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マンホール-不思議の国のピル3話あらすじ&日本語訳vol.1

   

ジェジュン(JYJ)、ユイ、チョン・ヘソン、バロ(B1A4)出演のKBSドラマ『マンホール 不思議の国のピル』3話のあらすじを、セリフの日本語訳やちょっとした感想も混じえながら紹介していきます。

1話では先の見えない公務員試験浪人だったピル。
スジンの結婚式を目前にして、ずっと告白できずにいたことを後悔した彼を、マンホールが10年前に連れて行きました。
10年前、決闘を挑んで完敗した”教会オッパ”なる人物に、今度こそ見事リベンジを果たしたのですが…。

さっそくGo~♪

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0時の鐘と共に再びマンホールの外へ吐き出されたピルは、過去へ旅立つ前とはまるで様子が変わっていることに驚愕した。
自分の首には金のネックレスが光り、腕の入れ墨は… どうやら本物だ!

ピル「この町、何でこんなになっちまったんだ?」

荒れ放題の周囲を見渡すピルに、見知らぬ若者がビクビクしながら挨拶をして行く。
「待てよ?今日は何日だ?」ポケットを探ると、出てきたのはロトくじのレシートに借用証書。

※借用証書には、借入金5億ウォン、借入日が2016年8月9日、元金返済日が2017年8月9日とあります。債権者はピ・マンドゥク。一瞬しか映りませんが^^

ピル(心の声)「(取り出した携帯を見て)2017年ってことは、また戻ってきたってことか?けど、俺の知ってる俺じゃないんだけど…」

彼は途方に暮れ、乾いた笑い声を上げた。

3話『現在は過去が創るものだ』

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過去へ旅立つ前…。
ピルは結婚を前にしたスジンに”大事な話”をしようとしていた。
どうしても言い出せず、ピルは彼女を残してその場を離れたのだ。

「…。」ピルは横目でマンホールを見つめた。
はぁ、ついさっきのことなのに、10年も経っちまったのか…。

そこへ熱心に話しながら横を通り過ぎたのは…?
ピルはハッとして追いかけた。「父さん、母さん!」

父「こういうのはやめようと言ったろ。父さん?母さんだって?」
ピル「?」
父「親子関係は全部忘れると約束したろ!いきなり何だ?」
母「かつて目の澄んでいたあの子のことは、もう私たちの胸に葬ったの」
父「(胸をおさえ)ここにいるさ、7歳の美しい姿のまま」
母「頼むから警察に捕まっても家族だなんて言わないでちょうだい。たびたび出入りするもんだから、警察署の内部構造にすっかり詳しくなっちゃったわよ!」
父「(妻に)全て忘れることにしたのに、なぜそう感情的になっているんだい?」
母「ごめんなさい、あなた。今日、掃除していて爪が剥がれてしまって… 少しナーバスになってるわ」

「…。」ピルは黙ったまま両親を見比べた。

父「(ピルに)私たちはこの落ちぶれた町をじき出る。もう会いに来るな」
ピル「…。」

ピルを残し、両親は躊躇もなくその場を後にした。

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町を歩いてみて、その想像を絶する荒れ具合に、ピルの溜息はさらに深くなった。
建物はどれもこれもボロボロで、犯罪が横行している。
商店街に転がったゴミを、ピルはたまらず拾ってゴミ箱へ入れた。

ふと気づくと、そこは…?

ピル「ん?ここってダルス兄の店だ。どうなってんだ?」

元の姿を留めているのは看板とドアくらいのもので、中は入ってみると、そこは完全に廃墟だ。「何でこんなになっちまったんだ?」
「兄貴!ダルス兄!」ピルの呼ぶ声に、窓際で何かがむくりと起き上がった。

ピル「わっ!」

酒瓶の向こうに見えたのは、けむくじゃらの男だ。

ピル「ど、どなたです?」

「どなたですか?」男が弱々しい声で訊き返す。
「タ、タルス兄?」ピルは男の顔を覗き込み、目を丸くした。
「あぁ、ポン・ピル」嬉しそうに歯を見せたタルスの変わり果てた姿を、ピルは思わず指差して笑った。

ピル「兄貴、何でこうなっちまったんだ?」

「どこで間違ったのか自分でもよくわからない」タルスが淡々とつぶやく。「それがわかれば人生こうなっちゃいないだろう」

タルス「何の用だ?」
ピル「あぁ、兄貴、俺ちょっと変なんだ。ここへ来る途中で喧嘩になったんだけど、俺、飛んできた拳を勝手に避けてさ、”警察”って言葉にビクッとするんだ。父さんと母さんは俺に変なこと言うし。俺のこと人間扱いしないんだから」
タルス「3年ぶりに現れて、なぜそれを俺に訊くんだ?」
ピル「3…?兄貴、俺の来たのが3年ぶりだって?」
タルス「あぁ」
ピル「そ、それじゃ俺、今どこに住んでるんだ?」
タルス「俺にもよくわからないな。あぁ、風俗街に住んでるってソクテが言ってたっけ」

「…。」ピルは絶句した。「兄貴、俺さ、何でこうなったんだ?」
「!」タルスが力強くピルの肩を掴む。「ようやく血と拳、それに悲鳴だらけの人生を後悔しているのか?!」

ピル「何言ってんだ?わかるように説明してくれよ」

「OK」タルスの目に俄に力が宿った。「Ready, Action!」

タルス(語り)「教会での血闘の後、お前は停学、陸上部も退部。有頂天になった。調子に乗ったお前は、ここらで腕っ節の強いヤツらを片っ端から倒していったんだ。まるで血に飢えた夜叉のようにな」

#何で柔道までやってんの(笑)

タルス(語り)「そのうち、お前に脅威を感じた町のヤクザたちが、自分のテリトリーへ入ってきたニューフェイスのために”パーティ”を用意した。だが、そのパーティを楽しんだのは、たったひとり。お前だけだった。良かったのはそこまでだ。事件の中心となったお前は、1級指名手配に指定された。公共の敵になっちまったんだ。”パブリック エネミー”」

「俺に前科が?」到底信じられず、ピルは頭を抱えた。「気が狂いそうだ」

ピル「つまり、俺がヤクザ者になっちまったって?」
タルス「教会での血闘後だ。どうして今さら急に…?」
ピル「…。」
タルス「自己否定だな!自己否定!否定していいんだぞ、続けろよ、好きなだけ」
ピル「スジンは?」
タルス「スジン?あいつは来週末結婚するじゃないか。それがどうした?」
ピル「どうしたって…?」
タルス「どうかしたか?」
ピル「俺がスジンのこと好きだから。知ってんだろ」
タルス「お前が?何で?」

「何でって」ピルは途方に暮れて思わず笑い声をあげた。

タルス「お前ら高校以来会うことも無かったぞ」

「…。」ピルは悟ったように立ち上がった。「全部変わったんだ」

ピル「高校ん時、教会男を殴ったせいで、現在が変わっちまったんだ!」

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ピルがやって来たのは、ソクテと並んで勉強していた自習室だ。「おい、ソクテ?」
彼の席は空だ。
「こいつ、一体どこ行ったんだ?」椅子を叩いた瞬間、隣の席の男がビクリとして振り返った。
その顔はひょっとして… 教会男?!

ピル(心の声)「こいつ何でここに?」
教会男「ソクテさんならさっき出ていったけど」
ピル(心の声)「何だこいつ?」

「おい、お前ここで何してんだ?」ピルは思わず教会男に詰め寄る。

教会男「何って勉強ですよ…」
ピル「何でお前が柄にもなく勉強なんか?人でも殴ってろよ」
教会男「勉強しなきゃ、まともな人間になれませんから」

「?」ピルは男の広げていた参考書に気づく。「何だ?俺の席で俺の勉強してるじゃないか」

教会男「警察官になる夢を叶えるのは簡単じゃない」
ピル「(呆れて)何が警察だよ?ゴロツキみたいなヤツが」
教会男「かつてはそうでしたよ。10年前に(ピルを指し)出会うまでは」
ピル「…?」
教会男「あの夜、僕は悟りを得たんです。いわば(ピルを指し)救ってもらったようなものです」

”こいつの人生と入れ替わったのか”ピルは心の中で叫んだ。くそったれ…!

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スジンの両親が営む不動産店に客はいない。
そこへ入ってきたスジンは、疲れたようにソファに倒れ込んだ。

母「気に入った婚礼家具はあった?」
スジン「みんな同じよ。気に入ったのは高いし、ちょうどいい値段のは気に入らないし」
母「あちらのご両親、あんなに広い家を新居に決めなくてもよかったのに。婚礼家具で埋めようと思ったら破産だわ」
父「広々と使えばいいじゃないか。埋めることなんかない」
母「やれやれ、簡単におっしゃるのね。スジンがあちらのご両親に見下されるわ」
スジン「…。」

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薬局へやって来たスジンに、カウンターにいたジェヒョンが「いらっしゃいませ」と微笑んだ。「何をお求めですか?」

スジン「頭痛がして」
ジェヒョン「頭痛にも種類があるんです。偏頭痛なのか、緊張性なのか」

「はぁ」スジンは重い溜息をつき、頭に手をやった。「頭が痛くて」

ジェヒョン「頭?この辺?」
スジン「ううん」
ジェヒョン「それともこの辺?」

「ううん」スジンはジェヒョンの手を取り、自分の喉へ持っていった。「ここが痛いの」
「やめろ!!!」奥で先輩薬剤師が怒鳴り声を上げたのはその時だ。

薬剤師「おい、お店やさんごっこは楽しいか?ふたりとも出てけ!40を越えた独り者には人権も無いのか?!鳥肌が立つ。今すぐ出てけ!」

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「ピルが帰ってきた」震える手で酒瓶を握りしめ、タルスがボソッと言った。
「えぇ?!」一斉に声を上げたのは、ソクテにチンスク、クギル、チョンエだ。
彼らは、チンスクの移動販売車の前に並べたテーブルを囲んでいた。

ソクテ「ピルが帰ってきた?」
クギル「しばらく静かだったから、またムショに入ってるのかと思ってんだがな」

タルスが口に運ぼうとしている酒瓶を、チンスクが黙ってジュースのカップに持ち替えさせてやる。

ソクテ「警察は何やってんだ?町はどんどんメチャクチャになってるのに」
チンスク「ちょっと!あんまりじゃない?それでも一時はファミリーだったのに。ピルはね、心根の悪い子じゃないんだから!」
ソクテ「悪いよ…」
チンスク「悪くない!」
タルス「ピルが変なこと言ってた。人生がどうしてこうなったのかとか、スジンのことが好きだったとか」
チョンエ「何でスジン?頭おかしいわ。もうすぐ結婚するのに」
ソクテ「けど、ピルがスジンのこと好きだったのは確かだ」

「だってさ」ソクテが立ち上がる。「ガキの頃、お前スジンのこと好きだろって殴られたんだから!みんなだって10年前、教会で人を殴るの見たろ」

クギル「あぁ、完全にヤクザ者だ」
ソクテ「あいつガキの頃からそういう気質に溢れてた。あの教会の人、ホントいい人だったのに」

毒づくソクテの後ろに現れたピルの姿に気づいていないのは、ソクテ本人だけだ。

ソクテ「何回かムショ入りしないと目が覚めそうにないよ。まだまだマトモな人間にはなれないな」

ピルがソクテの肩を掴んだのはその瞬間だ。
「!!!」ソクテは後ろも振り向かず、わなわなと震えた。「いいいいいいや、俺が言ったのは…」

ソクテ「友だちのヨンピル、ヨンピルのことだよぉ」

ソクテはさっとピルに並ぶ。「ポン・ピルは穏やかでいいヤツだよ」
ピルはそれには何も言わず、ソクテが座っていた椅子に腰を下ろた。

「…。」誰も口を開かない。
黙り込む皆をジロリと見渡し、ピルが沈黙を破った。「みな集まって何してんだ?」

ピル「さっきクギル兄の店に行ったら閉まってた」

耐えられずにジュースを酒に持ち替えようとしたタルスの手を、チンスクがすかさずパシリと叩く。

クギル「あぁ… 店を閉めて別の仕事をしようかと思って」
ピル「お父さんが遺してくれたんだから、死ぬまでビリヤード場を守るって言ってたのに、何で?」
クギル「…。」

隣でチョンエがゴンとテーブルを叩いた。「私たちのことは放っておいてくれない?」
「久しぶりに会った友だちなんだから」クギルが慌ててチョンエを宥める。

「???」様子が変だ。ピルは首をかしげた。「ちょっと待てよ」

ピル「今、何て言った?」
クギル「ピル、こいつもともと口が悪いだろ。だから…」
チョンエ「(ピルに)何で私たちのことに口挟むのよ!」

ピルは口をポカンと開けたまま、虚ろな目をして酒をすすっているタルスを見た。

ピル「私たちのこと?」
チョンエ「それが何?クギルさんと私のことに口を挟まないでって言ったのよ」
クギル「(焦)やめろって…」

「お前らまさか!」ピルは目を丸くして立ち上がった。「お前、クギル兄と同棲…?」

ピル「仕事も一緒に?」
チョンエ「そうよ。それが何か?」
ピル「タルス兄はどうしたんだ?お前、タルス兄と一緒に働いて、同棲してたじゃないか!」

「何言ってんのよ!」チョンエもカッとなって立ち上がる。「何でタルスさんとくっつけるわけ?」

ピル(心の声)「どうなってんだ?チョンエはタルス兄と付き合ってなきゃいけないのに。(タルスを見て)あぁ、それでダメになっちまったのか」

「確かにチョンエは俺のことが好きだった」ぼんやりとタルスがつぶやく。「ラブレターも貰ったし」
「それは昔の話!」チョンエとクギルが声を揃える。

タルス「ハンバーガーだって奢ってくれたんだ」
チョンエ「最後の晩餐だったのよ」

やり取りを見て、じっと考え込んでいたチンスクが、皆を制した。「待って!」

チンスク「こういう変な感じ、前にもあったわ。高校の時」

「お前、タイムスリップって信じるか?」ピルが唐突にチンスクに尋ねた。
「俺がもし未来から来たとしたら…?」と。

チンスク「そのときもあんた、急に変なこと言ったのよ。10年前」

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いつもの屋上に場所を移し、ピルは言った。「それ、10年前じゃない。昨日のことだ」

チンスク「マンホールで過去に行ってきたって?」
ピル「説明のしようがないな…。なぁ、これマジで俺の人生じゃないんだ。よく知ってるだろ。いくらなんでも俺がヤクザ者になるなんてあり得ない」
チンスク「つまり、あんたがマンホールで過去に行って教会の人を殴ったから、現在のあんたの人生がこじれたって?」

#チンスクだけは賢くて先入観もなしに話を聞いてくれる、そんな感じでこれからも行ってほしいね。

「そういうことだ」そう言っておいて、ピルは溜息をつく。「俺だって信じられないのに、お前に信じられるわけないよな」
そこへ聴こえてきたパトカーのサイレンに、ピルは咄嗟に身を隠した。「うちの町、何でこうなったんだ?」

チンスク「風俗街が出来たからじゃない。あんただってそこに住んでるんでしょ?」
ピル「自分がどこに住んでるかもわからないんだ。10年前から今到着したばかりなんだから」

チンスクが考えを巡らせるように小さく頷く。「ピル、ひょっとして麻薬やってる?」
「あぁ!」ピルは絶望して叫んだ。「俺、こんなんでどうやって暮らしてんだ?」
混乱するピルを、チンスクはじっと見上げた。「嘘言ってる目じゃないけど…」

チンスク「何よ。スジンはあんたのせいですごく苦しんでたのに」
ピル「…何で?」
チンスク「何でって…。あの子のために喧嘩して退学になって、陸上部もクビになったせいで陸上もできなくなって。それでこんなふうに横道に逸れちゃったって。泣きわめいて大変だったわ」
ピル「スジンが俺のせいで苦しんでたって?」
チンスク「そうよ」

「ありがとな」ピルはチンスクの背中をポンと叩き、そこを後にした。

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スジンはアトリエで写真のチェックをしていた。
なかなか身が入らず、ダルそうにため息をつく。「ストックフォトなんかやめて、チラシでも撮らなきゃダメかな」
そこへ入ってきたのは…ピルだ!
スジンは言葉も出ず、ポカンと口を開けて彼を見た。「あ…ピル」

ピル「久しぶり」
スジン「ど、どうしたの?」

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ピルはアトリエを見渡した。「ここがごちゃごちゃしてるのは変わらないな」

スジン「こ、ここ?あんた、ここに来るのは初めてだけど…」

ピルは溜息をついた。「何でもない。話したところで変に思われるだけだ」

スジン「とにかく… 久しぶりね。元気だった?」

”昨日お前に叩かれた肩がまだヒリヒリしてるのに…” ピルは心の中で嘆いた。”久しぶりなもんか…”

ピル「俺たち、10年間… 一度も会ったことなかったのか?」
スジン「どういうこと?」
ピル「俺がこんなになっちまって、お前が… 何っつーか… えらく辛そうだったって」
スジン「あ、あぁそれ…」

「まぁ、そうね」思わず下を向いたスジンを、ピルが窺うように見た。「何で?」

スジン「私のせいでこうなっちゃったから」
ピル「…。」
スジン「もしかしたら、いい陸上選手になったかもしれないのに。あの喧嘩のせいでダメになっちゃった。私のせいで喧嘩して…」
ピル「そんならもっと親切にしてくれりゃよかったのに。人生棒に振らないように」

「だよね」スジンが悲しげに微笑む。「そうしてれば、あんたを止めてあげられたはず」

ピル「…。」

「ねぇ」スジンが気を取り直して顔を上げた。「覚えてる?高校の時、私、玄関の鏡を割っちゃったでしょ?」

ピル「…。」
スジン「そのとき、あんたが全部かぶってくれたのよ。”お前は行けよ。何ともないから”。あぁ、あのときちょっとカッコよく見えたわ」

楽しそうに語るスジンを、ピルはただ静かに見つめる。

#あぁたまらん(;´д`) ナンテカオスルンデスカ

ピルの視線に、スジンは我に返った。「私、何でこんなこと話してんだろ…」

スジン「笑っちゃうよね、昔の話なのに」

スジンの言葉が嬉しくて、それでもどう話していいかわからず、ピルは戸惑いながら口を開いた。。「あの喧嘩は陸上とは関係ない」

ピル「どっちにしたって陸上はダメだったんだ。はぁ、スタートが苦手なのに、足だけ速くてどうするんだ。だから、俺に悪いと思ったり、苦しむ必要なんかない。俺に才能がなかったんだ」
スジン「…。」

「それを言いに来た」そう結び、出ようとしてピルは足元の扇風機にぶつかった。「?」
折れた首がダラリとぶらさがった、無惨な姿だ。「ガムテープあるか?」

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扇風機の首を正しい位置に戻し、ピルはそれをガムテープでしっかり固定した。
スイッチを入れると、それは何事もなかったように回りだす。

スジン「わぁ!」
ピル「その代わり、首は回せない。固定で使いな」
スジン「ありがとう」

スジンの喜ぶ顔が照れくさくもあり、ピルはPCの写真を指差した。「写真、頑張れよ」

ピル「お前、写真撮るの上手いから。もともと絵のほうが上手かったのに… まぁ、絵も写真も同じだ」

「じゃあな」ピルはアトリエを出ると、柱の影にもたれかかり、開いたままのドアを振り返った。
嬉しそうに扇風機を見つめているスジンの姿が見える。

鏡を割ったスジンを庇った自分がカッコよかったと、その言葉が鮮明に蘇った。「それを他のやつに奪われるなんて!ずっと愛してたくせに!」

と、そこへふいに男が現れる。「愛ねぇ」

ピル「誰…?」
男「愛する女を前にして、その茶番劇みたいな現実を隠したいようだな」

”何だ?今度は”覚えのない男の顔を、ピルは慎重に窺った。

男「兄貴に言われて来たんだ」

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車で連れて行こうとする男から、ピルは懸命に逃れようとした。

ピル「待ってくれ!理由は?なぜなんです?」

「目覚めたら教えてやる」そう言って殴りかかった男の拳を、ピルはひょいひょいと難なくかわす。
右手がひとりでに動き、男の腹に軽くパンチを見舞った。「あれ?」
男が地面にすっかりノビてしまうまで、それはあっという間のことだった。

#この人、キルヒルでも同じような感じでやられてたよね。激しい既視感(笑)

「あああれ??」ピルはまるで自分のものではないように、自分の拳を見て驚愕する。「凄いぞ!才能発見だ」

その様子を目撃し、即座に通報の電話を掛けたのは、ソクテだった。「私は善良な市民ですが、うちの町でやくざ者が一人暴れてます。今すぐ公の権力を!」

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「兄貴って誰なんだ?」商店街を歩くピルを、人々が無言で避けて通る。「記憶がないのに分かりようがない」
ふと気づくと、そこはクギルの店の前だ。

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ビリヤード場では、チョンエとクギルが何やら揉めている様子だ。
ビリヤード用具を処分しようとするチョンエに、クギルが食い下がっていた。「ビリヤード台はダメだって!父さんの遺品なんだ!」

チョンエ「化粧品店をやるのに、ビリヤード台があったら変でしょ」
クギル「化粧品を買いに来て、ついでにビリヤードを1ゲームやって行くスタイルもいいだろ」
チョンエ「化粧品買いに来て、何でビリヤードやるのよ?!この石頭!」

言い争う二人を、タルスが為す術もなく見守る。

クギル「石頭なんて言うなって!何かあるとすぐ石頭だって…」

スティックを奪おうとして尻もちをついたチョンエに、ヨタヨタと立ち上がったタルスが手を伸ばした。「大丈夫か?」
「ひぃぃ」チョンエはここぞとばかりにタルスの胸に泣きついた。「私に石頭だってぇぇ」
「何でまたそっちに抱きつくんだ?」クギルがすかさず引き離す。「俺の前でタルスに抱きつくな」

ピルが入ってきたのは、そうやって3人がもみ合っていた時だ。「おい!」

3人「!」
ピル「焦れったいヤツらめ!お前ら何でこんなになっちまったんだよ?」

そう。
それは教会男を倒した直後だ。
男が起き上がり、振り下ろした角材から、クギルが咄嗟にチョンエを守ったのだ。

チョンエ「あのとき私、ホントどうかしてたのよ。目がくらんで、あれが愛だと思ったの」
クギル「そんなぁ」
ピル(心の声)「角材一発で人生がひっくり返るなんて…」
クギル「俺は今でも愛してるんだぞ」
チョンエ「うるさいわよ!ホント意地っ張りなんだから。ポン・ピル、あんたの言う通りよ。私はもともとタルスさんのこと好きだったんだから」
ピル「それなのに、何でクギル兄と一緒に住んでんだよ?」
チョンエ「わかんないわよ!だからこんな言葉があるんだわ、”女の心は葦”だって」

「ヴェルディオペラ リゴレット3幕」唐突にタルスが歌い出す。「♪女の心は~葦のようだ~♪」

チョンエ「(ピルに)タルスさん、ホント物知りなの。私、知的な人が好きなのに」
ピル「葦は揺れるだけだ。お前みたいに場所まで移ったりしないぞ」

「同感」クギルがすかさず同調する。

ピル「はぁ、みんな気楽だな。誰かさんは永遠に消えない火の玉を抱いてるってのに」

「全部めちゃくちゃだわ」隣で、チョンエが同じように溜息をついた。

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ピルはマンホールへと続くトンネルへ差し掛かった。
ふと、内壁にズラリと並んでいる貼り紙が目に入る。「?」
『暴力事件容疑者手配』指名手配の貼り紙には、自分の名前が記されており、そっくりな似顔絵には懸賞金1,000万ウォンと赤字で添えてあった。

ピル「…。」

その貼り紙を見つめ、ピルはそこに立ち尽くした。
怒りと、どうにもならないもどかしさで、貼り紙を手当たり次第に破り捨てる。

ピル(心の声)「町がこんなになったのは、全部俺のせいだって?タルス兄が壊れちまったのも、チョンエの心変わりも?スジンが苦しんだのも全部、俺が変えちまった過去のせいだってのか?ただ喧嘩一つしただけじゃないか。こんなの俺は望んじゃいない!スジン、俺マジでどうすりゃいいんだ?このまま生きてかなきゃいけないのか?もうマンホールで過去へは行けないのか?いや、また過去へ行ったとしてもスジンを振り返らせることなんて出来るのか!!!」

絶望に打ちひしがれ、ピルはまた力なく歩き始めた。

+-+-+-+

ここで区切ります。
周りの人や町まで全部変わっちゃってるのが面白いね~。
スジンを訪ねたあたりでお腹いっぱいになっちゃって、軽く休憩しました(笑)

 - マンホール-不思議な国のピル ,