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師任堂(サイムダン)、色の日記11話あらすじ&日本語訳~後編

   

ソン・スンホン、イ・ヨンエ主演『師任堂(サイムダン)、色の日記』11話の後半に進みます。

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フィウム堂は積年の思いを込め、丹念に唇に紅をさした。

~~20年前~~

使用人としてミン・チヒョンの屋敷に入ったソクスン(現在のフィウム堂)は、領議政と主の会話にこっそり聞き耳を立てた。

領議政「厄介な騒ぎをうまく処理してくれたそうだな、雲平寺で。世話を掛けた」

「奥方の実家、用心したほうが良いと思うが」領議政が声を潜める。

チヒョン「どういう意味でしょう?」
領議政「君の舅が謀反に一枚噛んでいると投書があってね」
チヒョン「…。」
領議政「身の安全を考えなさい。捨てるべきものは捨てねば」

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「せっかくなら」主ミン・チヒョンの前で肌を露わにしたソクスンに、チヒョンは小さな瓶を差し出した。「これを入れる袋も作ってみろ」

ソクスン「…。」
チヒョン「猛毒だ」
ソクスン「!」
チヒョン「矢の先に塗ったものが少し掠めただけで、猪の死体の山ができる」
ソクスン「…。」
チヒョン「用心して扱え」

ソクスンは震える手で小瓶を握る。
チヒョンの妻が死亡したのは、それから間もなくのことだった。

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そののち、ソクスンはチヒョンの子を産むことに成功した。
生まれたばかりの赤ん坊を抱く彼女に、チヒョンは一冊の族簿を投げて寄越す。「これでお前は正室だ」

チヒョン「昨日までの自分は忘れろ」

彼女は黙って頷いた。

チヒョン「号は?」
ソクスン「諱音(フィウム)。フィウム堂にいたします」

※諱音=人が死んだことを告げる言葉や文。

~~~~

壮絶な思いで手に入れ、守ってきた座だ。
紅をさすフィウム堂の目に涙が滲む。

フィウム堂(心の声)「渾身の力を振り絞って、黙々と耐え忍んできたのよ。ここで潰れるわけにはいかないわ。決して!」

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見慣れぬ神秘的な女が、比翼堂で伽耶琴を奏でていた。
顔を覆った頭巾の向こうに、美しいその顔がうっすら見え隠れする。

「あぁ!」従弟のフが唸る。「伽耶琴の音が胸に突き刺さるよ」

モンリョン「胸がズキズキするこの感じ、なんて言えばいいのか」

「急に涙が」そう言って背を向けたモンリョンは、後ろにキョムがいるのに気づいた。「宜城君様」

伽耶琴の女が、その声にそっと目を開く。

「恨のこもった演奏だ」キョムは伽耶琴の女を眺め、そう呟いた。

モンリョン「恨?」
従弟「どうしてわかるんです?」
キョム「感じないか。幾重にも積もった事情の多い女のようだ」

女を横目で捉えながら、キョムはゆっくりと前を通り過ぎる。
女… フィウム堂は風にそよぐ頭巾の合間から、彼の姿を目で追った。

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流民たちは大将を筆頭に再び紙造りに精を出していた。
やけに指示の多い大将に、みなが笑う。「大将、何でそう真面目なんだよ?」

大将「真面目ってなんだよ。無駄口聞きたくないだけだ。さっさとやろうぜ」
皆「はい!」

そこへ、突然武装した官軍がなだれ込んできたではないか!「お前たち!」

役人「誰の許可を得てここに住んでいるのだ?」
大将「何です?」
役人「ここは居住地として登録されていない荒地だ。都城内で許可なく集団生活するのは、国の法に反する」
流民「人が住めば居住地だろ。いつから登録しなきゃならなくなったんだ?」

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元雲平寺の紙匠、パルボンと共に、サイムダンは工房への帰り道を歩いていた。
そこへ、向こうに見えてきたのは…「?」
流民たちが官軍に連行されて行くではないか!

パルボンに隠れているよう言い、サイムダンは行列の前に立ちふさがった。「何事です?」

サイムダン「一体彼らをどこへ連れて行くのですか!」
役人「法に背き集団で放浪する奴らを捕らえ、捕盗庁へ連行するところですよ」
サイムダン「法に背く?一体彼がどんな法に背いたと言うのです?かつては流民として家も持たずに放浪していたけれど、今では居場所を見つけて人間らしく生きようとしている善良な民なのです」

「ははは」役人は笑い声を上げた。「善良な民?」

役人「どこで何を仕出かして隠れ住んでいたのかわかるものか。放浪していて潔白な奴なんて見たことありませんよ」
サイムダン「生きるために放浪していただけです。そして生きるためにここへ場所を構えたのです。それが何の罪になると言うのですか」
役人「文句があるなら役所へ行きなさい!」

突破しようとした役人にサイムダンは食い下がった。「お止まりなさい!」

サイムダン「これは明白な違法行為です」
役人「はっ(笑)お宅がシン氏だな。流民たちを扇動して儲けようとしてるっていう」
サイムダン「確かに私はシン氏だけれど、流民たちを扇動して儲けたことなどないわ!」

立ち塞がるサイムダンを突き飛ばし、役人は行列を進めた。
「こんな豚野郎共、死んだって構うもんか!」武官たちが流民を木棒で追い立てる。

サイムダン「叩かないで!何てことを!」

連れて行かれる彼らの後を、残された子どもたちが泣きながら追った。

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「町の治安が悪いと、国の綱紀も乱れるものです」ミン・チヒョンの話を神妙に聞いているのは、捕盗庁の従事官だ。

チヒョン「そんな輩が横行しているから都城の内外で盗賊が後を絶たないのです。こうして一線で頑張っている官員たちをいっそう大事にせねば」

そう言って、チヒョンは小箱を差し出した。
蓋を開けると、そこには銀貨が並んでいる。

従事官「こんなものまで」

”お前ごときが紙を造ろうなどと…” チヒョンはサイムダンへの警戒心を募らせていた。

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流民たちが勾留されている牢屋を、サイムダンが訪れた。
「お嬢さん!」皆、檻の中で一斉に立ち上がり、柵の間から手を伸ばす。

サイムダン「これまで造った紙を提出して、私たちがしていたことを認めてもらいました」

「!」皆の顔がパッと輝く。

サイムダン「けれど、身元を証明できなければ釈放できないと」
大将「号牌(身分証)の隠し場所はセドルが知っているから、掘り返せば証明はできます。でも、問題はそこじゃないんです」
サイムダン「何が問題なんです?」
大将「私らはまぁ… 奴婢や犯罪者じゃないけれど、莫大な税に追われて里を出た流民ではないですか。滞納分を払えなきゃ、いずれにせよ釈放は無理でしょう」
サイムダン「税は払えばいいのです。私がなんとしてでも用意しますから、心配なさらないで」

ヒャンが持ってきたおにぎりを、サイムダンは彼ら一人一人の手に持たせた。「召し上がって」

サイムダン「くじけないで、気をしっかり持つのですよ。お腹が空いていると心も弱くなりますから」

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残された流民の子どもたちを自宅へ連れ帰ると、サイムダンは彼らにも食事を与えた。

サイムダン「心配しないで。お父さんお母さんは戻っていらっしゃるわ」

そばには、夫と実の子どもたちがすっかり力の抜けた様子で座り込んでいる。
「はぁ」長女のメチャンが溜息をついた。「どうして乞食の子の面倒をみるのかしら」
「乞食じゃないよ」即座にセドルが言い返す。

サイムダン「メチャン」
末っ子「乞食って何?」
サイムダン「乞食だなんて。私たちと同じよ。お母さんの仕事を手伝ってくれる、ありがたい人たちの子どもなの」

「ただでさえ狭いのに」今度は長男のソンが溜息をつく。

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「何だって?」妻の言葉に、ウォンスは思わず声を上げた。

ウォンス「身元もわからない流民たちに全財産を捧げるなんて!」
サイムダン「私たち家族が食べる心配をせずに暮らせるのも、ヒョンリョンが学堂へ通えるようになったのも、彼らが私と共に工房を引っ張ってくれたからです。今度は私たちが彼らを助けなければ」
ウォンス「そうは言っても…」
サイムダン「(見つめる)」
ウォンス「(黙る)」

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キョムの挙動が朝廷で問題になっていた。

領議政「宜城君は承政殿はもちろん、漢城府まで訪れ、”非道な行いを調査する”と官員を脅し、公文書を暴いています。これは王族が決してしてはならぬ越権行為です」
大臣「今や比翼堂にも政治屋が芸術家を装って入り込んでいるようです」

中宗が重苦しい表情で立ち上がる。「それで?」

中宗「宜城君を罰せよと?」

「…。」大臣たちが一様に黙り込む。

中宗「宜城君は官職に就かず自由に生きてきたのです。鳥のようにあちこち飛び回って生きてきた人のしていることを抗議してどうしようと?」
大臣たち「…。」
中宗「島流しにしましょうか、それとも死刑に?!」
大臣「まずは外部の王族管理を怠った責任を問い、知敦寧府事を解任なさいませ。そして、宜城君のそばで朝廷を誹謗した訓導官ペク・インゴルも免職するのが妥当でしょう」

「…。」苛立った様子で椅子に腰を下ろした中宗は、頑なに前を向いたまま黙っているミン・チヒョンへとその視線を向けた。

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中宗はすぐさまキョムを呼び寄せた。「だから用心しろと言ったのだ」

中宗「あちこちに奴らの目と耳があるのに、そう露骨に動いては、奴らの反発は火を見るより明らかではないか」
キョム「申し訳ありません。ですが、殿下、訓導官ペク・インゴルは私と何の関係もありません。ペク・インゴルは実直な殿下の臣下なのです」

中宗は少し虚しげに笑い声を上げた。「実直な臣下とな…」

中宗「ペク・インゴルは己卯年に死ぬべきだった」
キョム「!」
中宗「自分が生き残るために仲間を捨て、金剛山に逃げたのが、まさにあやつ。首を撥ねず減俸で済んだのが幸いだと思わねば」
キョム「…。」
中宗「実直な臣下?人を自分の物差しで判断するな。徒党を組んではならぬ。徒党を組んで動き、むやみに正義を唱えるな。正義にかこつけて徒党を組めば、終いには権力を欲して余を蔑ろにするのだ」
キョム「…。」
中宗「宜城君。そなたは今、余がもっとも大切に思っている人だ。余はそなたを失いたくない」

中宗はキョムの両肩にそっと手を置く。「我々の関係… 何ら変わることはなかろう」

キョム「…。」
中宗「そうあらねばな」

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旧友ペク・インゴルがキョムの元を訪れていた。

#先生のことが問題にされたの、ものすごく唐突に感じますね。

キョム「私のせいで先輩の立場が悪くなったな」
ペク・インゴル「私は私の思うようにしただけで、お前は正しいと思う。それでいいんだ」

「はぁ」キョムは彼の隣に腰を下ろす。「なんてこった」

キョム「朝廷と学堂をまとめて揺るがすとは。一体どこからそんな力が?」

「…。」インゴルは黙って盃を口に運ぶ。

キョム「造紙署を始めとする紙の商権を全てミン・チヒョンが握っているという噂は本当なのか?」
インゴル「政治に興味のない奴がやけに詳しいな」
キョム「私だってそんなこと知りたくもないさ。ところで、地方の下役だったミン・チヒョンが中央に進出できた背景に、どこかの寺火事があるって噂だが」

「!」インゴルがハッとして顔を上げる。
キョムの真摯な視線にぶつかると、彼は再び目をそらした。

キョム「何か知ってるんだろ」
インゴル「…。」
キョム「知ってるんだな。教えてくれ。私も小耳に挟んだから訊いてるんだ」

インゴル「お前、今危険な質問をしたんだぞ」
キョム「言ってくれって!」
インゴル「過ぎたことは忘れろ。引き返すことはできないし、傷つく人も出る。たとえそれがお前だとしても」
キョム「それでも知りたい。いや、知らなきゃいけないんだ」

キョムの訴えに、インゴルは小さく溜息をついた。

インゴル「寺で起きた虐殺と火災、全ての発端はある一篇の詩のようだ」
キョム「詩?」
インゴル「己卯士禍の前夜、秘密の会合の席を蹴って出た学士に、殿下が内密に詩を授けたという噂がある。寺で流民たちが虐殺された、まさにあの頃だ。詩を受け取った学士はみんな死んだ。その中にシン・ミョンファ殿もおられたのだ」
キョム「…シン・ミョンファ殿が?!」
インゴル「お前があれほど恋い患っていたシン氏夫人の父親。私の尊敬する先輩だった」

己卯士禍の前夜、共に席を立った仲間が殺されていると、矢文でシン・ミョンファに知らせたのは、ペク・インゴルだったのだ。
あまりに突然だったあのときの記憶が、キョムの頭の中を駆け巡る。
雲平寺で火事が起きた後、シン・ミョンファ宅では葬儀と婚礼が同日に行われ、キョムは理由もわからずサイムダンから突き放されたのだった。

キョム「一体その詩はどういう内容だったんだ?」
インゴル「己卯士禍に処刑された者を偲ぶ内容だって噂が出回っていたが、実際は知りようがない。死人に口なしだからな」
キョム「!」

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朝。

再び捕盗庁を訪れたサイムダンは、抱えてきた壺を差し出した。「これを担保に釈放してください」

サイムダン「彼らの号牌も持ってきました」
武官「(文書を開きながら)これは何です?」
サイムダン「土地と家の権利書です。これを担保にして、あの人たちをまずは釈放してください」

「ありがとうございます」牢から顔を覗かせ、流民たちが口々に言う。
権利書を一瞥し、武官は笑いだした。「あのねぇ、ご婦人」

武官「やつらの滞納分、どれだけあると思ってるんです?米穀900俵に綿布200反ですよ」
サイムダン「!」
武官「滞納期間が長いから、利子まで合わせたらこんな権利書2枚じゃどうしようもありません」
サイムダン「どうにか残りの金額も工面します。ひとまずあの人たちを釈放してくださいな。人がいてこそ紙を造り、滞納分も払えるんじゃありませんか」

そこへ入ってきたのは捕盗庁の従事官だ。「情で解決しようとするだけが能ではありませんよ」

従事官「(牢を指し)こういった奴らが一人二人と集まって盗賊になり、暴徒になるんです。こやつらが凶悪な集団でないと、どうやって保証できるんです?」
サイムダン「善良な人たちです。皆れっきとした朝鮮の民なのです。私が彼らの身元を保証しましょう。彼らのうち一人でも問題を起こしたら、代わりに私を捕らえてください」
従事官「!」

「お嬢さん…」牢の奥から口々に声が聞こえる。
従事官の手に権利書が手渡された。

武官「保証金として土地と家の権利書まで持参しています。一ヶ月以内に残りの滞納分も支払うと」

「…。」サイムダンのまっすぐな目を見ると、従事官は檻の前へ進んだ。「1ヶ月以内にこやつらの滞納金を払えなければ、土地と家の権利書の没収はもちろん、この婦人も国を侮った罪を免れぬ」

サイムダンは従事官の前へ進み出ると、堂々たる口調で言い放った。「そうしましょう」

こうして流民たちは全員牢から解放されたのだ。

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「どれだけだって?!」ウォンスが目を丸くする。

ヒャン「米穀900俵と綿布200反ですよ。しかも利子は別ですって」
ウォンス「!」
ヒャン「1ヶ月以内に払えなかったら、家も土地も全部没収ですって」
ウォンス「そんなに税を課すなんて、一体あの人たちが何をしたっていうんだ?」
ヒャン「良民たちだったそうじゃないですか。産物に軍役、それに農業をしていれば地税まで。そりゃ滞りますよ」

※良民(良人)=隷属民ではない、一般の階級。両班(支配者階級)と賤民以外ということですね。

ウォンス「そりゃいいけど、それを何でうちの夫人が?!」
ヒャン「一人でも逃げたらその債務は全部責任を持つって」
ウォンス「あぁ!うちの夫人は大物だが、これほどとは!これじゃ皆死んでしまう!」

ウォンスは慌ただしく家の扉を開く。「ソン!ヒョンリョン!メチャン!ウ!」

ウォンス「みんなどこ行った?」
ヒャン「どうしたんです?」
ウォンス「子どもたちを探して、”お嬢様”もお連れしろ。我々じゃ死んでもそんな金は払えない」
ヒャン「(うんうん)」
ウォンス「夜逃げでもしないと」
ヒャン「私も!不安で耐えられません。北坪村に帰ります!」

ヒャンが駆け出した。

ウォンス「お前が行ったらお嬢様は?」
ヒャン「旦那様がいらっしゃるじゃないですか」
ウォンス「黙ってみてりゃお前、義理がなさすぎるぞ」
ヒャン「今そんなこと言ってる場合じゃないと思いますけど」
ウォンス「私と話すたびにそんな目を剥いて!」
ヒャン「…。」
ウォンス「あぁ、本当に!どうすればいいのだ?!こんな大事をやらかすなんて、うちの夫人は一体何を考えているんだ?」
ヒャン「全くですよ」
ウォンス「はぁ」
ヒャン「一体科挙にはいつ合格なさるんですか!毎回落ちるからお嬢様が他のことに手を付けるんじゃありませんか」
ウォンス「落ちたくて落ちているように見えるか?合格するのが難しいんだから」
ヒャン「…。」
ウォンス「よかろう、合格したとしよう。官職に就いたら、初任給がいくらだと思う?1年に米10斗、豆5斗にしかならないんだぞ。いくら計算したって、一生働いても払えやしない!賄賂でも渡さない限り」

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工房へ戻ってきた流民たちは揉めていた。
「あたしゃ行かないってば!」荷物片手に夫に引っ張られ、女性が大声を出して拒んでいる。

大将「何してるんだ?」
別の女性「何で荷物を?」
男(女性の夫)「だって… 穀物に労役に、焼け石に水でくたばっちまいそうだから放浪してたのに」
大将「それで?」
男「1ヶ月以内に払えるわけないじゃないか。また官軍が来て全部ひっくり返される」
大将「逃げたからって解決するのか!」
男「…。」

「よくも逃げようなんて…」「お嬢さんにこれだけ世話になったのに」周りで仲間たちが口々に言う。

大将「そうしたら俺たちは?お嬢さんは?」
男「…。」

「嫌です!逃げるなんて」女性が改めて宣言した。「体は辛くたって、ここで働きながら、人間として扱われたいんです」

黙って見ていたサイムダンが、逃げようとした男の前に進み出た。「どこへいらっしゃるんです?」

サイムダン「ここを出てどうやって暮らすんです?」

「お嬢さん」隣の男が済まなそうに口を開いた。

男2「俺たちが一生懸命働けば、お嬢さんが税を肩代わりしてくれるって言ったけど、あの腐った奴らがもう税を取り立てないって保証はないし。それでちょっと心配にはなるよ」
男「逃げるのが正解だって!」

と、そのとき…
「方法があるにはあるんだが」小さな声がどこからか聞こえてきた。
「?」皆の視線が声の方向へ一斉に向かう。

立ち上がったのは、元紙匠、パルボンだ。
彼はまっすぐサイムダンの前へ進み出ると、もう一度繰り返した。「方法が全くないわけじゃありません」
「パルボン爺さんが喋った!」皆、目を丸くする。

セドル「お祖父さん?」
流民「空耳じゃないよな?」
セドル「ほらね、お祖父さんは口がきけないわけじゃないんだ!」

パルボンは懐から丁寧に包んだ封を取り出し、サイムダンに差し出した。「隠し持ってきたものです」

パルボン「雲平寺で高麗紙を造っていた秘法です」
サイムダン「!!!」

あまりの驚きに、サイムダンは軽い目眩を覚えた。「雲平寺の高麗紙?!」

サイムダン「ここにその秘法があるというのですか?!」
パルボン「はい、お嬢さん」

サイムダンは急いで封を解き、中の文書を開く。

パルボン「雲平寺で造っていた高麗紙さえ造り出せれば、勝算はあります。今も明国では高麗紙のことを金齡紙と呼び、最高級と見なしていますから」
サイムダン「(文書を見て)黄金のように変わることなく、長持ちする高麗紙…」
女1「ってことはパルボン爺さんが高麗紙を造ってたってことですか?
皆「そんなぁ」
パルボン「見よう見まねで覚えたので、保証はできません。その代わりに見本紙が必要なのです」

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昨晩、インゴルの話を聞いたキョムは、何かに突き動かされるようにひたすら馬を走らせた。
朝が来て、また日が沈む。
すっかり夜も更けたころ、キョムはある屋敷の門を叩いた。

江陵にあるサイムダンの実家だ。

「宜城君が来たとお伝えするのだ」門を開けた下男に、宜城君は告げる。「折り入ってお話があると。早く!」
「こんな時間だから…」と渋る下男にしびれを切らし、キョムは奥へ進んだ。

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「このままお帰りくださいとのことです」サイムダンの母お付きの下女タムが、部屋の前で面会を断った。

キョム「もう一度頼んでくれ。少しだけ顔を見せてれと。会ってくださるまでここで待とう」
下女タム「(困って)お帰りくださいまし」

キョムは迷うことなくその場にひざまずいた。
「何てことを!」周囲を取り囲む使用人たちが驚いて声を上げる。

キョム「会ってくださるまでここでお待ちします!」

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ここでエンディングです。

高麗紙の秘法と、過去の真実へと突き進むキョム。
別々の方向から、一箇所に集まっていく様子がワクワクさせてくれます。

ペク・インゴル先生が急に核心人物になっていて、それが没入を妨げていますが…^^;

 - サイムダン(師任堂)色の日記

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