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師任堂(サイムダン)、色の日記8話あらすじ&日本語訳~後編

   

ソン・スンホン、イ・ヨンエ主演『師任堂(サイムダン)、色の日記』8話の後半に進みます。

~~~~現代編~~~~

ジユンは出掛ける準備をしていた。

義母「出掛けるの?」
ジユン「はい。ミンソクさんの後輩から会おうって電話があったんです」
義母「ミンソクの後輩?!何かあったわけじゃないわよね?」
ジユン「えぇ。心配なさらないでください、お義母様」
義母「えぇ。あなただけが頼りよ」

「もうじきいい知らせがあると思いますよ」不安の隠せない義母を、ジユンは元気づけた。

ジユン「…。」

+-+-+-+

カフェで待っていると、後ろの席に男性が一人腰を下ろした。「ソ・ジユンさん?」

ジユン「!」
男「振り向かないで、そのまま聞いてください」
ジユン「…。」
男「先輩から伝言です。できるだけ遠く離れているのが家族を守る道だと。奥様が焦って動くと、危険を引き寄せることもあるから、じっとしているようにとのことです」

男性が立ち上がろうとする。

ジユン「待ってください」
男「…。」
ジユン「元気でいるんですか?あの人。体は大丈夫ですか?」
男「えぇ」
ジユン「私たちは大丈夫だって、体に気をつけるようにと…そうお伝えください」
男「…はい」

男の去っていく足音が聞こえた。

ジユン「…。」

#このシーンいらんやん、と思いつつ、いらんことを主張するために訳してます(笑)このシーンの途中に、ジユンが少し前に夫と会った回想が挿入されてますが、構成上ここでは省きました。夫と会ったんだから、後輩と背中越しにスパイみたいなやり取りなんていらん^^;

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ゆったりとしたカフェレストランで、身ぎれいな母親たちがランチに集っていた。

※俳優陣は過去編の中部学堂の母親会の面々

母親1(※過去編ではソ氏)「去年、人性教育振興法が施行されてから人性教育ブームでしょ?教育省では入試とは無関係だって言うけど、そんなの信じられないわ」
母親「そうよね」
母親1「とにかく、今度の休暇、うちのチャンミンをリーダーシップキャンプに行かせるわ」

そのとき、いきなり乗り込んできたのは… ジユンの義母だ!「キャンプのことなんか考えてないで、家で子どもの人性教育やりなさい!」
ウンスがクラスメイトにいじめられ、顔に怪我をして帰ってきたのだった。

母親1「どちら様です?」
義母「私はね、チョン・ウンスの祖母よ。お宅のチャンミンがうちの大事な孫の顔に怪我をさせたんだから!」
母親1「あら、驚いた。公共の場所で、教養がないわね」
義母「教養?いいわ、よくも言ったわね。うちの嫁は大学講師よ。まだ教授じゃないけど、もうじき…」
母親1「韓国大学で美術史専攻でしょう?ウンスのお母さん」
義母「そうよ」
母親1「うちの義兄はあそこの社会学部長なんです。少し前に教授懲戒委員会が開かれたそうですけど?ウンスのお母さんのことで」
義母「?」
母親1「学期途中で解任されたこと、まだご存知ないんですか?」
義母「!」
母親1「問題を起こしたとか何とか…」

母親たちの中からクスクスと笑い声が漏れる。

義母「な… 何ですって?」
母親1「帰ってお嫁さんにお訊きなってくださいな。それとも、韓国大学へ調べにいらっしゃいます?」

+-+-+-+

小さい荷造りをして、ジユンは急いで出掛けようとしていた。
部屋のドアを開けると、そこに怖い顔で立っていたのは、義母だ。「お、お義母様?」

義母「あんた、何なの?」
ジユン「?」
義母「一体何やらかしてクビになったのよ?正気なの?!」
ジユン「…事情があるんです。詳しくお話しします、お義母様」

「事情って何よ!」カッとなった義母に突き飛ばされ、ジユンは床に倒れ込む。

義母「小賢しい真似して!共同研究?何を企んでるのよ?」

「!」押された拍子に床に散らばった荷物を、ジユンは慌てて隠そうとした。

義母「何?」

目ざとく義母が掴んだのは… 離婚届ではないか。「り、り、離婚?!」

ジユン「お義母様、そうじゃなくて…」
義母「離婚ですって?!」
ジユン「!」
義母「ちょっと!あんた、よくも私にこんな真似ができるわね。よくも私にこんな真似を!あんた、結婚してウンスを産んでから、修士、博士、10年よ、10年!10年って短い?短いの?!」
ジユン「…。」
義母「踏査に学会、博士論文を書くからって外を出歩いても、私は一言だって言わなかった。何故って?家族だから、教授になる人だから、そう信じてたから!」
ジユン「…。」
義母「亭主が生きてるのか死んでるのかもわからないのに、離婚?離婚ですって?!」

何も言わずに項垂れるジユンを、義母はたまらず叩く。「あんた、どうしてそんなに残酷なの?!」

義母「何でそんなに自分勝手でいられるのさ!あぁ、あんたが本当に嫌!!!本当に嫌よ!!!」
ジユン「…。」

~~~~

ジユンが離婚届を用意したのではない。

数日前のことだ。
チラシのポスティングのアルバイトをしていたジユンは、人気のないところで突然肩を掴まれた。「!!!」
夫のミンソクだった。

ジユン「あ、あなた!」
ミンソク「シーッ」

夫が差し出した封筒に入っていたのは… すでに記入を済ませた離婚届だった。

ジユン「り、離婚届?!」
ミンソク「君の印鑑だけ押して、そのまま出すんだ」

「!!!」ジユンは拳で夫の胸をドンドンと叩いた。

ミンソク「落ち着いて話を聞けよ」
ジユン「落ち着いてなんかいられないわ!離婚だなんて!よくも私にこんな真似ができるわね!よくも私にこんな真似を!!!」
ミンソク「離婚さえすれば君は免れる。君たちだけでもちゃんと生きていかないと」

~~~~

離婚届を破り捨てて怒り狂う義母の前で、ジユンはただ呆然と、絶望の谷間で動けずにいた。

~~~~過去編~~~~

大臣たちを引き連れ、中宗が比翼堂を訪れた。

中宗「いざ来てみると、宜城君はずいぶん手広くやっているようだな、ははは」
キョム「もう一つ仕事ができそうです」
中宗「比翼堂の他にまた何が?」
キョム「先日ミン大監のおっしゃいました”王族の義務”を胸に深く刻んでいたところに、ちょうど良い仕事を見つけたのです」

「ははは」中宗が高らかに笑い声を上げた。

+-+-+-+

「競技だと?!」ミン・チヒョンの眉が吊り上がる。「しかも審査員を宜城君が務めると…」

チヒョン「どうなっている?宜城君が中部学堂にまでのさばっているというのに、その間一体何をしていた?!」

彼の剣幕の前でじっと身を固めているのは、妻のフィウム堂だ。「申し訳ありません」

チヒョン「領議政大監の特別推薦を受けた子どもは、全羅道の米処全体がその家の土地だと言っていい」
フィウム堂「承知しております。抜かりなくその子どもを入学させますので」
チヒョン「…。」
フィウム堂「どうぞお任せくださいませ」

+-+-+-+

全羅道からやってきた食いしん坊親子が、フィウム堂の元を訪れた。

フィウム堂「子どもの実力はどの程度です?」
コン氏「あ… はい。ええっと… (子どもに)テリョン、どこまで習ったのかしら?」
フィウム堂「四字小学を諳んじてごらんなさい」
テリョン「え?四字小学ですか?」
フィウム堂「父生我身、 母鞠吾身。その続きは?」
テリョン「えーと、えーと… 何だっけ」

窮地に陥ったテリョンはオエッ吐き気を催した。

コン氏「(息子の背中をさすり)どうしたのかしら。食あたり?」
テリョン「さっき食べたきび餅が…」
コン氏「やだ、この子ったら!勉強の話になるとこうなんだから」
フィウム堂「(絶句)」
コン氏「後で美味しいもの食べさせてあげるから、我慢しましょ」
フィウム堂「四字小学ひとつまともに知らないとは。これでは仮に競技に勝って入学したとしても、持ち堪えられません」
コン氏「競技?それをやらないと学堂に入れないんですか?」
フィウム堂「大金さえ積めば歓迎されるとお思いでしたか」
コン氏「いや、でも… ここまで来て競技だなんて。うちのテリョンが落ちるのは火を見るより明らかなのに。学堂へ足を踏み入れもせずに都落ちした日には、親族たちから寄ってたかって責められるわ!」

「一体どうすればいいんですか!」コン氏は大事な息子を抱きかかえるように、嘆き声を上げる。

フィウム堂「何としてでも合格しなければ」
コン氏「(期待)」

「漢陽で有名な家庭教師を全て集めなさい」フィウム堂が執事に命じた。

コン氏「ありがとうございます!」
フィウム堂「夜を徹してでも、必ず合格するのです。何としても!」

+-+-+-+

フィウム堂「競技で出題される問題が何か、どんな手を使ってでも調べなさい」
執事は中部学堂の職員に金を掴ませて、難なく競技の問題を入手した。

+-+-+-+

テリョンの付け焼き刃大作戦は困難を極めていた。
フィウム堂は苛立ちを爆発させる。「ここ数日夜通し勉強してこの程度?!一体そんな頭でどうやって…!」

そこへ執事が顔を見せる。
入手した問題を持ってきたのだ。
用紙を引ったくるように受け取ると、フィウム堂はただちに広げた。

『項羽が最期の窮地に陥ったとき、敵と戦い壮烈に戦死した場面と最期の姿を、司馬遷はどのように評したのか』

フィウム堂「(家庭教師たちに)史記についての問題ですわ」

一人の教師が口を開いた。「”目的を遂げることはできなかったが…」

教師「…項羽ほどの人物は今後なかなか現れないであろう”」

+-+-+–+

夜、家事をしているサイムダンのところへ、寝間着姿のヒョンリョンがやって来た。「お母様」

サイムダン「ヒョンリョン、寝ないでどうしたの?」
ヒョンリョン「興奮して眠れないんです」

嬉しそうな我が子の表情に、サイムダンも思わず口元を緩める。

ヒョンリョン「夢に向かって進んでいるようで、とうてい眠れそうにありません。お母様も嬉しくて眠れないのですか?」

サイムダンは笑顔で息子の頬をなでた。

サイムダン「ヒョンリョン、中部学堂には先生が何人いらっしゃるの?」
ヒョンリョン「教授官様と訓導官様がお二人。全部で三人いらっしゃいました」
サイムダン「他にはいらっしゃらないの?」
ヒョンリョン「はい、全部で三人です」
サイムダン「そう…」
ヒョンリョン「それがどうしたのですか?」
サイムダン「あぁ… 何でもないわ。早く戻って眠りなさい」
ヒョンリョン「お母様も早くお休みになってください」

+-+-+-+

一方、テリョンの教育は夜が更けてもまだまだ続いていた。

フィウム堂「続けて言ってみなさい。”目的を遂げることはできなかったが、項羽ほどの人物は今後なかなか現れないであろう”」
テリョン「”目的を…遂げ…”」

待ちきれず、フィウム堂がドンと卓を叩く。「もう一度」

フィウム堂「”目的を遂げることはできなかったが…”」

部屋の外でコン氏はコクリコクリしながら繰り返す。「”目的を遂げることはできなかったが、項羽ほどの人物は今後なかなか現れないであろう”」

コン氏「テリョン、母さん全部覚えちゃったよ。やれやれ…」

+-+-+-+

朝が来た。

中部学堂でヒョンリョンとテリョンが待っていると、キョムが姿を見せた。「おぉ、来たか。今日の主人公たち」

教授官「試験の準備は一生懸命やって来たかい?」
キョム「準備することなんかないさ。実力を試すんだから。(二人に)そうだろ?」

「さぁ、座りなさい」二人の子どもを座らせておき、キョムは問題を記した巻物を受け取った。
受け取っておいて、緊張を募らせる子どもたちを楽しげに見つめる。

キョム「(テリョンをつつき)こいつ、いい体格してるなぁ」

と、緊張の頂点に達していたテリョンは、頭の中で繰り返していた言葉を反射的に口にしてしまった。「”目的を遂げることはできなかったが、項羽ほどの人物は…”」

キョム「?」
教授官「!」
テリョン「”…今後なかなか”」
ヒョンリョン「?」
テリョン「”…現れないであろう”」

キョムは巻物を広げてみる。
問題を一瞥し、キョムは慌てているテリョンを静かに見つめた。「問題を知っていたのか?」

テリョン「…。」

キョムの視線が後ろの教授官に向かい、それから、向こうに並んでいる訓導官二人に移る。

キョム「…。」

+-+-+-+

待つように言われ、ヒョンリョンとテリョンは一緒に講義室にいた。
取り返しのつかない失敗を悔い、テリョンは自分の頭をポカポカと叩く。

テリョン「あぁ、どうしよう!あんな失敗するなんて!はぁ…」
ヒョンリョン「君も中部学堂に入りたくてたまらなかったんだね」
テリョン「そんなんじゃないよ。僕、中部学堂なんかに興味ない」
ヒョンリョン「それじゃあ何で来たの?」
テリョン「落ちたら…(想像して溜息)僕、きっと死んじゃうよ」
ヒョンリョン「本当?!」
テリョン「うん。落ちたら、ご飯もおやつもくれないってお母さんが」
ヒョンリョン「あぁ… お母さんに通えって言われたんだね」

「羨ましいな」ヒョンリョンは俯いた。

テリョン「何が羨ましいの?」
ヒョンリョン「どんなにせがんでも、うちのお母さんは絶対駄目だっておっしゃったんだ。ご飯を食べなくてもいいから中部学堂に行かせてくれって言っても」
テリョン「え?ご飯を食べなくてもいいって?」
ヒョンリョン「うん。本を読んでいるとご飯の時間になったのも気づかない。ご飯より本が好きなんだよ、僕」
テリョン「あぁ…お腹減った。やっぱり僕はご飯の方がいいや。はぁ、ご飯食べたいな」

外でそっと二人の話を聞いていたキョムは、素直な子どもたちの心の内に、静かに笑みを浮かべた。

+-+-+-+

二人の子どもたちは再び呼ばれた。
さっきとは違い、箱を挟んで向き合って席に着く。

キョム「そこに箱が一つあるだろう?それぞれの前に、取っ手が一つずつあるはずだ」

呼び集められた母親会の面々と生徒たちが、目の前で見守っている。
フィウム堂と、テリョンの母親コン氏の姿もあった。

キョム「取っ手を引けば蓋が開く。中に何が入っているか気にならないか?」

「さぁ」キョムが扇子をポンと打つ。「取っ手を先に引いた子が合格だ」

子どもたち「?」
母親たち&生徒たち「?」
キョム「だが、誰も引っ張らなければ、二人とも揃って脱落だ。いいか?さぁ、時間はこのお香が燃え尽きるまで」

話し終わると、キョムは教授席に腰を下ろし、のんびり本を開いた。
にわかに沈黙が場内を包む。

皆が固唾を呑んで見守る中、二人の子どもたちは取っ手に手を伸ばしては目を見合わせ、躊躇った。

+-+-+-+

サイムダンは台所でせっせと働いていた。
「これを」ヒャンがザルに野菜を盛って運んでくる。

ヒャン「ヒョンリョンお坊ちゃま、うまくやっていらっしゃいますよね?」
サイムダン「そうね。ヒョンリョンは春菊のテンジャン汁が好きだから、早く作ってあげないと。帰ってきたらすぐ食べられるようにね」
ヒャン「はい」

そういって、作っておいた汁にヒャンの持ってきた春菊を入れる。「にんにくを持ってきて」

#春菊は火を止めてからふわっと乗せるくらいのが好きだ。

+-+-+-+

箱の取っ手を引けないまま、時間だけがどんどん過ぎていった。
「どうして引かないのかしら?」母親たちの中から囁き声が漏れ聞こえる。

ヒョンリョンは”どうしても中部学堂へ通いたい”情熱と戦っていた。
さっき、「落ちたら僕きっと死んじゃうよ」と言ったテリョンの言葉がどうしても振り払えなかったのだ。

テリョンもまた戦っていた。
美味しいものが食べたいだけの自分と違い、ヒョンリョンはご飯が食べられなくても中部学堂に通いたい、そう言ったのだ…。

「…。」二人は揃って、一度手にかけた取っ手を放した。
そうして、二人ともシクシクと泣き出したのだ。
いつの間にか、お香はすっかり燃え落ちていた。

キョム「そこまで」

キョムが沈黙を破る。
席を立つと、二人の子どもたちを見比べた。「お前たち、二人とも脱落だな」

キョム「なぜ取っ手を引かなかった?」

二人の泣く声が大きくなる。

キョム「泣いているのは、それほど学堂へ入りたかったということだろう?先に取っ手を引けばよかったものを、なぜじっとしていたのだ?」

先に口を開いたのはヒョンリョンだ。「その子は合格できなかったら死ぬかもしれないと言ったんです」
「その子は…」テリョンも続く。「ご飯より中部学堂の方がいいって言いました。それで…」
「…。」場内に切ない空気が広がる。

キョム「二人とも同じ答えを出したから、引き分けだな。二人とも合格か、二人とも脱落か…」

「お母様方」キョムが見守っている面々に向き直る。「この子たちは逆に私に問題を出したようです」

キョム「母親会の代表はどうお考えです?」
フィウム堂「…。」
キョム「二人とも脱落させましょうか?」

母親たちが黙っているフィウム堂を覗き込む。

フィウム堂「まともな試験でないと当落を決めることも出来ませんわ」

「そうですわねぇ」「もちろんですわ」母親たちが口々に言う。

キョム「王の命令にしたがって用意していた問題が事前に漏れたために、再試験をしていることはご存知ですか?」
フィウム堂「!!!」
コン氏「!!!」

訓導官の一人が、バツが悪そうに目を伏せる。
皆の反応を、キョムは慎重に観察した。

キョム「いいでしょう。教授官殿、定員を増やして二人とも合格させましょう」

「何てこと!」母親たちがざわめく中、ヒョンリョンとテリョンは顔を見合わせ、嬉しそうに笑った。

+-+-+-+

「結局二人とも合格なのに、何のために競技なんて」部屋を出ながら、母親の一人がぼやく。

母親「ヒョンリョンっていう子を入れるために、最初から仕組んでいたのでは?」
母親「こんなに騒ぐなんて、一体どんな後ろ盾があるんでしょう?」
ソ氏「後ろ盾だなんて。柿が熟すまで寝て待って、ペロリと取って食うつもりでしょ」
フィウム堂「…。」
ソ氏「とにかく、とんでもなく賤しいのが入ってきて、水を濁さないかと心配ですわ」

「ちょうど話が出たから話すけれど…」フィウム堂が口を開く。「妙な話が耳に入ったわ」

ソ氏「どんな?」

フィウム堂は密かにほくそ笑んだ。

+-+-+-+

中部学堂の制服を着て、ヒョンリョンはさっそく家族の前に登場した。
「わぁ!」兄弟たちから歓声が上がる。「お兄ちゃん、カッコいい!」

サイムダン「袖が少し長いようね。こっちへ歩いてごらんなさい」
ヒャン「わぁ、ヒョンリョン坊ちゃま、すっかり漢陽のお坊ちゃまですね。他のお坊ちゃまたちの鼻を明かしてやってくださいね」

「おめでとう」姉のメチャンが進み出る。「私がカボチャの花で染めた手ぬぐいよ」

メチャン「あんた汗かきだから、これで拭きなさい」
ヒョンリョン「ありがとうございます、お姉様!」

次に口を開いたのは兄のソンだ。「皆で同じ服着て”孔子曰く、孟子曰く” 何がそんなに楽しんだよ?」
「これでも持ってけ」そう言って差し出したのは、木彫りの筆入れだ。

ヒャン「まぁ!ここ何日も彫刻刀と格闘なさってると思ったら、さすがお兄さんだわ!」
ソン「僕がいつ!」
ヒョンリョン「お兄様、ありがとうございます!こんな筆入れ、きっとこの世のどこを探してもありません」

兄弟たちの温かい思いやりに、サイムダンは眩しそうに彼らを眺めた。「見ていて本当に気持ちがいいわね」

サイムダン「”兄弟之情 友愛而以”というわ。これからも友愛を持って生きなさい。ヒョンリョンが学堂の制服を着ているのはとても誇らしいけれど、お母さんはあなたたちの友愛の心がもっと尊いと思うわ」

「偉いわ、ソン、メチャン」弟思いのソンとメチャンの肩を、サイムダンは優しく撫でた。

そのとき…「あらまぁ、なんて酷い家なの?」外で女の声がする。
母親会の面々だ!

母親「これ、何の臭い?ヤギの糞かしら」
ヒャン「どちら様です?人の家にずかずかと」

ヒャンに続き、サイムダンも外へ出て来た。「皆様、どちら様でしょうか」

ソン氏「神経質なのでどこにでも座ることが出来ませんの。立って話しましょう」
サイムダン「?」
ソン氏「中部学堂というのは子どもさえ無責任に放り込めばいいところではありません。私たち母親会は学堂のあらゆることに関係しており、教育についての情報は全て共有して疎通しなければなりません。子どもを中部学堂へ通わせるなら、必ず母親会に出て自己紹介をなさいませ」

※自己紹介と訳したところ、直訳すると”申告式”と言っています。一般的に新人のお披露目をする新歓会や新歓コンパのことを指すんですが、この時代から”申告式”なんて言葉を使ったのかしら^^;;;

サイムダン「母親会で自己紹介…といいますと?」

ソ氏が呆れたようにハッと笑う。「何てウブな」

ソ氏「私たちの弱点、宜城君の援助をこうやって掴んだのね」
サイムダン「宜城君の援助?!」
ソ氏「母親会の場所は追ってお知らせしますわ。あぁ、絹のチマチョゴリくらいはお持ちでしょうね」
サイムダン「…。」
ソ氏「中部学堂に脈々と受け継がれている伝統ですの。母親会の最初の集まりには、必ず格調高い絹の装いで参加しなければなりません。必ずですよ」
サイムダン「…。」

「では」母親たちはクルリと背を向けた。

ソ氏「まぁ、顔で取り入ったわけじゃないようね。味気なくて面白くもない。私くらいじゃないと」
母親たち「(ヒソヒソ)」
ソ氏「それにしても一体どうやって宜城君の援助を受けたんだか!」

+-+-+-+

「今回はお前に世話になったな」共に茶をすすりながら、教授官がキョムに言った。

キョム「これを飲んだら先に行くよ。授業の準備もしないと」
教授官「(笑)何と現実味のない言葉だ。何もしないと言っていたくせに、準備とは大げさな」
キョム「何もしないためには、見えないところでたくさんやっておく、そういうことじゃないですか」
教授官「やれやれ、よく言うよ」

そのとき、誰かが廊下を曲がり、入ってくるのが見えた。
サイムダンだ。
「これは…どうなさったのですか?」先に気づいた教授官が立ち上がる。

何気なく振り返ったキョムは、そこで目を丸くした。「!」
立ち上がると、彼女の視線はまっすぐ自分へと向かう。
小さく息をつき、覚悟を決めると、キョムは顔を上げ、彼女に視線を返した。

キョム「…。」

+-+-+-+

ここでエンディングです。

生活が苦しいとか、格差とか、ただでさえ気が滅入るネタを、現代編と過去編のダブルパンチでやられるとキツイですねぇ。
おまけに、誤解されても弁解しない韓ドラのお約束はちゃんと守られてて…。

 - サイムダン(師任堂)色の日記

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