韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

韓国ドラマのあらすじや詳細日本語訳を紹介!セリフを題材にした文法解説も

ホテル・デルーナ14話あらすじ&日本語訳~前編

   

IU(イ・ジウン)、ヨ・ジング主演のtvNドラマ『ホテル・デルーナ(호텔 델루나 )』14話、前半のあらすじを、セリフの日本語訳もまじえて紹介していきます。

語られなかった思い

1000年の過去。
城門を入ったところで、コ・チョンミョンは兵士たちが作業している姿に目を留めた。「?」
荷車に集めた雑多な小物を、次々に火へ投じている。

一人の兵士が木で出来た弦楽器を手にとった。

チョンミョン「待て。何をしているのだ?」
兵士「処刑された高句麗人たちの遺品です。使えるもの以外は燃やせとおっしゃいましたので」

チョンミョンは手を伸ばし、その弦楽器を受取った。「…。」

チョンミョン「燃やさずに、すべて集めろ」

木桶の中にたくさんの遺品が集められた。
そこに、チョンミョンが弦楽器を加え、ひざまずいて目を閉じる。「…。」

ヨヌがそれを爪弾く隣で、マンウォルと楽しく語らった夜が蘇る。
あの美しい日々は二度とやって来ない。

チョンミョン「せめてこれで葬儀を出せるように、村の生き残りに渡してやれ」

兵士たちが木桶に蓋をするのを、チョンミョンは静かに止めた。「待て」
懐から何かを取り出し、見つめる。「…。」
血に染まった満月模様の装身具。マンウォルに贈ろうと、密かに準備していたものだった。
チョンミョンは最後にそれを木桶に収め、立ち上がった。

~~~~~~~~

「あんた……誰?」トンネルから出てきたチャンソンの異変に、マンウォルは思わず後ずさりをした。
そこへ、ソンビとソヒが走ってくる。「ク支配人!」

ソヒ「無事で良かった」
ソンビ「心配したではないか」

「ヒヤリとしたぞ」ソンビがドンとチャンソンを叩いたはずみで、チャンソンは小さくよろめき、ハタと我に返った。「?」

マンウォル「…。」
ソヒ「社長、驚かれたでしょう?」
ソンビ「(目眩を覚えているチャンソンに)具合でも悪いのか?」
チャンソン「いいえ」

チャンソンは目の前のマンウォルに視線を向けた。
彼女は目をいっぱいに見開き、ひどく緊張した様子だ。

チャンソン「僕は大丈夫です。ずいぶん驚かせたようですね」

マンウォルはそのままくるりと背を向け、半ば逃げるようにその場をあとにした。

ソヒ「お怒りのようですわ」
ソンビ「あんなに息せき切って走ってきて、きまりが悪いんだろう。とにかく、無事に出てこられて良かった」

チャンソンは改めてトンネルを振り返る。
彼らのずっと背後で、小さなホタルが羽音を立て、飛び上がった。

+-+-+-+

社長室へ戻ってきたマンウォルは、夢中で瓶ごと酒を流し込んだ。
動揺が膨れ上がり、彼女を飲み込もうとする。

「彼は何者なんです?」チャンソンの問いただす声が蘇った。
彼は自分がチョンミョンの生まれ変わりではないか、記憶にない前世を夢に見ているのではないかと考えていたのだ。
死の麻姑神も言った。チャンソンはチョンミョンをも連れて来るだろうと。

マンウォル「あり得ない!ク・チャンソンがあの男のはずがないわ」

+-+-+-+

麻姑神(花売り)は誰もいなくなったトンネルの前で、そっと中を覗き込んだ。
彼女の隣で、ホタルが仄かに光を放っている。

麻姑神「この光のせいで…マンウォルはずいぶん動揺しているだろうねぇ。トンネルから戻ってくるのに力を使って、また弱々しくなった」

麻姑神の差し出した手のひらに、ホタルはそっととまった。

+-+-+-+

ソンビたちはチャンソンをバーへ連れて行き、この世の薬酒を飲ませた。
一刻も早くこの世のものを食べさせる必要がある。

ソヒ「迷わずにすぐ出て来られて、本当に幸いでした」
チャンソン「聞きました。三途橋は時間の流れが違っていて、記憶を失くすかもしれなと」
ソンビ「ちょっと別世界に行ったつもりで、戻ってきたら30年経っていた… そんな昔話もまんざら嘘ではないのだ」
ソヒ「死神に聞いたんですが、三途橋から戻ってきたある人は、前世の記憶を取り戻して、現世を台無しにしてしまったそうですわ」
チャンソン「前世を?」
ソンビ「ク支配人、そこで妙なものを見たとか、そういうことはなかったのか?」

そう言われて、チャンソンは朧げな記憶を手繰り寄せる。「なにか光っているのを見た気もします」
「ほう」二人が身を乗り出す。

チャンソン「あれは何でしょう?」
ソンビ「… 我々も行ったことがないから、わからないな。死者より先に生きている人が見学するとは」
ソヒ「それにしても、どうやってすぐ出て来られたんです?難しいと聞いていたのに」
チャンソン「出て来た記憶がないんです。気がついたら外にいて」

「記憶を失くしたのだな」ソンビはさらに薬酒を勧めた。

#いつからか皆チャンソンのこと大好きになってて、ホント素敵♪

+-+-+-+

怖い顔でバーに姿を見せたマンウォルとともに、チャンソンはテラスへ来ていた。

チャンソン「男の子があの世行きのバスに乗ってしまったと思って、トンネルに入ってしまったんです。子どもも無事だったし、僕も大丈夫だから、もう怒らないでください」

マンウォルはそれでもまだ疑惑の目でチャンソンを見つめた。
恐る恐る、手をチャンソンの胸にあててみる。
「…。」目を閉じ、じっと彼を感じると、またゆっくり目を開ける。

チャンソン「本当に大丈夫です」
マンウォル「…いつものク・チャンソンだわ。今でも私の夢を見る?」
チャンソン「あのとき長い夢を見て以来、あなたは夢に出てきていません」

「!」マンウォルは少しハッとしたように顔を上げる。「じゃあ、別の夢は?」

チャンソン「夢なのか想像なのかわからなくて言わなかったんですが、あの人を見ました。チョンミョンという人…」
マンウォル「!」
チャンソン「湖のほとりで、一人であなたを待っていました。手に満月模様をかたどった装身具を持って」
マンウォル「…。」
チャンソン「ひょっとして、そういったものを受け取ったことは?」

マンウォルがガウンの裾をギュッと握りしめる。「ないわ」

チャンソン「あなたの記憶を夢に見たわけじゃないなら、あれは何だったんでしょう」
マンウォル「あんた最初… 自分の見る夢は記憶にない前世かもしれないって言ったわよね」
チャンソン「絶対に違うって、あなたが言ったんですよ」
マンウォル「…そうね。絶対に違うわ」
チャンソン「ソンファとヨヌが思いがけず繋がっているのを見て、不安になったんですか?彼も思いも寄らない現れ方をするんじゃないかって」
マンウォル「私はそういう繋がり方はしない。ヨヌたちは… もう前世のことだから、あり得る話だとしても、私にとってはまだ現世なの」

マンウォルはもう一度チャンソンを見つめ、小さく溜息をついた。「ヨヌたちが一緒にいるのを見て、ちょっと妙な気を起こしてしまったみたい」

疑惑のお兄様

ユナとヒョンジュンは、デルーナへ迷い込んだ男の子を、病院にいる父親のもとへ送り届けた。

化粧室から出て来たユナは、そこでヒョンジュンの遺した妹、ヒョンミを見かける。
彼女は、スマートフォンから流れてくる『大きな古時計』のピアノを嬉しそうに聴いていた。

「このピアノの音、お好きなんですか?」ユナは思わず声を掛けた。
「…はい」目の見えないヒョンミは、少し戸惑いながら答える。

ユナ「友だちの妹と… いえ、友だちのお祖母さんに似ていらっしゃるので、写真に撮って友だちに見せてもいいですか?」

「えぇ」ヒョンミは上機嫌で笑った。

ユナ「ありがとうございます。あの… ひょっとして、お兄さんの名前を覚えていらっしゃいますか?」
ヒョンミ「えぇ。お兄様はチ・ヒョンジュンというんです」
ユナ「ヒョンジュンさんを覚えていらっしゃるんですか!」
ヒョンミ「えぇ」

そこへ男性が近づいてきた。以前ヒョンミを見かけたときも一緒にいた人だ。「何をしているのかね?」
ヒョンミは男性に声を掛けた。「お兄様」

男性「あぁ、ヒョンミ」
ユナ「?」
男性「音楽を聴いていたのかい?」
ユナ「おじいさん、この病院を建てたチ・ヒョンジュンさんですよね?」
男性「あぁ、以前入院していたキム社長のお嬢さんだね」
ユナ「おじいさんが… ヒョンミさんのお兄様?」
男性「そうだよ。それがどうかしたのかい?」
ユナ「チ・ヒョンジュンの兄のチ・ヒョンジュンは… ずっと前に死んだのに」

「え?」戸惑った男性の手から、持っていたスマートフォンが滑り落ちる。

ヒョンミ「お兄様?」

男性がスマートフォンを拾って顔を上げると、もうそこにユナの姿はなかった。
探しに来たデルーナのヒョンジュンに腕を捕まれ、その場を離れたのだ。

男性「チ・ヒョンジュンが死んだのを、知っている人がいたのか…」

#この男性、前にみたときに変だと思ったんですよね。訳ありだったのか…。それっきりこの件には触れず、こんな終盤で出してくるとは。

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病院の外へ出たところで、ようやくヒョンジュンはユナの手を離した。「ヒョンミに声を掛けるなって言ったろ」

ユナ「あんた、あの人に殺されたの?」
ヒョンジュン「!」
ユナ「あの人、あなたの財産も名前も全部奪ったの?」
ヒョンジュン「関わるな」
ユナ「あんた、それであの世へ行けないのね。あんたの振りして幸せに暮らしてるのが無念で」
ヒョンジュン「放っておけよ」
ユナ「放っておけるわけないじゃない!他人の人生奪って生きてるのに!」
ヒョンジュン「どうしようもないだろ、僕はもう死んでるんだ。君だってそうやって幸せに生きてるじゃないか」
ユナ「!」

※ユナは本来のキム・ユナではなく、クラスメイトの魂がユナの体に憑依しています。「他人の人生を奪って生きている」のは、ユナだって同じだと言っているのですね。

ユナ「…そうね。私だって他人の人生奪った分際で、出しゃばりすぎたわ」
ヒョンジュン「そういうことじゃなくて…」
ユナ「もう関わらないわ」

背を向けたユナを、ヒョンジュンは追いかけることが出来なかった。

サンチェス応援団

翌日。
チャンソンは執務室からサンチェスに電話を掛けた。
「変わりないよな?」ソル・ジウォンが出没していないか、気がかりだったのだ。

サンチェス(電話)「あぁ」
チャンソン(電話)「やけに騒がしいな。誰かいるのか?」
サンチェス「パク警部の足がまだ腫れてるからって、ミラさんがお前の部屋に泊めたんだ。俺はもう大丈夫だと思うんだが、ミラさんが具合の悪い人にはちゃんと食べさせなきゃって言って、食事中なんだ」

サンチェスも一緒になって食事をしているわけではない。
パク警部の同僚たちも集まり、庭で陽気にピクニックしている光景を、サンチェスは遠巻きに眺めているだけだ。

サンチェス(電話)「パク警部の同僚が非番だからって訪ねて来てさ。せっかく来たんだから庭がいいって、スイカをお召し上がりだ」

「ミラが呼んだんだな」チャンソンが呆れて顔をしかめる。

サンチェス「チャンソン、家はもう安全だ。マンウォルがくれたお香のおかげで霊的にも安全だし、ミラが刑事さんたちを呼んだから、まぁ治安の心配もなくなったしな」
チャンソン「ミラに変わってくれ。俺から言うから」
サンチェス「いいって。一人でいたら憂鬱だろうって、ミラさんも気を使ってくれてるんだ。賑やかでいいよ。庭の芝生が傷まないか心配で、余計なことを考える暇もない」

「チャンソン、だから俺の心配はいらないぞ」そう言って、サンチェスは楽しげなミラたちに視線を向ける。
ミラが差し出したスイカをパク警部が「あーん」と食べ、同僚たちにワッと茶化されているところだ。

サンチェス(電話)「ミラさんたち、仇同士みたいに毎日ケンカばかりだと思ってたけど、一緒にいるところを見ると、仲がいいな。心配なさそうだ。きっとすぐ家を出ていくさ」

「俺もスイカを食べに行かないと」サンチェスが電話を切ると、ちょうどミラが彼を呼んだ。「サンチェス!」

ミラ「刑事さんたちが買ってきてくれたメロン、食べましょうよ」

「一緒に食べましょう」パク警部たちが口々に誘う。

サンチェス「ミラさん、そのメロンはうちの冷蔵庫にあったやつだよ」

「そうだった?」ミラが笑うと、周りもどっと湧いた。

サンチェス「…。」

#このシーン、なんだかすごく良かった。この長い14話の中で唯一ホッと息がつける場面かも。ソンファの生まれ変わりを、こういうあっけらかんとした明るい性格に設定したバランス感覚、すごいと思う。

マンウォルの抱える遺恨

サンチェスとの電話を切ったところで、誰かが執務室の扉をノックした。
入ってきたのは、客室長のソヒだ。

「以前、社長がホテルに招待した女性がいましたよね」ソヒはそう切り出す。
ミラのことだ。

ソヒ「あの女性、ク支配人の友人だと聞きましたが」
チャンソン「そうです」
ソヒ「あの方の前世は社長と関係があるのですか?」
チャンソン「…。」

彼の表情に、ソヒはうなずく。「悪縁だったのでしょうね」

ソヒ「社長がどんな事情を抱えているのか、私たちは一度も知ろうと思いませんでした。私たちのように、遺恨を晴らして旅立とうとしているわけではないと思っていたからです。ところが、社長を縛っている月霊樹に変化が起きました。きっとク支配人と、ク支配人の招いた縁が原因だと思っています」
チャンソン「考えておられるとおりです」
ソヒ「あの女性だけでなく、他の縁も…?」
チャンソン「もうすでに繋がっている縁もあり、おそらく別の縁ももうずぐ。その人のことも… 僕が彼女のもとへ呼び寄せることになるでしょう」
ソヒ「麻姑神がク支配人をここへ送り込んだのは、そういう理由だったのですね。それなら、ク支配人も前世で社長と縁があるのかもしれませんね」
チャンソン「僕は違います」
ソヒ「そうなのですか?変だわ。前世で何の縁もないのなら、なぜク支配人が選ばれたのかしら」
チャンソン「…。」
ソヒ「神のしたことですから、きっと理由があるのでしょう。いずれにせよ、最後には愛に繋がったのですから」
チャンソン「今後も僕がそばにいます」

ソヒが安堵したようにうなずく。「社長、不憫だわ」

ソヒ「一番辛い人に会うことになるのですから」

#もともとソヒは頼もしい存在ですが、自身の山場を乗り越えてからは、さらに安心感が増しましたね。気遣いながらも決して立ち入らない、距離の取り方に感心します。

+-+-+-+

庭園にやってきたマンウォルは、月霊樹の前に先客がいるのを見て、踵を返した。
麻姑神(花売り)だ。
「黙っていくことはないじゃないか」麻姑神が呼び止める。

マンウォル「話したくないの。好きなだけ花見をしたら、黙ってお帰りを」
麻姑神「それでは… このまま見過ごすつもりなのかい?知らないふりをして」
マンウォル「?」
麻姑神「あやつに会ったではないか」

「!」マンウォルは恐る恐る振り返る。

麻姑神「避けることはできぬ。あやつはすでにお前のそばにいる」

「ようやく渡すときが来たね」麻姑神が差し出したのは… 血に染まった満月の装身具だ。

麻姑神「お前のものだ」

装身具を受け取ったマンウォルの手は、小刻みに震えていた。
チャンソンが夢で見たという、あの装身具に違いない。

マンウォル「ク・チャンソンだったの…?」
麻姑神「そうだとしたら?受け入れられるか」
マンウォル「そうなのかと訊いてるのよ!」
麻姑神「1000年の待ち人が現れたのに、嬉しくないのか」
マンウォル「!!!」
麻姑神「あやつが現れれば殺して消滅すると豪語しておったが、今になって躊躇っておるのだな」

マンウォルは大きく息をつく。「だから…」

マンウォル「ク・チャンソンなのか訊いてるのよ」
麻姑神「これほど久しく抱いてきた恨み、最後に訪れた愛で解いてみなさい」

「!!!」何という皮肉だろうか。「1000年憎み続けた人… ようやく愛した人として出会わせたの?」

麻姑神「お前がそこで何を見ることになるのか、私も気になるところだ」
マンウォル「!」
麻姑神「コ・チョンミョンと捉えて消滅するのか、ク・チャンソンと捉えて救われるのか。それはお前が選択することだ」

麻姑神が立ち去ると同時に、マンウォルの目から涙が流れ落ちる。
彼女は受け取った装身具をぎゅっと握りしめた。

+-+-+-+

沈んだ心を引きずるように廊下を歩いていると、向こうの角をチャンソンが曲がってくるのが見えた。

マンウォル「!」

「チャン・マンウォルさん?」チャンソンが心配そうに彼女を見る。
そのとき、これまでチャンソンと過ごした何気ない瞬間が、まるでパズルのようにチョンミョンの記憶と重なった。

「これから俺と見る風景、全部違って見えるはずだ」
「さっき一人で見ていたときより、一緒に見たほうが綺麗だな」

マンウォル「!!!」

悲しみと憎しみがふつふつとマンウォルの心の底から湧いてくる。
彼女の心を読み取り、手に握りしめた装身具が短剣へと姿を変えた。
まっしぐらにチャンソンへと駆け寄ると、迷うことなく短剣をその胸に突き立てた!

チャンソン「!」

チャンソンの視線が彼女から胸の短剣へ移り、ふたたびゆっくり彼女へと戻る。
震える手で、彼はマンウォルの肩を掴んだ。

チャンソン「信じてくれと… 言ったじゃないですか」
マンウォル「!」

次の瞬間、彼の体は雪崩のように床へ崩れ落ちる。
「ク・チャンソン…!」マンウォルの手から短剣が滑り落ちた。

… とそこで、マンウォルはハタと我に返った。「?」
廊下はガランと静まり返り、他に誰の姿もない。
なんという恐ろしい幻覚を見てしまったのだろうか…。

「社長?」後ろからやって来たソヒが声を掛ける。

マンウォル「…?」
ソヒ「社長、なにかあったのですか?顔色が良くありません」

マンウォルは大きく息をつき、両腕で自分の体を抱えた。「たった今… 心のなかでク・チャンソンを殺したわ」

ソヒ「!」
マンウォル「一番恨んでいる人物の生まれ変わりかもしれないの」
ソヒ「きっと違います。ク支配人も違うとおっしゃっていましたわ」
マンウォル「そうね。違うかもしれない。だけど、少しでも可能性がある以上、まともに顔を見られそうにないわ」
ソヒ「どうなさるおつもりですか?」

マンウォルは手に握った装身具を見つめた。「私には絶対に殺せない」

マンウォル「恨みを解けと麻姑神に言われたわ。方法を考えないと」

+-+-+-+

沈んだまま社長室に戻ると、今度は本物のチャンソンが彼女を待っていた。
テーブルの上に甘い食べ物とお茶が用意されている。

チャンソン「あなたの好きな店で買ってきました。甘いものを食べれば、気分も良くなるでしょうから」
マンウォル「…。」

「座ってください」チャンソンはいつもと変わらず、どこまでも優しい。
と、彼の視線がマンウォルの手元に移った。「手に持っているものは?」
満月の装身具だ。

チャンソン「これは… 僕が夢で見た装身具です」

マンウォルは小さく息をついた。「あんたの夢が呼び寄せたのね」

マンウォル「麻姑神から受け取ったの」
チャンソン「夢で見たときは、血なんてついていませんでした」
マンウォル「私の剣で死んだ… そう言ったでしょ」
チャンソン「!」
マンウォル「この血は私にまつわる恨みで満ちているわ」
チャンソン「そんな不吉なものを、麻姑神はなぜ渡したんです?」

「ください。僕が持っています」チャンソンが手を伸ばす。
マンウォルは彼をちらりと窺い、手を引っ込めた。「これは私が始末するわ」

マンウォル「血に染まった月なら… 始末しないと」
チャンソン「!」
マンウォル「麻姑神がいつも言ってるでしょ。月に満ちた恨みを… 解けと」
チャンソン「出来るそうですか?」
マンウォル「やらないと。血に染まった月を…呼び寄せてみるわ」

+-+-+-+

チャンソンは死神に呼ばれ、トンネルの前に来ていた。

死神「そなたを呪っている怨霊を探しあてた」
チャンソン「ソル・ジウォンですね。あいつの望み通り、より強い怨霊になったんですか?」
死神「根拠もない恨みを糧にする怨霊が、望み通り強くなると思うか。ただ、ドブネズミの如く暗闇に潜むのみ」
チャンソン「それは良かった」
死神「隠れるばかりで、出てこないのだ。そなたの力を借りたい」
チャンソン「?」
死神「囮役が上手いと聞いてな。推薦者が誰なのかは言うまい」

「キム・ソンビさんですね」チャンソンの言葉に、死神がぎゅっと唇を噛みしめる。

チャンソン「業務能力を同僚に高く評価されたのだと思うことにしましょう」
死神「これまで数多くの支配人がいた」

「そなたはその中でも…」死神はチャンソンに向かって、高々と人差し指を上げる。

死神「私の評価だ」
チャンソン「それはどうも」

死神は満足げにトンネルへ向き直った。

チャンソン「あなたは月の宿屋に最初からいらっしゃったのですか?」
死神「如何にも。数多き亡者たちをここからあの世へ導いた」

チャンソンは先日出会った不思議な麻姑神の言葉を思い浮かべる。
最初のお客様を大切にしろと、そう言われたのだ。

チャンソン「最初のお客様は誰だったのですか?」
死神「?」
チャンソン「ある麻姑神がおっしゃったんです。最初のお客様が一番重要だと」
死神「ここの最初のお客は、まだホテルにいる」
チャンソン「!」
死神「ここにいる誰もが、そのかすかな光に気づいてもいない」
チャンソン「お客様なのに、あり得ません」
死神「私は答えをもたらす存在ではない。終わりへと導くだけだ」

「まずは」死神はどこか楽しげにチャンソンをみた。「怨霊を捕らえに行こう」

+-+-+-+

血に染まった満月の装身具を手に、1000年前の自らと向き合っていた。
彼女がいるのはソル・ジウォンのワインバーだ。

マンウォル「月の印があるから、あんたにあげようと思っていたのは確かね。貰ってさぞかし嬉しかったでしょうよ。私、そんなあんたが一番おぞましいわ」
過去のマンウォル「…。」
マンウォル「あの男が現れたら、あんたという地獄に投じて、一緒に消滅させるつもりだった」

マンウォルは虚しく視線を逸らす。「神の策略で出来なくなったわ」

マンウォル「皮肉なことに… また人を愛してしまったから」
過去のマンウォル「…。」
マンウォル「その愛を頼りに、あんたのこと見て見ぬ振りしようとしていたのに… 何が何でも私を引きずり込むつもりね」
過去のマンウォル「…。」
マンウォル「あんたをこの装身具に込めて、ここにある“屑かご”に放り込んでやるわ。思う存分暴れてちょうだい」
過去のマンウォル「!」
マンウォル「そうして私たち… 一緒に消滅しましょ」

目の前でじっと彼女を見つめていた“過去のマンウォル”が、悪霊へと姿を変えていく。
それを確かめると、マンウォルはバーの奥にある暗がりへ向かった。

マンウォル「ソル・ジウォン、出て来なさい。ここに隠れてるのはわかってる。死神が来るらしいわ」

カーテンの向こうの闇の中から、ソル・ジウォンが顔を見せる。
その訝しげな表情に、マンウォルは小さく微笑んだ。「いたわね」

ジウォン「…。」
マンウォル「偉そうなこと言ってたくせに、随分弱々しくなったのね」

「あんたにくれてやるものがあるの」そう言って、マンウォルは血に染まった装身具を差し出した。

マンウォル「これを喰らいなさい。そして… 悪霊になるのよ」

ジウォンは血に染まった装身具をさっと掴んだ。

+-+-+-+

マンウォルに遅れて、死神とチャンソンもジウォンのワインバーに到着した。

チャンソン「結局は自分のいたところに潜んでいたんですね」
死神「闇の中にいる。お前に気づけば出て来るだろう」

「?」カウンターのスツールに腰掛けているマンウォルに気づき、チャンソンはハッと表情を変える。「あなたも来ていたんですか」

マンウォル「先に来てたの」
チャンソン「もう捕まえたんですか?」
マンウォル「放してやったわ」
チャンソン「?」
マンウォル「あんた、危ないわよ。あいつにスペシャルな贈り物をしたから」

彼女の意図を理解できず、チャンソンは身をこわばらせる。

マンウォル「死神も本気で捕まえないと。あいつ、すごく強力になって、大暴れするかもしれないわ」
死神「…。」
チャンソン「何をするつもりなんです?」
マンウォル「ク・チャンソン、麻姑神にあんたがあの男だって言われたわ」
チャンソン「!!!」
マンウォル「あんたを殺さなきゃいけないけど…殺せない。すごく好きだから」
チャンソン「…。」
マンウォル「だけど、守るつもりもないわ。殺してやろうと1000年以上待っていたのに、いまさら守ってあげたりしたら、私の恨みがあまりに馬鹿みたいだもの」

「あの怨霊が悪霊となれば、力を与えたお前も消滅することになろう」死神が言う。

マンウォル「構わないわ」
チャンソン「!」
マンウォル「麻姑神たちはあんたのこと気に入ってるから、悪霊に殺される前に助けに来るはずよ」
チャンソン「そして、あなたは消滅すると?」
マンウォル「私は結局あんたを利用した。こんなのが愛だなんて、悲しいわね」

愕然としているチャンソンの前を、マンウォルはすっとすり抜けた。
慌てて追いかけたものの、彼女の姿はもうそこにはない。

チャンソン「…!」

+-+-+-+

デルーナに戻ってみると、ホテルの中は真っ暗になっていた。
明かりがすべて消えており、職員たちはろうそくを手に集まる。

ソンビ「チャン社長に何かあったのか?」
チャンソン「誤解があるようです。今どこに?」
ソヒ「月霊樹の庭園に向かいました。入り口が塞がれていて、誰も入れません」
チャンソン「…。」

++-+-+

チャンソンが訪ねたのは、麻姑神の薬房だ。
いつも静かに薬を仕込んでいる2番めの麻姑神がいた。

チャンソン「本当なんですか?」
麻姑神(薬房)「?」
チャンソン「僕はチャン・マンウォルさんがあれほど憎んでいた… あの人なんですか?」
麻姑神「姉さんがそんなことを言うはずはないわ」

「そやつは… ここにいるから」そう言って、彼女はゆっくりと視線を移し、そばに置いてある瓶を見た。
中で、ホタルが仄かに光っている。

チャンソン「!」
麻姑神「君も会ったことがあるはずだ」

そうだ。
チャンソンはデルーナでこのホタルを見たことがある。

窓ガラスをなんなく通り抜け、すっと消えたと思ったら、人間のシルエットが浮かび上がったのだ。

チャンソン「これが… あの人だなんて!」
麻姑神「こやつが月の宿の最初の客だ」
チャンソン「!… チャン・マンウォルさんのところへ連れて行きます」
麻姑神「チャン・マンウォルの消滅を阻止することが先ではないか」
チャンソン「!」
麻姑神「チャン・マンウォルが悪霊に渡したものを探しなさい。あやつが事を起こせば、取り返しがつかぬ」

+-+-+-+

ソル・ジウォンは再び得た力で悪巧みを働こうとしていた。
最後に殺した女性の夫に取り憑き、職場に火を放とうとしたところを、チャンソンが発見する。

ジウォン「来たか」
チャンソン「…。」
ジウォン「少し遊んでから会いに行くつもりだったが、急いでるようだな。どうやって見つけた?」
チャンソン「あの装身具の持ち主のおかげだ」

「あぁ、これ?」ジウォンが手に持った満月の装身具を掲げてみせる。

チャンソン「取り返しに来た。返してくれ」

「どうやって?」ジウォンがにやりと笑うと。「お前はその前に死んじまうのに」

チャンソン「!」

+-+-+-+

月霊樹の庭園にいるマンウォルの前に、麻姑神がやって来た。
霊を裁く、死の麻姑神だ。

死の麻姑神「結局こうして会うことになるとは」
マンウォル「…。」

+-+-+-+

懸命に戦うも、新たな力を得たジウォンの前に、生身のチャンソンは全く歯が立たなかった。
それでも立ち上がるチャンソンに、ジウォンは笑う。「まだやるつもりか」

ジウォン「いつまで耐えられるかな」
チャンソン「時間を稼いでいたんだ」
ジウォン「?」

「もういい頃だ」チャンソンは空を見上げる。「月が出て来たな」
雲が流れ、月が顔を出そうとしていた。

チャンソン「彼女が理由もなくお前に装身具を渡したと思うか?彼女は俺を守ると言ったろ」
ジウォン「…?」
チャンソン「そこに満月の印があるだろう。月が姿を現せば、それを持っているお前はおしまいだ」
ジウォン「出まかせを言うな!」
チャンソン「死んでも終わらないと言ったろ。俺は止めた。お前は死を選んだが」
ジウォン「…。」
チャンソン「お前を待っているのは、もっと惨い地獄だ」

「じゃあな、ソル・ジウォン」チャンソンが別れの言葉を吐く。
ジウォンが満月の装身具を投げ捨てると、チャンソンがすぐさまそれを拾い上げた。
「騙したのか!」ジウォンがチャンソンの首を締め上げる。

チャンソン「うっ!」
ジウォン「黙って死ね!」
チャンソン「騙してなんかない。お前は本当におしまいだ」
ジウォン「?」

そのときだ。
向こうから黒マントに身を包んだ3つの影が近づいてくる。
ソンビたちだ。

ソヒ「私も以前は髪を振り乱し、鬼哭の声を上げたものだ」
ソンビ「3人合わせて770年。死んで間もないひよっこが調子に乗りおって!」

#さっぱりわからんが、突っ込んじゃいけない演出。

「装身具を持って、早くホテルへ」ソヒに促され、チャンソンはその場を急いで離れた。
3人にジリジリ追い詰められたジウォンは、逃げようとした拍子に今度こそ死神に捕らえられる。

死神「私が捕まえた」
ソンビ「捕まえたも同然だったじゃないか」

+-+-+-+

月霊樹の前で、死の麻姑神が裁きを下そうとしていた。

麻姑神「怨霊に力を与え、悪霊にしようとしたのだ。見過ごすわけにはいかぬ」
マンウォル「私の根底にある一番悲惨な地獄… 悪霊にくれてやったわ」
麻姑神「ならばここにいるお前は何だ?」
マンウォル「…。」
麻姑神「再び流れ始めた時間の中で、芽を出し、花を咲かせ、散っていく… 悲しい月なのか」

「…消滅させてちょうだい」マンウォルは力なく言い捨てた。

麻姑神「!」

そこへチャンソンが飛び込んできた。「駄目です!」
「取り戻しました」チャンソンは満月の装身具を差し出す。

チャンソン「(麻姑神に)もう消滅させる理由はありません。帰ってください」
マンウォル「(麻姑神に)黙って消滅させて!」
チャンソン「!」

マンウォルとチャンソンの視線がぶつかりあう。

チャンソン「わかりました。消滅すればいい」
マンウォル「…。」
チャンソン「そんなに地獄にいたいなら、僕がそっちへ行きましょう。僕があの人になってあげますよ」

チャンソンは満月の装身具をマンウォルの手に握らせる。

チャンソン「僕を殺してください」
マンウォル「!」

彼女が見つめると、装身具は短剣へと姿を変えた。

チャンソン「死んでもいいという決意で、そばにいると約束しました」

強い視線が、無言のまま混じり合う。
そして… マンウォルの手から滑り落ちた短剣は、地面に届いた瞬間元通りの姿に戻った。

チャンソン「あなたの待っている人は、ホテルにいます」
マンウォル「?」
チャンソン「ここまで耐えたんだから、血に染まった月に何があったのか、聞くといい」

「そうすれば、あなたの恨みを解くことができる」チャンソンはそう言ってマンウォルを励ました。

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「ここがあの世なのか?」ソル・ジウォンはデルーナに案内されていた。
悪霊と化していたときの恐ろしい形相は、すっかり消えている。

ソヒ「あなたの見るあの世は、このように素敵なところではないでしょう。旅立つ前に、会ってもらう方々がおられます」
ジウォン「俺が?」

「お客様がお待ちです」ソヒがある部屋の前で立ち止まった。

ソヒ「その方々のためのスペシャルサービスです」
ジウォン「地獄なのか?」
ソヒ「入ってみればわかりますわ」

中へ入ると、ジウォンはぎょっと身を固めた。
7人の霊が待ち構えていたのだ。

女性の霊「あんたが私たちを殺したときの最後の挨拶、覚えてる?」
ジウォン「…。」
女性の霊「Hello、ソル・ジウォン」

「わああああ!」扉の中から聞こえてくるジウォンの悲鳴に、ソヒは眉をひそめた。

ソヒ「防音工事が必要ね」

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ここで一旦区切ります。
14話は1時間31分ありまして、この時点でもう56分!^^;;;
今回、抽象的なセリフが多く、単語は簡単なのに解釈に悩んで、余計に時間がかかりました。

マンウォルの紆余曲折については、よくわからないですね。
長年の恨みをジウォンを悪霊にするエネルギーに使ってしまおうとしたのは、なぜなんでしょう。
ジウォンがどう行動するかによって、チャンソンの安否が全く変わってしまうのに、なぜ他人任せにしたのか、納得のいかないところです。
「私には殺せない。でも、守るつもりもない」というセリフ通りの選択だとは思うんですが…マンウォルらしくないというか、ちょっと悶々としたものが残ります。

 - ホテルデルーナ 〜月明かりの恋人〜