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マンホール-不思議の国のピル6話あらすじ&日本語訳vol.2

   

ジェジュン(JYJ)、ユイ、チョン・ヘソン、バロ(B1A4)出演のKBSドラマ『マンホール 不思議の国のピル』6話レビュー、後半です。

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夜が明けた。
ようやく帰ってきたソクテの父は、何事もなかったように台所にいた息子をとっ捕まえた。「お前!」

ソクテ「父さん?どこへ行ってたんです?水を持って来いっておっしゃったじゃないですか」
父「あぁ」
ソクテ「でも父さん、水を淹れに来たらもう日が昇ってたんです。変だな」

「あぁ、疲れた」ソクテは水の瓶を父に渡し、痛む腰をトントンと叩きながら部屋へ向かった。

父「ふむ、すでに抜けた後か」

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ぐっすり眠っているスジンを、ピルは枕元でずっと眺めていた。
その幸せそうな寝顔に、彼の顔にもひとりでに笑みが溢れる。

#あぁ溶ける。溶けますって☆.。.:*・゚☆なんちゅう優しい目で見るんすか。
こんな眩しいところでよう寝れるわと思いながら(笑)

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朝からチョンエの引っ越しが始まっていた。
トラックに荷物を積んでいたチョンエがふと見ると…?
赤ジャンパーに身を包んだタルスとクギルが立っているではないか。

チョンエ「頭おかしいんじゃなの?こんな真夏に。さっさと脱ぎなさいよ」
クギル「ヤダ」
タルス「俺だってイヤだ」

二人は張り切って引っ越しの荷物を運び始めた。

「今度からはお金が好きだって言いなさいよね」二人を眺めながら、母親がチョンエに言う。

母「ジャンパーの代わりにお金を持って来てくれるように」
チョンエ「二人とも貧乏よ」
母「それにしてもあんた、どうして片方の貧乏ばかり見てるの?」
チョンエ「あっちの貧乏の方が好きだから」
母「あんた、私の言ったこと覚えてるわよね。あんたを愛してくれる人と付き合いなさい。じゃないと男の背中ばかり見て生きることになるわよ」
チョンエ「もう、またそれ!私はお母さん似じゃないもの。お母さんは恋愛ベタだけど、私は違うわ」

荷を積み終わり、タルスがふぅっと息をついた。「喉乾いた」
チョンエがさっと水のボトルを持って立ち上がる。
タルスが受け取ろうと手を伸ばすと…?
彼の前をスッと通り過ぎ、チョンエはクギルに水を渡した。

クギル「…ありがとう❤」

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ソクテはチンスクに会いに来ていた。

チンスク「ソクテ、あんたがうちの会社の前までどうしたの?」
ソクテ「チンスク、俺、昨日スジンと会ってたらしいんだ」
チンスク「スジン?」
ソクテ「(頷く)」
チンスク「ちょっと待って。“会った“じゃなくて、”会ってたらしい”って何よ?」
ソクテ「俺、また記憶がないんだ」
チンスク「何言ってんだか。昨夜スジンに会ったけど、記憶がないって?」
ソクテ「うん。霊に取りつかれたらしい」
チンスク「霊が何であんたを連れて行かなかったんだろ。残念だわ」
ソクテ「冗談じゃなくてホントなんだってば。うちの父さんが俺の後をつけてたらしいんだけど、スジンとデートして、おんぶしてやってたって」
チンスク「夢の中だけでも願いが叶ったわけね。あんた昔からスジンが好きだったじゃない」
ソクテ「いや、スジンのことはとっくに諦めてるよ。知ってるだろ、お前のことが好きだって」

「幽霊さん、この子を連れてってください。頭がおかしいんです~」反応に困り、チンスクはまた彼をからかった。

ソクテ「なぁ、俺マジで言ってるんだ。ホントに怖くて会いに来たんだから」
チンスク「この子たち揃ってどうしちゃったんだろう。ドッキリ仕掛けられてるわけじゃあるまいし」
ソクテ「なぁチンスク、お前、すごく“気”が強いじゃないか。だから、俺のこと守ってくれよ。今夜一緒にいてくれないかな」
チンスク「ちょっと~!(拍手)とうとう幽霊まで動員して口説くつもり?ソクテ、あんたホントにクリエイティブだね。驚きだよ」
ソクテ「なぁチンスク、ホントに驚きなのは何だと思う?スジンがやたらと俺にメールしてくるんだ。”あんた今ピルなのか”って」

「!」チンスクの顔色が変わった。「…。」

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いつの間にか眠っていたようだ。
ピルがふと気づくと、ベッドにスジンの姿はなかった。
知らないうちに午後2時をまわっている。
「寝過ごした」彼は慌てて立ち上がった。

外へ出てみると、急に周りの景色がグラリと歪んだ。「?」
緑が青に、そして真っ赤に… 目まぐるしく変化する。「何だ?」
自分の姿が薄れていくのに気づいた次の瞬間、激しい胸の痛みを覚えた。「あっ!」

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病院でもピルの体に異変が起きていた。
心電図が異常な数値を記録し、けたたましく電子音が鳴り響く。
彼の全身が小刻みに震えた。

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スジンがアトリエにいると、誰かがドアをノックした。「!」

スジン「遅かったじゃな…」

入ってきたのは… ジェヒョンだ。
驚くスジンを見て、ジェヒョンはふっと微笑んだ。「スジンさんが僕を待ってるとは思わなかったな」

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「昨夜は一睡もできなかった」けだるそうにソファにもたれかかり、ジェヒョンが言った。

ジェヒョン「ちょっと変な日だったんだ」

「…。」スジンが目をキョロキョロとさせる。

ジェヒョン「スジンさんは何ともなかった?僕、スジンさんに会いに来て記憶を失ったんだ」
スジン「!… 昨日、お酒飲んでいらっしゃいました?」
ジェヒョン「僕、もともと酒は飲まないんだ」

「何かがおかしい」ジェヒョンが考えを巡らせる。「僕らに理解できない何かがあるんだ」

スジン「昨日は私と話をして帰られましたけど」
ジェヒョン「この街に来て、おかしくなったのかな?」
スジン「…。」

「ところで」ジェヒョンがスジンの顔を見た。「表情がずっと明るくなったね」

スジン「ジェヒョンさんが忠告してくれたからですよ。気を楽にもてって」

ジェヒョンは静かに微笑む。「困惑だな」

ジェヒョン「確かに…。初めてスジンさんに会ったときから並外れた印象だった。ファンタジーみたいだったんだ」

「あのバス停でのことだよ」ジェヒョンはまっすぐにスジンを見た。

それは、大雨の降っていたある夜。
バス停のベンチで、じっと雨に打たれている女性がいた。
そこへやって来たのがジェヒョンだった。
ズブ濡れのまま身動き一つしない女性が気になって、彼は黙って彼女の頭上に傘を差し掛ける。
その女性がスジンだった。

ジェヒョン「まるで頭の上に“ヘルプ!“ってフキダシをつけているみたいに、すごく寂しそうで、すごく辛そうで、すごく悲しそうに見えて…。そうやって30分くらいそばにいたかな?」

ようやくスジンが顔を上げ、自分に傘を差し掛けている彼に気づいたのだった。

ジェヒョン「それからポツリと僕に言ったこと、覚えてる?」
スジン「”ありがとう”」
ジェヒョン「そうだ、”ありがとう”。その一言で僕は魂を奪われたんだ」
スジン「…その日はある人のことであまりに辛くて」

「あの人?」ジェヒョンが壁に並ぶピルの写真を指差した。

スジン「えぇ。彼がいなかったら、私たちが出会うこともなかったはずだわ。お互い知らない同士だったでしょうね」
ジェヒョン「感謝しないとな」
スジン「申し訳ないけれど…」

スジンの言葉に、ジェヒョンはかすかに身を固めた。

スジン「彼がいるから、私たちはムリだわ。ごめんなさい」
ジェヒョン「…。」
スジン「私には、彼しかいないんです」

ハッキリと言い切ったスジンの前で、ジェヒョンにこれ以上切るカードはなかった。
彼は潔く立ち上がる。「とにかく、顔が明るくなってよかった」

ジェヒョン「今度は僕があのバス停に茫然と座ってる気分だよ。誰かを待ちながら」

スジンも元気に立ち上がる。「誰か来るはずです。ジェヒョンさんの隣に」

「じゃあ」ジェヒョンは帰っていった。

スジン「(キョロキョロ)それにしてもピルはなんで来ないのかな?」

#せめてジェヒョンさんが部屋を出て行くまで見送ってからにしてあげなよ^^;

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ピルの病室に医師たちが飛んできた。「早く身内に連絡して!」

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ピル(魂)はやっとのことでスジンのアトリエにたどり着いた。「スジン!」
彼の声は彼女には届かない。
こうしている間にも、彼の姿はどんどん薄れていくばかりだ。「どうなってるんだ?これじゃ困るのに…」
「なぁ、スジン!」幸せそうに写真を見つめるスジンに、彼は懸命に呼びかけた。

そこへ駆けつけたのがクギルの父だ。「おい!ここで何してんだ!」

クギル父「(半透明になったピルを見て)何で急に魂が弱くなった?」
ピル「おじさん、変なんです。力が入らないし、スジンも僕に気づかなくて」
クギル父「今、スジンを気にしてる場合か!お前、今死にかけてるんだぞ」
ピル「えっ?」
クギル父「体から長く離れすぎたんだ。早く体に戻らないと本当に死んじまうぞ!」

「僕が死ぬわけないじゃないですか!」ピルが声を荒げる。

クギル父「!」
ピル「スジンが僕を助けてくれますから。(スジンを見て)マンホールのこと、全部話したんです。全部元通りになるってことも。僕を助けられるのはスジンしかいないのに、助けてくれって話はできませんでした。今晩マンホールに入らなきゃいけないって、まだスジンは知らないんです!」

「なぁ、スジン!」ピルは夢中でスジンに呼びかけた。

クギル父「とりあえず病院へ帰ろう。俺が方法を考えてみるから、とにかく病院へ戻らないと!早く!」
ピル「スジン…」

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ピルは病院へ走った。

ピル(心の声)「どうか助けてくれ。スジン!頼むから… 聞いてるか?!スジン!」

#ここで掛かってるピアノとストリングスの音楽、いいね。だんだんクレッシェンドしていく構成が、感情の盛り上がりに合ってる^^

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聞いてるか?スジン!

ピルが来るのを待っていたスジンは、ふいにピルの声が聴こえたような気がして、ハッと立ち上がった。「!」

スジン「…ピル?」

「ピル!」慌てて駆け出そうとしたとき、チンスクが入ってきた。「どこか行くの?」
「チンスク…」スジンは倒れ込むようにチンスクに体を預ける。

チンスク「ちょっと…何かあったの?」

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ピル(魂)が“命からがら“病室へ帰り着いたとき、すでに心臓は停止し、医師が心肺蘇生を行っていた。
ピーッという心電計の無機質な電子音が、部屋に響いている。

ピル(魂)「(ベッドの自分を見て)何だよ、どうしちまったんだ?今入ったら、もう出られそうにないけど…。スジン、頼む!」

彼はベッドの上にあがり、自分の体に重なった。

と、心電計がまた脈を刻み始めた。
両親が駆けつけたのは、その時だった。

母「どうなってるんです?突然どうしたんです?」
医師「峠は越しましたが、今の状態では今日が最後の夜になりそうです」
両親「!」
医師「心の準備をなさっておいたほうがよさそうですね」

「!」父が愕然と肩を落とした。「こいつ、とうとう行くのか…」

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日が沈み、街灯が灯り始めた。

スジンはまだアトリエにいる。
チンスクを相手に、ピルにまつわる不思議な現象を説明していたのだ。

チンスク「昨日会ったのは、ソクテじゃなくてピルだったって?」
スジン「(うんうん)」
チンスク「ほぅ、OK. じゃあ今ピルはどこにいるの?」
スジン「わかんない。私も待ってるところ」

チンスクは呆れたように小さく笑みを浮かべた。

スジン「ソクテのところに行ってみようかな」
チンスク「ソクテのことはそっとしときな。ソクテはちゃんとソクテのままだから。で、マンホールってそりゃまた何の話?ピルがマンホールを通して時間旅行してるってこと?」
スジン「うん」

「マジどうにかなりそう」チンスクは笑って頭を抱えた。

スジン「ピルが来たら本人から聞きなよ。もうすぐ来るはず。今日私に頼みがあるって言ってたから」
チンスク「頼みって?」
スジン「さぁ。昨日一緒にいるうちに眠くなって聞けなかったの」

#ホント!なんで韓ドラのヒロインは揃いも揃ってスーパーハンサムを前に爆睡できるんだろうね!

チンスク「あんた!今日ピルが来なかったらぶっ殺すからね」
スジン「…。」

そこへスジンの電話にメッセージが入った。「ピルからみたい」
ところが、開いてみると…

ピルのおばさん(メール)「スジン、ピルは今日、夜を越せそうにないみたい…」

「は…」じっと画面を見つめるスジンに、チンスクが尋ねる。「何?」

スジン「ピルが…」
チンスク「!」
スジン「今夜が最後になりそうだって…」

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通りへ飛び出したスジンとチンスクはタクシーを探した。

チンスク「だからあり得ないって言ったでしょ!ピルがあんな状態なのに、魂だけ抜け出してウロついてるだなんて戯言を」
スジン「間違いなくピルだったのよ!私たち二人しか知らないこと、全部覚えてたんだから」

ちょうどやって来たタクシーに二人が乗り込む。
その様子を、反対車線でソクテの父が見届けた。「ピルの魂が彷徨ってる?ほほぅ、ようやく掴めたぞ」

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夜道をふらふらソクテが歩いていると、父親のバイクがやって来た。「あれ?父さん。今仕事帰りですか?」

ソクテ父「俺たちが病院で赤っ恥をかいたのは誰のせいだと思う?」
ソクテ「え?」

ソクテの父は空を指差した。「昨日と同じ月だ」

ソクテ「?」
父「昨日は屈辱の月。しかし、今日は復讐の月になる」

ソクテの父はニヤリとした。「病院へ行こう」

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引っ越しを終え、チョンエは赤ジャン男を二人従え、歩いていた。

クギル「チョンエ、ダイニングの椅子を壊したの、(タルスを指し)こいつだぞ」
タルス「冷蔵庫から消えたソーセージ5本、(クギルを指し)こいつだぞ」
クギル「それは糖分が足りてなかったから」
タルス「他人の家の冷蔵庫を触っちゃダメだぞ」
クギル「何だよ!」
タルス「食ったろ」
クギル「何を」
タルス「全部見たぞ」
チョンエ「やめてよ!」

その瞬間、三人の電話が同時に着信を告げた。

ソクテ(メール)「今夜、ピルにまた何か起きそうだ。うちの父さんを止めてくれよ」

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スジンとチンスクが病室へ駆けつけた。
母親が立ち上がる。「…二人ともありがとう。来てくれて」

スジン「夜を越せないって…それどういうことですか?おばさん」
母「…。」
スジン「私、昨日もピルに会ったのに、一体どういうことなんです?」

スジンはベッドの上のピルに向き直った。「何よ、あんた」

スジン「今日一日中あんたのこと待ってたのに、一体何してんのよ!」

ピルはがスジンの呼びかけに応えることはない。

スジン「ねぇ!ねぇってば!目を開けてよ!」

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心電図のピルの脈音が、まるで時計のように静かに時を刻む。
スジンたちは両親とともに、ただじっとベッドのピルを見守っていた。

ふとスジンは枕元の写真を手に撮った。
彼女が海でピルを撮った写真… “Run to me、ピル!”

「…。」彼女は昨日ピルが話したことをもう一度落ち着いて反芻した。
トンネルの前にあるマンホールで、行ったり来たりしていると…
夜12時に出かけて、昼12時に帰って来ると…。

そうして、ふたたびベッドのピルに視線を戻し、ハッと時計を見上げた。
午後10時53分。

「!」スジンの中で決意が固まった。
彼女は立ち上がり、黙って病室を出ると、しばらくして戻ってきた。「あの、おじさん、おばさん」

スジン「先生がお呼びです。ここは私たちが見てますから」

「分かった。しばらく見ていてくれ」両親が急いで部屋を出て行った。

+-+-+-+

さぁ…!

スジンが廊下に用意していた車椅子を運び入れ、病室の扉を閉めた。

チンスク「何してるのよ!」
スジン「チンスク、私たちがピルを助けよう。12時にマンホールに入るって言ってたの。そうすれば全てが元通りになるって」
チンスク「しっかりしてよ、カン・スジン!」
スジン「どっちにしたって今日、夜を越せないんでしょ。それなら今日が最後じゃない!私、ピルをこのまま逝かせられないわ。手伝わないなら、どいて!」

ピルに手を伸ばすスジンを、チンスクが夢中で引き止める。「あんた気でも狂ったの?!」

スジン「うん。私、ピルがダメだったら死ぬわ!正気でいられるもんですか。ピルがいないのに!」
チンスク「!」
スジン「あんたには出来ても私は絶対ムリよ」

「スジン!」チンスクの声に涙が混じる。「ピルはきっと大丈夫」

チンスク「いつもそうだったでしょ!」
スジン「時間がないの!こうしてるうちに12時になるわ。そうなったら本当におしまいなのよ!」
チンスク「あんただけがピルのこと考えてるふうに言わないで。私だってあんたと同じようにピルのこと考えてるわ」
スジン「それならあんたはどうして感じないの?」

「!!!」チンスクは言葉を失った。

スジン「どうしてピルを感じないのよ?」
チンスク「そういうあんたは?!なんであんたしか感じないの?誰も感じないのに、なんであんただけ感じるのよ!」
スジン「…。」

「バカなこと言わないで」チンスクが吐き捨てるよに言った。
「人を呼んでくる」病室を出ようとしたチンスクの腕を、スジンがぎゅっと掴む。

スジン「ピルは知ってたわ。あの日、海で火事が起きるって」
チンスク「!」
スジン「覚えてない?私たちが着いたとき、帰れって言ったでしょ」

そう、ピルがしきりに火事が起きると騒いでいたことは、チンスクが一番知っている。

スジン「周りにバケツをたくさん置いて、ピルはあの晩一滴も飲まなかった」
チンスク「…。」
スジン「あのときのピル、今考えてみれば理解できるわ。あの日、火事が起きるのを知ってたのよ」
チンスク「…。」
スジン「どうして私だけ感じるのかって?ピルは… 私のことだけ考えて、私のことだけが好きだから」

「…。」チンスクの目に涙が滲む。

スジン「チンスク、私、あんたがピルのこと好きだって知ってるわ」

「!」堪えきれず、チンスクの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。

スジン「私が躊躇してたのは、あんたがいたからかもしれない。だけど…」

「もう躊躇ったりしないわ」スジンはまっすぐにチンスクを見て、首を横に振った。「今度は私が守らなきゃいけないの」

チンスク「…。」
スジン「私たち、こうしてるうちに永遠にピルに会えなくなるのよ、チンスク!」

突然心電計が警報音を鳴らし始めた。「!」
急激に脈が弱くなっている。
スジンが急いでピルの体に手をかけた。

チンスク「スジン…。あんたの言うとおりかもしれないわ。ピルはあんたのことだけ考えて、あんたのことだけ好きだから…」

#あぁあ、もうこの二人の切羽詰まった会話、訳しながら何度泣いて止めたか…。ピルのこと大好きな親友同士、死に瀕したピルを助けたい気持ちはどちらも同じ。時間に迫られた中、必死にピルを守ろうとする気持ちがぶつかり合って、これ、名シーンだと思います。

+-+-+-+

クギルの父は、誰かの体に憑依しようと、通りかかる医師たちにタックルをしては跳ね返されていた。「学のある人たちだからか?なんでこうガードが固いんだ?時間がないのに、ちっとも入れないじゃないか。病院の職員ならあいつを連れ出しやすいのに!」

+-+-+-+

チンスクとスジンは二人で力を合わせ、ピルを車椅子に乗せ、廊下を進んだ。
目立たぬよう、ピルの頭には深々とキャップを被せてある。

スジン「チンスク、タクシー捕まえて」

ロビーをチンスクが急ごうとしたそのとき、目の前に誰かが立ち塞がった。
ソクテ親子だ!

ソクテ父「邪悪な気が漂っておる」
ソクテ「(うんうん)」
ソクテ父「お前たち、俺が知っているスジンとチンスクではあるまい」
スジン「おじさん、時間がないんです。退いてください」
ソクテ「おい、お前らしっかりしろよ。どうしたんだ?」
ソクテ父「二人のうちどっちがピルだろうな?もうひとりはクギルの親父のようだが。酒好きだからな」

「退いてよ!」チンスクが押し切ろうとする。

ソクテ「父さん、ピルが彷徨ってるなんて変じゃないですか?」
ソクテ父「お前、ピルにあんな目に遭ってもわからんか!」
ソクテ「?」
ソクテ父「お前、昨日もピルに体を乗っ取られたんだ。我々が霊に取り憑かれたことも証明できるぞ」

「…。」と、ソクテが急に大きなくしゃみをした。
ハクション!!!

ソクテ父「俺がそいつを証明するぞ!そして昨日の汚名を晴らし、必ずやポン局長に謝罪…」

ゴン!!!
言い終わらないうちに、ソクテがいきなり消化器で父の後頭部を殴りつけた。
「うう…どうやりやがった…?」父がバタリと倒れると、”ソクテ“が言う。「行くぞ!」

スジン&チンスク「(ポカーン)」
クギル父(ソクテに憑依中)「時間がない!早く行こう!」

彼は驚いて突っ立っている二人に代わり、車椅子を押して駆け出した「急げ!」

+-+-+-+

3人が車椅子を押し、病院を出て来たところへ、ちょうどチョンエたちの乗ったタクシーが到着する。「おい、何だあれ!」
前に停まっているタクシーに、ソクテやスジンたちがピルを乗せようとしている。

スジンが後部座席でピルを抱くように支え、タクシーが走り出した。

クギル「ううう運転手さん、ストップ!あのタクシーを追ってください!」

+-+-+-+

スジンたちはタクシーを降り、トンネルを駆け抜けた。

クギル父(ソクテに憑依中)「ここだ。着いたぞ」

何の変哲もないマンホールの前で、車椅子が止まる。

チンスク「つまりあんたが… いえ、おじさんはクギルさんのお父さんなんですか?」
クギル父(憑依)「ピルのヤツのせいで死んでものんびりできんわ」
チンスク「ピルはこのあとどうなるんですか?」
クギル父(憑依)「俺だってわからん。待つだけだ。マンホールを通って行くっていうのを信じるしかない」

トンネルの向こうから誰かの声が聴こえた。

チンスク「誰か来た?」
クギル父(憑依)「あん?」

「ソクテ~!」走ってきたのはクギルたち3人組だ。
クギル父(憑依)とチンスクが、彼らを止めに走る。

スジンはマンホールの前で車椅子のピルと二人になった。
「…。」急に静かになったその場で、スジンは跪き、ピルの顔を覗く。
顔を隠していたキャップを外し、柔らかな髪を撫でた。

ピル…。今日が最後じゃないよね?

ピル(声)「俺がマンホールに入ったら、お前は全部忘れちまう。俺と話したことも、全部…」

あぁ… 永遠のお別れみたい。
あんたの言うとおりなら、また会えるはずだけど…。
私を見失わないで。のがしたら許さないから。

ピル(声)「もちろん。お前がどこにいようと、会いに行くから、心配すんな」

+-+-+-+

「おい、ソクテ!」クギルにタックルされる寸前、クギルの父はソクテの体から飛び出した。

チンスク「やめて!これはソクテじゃなくて、クギルさんのお父さんなの!」
クギル「(ソクテを蹴りながら)お前もやられたいのか?」
タルス「やられたくなかったらあっち行け!」

そのとき、突然雷が鳴り響き、マンホールの上の街灯がチカチカと点滅した。

スジン「ピル、私たち、どうして叶わなかったのかな。何が私たちを遮っているのかな」

キンコーン
12時の鐘がなった。

ドン!
マンホールの蓋が空高く舞い上がったかと思うと、幾つもの光が飛び出して空中に鮮やかな線を描く。

皆「!!!」

光の線がピルの体を足元から螺旋状にクルクルと登り、
頭の上まで来た瞬間、ピルの姿が忽然と消えた。

スジン「ピル…?」

光の線が渦を巻くようにマンホールへ飛び込んだかと思うと、蓋が落ちてきてピタッと収まった。
そこに残ったのは… 風の音だけだ。

スジンはピルの消えていったマンホールを見つめ、彼がかぶっていたキャップを握りしめる。

”私を見失わないでね…
許さないわよ”

“もちろんさ
お前がどこにいようと会いに行くから、心配すんな”

+-+-+-+

ここでエンディングです。

はぁ…ホントによかったです。
こんなトリッキーな設定でも、キャラの心情にちゃんと寄り添える気持ちよさ!
見終わった後、心がしばらく戻ってこられませんね。マンホールで連れて行かれちゃったみたいに。

気持ちを表現するセリフが、どれも変にひねらずストレートなのが、大きな魅力の一つだと思います。
心にズバッと響きますね。

この5・6話は何度でも観たくなる名作かも♪

 - マンホール-不思議な国のピル ,

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