秘書を殺した事実です」
チェ議員「!」
クム・テウン「これを公開なされば、議員の圧勝となるでしょう」
チェ議員「…。」

~~~~~~~~

「結局、能力を総裁に認められて結婚しましたが」マチョンの話が続く。「隠し子がいるのが明るみに出て、ご令嬢を殺したのです」

チェ前総理「…証拠はあるのか」

マチョンがポケットから取り出したのは、指輪だ。「クム・テウンの手から抜き取った指輪です」
リングの内側に”南山”と記されていた。

チェ前総理「…。」

じっと彼を見上げるチェ前総理に、マチョンは静かに頷いてみせる。

チェ前総理「クム・テウンめ!」

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昼休み。
ドチャンは一人、公園のベンチに腰を下ろし、滑り台で遊ぶ親子を眺めていた。「…。」

サ・マチョンがやって来て、その寂しげな背中を見て、温かく微笑んだ。

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ここでエンディングです。

指輪でいいのか…。

表面的だとは言え、ドチャンが父相手にペク検事を装ったままなのはとても悲しみを誘いますが…
サ・マチョン側も、今のところ徹底して丁寧な口調を崩していません。

ドチャンが10歳のとき、薬局で一緒に詐欺を働いたことがありましたが、その後、マチョンが彼を仕事仲間として誘ったときのことが思い浮かびます。
そのとき、「자네(君)」と、息子には普通呼ばない言葉を使っていました。
当時とかわらず今も、彼は腕のいい仕事仲間として、ドチャンに敬意を払っています…。

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