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マンホール-不思議の国のピル2話あらすじ&日本語訳vol.1

      2017/08/13

ジェジュン(JYJ)、ユイ、チョン・ヘソン、バロ(B1A4)出演のKBSドラマ『マンホール 不思議の国のピル』2話のあらすじを、セリフの日本語訳を混じえながら紹介していきます。

ではさっそくGo~♪

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スジンを置き去りにして消えたピルは、電話に出ることさえなかった。

スジン「わぁ、呆れたヤツ!何てヤツなの?招待状も捨てて私も捨てて、電話にも出ないなんて!」

スジンはみんなと呑んでいるチンスクに電話を掛けた。「ピル、そこにいるでしょ」

チンスク(電話)「あんたが連れて行ったじゃん」
スジン(電話)「え?来てないの?」
チンスク「いなくなったの?」
スジン「途中で私を置いて逃げたのよ、あのバカ!」
チンスク「道も家もわからないわけじゃあるまいし。そのまま帰りなよ。あいつ最近おかしいんだから。それからピルが見つかったらこっちへ来させて。酒でも飲ませるわ」

電話を切っても、スジンの怒りは膨らむばかりだ。「ホント面白いヤツだわ!」

スジン「いつだってそうよ、予測不可能。私とは全然合わないのよ、昔っから」

「生まれ変わっても合わないわ」イライラしながらスジンは歩き出した。「フィーリング(=feel、韓国語でピル)が合わないのよ、あいつとは!」

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帰宅してベッドの上にゴロンと倒れ込んだところで、スジンの携帯にメッセージが入った。「?」
フィアンセのジェヒョンからだ。「彼があまりに失礼だったから。暴力を振るったのはゴメン。機嫌が直ったら電話して」

スジンはバッグから招待状を取り出した。ピルが”捨てて”行ったものだ。
起き上がり、彼にもう一度電話を掛ける。「出てよ…」
「出てよ…」呼び出し音が鳴り続けるばかりだ。

スジン(ピルへのメッセージ)「電話して。今すぐ電話しなかったら、もう二度と会わないから」

「…。」スジンは鳴らない電話を睨む。

スジン(ピルへのメッセージ)「ぶっ殺すわよ!」「話があるんだから!」「もういいわよ、クソ野郎!」「元気でね、くたばり損ない!」

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翌朝。

「あなたの息子、外泊したわね」ピルの母がダイニングで朝食を待っている夫に言った。

ピル父「何のことだ?僕には息子なんていないよ」
ピル母「”一時、あなたの息子だった”に訂正」
ピル父「食事の味が変わってしまう。さぁ、よく噛んで食べよう」
ピル母「えぇ、よく噛んで食べましょ」

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ピルの友人たちに、それぞれ小さな小さな”異変”が起きていた。

チンスクのドリンク販売カーへ納品にやって来た業者は、一番大事なイチゴを持ってきておらず…
トイレで踏ん張っていたソクテは、なくなっているトイレットペーパーに愕然とし…
タルスのPCは突然システムファイルがないとエラーを吐き…
チョンエの大事にしているタオルは見当たらず…
クギルがラーメンを食べようとしていた袋を開けると、スープが入っていない。

皆、いつもと違って何かが足りないのだ。

全員(別々)「そう言えば…」
全員(別々)「ピルを見かけないな…」

~~~~そのころピルは…~~~~

高校の教室、ドイツ語の授業でゲシュタポとニラメッコの真っ際中だ。
突然のことで、ピルにはさっぱり状況が掴めずにいた。

ピル「あ、あの… 先生、すごく久しぶりで嬉しいんですけど、僕、今ここにいちゃおかしいんです」
ゲシュタポ「(うんうん)」
ピル「こ、これホントおかしなことなんです」

「そうだな」ゲシュタポは笑いを浮かべる。

ゲシュタポ「授業の邪魔になるだけの陸上部のヤツらに、午前の授業を受けさせるのは俺も反対だ。特にお前みたいな陸上部一の問題児はな」

ソクテが大きく頷いた。

ピル「こ、これって夢ですよね?そうでしょ、ははは」
ゲシュタポ「ははは。まだ夢ん中を彷徨ってんのか?ん?」
ピル「?」
ゲシュタポ「お前、さっき俺に何て言った?”超ムカつく嫌われ者。ゲシュタポ”?!」

「ふはははは」ゲシュタポの狂気じみた笑い声が、静まり返った教室に響く。

ゲシュタポ「愛のムチの前に、お前にいつもする質問があるだろ」
ピル「?」
ゲシュタポ「定冠詞と不定冠詞、1格から4格まで言ってみろ」

ピルは頭を抱えた。「タイム!タイム、先生!」

ゲシュタポ「ん?」
ピル「僕… 僕、定冠詞も何も、そんなの何の関心もなくてですね…」
ゲシュタポ「!」
ピル「僕はね、僕は今どうして自分がここにいるのか、みなさんがどうしてここにいらっしゃるのか、それが知りたいんです」

明らかに様子がおかしい。チンスクとスジンは目を見合わせた。

ゲシュタポ「頭がおかしくなったフリして、この危機から逃れようって気なのか?」
ピル「えぇ、えぇ、僕ホントに頭がおかしいです。けど、10年前に分からなかったことを、10年後に分かるわけないじゃありませんか!

「それに!」ピルはゲシュタポが彼に突きつけている棒きれを指差した。「10年前も叩いたのに、何でまた!」
「ふはははは」怒りを通り越し、ゲシュタポは爆笑する。そして、鬼の形相で机を叩いた。

その後… 見るに堪えない場面が繰り広げられたことは明らかだ。

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「痛い!」うつ伏せになって顔をしかめるピルのお尻に、1年先輩のクギルが軟膏を塗っていた。
体育館には彼ら以外誰もいない様子だ。

「♪棘のように深く刺さった記憶は…痛みを感じることのない…♪」そばでタルスがギターを鳴らし歌い上げる。


※Buzzの가시(棘)という2005年の曲です。いい曲^^

クギル「(薬を塗りながら)ここ、あんまりひどくて塗っただけじゃダメかもな」
タルス「何で午前中だけ授業を受ける陸上部ばかりいつもやられるのか、全く謎だ」

ソクテが皆の分の弁当を持ってくる。「ピル、お前のは俺が開けてやるよ」

ピル「兄貴、これって冗談だよな」
タルス「だな。ゲシュタポに歯向かってこれくらいで済んだんだから」
クギル「けどよ、この辺のヤツらはもともとガッツあるよな」

「おぅ」二人の先輩が拳をコツンと合わせる。
「あぁ!」じっとしていられず、ピルは飛び起き、ズボンを上げた。

ピル「ここがどこかはわかるんだけど、俺たち何でここにいるんだ?」
タルス「存在論に立脚した質問か?」
ソクテ「変なヤツ」

「???」ピルはすがるような目でタルスの肩を掴んだ。「兄貴」

ピル「俺たち、とっくの昔に卒業したろ!一体どうしたんだよ?」
タルス「?」
クギル「こいつ、頭も叩かれたんだな」
タルス「確かめてみろよ」

ソクテとクギルがピルの頭を調べる。

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木の上に身を横たえ、ピルはぼんやりしていた。
「2Gフォン、久しぶりだな」手に持った古いタイプの携帯電話をパカっと開く。

ピル「2007年。ちょうど10年前だ。俺、どうかしちまったのか?太ももがこんなに痛いのに夢なわけないし…。」

「ちょっと!」突然あらわれたチンスクが、木の下から彼の太ももをバチンと叩いた。

ピル「(痛む箇所を抑え)ああ!」
チンスク「何してんの?叩かれるなんて昨日今日のことでもなし、何そんなセンチになってんのよ?練習行かないの?」
ピル「チンスク、お前、俺たちの中で一番賢いから、一つ訊かせてくれ」
チンスク「何?」
ピル「タイムスリップってあると思うか?」
チンスク「時間旅行のこと?」

ピルは木の上からひょいと飛び降りると、真剣な顔でチンスクを覗き込んだ。「俺がもし未来から来たとしたら…」

チンスク「そんなら今のあんたはどこに?」

「…。」ピルはどうにも答えが出ず、ただチンスクを見つめる。

チンスク「未来から来たんでしょ?そんなら現在のあんたと同じ時間に存在するんだから、あんたが二人いるはず」
ピル「そうだな」
チンスク「わぁ、あんたみたいなのが一人いるだけで大変なのに、二人いるなんて全地球規模の災いじゃない?未来少年」

「やれやれ」絶句するピルの頭を、チンスクがつつく。「昼休み終わったわよ。戯言いってないで走りな!」
去っていくチンスクの背中を前に、ピルは途方に暮れて溜息をついた。
そうなのか…?じゃあ一体こりゃ何なんだ?どう理解すりゃいいんだ?
全部夢?スジンの結婚まで10年間、夢だったのか?あんなに鮮明なのに…?

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陸上部のメンバーが練習しているのを眺めながら、ピルはまだ考えに耽っていた。

ピル「陸上なんかとっくに辞めたのに、一体どうなってんだ…?」

「おい、ポン!」座り込んでいるピルの方へ、コーチが苛立った様子で近づいてくる。「こいつ、コーチが呼んでるのにボーっとしやがって」

コーチ「おい、何してる?準備しろ」
ピル「(ボーッ)」
コーチ「一体どこ見てんだ?」

ピルは仕方なく立ち上がった。

コーチ「なぁ、よく聞けよ。お前はな、一度走り出せば爆発的な加速力がある。けど、スタートが酷い。遅すぎるんだ。皆が走り出してやっとケツが上がる。そんなんじゃダメだろ」

「そうだ…」ピルは心の中でつぶやいた。俺はいつだってスタートが遅い。始まりが良くないんだ。
「どうした?」物憂げに黙り込んでいるピルを、コーチが覗き込む。

コーチ「おい、集中するんだ。しっかりしろ。俺の目を見ろって。何度も言ったろ。短距離はほんの一瞬だ。スタートした瞬間、全てが決まるんだぞ。オーケー?」

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午後の教室はいつも少しけだるい。
カシャッ。机に突っ伏して眠っているソクテに、スジンがカメラのシャッターを切った。「あの子、いつも寝てる」

スジン「(チンスクにカメラを向け)わぁ、何?チンスク、勉強してんの?」
チンスク「何よ~?」

「カメラ?」チンスクはメガネを外し、鼻の脇に出来たメガネ跡を抑える。「撮り直して」
そのままスジンの机の上に座り、カメラをさっと手に取った。「新しいやつね。見せて」

スジン「貸してって言ったら、あげるって。週末コンサートで一杯撮ろうよ」

「賛成!」スジンは軽快に声を上げた。

チンスク「それにしても誰がくれたの?新しいのに」

「…まぁね」スジンが言葉を濁す。「あんたに言ってもわからないよ」

チンスク「何よ?誰?」
スジン「…。」
チンスク「教会の人?結局付き合うことにしたの?」

「何言ってんのよ」スジンはカメラを取り上げた。

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「さぁ、集中!」並んでスタートについた陸上部員たちを前に、コーチが声をかける。
彼らの端で、ピルも構えていた。

コーチ「用意!」

「パン」というピストルの合図とともに隣の部員たちが一斉にスタートを切るのを横目で見て、ピルは一瞬遅れて走り出した。

コーチ「そうだ!上手いぞ」

「コーチ」ピルが走るのをやめ、コーチの前へ飛び出す。「僕、陸上辞めます」

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「きゃぁ!」外で女生徒たちが叫ぶ声に、スジンたちは驚いて振り返った。「何事?」
向こうに陸上トラックが見える。
黄色い声援を浴びているのは、ピルだ。

チンスク「おぉ~、ポン・ピル」
スジン「ねぇ、ピルのヤツ、マトモに走れもしないのに、何であんなに人気があるの?」
チンスク「正直、嫌ってるのはあんただけ。みんな好きだよ」
スジン「?」
チンスク「ピルはあんたのこと好きでしょ。小学校のときからあんたのこと困らせて」
スジン「そんなわけないわ。私のこと好きだなんて言ったこともないよ、あの子」
チンスク「言わなきゃわかんないわけ?困らせるってことはそういうことよ」

向こうで再び歓声があがる。

チンスク「友だちに好きだなんて言うのは、簡単なことじゃない。下手したら友だちも失うもん」
スジン「何~?!あんた、ピルのこと好きなの?!」
チンスク「(唖然)ちょっと!好きとか嫌いとかいう感情自体ないよ。友だちだし」
スジン「(ジーッ)」

「私にとっちゃ… 何ていうか」チンスクは自分が腰掛けていた机を叩く。「机みたいな存在」

チンスク「好き嫌いの問題じゃなくて、心地いいか悪いか」

「心地いいか悪いか…」スジンはピルを眺めながら繰り返した。
「ピルは私にとって超心地悪い机だね」そう言いながら、彼女の表情はそう不愉快ではなかった。

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タルスとクギルは、落ち込んでいるピルを背後に悠々とアイスをかじっていった。「短距離選手がスタート遅くてどうすんだ?」

タルス「ひたすら狂ったようなスピードだけ。技がない」
クギル「俺みたいにビリヤードやれよ。炎天下で走ってないで、エアコンの下で。いいだろ」
タルス「あぁ、100mの限界はハッキリしてる。どうせ9秒切れやしないだろ。人類には不可能な領域なんだから」
クギル「お~」
タルス「考えてみたら、ピルってよく不可能に挑戦するよな。ガキの頃、チキンを5匹食べられるかお前と賭けて、こいつ運ばれて胃洗浄したろ」

「ぶははは」クギルが笑ってピルを振り返る。「食べ物でふざけちゃダメだぞ」

クギル「勝負欲だけはパク・テファン以上だ。金メダル」

「兄貴」ピルがようやく口を開く。「ひょっとしてヨソで俺に会ったことないか?」

ピル「ここにいる俺じゃなくて、別の俺」

「???」アイスキャンデーを頬張ったまま、二人の先輩がキョトンとして振り返った。

ピル「よく聞いてくれよ。嘘じゃない。俺… 実は未来から来たんだ」
二人「…。」

「嘘つき」一瞬の沈黙の後、二人の先輩はさっと前へ向き直る。

「兄貴!」ピルは彼らの前へ回り込む。「どう説明していいかわかんないけど」

ピル「今の俺は現在の俺じゃない。10年後の俺だ」
二人「…。」
ピル「だからって、俺がピルじゃないってわけじゃない。ピルには違いないんだけど!」
二人「……。」
ピル「走ってみたら、体は昔の感じだ。10年ぶりに走っても、ポーズが咄嗟にパッと出るし、スピードも…!スピードはダメだな、まだ」

「…。」どうにも奇妙なピルの背後で、二人の先輩はそそくさと逃げ出した。

ピル「話聞いてくれよ!本気で言ってんだ!」

一人ぼっちになり、ピルはまた考え始める。

ピル(独り言)「昨日の夜、間違いなくスジンを家まで送ろうとしてた。それで… はぁ」

とそのとき!
突然彼の頭をとんでもない痛みが襲う。「あぁ!」
ふいに頭のなかに、スジンが何かに襲われている場面がちらついた。「?!」

ピル「スジン!」

彼女の名を呼びながらピルは懸命に走った。

バレーボールの片付けをしていた彼女は、ネットを運ぼうとして、何かにそれを引っ掛ける。「?」
と、その拍子に、記念品の大きな鏡が彼女めがけて倒れ掛かってきた。「わぁ!」
ピルが到着したのは、鏡がバタンと倒れた瞬間だ。
幸い鏡はうずくまっているスジンに当たることなく、地面の上で砕け散った。

ピル「大丈夫か?」
スジン「ピル… どうしよう」
ピル「じっとしてろよ。動くな」

スジンはおいおいと泣き出した。「ここ通りかかったら、これが~」

ピル「動くなよ、じっとしてろ」
スジン「うぇ~ん」
ピル「あぁ、わかってる。大丈夫だ」

「大丈夫だから」怯えるスジンの肩に、ピルは優しく手を触れた。

ピル「危ないから、起きよう」
スジン「私どうしよう…」
ピル「ほら、気をつけて」

スジンの両腕を支え、彼女を持ち上げるように立たせる。
「何の音だ?!」遠くで教師の怒鳴る声が聴こえた。「!」

ピル(心の声)「思い出した。手に触れたら何でも壊しちまうスジンが、学校の鏡をこっぱみじんにした日のこと。俺、あのときどうしたんだっけ?」

ピルはハッとしてスジンを見る。”お前は戻ってろ。何ともないから”

ピル「(スジンに)「お前は戻ってろ。何ともないから」
スジン「…え?」

「ちょっと…」戸惑うスジンに微笑みかけ、ピルは彼女を曲がり角の向こうに押しやった。
向こうから武器を携えたゲシュタポがやって来たのはその直後だ。

ゲシュタポ「(鏡を見て)何事だ?」
ピル「僕が割りました」
ゲシュタポ「何?」
ピル「いや、その… 僕いつも…」

ピルは何とか言い訳をひねり出そうと、手に持っていたスタート用のピストルを見た。「スタートのタイミングがうまく行かなくて…」

ゲシュタポ「うんうん」
ピル「ひょっとしてこのピストルのせいじゃないかって、それで、これをバンッ!(ピストルを叩きつける)ってやったら」

「ふはははは」ゲシュタポがいつもの高笑いを上げる。「バカモーン!」
耳を引っ張られゲシュタポに連行されるピルを、スジンはどうすることも出来ずに見送った。

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ゲシュタポがピルを連れて行ったのは、陸上部のコーチのもとだ。

ゲシュタポ「陸上部だってうちの学生でしょうが。主任として今回は黙っていませんよ。この間も廊下を走っていて、ぶつかった校長先生は全治3週の病院送りになったじゃないですか」

「こいつが走りたくて走るのをどうしろと?」コーチがもう片方の耳をぎゅっと掴む。「それでこそ陸上部でしょ」

ゲシュタポ「ふはははは!だからって、デタラメにどこでも走り回っちゃダメでしょう」
コーチ「青春じゃないですか、青春」

「やれやれ~」コーチがピルの顔を覗き込む。「ピルは青春真っ盛りだな」

コーチ「デタラメに突っ走るのが青春ですよ。苦しい(痛い)ばかりじゃない。それくらいわかるでしょう。はは~」
ゲシュタポ「へぇ~。(ピルに)お前、青春だからちっとも痛くないってことだな。そうだろ?」

ゲシュタポがぎゅ~っと耳をひねる。

ピル「あっ」
コーチ「痛いのか?」
ピル「痛いです!」
コーチ「こいつめ!運動場…」
ピル「50周?」

「こいつ、読心術か?」コーチが思わず手を離す。
「ピル、100周だ」ゲシュタポがピルの耳に囁いた。

ピル「ひゃ、100周?!(心の中で)10年前は間違いなく50周だったのに… 変わるんだな」

「はい!青春だ!」ピルは潔く走り出した。

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他の学生たちは午後の授業の真っ最中だ。
スジンはピルの様子が気になり、窓の外を覗く。
グラウンドを一人走っている彼の姿が見えた。
彼女の視線を追って、隣のチンスクもグランドに目をやる。

授業終了の合図が鳴った。

教師「今日は特に終礼はないわ。すぐ家に帰りなさい」

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グラウンドへやって来たスジンは、走っているピルに向かってカメラを構えた。
ファインダー越しに、彼の姿をゆっくり追いかける。
彼女の顔にひとりでに笑みがこぼれた。
と、ピルが手前へ差し掛かったのを見て、さっと背を向ける。「!」

スジン「はぁ、暑いだろうな」

一心に走る姿を眺めながら、スジンはちょっと俯いた。「こうして見たら、ちょっとカッコイイね」

ピル(心の声)「昨日の夜、俺はスジンを家まで送ろうとしてた。スジンから招待状を受け取って、最初で最後の告白をしようとしたんだけど、急に小便がしたくなって、トンネルの前の街灯の前で…?」

疲労困憊でグラウンドの真ん中に座り込み、ピルはハッとした。「あ…」

ピル「そうだ、マンホール!マンホールだ!」

そうだ!ピルは顔を輝かせ、駆け出した。「そうだ!マンホールだったんだ!」

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一目散に駆け抜けていったピルを、チンスクは校門付近で唖然と見送った。

ピル「何あんなに走ってんの?ほしがってた情報、やっと掴んだのに」

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ピルはあっという間にあのマンホールへたどり着いた。

ピル「おい!おい!マンホール!もう一度吸い込んでくれ!」

引っ張っても踊っても祈っても、マンホールはピクリとも動かない。「また高校生やりたくないんだ!」
ピルは途方に暮れて天を仰いだ。「同じ人生を二度行きなきゃいけないのか?スタート切れない人生を?!」

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写真館でフィルムを現像し、出来上がった写真をめくっていたスジンは、ようやく出て来た一枚に顔を輝かせた。

走っているピルだ。「何て書こうかな?」
そこへそーっと入ってきたのはソクテが、彼女を覗き込む。

スジン「(写真の裏に)2007年6月20日 運動場100周した日」

書き終えたら写真を封筒に入れ、嬉しそうに微笑む。

ソクテ「何してんの?」

スジンはハッと息を呑んだ。「ビックリしたじゃない!」
「ちょうどいいところに来たわ」スジンはソクテの写っている写真を渡してやる。

外へ出ると、スジンは封筒に何やら願いを込め、郵便ポストの中へポトリと落とした。

ソクテ「(スジンのリュックを指し)俺が持ってやるよ」
スジン「ううん、いいよ」

「持ってやるよ」断るスジンから、ソクテは半ば無理やりリュックを受け取る。
彼はスジンのリュックを抱き、歩き出した。

+-+-+-+

「どうやって帰りゃいいんだ?」ピルはマンホールを一旦諦め、再びふらふらと歩き出した。
曲がり角を差し掛かったところで、ふと目に入ったのは、二人並んで仲良く帰っていくスジンとソクテの姿だ。

ピル「あいつ!スジンに取り入りやがって!」

「おい、スジン!」声を掛けられ、狼狽したのはソクテだ。「ち、ち、違うよ!」

ソクテ「誤解だよ、誤解!肩が痛いって言うから持ってやっただけなんだ」
スジン「私がいつ?」
ピル「(ジロリ)」
ソクテ「あ、足が痛いって言ったんだっけ?(スジンに小声で)助けてくれよ、お願いだから」
スジン「?」

「おい」ピルが手を伸ばす。「それはこっちへ渡して、クギル兄のビリヤード場へ行ってろ」

ソクテ「む、無理だよ。自習室へ行って勉強しないと」
ピル「お前は10年経っても勉強ばかりの運命だから、心配しないで行ってろ」

ピルにリュックを差し出し、ソクテは風のように走り去った。
ピルが持ったリュックを、スジンはさっと奪い返し、そっぽを向く。「気まずいよ。返して」

ピル「おい、ソクテは気まずくなくて、俺は気まずいのか?」
スジン「あんただから気まずいの。心地悪い机みたいなものでしょ、昔からあんたは」
ピル「…。」

「いっそのことお前の机にでもなったほうがマシだ」ピルは心の中で呟いた。「お前が突っ伏して寝てくれたら…」

ピル「あっ!そうだ!行くところがあるんだ。一緒に来てくれよ。ついてきて」
スジン「え?」

「早く」ピルはスジンの腕を掴み、駆け出した。

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ピルが彼女を連れてきたのは、例のマンホールの前だ。「ここだ」

スジン「どいてよ、優しく言ってるうちに」

帰ろうとする彼女を、ピルは必死で捕まえる。「スジン!」

ピル「お前、今のスジンなのか?それとも、未来のスジン?」
スジン「何のこと?離して!」
ピル「よく考えるんだ。ゆうべ12時頃、間違いなくお前はあっちで俺のこと待ってた。俺は小便しにここへ来て、マンホールに落ちたんだ」
スジン「(イライラ)」
ピル「そのとき、お前もひょっとして…」
スジン「ピル、今日のことはすごく感謝してるし、申し訳ないと思ってるけど」
ピル「お前のためなら100周でも1000周でも走れるさ。だから、そんなことは気にしないで。さぁ、よく考えてみるんだ。ゆうべ、俺がお前を家に送ろうとしてたときのこと。覚えてるだろ?」
スジン「…。」
ピル「覚えてるはずだ。だってお前、俺に大事なものをくれたじゃないあ。覚えてるだろ?」
スジン「運動場回ってる間に頭おかしくなったのかな…。何言ってんのよ?!ゆうべはドラマ見て早く寝たのに、12時にここで会ってたわけないでしょ!」
ピル「…。」
スジン「夢でも見た?ピル、しっかりして。(マンホールを指し)あんた、ここに落ちたら死ぬよ」
ピル「…。」

「落ちて死んじゃいな」ピルをポンと蹴り飛ばし、スタスタと歩き出した。

ピル(心の声)「昔のスジンだな…。全然覚えてない。俺、どうすりゃいいんだ?」

「スジン!」ピルはスジンを追った。

ピル「スジン、一緒に行こう」
スジン「あんたの頭がおかしいのはもともとだけど、今日はよっぽどだわ」
ピル「2度兵役に行くような、超胸クソ悪い気分なんだ」

スジンの前に回り込み、ピルは向こうを指差した。「よく見てろよ」

ピル「お前が20歳だか21歳のときに、オートバイ覚えるんだって、スクーターで調子に乗って骨折した場所だ。お前、運動神経ないんだから、そういうの覚えようなんて思うなよ」

「…。」スジンはただ不思議そうにピルを見つめる。
「そうだ」彼はまた別の場所を指差した。「そこの空き地、見えるか?」

スジン「そこが何?」
ピル「兵役中、お前に会いたくて外泊して、酔ってそこで寝た。あのときは高速バスでめちゃくちゃ飲まされたんだ。わざとすっぽかしたわけじゃないから、絶対に誤解するなよ」
スジン「何言ってんのよ、一体?今日はどうしちゃったの?」

「暑さにやられたのね」スジンは呆れて歩き出した。

ピル「だよな。お前に分かるわけない」

+-+-+-+

しばらく歩くと、薬局の近くに差し掛かる。

ピル「お前、薬剤師って職業どう思う?」
スジン「薬剤師?」
ピル「薬剤師には気をつけろ。マルチルームに引きずり込まれて、えげつない目に遭うぞ」
スジン「何よそれ?」

”昨日”会った髪の薄い薬剤師が、ふさふさ頭を鏡の前で整えているのが見えた。

ピル「あの人、若い頃はふさふさだったのか」

そこへコンビニから出て来たのはチンスクだ。「ちょっと~、さっきは人が呼んでも無視して行っちゃったくせに」

チンスク「スジンに会いに行くところだったの?」
ピル「お前、自分ん家は向こうでスーパーやってるのに、何コンビニの前ウロついてんだよ?」

「うちには生理用品売ってないから」チンスクは手に持った黒いレジ袋を突き出す。
スジンが慌てて押しのけた。「ちょっと、そんなことまで言わないでよ」

チンスク「平気よ。(ピルを指し)この子とあたしはお互い何もかも見た仲なんだから」

「もう見ないからな」歩き出したピルを、チンスクはさっと捕まえ、ニヤリとした。「けど、今日は見なきゃダメよ」
彼女はピルの肩に手を回し、スジンに背を向ける。「あんた、こうしてる場合じゃないわよ」

ピル「じゃなきゃ?」
チンスク「全く…。スジン、今日教会の人と会うって。その人、最近5つの学校の可愛い子の唇を奪ったキラーなんだから。昨日話してやったでしょうが!」
ピル「あぁ、それが今日なのか?」

「ちょっと」スジンがピルの肩から自分のリュックを引っ張った。

ピル&チンスク「?」
スジン「何もかも見せ合って仲良くね、あんたたち。私帰るから」

帰るスジンを追おうとするピルを、チンスクが引き止めた。「まだ場所を言ってなかったわ」

ピル「キスが何だ?あいつ、昨日薬剤師とマルチルームで、その…」
チンスク「???」

ピルは混乱して頭を抱えた。「何でここでマルチルームの話なんか…」
「俺行くわ」ピルはチンスクを残し、駆け出した。

チンスク「教会の人とチューするんだってば!薬剤師って誰よ?…マルチルームってなんだろ?一挙手一投足全部教えてくれって言ったくせに」

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「薬剤師のヤツ、どうすりゃいいんだ?」住宅街を一人で歩いていたピルは、道端にいた女子高生とぶつかりそうになってハタと立ち止まった。
驚いて目を丸くしていたのは、チョンエだ。

ピル「ビックリしたろ!」
チョンエ「あんた、どうしたの?」
ピル「お前にはわかんないよ。もどかしい俺の気持ち。それにしても、何でここに潜んでたんだ?」
チョンエ「あんたは隠れないの?おかしなヤツがウロチョロしてんのに」

「…。」ピルはまじまじとチョンエを見た。「自分は卵オバケみたいな化粧して…」

ピル「お前、昔からそうだったのか?」
チョンエ「昔?いつ?化粧し始めたの、2ヶ月前だけど」
ピル「金箔塗って歩いたって、お前の新郎は変わんねぇよ」

ピルは溜息をついた。「こんな再放送をまた見なきゃいけないなんて…」

チョンエ「ねぇボン・ピル!」
ピル「何だよ?」

「お願いがあるんだけど」チョンエは甘ったるい声で彼を上目遣いに見た。

ピル「何のお願い?」

チョンエは思わせぶりに彼を指差す。
と、途端に彼を再び頭痛が襲った。

ピル「何だ?またデジャヴみたいな感じだ」

+-+-+-+

ここで一旦区切ります。

ゲシュタポ先生、いいキャラしてるね~^^

 - マンホール-不思議な国のピル ,