成均館スキャンダル1話対訳:前半之書
【お知らせ】韓国語のセリフを記載した箇所は削除いたしました。ご了承くださいませ 2020/9/11
後半になってだんだん本格的に訳すようになった「成均館スキャンダル」。
まだまだ私なりにこのドラマに関わっていたくて、とりあえずは最初からじっくり取り組んでみることにしました。
しんどくなったら、好きなシーンだけとか、全然違う回に飛んだりとか、
気まぐれに遊びます^^
ちなみに1話を見直すのは、コロ師兄の登場シーン以外ほぼ全て、リアルタイム視聴時以来だったり^^;
ではでは、彼らが出会うようになった物語の始まりを…^^
解釈が難しくて、誤訳がちょこちょこある予感。ごめんなさい♥
【原作本日本語版】彼らの出会いは原作とドラマでかなり違いが♪
+-+-+-+
(貸本屋)
ピョンチュン:
まだだと… まだだと言うのか?!
私を殺すつもりか?
論語の註解本の筆写がまだ終っていないとは、一体どうするつもりだ!
※註解本:難しい語句などに注釈をつけて分かりやすくした本
主人:
終わっているはずですよ。
ピョンチュン:
なのに、なぜないのだ?
主人:
今向かっているはずです。
ちょうど米穀屋を通り過ぎたころですかな?
(混み合った市場。米穀屋の前を急いで通り過ぎようとして店主にぶつかり、持っていた本を落としたのに気づかず走り去るユニ)
ピョンチュン:
時間内に註解本を手に入れられなければ、今度の大科にもあぶれてしまうんだ!
(遠くにいる誰かに)君は大丈夫なのか?… おい、何とか言ってみろよ!
(窓際で静かに本をめくっている男)
男:
大丈夫なわけがないだろう?
(そう言って本を閉じ、振り返った美男子は… ク・ヨンハ)
ヨンハ:
なぁ、ファンガ(店主)、これはないだろう。
チョゴリの紐を解いたなら、チマまで下ろさなければ…。
ここで終わるとは…(店主の頬をつつき)ふむ、たちの悪い人だ。
(彼が持っている赤い書には「玉丹春伝(上)」と)
ヨンハ:
(店主に耳打ちを)玉丹春伝の下巻はまだなのか?
店主:
それも今来るところですよ。
ピョンチュン:
来てみろ、けしからん奴め。
(そこへ走りこんできた若者はユニ)
店主:
お越しですな、人気の旦那。
ピョンチュン:
筆写士か?
ユニ:
あと2両いただきますよ。
ピョンチュン:
註解本を渡すんだ。
ユニ:
突然予定を繰り上げるとはいかがなものです?!
2両!あと2両いただきますので。
ピョンチュン:
若造め、金に目がくらんだか?
ユニ:
取引には信用が第一だと知っている程度には大人です。
(ユニを興味深げに眺めているヨンハ)
ピョンチュン:
分かったから、渡すんだ。
(ユニが袋から順に本を出すと、その中に赤い本が)
ヨンハ:
まずはチマの紐から解いてみるかな?
(玉丹春伝の下巻を手に取り、笑顔で背を向けるヨンハ)
(浮かない顔になるユニ。ピョンチュンが欲しがっている本は見当たらず…)
ピョンチュン:
何だ?ないではないか!私の註解本はどうしたんだ?
(ユニの襟首をつかみ)この詐欺師め!弁償しろ!私の首席合格を返せ!
(「まぁまぁ」と止め入る店主)
店主:
喧嘩しないで。間に入りますから。解決の方法を探しましょうよ。
ヨンハ:
仕方ないであろう?急に連絡した我々が悪いんだ。
ユニ:
2각만 더 주시겠소?
あと二刻(約30分)だけいただけますか?
ピョンチュン:
とんでもない奴、どこまでも戯言を。
おい!二刻でどうやって?講義も受けていないお前がどうやって?註解本もないのに?!
(騒ぐピョンチュンに耳を貸さず、さっさと座って筆を取り出し、書き始めるユニ。ヨンハも再び近づいてその様子を見つめます)
(そして二刻が過ぎ、筆を置くユニ)
店主:
(ニヤリ)終わりましたよ。
(驚いてユニの書き上げた書の頁をめくるピョンチュン)
ピョンチュン:
これを覚えて書いたって?お前ごときが?
ひょっとして適当に書いたんじゃないのか?
(ヨンハも本を覗き込み、黙って頁をめくります)
ユニ:
読めそうになければ言文解析もつけますが。
そっちは五文で。
ヨンハ:
ご苦労だったね。
誤字脱字もなく…完璧だ。
ピョンチュン:
!!!
(黙って片付けるユニをじっとみつめるユニ)
ヨンハ:
それにしても… 間違いなく女だな。
ユニ:
!!!(慌てて顔を隠し)
大の男に何と非礼なことを。
ヨンハ:
… 筆跡のことだよ。
(片付け終わり立ち上がるユニ)
ユニ:
追加の代金をください。
ピョンチュン:
少し色をつけよう。
お前の言うとおり五文上乗せして二両だ。
ユニ:
あと三両いただかなくては。
ピョンチュン:
何だと?
ユニ:
成均館の儒生だと言いましたよね。
お宅たちの授業料や食事代は全て私の懐から出て行った税金だと言うのに、
こうやって課題を貸本屋に任せているのを見ると、
どう考えても返してもらわなければ。
(手を広げて差し出すユニ)
+-+-+-+
(ある書堂。柱には「小科全員合格」などの張り紙が至る所に)
(儒生たちに混じり、静かに本をめくるソンジュンの姿)
(突然後ろから卵が飛んできて、ソンジュンの頭に命中します)
ワン書房:
何と、友よ。大丈夫か?(汚れた冠を見て)冠が痛んでいるぞ。外してみろよ。
私が綺麗に拭ってやろう。
(前を向いたまま、黙って冠を外すソンジュン)
ワン書房:
何と!髪にも付いているではないか。
こんな忌々しい真似をするとは!誰なんだ、一体!
(髪に手を伸ばすワン書房。ソンジュンはその腕を掴み…)
ソンジュン:
気になるか?
髪で筆を作れば科挙に合格すると信じている、
愚か者たちの仕業であろう?
+-+-+-+
(書堂の外へ出てくるソンジュン。ワン書房たちが後を追いかけてくる)
ワン書房:
力を貸してくれよ、友。
同じ師匠の元で学んだ仲間ではないか。
ほら、見てくれよ。あと少しなんだ。
(開いた包みの中には髪の毛の束が)
ワン書房:
朝鮮八道の学堂で名の知れた秀才たち全ての毛髪を集めたんだ。
君の髪も10本… (ソンジュンに睨まれ)いやいや、3本だけあれば、今度こそ私は絶対合格だ。
(黙ってその髪の毛の束を手に取るソンジュン)
ワン書房:
君にはただの髪束だろうが、私には命にも等しい太い綱だ。
一筋の希望なんだ!
(髪を持った手を上にかざし、握った手を開くソンジュン。髪は風に乗り一瞬で飛び散り…)
(慌てて追いかけるワン書房)
ワン書房:
私の髪が!これをどうやって手に入れたと?!ものすごく努力して手に入れたのに!
ソンジュン:
それは努力ではなく”まぐれ”と言うものだ。
ヘウォン:
おい、イ・ソンジュン。科挙を目前にして不安になって焦るのは当然だろう。
そんな気持ち一つ理解できないのか?
ソンジュン:
そんな安い慰めや同情で何が解決する?
ワン書房:
この疫病神め!
ソンジュン:
嫌われても一向に構わぬ。
しかし、間違っていると言われるのは容赦出来ないな。
+-+-+-+
(再び貸本屋)
店主:
一体なぜ科挙をお受けにならないんです?
儒生様の実力なら首席間違いなしだ。
答案用紙に名前さえ書けば、そのまま無難に成均館へ…
ユニ:
だから嫌なんだ。
自分の力で宿題もしない奴らを相手にしてどうする?
その時間があれば一文でも余分に稼いだ方がましだろう。
店主:
たったの一文でいいんですかい?
10倍稼ぐ商売があるのに…。
ユニ:
?
(店主が意味深に手招きし、壁を押すと向こうには謎の空間が)
店主:
おいでなさいな。
(手動エレベーターのような機械に乗り込むと、二人は下の階へ)
店主:
ついていらっしゃい。
(そこには何やら紙に小さな文字を書き連ねる男たちの姿)
店主:
学問の出来る奴らだけが出世できるこんな汚れた世は
まるごとひっくり返すべきじゃありませんかい?
(ユニは目に止まった小さな手帳をパラパラとめくり)
ユニ:
それで、小銭を少しばかり持っている奴らだけが出世できる世を作るから、
私に答案紙を作ってくれと… そういうことか?
(うなずく店主)
ユニ:
結構だ。
(戻って来て荷物を片付けるユニ。店主が追ってきて…)
店主:
この仕事さえ成功すれば優に30両は手に入るんだから!
その日一日の儲けが100両ですよ、100両。
3年分の儲けを一筆で!
ユニ:
巨擘は違法だ。
私に科挙の代理受験をしろと…
(慌ててユニの口を押さえる店主)
店主:
それでも男ですかい?
大の男がそれくらいの度胸もなしに、毎日金に命を掛けると?
ユニ:
金に命を掛ける私が決してやらないことが二つある。
一つは他人の飯をくすねること。
もうひとつは役人たちに尻尾を振って嘘の文章を書くことだ。
私が科挙で代理受験をすれば、その二つとも破ることになるのでは?
それも一日で、同時にね。
男のやることじゃないな。
+-+-+-+
(外に出て来たユニを確認し、ニヤリと笑った二人組の妓女。ユニの前を歩き始め、わざとらしく扇子を落とします。ユニはそれを拾うのを見て、”賭けに勝った”と喜ぶ片方の妓女)
ソムソム:
一つ、二つ、三つ!
ユニ:
もし!
(待ってましたとばかりにユニを振り返る彼女たち)
ソムソム:
お呼びになりましたか、儒生様?
ユニ:
1両でどうだ?
ソムソム:
(苦笑い)一夜も共にしないうちに、値段交渉からなさるのです?
牡丹閣の妓女、ソムソムにございます。
お話はゆっくり枕許で…
ユニ:
この扇子のことだよ。詩文が間違いだらけだ。
私が直してあげよう。1両でね。
(ソムソムに手を差し出し、取られた金を取り戻すもう一人の妓女)
ユニ:
気が向いたら貸本屋に預けておくといい。
(爽やかに去っていくユニの後ろ姿に、二人は溜息)
ソムソム:
はぁ… やっぱり私たちじゃ無理だわ。チョソンお姉さんが乗り出してくれればどうかしら。
声:
私がどこへ出ると言うの?
妓女たち:
!!!
(現れたのは世にも美しい妓女チョソン。彼女に駆け寄った二人は…)
ソムソム:
私たちの賭けは全部失敗ですわ。
チョソン:
・・・。
ソムソム:
お顔は春の日差しのような殿方も、心は霜月の北風のようで…。
(チョソンは振り返り、歩き去るユニの後ろ姿を眺めます。そして、堂々たる歩調で反対側へと歩き出し…)
エンエン:
お姉様、私たちにも教えてくださいな。出会った殿方たちを皆骨抜きにしてしまう秘訣は一体何です?
チョソン:
捧げてはダメ。
望みが男の心なら、決して捧げてはダメよ。
まなざしも、心も、手も…決して差し伸べてはいけないわ。
+-+-+-+
(小屋の中で男装を解き、すっかり娘に戻るユニ。薬の包みを手に取り、外へ出ます)
+-+-+-+
(家の前まで戻って来ると、派手に暴れ嫌がらせをしている男たちの姿が。こぼれた米を黙って拾い集めるユニの母。男たちが家の中に入ろうとすると…)
ユニ母:
病人のいる家なのです。
どんなことをしてでも借金は返しますから、猶予を…
ごろつき:
退いて!
(男に押され、その場に倒れる母。ユニはたまらず駆け寄ります)
ユニ:
無力な女になんという不道理を!
男:
約束の期限になったのに金を返さないのは、一体どこの国の道理だ?
忘れたか?今日が金を返すと言ったまさにその日だ。
ユニ:
いつもこんな手で貧しい人たちの粗末な家財道具さえ奪って行くんです?!
男:
心配することはない。
家財道具は全部置いて行く。
(ユニの顎を掴み)ようやく金になる品物を見つけたからな。
ユニ母:
何をおっしゃるのです、旦那様!
ただの無作法な小娘ですから怒りをお鎮めください、旦那様。
男:
どうやって鎮める?元金100両に利子10両さえ返せば済む話だ。
金で返すなり… 娘を売るなり。
先に言っておこう。万が一夜逃げでもした日には、官軍でも私兵でも使って地の果てまで追いかけるからな。
ユニ:
返せばいいんでしょう!
私がどんな手を使ってでも返すから、これ以上無礼を働かないで!
+-+-+-+
(弟、ユンシクの病床へ膳を運んでくるユニ)
ユニ:
(ユンシクに)ゆっくり、全部食べるのよ。
(母にも笑顔で箸を渡し)冷める前に召し上がってください、母上。
ユンシク:
姉上は?
ユニ:
私は市場でたっぷり間食したから、見るだけで飽き飽きしちゃうわ。
母:
ユニ…。
ユニ:
母上、私ね、仕事の運が拓けたみたい。
貸本屋で筆写の仕事をたっぷり受けてきたんですよ。
それに一年分を先払いで渡すって言うんです。
ユンシクの薬代を孔子先生が全部施してくださるんですよ。
ユンシク:
本当かい、姉上?
(うんうんと頷くユニを黙って見つめる母。そんな母の手に箸を持たせ…)
ユニ:
だから、お金のことなら心配なさらないで。
私が全て決着をつけますから。
母に箸を持たせ、優しく手で包むこのショットに(´;ω;`)ブワッ
+-+-+-+
(翌日。再び貸本屋へやって来たユニ)
ユニ:
やってみよう。
店主:
?
ユニ:
巨擘ってやつを。代理試験だ。
店主:
(喜んで)儒生様!
ユニ:
10倍だろうと100倍だろうと、一度やってみようじゃないか。
+-+-+-+
(成均館。小科試験会場)
(試験前の儀式が執り行なわれます)
インス(掌議):
先賢に申し上げます。
この国の国学、成均館が新しい儒生を迎えます。
※成均館に入学するためには小科に合格する必要がある。
インス:
どうぞ善良で賢明な後輩たちをお送り下さり、
国の安寧と民の平安をお守りください。
(門の前には「庚戌年 小科 初試(予備試験)」と書かれた垂れ幕)
(合格を祈願して踊る者たち)
(開門と共に走る場所取り担当の男たち)
(そこへ不安気にやって来たユニ。後ろからやって来た貸本屋の主人に肩を叩かれる)
ユニ:
”芸は熊が優れており…”
店主:
”金はワン書房が稼ぐものです”
ユニ:
本当にこう言いさえすれば分かるのかい?
店主:
もちろんですとも!
座席表と人相書は持って来たんですかい?
(緊張してうなずくユニ)
店主:
儒生様が受験者を見つけて、その答案用紙に心ゆくまで実力を発揮すれば
今日の仕事は終わりです。何てことないでしょ?
ユニ:
大丈夫かな…。
店主:
心の隅に引っかかっている良心というか… そんな奴ですかい?
(俯き、うなずくユニ)
店主:
このご時世、勉強して科挙を受ける人がどこにいるんです?
要領で受ける物でしょ。
(帰ろうとする店主)
ユニ:
本当に大丈夫かな…。
店主:
何、ひょっとして見つかれば罰を受けるんじゃないかって?
(うなずくユニ)
店主:
見つかれば杖刑100回、運が悪けりゃ鞭刑200回。
ユニ:
・・・。
店主:
(笑って)全部大昔の話ですよ。
誰が捕まえるってんだ、自分たちだって皆そうやってのし上がったのに。
どんなこと想像したって、それ以上にはなりませんって。
+-+-+-+
(試験場へやってきたユニ。場所取りで小競り合いをする者、代筆士、便乗して騒ぐ者、試験官に取り入る者。試験場はあらゆる者たちでごった返しています)
(座席表を開き、受験者たちを見渡してワン書房の席を探すユニ。そこにはすでに座って準備をしている者がありました。その人物の横顔と似顔絵を照らし合わせ、間違いないと笑顔に)
+-+-+-+
(試験場の奥の建物の中には、成均館博士、ユ博士の姿。彼の後ろを胥吏が付いて歩きます)
ユ博士:
答案用紙を交換した者は鞭200回、本を見ながら書けば杖200回。
代理試験をやった者は生涯科挙に出入り禁止だ。
一人たりとも見逃すな。万一、一人でも見逃せば(胥吏を振り返り)お前が鞭200回だ。
胥吏:
!!!
声:
お手柔らかに頼むよ。
まるで命がけじゃないか…
ユ博士:
?
(そこにいたのは、別の胥吏と遊びに興じているチョン博士。その言葉は対戦相手に向けたものか、ユ博士に向けたものか…)
チョン博士:
叩くばかりで果たして通用するのか…?
(楽しげに次の駒を置こうとしたとき、台ごと豪快にひっくり返すユ博士)
チョン博士:
?
ユ博士:
神聖なる科挙試験場で賭け事とは、
一体何者か?!
(立ち上がり微笑むチョン博士)
チョン博士:
本日成均館赴任の命を受けました博士、チョン・ヤギョンという者です。
ユ博士:
不正腐敗や賄賂で左遷された者の挨拶らしいな。
チョン博士:
はははは…
ユ博士:
赴任初日から、しかも成均館の儒生を選出する試験場で賭け事とは、
一体何を考えているんだ?!
チョン博士:
広い試験場では儒生と官員たちが八百長試験の真っ盛りかと…
それで私もつい… ははは。
ユ博士:
ここは成均館だ、成均館!
出て行け!
今すぐ外へ出て、不正行為を働く奴らを残らず引っ張ってくるのだ、早く!
+-+-+-+
(試験開始)
(ソンジュンが辺りを見渡すと、不正を働く者が至る所に。見つけた試験官が咎めると、金品を渡し、目をつぶらせ…。ソンジュンが気を取り直し、答案を書こうとすると、そこへ現れるユニ)
ソンジュン:
?
ユニ:
”芸は熊が優れており…”
ソンジュン:
???
ユニ:
”芸は熊が優れている”って言ったんですよ。
ソンジュン:
”金は胡人が儲けるものでしょう。”
ユニ:
胡人?
※胡人=ワン書房を表す格調高い文語体
ソンジュン:
・・・。
ユニ:
言葉をよくご存知で。
30両です。
ソンジュン:
?
ユニ:
ひょっとして初めてですか?
私も初めてなのでご理解を。
だから言うんですが、これは先払いって決まりなんです。30両。
(ユニの袖口にはたくさんの答案がチラリと覗き…)
ユニ:
次、次の上、首席、30両から50両まで好きなようにお選びを。
ソンジュン:
50両。
ユニ:
賢明な選択ですよ。
(手招きするソンジュンに大喜びで近づくユニ)
ソンジュン:
巨擘を告発した者に与えられる報奨金額。それが50両だ。
ユニ:
?!
(正面を向き、手を挙げるソンジュン)
ソンジュン:
(大声で)申し上げます!
(慌てて座席表を確認したユニは方向を間違っていたことに気づきます。正しい席を見ると、そこにはおろおろして辺りを見渡している男の姿)
ワン書房:
芸ある熊はどこだ?
(周りに聞こえるように)ワン書房は私だ!金はワン書房が儲けるぞ…。
(男の顔に大きなほくろがあるのに気づき、似顔絵をよく見ると、皺になっていた部分からほくろが!人間違いだったと悟り、自分を睨んでいるソンジュンの口を思わず”シーッ”と押さえるユニ)
ユニ:
すまなかった… です。
(ソンジュンにすがるユニ)
ユニ:
信じてください。本当に初めてなのです。
ソンジュン:
(手を上げ)申し上げます!!!
ユニ:
助けてください!
ソンジュン:
!
ユニ:
家族の生活が掛かっているのです。
幼くして父を失くし、自らの力で食べていかなければならなくなりました。
それに、家には今日明日をも知れぬ病人がいるのです。
だから…
(上げた手を下ろすソンジュン)
ソンジュン:
薬代を稼がねばならぬのだな。
そのような事情があったとは。
どうか過ちを悔い改め、正しい生き方をした方がいい。
ユニ:
…
ソンジュン:
(再び手を上げ、大声で)ここに不正な方法で試験を辱める者がおります!
(やって来たのはチョン博士)
チョン博士:
試験を辱める者と… それは誰かね?
(立ち上がるソンジュン)
ソンジュン:
私とここにいる儒生たち、そして、令監でいらっしゃいます。
(ほほえみを浮かべ、ソンジュンの顔を覗き込むチョン博士)
ソンジュン:
言葉を売ることを恥ずかしいとも思わず、金儲けにあくせくする者たちが一つ。
ひたすら自分の答案を仕上げることに熱中し、不正を見ても気にもとめない儒生たちが二つ。
そして、試験をただの行事だと考えている全ての官員たち、
また、その全てを管理なさる大司成令監の罪も決して軽いとは言えないでしょう。
(驚いたのは、試験場正面に座っていた大司成)
大司成:
あ、あ、あやつめ!
何をしておる?直ちにあやつを放り出して、試験場を改めぬか!
(駆け寄る官員たち)
チョン博士:
(落ち着いたままソンジュンに)ならば、どう処理すればいいだろう?
ソンジュン:
まずは試験用紙と身分証を照会し、巨擘や代筆士を全て追い出さねばなりません。
そうして会場の秩序を正したら、次に科挙を管理する官員たちは殿下の前で全ての罰を請うべきでしょう。
ワン書房:
何と!あいつ変なものでも食べたんじゃないか?
(「チョン博士ーー!」と叫びながら走ってくる大司成)
大司成:
(チョン博士に)私の言ってることが聞こえなかったんですか?
(ソンジュンを指差し)こやつめ!お前の傍若無人な振る舞いは決して許すまい!
名簿を!(名簿を受け取り)名を言いなさい。一体どこの息子なんだ?
ソンジュン:
私はイ・ソンジュンと申します。
大司成:
イ・ソンジュンか… イ・ソンジュン?
それならお前は… いや、君はひょっとして左相大監の令息、イ・ソンジュンかね?
ソンジュン:
・・・。
(振り返るユニ。驚愕して顔を隠す大司成)
大司成:
(周囲に)何をしておる!今すぐ試験場を改めるのだ!
(大司成は真っ先にソンジュンに向かおうとした胥吏を取っ掴まえ…)
大司成:
見当違いであろうが!
(大声で)ただいまよりこの試験場でいかなる不正もいかなる非理も決して容赦はせぬぞ!!!
(次々と発見される不正行為の証拠、続々と追い出される者たち。ユニも混じって外へ)
大司成:
さて、もう一度、始め!
(すっかり改められた試験会場で、試験が再開されます)
(しばらくして、誰よりも早く答案を書き上げ、提出するソンジュン。それを受け取りざっと目を通したチョン博士は黙ってソンジュンを見上げ、ユ博士に答案を渡します)
チョン博士:
おかげで久しぶりに試験場らしい場に立ち会ったな。
ソンジュン:
当然すべきことをしたまでです。
(ユ博士がソンジュンの答案に”一天”の文字を書き込みます。表情ひとつ変えず下がろうとしたソンジュンですが…)
チョン博士:
ところで、それは新しい挟書(不正行為)かね?
(見ると、ソンジュンの服の裾に何やら文字が書き込まれており…。それを見てクスクスと笑う他の受験者たち)
ユニ(声):
”文を読む儒生だからと意気軒昻だが
民の暮らしには無知だ
文を売って米を買う者が盗賊ならば
文を売って権力を買う者は忠臣なのか
そのような者に剣を握らせたとすれば
それこそ人を捕らえる未熟な巫女
大泥棒になる者がいるとすれば
それはまさに私のことだ”
※人を捕らえる未熟な巫女=선무당이 사람 잡는다(未熟な巫女は人を捕まえる)より。習ったばかりで未熟な技術を発揮しようとすると大変なことになる、という意味
(ユニが書いたことに気づき、憤るソンジュン)
チョン博士:
その”人を捕らえる未熟な巫女”とは… 君のことを言ってるのかね?
(会場に湧く笑い声。ソンジュンは足早に会場を後にしようとしますが… とその時、足元に伸びていた紐に足を取られ、その先に答案が結んであるのを発見します。それを受け取ったワン書房から奪いとり、中に書いてある字を確認するソンジュン)
+-+-+-+
(会場の外)
(ユニが紐をたぐりよせていると、目の前に現れたのは… イ・ソンジュン!)
ユニ:
ワ、ワン書房!
ソンジュン:
君の答案は受け取ったから、代金を払わねばならぬであろう?
(一目散に逃げ出すユニ。ソンジュンはユニを追いかけます)
+-+-+-+
ここで前半終了。
試験や学問関連のお固い言葉の訳し方が難しいけど、それが楽しくもあったりしますね^^
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