韓国ドラマから美しい言葉を学ぼう

引っ越し作業中です

ホテル・デルーナ1話あらすじ&一部日本語訳

   

IU(イ・ジウン)、ヨ・ジング主演のtvNドラマ『ホテル・デル・ルナ(ホテル・デルナ/ホテル・デルーナ)』が面白いので、ぼちぼち追っていきます。
先日からPCが不調ですぐに激重になることもあり、セリフや会話を訳すのは重要な箇所&訳したい部分だけ。
あとはザックリで行きますね。(←他の作品もそう言ってから始めるんだけど)

では、スタート♪

月の宿

女武者マンウォルは、自らが殺めた死者たちの霊を弔ってくれる『月の宿』を探していた。
荒野を彷徨い歩くうち、彼女は不思議な老婆と出会う。

「月の宿は死者の集う場所だ。彷徨う亡者たちが自らやってくる」

いつの間にか、そこには彼女が殺めた人々の霊魂が集まっていた。

「この地だったのか…?人々を殺して悪鬼となり、自らの足で月の宿へたどり着いたというのか?」
「傲慢な愚か者。自己憐憫に陥った哀れな人間よ。自ら場所を見つけたのだから、罪を償うがいい」

マンウォルの目の前に突如として一本の樹木がそびえ立ち、血に染まった彼女の剣を飲み込む。
竜巻がやってきたかと思うと、あっという間に柱を組み上げた。
『月の宿』だ。

#思いっきり楷書フォント…^^;;; 筆で書くとかそればいいのに。

ホテル・デル・ルナ

1998年。
チャンソン少年の貧しい父は、息子の誕生日にプレゼント一つ買ってやれずにいた。
盗みを働き、警察に追われたチャンソンの父は、階段で足を踏み外して転がり落ち、偶然見つけたホテルに身を潜めることにする。

それが、死者を迎え入れるホテル、『ホテル・デル・ルナ』だった。
ホテルの中を迷い歩く彼を見かけた支配人が首をかしげる。

支配人「うちへ来るお客様ではないのに、迷い込んだようだな」
フロントマン「死者じゃないってことですか?」
支配人「社長に見つかったら死ぬぞ。早く追い出さねば」

+-+-+-+

隠れる場所を探すうち、チャンソンの父は静かな庭園にたどり着いた。
広い花壇を通り抜けると、青白い光の中に佇む一本の樹木を見つける。

すっかり朽ちたように見える樹木の枝に、青い花が数輪、頭を垂れていた。

「あ、花だ」

口元に笑みが滲む。
息子が言ったのだ。誕生日プレゼントは花でもいい、わざわざ買わずに、摘んできてくれればいいんだと。

「ちょうどいい。チャンソンに持って帰ってやろう」

何度もジャンプし、ようやく枝を掴み取った彼は、次の瞬間、樹木から放たれた風圧に吹き飛ばされた。

「わぁ!」

そこへやってきた女が、彼をハイヒールで踏みつけ、冷たく見下ろした。
ホテル・デル・ルナの女主人、チャン・マンウォル社長だ。

マンウォル「痛みを感じるってことは、こいつ、まだ生きてるのかしら」
チャンソン父「あんた、何だよ?どいてくれ」
マンウォル「盗みを働いたわね」
チャンソン父「ここじゃやってない!」

「じゃあこれは?」マンウォルが彼の胸元をつま先で突く。
ホテルの廊下に飾られていた『金の蛇』がスルリと顔を出した。
廊下を通りがかったとき、彼は金の蛇に心惹かれたのだ。

チャンソン父「そ、それは!」
マンウォル「盗もうとしたでしょ。噛まれて死にたい?」

「すみません!」チャンソン父はひざまずいた。「許してください!死にも値する罪を…」

マンウォル「じゃあ、死んでよ」
チャンソン父「い、いやいや!今、死ぬわけにはいきません」
マンウォル「どうせいつかは死ぬのよ。ここへ来たついでに死ねば?」
チャンソン父「?」
マンウォル「気づいてないみたいだけど、もう死にかけてるわ」

その瞬間、彼の体がみるみるうちに透け始める。「わぁ!どうなってるんだ?」

チャンソン父「死ぬわけにはいかないんです!助けてください!息子が待ってるんですよ!」
マンウォル「可哀想に」

マンウォルはふと、足元に転がっている青い花に目を留めた。「何?これ」

チャンソン父「今日は誕生日だから、花がほしいと息子が言ったもんで、木に手を付けたんです」
マンウォル「…?この木、花なんか咲かないわ」
チャンソン父「間違いなくこの木に咲いていたんです!他は触ってもいませんよ」

マンウォルは訝しげに木を見上げた。「この人間に花を咲かせ、枝をくれてやったと?助けてやれってことかしら…」

マンウォル「息子の誕生日プレゼントですって?」
チャンソン父「出来の悪い父親には勿体ない、利口で善良な孝行息子なんです」
マンウォル「…。」
チャンソン父「許してくだされば、愚かな真似はやめて、しっかり息子を育てます!」

「えぇ、いいわ」マンウォルはニッコリと微笑んだ。

マンウォル「助けてあげる」
チャンソン父「ありがとうございます!」
マンウォル「戻って、息子をしっかり育てなさい。育てて… 私にちょうだいな」
チャンソン父「え?」
マンウォル「父親を助けてもらったら、息子が恩を返さなきゃ。まだ子どもなのよね?あと20年は育てないと。そうしたら、息子を私に渡すと約束して」
チャンソン父「うちの息子を?」
マンウォル「嫌なら、あんたは今夜死ぬのよ」
チャンソン父「!」
マンウォル「さっさと決心なさいな。あと何分も生きられないわ」
チャンソン父「あ… 俺が死んだら、チャンソンは一人ぼっちなんだ…」
マンウォル「どうすんの?息子を私に渡すか、それとも… 死ぬか」

「約束します!助けてください!」チャンソン父は思わず叫んだ。
「OK」マンウォルが彼の頭に手をかざす。「20年後、息子を迎えに行くわ」

チャンソン父「!」
マンウォル「行きなさい」

+-+-+-+

救急救命室のベッドの上で、チャンソン父がハッと目を開けた。
止まっていた心電図が再び動き始める。

チャンソン父「…チャンソン」

本日の霊:女性警察官の執念

漢江で遺体となって発見された女性警察官の霊魂が、ホテル・デル・ルナを訪れていた。
潜入捜査中に正体がバレて、殺されたのだ。
「お気の毒に」淡々と面談をしているのは、主のマンウォルだ。

マンウォル「正義あふれる死に方をなさったんですから、あの世へいらっしゃる際はきっと特急リムジンが提供されますわ。何日かゆっくりなさったら、乗っていらしてくださいな」
女性警察官「このまま行くわけにはいきません」

「皆さんそうおっしゃいます」マンウォルは微笑む。「どういたしましょう。復讐をお望みで?」

マンウォル「復讐といっても、命まで奪うことはできません。少し苦しめることは出来ますが、それが罪となって、あなたの来世にダメージを与えます。素晴らしい条件で生まれ変わることが出来るのに、終わってしまった現世の恨みを晴らしたせいで、犬豚になって生まれ変わる可能性もあるんですよ。よくお考えになってください」
女性警察官「復讐したいのではないんです」
マンウォル「?」
女性警察官「私が追っていた男は、人間の法じゃ捕まえることが出来ません。だから… 捕らえたいんです」
マンウォル「実に責任感あふれる方だこと。現世に関するサービスについては、現世のお金で支払っていただく必要があります。現世に隠し持っていたお金でも?」

女性警察官は静かに頷いた。
「どのようにいたしましょう?」マンウォルが眼鏡を外し、愛想よく微笑みかける。

後頭部のパックリ割れた傷に指を差し込むと、女性警察官はそこから銃弾を取り出し、マンウォルに差し出した。

+-+-+-+

ポムチョン市の“革新的成長を遂げた経済人賞”授賞式の席で、パク・ギュホ市長が壇上に上がっていた、
受賞者の名前が呼ばれ、歓声が上がる。
市長が賞状を手渡したそのとき、キーンと不快な音を会場を包んだ。

後ろの扉が開き、登場したのは、ライフルを担いだマンウォルだ。

市長「あの女、何だ?」

人々は揃って首をかしげる。
マンウォルの姿は市長にしか見えていないのだ。

市長「銃を持った女が歩いてくるじゃないか!じっとしてないで捕まえろ!あそこで銃を持ってるじゃないか!」

マンウォルは表情ひとつ変えず、市長に向かった銃を構え… 引き金を引いた。
銃弾がまっすぐに市長の胸を貫く。「ああっ!」

市長「撃たれた!」
人々「?!」
市長「あの女が私を…」

まさかと思い覗いてみると、市長の胸には傷一つない。

市長「何だ?間違いなく撃たれたんだが」

市長は背後に女性警察官の霊が立っているのに気づいた。「うわぁ!イ刑事!君、死んだはずだろ」
女性警察官はゆっくりと市長に詰め寄る。

市長「来るな!来るな!」

後ずさりした市長は壇上から転がり落ちた。

市長「(受賞した企業の社長に)イ刑事は処理したんだよな?キム代表」
キム代表「市長、どうなさったんですか!しっかりなさってください!」

記者たちのカメラが二人を取り囲んだ。

+-+-+-+

ホテルへ戻ったマンウォルは、美味しいシャンペンに興じていた。
女性警察官の言葉通り、駅のロッカーから財宝が見つかる。
捜査の過程で手に入れた密輸品のようだ。

目を輝かせるマンウォルだったが、ノ支配人は「借金の返済に必要です」と大部分を手元に残した。
車に、ファッションに、シャンペンに… マンウォルの散財に借金がかさんでいたのだ。
さらにノ支配人は、残りの財宝を将来支配人を継ぐ人間への先行投資に充てるよう、勧めた。「20年分の養育費をこれで送っておきます」

彼女は毎年その子の誕生日に花を贈るよう指示した。
約束を忘れさせないためだ。

マンウォル「月見草がいいわね」

お迎えが来た!

2019年、麗しき青年となったク・チャンソンが、シンガポールから韓国へ帰国した。
韓国のホテルにスカウトされたのだ。
これまで誘いを断ってきた彼がすんなり応じたのは、“20年が過ぎたから”だった。
20年経つまでは決して韓国へ戻らないと、父と約束していたのだ。

ホテル社長への挨拶を済ませたチャンソンを、秘書が案内する。「ソウルでのお住いは?」

チャンソン「しばらく友人の家に泊まることに」
秘書「それで誕生日プレゼントがこちらに届いたんですね」
チャンソン「!」
秘書「おめでとうございます。今日、お誕生日なんでしょう?プレゼントはフロントに預けておきました」
チャンソン「あの… プレゼントってひょっとして」
秘書「花でしたよ。なんていう花だったかな?」
チャンソン「きっと… 月見草です」

++-+-+-+

届いた“月見草”には赤いカードが添えられていた。
Hotel del Lunaとある。

ク・チャンソン様

貴殿が我がホテル・デル・ルナに採用されたことをお知らせします。
明日から出勤なさいますよう。

ホテル・デル・ルナ 社長 チャン・マンウォル

そこには地図も添えられていた。「明洞?」

+-+-+-+

チャンソンは花を小脇に抱え、地下鉄の駅にやってきた。
迷った末、花をゴミ箱に捨て、明洞行きのホームに背を向ける。

地下鉄の車内は思いの外混んでおり、やっとのことで隣の車両へ移動すると、彼はぎょっとして立ち止まった。
そこはガランとしていて、真ん中に真っ黒なドレスを着た若い女性が一人、座っているだけだったのだ。

女性… マンウォルは黙って彼を見つめた。
彼がゴミ箱に捨てた月見草の鉢を膝に抱えて。

逃げることはできない。
チャンソンは覚悟を決め、彼女の向かい側に腰を下ろした。「あなたですか。僕を買ったのは」
「ふっ」マンウォルが笑みを滲ませる。

マンウォル「覚悟はできてるようね。“どなたですか?”から始まると思ってたわ」
チャンソン「訊く必要はありません。父から聞いた姿そのままでしたから」
マンウォル「…。」
チャンソン「ホテル・デル・ルナのチャン・マンウォル社長ですね。誕生日ごとにその花を送ってきた…」
マンウォル「誕生日のプレゼント、毎回こんなふうに捨てたのかしら」
チャンソン「受け取るたびに不安だったんです。父の話は本当なのかと」
マンウォル「…。」
チャンソン「こうして迎えに来るんじゃないかと」
マンウォル「それで、あっちの国こっちの国と逃げ回ってたの?迎えに来られないように」
チャンソン「逃げ回ったのは確かだけど、本当に来るとは。昨年で終わったと思って油断していました」
マンウォル「それを狙って今年来たのよ。1年のんびりさせてあげたんだから、明日から働きなさい」
チャンソン「あなたは恐ろしい人だと、父に言われました。断ったら、僕を殺しますか?」

短い沈黙が流れる。

マンウォル「あんた、私のこと怖がってないわね」
チャンソン「…。」
マンウォル「確かに。あんまり美人すぎて怖くないでしょうよ」
チャンソン「認めますよ。ですから、このままお断りします」
マンウォル「ふふふ。花なんか贈るんじゃなかったわ。首のもげたカナリアにでもすればよかった」

刺すような視線がチャンソンを捕らえる。「!」
「今回のプレゼント、違うものにするわ」マンウォルは立ち上がり、ゆっくりと彼に詰め寄った。

チャンソン「あ、あなたは凄い存在だし、ホテルだって素晴らしいでしょうに、僕みたいに軟弱な人間を連れて行ったって役に立ちませんよ!」
マンウォル「…。」
チャンソン「僕のこと… 諦めてくれませんか?!」

マンウォルの手が彼の頬をスルリと撫で下ろし、顎をくいと上げる。

チャンソン「まさか… 僕を“首のもげたカナリア”にするつもりですか?!」

彼女はチャンソンの目にふぅっと息を吹きかけた。「心配しないで」

マンウォル「軟弱なク・チャンソン。(彼の首に手を)この首はちゃんとくっついてるわ」
チャンソン「僕に… 何を?」

「プレゼント」そう言ってマンウォルは微笑む。「誕生日おめでと」

マンウォル「今年はスペシャルな誕生日になるわ」
チャンソン「!」

電車が駅に着き、扉が開く。
「降りないの?」マンウォルの言葉で正気に戻り、チャンソンは立ち上がった。

チャンソン「…。」
マンウォル「まだ一緒にいたいの?」

一度は捨てた月見草の鉢を、彼は手にとった。

マンウォル「?」
チャンソン「プレゼントにもらった花、むやみに捨てたわけじゃありません。国を移動するとき農水産物の検疫があるんです」

スペシャルな誕生日プレゼント?

帰り道、チャンソンは不思議そうに目をこすった。「さっき、俺に何したんだ?」

チャンソン「俺を連れてってどうするつもりなんだ?オモチャにされるんじゃないか?!」

「あそこで死人を見たんだ。あの女に会ったら絶対逃げろ」父の言葉が思い出される。
急いで下宿先へ駆け戻ると、彼は荷物をまとめて飛び出した。

どうも目がおかしい…。
何度も目をこすった末、ゆっくり目を開けてみると、そこに大きなサングラスを掛けた女性が立っていた。

チャンソン「?」

+-+-+-+

「今頃プレゼントを受け取って、新たな世界に目覚めた時分かしら」ホテルの自室に戻り、マンウォルはニヤリとする。

ノ支配人「亡者たちが見えるようになれば、最初は戸惑うばかりでしょう」
マンウォル「乗り越えないと。ここで働くんだから、お客様が見えないとね」
ノ支配人「何も教えていないんでしょう?いきなり出くわしたら、驚いて事故に遭うかもしれません」
マンウォル「そうかな。びっくりして死なれたら困るわ」

+-+-+-+

タクシーがやってくるのが見える。
チャンソンは、隣に立っているサングラスの女性に声を掛けた。「僕のほうが先に来たんです」

チャンソン「タクシーが来たら、僕が先に」
女「!」
チャンソン「さっき、僕がここに立ってるのをご覧になってたでしょう?」

女がゆっくりと近づいてくる。

チャンソン「ご覧になって… たじゃないで… すか」
女「見てないわ」

「見えないの」そう言って女がサングラスを外すと…
目にパックリと穴があいているではないか!!!

チャンソン「あっっ!!!」

「今年はスペシャルな誕生日になるわ」マンウォルの言葉が頭をよぎる。
ようやくやってきたタクシーを前に、チャンソンは一目散に逃げ出した。

逃げても逃げても、なぜかサングラス女は追いかけてくる。
逃げ惑う彼をしばし見物したマンウォルは、十分楽しんだところで女の霊を彼から遠ざけた。

マンウォル「遠出でもするところ?」
チャンソン「えぇ」
マンウォル「今回のプレゼント、国境を超えても検疫には引っかからないの。捨てるのも無理よ。お気の毒様」
チャンソン「さっきの奇妙なもの、あなたが送ったんですか?」
マンウォル「ううん。送ったんじゃなくて、見せたの。今まで“居ても見えなかった”ものを、見えるようにね」
チャンソン「何を?」
マンウォル「幽霊」
チャンソン「!!!」

「なんてこった」チャンソンは両手で目を覆った。
彼の落ち込みようをヨソに、マンウォルはキョロキョロとあたりを見回す。「TVに出てた美味しい店がこの辺にあるの。せっかくだから行きましょ」

チャンソン「美味しい店?!」
マンウォル「行きたかったからちょうど良かったわ」
チャンソン「…。」

「行きましょ」地面に転がったチャンソンのスーツケースをコツンと蹴飛ばし、マンウォルはあるき出した。

チャンソン「あなたについて行かなかったら、さっきみたいなのが来て、僕を殺すんですか?」
マンウォル「死なないわよ。さっきみたいなのは人を殺す力もないわ。あんたの心臓が弱いせいで、ビックリして死ぬことはあっても」
チャンソン「…。」
マンウォル「(時計を見て)もうすぐ閉まっちゃうわ」
チャンソン「目を元通りにしてください!それまでどこにも行けません」
マンウォル「あんたのせいで店が閉まったら… あんたの目は閉じたままになるわ」
チャンソン「!!!」
マンウォル「永遠にね」

+-+-+-+

TVで評判の店で、マンウォルは満足げに饅頭をカメラに収めた。

チャンソン「僕、さっきみたいな恐ろしいものを今後も見なきゃいけないんですか」
マンウォル「さっきのはあんたの運が悪かったのよ。みんなあんなに怖いわけじゃないわ」

「あの子」マンウォルが後ろの席を指差す。
まだ幼い男の子の霊が一人で饅頭を頬張っている。「ああいう子はそんなに怖くないでしょ」

チャンソン「!」
マンウォル「チラッと見ただけじゃ、人間だと思って見過ごすくらいよ。ああいう子が大部分なの。怖がることないわ」
チャンソン「なんであんなのがここに?」
マンウォル「突然のことで自分が死んだのも気づかず彷徨うのもいれば、生前惹かれてた何かに執着して居座るのもいるわね」

「あの子は饅頭かしら」マンウォルは再び後ろの子どもを振り返る。

チャンソン「どうして僕にそんなものを?」
マンウォル「ホテルに来てみればわかるわ」
チャンソン「…。」
マンウォル「だからさ、素直に来ればあんな酷い目に遭わなくて済んだのに」
チャンソン「一番不思議なのはあなたです」
マンウォル「?」
チャンソン「どう見ても普通の人間のようですが、あなたも死人ですか」

「…。」マンウォルは深く息をついた。「私は死んでないわ」

マンウォル「死んでない、まだ。ただ“居るだけ”」
チャンソン「…“まだ”ということは、いつかは死ぬかもしれないということですか」
マンウォル「死ぬかもしれないなら、何?あんたが殺してみる?」

その軽い口調に、チャンソンは絶句した。「…。」

饅頭はとても熱く、マンウォルはまだ口をつけられずにいる。
彼女は器を彼に差し出した。「一口チャレンジしてみなさいよ。食べられたらチャンスをあげる」

チャンソン「僕はただ… 目の前から消えてくれればそれでいいんです」
マンウォル「…。」

軟弱な男

店を出ると、マンウォルは無理やりチャンソンにミルクティーを買いに行かせる。
物陰の怪しい人影に、彼女は気づいていたのだ。
チャンソンと入れ替わりに姿をあらわしたのは、20年前に彼女が破滅に追いやった元ポムチョン市市長、パク・ギュホだった。

パク・ギュホ「俺を撃ったろ。間違いなく撃ったよな」
マンウォル「犯した罪の分、醜く落ちぶれたわね。期待して。あの世はもっと悲惨だから」

パク・ギュホが胸から短刀を取り出す。「全部お前のせいだ」

マンウォル「…。」

「死ね!!!」パク・ギュホが渾身の力で短刀を彼女の胸に突き立てた。
醜い顔でヒィヒィと笑うパク・ギュホを、マンウォルはじっと見つめる。
かつてその手で人を殺めた自分の姿が、彼女の頭をかすめた。「…。」

そこへ戻ってきたのがチャンソンだ。
立ち去るパク・ギュホに目もくれず、彼はマンウォルに駆け寄った。「刺されたんですか?!」

マンウォル「人間ってどうして… 自分の過ちに気づかず他人のせいにするのかしら」
チャンソン「大丈夫なんですか?!」

マンウォルは去っていくパク・ギュホの方へ、ゆっくりと視線を移した。「あの醜い老人を笑うことは出来ないわ」

マンウォル「私もあんなふうに気が触れて、剣を持ち歩いてた」
チャンソン「?」
マンウォル「ク・チャンソン。さっきの一口チャレンジは失敗だったけど、チャンスはあげる。逃げたいなら、行っていいわ」
チャンソン「…。」
マンウォル「今、背を向ければ、望み通り私はあんたの前から消える」
チャンソン「…。」
マンウォル「行きなさい」

「…。」戸惑うチャンソンを見上げ、マンウォルは静かに息をついた。「今、行かないと手遅れになるわよ」
チャンソンはゆっくり後ずさると、クルリと背を向け、全速力で駆け出した。

マンウォル「…。」

#美しすぎてこの世のものとは思えませぬ

静かさの中にポツンと取り残されたマンウォルは、そっと目を閉じる。
しばらくして…
また足音が近づいてきて、彼女は目を開けた。

チャンソンが荷車を引いて戻ってきたのだ。

#走り方が可愛いったら♪

マンウォル「何よ?」
チャンソン「これに乗ってください」
マンウォル「!」
チャンソン「病院でもデ・ルナとかいうところでも、連れて行きますから」

「早く行きましょう」チャンソンが助け起こそうと伸ばした手を、マンウォルは払いのけた。「なぜ?」

チャンソン「おぶって走る力なんてないんです。汚くありませんから、ここに乗ってください」

そう言って荷車を振り返ったものの、荷台はゴミだらけだ。
チャンソンは急いで荷台のゴミを払い、ポケットから取り出したハンカチを広げた。「ここに…」
顔を上げると、胸に短刀の突き刺さったまま、マンウォルが立ち上がっている。「!」
彼女は涼しい顔で胸の短刀を抜いた。

チャンソン「なんともないんですね?」
マンウォル「ク・チャンソン、あんたって本当に… 軟弱ね」

そう言って、マンウォルは微笑んだ。

マンウォル「荷車を引いて走ってきたあんたの軟弱っぷり。と~っても気に入ったわ」
チャンソン「刺されても死なない立派な御仁に、軟弱な人間が余計なことをしましたね」

「それでは僕はこれで」チャンソンは背を向けた。

マンウォル「行かせないわ」

彼女は胸に刺さっていた短刀をおもむろに取り出すと、手のひらの上でクルクルと翻す。

チャンソン「あなた… 本当に僕を?!」

静かに念を込めると、マンウォルはその短刀を素早く手のひらから繰り出した。
目にも留まらぬ速さで飛んでいった短刀は、チャンソンの横をすり抜け…
逃げていくパク・ギュホの胸を貫いたではないか!
驚くチャンソンの目の前で、パク・ギュホの姿は砂のように崩れ、消え去った。

マンウォル「あんた、最後のチャンスを逃したのよ。今から逃げ出したら… 殺すわ」
チャンソン「!!!」

+-+-+-+

1話はここまでです~。
いやぁ、しょっぱなから面白かったです。
とりあえず、IUちゃんの美しいビジュアルを見るだけでも十分見る価値があるんじゃないでしょうか。
1話だけで何回着替えたんでしょ。
高飛車な態度にクルクルと変わる表情。キャラも魅力的ですよね。
振り回されるジングくんの狼狽っぷりも可愛くて可愛くて♪

長らくドラマを見ていなかったんですが、久々に楽しみができて嬉しいです。

 - ホテルデルーナ 〜月明かりの恋人〜

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