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マンホール-不思議の国のピル1話あらすじ&日本語訳vol.2

      2017/08/12

ジェジュン(JYJ)、ユイ、チョン・ヘソン、バロ(B1A4)出演のKBSドラマ『マンホール 不思議の国のピル』1話、後半を翻訳していきますね~。

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自宅に帰ったソクテが手に取ったのは、机の上に置いてあった封筒だ。
”Wedding Invitation”と書かれたその封筒は、宛名のところに”私の友だちボン・ピルへ”とあった。
彼はそれを引き出しに放り込み、不敵な笑い声を上げた。「ふはははは」
引き出しには”ピルへ”と書かれた封筒が他にいくつも見える。

ソクテ「いよいよ復讐だ」

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オフィスに戻ってカメラを構えているスジンは、ドアが開いたのに気づき顔を上げた。
入ってきたのは… ピルだ。

#スジン、この暑さで山へ登って下りて、ビール呑んで帰ってきても同じ服。同じ日だから同じ服なのはわかるけど、結構気になる…。

ピル「そんなクソ食らった顔して… 誰だと思ったんだ?」

ふと目に入ったのは、macに大きく表示されたスジンの結婚写真だ。「!」
「使ってないんなら消しとけよ。電気の無駄だ」ピルはモニターの電源を切った。

スジン「何の用?」
ピル「別に。近所をぐるっと廻るついでに」

ピルは出来るだけさりげなくソファに腰を下ろした。「ストック写真ってのは金になるのか?」

スジン「アップしてもあんまり売れないわ」

※写真素材の販売サイトにアップロードし、収入を得ているってことですね。

ピル「急に結婚するっていうから、大儲けでもしたのかと思った。俺も受験なんかやめて、そういうのやってみようかな」

黙ってファインダーを覗くスジンのそばで、ピルのお喋りは止まらない。「写真撮ってサイトに上げりゃ、勝手に売れて儲かるんだろ?」

スジン「ただ撮るだけじゃダメよ」
ピル「…。」
スジン「用件は何なの?」

「…。」ピルは意を決し、スジンの両肩を掴むと、ぐいとこちらへ向かせた。「スジン」

スジン「!」
ピル「お前に会いに来たんだ。用事なんてあるもんか」

スジンは目を丸くし、何も言えずに彼を見つめた。

ピル「28年ひたすらお前のことばかり見てきたんだ。お前に会ったら、今でも胸がドキドキする。俺の気持ち、わからないのか?愛してるってんだ、このバカ。鈍感な女だな」
スジン「…。」
ピル「それなのに、一言もなしに突然結婚だなんて!」

勢いあまり、ピルはスジンを抱き寄せた。「スジン…」

スジン「…!」

強く彼女を抱きしめ、ピルはぎゅっと目を閉じた。「スジン!」

…のはずだったが…?

「あんた何してんの?」何もない空間を抱きしめ、自分に酔っているピルに、スジンは笑いながらカメラを構えた。

ピル「!!!」
スジン「ちょっと!昨日はよくもぶち壊しにしてくれたわね。言い訳するのにどれだけ大変だったか!仲のいい友だちだから理解してくれって」
ピル「友だち?俺たちが?」
スジン「じゃなかったら何?まるで仇みたいな友だちでしょ」

ピルから視線を外し、スジンはカメラのファインダーに向き直った。

ピル「あぁ、まぁそれはそうとして。何で俺に招待状送らなかったんだ?」
スジン「…。」

スジンが気まずそうに口を開く。「まだ… 届いてない?」

ピル「…。」
スジン「郵便局長の息子のくせに、郵便の一つもまともに受け取れないわけ?はぁ、何で届いてないんだろう?」
ピル「まぁいい。隣に住んでるのに、受け取ったってゴミになるだけだ」

デスクの前の椅子に身を沈め、ピルはスジンに背を向けたまま小さく溜息をついた。「結婚が決まって… 嬉しいか?」

スジン「(呆れて)そんなことまで訊く?嫌なわけないでしょ。結婚式、来るよね?」
ピル「…さぁな。この頃忙しくて時間があるかどうか」
スジン「この辺であんたほど暇な人がいる?絶対祝いに来てよね。一番の宿敵なんだから」

「…。」どうにもならず、ピルはデスクの上のマグカップを掴み、一気に口に流し込んだ。
「ちょっと、熱いわよ!」スジンの声も間に合わず、彼は喉を抑えて呻き声を上げる。「あぁ!」

スジン「大丈夫?!どうしよう…」
ピル「もともと腹が煮えたぎってるから平気さ」

「帰る」胸を抑え、ピルは辛うじて立ち上がった。

スジン「待ってよ。水でもあげようか?」

追いかけるスジンの前で、ドアが閉まる。「はぁ、全く…」

スジン「あんたのことどうすりゃいいの?ボン・ピル」

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必死で公園に駆け込むと、ピルは焼けた胃に水を流し込んだ。

ピル「”愛してる”たった5文字でいいのに!28年間尽くしてきたってのに!」

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日が暮れていた。
ピルは一人、バッティングセンターで一心にバットを振る。「諦める、諦める…諦める!」

勢い余って座り込んだ彼の頭を、「告白しなきゃ」というチンスクの言葉がよぎった。

ピル「諦められるもんか!!!」

こうしちゃいられない。ピルは一目散に駆け出した。「今のうちに告白しなきゃ!」

ピル「このまま諦めるわけにはいかない!絶対に!」

#さすがにちょっとドタバタすぎるね(笑)

彼はちょうど通りかかった両親にも気づかず、通りを駆け抜けた。

父「何だ?あいつ。もう親の顔もわからなくなったか」
母「私たち二人でうまくやっていきましょうよ、あなた」
父「あぁ。この厳しい世の中、僕たち二人なら十分さ」

「阻止できる、阻止できるさ!」走り続けた彼は、トンネルの中を一気にくぐり抜ける。「俺にはまだ一週間あるんだ!」

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人気はない。
何の変哲もない小さなマンホールの上で、街灯がチカチカと点滅した。

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スジンのオフィスにたどり着くと、ピルは鍵のかかったドアを叩いた。「スジン!どこ行ったんだ?」
すぐさま引き返し、ダッシュで別の場所へ向かう。
やって来たのは彼女の自宅だ。
スジンはまだ帰宅していなかった。

ピル(インターホン)「仕事場にいなかったけど?」
スジン母(インターホン)「それなら予定があるんだわ。電話してみなさいよ」
ピル「電話じゃできない話なんですから!」
スジン母「電話でどこに居るのか訊いて、会いに行けばいいじゃない」
ピル「あぁそうか」
スジン母「ピル、スジンはもうすぐ結婚するんだし、困らせないで頂戴」

スジンの母の話も聞かず、ピルは再び駆け出した。

スジン母(インターホン)「聞いてるの?ピル?」

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スジンに電話をしても、呼び出し音が鳴り続けるばかりだ。

ピル「何で出ないんだ?」

もう一度掛けてみると、「電源が入っていないため…」というアナウンスに切り替わる。

ピル「電源切ったのか?な、何で?!」

「…。」彼は、昼間スジンのオフィスを訪ねたときのことを思い出した。
ドアを開けた時、彼女は一瞬嬉しそうにこっちを見たのだ。
誰かが来るのを待っていたように…。
「初夜かどうかなんてわかるもんですか」チンスクの言葉が蘇る。

ピル「初夜?!」

鳴り続ける携帯をそっと裏返し、布団に潜り込む二人の姿が、ピルの頭の中を占領した。「ダメだぁ~!」

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すさまじいスピードで走っていくピルの姿に、チンスクはドリンクを売る車の中から思わず身を乗り出した。「…?」
通りを歩いていたソクテは、ピルが駆け抜ける風にハッとして振り返る。「おぉ、始まったか」
ビリヤード場にいるクギルもまた、道の向こうを走っていくピルを見送った。「結局やらかすのか」
ピルが巻き起こした風が、レンタルDVD店のドアを揺らし、タルスとチョンエの顔からシートマスクを吹き飛ばした。

チョンエ「あいつ、またバカやってる」
タルス「騒がしくなるな」

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ピルが次に駆け込んだのは、町の薬局だ。
カウンターに立っていたのは、ベテランの薬剤師だった。

ピル「(ゼェゼェ)ここで働いてる薬剤師、えっと…」
ベテラン薬剤師「落ち着いてください。何です?」
ピル「ここで働いてる薬剤師はどこなんです?」
ベテラン薬剤師「ここで働いてる薬剤師はここにいるじゃないですか!」

いやいや、ピルの言っている薬剤師は、こんなに頭が薄くない。

ピル「髪がちゃんと生えてて、もっと若いヤツのことですよ」
ベテラン薬剤師「この人は全く!」
ピル「今、ある女の人生が懸かった絶体絶命のシチュエーションなんです。最近、招待状を配ったヤツがいるでしょう?」
ベテラン薬剤師「招待状?どんな?あぁ、パク・ジェヒョンさんか。さっき帰ったけど…」
ピル「で、電話番号は?」
ベテラン薬剤師「電話番号?待ってくださいよ、名刺はどこだったかな」

ふとカウンターの上を見ると、ピルの目に飛び込んできたのは…!
商品のコンドームを掴み、ピルはわなわなと震えた。「は、は、早く!」

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パク・ジェヒョンに電話を掛けても、「電源が入っていないため…」というアナウンスが虚しく流れた。
もはや絶望的だ。
彼はホテルに駆け込み、受付の女性にスジンの写真を見せた。「この女性、見ませんでしたか?」

受付の女性「不倫?」
ピル「そうじゃなくて、”婚姻憑藉姦淫”みたいなもんなんですけど、一刻を争うんです」
受付の女性「警察ですか?」
ピル「え、えぇ。9級警察です」
受付の女性「警察は警察でしょ。9級警察って何?とにかくそんな人は来てないから、ヨソをあたってくださいな」

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町のホテルというホテルを総当りした末に、ピルは途方に暮れていた。
ぼんやりして足元のホースを踏んでいるのにも気づかず、彼は吹き出した排水を全身に浴びて初めて我に返った。

ピル「…。」

放心状態で通りかかったずぶ濡れのピルを前に、チンスクは思わず鼻をつまんだ。「あんた、マンホールにでも落ちた?」
自分の首からタオルを外し、呆れながら拭いてやる。「やれやれ、バカだね、ホント」

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ふたたびアテもなく歩いていたピルは、ハッとして立ち止まった。
目の前のマルチルームから手を繋いで出てきたのは、スジンとジェヒョンでないか!

※マルチルーム=カラオケやネット、DVD鑑賞、ゲームなど多目的に使える個室サービス。青少年の性交遊の場になっていると、問題視されているようです。

呆然と立ち尽くする彼に、スジンが気づいた。「あれ?ピル」

ピル「そんなに金がないのか?いい年していまだに…」
二人「…。」
ピル「いまだにマルチルームなんかで」
スジン「何のこと?」
ピル「大事な話があるときはいつもいないよな、お前。電話にも出ない、隣りに住んでるのに一日中いない、いつだってそうだ!」
スジン「この人ったら…」

「すみませんが」黙っていたジェヒョンが口を開く。

ピル「お前は黙ってろ。こいつと話してるんだ」
ジェヒョン「どんな話か知りませんが、落ち着いて僕と話しましょう」
ピル「お前、代理人か?こいつ、お前のもんか?(マルチルームを指差し)そこで進展でも…あったってことか?」

「あぁ、全く」絶望してピルは目をを抑えた。

スジン「何言ってんの?一体」
ピル「腹が立ってるのに、何で急に涙が出るんだ?こっぱずかしい」
ジェヒョン「(スジンに)彼、何を言ってるんだ?」
ピル「薬剤師のくせに、金もなくてこんなところに連れてくるなんて。5つ星、せめて4つ星くらいのところに…。俺なら借金してでも…あぁ!」
ジェヒョン「泣いてないでちょっと落ち着いて。何のことかさっぱりわからないじゃないか」
ピル「結婚まで一週間なのに… 結婚してからだっていいじゃないか。たかが一週間待てないのか?俺は28年も待ってるのに!!!」

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ピルがふと目覚めると、友人たちが彼を心配そうに覗き込んでいた。「気がついたか?」
チンスクにチョンエ、ソクテ。そして二人の先輩たちだ。

ピル「ここどこだ?」
ソクテ「薬剤師のヤツと喧嘩したの、覚えてないのか?気を失ってたから、クギル兄貴が背負って来たんだ」

いつもの屋上部屋の縁台に、ピルは横たわっていた。

クギル「こいつ、一発食らっただけで気絶するとは、情けない」

起き上がろうとしたピルの背中を、皆が押して助けた。

ピル「(背中を抑え)あぁ、怪我したのかな?何でこんなに痛いんだ?」
チンスク「(背中を叩き)何ともないわよ」

「”病気にしておいて薬を与える(※危害を加えておいて助ける、という比喩)”って言うが、薬剤師はやっぱり違うな」そう言って、タルスが差し出したのは、薬の袋だ。

チョンエ「医者なら手術台行きだっただろうけど、残念ね」

「いらねぇ」ピルが薬の袋を払いのける。

ピル「スジンは?」

チンスクがピルの首を掴み、向こうへ振り向かせた。「?」

屋上の隅っこで、背を向けて電話しているスジンの姿が見える。「(電話)だからって殴るなんて」

スジン(電話)「まだ気を失ったままなのよ。私の友だちだって言ったでしょ!」

「あいつ、どうしたんだ?」不思議そうに立ち上がったピルを、チンスクが止める。「揉めてんのよ…。あんたのせいで」

ピル「じゃ、結婚しないって?」

チンスクの手が彼のおでこをはたく。「目を覚ましな!殴られておかしくなったの?」
「こうしちゃいられない」クギルが立ち上がる。「皆を集めろ。薬局ぶっ潰しに行くぞ。あいつ、舐めやがって」
「賛成!」チンスクが声を上げる。

しょんぼりしているスジンを、ピルはじっと見つめた。「…。」

タルス「訴えたほうがいい。理性的に対応しないと。そのほうが金になる。殴り込めば出費、訴えれば収入だ」
チョンエ「ううん、あの程度じゃいくらかにもならないわよ」
ソクテ「なぁピル、殴られたところをまた殴って、傷を深くするんだ」
チンスク「なるほどね。あたしの性格からすると、薬局へ殴り込みなんだけどな」
クギル「作戦会議だ。酒持ってこいよ」

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さっそく酒がずらりと並び、皆が乾杯をするときになっても、スジンは隅っこで塞いでいた。

タルス「ファミリーが集まるのも久しぶりだな」
ソクテ「勉強中は呑んじゃいけないんだけど」
タルス「呑む時は勉強しなきゃいいじゃないか」
ソクテ「あぁ、そうか!」
クギル「おい、お前さっさと勉強なんか諦めろよ。頭より体だぞ。体で稼げ」

輪に加わりながらも、ピルの視線はひたすらスジンの背中へと向かった。
「ねぇ」チンスクがそっとピルをつつく。「行ってみなさいよ」
ピルが立ち上がり、その場を離れると、チンスクは気を取り直して明るい声を上げる。「焼酎が美味しい!大きいコップでいきません?」

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遠慮がちにスジンの背中に触れると、彼女が振り返る。

ピル「帰ろう。送るよ」
スジン「私たちも一杯やりましょ。久しぶりに」
ピル「ダメだって。遅くなったらおばさん俺に電話するだろ」
スジン「…。」
ピル「お楽しみは他のヤツで、問題が起きりゃ全部俺のせいだ」
スジン「もぅ…」
ピル「(電話の時刻を見て)もう12時だ。早く帰ろう。送るから」

ピルは彼女の小さなバックを手に取る。

スジン「自分で持つわ。あんた具合が悪いんだから」

スジンは彼の先に立って歩き出した。

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「ごめん」公園の中を歩きながら、ピルはポツリと呟いた。

スジン「何が?」
ピル「昨日と今日… いろいろと」
スジン「昨日今日のことじゃないでしょ」
ピル「はぁ、今日は何て長い一日なんだ?昨日よりだいぶ長く感じる」

「…。」少し思い詰めたような顔をしていたスジンは、肩に掛けたバッグを開き、取り出した封筒を目も合わせずに差し出した。「これ」

ピル「?」
スジン「貰ってないって言うから、今渡すわ。受け取れなかったのか、受け取らなかったのかわからないけど」

受け取った封筒の隅には、「私の友だち ボン・ピルへ」と彼女の字が小さく添えてあった。

ピル「…。」
スジン「ねぇ、ボン・ピル」
ピル「え?」
スジン「大事な話って何?」
ピル「あ…。大事な話?」
スジン「さっき言ってたじゃない。私に大事な話があるって。それで私のこと探してたって」

「…。」すっかりさっきの勢いを失ってしまったピルは、何も言い出せずに黙って下を向いた。

スジン「どんなこと?今話してみて」
ピル「えっと、その…つまり… 実は俺…」
スジン「…。」
ピル「実は… お前に会うたびに…」
スジン「会うたびに?」

大きな目を見開いてじっと待っているスジンが、ピルの頭の中をかき乱した。

ピル「お、俺… 小便したい」
スジン「…え?!」
ピル「あ、い、いや、お前に会うたびに小便したくなるってことじゃなくて、今したくなったってことで。今日一日中走り回ってたから、トイレに行けなかったんだ。今…、ちょっと行ってくる」

呆気にとられているスジンを前に、ピルはそそくさと逃げ出した。
彼女が見えないところまで来たところで、ピルは渡されたばかりの招待状を見つめる。
新郎パク・ジェヒョン、新婦カン・スジン、二人の名前が末尾に並んでいた。「はぁ…」

ピル「言いたいこと… 言いたいことが多すぎて何から話せばいいのかわかんないや」

街灯の支柱をぎゅっと掴み、ピルは恐る恐る口にしてみる。「あ、愛してる…」

ピル「愛してる…!その一言さえ言えればいいと思ったのに。考えてみたら、そんなんじゃ足りないよな。言いたいこと… 言いたいことならたくさんある。お前の顔を見ただけで、心がこんな狂ったように舞い上がるのに… 今さら告白したところで何の意味がある?愛… たかが愛で今さら何が変えられるんだ?」

どうしていいかわからず、ピルはその場に座り込んだ。
目の前で、小さなマンホールがかすかに光ったことに、彼が気づくことはない。

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「早く来て、ピル」ぶつぶつ唱えながら待っていたスジンは、いよいよ首をかしげた。「何で戻ってこないの?何かあったのかな」
「ピル?」ピルの行った方へ向かってみても、彼の姿は見えない。「まだなの?」
少し歩くと、そこはトンネルになっている。「ポン・ピル?」大声で呼ぶ彼女の声が、トンネルの中で響き、また静かになった。「ピル?どこなの?」

ふと見ると、誰もいない道端に、渡したばかりの招待状が落ちているのに気づき、彼女は愕然とした。

スジン「ひょっとして帰った…?はぁ、呆れたヤツ!」

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ピルを不思議な空間へと飲み込んだマンホールは、スジンが呆れて立ち去った後、蓋の隙間から満足げにゲップをした。

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高校のある教室。
教師が発音してみせるドイツ語に、生徒たちが続く。
一番後ろで、一人だけTシャツ姿の生徒が居眠りをしていた。
ピルだ。

教師「そこで居眠りしてんのは誰だ?」

「ピル?」教師の声に、皆が一斉に振り返る。
ピルの前の席で、スジンも振り返った。
「…。」あまりにすやすやと眠っているピルに、教師はチョークを投げつける。

ピル「!!!」

驚いて立ち上がったピルは、周囲を見渡した。「何だ?」
「あ」彼は不躾に教師を指差す。「ゲシュタポだ」

生徒全員「!!!!!」
教師「お前、今何て言った?」
ピル「高校ん時のドイツ語の先生。(クスッ)超ムカつく嫌われ者」

教師がカッとなって投げた黒板消しを、ピルは彼を指差していたその手で難なく受け止めた。
チョークの粉が周囲に舞い、前の席でスジンが煙たそうに振り払う。

ピル「ス、スジン…?」

さらに周囲を見て、彼はチンスクやソクテの姿にぎょっとして声を上げた。「わっ!」

ピル「お、お前ら何してんだ?制服なんか着て」

いよいよ頭にきたゲシュタポが、愛用の棒切れを手に、ゆっくりとピルに近づいた。
ゲシュタポ37歳。未婚。父兄たちの”小さな誠意”が第二の収入源。
ドイツに行ったことのないドイツ語教師だ。

一番うしろのピルの席までたどり着くと、ゲシュタポは目をカッと見開く。「(黒板消しを見て)よく掴んだな」

ゲシュタポ「黒板消しを掴むとは」
ピル「いや、僕も知らないうちに。昔よく当てられたからか… 知らないうちに掴んでたんだけど」
ゲシュタポ「…。」
ピル「けど(周囲を見て)ここは…どこなんです?」
ゲシュタポ「ついさっきまで教室だったがな、たった今からお前にとっちゃ地獄になるだろうな」
ピル「…。」

「ひひひひひ」ゲシュタポが顔をひきつらせて笑うと、手に持った棒で思い切り机を叩いた。「このバカもん!!!」

ピル(心の声)「何だ?この胸クソ悪いデジャヴは…?!」

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ここでエンディングです。
かなりのドタバタですが、楽に観られていい感じですね^^
楽しみです。

 - マンホール-不思議な国のピル ,