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マンホール-不思議の国のピル10話あらすじ&日本語訳vol.1

   

キム・ジェジュン(JYJ)、ユイ、チョン・ヘソン、バロ(B1A4)出演のKBSドラマ『マンホール 不思議の国のピル』10話のあらすじを、細かいセリフの翻訳を混じえて紹介します。

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爽やかな朝。
いつもの屋根部屋の玄関扉が開き、誰かが出てきた。

タルスだ。
空に向かって大きく欠伸を一つ。そして、グンとノビをする。「いい天気だ」
手入れの行き届いたプランターに、順に水を遣っていると、チョンエが出て来た。「何してるの?水遣り?」
「ご飯食べようよ」チョンエはお弁当の袋を差し出した。「食べてからやろう」

キムチにキンパにチャプチェ。
縁台に広げたお弁当を、タルスは次々に頬張った。

チョンエ「タルスさん、太ろうとしてるみたい。最近すごくよく食べるね」
タルス「ここへ引っ越してきてから飯が旨くてさ。夜はよく眠れるし。家相がいいんだろうな」
チョンエ「良運を貰ってタルスさんがお金持ちになればいいな」
タルス「金持ちのどこがいいんだ。守るべきものが多いほど不幸になるんだぞ」
チョンエ「…。」
タルス「俺はただこうして幸せに暮らしたい」
チョンエ「でも、お金があれば服も買えるし、海外旅行にも行けるし、いい家に住めるわ」
タルス「金持ちじゃなくても幸せに暮らせるってことを見せてやろう」

タルスはおかずを箸でつまみ、チョンエの口に運んでやる。

タルス「心配するな。君が幸せに暮らせるくらいは稼いでやるさ」
チョンエ「出来るだけたくさん稼いでね♪わかった?」
タルス「オッケー!それにしても、チンスクは元気にしてるかな」
チョンエ「砂漠に置き去りにしたって、何とか生きて帰って来る子よ。どこへ行っても上手く適応するの」

「上手くやるわよ、チンスクは」チョンエはそう言って、遠くへ目をやった。

10話『愛は思い通りにはならない』

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ベッドの上でピルはまだ眠っていた。
2014年から時空を越えた彼の意識が、体に飛び込んだのはその時だ。

ブーン

「蚊がいるな」痒い足を掻いているみるが、何かがおかしい。
掻いても掻いても、感覚がないのだ。「あれ?」

そのとき…
「目が覚めた?」隣でチンスクの声がした。
「わぁ!!!」彼は驚いてベッドから転がり落ちる。「お、お前、何で俺の部屋に?」

チンスク「ん?朝になってから来たんだよ。襲われるかと思った?」

ピルは思わず下半身を確かめる。「な、何言ってんだよ!」

チンスク「それにしても何でこんなに蚊が多いの?」
ピル「(ムズムズ)」
チンスク「蚊に刺された?薬塗ってあげるよ」

「どれどれ」チンスクにあちこちつつかれ、ピルは部屋の隅で後ずさりする。「来るな、いいから!あっち行けって!」
チンスクを突き飛ばし、ピルは逃走した。

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ピルはバタバタと階下へ下りてきた。

ピル父「何を大騒ぎしてるんだ」
ピル「ぼ、僕の部屋に!僕の部屋に!」
ピル母「あなたの部屋が何よ」
ピル「あぁ母さん、僕の部屋にチンスクが、チンスクがいるんです」
ピル母「なんだ、そんなこと?新郎の顔を見に行ったのね」
ピル「え?新郎?」

そこへチンスクが下りてきた。「お父様、お母様、おはようございます」
「おや」ピルの父が顔をほころばせる。「チンスクか」

母「ピルに会いたくて上へあがったの?そんなことなら、今からでも同じ部屋になさいな」
ピル「?!」
チンスク「いくらなんでも結婚前なのに、そういうわけにはいきませんよ」
ピル「結婚?!」
父「こいつ!ちゃんと着替えて下りてこい!食事だぞ」

俺がチンスクと結婚するって?!
「洗面所に行ってきます」ピルはその場を逃げ出した。

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2017年9月7日12時13分

服のまま湯船にすっぽり入り、ピルは冷たい水に打たれていた。

あぁ、これは夢だ。
時間旅行しながら夢を見てるんだ。
なのに、冷たい水をかぶっても覚めない夢って…
いやいや、そんな夢だってあるさ。

扉をドンドンと叩く音が聴こえた。
「ピル!」外から聞こえるのは… チンスクの声だ。「早く出てきなさいよ。皆待ってるわ」

ピルは絶望にぎゅっと目を閉じた。「俺、どうやってチンスクと結婚まですることになったんだ?あぁ、マンホール!」

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食事の席に家族が揃った。

ピル父「昼休みが終わってしまう。早く食べて郵便局に行かないと。さぁ食べよう」
ピル「(ボーゼン)」
チンスク「(ピルに)まんべんなく食べてね。お母様が苦労して作ってくださったんだから、感謝しなさいよ」
ピル母「チンスク、このテンジャン、ちょっと食べてみてよ。味付けが上手くいったか自信がなくて」

「食べてみましょうか」チンスクはひとさじ口に入れ、唸った。「お母さん!これなら売り物になりますよ!最高!」

ピル母「まぁ、本当に可愛いこと言うのね、この子ったら。嬉しいわ」
ピル父「チンスク、たくさん食べなさい。いいものは君が全部食べるといい」
母「ピルはとうとうまともな親孝行をしてくれたわ」
父「娘がいなくて寂しかったが、こんな娘を嫁に迎えられるとは感激だ」
チンスク「末永く努めますね」

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タルスとチョンエのDVDレンタル店に、クギルがブラリと顔を見せた。「お?なんで一人なんだ?」
店の中にいるのは、チョンエだけだ。

クギル「タルスは?」
チョンエ「サウナ」
クギル「ああ~。あいつちゃんと洗わないとな。ちょっと汚いぞ」
チョンエ「関係ないでしょ」

「チッ」クギルはソファに腰を下ろした。

チョンエ「店は?お客さんいないの?」
クギル「バイトに任せて来た。俺もたまには休まないとな」
チョンエ「何で毎日ここで休むのよ。ここは高速道路の休憩所じゃないのよ」

チョンエは棚からコミックを一冊、投げて渡した。「これでも読みなよ。楽しみにしてた新刊でしょ」

チョンエ「それでも読んでさっさと帰って」
クギル「(溜息)お前に会う口実に読んでるだけで、俺はこんなの…」
チョンエ「え?」
クギル「いや、ありがとな。読んで行くよ」

「Hi!」元気一杯に入ってきたのはスジンだ。「あっ、クギルさんもいたのね。タルスさんは?」

チョンエ「サウナ行ったわ。それにしてもここは町のリビング?何でみんなここに集まるわけ?」

「DVD返しに来たのよ」スジンはDVDのケースを差し出す。「持って帰ろうか?」
「ダメ!」チョンエは慌ててDVDを受け取る。「タダのお客さんばかりだからさ。区の図書館でもないのに」

クギル「俺には休憩所、今度は区の図書館かよ」
チョンエ「はぁ、お金にならないのは一緒よ」

チョンエはスジンから受け取ったDVDに視線をおとした。「あれ?もともとこういう趣味だった?」

チョンエ「”イングランド in LOVE”?」
スジン「留学先が舞台だから見てみたの」
チョンエ「羨ましい~!私も留学したいわ」

「行こう!」クギルが立ち上がる。「一緒に行こう」

チョンエ「何言ってんのよ」
スジン「あ、今日チンスクのウェディング撮影、来るよね?二人とも」
クギル「もちろん」
チャンス「チンスクのドレス姿、見に行くわ」
スジン「OK、じゃあ後でね」

店を出て行くスジンに手を振り、クギルが呟いた。「ピルは幸せなんだろうか」

チョンエ「どういうこと?」
クギル「男は初恋が一生続くんだ。スジンを差し置いて結婚して幸せなんだろうかってことだ」
チョンエ「…。」
クギル「ピルはずっとスジン一筋だったじゃないか。俺みたいに」
チョンエ「(バン!)無駄口きいてんじゃないわよ!ピルに余計なこと言ったら許さないから!」
クギル「あぁ、スジンも心中穏やかじゃないだろうなぁ」
チョンエ「うるさいわよ!さっさと読んで帰って」

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撮影スタジオでは、スジンが忙しく撮影の準備を進めていた。
そこへ入ってきたのはジェヒョンだ。

ジェヒョン「留学の準備は順調ですか?」
スジン「えぇ、まぁぼちぼち」
ジェヒョン「イギリスでしたよね。向こうのアートスクールは有名だそうで」
スジン「(微笑)」
ジェヒョン「何年かスジンさんに会えないと思うと残念ですね」
スジン「(微笑)」
ジェヒョン「僕もついて行こうかな」
スジン「え?」
ジェヒョン「あはは」
スジン「縁があれば、どこかでまた会えるでしょう」
ジェヒョン「お友だちの結婚式にも出られないなんて、ずいぶん急ですね」
スジン「(頷く)…。」
ジェヒョン「町はお二人の結婚の話題で一杯なのに」
スジン「えぇ、残念だけど、出国日が決まってしまったので、仕方なく」

「あっ、すみませんが私、留学院に行かないと」スジンはスタジオを後にした。

ジェヒョン「…。」

「やれやれ」後ろにいた代表(スジンの上司)が立ち上がる。
ジェヒョンの友人だ。

代表「熱心なことだが…(スジンが出て行った方を見て)青い鳥は飛んでいってしまうのか」
ジェヒョン「…さっさと翼を折ってしまうべきだったのに、一足遅かった」
代表「翼を折る?意外と恐ろしいこと言うんだな、お前」
ジェヒョン「(慌てて)言葉のアヤですよ。それくらい残念だってことです」

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留学をマネージメントしてくれる事務所を訪れていたスジンは、相談室から明るい顔で出て来た。

スジン「入学許可が下りたから、ビザもすぐ出ますよね?」
女性職員「えぇ。普通アートスクールは入学許可が下りづらいんですが、これまでしっかり準備なさったお陰で、あとは飛行機に乗るだけですね。学校周辺の居住地は調べてみました?」
スジン「いいえ、まだ」
女性職員「それならお調べすることも出来ますけど」
スジン「そうしてくださると嬉しいです!」
女性職員「繋がりのあるホームステイ先がありますから、連絡してみますね」

「よろしくお願いします」頭を下げ、スジンは職員とわかれた。
背後のロビースペースで雑誌に見入っていた男が、そっと顔をあげる。
ジェヒョンだ!
彼は立ち上がり、たった今スジンと話していた女性職員に声を掛けた。「ちょっと伺いたいんですが」

ジェヒョン「あの女性はどちらの学校をお調べに?」

「なぜそれを?」女性職員が訝しげにジェヒョンを見る。

ジェヒョン「お話がチラッと聞こえたんですが、私もアートスクールを調べているところで」
女性職員「あぁそうなんですか。それでしたら相談室で詳しく話しましょうか」

女性職員はジェヒョンを相談室へ招き入れた。

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部屋でチンスクはピルの服を選んでいた。「これは暑いよね。これはあんたに色が合わないな。これは似合うかな」

ピル「チンスク」
チンスク「ん?」
ピル「俺たち、どうしてこうなったんだ?」
チンスク「何が?」
ピル「どうして結婚まですることになったのかと思って」
チンスク「何で?後悔してるの?」

「…。」何も言えず、ピルはチンスクを見つめた。
前回現在に戻ったとき、ずっと好きだったと言って泣いていた彼女の姿が頭に浮かぶ。

ピル「後悔なんて…。ただ、夢見てるみたいで聞いたんだ」
チンスク「(笑)夢じゃありませんよ~」

「これにしよう」チンスクが出したのは、柔らかいピンクの服だ。「あんたピンクが似合うわ」

チンスク「あんたもちゃんとコーディネートすれば、超カッコイイんだから」
ピル「で、俺たちどこ行くんだ?」
チンスク「今日はやることがたくさんあるの。早く着替えて。私も着替えてくるから」

出ていくチンスクを見つめ、ピルは溜息をついた。「そうだな。チンスクを傷つけないようにしよう。それでもピンクはあんまりじゃないか?」

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浮かない顔で歩いているピルの腕を、チンスクは自分の肩にエイっと回した。「いい天気だわ。ね?」

ピル「うん、そうだな。すごく天気がいい」

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公務員として公共工事を担当しているソクテは、チームの仲間と昼食を取っていた。
それでも、今日はちっとも箸が進まない。
二人で出掛けていくチンスクとピルの姿を、今しがた目撃したのだ。

仲間「ソクテさん、食べないのかい?」
ソクテ「砂粒を噛んでる気分です」
仲間「砂粒もよく噛んで食べないと」
ソクテ「…。」
仲間「ソクテさん、今年で何歳です?」
ソクテ「なぜです?」
仲間「義理の妹がえらく美人でね、年頃が合えば紹介しようと思って」
ソクテ「僕の心臓は一つしかないけど、もう他の人に売ってしまったんです…」
仲間「?!」

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チンスクがピルを連れてやってきたのは、家電製品売り場だ。
「私はこれが気に入ったわ」チンスクが選んだ家電に、ピルは無条件で答える。「これにしよう」

雑貨売り場でチンスクが楽しそうに選んでいるのを、ピルはベッドに腰掛けて待った。
気乗りしない様子の彼を見て、チンスクは彼をベッドに引っ張り倒す。

チンスク「しんどい?」
ピル「いや… た、楽しいよ」
チンスク「しんどかったら休んでいこう」
ピル「そろそろ家に帰らないか」
チンスク「(パチン!)まだまだ残ってるんだから」

ピルは溜息をつき、困って店員を探した。「あのぉ~、このベッド、寝てていいんですか?」

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スジンは公園のベンチで物思いに耽っていた。
「…。」手に持ったパスポートと航空券を見つめ、小さく微笑むと、ふぅっと息をついた。

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ピルとチンスクはカフェに来ていた。
チンスクがテーブルへ飲み物を持ってくる。

ピル「おい、こういうのは男が奢るもんだろ」
チンスク「奢ってもらう前にやりなさいよ」
ピル「…。ごめんな、俺、今日は考え事が多くて」

「ところで、何でビール?」ピルは目の前に並んだ缶を見る。「真っ昼間から酒なんて」

チンスク「コーヒーよ。不思議でしょ」

ピルも缶を開けて飲んでみた途端、口からあふれたコーヒーが服にこぼれた。

チンスク「もう、子どもみたいにだらしない」

母親のように彼の口元をハンカチでおさえるチンスクを、ピルは見つめた。「…。」

チンスク「なに見てるの?恥ずかしい」
ピル「いろいろとごめんな。俺、たいしてお前の役にも立たないのに」
チンスク「大丈夫。婚礼品選びに引っ張り回されるのが男の人には辛いことだって、それくらいは私も知ってるから。まぁ、結構楽しかったわ」

ピルはぎこちなく笑ってみせる。

チンスク「あ、ピル。スジンの留学の餞別、どうすればいいかな」
ピル「スジンの餞別… え?留学するのか?スジンが?」
チンスク「何よ、初めて聞いたみたいに。はぁ、知らない土地で苦労するだろうに」

留学だって?!
ピルは愕然とした。一体どうなってるんだ?

ピル「一人で留学するって?」
チンスク「そうじゃなかったら?」
ピル「薬剤師は?」
チンスク「ジェヒョンさん?ジェヒョンさんはスジンに気があるみたいだけど、スジンは全然気がないみたい」
ピル「(安堵)」
チンスク「お似合いだと思うんだけどな」
ピル「どこがお似合いなんだよ!」
チンスク「何であんたが怒るの?」
ピル「いや… 何でもない」

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カフェを出て歩いていると、向こうからジェヒョンがやってくるのに出くわした。
「お二人でお出かけですか?」先に気づいたジェヒョンが声を掛ける。

チンスク「あ、ジェヒョンさん。婚礼品を見てきたんです」
ジェヒョン「わぁ、いいですね。ご結婚、おめでとうございます」
チンスク「ありがとうございます」

「…。」ピルの視線はジェヒョンが手にしている紙袋に向かった。
留学院のログが入っている。

チンスク「ちょっと、ピル、おめでとうって言われたんだから、ありがとうって言わなきゃ。なにボンヤリしてるのよ」
ピル「あ…」
ジェヒョン「いいえ、いいんです」
チンスク「では失礼しますね」
ジェヒョン「えぇ」

チンスクに手を引かれ去っていくピルを、ジェヒョンはしばらく眺めた。「もう気にしなくてよさそうだな、あいつのことは」

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次に連れて来られたスタジオを、ピルは不思議そうに覗いた。「何でスタジオに?」

チンスク「結婚祝いにスジンがウェディング写真を撮ってくれることになったじゃない。それでスタジオ借りたんだって」
ピル「…。」
チンスク「あんた、今日どうしちゃったの?記憶喪失?」

「よぉ~、新郎新婦!」スジンが二階から下りてきた。

スジン「ペアルックまで着ちゃって。幼稚なことも思ったより上手くやるのね、ポン・ピル」

「…。」スジンの顔を見られず、ピルはただ俯いた。
スジンは少し戸惑ったようにピルを指差す。「この子、何でこんなにこわばってるの?」

スジン「緊張してるのね」
チンスク「(ピルの顔を覗き)そうね」
スジン「さぁ、ドレスは用意してあるから、メイクから始めましょ」

そこへクギルたちがぞろぞろと顔を見せた。「来たぞ~」

チンスク「何よ~、来ることないのに」
スジン「歴史的な瞬間なんだから、私が呼んだのよ」
タルス「(ピルに)青春の墓を掘ると聞いて、見物に来た」

タルスがピルの手を握る。「幸運を祈る」

ピル「墓から這い出てくるから心配するな」
チョンエ「チンスクのほうが早くウェディングドレスを来ることになるなんて、夢にも思わなかったわ」
クギル「チョンエ、俺は今すぐにでも式を挙げられるぞ」
チンスク「みんな、邪魔しないでおとなしくしててよね。私、今日は綺麗に映らなきゃいけないんだから」

「さぁ、準備しましょ」スジンの先導で、チンスクがピルの手を引いた。

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「特別丁寧にお願いしますね」スジンはメイク担当者に親友チンスクのことを頼んだ。

スジン「シェーディングとハイライトをしっかり。写真写りバッチリじゃないといけないんですから」
メイク「わかったわ。作品一つ作ってみましょ」
チンスク「(目元を指し)目の下のクマ、なんとかしてくださいます?今日、婚礼品選ぶのに大変だったんです」
スジン「やれやれ、オーバーね。体は疲れても、ポン・ピルと婚礼品見に行くのは楽しいでしょ?私だって結婚には幻想抱いてるのに」
チンスク「私もそうだったんだけど、”死体”を連れ歩いてみなさいよ。ホント大変なんだから。私一人で見て、私一人で決めなきゃいけないのよ。ピルは役に立たないもの」
スジン「確かに。ポン・ピルは女心がわからないもんね。そういうのに関心もないし」

#訳してて心が死んでいく…。

チンスク「あんた、留学の準備は順調なの?」
スジン「うん。飛行機のチケットも取ったし、あとは出発するだけ」
チンスク「チッ、もう少しいればいいのに」
スジン「スケジュールが決まってるんだから仕方ないでしょ。この子ったら一生ネチネチ言いそうね」
チンスク「寂しくて言ってるのよ」
スジン「ごめんね、ホントに」

「私、向こうで準備してるから」スジンはメイク室を出た。

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タキシードに着替えたピルは、鏡の前で蝶ネクタイと戦っていた。
どう着けていいのかわからず、留め具を覗いているところへ、スジンがやってくる。
「貸して」スジンは見かねて蝶ネクタイを受け取った。「着けたこともないのね」

スジン「胸を張って」

スジンが蝶ネクタイの両端を持ち、ピルの後ろに手を回す。
首の前にタイを持ってきて、位置を整えた。「ねぇ」

スジン「チンスクのジューストラックが100号店まで増えたとしても、男は女に頼ったりしちゃダメよ」
ピル「…。」
スジン「自分の食べる分は自分で稼がないと。チンスクに苦労させちゃダメ、わかった?」
ピル「…。留学するんだってな。いつ行くんだ?」
スジン「忘れたの?一週間後」

#スジンもなかなかボウタイ着けられない(笑)

ピルはジェヒョンが持っていた留学院の紙袋を思い浮かべた。

ピル「一人で行くのか?」
スジン「一人に決まってるでしょ。どうして?」
ピル「あぁ、いいんだ」
スジン「結婚式に出られなくてごめん。その代わり、ご祝儀は弾むから許して」

蝶ネクタイを結び終わり、スジンは仕上げにポンと優しく襟元を撫でた。「出来たわ」
と、ピルの手がすっと伸びてきて、彼女の手をつかまえる。「スジン…」

スジン「…。」

俺、このところ説明しようのないことばかり起きてるけど…
説明できることが一つだけある。
俺とお前はお互いに好きだってこと。
まだ諦めるなよ。
俺も諦めたわけじゃない。
もうじきまた違う姿で会うことになるから… 俺たち。

メイク室を出て来たチンスクが、中庭の向こうを通りかかる。
ピルとスジンの姿を見て、彼女は立ち尽くした。

スジン「…チンスクが待ってるわ」

#チンスクはショックだけど驚いている様子はなく、スジンも戸惑いながらも拒絶しないのがポイント

「あ…」ピルが我に返ったように手を緩めると、彼女の手がするりと抜ける。

スジン「結婚… おめでとう」
ピル「…。」
スジン「あんたとチンスク、ホントにお似合いだわ」
ピル「…。」

「こうやって正装したらカッコイイわ、ポン・ピル!」そう言って、スジンは明るくピルに笑ってみせた。

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スジンは撮影場所でカメラの設定を確認し、新郎新婦が来るのを待っていた。
「…。」さっきピルに掴まれた左手に、まだ彼の感覚が残っている。
彼女は大いに戸惑っていた。

そこへクギルたちが新郎ピルを連れてくる。「なぁスジン、俺たちの知ってるピルじゃないみたいだと思わないか?」

タルス「これぞまさに”換骨奪胎”だ」
スジン「(にっこり)」
ピル「俺がこんなことまでするなんてな」
タルス「上手くやれるさ。心配するな。笑う練習しようぜ」

「ジャーン!」今度はチョンエがチンスクを連れてくる。
美しいウェディング姿に歓声が上がった。「うわぁ!」

クギル「これが焼酎をかっ食らってたチンスクか?」
タルス「俺はこの結婚に反対だぞ。チンスクが損する取引じゃないか。おい、警察を呼べ。この結婚は阻止しないと」
チョンエ「まぁ私ほどじゃないけど、すごく綺麗だわ。スジン、チンスクを見てよ。最高じゃない?」
チンスク「私、もともと綺麗だもん!」
スジン「ホントに綺麗よ、チンスク。ちょっと、ポン・ピル、あんたも何とか言ったらどう?」
ピル「!」

皆の視線がピルに集まる。

ピル「何だよ今さら。チンスクはもともと綺麗だぞ。(周りに)知らなかったのか?」

「さぁ」スジンがパンと手を叩く。「始めましょ」
「新郎新婦の入場~」皆に送り出され、ピルとチンスクはカメラの前に座った。

スジン「さぁ、新婦さん、明るく笑って新郎さんに寄り添ってください」

チンスクがニッコリしてピルの肩にもたれかかる。

スジン「新郎さん、ニコッと笑って。さぁ、いきますよ」

スジンが一旦覗いたファインダーから顔をあげる。「ポン・ピル、もうちょっと笑ってよ」

スジン「行くわよ、1,2,3!」

次は立ち上がっての撮影だ。「さぁ、向かい合って。ほら、ポン・ピル笑って!」

#地獄だ…

タルス「こいつ、カメラ恐怖症か?」

「もっと果敢にやれよ」そう言って、タルスがいきなりチョンエを思い切り抱き寄せる。「こんなポーズでさ」
スジンがついでに二人をパシャッと撮った。

チンスク「(ピルに)私たちもやる?」
ピル「いや、俺たちはおとなしく撮ろう」
チンスク「そうね、そうしましょ。(スジンに)おとなしく撮りたいって」
スジン「そう?じゃあ撮るわね」
クギル「おい!キスしろよ!キス!」

#あーもう!カメラマンがいるのに、うるさい外野に我慢の限界

「キス!キス!」皆が囃し立てる。

ピル「!」

チンスクがピルの反応を窺い、スジンも一瞬困ったようにピルを見た。

クギル「おい!男が迫力たっぷりにやるもんだ、早くやれよ」
ピル「いいって、キスなんて」
スジン「ポン・ピル、ウェディング写真には必須よ。さっさとやって」
ピル「いいってば」

「今日に限ってなんでそうお高くとまってるわけ?」チンスクが冗談ぽく言う。
「私がやるわ」チンスクが背伸びをして迫った瞬間…
「あっ」ピルは反射的に身を引いた。

チンスク「…。」
ピル「ま、待った」

場に沈黙が広がる。

チンスク「…。」
ピル「いや、俺はただ…」
チンスク「…。」
ピル「そんなんじゃなくて… 人が見てるところでやろうとしたから、それはちょっとなって…」

チンスクは微笑み、俯いた。

スジン「(みんなに)私たちの前じゃ恥ずかしいみたい」
クギル「おい、お前そんなんで初夜はどうするんだよ」

チンスクとピルは顔を見合わせ、ぎこちなく微笑んだ。
ピルは気を取り直し、チンスクの肩に手を回す。「はやく撮ろう。キスよりこの方がいいだろ?」

チンスク「うん、撮ろう」

+-+-+-+

撮影が終わった。
スタジオの非常階段へふらりと出てきて、スジンは膝を抱えた。「…。」

スジン「しっかりしなさいよ、カン・スジン。おめでたいことなのよ。あんたはただ… 二人の幸せだけ祈ろうよ」

+-+-+-+

チンスクもチョンエと共に控室へ戻っていた。

チョンエ「撮影疲れたでしょ。でも、ホント綺麗に撮れてたわ」
チンスク「ホント?」
チョンエ「お水持ってきてあげるから休んでて」
チンスク「ありがとう、チョンエ」

チンスクはテーブルの上のPCを覗いた。
撮影したばかりの写真が画面に並んでいる。
一枚一枚送りながら、彼女の顔からは次第に笑みが消えていった。
画面の中のピルのように…。

チンスク「…。」

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ここで一旦区切ります。

過去にタイムスリップしたときの出来事から、マンホールが勝手に現在を作り出します。ピルの意志とは一切関係なく。
前回過去へタイムスリップしたときにピルの中で一番大きかった出来事は、スジンに「チンスクだけは傷つけないでほしい」と言われたことだったのでしょう。ひたすら「チンスクを傷つけない」という条件で構築された現在、ということだと思います。
「いくらなんでも婚約までにピルがストップかけるだろう」「チンスクはそこまで押し切らないだろう」といったような”加減・調整”はプログラムされていないということですね。
それでも、「喧嘩に勝った→チンピラになった」みたいなぶっ飛び設定なら気にならないことも、今回みたいに人の気持ち第一のデリケートな部分がガラッと変わってしまうと、いくらファンタジーでも受け入れ難いですね…。

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