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マンホール-不思議の国のピル1話あらすじ&日本語訳vol.1

      2017/08/12

ジェジュン(JYJ)、ユイ、チョン・ヘソン、バロ(B1A4)出演のKBSドラマ『マンホール 不思議の国のピル』のあらすじを、セリフの日本語訳を混じえながら紹介していきます。

サイムダンを訳し終えてから一本も韓ドラ観ていないという体たらく(=いつも通り)でしたが、ドラクエの冒険から一時帰還して頑張りま~す。

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小さなベランダで背中を丸め、若い男がぼんやり酒をすすっていた。
”これから起きる事態の主人公であり、主犯である” ボン・ピル。
28歳、公務員試験浪人3年目だ。

ふと声が聴こえてきて、彼は向こうを覗く。
棟続きの隣の家の窓に、今にも新郎を迎えようとしている花嫁と母親の姿が見えた。

ピル(心の声)「僕の愛は流れ星のように消えてしまった…。20年モノの父さんの人蔘酒みたいに、酒は時が経てば経つほど甘くなると誰もが思うだろうけど、僕の胸に抱いた愛は、今じゃ毒杯みたいに苦くてたまらない」


外で新郎の家族たちがやってきた声がして、花嫁がソワソワと窓から覗いた。
スジンだ。

ピル(心の声)「スジン、28歳。そう、28年だ。僕らの愛は28年前に始まったと、僕は信じてる。3日違いで、同じ町の産婦人科で産まれた僕らは、28年前すでに同じベッドで寝ていたんだ」

「それなのに!」ピルは心の中で叫んだ。

ピル(心の声)「今か今かと告白のチャンスばかり狙っていた僕にとって、たかだか数ヶ月付き合っただけのヤツとの電撃結婚発表は衝撃だった。人生でチャンスはたった一度。人生は決して思うようにはいかないんだ」

「うるせえな」外の騒ぎに、ピルは思わずボヤいた。

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「あ゛~!!」家の前へフラフラと出て来たピルは、婚礼を祝って騒いでいる人々の前でありったけの声を上げた。「うるさくてたまんねぇ!」

ピル「町内貸し切りか?こんな夜中に!」
人々「…。」
ピル「人ん家の前でこんな夜中になに大騒ぎしてんだよ!」
男性「(仲間に)ほっとけ」
ピル「今何時だ?」
男性「(腕時計を見て)9時」
ピル「9時か…。9時なら人ん家の前でたむろしていいのか?結婚が何だよ、青春の墓場だっていうぞ!」

「ちょっと!!!」鋭い女の声がする。
家の中から出てきたのは… 新婦カン・スジンだ。
町の”ファム・ファタル” 、ピルのベアトリーチェであったが、1週間後に結婚を控えていた。

※ベアトリーチェ:ダンテの「神曲」の登場人物であり、ダンテ自身が幼いころから愛した実在の女性だといわれている。

「こら!」今度は背後で男の怒鳴り声がした。
空っぽの酒瓶を握って立っているのは… ピルの父親。隣には母もいる。
定年間近の郵便局長と専業主婦であり、すでに息子を諦めて久しい。

ピル(心の声)「思い出した…。愛を知らなかった獣が人間になった日のことを」

~~~~小学3年のとき~~~

ピル(声)「スジンが初めて隣の席になったとき、僕は突然愛とは何か悟った。そのとき悟ったことを…多少過激ではあったけど、率直に表現した。そのときの僕はあまりに早熟で、スジンはあまりに奥手だった」

ピル(声)「結局、席替えからたった2時間で”転校する”と言ってスジンが泣いたもんだから、僕は責任取るからって慰めたら…」

彼は皆の前でスジン嬢から平手打ちを食らうことになった。

ピル(声)「なんてこった。あのときからこじれたんだ…」

~~~~現代~~~~

翌朝。
出掛けようとしたピルは、財布の中身を見て溜息をついた。
「母さん、父さん」猫撫で声で階下へ下りると、両親は気配を察して幽霊のように消えた。

ピル「あれ?二人ともいらっしゃったのに?」

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「あ、ピル!」外をトボトボと歩くピルに、通りでジュースの移動販売をしていた女性が駆け寄った。

女性「昨日スジンの結納品が来たのに、酔っ払って台無しにしたんだって?」
ピル「…。」
女性「苦い酒だったろうね。28年も”糞にたかるハエ”みたいにつきまとってたのに」
ピル「おい!!!」
女性「何よ!!!」
ピル「その表現、クソだな」
女性「クソみたいな状況じゃないのさ!」
ピル「クソクソ言うなよ」
女性「オーケー。酒は苦いだろうし、ジュース絞ってあげるから飲んでいきなよ」
ピル「お前が飲んどけ」

女性の腕を振り払い、ピルは冷たくその場を後にした。

「あたしに当たらないでよ!」手に持った箒を振りかざした女性は… ユン・ジンスク、28歳。
ピルの幼馴染であり、”万事休す”の女友達だ。

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自習室へ入ってくると、ピルはカバンを乱暴に机の上に投げ出した。
「タバコあるか?」隣で勉強している学生に声を掛ける。
「スジンの結納品が来たんだってな」質問には答えず、男子学生はそう言った。

ピル「タバコ一本くれよ…」
男子学生「結婚式まで一週間だっけ?」
ピル「タバコ!」

「はぁ」学生は顔を上げる。「スーツも持ってないのに、結婚式に何を着て行こうか」

ピル「タバコないかって訊いてんだろ!」
男子学生「(ビクッ!)」
ピル「結婚じゃなくて、タバコはないかって!」

「あの… タバコありませんか?」男子学生はビクビクして周囲の学生たちに声を掛けた。
チョ・ソクテ、28歳。浪人6年目。この人生、とうてい可能性はなさそうだ。

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「今度の競争力、268分の1だってさ」ピルのタバコに火をつけてやりながら、ソクテが言った。

ソクテ「公務員試験浪人のまま30超えそうだ」
ピル「公務員試験?9級技能職志望のくせに」
ソクテ「公務員は公務員だろ!判事や検事だって同じ公務員なんだぞ。そ、そういうお前だって9級じゃないか。チェッ」
ピル「おい、オレはイケてる警察だ。オレとオマエじゃレベルが違う」
ソクテ「警察だって?俺が一生懸命勉強して合格して、お前が落ちたら、俺は公務員でお前は無職。そうなれば俺とお前は同レベルか?違うよな。違うよな!」
ピル「ガキの頃からそうだった。ダメなヤツは死んだってダメなんだ」
ソクテ「!」
ピル「お前がまさにそうだ。夢は寝るときだけにしろよな」
ソクテ「おい!俺の目にはお前だってダメなヤツだぞ!スジンを見ろよ!お前があれだけ追い回したのに、デキるヤツと出会って結婚するんだから」

「死にてえのか!」ピルはたまらずソクテの胸ぐらを掴んだ。

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「新郎を殺っちゃいなさい」ピルにドリンクを差し出し、チンスクが言った。

ピル「(うんざり)これだから一人は6年浪人して、一人はジュースなんか売ってんだ」
チンスク「ちょっと!(ソクテを指し)これと一緒にしないでよ。あたしはユン社長よ!”1年で1億プロジェクト”の青年実業家!それにね、あんたたち何でコンビニのラーメンをうちの店のテーブルで食べてんのよ!コンビニで食べな!」

「ピル、これ食べるぞ」ソクテがピルのラーメンに手を伸ばした。

チンスク「だからさ、ピル。止められるわけないないって。もうじき結婚式なのにさ」
ピル「止めてやる。見てろ、俺が阻止してやるから」
ソクテ「あぁ、ピルは阻止するよ。心配ないって。昔、陸上やってたとき、1000M競走で転んで、うちの学校が全国大会に出るのを阻止したろ。ピルは阻止するのが生まれつき得意なんだ」
ピル「何だって?」

「こいつ、ラーメンで酔っ払ってんのか!」ピルがソクテの頭をはたいた。

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「お前、どれだけスジンを困らせたと思ってんだ?」ラーメンの汁でやけどをした口元をチンスクに見てもらいながら、ソクテはピルに怒鳴った。
彼らがいつもたむろしている、見晴らしのいい屋上部屋だ。

ソクテ「28年どころか280年待ったって無理だよ、お前は。(チンスクに)やけど薬塗らなきゃ。喉の中まで焼けた気がするんだ」
チンスク「ホントに?オーバーなんだから」
ピル「喉が焼けたくらいで。俺なんか誰かに心臓をフライにされた心境なのに!」

「しっかりしなよ!」チンスクが呆れてピルを叩く。「ブザマなマネやめなって」

ピル「スジン呼んであげようか?他人の女になる前に告白する?今まで想ってきた分、勿体ないから一度くらい告白しなきゃね」

「電話するわよ」チンスクが取り出した電話を、ピルは慌てて取り上げる。「ダメだってば!」

ピル「告ってどうすんだよ。初夜は目の前だってのに」
チンスク「そんなのわかんないわよ。初夜かどうかなんて」
ソクテ「そりゃそうだ」

「はぁ…」ピルは苛立って、縁台の上でのたうち回った。

チンスク「この辺の人は、ピルがスジンに夢中なのはみんな知ってるし。そうだわ、緊急晩餐会を招集しなきゃ」

「近所のみなさ~ん!」スジンは縁台の上に立って大声を上げた。「ピルは28年スジンのことを…」

ピル「!」

ピルは必死でチンスクを取り押さえた。

ピル「なぁ、挽回する方法ないかな」
ソクテ「離婚するまで待つんだな。最近は結婚も早いけど離婚も早いってさ。流行に乗らなきゃ、トレンディに」

ソクテに襲いかかるのを何とか踏みとどまり、ピルはその場を後にした。

チンスク「あぁ、哀れなヤツ。女はスジンだけじゃないのに」
ソクテ「はぁ、全く。あいつのせいでまた無駄な一日だった…」
チンスク「6年勉強してもダメなのに、今日一日無駄になったところでダメージある?」
ソクテ「なぁ、お前だっていつかは結婚するよな?」
チンスク「さぁね」
ソクテ「俺さ、お前が誰と結婚するのかすごく気になるんだ」
チンスク「?」
ソクテ「(ニコニコ)」
チンスク「あんたじゃないから」
ソクテ「おい!だ、誰がお前と結婚するって?!呆れるよ」

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スジンはタブレットを手に取った。
開いたのは、撮ったばかりの結婚写真だ。

そこへ入ってきたのは、パク・ジェヒョン、31歳だ。
近所の薬局の薬剤師であり、スジンのフィアンセ、ピルの仇である。
彼はスジンの隣に腰を下ろし、彼女の肩にスッと腕を回した。

スジン「(写真を見せ)私の表情なんだけど、何で笑ってないのかな…。この写真、使えそうにないわ。表情が良くない。疲れてたのかな?」
ジェヒョン「キレイだけど?」

「ううん」スジンが首を横に振り、写真を指差した。「見てよ」

スジン「ジェヒョンさんはこんなに明るく笑ってるのに、私はほら。申し訳ないわ」

「一緒に結婚写真を撮ってくれただけで十分感謝してるよ」肩に回した手で、ジェヒョンは優しく彼女の頭を撫でる。
「もう…」スジンは思わず笑った。

ジェヒョン「やっぱり。笑ってる方が遥かにキレイだね」
スジン「(写真を見つめ)勿体ないな…」

ジェヒョンは指輪が光る彼女の手をそっと取る。見つめられたスジンは避けるようにサッと立ち上がった。「撮り直したいわ」
「扇風機、どうしたの?」一緒に立ち上がったジェヒョンは、デスクの横にある扇風機が動いていないのに気がついた。

スジン「私が触ったら壊れちゃった。私、”マイナスの手の持ち主”でしょ」
ジェヒョン「やれやれ。昼食のついでにちょっと寄ったんだ。終わったらまた来るよ。一緒に食事しよう」

「うん」スジンは彼の腕にそっとしがみつく。「昨夜、騒がしくなっちゃってごめんね」
ピルが騒いだ一件だ。

ジェヒョン「あぁ、大丈夫。歴史的な結婚なんだ。そのくらいのハプニングはないとね。君の友だち、怖かったな」
スジン「(微笑)」
ジェヒョン「1週間だけ我慢して。このおかしな町から君を助け出してあげるよ」

彼が出ていくと、スジンはふぅ~っと大きく息をついた。
壁にかけてある自分の写真が目に入る。「…。」
写真の中の自分のように、彼女は敬礼をしてニッコリ笑ってみた。
と、ふたたび何ともいえない憂鬱が襲い、彼女は深く溜息をついた。「…。」

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スジンのオフィスを出たところで、ジェヒョンの携帯が鳴った。
名前を見て、ジェヒョンは表情を曇らせる。ヨンジュからだ。
電話を無視し、彼はそのままポケットにしまった。

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町の小さなレンタルDVD店で、店員が暇そうにギターを弾いて歌っていた。
彼らの兄貴分、オ・ダルス、29歳。頭がよく、一時は映画を学んでいた。
しかし、ただ頭がよいだけだ。

そこへ、えらくムシャクシャした様子で入ってきたのはピルだった。

タルス「悲しい愛のストーリー、観るか?」
ピル「…。」
タルス「お前のシチュエーションと似てるんだ。一時は恋人だった二人は、それぞれの夢のために別れ、結局女は他の男と結婚する」

「何で来たんだ?」ギターを爪弾きながら、タルスは淡々と尋ねる。

ピル「何でって(イライラ)通りかかったから」
タルス「お前が日頃通る動線じゃないぞ、ここは」
ピル「兄貴、訊きたいんだけど」
タルス「言ってみろ」
ピル「兄貴はさ、映画をたくさん観てるだろ?映画の中じゃどうやって結婚を阻止するんだ?」
タルス「おい、しっかりしろ」
ピル「…。」
タルス「映画は映画だ。現実とは違う。下手すりゃ捕まるぞ」

ピルは頭を抱え、唸り声を上げた。「あぁ」
哀れなピルを眺め、タルスは溜息をつく。

タルス「それにしても、お前、何で阻止できなかったんだ?俺はそこが気になるんだ。1対1でマークしてたんじゃなかったのか?」
ピル「結婚するとは思わなかったんだ。俺、招待状も貰えなかった」
タルス「ほぅ、意外だな、招待状か」
ピル「あぁ、何で俺には送らなかったんだろう」
タルス「お前が招待状にこだわるのが意外だって言ったんだ」
ピル「?」
タルス「招待状を貰う時点でゲームは終わりだ。その前に気づかないとな、結婚が決まる前に」

「…。」時すでに遅し。ピルはソファに倒れ、もがいた。

タルス「やれやれ。今は情報戦だぞ。情報じゃお前は負けた。そこでゲームオーバーだ」
ピル「兄貴!俺、ホントに知らなかったんだ!付き合ってる男がいるのは知ってたけど、こんなに早く結婚するなんて!」
タルス「”尙有十二”… イ・スンシン将軍は12の敵船を前にしても希望を捨てなかった。まだゲームは終わったわけじゃない」

タルスが俄に声を強め、ギターを激しく掻き鳴らす。

タルス「B列2番目の棚に行ってみろ。『4度の結婚式と1度の葬式(邦題:フォー・ウェディング)』って映画のヒュー・グラント。結婚式場で自分の結婚をご破算にした。5分後に何が起きるのか、誰にもわからない!」
ピル「…。」
タルス「…それが人生だ」

黙り込むピルを見て、タルスは満足気にニヤリとした。「超イケてたな」
「きゃぁ♪素敵だったわ」若い女性が手を叩きながらやってきた。
「お風呂行ってくるね」そう言ったところで、ソファでふさいでいるピルに気づく。「…また来たのね」

ピル「お前に会いに来たんじゃないぞ」
女性「…。」

ピルの顔を覗き込んだのは、ホン・ジョンエ、28歳。
ピルと犬猿の仲の彼女は、タルスと2年間一緒に働き、同棲している。

チョンエ「(ピルに)ねぇ、あんた、スジンから招待状貰ってないの?この間見たら、新郎は超背も高いし、超立派な人だったわ。それに、稼ぎもいいってさ」
ピル「!」

「超背が高くて、超稼ぎのいいヤツが何でだろうな…」タルスが独り言のようにつぶやく。「結婚で青春に終止符を打つなんて」

「兄貴!」ピルはたまらず起き上がった。「俺、行くわ」

タルス「あぁ」
ピル「兄貴、知ってるか?(チョンエを指し)こいつ、小2のとき教室でクソ漏らしたんだぞ」
チョンエ「ちょっと!!!」

ピルは逃げるように店を飛び出した。

#私、この先輩好き!こういうキャラ大好きなんです。古くは冬ソナのキム次長みたいな人ね。絶妙な距離感でヒントをくれる人。

~~~~高校生のとき~~~~

ピル(声)「その日は俺の誕生日の3日後、スジンの誕生日だった。俺はスジンのために最高のパーティーを準備して、嫌がるあいつを無理やり連れて来たんだ」

公園にやってきた彼女の前に、ピルはチョコパイを重ねて作ったケーキを手に、お祝いの歌を歌いながら登場した。

ピル「火を消して」

スジンがろうそくを吹き消すのを、ピルは幸せそうに見守る。

ピル「誕生日おめでとう、スジン」
スジン「毎年チョコパイ?」

スジンは手を差し出す。「プレゼントは?」
「とりあえずこれ」ピルはケーキをスジンの手に乗せ、後ろに何やら合図をした。

スジン「?」
ピル「ジャーン!」

物陰に隠れていたソクテがスイッチを押す。
二人の周りを、一斉に上がった花火が丸く取り囲んだ。

ピル(声)「パーティのフィナーレは花火できれいなシチュエーションを作って…」

#これ、完全に相思相愛だよね

スジン「感動だわ」
ピル「どう?」

「ありがと」スジンが上目遣いにピルを見た。

ピル(声)「けど、それがまた事の発端だった」

「お前ら何やってんだ!」騒ぎを聞きつけ、パトカーがやって来たのだ。

ピル(声)「その日、俺はスジンに初めて派出所見物をさせ、調書ってやつも初めて書かせてやった。そして、結婚式でもないと集まらない両家の父母まで揃い、実に盛大なパーティが開かれたんだ。本当にバラエティに富んだ誕生パーティだったんだけど…忘れちまったのかな?」

~~~~現代~~~~

「わぁ、いい天気!」高台まで登ってくると、スジンは眼下に広がる景色を眺めた。
さっそく三脚を広げ… あれ?とバッグを覗く。「待って…」カメラバッグは空っぽだった。
思わず笑ってしまったところへ、電話が鳴る。

チンスクだ。

チンスク(電話)「電話に出るなり何笑ってんのよ?」

「新郎と一緒みたいね」隣でチョンエがつつく。「あぁ、妬けちゃう」

チンスク(電話)「どこ?」
スジン(電話)「裏山」
チンスク「裏山で何してんの?」
スジン「写真撮りに来たの。だけどカメラがなくて」

「それで下りるところ」そう言ってスジンは笑う。

チンスク(電話)「何言ってんだか。まぁいいわ、こっちに来てよ、ボンボンホープ。3人だけで集まるから」
チョンエ(電話)「非常事態よ」
スジン「うん、わかった」
チンスク「それからさ、山でヘラヘラ笑ってんじゃないわよ。人が見たらビックリするわ。おかしな女だと思って。早く来てよ」

電話を切り、スジンは大きく息をついた。「いい運動したわ。また下りないと…」

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カフェバー、ボンボンホープに現れたスジンに、オーナーのミジャはひとまず祝福の言葉を掛けた。「結婚おめでとう」

ミジャ「でもね、私も似たようなこと何回かしてみたけど、大したことなかったわ」
スジン「…。」
ミジャ「一番の花盛りにどうして?もうちょっと楽しんでから、後でゆっくりやればいいのに。勿体ない」

ミジャの言葉に、スジンはニッコリ微笑んだ。

ミジャ「コーヒー?お酒?どうする?」
スジン「喉乾いたからお酒」
チンスク「イケてるオーナーを信じて…お酒!」
チョンエ「私はコーヒー」
一同「…?」
チョンエ「タルスさん、私が外でお酒飲むの嫌がるの」

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「ねぇ」話を切り出したのはチョンエだ。「結婚を阻止する方法を訊いてたわ、タルスさんに」

チンスク「私も訊かれた」
チョンエ「ホント?」
スジン「(溜息)ピルったらとことん頭痛の種だわ」
チンスク「待ってよ、まさか私がコーチしたとおり実行に移したりしないわよね」
スジン「何て言ったの?」
チンスク「殺せって。あんたの新郎を」
スジン「ちょっと!」
チョンエ「(スジンに)ただの冗談よ」
スジン「…。」
チョンエ「けど、ホントにやったら傑作だよね、きゃはは!」
スジン「もう!!!」
二人「…。」
チンスク「ねぇ、何でピルに招待状渡さなかったの?」

「え?」ドキリとしたようにスジンが目を丸くする。「…郵便で送ったけど」

チョンエ「隣に住んでるのに?投げりゃ3秒で着くわよ。手を伸ばしたって渡せそう」

ビールのジョッキを握るスジンの指に、ひとりでに力がこもる。

スジン「だって… 直接渡そうと思ったんだけど、ちょっとね」
チョンエ「何で~?」
チンスク「何でって、ピルがスジンのこと好きで追い回してたじゃない」
スジン「…。」
チンスク「チョンエ、よく聞きなさいよ。あんたがタルスさんと結婚するとして、直接クギルさんに招待状渡せる?」
チョンエ「まさか。気まずいわ」

話す二人をよそに、スジンは再び大きな溜息をついた。「…ピルのやつ、ホントどうすればいいの?」

チンスク「(チョンエへの話は続く)言い聞かせて分かるヤツなら、私がとうの昔にマトモにしてるわよ」

スジンはジョッキに残ったビールを一気に飲み干した。

チンスク「(スジンに)どうしようもないわ。1週間、何とか持ちこたえなさいよ」
スジン「ビールもう一杯頼んで」

「こき使わないでよ」文句を言いながら、チンスクは追加のビールを注文した。

スジン「…。」

+-+-+-+

ピルがフラフラと入ってきたのは、ビリヤード場だ。
「来ると思ってたんだ」中央でビリヤードをしていた男が言った。「昨日やらかしたんだって?」

男「コーヒー?サイダー?どうする?」

ヤン・グギル、29歳。
彼らの兄貴分。
力持ちだが、単細胞で学がない。
それでも”いい人”だ。

ピル「いらないよ、そんなもの」
クギル「こいつ。ムシャクシャしてんだな。その気分、よくわかるぞ」
ピル「はぁ…(PCで遊ぶ学生を眺め)あの頃ちゃんとやってりゃ、今日になってこんなザマにはならなかったのに
クギル「俺もときどきそう思う。あの頃もうちょっとしっかりやってりゃってな。わかるか?チョンエを奪われたとき、まさにそういう気分だった。男の涙、たくさん流したぞ」
ピル「…。」
クギル「それで入隊した。あのとき…」
ピル「戯言いってないでさ、何かいい方法ないかな?」
クギル「何の?」
ピル「俺、スジンと結婚しなきゃ」

手に持ったビリヤードの玉を、クギルは思わず落とした。「?」

ピル「だから、いい方法ないか?なぁ!」
クギル「チンピラかよ!1週間後に結婚を控えた子を…。おい、それはナイぞ、男のすることじゃない」
ピル「チンピラでもいいさ(玉を乱暴に放り出す)」
クギル「おい、そんなことしたら玉が割れる!」
ピル「…はぁ」

絶望に沈むピルを、クギルは見つめた。「全く方法がないわけじゃない」

ピル「?」
クギル「答えはスピードだ。陸上やってたとき、お前のことよく見てた。お前は爆発的なスピードを持ってるが、問題はスタートがクズだ」
ピル「いいから、方法は何だよ?」
クギル「”爆発的なスピード違反”」

「!」ピルはクギルの手を思い切り払い除けた。「最低だな!」

クギル「何だよ。最近の芸能記事見てたら、そうやって結婚してるだろ。みんな”スピード違反”だ。だから、お前だってヤツより速いスピードを出してだな」
ピル「何言ってんだよ、全く!!!」
クギル「何で…」
ピル「何も言うなよ。ウッカリしてた。この町にまともな人間なんていやしないのに、悩みの相談なんかしちまって」

+-+-+-+

ここで一旦区切ります。
ピルは溜息ついてるか、頭抱えてるか、ジタバタしてるか、どれかですね^^;
今になって急に慌てだした感じが、ちょっとピンと来ませんが、周囲の人たちもいいキャラで楽しくなりそうです。

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